(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052935
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】化粧品容器及び当該化粧品容器用のしごき部材
(51)【国際特許分類】
A45D 34/04 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
A45D34/04 515C
A45D34/04 515D
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031436
(22)【出願日】2024-03-01
(62)【分割の表示】P 2021165935の分割
【原出願日】2021-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】592042750
【氏名又は名称】株式会社アルビオン
(74)【代理人】
【識別番号】100122541
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 友彰
(72)【発明者】
【氏名】杉田 朋史
(57)【要約】
【課題】容器本体からしごき部材が外れにくい化粧品容器及び当該化粧品容器用のしごき部材を提供する。
【解決手段】
化粧料を収容する収容部と前記収容部の端部に設けられた筒状頸部とを備えた容器本体と、弾性を有し筒状頸部の内側に装着されたしごき部材と、筒状頸部を通じて収容部内に延びている軸部と、軸部の先端部に設けられ収容部内に収容される化粧料に浸漬される塗布体とを備えた蓋部材と、を有する化粧品容器であり、しごき部材は、筒状頸部の内面に当接する筒状部と、筒状部の外周面の上部に筒状頸部の開口端と係合可能に鍔状に突出形成されたフランジと、を有し、
しごき部材の筒状部の外周面に、フランジの接続部分が最小径となるようにフランジに向けて一定に漸次縮径するテーパ面で構成された縮径部を備えることにより、筒状頸部の開口端近傍の内面と、しごき部材の筒状部の外周面との間には空隙を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧料を収容する収容部と前記収容部の端部に設けられた筒状頸部とを備えた容器本体と、
弾性を有し、前記筒状頸部の内側に装着されたしごき部材と、
前記筒状頸部の外側に着脱可能に装着される蓋部材であり、前記蓋部材が前記筒状頸部に装着された状態で前記筒状頸部を通じて前記収容部内に延びている軸部と、前記軸部の先端部に設けられ前記収容部内に収容される前記化粧料に浸漬される塗布体とを備えた前記蓋部材と、
を有する化粧品容器であって、
前記しごき部材は、前記筒状頸部の内面に当接する筒状部と、前記筒状部の外周面の上部に前記筒状頸部の開口端と係合可能に鍔状に突出形成されたフランジと、を有し、
前記しごき部材の前記筒状部の外周面に、前記フランジの接続部分が最小径となるように前記フランジに向けて一定に漸次縮径するテーパ面で構成された縮径部を備えることにより、前記筒状頸部の開口端近傍の内面と、前記しごき部材の前記筒状部の外周面との間には空隙を有すること
を特徴とする化粧品容器。
【請求項2】
前記空隙は、前記しごき部材が弾性変形したときに、前記筒状部が前記空隙を埋めるようにして拡径する方向に膨出することを許容とする領域であることを特徴とする請求項1に記載の化粧品容器。
【請求項3】
前記しごき部材の前記縮径部は、前記筒状部の周方向にわたり環状に形成されていることにより、前記空隙が環状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の化粧品容器。
【請求項4】
前記しごき部材が弾性変形したときに、前記フランジが拡径する方向に膨出することを許容する領域を更に有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のうち、いずれか1に記載の化粧品容器。
【請求項5】
前記筒状頸部の内面は、前記筒状頸部の前記開口端近傍が拡径する拡径部を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項4のうち、いずれか1に記載の化粧品容器。
