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  • 特開-基礎設置向けの湯水抜栓 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005294
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】基礎設置向けの湯水抜栓
(51)【国際特許分類】
   E03B 7/10 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
E03B7/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105404
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000143008
【氏名又は名称】株式会社光合金製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000316
【氏名又は名称】弁理士法人ピー・エス・ディ
(72)【発明者】
【氏名】山田 正宏
(57)【要約】
【課題】 設置空間に制約のある設置環境において、施工性を向上させ、床下配管の自由度の増大を可能にするとともに、設置後の保守点検の作業性を考慮した湯水抜栓を提供する。
【解決手段】 本発明に係る湯水抜栓は、長さ方向が水平になるように設置される弁箱を備える。弁箱の内部には、その長さ方向に沿って直線移動可能なピストンが収容されている。弁箱の外周には、水側継手と湯側継手とが配置される。湯水抜栓は、さらにピストンを移動させる操作部を備える。水側継手は、上流側の給水配管からの水が流入する流入継手と、下流側の給水配管への水が流出する流出継手と、下流側の給水配管内の水を排出する排水継手とを含む。湯側継手は、給湯配管からの湯が流入する受湯継手と、給湯配管内の湯を排出する排湯継手とを含む。これらの継手は、弁箱の長さ方向に沿って直列に配置され、それぞれが独立して弁箱の円周方向に回転自在である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水配管内の水及び給湯配管内の湯を1回の操作で同時に管外に排出させることができる、基礎設置向けの湯水抜栓であって、
長さ方向が水平になるように設置される弁箱と、
前記長さ方向に沿って前記弁箱の内部を直線移動可能なピストンと、
前記弁箱の外周に配置される水側継手及び湯側継手と、
前記ピストンを移動させる操作部と、
を備え、
前記水側継手は、上流側の給水配管からの水が流入する流入継手と、下流側の給水配管への水が流出する流出継手と、下流側の給水配管内の水を排出する排水継手とを含み、
前記湯側継手は、給湯配管からの湯が流入する受湯継手と、給湯配管内の湯を排出する排湯継手とを含み、
前記流入継手、前記流出継手、前記排水継手、前記受湯継手及び前記排湯継手は、前記長さ方向に沿って直列に配置され、それぞれが独立して前記弁箱の円周方向に回転自在である、
湯水抜栓。
【請求項2】
前記操作部は、前記ピストンを移動させるための力を入力する入力部と、入力された力を前記ピストンに伝達する伝達機構とを有し、
前記入力部は、前記ピストンの移動方向に対して側方に位置するように設けられている、
請求項1に記載の湯水抜栓。
【請求項3】
前記操作部は、
回転軸周りの回転力を発生させるハンドルと、
前記ハンドルの回転に伴って前記ハンドルの回転軸と同軸の回転軸の周りに回転するハンドル側傘歯車と、
前記ハンドル側傘歯車を支持するブラケットと、
前記ハンドル側傘歯車と噛み合うように配置され、前記ハンドル側傘歯車の回転に伴って前記ハンドル側傘歯車の回転軸と直交する回転軸の周りに回転するピストン側傘歯車と、
前記ピストン及び前記ピストン側傘歯車の両方に連結され、前記ピストン側傘歯車の回転に伴って前記ピストンの軸線方向に直線移動しながら軸線周りに回転するスピンドルと
を有する、請求項2に記載の湯水抜栓。
【請求項4】
前記操作部と前記弁箱とを連結し、前記スピンドルが貫通する軸孔を有するグランドをさらに備え、
前記スピンドルは、前記ピストンに連結された端部とは反対側の端部が前記ブラケットに支持されるとともに、前記ブラケットに支持された端部と前記ピストンに連結された端部との間において前記軸孔でさらに支持されている、
請求項3に記載の湯水抜栓。
【請求項5】
前記弁箱には、前記流入継手、前記流出継手、前記排水継手、前記受湯継手及び前記排湯継手の各々に対応する複数の孔が円周方向に沿って均等な間隔で設けられている、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の湯水抜栓。
【請求項6】
前記弁箱を水平に設置するための固定具の装着部をさらに備える、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の湯水抜栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水配管内の水及び給湯配管内の湯を1回の操作で同時に管外に排出させることができる湯水抜栓に関し、特に、地中に埋設することなく建物の基礎に設置するのに適した湯水抜栓に関する。
【背景技術】
【0002】
寒冷地においては、一般に、冬期間の水道凍結防止を目的として、不凍栓が建物の水道配管の途中に設置される。不凍栓には、用途、形状又は構造に応じて、不凍水抜栓、不凍水栓柱など4種類がある。これらのうち、不凍水抜栓には、給水配管及び給湯配管の配管内の水及び湯を1回の操作で同時に管外に排出できる湯水抜栓があり、その一例が特許文献1に開示される。
【0003】
特許文献1の湯水抜栓は、主に戸建住宅において地中に埋設して設置することを前提として考えられたものであり、地中に埋設される弁箱13と、該弁箱13とパイプ28で連結された地上部とを有する。弁箱13は、給水配管に接続される流入口14及び流出口15並びに排水口16及び排湯口17を有する。地上部は、給湯配管に接続される受湯口32を有する。弁箱13内にはピストン26が収容され、ロッド42を介して地上部の受湯桿41に連結されている。
【0004】
この湯水抜栓においては、ハンドル操作によって通水状態にされたときは、上流側の給水配管の水が流入口14から流出口15に向かって流れ、末端器具に供給される。このときには受湯口32が受湯桿41で遮断されているため、受湯口32に接続された給湯配管内の湯は排水されない。ハンドル操作によって排水状態にされたときは、ピストン26が移動して、流入口14と流出口15との間の流路が遮断され、流出口15と排水口16との間が連通し、湯水抜栓より下流側の給水配管内の水が排水口16から排水される。同時に、ロッド42を介してピストン26に連結された受湯桿41も移動して、受湯口32と排湯口17との間が連通し、給湯配管内の湯が排湯口17から排水される。このように、給水配管及び給湯配管の内部の水及び湯を管外に排出することで、水道配管の凍結を防止することが可能となる。