【請求項6】
化粧料を収容する収容部と前記収容部の端部に設けられた筒状頸部とを備えた容器本体と、前記筒状頸部の外側に着脱可能に装着される蓋部材であり、前記蓋部材が前記筒状頸部に装着された状態で前記筒状頸部を通じて前記収容部内に延びている軸部及び前記軸部の先端部に設けられ前記収容部内に収容される前記化粧料に浸漬される塗布体を備えた前記蓋部材と、を有する化粧品容器の前記筒状頸部の内側に装着される弾性を有するしごき部材であって、
前記しごき部材は、前記筒状頸部の内面に当接する筒状部と、前記筒状部の外周面の上部に前記筒状頸部の開口端と係合可能に鍔状に突出形成されたフランジと、を有し、
前記しごき部材の前記筒状部の外周面には、前記筒状頸部の開口端近傍の内面と、前記しごき部材の前記筒状部の外周面との間に空隙を形成するための、前記フランジの接続部分近傍が縮径する縮径部を備え、
前記縮径部は、前記フランジの接続部分が最小径となるように前記フランジに向けて一定に漸次縮径するテーパ面で構成されていること
を特徴とするしごき部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧品容器及び化粧品容器用のしごき部材、特に、容器本体に収容した化粧料を塗布する塗布体を蓋部材に備えた化粧品容器及び当該化粧品容器用のしごき部材に関する。
【背景技術】
【0002】
マスカラなどの粘性のある液状化粧料を収容した化粧品容器は、液状化粧料を収容する容器本体と、容器本体に対して着脱可能な蓋部材とを備えている。より具体的には、容器本体は、液状化粧料を収容する有底筒状の収容部と、その開口側に筒状頸部を備える。蓋部材は、蓋部材が筒状頸部に装着されたときに筒状頸部を通じて容器本体内に進入する軸部と、軸部の先端に設けられて容器本体内の液状化粧料に浸漬される塗布部と、を備える。さらに、筒状頸部の内側には、しごき部材が嵌合される。しごき部材は、全体が弾性材料で形成されており、塗布部をしごくしごき片を備えている。しごき片は、塗布部が筒状頸部を通過するときに塗布部をしごき、塗布部に付着した余分な液状化粧料を掻き落とし、塗布部に付着された液状化粧料を適量に調整する。また、しごき部材は、中栓としても機能し、閉栓時における容器の気密性を確保する。
【0003】
なお、同種の容器として、特許文献1に示した液体塗布容器がある。このような容器は粘性液状化粧料のみならず粉体化粧料を収容する容器としても利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような化粧品容器におけるしごき部材は、使用の都度、塗布部が通過し、余分な液状化粧料をしごくため、しごき部材の内面に液状化粧料が留まりやすい。特に、マスカラのように被膜を形成する粘性のある液状化粧料は、被膜形成成分や揮発性成分を含有するものが多い。そのため、塗布部及び軸部が容器本体に対して引き抜かれる又は押し込まれる動作が繰り返されるうちに、液状化粧料は蓋部材や軸部などへの付着と固化を繰り返して堆積してしまうことがある。
【0006】
このような場合、しごき部材は、全体が弾性を有するため、液状化粧料が固化・堆積した状態の蓋部材及び軸部が、しごき部材に対して押し込まれたときに、しごき部材が大きく変形し、蓋部材及び軸部の押し込み動作によって容器本体内に引きずり込まれて脱落してしまうことがある。しごき部材が容器本体内に脱落すると、これを使用者が容器本体内から筒状頸部を通じて取り出すことは困難であり、もはや化粧品容器としての使用ができなくなるという問題があった。また、しごき部材を容器本体内に脱落した状態で放置した場合、蓋部材を装着しても、しっかりと密閉できず、液状化粧料の乾燥が進んでしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、容器本体からしごき部材が外れにくい化粧品容器及び当該化粧品容器用のしごき部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の化粧品容器は、化粧料を収容する収容部と前記収容部の端部に設けられた筒状頸部とを備えた容器本体と、弾性を有し、前記筒状頸部の内側に装着されたしごき部材と、前記筒状頸部の外側に着脱可能に装着される蓋部材であり、前記蓋部材が前記筒状頸部に装着された状態で前記筒状頸部を