【0005】
本出願人は、非特許文献1に開示される湯水抜栓を製造、販売している。この湯水抜栓は、主にマンション等の集合住宅において地中に埋設しないで設置することも可能なものであり、玄関脇のパイプシャフト内に湯水抜栓を施工して直接外気に晒されないようにすることが一般的である。給水配管に接続される流入口及び流出口を弁箱の下部側面に同軸上に有し、流入口及び流出口の下に、下流側の給水配管内の水を管外に排出するための下向きの排水口を有する。流入口、流出口及び排水口は、各口の向きが固定されている。弁箱上部には、給湯配管に接続される流入口(受湯口)と、給湯配管内の湯を管外に排出するための排水口(排湯口)とが設けられている。受湯口及び排湯口は、それぞれが独立して弁箱の円周方向に回転自在であり、側方のどの方向に向けることもできる。弁箱内にはピストンが収容され、ピストンに受湯桿が直接に連結されている。
【0006】
この湯水抜栓は、特許文献1と同様に、ハンドル操作によって通水状態にされたときは、上流側の給水配管の水が流入口から流出口に向かって流れ、下流側の給水配管を介して末端器具に供給される。このとき受湯口に接続された給湯配管内の湯は、受湯桿で遮断されているために排水されない。ハンドル操作によって排水状態にされたときは、ピストンが移動して、流入口と流出口との間の流路が遮断され、流出口と排水口との間が連通し、下流側の給水配管内の水が排水口から排水される。同時に、ピストンに直接連結された受湯桿も移動して、受湯口と排湯口との間が連通し、給湯配管内の湯が受湯口を介して排湯口から排水される。この湯水抜栓は、非特許文献1に示されるように、1回の操作で同時に両系統の水道配管内の水及び湯を管外に排出することができる。
【0007】
非特許文献1の湯水抜栓は、特許文献1の湯水抜栓とは異なり、ピストンと受湯桿とがロッドを介することなく直接連結されており、さらに流入口及び流出口が設けられた部材と受湯口が設けられた部材とがパイプを介することなく直接連結されている。したがって、構造上、非特許文献1の湯水抜栓は、特許文献1の湯水抜栓より全長を短くすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3620519号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】株式会社光合金製作所技術資料 湯水抜きドレンバルブ WDL-20mm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
最近の戸建住宅では、床下の地面全体をコンクリートで一体化したベタ基礎に代表される建築工法の普及が進んでいる。この工法で建築された建物に特許文献1に示される湯水抜栓を設置する場合には、湯水抜栓の弁箱13を地中に埋設し、弁箱13の上端から延長されるパイプ28を地上部に配置する必要があり、そのためにコンクリートで一体化した基礎地面の一部にパイプ28より上方の構成部材を挿通する孔を設けなければならない。このようにコンクリートの基礎地面に孔を設けることによって、作業工数が増える問題がある。また、基礎地面に孔を設けることによって地中の湿気やシロアリが孔から侵入するおそれがあり、これらの影響による建築部材の劣化に対応するための作業工数も増える問題がある。さらに、湯水抜栓の設置後に保守点検によって湯水抜栓自体の交換が必要な場合には、地中に埋設される弁箱13を掘り起こす作業を行わなければならず、交換のための穿孔作業がコンクリートで一体化した基礎地面に発生する問題がある。
【0011】
コンクリートの基礎地面に孔を設けることなく湯水抜栓を設置するために、非特許文献1の湯水抜栓をコンクリートで一体化した基礎地面に直接、設置する方法も考えられる。ところが、非特許文献1の湯水抜栓は、マンションなどの集合住宅においてパイプシャフト内に施工されることを前提とするものであり、パイプシャフト内の給水配管は、上流側から下流側にかけて一直線上に施工されることが一般的である。したがって、この湯水抜栓は、給水配管に接続される流入口、流出口及び排水口の向きを各々自在に変えることができるようにはなっていない。そのため、流出口から末端器具までの給水配管内の水を、湯水抜栓を介して自然落下によって管外に排出させるためには、流出口を水平より高い位置にしなければならない。しかし、流入口と流出口との相対的な位置関係を変えることができないため、流出口を水平より高い位置にした場合には流入口を水平より低い位置にせざるを得ず、この位置以外では給水配管内の水を自然落下によって排出させることはできない。
【0012】
以上のとおり、特許文献1の湯水抜栓は、床下の地面全体をコンクリートで一体化した建築工法で用いる場合には、作業工数の観点から問題がある。また、非特許文献1の湯水抜栓は、給水配管に接続される流入口及び流出口も排水口も向きが固定されているため、仮にコンクリートで一体化した基礎地面に水平に用いたとしても給水配管からの給水や給水配管内の排水を適切に行うことができず、さらに、床下空間における配管の自由度が低くなり、配管構成が制約される。
【0013】
したがって、本発明は、設置空間に制約のある設置環境において、施工性を向上させ、床下配管の自由度の増大を可能にするとともに、設置後の保守点検の作業性を考慮した湯水抜栓を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の課題は、弁箱を建物の床下の基礎空間に水平に設置し、弁箱の外周に配置される継手が弁箱の周囲において自在に回転できるように湯水抜栓を構成することによって、解決することができる。なお、本明細書において基礎というときには、建物の土台となる基礎構造体そのものだけでなく、基礎構造体に囲まれた基礎空間全体も含むものとし、また、基礎空間を囲む平面は、基礎地面、基礎構造体の壁面(基礎壁面という)、及び床の基礎側の面(床下面という)のいずれも含むものとする。
【0015】
本発明は、給水配管内の水及び給湯配管内の湯を1回の操作で同時に管外に排出させることができる、基礎設置向けの湯水抜栓を提供する。本発明に係る湯水抜栓は、長さ方向が水平になるように設置される弁箱を備える。弁箱の内部には、その長さ方向に沿って直線移動可能なピストンが収容されている。弁箱の外周には、水側継手と湯側継手とが配置される。湯水抜栓は、さらにピストンを移動させる操作部を備える。
【0016】
水側継手は、上流側の給水配管からの水が流入する流入継手と、下流側の給水配管への水が流出する流出継手と、下流側の給水配管内の水を排出する排水継手とを含む。湯側継手は、給湯配管からの湯が流入する受湯継手と、給湯配管内の湯を排出する排湯継手とを含む。これらの継手は、弁箱の長さ方向に沿って直列に配置され、それぞれが独立して弁箱の円周方向に回転自在である。
【0017】
一実施形態においては、操作部は、ピストンを移動させるための力を入力する入力部と、入力された力をピストンに伝達する伝達機構とを有する。入力部は、ピストンの移動方向に対して側方に位置するように設けられていることが好ましい。
【0018】
一実施形態においては、操作部は、回転軸周りの回転力を発生させるハンドルを有する。操作部は、さらに、ハンドルの回転に伴ってハンドルの回転軸と同軸の回転軸の周りに回転するハンドル側傘歯車と、ハンドル側傘歯車を支持するブラケットと、ハンドル側傘歯車と噛み合うように配置され、ハンドル側傘歯車の回転に伴ってハンドル側傘歯車の回転軸と直交する回転軸の周りに回転するピストン側傘歯車と、ピストン及びピストン側傘歯車の両方に連結され、ピストン側傘歯車の回転に伴ってピストンの軸線方向に直線移動しながら軸線周りに回転するスピンドルとを有する。
【0019】
一実施形態においては、湯水抜栓は、操作部と弁箱とを連結し、スピンドルが貫通する軸孔を有するグランドをさらに備える。スピンドルは、ピストンに連結された端部とは反対側の端部がブラケットに支持されるとともに、ブラケットに支持された端部とピストンに連結された端部との間において軸孔でさらに支持されていることが好ましい。
【0020】
一実施形態においては、弁箱には、流入継手、流出継手、排水継手、受湯継手及び排湯継手の各々に対応する複数の孔が円周方向に沿って均等な間隔で設けられている。一実施形態においては、湯水抜栓は、弁箱を水平に設置するための固定具の装着部をさらに備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、床下の地面全体をコンクリートで一体化した建築工法においても、作業工数の増加をもたらすことなく、床下空間における配管の自由度が高く配管構成の制約が少ない湯水抜栓を提供することができる。さらに、本発明によれば、設置後に製品の交換が必要な場合でも保守点検作業を容易に行うことが可能な湯水抜栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態による湯水抜栓の通水状態の縦断面図を示す。
図2】本発明の一実施形態による湯水抜栓の水抜き状態の縦断面図を示す。
図3】本発明の一実施形態による湯水抜栓を戸建住宅の基礎地面に設置した例を示し、(a)は通常の設置状態であり、(b)は基礎壁面の近傍における設置状態である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態による湯水抜栓1の通水状態の縦断面図を示し、図2は、湯水抜栓1の水抜き状態の縦断面図を示す。最初に、図1を用いて、湯水抜栓1の構造を説明する。
【0024】
[湯水抜栓1の構造]
湯水抜栓1は、建物の基礎地面上に長さ方向が水平になるように設置される中空の弁箱20と、弁箱20の長さ方向に沿って弁箱20の内部を移動するピストン60とを備える。弁箱20には、その壁を貫通する複数の貫通孔21d、21e、22d、22e、及び22fが設けられている。弁箱20の外周には、貫通孔21d、21e、22d、22e、及び22fのそれぞれに対応する位置において、水側継手30(31、32、33)及び湯側継手40(41、42)が、弁箱20の周方向に回転自在に取り付けられている。水側継手30は、給水配管からの水が流入する流入継手31と、給水配管への水が流出する流出継手32と、湯水抜栓1より下流側の給水配管内の水を排出する排水継手33とを含み、湯側継手40は、給湯配管からの湯が流入する受湯継手41と、給湯配管内の湯を排出する排湯継手42とを含む。流入継手31、流出継手32、排水継手33、受湯継手41、及び排湯継手42は、それぞれ独立に回転させることができる。
【0025】
弁箱20の一方の端部には、ピストン60を弁箱20の長さ方向に直線移動させるための操作部80が設けられる。なお、本明細書においては、図1に示される各部材の左側を一方の端部といい、右側を他方の端部という。操作部80のハンドル81を回転させることによって、ピストン60を弁箱20の内部で図1の左方向又は右方向に移動させることができる。ハンドル81の回転によって、ピストン60が図1に示される位置、すなわち最も左側に移動した位置にあるときには、湯水抜栓1は通水状態となる。この状態のときには、上流側の給水配管からの水が流入継手31から弁箱20の内部に流れ込み、流れ込んだ水は、流出継手32から下流側の給水配管に流出する。
【0026】
また、ハンドル81の回転によって、ピストン60が図2に示される位置、すなわち最も右側に移動した位置にあるときには、湯水抜栓1は水抜き状態となる。この状態のときには、下流側の給水配管からの水が流出継手32から弁箱20の内部に流れ込み、流れ込んだ水が排水継手33から排出されるとともに、給湯配管からの湯が受湯継手41から弁箱20の内部に流れ込み、流れ込んだ湯は、排湯継手42から排出される。
【0027】
以下、湯水抜栓1の構造を部分毎に詳細に説明する。
(弁箱20)
湯水抜栓1は、内部が中空で円筒形状の弁箱20を備える。弁箱20は、製造の容易性の観点から、円筒形状の2つの部分を組み合わせて構成されることが好ましい。すなわち、弁箱20は、両端が貫通した中空円筒形状の第1弁箱21の他方の端部に設けられた雌ねじ21gと、一方の端部が貫通し他方の端部が閉鎖された中空円筒形状の第2弁箱22の当該一方の端部に設けられた雄ねじ22hとを、螺合によって連結して形成されることが好ましい。別の実施形態において、弁箱20は、2つの部分を組み合わせて構成するのではなく、一体的に形成された1つの部材として構成されたものであってもよい。さらに別の実施形態においては、第1弁箱21と第2弁箱22とは、端部同士を溶接することによって連結してもよい。なお、第1弁箱21の一方の端部には雄ねじ21hが設けられ、雄ねじ21hには、後述されるグランド86の他方の端部に設けられた雌ねじ86cが螺合される。
【0028】
(弁箱20:第1弁箱21)
第1弁箱21の内面には、シリンダ部21a、21b、21cが、第1弁箱21の長さ方向に隣接して形成される。シリンダ部21a、21b、21cは、後述されるように、ピストン60の移動に伴って、ピストン60に設けられたOリング70、71、72が摺動する部分である。シリンダ部21aとシリンダ部21bとの間には、6つの貫通孔21dが、第1弁箱21の周方向に均等な間隔で設けられている。シリンダ部21bとシリンダ部21cとの間には、6つの貫通孔21eが、第1弁箱21の周方向に均等な間隔で設けられている。
【0029】
貫通孔21dは、後述される流入継手31に対応する位置に設けられ、貫通孔21eは、後述される流出継手32に対応する位置に設けられる。通水状態のとき、上流側の給水配管からの水は、6つの貫通孔21dを通って第1弁箱21の内部に流入する。流入した水は、6つの貫通孔21eを通って第1弁箱21から流出する。水抜き状態のとき、下流側の給水配管の水は、6つの貫通孔21eを通って第1弁箱21に流入する。
【0030】