通じて前記収容部内に延びている軸部と、前記軸部の先端部に設けられ前記収容部内に収容される前記化粧料に浸漬される塗布体とを備えた前記蓋部材と、を有する化粧品容器であって、前記しごき部材は、前記筒状頸部の内面に当接する筒状部と、前記筒状部の外周面の上部に前記筒状頸部の開口端と係合可能に鍔状に突出形成されたフランジと、を有し、前記しごき部材の前記筒状部の外周面に、前記フランジの接続部分が最小径となるように前記フランジに向けて一定に漸次縮径するテーパ面で構成された縮径部を備えることにより、前記筒状頸部の開口端近傍の内面と、前記しごき部材の前記筒状部の外周面との間には空隙を有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の化粧品容器において、前記空隙は、前記しごき部材が弾性変形したときに、前記筒状部が前記空隙を埋めるようにして拡径する方向に膨出することを許容とする領域であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の化粧品容器において、前記しごき部材の前記縮径部は、前記筒状部の周方向にわたり環状に形成されていることにより、前記空隙が環状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の化粧品容器は、前記しごき部材が弾性変形したときに、前記フランジが拡径する方向に膨出することを許容する領域を更に有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の化粧品容器において、前記筒状頸部の内面は、前記筒状頸部の前記開口端近傍が拡径する拡径部を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のしごき部材は、化粧料を収容する収容部と前記収容部の端部に設けられた筒状頸部とを備えた容器本体と、前記筒状頸部の外側に着脱可能に装着される蓋部材であり、前記蓋部材が前記筒状頸部に装着された状態で前記筒状頸部を通じて前記収容部内に延びている軸部及び前記軸部の先端部に設けられ前記収容部内に収容される前記化粧料に浸漬される塗布体を備えた前記蓋部材と、を有する化粧品容器の前記筒状頸部の内側に装着される弾性を有するしごき部材であって、前記しごき部材は、前記筒状頸部の内面に当接する筒状部と、前記筒状部の外周面の上部に前記筒状頸部の開口端と係合可能に鍔状に突出形成されたフランジと、を有し、前記しごき部材の前記筒状部の外周面には、前記筒状頸部の開口端近傍の内面と、前記しごき部材の前記筒状部の外周面との間に空隙を形成するための、前記フランジの接続部分近傍が縮径する縮径部を備え、前記縮径部は、前記フランジの接続部分が最小径となるように前記フランジに向けて一定に漸次縮径するテーパ面で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、容器本体からしごき部材が外れにくい化粧品容器及び当該化粧品容器用のしごき部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る化粧品容器を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るしごき部材を説明する図であり、(a)は、しごき部材の片側断面図、(b)は、しごき部材の平面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る化粧品容器の分解図であり、(a)は、本体ユニットの分解断面図、(b)は、塗布ユニットの分解断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る化粧品容器を説明する図であり、(a)は、しごき部材が弾性変形する前の化粧品容器の一部拡大断面図、(b)は、しごき部材が弾性変形した後の化粧品容器の一部拡大断面図である。
【
図6】比較例(従来技術)に係る化粧品容器を説明する図であり、(a)は、閉栓開始時の一部拡大断面図、(b)は、閉栓完了直前の一部拡大断面図である。
【
図7】本発明の効果を確認するための実験の結果を示す表である。
【