貫通孔21d、21eの数は、給水及び排水に支障がない限り、それぞれ6つに限定されるものではない。また、貫通孔21d及び貫通孔21eの径は、水の流れの抵抗にならない限り、特に限定されるものではない。また、貫通孔21d、21eの孔の形状は、円形に限定されるものではなく、例えば四角形のように円形以外であっても良い。
【0031】
(弁箱20:第2弁箱22)
第2弁箱22の内面には、内壁部22a及びシリンダ部22b、22cが、第2弁箱22の長さ方向に隣接して形成される。シリンダ部22b、22cは、後述されるように、ピストン60の移動に伴って、ピストン60に設けられたOリング73、74が摺動する部分である。内壁部22aとシリンダ部22bとの間には、4つの貫通孔22dが、第2弁箱22の周方向に均等な間隔で設けられている。シリンダ部22bとシリンダ部22cとの間には、4つの貫通孔22eが、第2弁箱22の周方向に均等な間隔で設けられている。シリンダ部22cと第2弁箱22の閉鎖された端部との間には、4つの貫通孔22fが、第2弁箱22の周方向に均等な間隔で設けられている。
【0032】
貫通孔22dは、後述される排水継手33に対応する位置に設けられ、貫通孔22eは、後述される受湯継手41に対応する位置に設けられ、貫通孔22fは、後述される排湯継手42に対応する位置に設けられる。水抜き状態のとき、6つの貫通孔21eを通って第1弁箱21に流入した下流側の給水配管からの水は、第2弁箱22に入り、4つの貫通孔22dを通って第2弁箱22から流出する。また、水抜き状態のとき、給湯配管からの湯は、4つの貫通孔22eを通って第2弁箱22に流入する。流入した湯は、4つの貫通孔22fを通って第2弁箱22から流出する。
【0033】
貫通孔22d、貫通孔22e及び貫通孔22fの数は、排水及び排湯に支障がない限り、それぞれ4つに限定されるものではない。また、貫通孔22d、貫通孔22e及び貫通孔22fの径は、水又は湯の流れの抵抗にならない限り、特に限定されるものではない。また、貫通孔22d、貫通孔22e及び貫通孔22fの孔の形状は、円形に限定されるものではなく、例えば四角形のように円形以外であっても良い。
【0034】
この実施形態において、第2弁箱22の内壁部22a及びシリンダ部22b、22cの内径は、第1弁箱21のシリンダ部21a、21b、21cの内径よりも若干小さく形成されている。これは、それぞれのシリンダ部に流れる水量の違いに起因する。すなわち、第1弁箱21のシリンダ部21a、21b、21cは、湯水抜栓1より上流側から湯水抜栓1を介して室内の末端器具に供給する水を流すために、より多くの水量を確保することが望ましく、一方、第2弁箱22の内壁部22a及びシリンダ部22b、22cは、下流側の給水配管の排水及び給湯配管の排湯を流す程度の水量で良い。ただし、第2弁箱22の内壁部22a及びシリンダ部22b、22cの内径が、第1弁箱21のシリンダ部21a、21b、21cの内径と同じ径に拡大されても問題はない。
【0035】
(水側継手30)
水側継手30は、流入継手31、流出継手32、及び排水継手33を含む。流入継手31は、湯水抜栓1より上流側の給水配管が接続されるように構成されており、第1弁箱21が挿通されるリング部31aと、リング部31aから突出するように設けられた、給水配管からの水が流入する流入口31bとを有する。流出継手32は、室内の末端器具へ水を供給する下流側の給水配管が接続されるように構成されており、第1弁箱21が挿通されるリング部32aと、リング部32aから突出するように設けられた、給水配管に水が流出する流出口32bとを有する。排水継手33は、第2弁箱22が挿通されるリング部33aと、リング部33aから突出するように設けられた、末端器具までの下流側の給水配管内の水を管外に排出する排水口33bとを有する。
【0036】
流入継手31は、第1弁箱21の複数の貫通孔21dの外周において周方向に回転自在に取り付けられている。第1弁箱21の外周にはOリング50、51が装着され、リング部31aがOリング50、51に摺動して回転するようになっているため、第1弁箱21と流入継手31との間の水密性が保持されている。同様に、流出継手32は、第1弁箱21の複数の貫通孔21eの外周において周方向に回転自在に取り付けられ、リング部32aと第1弁箱21とは、第1弁箱21の外周に装着されたOリング52、53によって両部材間の水密性が保持されている。また、排水継手33は、第2弁箱22の貫通孔22dの外周において周方向に回転自在に取り付けられ、リング部33aと第2弁箱22とは、第2弁箱22の外周に装着されたOリング54、55によって両部材間の水密性が保持されている。
【0037】
(湯側継手40)
湯側継手40は、受湯継手41及び排湯継手42を含む。受湯継手41は、室内の給湯設備から末端器具へ湯を供給する給湯配管が分岐して接続されるように構成されており、第2弁箱22が挿通されるリング部41aと、リング部41aから突出するように設けられた、給湯配管からの湯が流入する受湯口41bとを有する。排湯継手42は、第2弁箱22が挿通されるリング部42aと、リング部42aから突出するように設けられた、給湯設備から末端器具までの給湯配管内の湯を管外に排出する排湯口42bとを有する。
【0038】
受湯継手41は、第2弁箱22の複数の貫通孔22eの外周において周方向に回転自在に取り付けられ、リング部41aと第2弁箱22とは、第2弁箱22の外周に装着したOリング56、57によって両部材間の水密性が保持されている。また、排湯継手42は、第2弁箱22の複数の貫通孔22fの外周において周方向に回転自在に取り付けられ、リング部42aと第2弁箱22とは、第2弁箱22の外周に装着したOリング58、59によって両部材間の水密性が保持されている。
【0039】
(水側継手30及び湯側継手40の各継手が独立に回転自在であるメリット)
上述のように、水側継手30に含まれる流入継手31、流出継手32、及び排水継手33は、それぞれ独立に回転自在であり、湯側継手40に含まれる受湯継手41及び排湯継手42もまた、それぞれ独立に回転自在である。このように、各継手が独立に回転自在であることのメリットは、以下のとおりである。すなわち、弁箱の長さ方向が上下方向となるように用いられる非特許文献1に示される湯水抜栓においては、上流側の給水配管からの水が流入する流入口と室内の末端器具へ水を供給する流出口とが、同軸上に位置するように1つの部材に一体で設けられており、流入口及び流出口の方向をそれぞれ独立に変えることができる構造になっていない。したがって、従来の湯水抜栓を横向きに用いて水を排水させるために、流出口を水平より高い位置にした場合には、必然的に流入口が水平より低い位置になり、この位置以外では下流側の給水配管内の水を自然落下によって排出させることができない。さらに、床下空間における配管の自由度が低くなり、配管構成が制約される。また、特許文献1に示される湯水抜栓においては、上流側の給水配管からの水が流入する流入口と室内の末端器具へ水を供給する流出口とが、別軸上に位置するように別部材で設けられており、流入口及び流出口の方向をそれぞれ独立に変えることができる構造ではあるが、流出口と排水口とが1つの部材に一体に設けられており、流出口及び排水口の方向が固定され、それぞれ独立に変えることはできない。これに対して、本発明に係る湯水抜栓1は、すべての継手がそれぞれ独立に回転自在であるため、施工性が向上するとともに床下配管の自由度を大きくすることができる。