図8】本発明の変形例を説明する図であり、(a)は、変形例1に係る化粧品容器の一部拡大断面図、(b)は、変形例2に係る化粧品容器の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
以下、本発明の実施形態に係る化粧品容器、及び、これに用いるしごき部材について、図面を参照して説明する。
【0017】
[化粧品容器及びしごき部材]
図1~
図4を参照して、本実施形態に係る化粧品容器1及びしごき部材3について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る化粧品容器を模式的に示す断面図、
図2は、
図1に示す化粧品容器の一部拡大図、
図3は、本発明の実施形態に係るしごき部材を説明する図であり、(a)は、しごき部材の片側断面図、(b)は、しごき部材の平面図、
図4は、本発明の実施形態に係る化粧品容器の分解図であり、(a)は、本体ユニットの分解断面図、(b)は、塗布ユニットの分解断面図である。
【0018】
本実施形態に係る化粧品容器1は、
図1に示すように、マスカラなどの化粧料を収容する化粧品容器であって、化粧料を収容する容器本体2と、しごき部材3と、容器本体2に対して装着される蓋部材4と、軸部5と、ワイパ部材6と、塗布体7と、を備える。
【0019】
図1及び
図4(a)に示すように、容器本体2は、細長い有底円筒形状を有し、内部に化粧料を収容する収容部21と、収容部21の一端部に設けられた筒状頸部22と、を備える。筒状頸部22には、蓋部材4が着脱可能に装着される。
【0020】
容器本体2は、硬質の樹脂材料(第1樹脂材料)で成形され、一例として、ブロー成形によって成形される。硬質材料としては、一例として、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ナイロンなどの熱可塑性樹脂やガラスなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
収容部21には化粧料、一例として、マスカラなどの粘性のある液状化粧料が収容される。ここで使用する化粧料は、揮発性成分や被膜形成成分を含み、粘性の高い液体である。
【0022】
図1及び
図4(a)に示すように、筒状頸部22は、収容部21に対して段差部24を介して縮径した円筒状形状を有している。筒状頸部22の外周面22aは、蓋部材4を装着するためのねじ部23を備えている。筒状頸部22の内側には、化粧料が揮発することを抑制する中栓となるしごき部材3が嵌合される。
【0023】
図1及び
図4(b)に示すように、蓋部材4は、筒状頸部22に装着される。蓋部材4は、有天筒状形状を有しており、内周壁42には、筒状頸部22のねじ部23に対して螺合されるねじ溝43を備えている。また、蓋部材4は、その内部空間から延出する軸部5と、軸部5の先端部に設けられた塗布体7と、を備える。軸部5の基端部51は、蓋部材4の内周壁42や天面41に固定される。
【0024】
蓋部材4は、硬質の樹脂材料(第1樹脂材料)で成形され、一例として、ブロー成形によって成形される。硬質材料としては、一例として、PE、PP、PET、ナイロンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0025】
図1及び
図4(b)に示すように、塗布体7は、収容部21内の化粧料に浸漬され化粧料を付着させることができるように構成されている。塗布体7は、芯材71と、その周囲に設けられた塗布部72と、を備える。塗布部72は、筆、スポンジ、ブラシ、チップなどのように化粧料を付着できる機能を備えている。
【0026】
軸部5及び塗布部72を合わせた長さは、一例として、蓋部材4が筒状頸部22に装着されたとき、塗布部72の先端部が収容部21の内底面に近接する程度とされる。蓋部材4が筒状頸部22に装着された状態では、軸部5は筒状頸部22を通じて収容部21内に延びて進入していると共に、塗布部72は収容部21内の化粧料に浸漬される。
【0027】
軸部5は、硬質の樹脂材料(第1樹脂材料)で成形されている。硬質材料としては、一例として、PE、PP、PET、ナイロンなどの熱可塑性樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
図1及び
図4(b)に示すように、軸部5は、ワイパ部材6を固定するための係合部53が形成される。ワイパ部材6は、筒状部61と、筒状部61の下端側から暫時拡径される傾斜面で形成されたワイパ部62と、を備える。ワイパ部62の外径は、しごき部材3の筒状部31の内径以下に設定される。これにより、塗布体7が容器本体2内に挿入されて、蓋部材4が筒状頸部22に装着される時に、ワイパ部62は、しごき部材3の筒状部31の内周面31dに付着した化粧料を掻き取り、掻き取った化粧料を収容部21内に押し戻すことができる。
【0029】
図3に示すように、容器本体2の筒状頸部22の内側に嵌合されるしごき部材3は、筒状頸部22の内面22bに当接する外径を有する円筒形状を有した筒状部31と、フランジ32と、隆起部33と、筒状部31の内周面31dから突出するしごき片35と、を備えた成形体である。
【0030】
しごき部材3は、軟質の樹脂材料(第2樹脂材料)によって形成されている。軟質材料としては、一例として、NBR(ニトリルゴム)、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性エラストマーなどのエラストマー、軟質PE、軟質PP、シリコンゴム、EVA樹脂(エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂)などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
筒状部31は、筒状頸部22の開口端25側に配置される上端部31aと、上端部31aとは反対側に位置する下端部31bと、を備える。上端部31aと下端部31bとの間の長さは、筒状頸部22より長く、下端部31bは、筒状頸部22の下部に位置する段差部24よりも収容部21の底面方向に突出するように設定されている。
【0032】
筒状部31の上端部31aは、鍔状に突出形成されたフランジ32を備える。フランジ32は、筒状頸部22の先端部である開口端25の内径よりも大きい外径を備える。フランジ32は、筒状頸部22の開口端25に係合し、しごき部材3が筒状頸部22に嵌合された状態から収容部21内に脱落することを防ぐ。フランジ32の外径は、筒状頸部22の外径以下に設定されている。フランジ32の外表面は、他の部材によって覆われるのではなく、蓋部材4が筒状頸部22に装着されていない状態では露出する部分となる。
【0033】
蓋部材4の天面41と対向するフランジ32の頂面は、蓋部材2及び/又は軸部5と密着して容器本体2内を密閉するためのシール面32aである。シール面32aは、フランジ32の外周側から筒状部31の内周面31d側に向かって漸次縮径する緩やかな傾斜面として形成されている。これにより、フランジ32は、その内側から外周側に向かって漸次肉厚になる構成となっている。
【0034】
内周面31dの上端部31a側には、下方から上端に向けて漸次拡径する傾斜面31a1を備え、傾斜面31a1は、塗布体7を筒状部31内に挿入し易くしている。
【0035】
筒状部31の外周面31cには、上端部31aと下端部31bとの間であって下端部31bに近い位置に隆起部33を備える。隆起部33は、筒状部31の周方向に環状に設けられている。隆起部33が設けられる位置は、筒状部31が筒状頸部22に嵌合されたとき、収容部21と筒状頸部22との間に存する段差部24に対応する位置である。隆起部33は、段差部24に係合することによって、しごき部材3が筒状頸部22から上方に引き抜かれにくくする。
【0036】
筒状部31において、隆起部33と下端部31bとの間は、しごき部材3を筒状頸部22内に挿入し易くするための挿入案内部として、先端に向かって縮径する傾斜面31b1を備えている。
【0037】
筒状部31は、上端部31aと下端部31bとの間に、筒状部31の内周面31dより突出するしごき片35を備える。
【0038】
図3(b)に示すように、しごき片35は、筒状部31の周方向に連続した環状形状を有しており、しごき片35の先端部で囲まれた中心部に、円形の貫通孔部36を構成している。また、しごき片35は、外周部側の基端部から中心部側の先端部に向かって低くなる漏斗形状を有している。貫通孔部36は、貫通孔部36を塗布体7が通過する際にしごき片35の先端部が少なくとも塗布部72に接触する大きさを有している。これにより、しごき片35は、貫通孔部36を塗布体7が通過する際、塗布部72に余分に付着した化粧料をしごくことができる。一例として、貫通孔部36は、貫通孔部36を塗布部72が通過する際にしごき片35の先端部が軸部5の外周面に接触する大きさを有している。これにより、しごき片35は、塗布部72だけでなく軸部5の外周面に付着した化粧料をも掻き落とすことができる。また、