【0040】
(ピストン60)
湯水抜栓1は、弁箱20の長さ方向に沿ってその内部を移動するピストン60を備える。ピストン60は、製造の容易性の観点から、2つの部分を組み合わせて構成されることが好ましい。弁箱20の長さ方向に延びる長さをそれぞれが有する第1ピストン61と第2ピストン62とを、例えば螺合や溶接などによって、長さ方向に組み合わせて形成されることが好ましい。別の実施形態において、ピストン60は、2つの部分を組み合わせて構成するのではなく、一体的に形成された1つの部材として構成されたものであっても良い。
【0041】
(ピストン60:第1ピストン61)
第1ピストン61は、外表面に複数の突出部を有しており、複数の突出部の各々には、第1弁箱21のシリンダ部21aを摺動するOリング70、シリンダ部21bを摺動するOリング71、及びシリンダ部21cを摺動するOリング72が装着される。隣接する突出部間には、第1弁箱21の各シリンダ部との間に、水が流れるための空間が設けられている。第1ピストン61の一方の端部には、円周方向に延びる溝を有する嵌合凸部61aが設けられ、この嵌合凸部61aは、後述されるスピンドル85の他方の端部に設けられた嵌合凹部85aと連結される。第1ピストン61の他方の端部には、雄ねじ61bが設けられている。
【0042】
(ピストン60:第2ピストン62)
第2ピストン62は、外表面に複数の突出部を有しており、複数の突出部の各々には、第2弁箱22のシリンダ部22bを摺動するOリング73及びシリンダ部22cを摺動するOリング74が装着される。隣接する突出部間には、第2弁箱22の各シリンダ部との間に、水及び湯が流れるための空間が設けられている。第2ピストン62の一方の端部には雌ねじ62aが設けられ、雌ねじ62aに第1ピストン61の雄ねじ61bが螺合されることによって、第1ピストン61と第2ピストン62とが連結される。
【0043】
(操作部80)
湯水抜栓1は、ピストン60を弁箱20の長さ方向に直線移動させるための操作部80を有する。操作部80は、ピストン60を直線移動させるための力を入力する入力部と、入力された力をピストン60に伝達する伝達機構とを有する。本実施形態においては、操作部80は、入力部であるハンドル81と、ハンドル継手82、ハンドル側傘歯車87、ピストン側傘歯車88及びスピンドル85からなる伝達機構とを含む。操作部80は、さらに、カバー83、ブラケット84、及びグランド86を含む。ハンドル81から入力された回転力は、ハンドル継手82、ハンドル側傘歯車87、ピストン側傘歯車88、及びスピンドル85を介して、ピストン60の直線移動に変換される。ハンドル81は、ピストン60の直線移動の方向に対して側方に、ハンドル81の回転軸がピストン60の直線移動の方向に対して垂直になるように、設けられている。このような位置関係で入力部であるハンドル81が配置されることによって、弁箱20が、その長さ方向が基礎地面100(図3参照)に対して水平になるように床下に配置されていても、上方から容易にハンドル81にアクセスして湯水抜栓1を操作することができる。
【0044】
(操作部80:ハンドル81、ハンドル継手82、ハンドル側傘歯車87の関係)
ハンドル81は、上下方向に延びる長さを有するハンドル継手82の上端に取り付けられ、ハンドル継手82の回転軸(ハンドル81の回転軸と同軸)の周りの回転力を発生させることができる。ハンドル継手82の上端には嵌合部82aが設けられており、嵌合部82aは、ハンドル81の中央に設けられた孔に挿通され、ビスによってハンドル81に固定される。ハンドル継手82の下端には、ハンドル81の回転に伴ってハンドル81の回転軸と同軸の回転軸の周りに回転するハンドル側傘歯車87が取り付けられる。ハンドル継手82の下端には接続部82cが設けられており、接続部82cは、ハンドル側傘歯車87の回転軸上に設けられた軸孔87aに挿通される。
【0045】
ハンドル継手82とハンドル側傘歯車87とは、ハンドル継手82の径方向に貫通する横孔82d及びハンドル側傘歯車87の横孔87bに挿通されたピン90によって固定される。すなわち、横孔82dと横孔87bとの両方をピン90が貫通している。また、ハンドル継手82は、ブラケット84の上面に設けられた軸孔84bに挿通された状態となっており、ハンドル継手82の概ね中間部に設けられた鍔部82bとハンドル側傘歯車87とでブラケット84の上面を挟み込むことで、所定位置に留まっている。すなわち、ハンドル側傘歯車87は、ブラケット84によって支持されている。
【0046】
(操作部80:スピンドル85、グランド86、ピストン側傘歯車88の関係)
ハンドル側傘歯車87の歯車は、ハンドル側傘歯車87の回転軸と直交する回転軸を有するように配置されたピストン側傘歯車88の歯車と噛み合わされる。したがって、ピストン側傘歯車88は、ハンドル側傘歯車87の回転に伴ってハンドル側傘歯車87の回転軸と直交する回転軸の周りに回転する。ピストン側傘歯車88の回転軸上には軸孔88aが設けられ、軸孔88aにはスピンドル85が挿通されている。弁箱20の一方の端部に設けられた雄ねじ21hと、中空のグランド86の他方の端部に設けられた雌ねじ86cとが螺合により連結されている。ピストン側傘歯車88は、グランド86の一方の端面への当接、及びハンドル側傘歯車87との噛み合わせによって、所定位置に留まっている。
【0047】
グランド86の一方の端部の中心部には、ピストン側傘歯車88の軸孔88aに対応する位置に軸孔86dが設けられ、スピンドル85(より具体的には、スピンドル85の軸部85d)が、軸孔86d及び軸孔88aに挿通されている。スピンドル85の他方の端部には、嵌合凹部85aが設けられ、嵌合凹部85aは、上述のように第1ピストン61の嵌合凸部61aと連結される。
【0048】
ピストン側傘歯車88には横孔88bが設けられ、ピン91がこの横孔88bに挿通されている。また、スピンドル85の軸部85dには、軸部85dの径方向に貫通する長孔85eが設けられ、ピン91は、この長孔85eにも挿通されている。すなわち、横孔88bと長孔85eとの両方をピン91が貫通している。長孔85eは、ピン91が長孔85e内を移動できるように、長孔85eの幅がピン91の直径より若干大きくなるように形成されている。スピンドル85は、嵌合凹部85aと軸部85dとの間に雄ねじ85cが設けられており、雄ねじ85cは、グランド86の内壁に設けられた雌ねじ86bと螺合している。このような構成によって、ピストン側傘歯車88の回転に伴って、スピンドル85が長さ方向に延びる軸線の周りに回転しながら、長さ方向に移動する。スピンドル85がその長さ方向に移動すると、スピンドル85の他方の端部に連結されたピストン60が、その軸線方向に直線移動する。