図3(b)に示すように、しごき量を調整するためのスリット35aが形成されてもよい。但し、しごき部材3において、スリット35aを設けることやその数は任意である。
【0039】
図3に示すように、しごき部材3の筒状部31の外周面31cは、フランジ32の接続部分近傍が縮径する縮径部34を備える。本実施形態に係るしごき部材3の縮径部34は、フランジ32に向けて漸次縮径するテーパ面で構成する例を示しているが、段差などで構成してもよい。しごき部材3に縮径部34を設けることにより、
図2に示すように、しごき部材3を容器本体2の筒状頸部22の内側に嵌合された状態において、しごき部材3の筒状部31の縮径部34と、筒状頸部22の開口端25近傍の内面22bとの間には空隙Aが形成される。しごき部材3は、軟質の樹脂材料で形成されて全体が弾性を有するため、後述のようにしごき部材3の筒状部31内側から力が加えられた時には、縮径部34は、空隙Aに向かって弾性変形することが可能である。縮径部34は、筒状部31の周方向にわたり環状に形成されることにより、空隙Aも環状に形成される。
【0040】
また、
図2に示すように、縮径部34が前述のような弾性変形に伴ってフランジ32が矢印方向に膨出することを許容するスペースとして空隙Bが設定されている。本実施形態における化粧品容器1においては、空隙Bは、フランジ32の外周側(先端側)と蓋部材4の内周壁42との間に設けられている。フランジ32が
図2の矢印方向に膨出することを許容する構成としたので、フランジ32が筒状頸部22の開口端25に対してより強固に係合でき、しごき部材3が容器本体2内に引きずり込まれて脱落してしまうことを防止することが可能となる。
【0041】
[化粧品容器の製造方法]
次に、化粧品容器1の製造方法を
図4に基づいて説明する。
【0042】
図4(a)に示すように、容器本体2としごき部材3とからなる本体ユニットを形成する。具体的には、しごき部材3は、フランジ32が筒状頸部22の開口端25に係合されるまで筒状頸部22内に圧入される。そして、隆起部33が容器本体2の段差部24に係合される。これにより、しごき部材3は、フランジ32が筒状頸部22の開口端25に係合することで、収容部21内に脱落しにくくなり、また、隆起部33が段差部24に係合することで、上方に引き抜かれにくくなる。
【0043】
なお、この後、容器本体21には、筒状頸部22の開口端25からしごき部材3、特に貫通孔部36(
図3(b)参照)の大きさや形状などに合わせた充填ノズルが挿入され、化粧料が充填される。容器本体2には、化粧料を充填した後にしごき部材3を装着するようにしてもよい。
【0044】
次に、
図4(b)に示すように、蓋部材4と軸部5とワイパ部材6と塗布体7とからなる塗布ユニットを形成する。具体的には、ワイパ部材6は、係合部53に係合されるまで軸部5の先端部52側から軸部5に挿通される。そして、ワイパ部材6の筒状部61が軸部5の係合部53に係合される。その後、塗布体7の芯材71は、軸部5の係止穴52aに挿入されて、軸部5の先端部52に固定される。更に、軸部5の基端部51は、蓋部材4内に挿入され、蓋部材4の内周壁42や天面41に固定される。
【0045】
最後に、塗布ユニットが本体ユニットに装着される。具体的には、塗布体7が筒状頸部22から収容部21内に挿入され、次いで、蓋部材4が筒状頸部22に締め付けられることにより、蓋部材4が容器本体2に装着される。
【0046】
[化粧品容器の使用方法]
次に、化粧品容器1の使用方法を
図5及び
図6に基づいて説明する。
図5は、本発明の実施形態に係る化粧品容器を説明する図であり、(a)は、しごき部材が弾性変形する前の化粧品容器の一部拡大断面図、(b)は、しごき部材が弾性変形した後の化粧品容器の一部拡大断面図、
図6は、比較例(従来技術)に係る化粧品容器を説明する図であり、(a)は、閉栓開始時の一部拡大断面図、(b)は、閉栓完了直前の一部拡大断面図である。なお、以下の説明において前述と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0047】