【0049】
(操作部80:ブラケット84及びカバー83)
グランド86の一方の端部には、図1の紙面に平行な断面が略コの字形状を有するブラケット84が取り付けられる。ブラケット84は、ボルト挿通孔を持つグランド連結部84cを他方の端部に有し、グランド連結部84cと、グランド86の一方の端部に設けられたボルト挿通孔を持つブラケット連結部86eとをボルトで締結することによって、グランド86に固定される。なお、ボルトで両部材を連結するグランド連結部84c及びブラケット連結部86e並びにボルトの位置は、図1の紙面に対し上下方向で点線にて示しているが、実際には紙面に対し水平に近い手前と奥側の2箇所である。ブラケット84の一方の端部には、グランド86の軸孔86dに対向する位置に、貫通孔として形成された支持部84aが設けられ、支持部84aにはスピンドル85の軸部85dの一方の端部が挿通されている。
【0050】
操作部80は、ブラケット84の一部と、ブラケット84の開放面とを覆う形状で形成されたカバー83をさらに有することが好ましい。カバー83は、ブラケット84の少なくとも一方の端部と、ハンドル側傘歯車87と、ピストン側傘歯車88とを覆うように設けられる。カバー83は、ビス孔83bに挿通したビスをブラケット84の雌ねじ84dに螺合することによって、ブラケット84に固定される。カバー83には、ブラケット84の支持部84aに対応する位置に貫通孔83aが設けられ、貫通孔83aにスピンドル85の軸部85dが挿通されている。
【0051】
スピンドル85は、軸部85dの一方の端部がブラケット84の支持部84aで支持され、他方の端部がグランド86の軸孔86dで支持されている。このように、軸部85dが両端支持されていることによって、次のような利点がある。すなわち、他方の端部のみがグランド86の軸孔86dで支持されている場合にはピストン側傘歯車88の自重がスピンドル85の軸部85dにかかってハンドル操作力及び操作部80の耐久性に影響を及ぼすことが考えられる。しかし、軸部85dが両端支持されていることによって、ハンドル操作が重くなることを解消することができる。また、ハンドル操作が繰り返されることによって、スピンドル85の軸部85dが支持部84a及び軸孔86dの内部を摺動することによる摩耗や、ハンドル操作で長孔85e内をピン91が移動することによる長孔85eの壁部の摩耗を低減することができる。なお、ブラケット84の一方の内壁面からピストン側傘歯車88の一方の端面までにわたって、スピンドル85の軸部85dの外周を覆うようにスペーサ94が設けられている。このスペーサ94は、ハンドル操作時にピストン側傘歯車88を所定位置にさらに留まらせる機能を持つとともに、上述の部材間での摩耗をさらに低減する効果を有する。
【0052】
本実施形態の操作部80においては、上記のとおり、ハンドル側傘歯車87と、その回転軸と直交する回転軸の周りに回転するピストン側傘歯車88とを用い、入力部であるハンドル81の回転力を、ハンドル継手82、ハンドル側傘歯車87、ピストン側傘歯車88、及びスピンドル85からなる伝達機構を介して、ピストン60の直線移動に変換する構成を採用している。しかし、これに限定されるものではなく、伝達機構として、図示しないが傘歯車の代わりにウォームギヤを採用することもできる。また、別の伝達機構として、例えば、実公昭58-45337号公報の第2図において符号13として示されているユニバーサルジョイントや、実公昭50-45713号公報の第1図及び第2図において符号18として示されているワイヤーなどを用いた機構を採用することもできる。いずれの形態においても、ピストンを移動させるための力を入力する入力部は、ピストンの移動方向に対して側方に位置するように設けられている。
【0053】
(湯水抜栓1の組み立て)
本発明の一実施形態による湯水抜栓1は、次のように組み立てられる。まず、第1弁箱21の外周に、Oリング50、51、52、53を装着する。第1弁箱21の鍔部21fとは反対側の一方の端部側から、流出継手32及び流入継手31を順に第1弁箱21に挿通する。第1弁箱21の他方の端部には鍔部21fが設けられているため、流出継手32は鍔部21fに接触して所定位置に配置され、その後挿通された流入継手31も流出継手32に接触することで所定位置に配置される。次に、第2弁箱22の外周に、Oリング54、55、56、57、58、59を装着する。第2弁箱22の一方の端部側(雄ねじ22hの側)から、排湯継手42、受湯継手41及び排水継手33を順に第2弁箱22に挿通する。第2弁箱22の他方の端部には鍔部22gが設けられているため、排湯継手42は、鍔部22gに接触して所定位置に配置され、その後挿通された受湯継手41も、排湯継手42に接触することで所定位置に配置される。さらにその後挿通された排水継手33も、受湯継手41に接触することで所定位置に配置される。最後に、第1弁箱21の鍔部21fの内方に設けられた雌ねじ21gと、第2弁箱22の雄ねじ22hとを螺合することによって、第1弁箱21と第2弁箱22とを連結する。排水継手33、受湯継手41及び排湯継手42は、第1弁箱21の鍔部21fと第2弁箱22の鍔部22gとで挟み込むことによって、所定位置に留まることができる。第1弁箱21と第2弁箱22とは、Oリング93によって両部材間の水密性が保持される。
【0054】
次に、第1ピストン61の他方の端部に設けられた雄ねじ61bと、第2ピストン62の一方の端部に設けられた雌ねじ62aを螺合することによって、第1ピストン61と第2ピストン62とを連結し、ピストン60を形成する。また、第1ピストン61の一方の端部に設けられた嵌合凸部61aと、スピンドル85の他方の端部に設けられた嵌合凹部85aとを連結することによって、ピストン60にスピンドル85を組付ける。スピンドル85の軸部85dをグランド86の軸孔86dに挿通し、スピンドル85の雄ねじ85cとグランド86の雌ねじ86bとを螺合させる。スピンドル85の軸部85dをピストン側傘歯車88の軸孔88aに挿通させ、ピストン側傘歯車88の横孔88bとスピンドル85の長孔85eの両方に貫通するようにピン91を挿通させる。これらの組付けられた部材を、紙面上の左側から弁箱20の内部に挿入し、グランド86の雌ねじ86cと第1弁箱21の雄ねじ21hとを螺合させる。流入継手31及び流出継手32は、グランド86の下段部86aと第1弁箱21の鍔部21fとで挟み込むことによって、所定位置に留まることができる。
【0055】
次に、ハンドル81の軸孔にハンドル継手82の嵌合部82aを挿通し、ビスにより固定する。ハンドル81が組付けられたハンドル継手82の接続部82cを、ブラケット84の軸孔84bに挿通する。ブラケット84の内部に突出したハンドル継手82の接続部82cを、ハンドル側傘歯車87の軸孔87aに挿通する。ハンドル継手82とハンドル側傘歯車87とは、ハンドル継手82の横孔82dとハンドル側傘歯車87の横孔87bの両方から挿通されたピン90によって、固定される。
【0056】
ハンドル81、ハンドル継手82及びハンドル側傘歯車87が組付けられたブラケット84において、ブラケット84の支持部84aに、前述で組み立てられたスピンドル85の軸部85dを挿通させ、ブラケット84を一方から他方の方向に移動させる。ブラケット84を所定位置まで移動させると、ハンドル側傘歯車87とピストン側傘歯車88の一部のギヤは噛み合った状態になる。最後に、カバー83の貫通孔83aにスピンドル85の軸部85dを挿通させ、カバー83を一方から他方の方向へ移動させて、ブラケット84の開放面を覆い、ビスをカバー83のビス孔83bに挿通し、ブラケット84の雌ねじ84dに螺合して、カバー83がブラケット84に固定される。
【0057】
(固定具92)
湯水抜栓1は、2個の固定具92を用いて、コンクリートの基礎地面に設置することができる。固定具92は、リング部92a、脚部92b、及び土台部92cを有する。固定具92のリング部92aには、固定具92の装着部であるグランド86の下段部86a及び第1弁箱21の鍔部21fが挿通されている。固定具92のリング部92aの下方には、脚部92bを介して土台部92cが設けられており、土台部92cに設けられている孔にアンカーボルト等を用いて、固定具92をコンクリートの基礎地面に固定する。湯水抜栓1は、弁箱20の長さ方向が地面に対し水平になるように、コンクリートの基礎地面より少し上方の位置で設置することが好ましい。これは、排水及び排湯の際に、排水口33bから排出される水及び排湯口42bから排出される湯を排水管に流し込むために、排水管の施工上、湯水抜栓1を地面からある程度上方の位置に設けることが好ましいからである。また、本実施形態においては、固定具92を構成するリング部92a、脚部92b、及び土台部92cは、別部材で構成されることが好ましい。これらが別部材で構成されることにより、湯水抜栓1の設置高さは、必要に応じて脚部92bを切断することによって調整することができる。なお、固定具92は、合成樹脂製の市販の部材を使用しているが、金属製であってもよい。
【0058】
[湯水抜栓1の動作]
次に、湯水抜栓1の動作を説明する。
(通水状態)
図1は、湯水抜栓1が通水状態にあるときの内部構造を示す。通水状態においては、第1ピストン61に装着されたOリング70が第1弁箱21のシリンダ部21aに密着し、Oリング72がシリンダ部21cに密着しているが、Oリング71はどこにも密着していない。また、第2ピストン62に装着されたOリング73は第2弁箱22のシリンダ部22bに密着し、Oリング74はシリンダ部22cに密着している。
【0059】
このとき、湯水抜栓1より上流側の給水配管からの水は、流入継手31の流入口31bから第1弁箱21の貫通孔21dを通り、第1弁箱21と第1ピストン61との間の隙間を流れ、貫通孔21e及び流出継手32の流出口32bを通って下流側の給水配管を流れ末端器具に供給される。弁箱20内の水は、シリンダ部21a、21cに密着するOリング70、72によって止水され、操作部80側にも排水継手33側にも漏水することは無い。
【0060】
また、受湯継手41の受湯口41bに接続された給湯配管内の湯は、受湯口41bから貫通孔22eを通って第2弁箱22内に流入するが、シリンダ部22b、22cに密着するOリング73、74によって止水され、他所に漏水することは無い。
【0061】
(排水・排湯(水抜き)状態)
図2は、湯水抜栓1が排水・排湯状態にあるときの内部構造を示す。図1に示される通水状態から図2に示される排水・排湯状態に移行する際に、湯水抜栓1は以下のように動作する。まず、図1の通水状態から、ハンドル81を紙面の上方向から見て右回りに回転させる。すると、ハンドル継手82を介してハンドル81に連結されたハンドル側傘歯車87も、紙面の上方向から見て右回りに回転する。ハンドル側傘歯車87が回転するのに伴って、ハンドル側傘歯車87と噛み合うピストン側傘歯車88が紙面の左方向から見て右回りに回転する。ピストン側傘歯車88は、グランド86の端面及びハンドル側傘歯車87との噛み合わせによって、所定位置に留まりながらの回転となる。ピストン側傘歯車88が回転すると、ピン91によって係合しているスピンドル85も長さ方向に延びる軸線の周りに右回りに回転する。スピンドル85の雄ねじ85cがグランド86の雌ねじ86bと螺合しており、ピン91がスピンドル85の長孔85e内を移動できるように、長孔85eの幅がピン91の直径より若干大きく形成されていることによって、スピンドル85は回転しながら紙面の右方向に移動する。スピンドル85と嵌合されているピストン60は、スピンドル85の移動に伴って、回転することなく弁箱20内を右方向に移動する。ピストン60の移動に伴って、第1ピストン61に装着されたOリング71がシリンダ部21bに密着し、Oリング72がシリンダ部21cから離脱する。さらに、第2ピストン62に装着されたOリング74がシリンダ部22cから離脱する。このように動作して、湯水抜栓1は、図1に示される通水状態から図2に示される排水・排湯状態に移行する。
【0062】
図2に示される状態のとき、湯水抜栓1より上流側の給水配管からの水は、Oリング71とシリンダ部21bとの密着によって止水される。一方、下流側の末端器具までの給水配管内に残った水は、流出継手32の流出口32bから貫通孔21eを通り、第1弁箱21と第1ピストン61との間の隙間を流れ、第2弁箱22と第2ピストン62との間の隙間に入り、貫通孔22d及び排水継手33の排水口33bを通って管外(給水配管外)に排出される。
【0063】
また、受湯継手41の受湯口41bに接続された給湯配管内の湯は、受湯口41bから貫通孔22eを通って第2弁箱22に流入し、第2弁箱22と第2ピストン62との間の隙間を流れ、貫通孔22f及び排湯継手42の排湯口42bを通って管外(給湯配管外)に排出される。
【0064】
[湯水抜栓の設置]
図3は、本発明の一実施形態による湯水抜栓1を戸建住宅の基礎空間において基礎地面に設置した例を示し、図3(a)は通常の設置状態であり、図3(b)は基礎壁面の近傍に設置した状態である。湯水抜栓1は、2個の固定具92を用いて、その土台部92cに設けられた孔にアンカーボルトを挿通し、コンクリートの基礎地面100に固定される。また、湯水抜栓1は、弁箱20の長さ方向が基礎地面100に対して水平で、基礎地面100より少し上方の位置に設置される。
【0065】
図3(a)において、湯水抜栓1の流入継手31には上流側の給水配管102、流出継手32には下流側の給水配管103、排水継手33には排水配管104、受湯継手41には給湯配管105、排湯継手42には排湯配管106が、それぞれ接続されている。上流側の給水配管102は、基礎地面100に対して水平に施工される。下流側の給水配管103は、水抜き時に下流側の給水配管103内の水が自然落下により流出継手32側に流れ込むように、紙面の右から左方向にかけて若干の下り勾配で施工される。また、排水配管104も、水抜き時に下流側の給水配管103内の水が流出継手32及び排水継手33を介して排水配管104に流れるように、紙面の右から左方向にかけて下り勾配で施工される。