化粧品容器1の使用時には、容器本体2から蓋部材4が取り外され、塗布体7が筒状頸部22から引き出される。この際、塗布部72は、しごき片35で囲まれた貫通孔部36を通過し、塗布部72に付着した余分な化粧料が掻き落とされる。
【0048】
使用後には、塗布体7は容器本体2内に挿入されて、蓋部材4が筒状頸部22に装着される。この時、
図2に示すように、しごき部材3のフランジ32の頂面の全周が軸部5に押圧されることにより、傾斜面でなるシール面32aが平坦に弾性変形し、シール面32aの全周が軸部5に密着される。また、しごき部材3の外周面31cが筒状頸部22の内面22bに密着される。これらによって、しごき部材3は中栓としても機能して、化粧料が揮発することを抑制する。
【0049】
このように、化粧品容器1のしごき部材3は、使用の都度、塗布体7が通過し、余分な液状化粧料をしごくため、しごき部材3の内面に液状化粧料が留まりやすい。特に、マスカラのように被膜を形成する粘性のある液状化粧料は、被膜形成成分や揮発性成分を含有するものが多いため、塗布体7及び軸部5が容器本体2に対して引き抜かれる又は押し込まれる動作が繰り返されるうちに、液状化粧料は蓋部材4や軸部5などへの付着と固化を繰り返して、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、特にワイパ部材6周囲に、固化した化粧料Cが堆積してしまうことがある。
【0050】
この点、従来の化粧品容器100のしごき部材103には、本実施形態に係るしごき部材3のように縮径部34を設けておらず、そのため、しごき部材3と筒状頸部22との間に空隙Aは設けられていなかった。
図6(a)に示すように、蓋部材4や軸部5などに固化した化粧料Cが堆積した状態で、矢印方向に蓋部材4が筒状頸部22に装着されていくと、
図6(b)に示すように、固化した化粧料Cがしごき部材103の筒状部131内面に当接する。更に、閉栓動作が進められると、固化した化粧料Cがしごき部材103の筒状部131内面を押圧しながら、軸部5が容器本体2内を進んでいく。このとき、全体が弾性を有するしごき部材103には
図6(b)に示す矢印方向に応力が生じ、フランジ132と筒状頸部22との係合が解除されて、閉栓動作に伴い、しごき部材103が容器本体2内に引きずり込まれて脱落してしまうことが考えられる。
【0051】
これに対して、本実施形態による化粧品容器1は、空隙A及び空隙Bを有している(
図2参照)。空隙Aは、筒状頸部22の開口端25近傍の内面22bと、しごき部材3の筒状部31の外周面31cとの間の空隙である。この空隙Aは、しごき部材3が弾性変形したときに、筒状部31(特に縮径部34)が拡径する方向に膨出することを許容する領域である。一方、空隙Bは、しごき部材3が弾性変形したときに、フランジ32が拡径する方向に膨出することを許容する領域である。
【0052】
図5(a)に示すように、蓋部材4や軸部5などに固化した化粧料Cが堆積した状態で、矢印方向に蓋部材4が筒状頸部22に装着されていくと、
図5(b)に示すように、固化した化粧料Cがしごき部材3の内周面31dを押圧する。このとき、しごき部材3が弾性変形することにより、筒状部31(特に縮径部34)は、空隙Aを埋めるようにして拡径する方向に膨出する。これと同時に、フランジ32は、空隙B内(
図5(b)の矢印方向)に向かって、拡径する方向に膨出する。
【0053】
これにより、閉栓動作によって、フランジ32が筒状頸部22の開口端25に対してより強固に係合されるようになるので、しごき部材3が容器本体2内に引きずり込まれて脱落してしまうことを防止することが可能となる。
【0054】
また、しごき部材3のフランジ32の頂面は、上端から下方に向けて漸次縮径する緩やかなシール面32aが設けられている。すなわち、フランジ32は、その内側から外周側にむかって僅かに漸次肉厚になっていることにより、フランジ32に上部方向から応力がかかると、フランジ32の空隙B内(
図5(b)の矢印方向)への膨出が促される。これにより、フランジ32が筒状頸部22の開口端25に対してより強固に係合されるので、しごき部材3の脱落を一層防止することができる。