【0066】
給湯配管105は、水抜き時に配管内の湯が自然落下により受湯継手41側に流れ込むように、紙面の右から左方向にかけて下り勾配で施工される。また、排湯配管106も、水抜き時に給湯配管105内の湯が受湯継手41及び排湯継手42を介して排湯配管106に流れるように、紙面の右から左方向にかけて下り勾配で施工される。図示していないが、ハンドル81の上方には点検口を設けた床が施工されており、点検口の扉部を開けて湯水抜栓1のハンドル操作をおこなう。
【0067】
湯水抜栓1の各継手が、それぞれ独立して弁箱20の円周方向に回転自在であるので、図3(a)のように上流側の給水配管102が水平に施工されていても、上流側の給水配管102の施工に影響されずに下流側の給水配管103及び排水配管104を紙面の右から左方向にかけて下り勾配で施工することが可能である。また、給湯配管105及び排湯配管106においても、他の水道配管(すなわち、上流側の給水配管102、下流側の給水配管103、排水配管104、給湯配管105、及び排湯配管106)に影響されずに実施形態のように紙面の右から左方向にかけて下り勾配で施工することが可能である。
【0068】
湯水抜栓1が水抜き状態にされると、末端器具から湯水抜栓1までの下流側の給水配管103内の水は、流出継手32、排水継手33、排水配管104を介し、排水ホッパー(排水受け、図示せず)に流れ込んで、最終的に建物全体の排水配管から排水される。末端器具から湯水抜栓1までの給湯配管105内の湯は、受湯継手41、排湯継手42、排湯配管106を介し、下流側の給水配管103の水と同様に、排水ホッパー(排水受け)に流れ込んで、最終的に建物全体の排水配管から排水される。
【0069】
図3(b)は、湯水抜栓1を床下の基礎壁面101近傍に設置した状態を示す。図3(a)と同様に、流入継手31には上流側の給水配管102、流出継手32には下流側の給水配管103、排水継手33には排水配管104、受湯継手41には給湯配管105、排湯継手42には排湯配管106がそれぞれ接続されている。上流側の給水配管102は、基礎地面100に対して水平に施工される。下流側の給水配管103は、基礎地面100に対して垂直に施工される。排水配管104は、水抜き時に下流側の給水配管103内の水が流出継手32及び排水継手33を介して排水配管104に流れるように、紙面の右から左方向にかけて下り勾配で施工される。給湯配管105は、基礎地面100に対して垂直に施工されている。排湯配管106は、水抜き時に給湯配管105内の湯が受湯継手41及び排湯継手42を介して排湯配管106に流れるように、紙面の右から左方向にかけて下り勾配で施工されている。
【0070】
湯水抜栓1の各継手が、それぞれ独立して弁箱20の円周方向に回転自在であるので、図3(b)のように、湯水抜栓1が基礎壁面101近傍に施工され、且つ上流側の給水配管102が水平に施工されても、上流側の給水配管102に影響されずに下流側の給水配管103を垂直に施工することができる。同様に、給湯配管105も他の水道配管に影響されずに垂直に施工することができ、また、排水配管104及び排湯配管106も他の水道配管に影響されずに紙面の右から左方向にかけて下り勾配で施工することが可能である。さらに、操作部80は弁箱20と一体的に円周方向に回転自在であるので、図3(b)のように操作部80を手前に傾斜させて、ハンドル操作をし易くすることができる。
【0071】
なお、湯水抜栓1の設置場所は、基礎地面100に対して湯水抜栓1の長さ方向が水平であれば、基礎空間を囲む平面のいずれであってもよい。例えば、図示しないが、固定具92を基礎地面100ではなく基礎壁面101に固定し、そこに湯水抜栓1を設置してもよい。さらに、図示しないが、固定具92を床下面に固定し、湯水抜栓1を吊る形態で設置してもよい。
このように、本発明による湯水抜栓は、床下配管の自由度が大きいため、設置する位置の制約を受けることなく、基礎空間のどこにでも施工することができる。
【0072】
[保守点検の作業]
図3(a)を用いて、保守点検の作業を説明する。湯水抜栓1自体の交換が必要になった場合、以下の手順で作業を行なう。上流側の給水配管102に設けられている止水栓(図示せず)を、閉栓にする。湯水抜栓1のハンドル81を操作して、下流側の給水配管103及び給湯配管105内を水抜き状態にする。湯水抜栓1の各継手に接続される水道配管を取り外す。湯水抜栓1を固定具92から取り外す。
【0073】
新たな湯水抜栓1を取り付ける場合には、固定具92に湯水抜栓1を取り付ける。湯水抜栓1の各継手に水道配管を接続する。湯水抜栓1のハンドル81を操作して、通水状態にする。上流側の給水配管102に設けられている止水栓(図示せず)を開栓にする。以上のように、従来のようなコンクリートの基礎地面100への穿孔作業が不要となり、湯水抜栓1の保守点検を容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 湯水抜栓
20 弁箱
21 第1弁箱
21a、21b、21c シリンダ部
21d、21e 貫通孔
21f 鍔部
21g 雌ねじ
21h 雄ねじ
22 第2弁箱
22a 内壁部
22b、22c シリンダ部
22d、22e、22f 貫通孔
22g 鍔部
22h 雄ねじ
30 水側継手
31 流入継手
31a リング部
31b 流入口
32 流出継手
32a リング部
32b 流出口
33 排水継手
33a リング部
33b 排水口
40 湯側継手
41 受湯継手
41a リング部
41b 受湯口
42 排湯継手
42a リング部
42b 排湯口
50、51、52、53、54、55、56、57、58、59 Oリング
60 ピストン
61 第1ピストン
61a 嵌合凸部
61b 雄ねじ
62 第2ピストン
62a 雌ねじ

70、71、72、73、74 Oリング
80 操作部
81 ハンドル
82 ハンドル継手
82a 嵌合部
82b 鍔部
82c 接続部
82d 横孔
83 カバー
83a 貫通孔
83b ビス孔
84 ブラケット
84a 支持部
84b 軸孔
84c グランド連結部
84d 雌ねじ
85 スピンドル
85a 嵌合凹部
85c 雄ねじ
85d 軸部
85e 長孔
86 グランド
86a 下段部
86b 雌ねじ
86c 雌ねじ
86d 軸孔
86e ブラケット連結部
87 ハンドル側傘歯車
87a 軸孔
87b 横孔
88 ピストン側傘歯車
88a 軸孔
88b 横孔

90 ピン
91 ピン
92 固定具
92a リング部
92b 脚部
92c 土台部
93 Oリング
94 スペーサ
100 基礎地面
101 基礎壁面
102 上流側の給水配管
103 下流側の給水配管
104 排水配管
105 給湯配管
106 排湯配管

図1
図2
図3