【0055】
本願発明者は、本発明の効果を確認するために、本発明に係る化粧品容器1(
図5参照)と、空隙Aを有しない比較例(
図6参照)である化粧品容器100との対比実験を行った。
【0056】
実験においては、本発明に係る化粧品容器1及び比較例である化粧品容器100共に、化粧料を蓋部材4や軸部5などへの付着と固化を繰り返して、
図5(a)及び
図6(a)に示すように、特にワイパ部材6の周囲に、固化した化粧料Cを堆積させたものを用いた。このように準備された本発明に係る化粧品容器1及び比較例である化粧品容器100のそれぞれについて、開栓及び閉栓を最大10回繰り返し、各回毎にしごき部材3、103の筒状頸部22に対する嵌合状態を観察した。本発明に係る化粧品容器1及び比較例である化粧品容器100それぞれのサンプル数10点についての確認結果を、
図7に示す。
【0057】
なお、
図7の表中、「脱落」とは、しごき部材3、103が筒状頸部22から外れて容器本体2内に完全に入り込んで脱落した状況を示す。また、「変形」とは、しごき部材3、103が容器本体2内には完全に入り込まないものの、初期状態に比べてしごき部材3、103が変形した状況を示す。また、「変化なし」とは、しごき部材3、103が初期状態と比べて変化がなかった状況を示す。
【0058】
図7に示すように、比較例である化粧品容器100において、開閉動作10回に耐えて変化がなかったサンプルは10点中2点であり、サンプル7点は、開閉動作10回に至るまでに脱落が確認され、サンプル1点は、開閉動作10回目で変形が確認された。一方、本発明に係る化粧品容器1において、開閉動作10回に耐えて変化がなかったサンプルは10点中6点であり、サンプル3点は開閉動作10回目で変形が確認され、サンプル1点は開閉動作7回目で脱落が確認された。
【0059】
このような結果より、本発明による化粧品容器1によれば、空隙Aが設けられたことにより、しごき部材3の筒状頸部22からの外れ、容器本体2内への脱落の頻度が大幅に軽減されることを確認することができた。
【0060】
以下、上記実施形態の変形例について、
図8を参照して説明する。
図8は、本発明の変形例を説明する図であり、(a)は、変形例1に係る化粧品容器の一部拡大断面図、(b)は、変形例2に係る化粧品容器の一部拡大断面図である。なお、以下の説明において前述と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を適宜省略する。
【0061】
[変形例1]
上記実施形態においては、しごき部材3に縮径部34を設けて、空隙Aを形成する化粧品容器1を説明した。本発明はこれに限られず、しごき部材3に縮径部34を設けることに代えて、
図8(a)に示すように、筒状頸部22の内面22bに、筒状頸部22の開口端25近傍が拡径する拡径部22b1を設けることにより、空隙Aを形成してもよい。
【0062】
[変形例2]
また、上記実施形態に係るしごき部材3に縮径部34を設けることに加えて、
図8(b)に示すように、筒状頸部22の内面22bに、筒状頸部22の開口端25近傍が拡径する拡径部22b1を設け、縮径部34及び拡径部22b1によって空隙Aを形成してもよい。
【0063】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的または本発明の思想の範囲内において改良または変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 化粧品容器
2 容器本体
3 しごき部材
4 蓋部材
5 軸部
6 ワイパ部材
7 塗布体
21 収容部
22 筒状頸部
22a 外周面
22b 内面
22b1 拡径部
23 ねじ部
24 段差部
25 開口端
31 筒状部
31a 上端部
31a1 傾斜面
31b 下端部
31b1 傾斜面
31c 外周面
31d 内周面
32 フランジ
32a シール面
33 隆起部
34 縮径部
35 しごき片
35a スリット
36 貫通孔部
41 天面
42 内周壁
43 ねじ溝
51 基端部
52 先端部
52a 係止穴
53 係合部
61 筒状部
62 ワイパ部
71 芯材
72 塗布部
100 化粧品容器(比較例・従来品)
103 しごき部材
A 空隙
B 空隙
C (固化した)化粧料