(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052948
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20240405BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C19/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024031964
(22)【出願日】2024-03-04
(62)【分割の表示】P 2022047705の分割
【原出願日】2022-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 孝誌
(72)【発明者】
【氏名】福島 靖之
(72)【発明者】
【氏名】松林 晃平
(57)【要約】
【課題】軸受装置の寸法を抑えつつも正常に機能することのできる軸受装置を提供する。
【解決手段】軸受装置1は、外輪3、内輪4および転動体8を含む標準軸受2を備える。軸受装置1は、内輪4に固定される磁気リング7と、磁気リング7と標準軸受2の径方向に対向するように配置され、外輪3に固定されるステータ5と、回路基板13と、を備える。磁気リング7とステータ5とは、交流電力を生成する発電機Gを構成する。回路基板13は、標準軸受2の状態を検出する少なくとも1つのセンサと、ワイヤレス通信回路18と、発電機Gで生成される交流電力を直流電力に変換する電源回路17と、を含む。外輪3の端部と内輪4の端部とで形成された環状空間内には、磁気リング7、ステータ5、および回路基板13が配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外輪、内輪および転動体を含む軸受の主要寸法が特定の規格に記載の標準軸受を備える軸受装置であって、
回路基板を備え、
前記回路基板は、前記標準軸受の状態を検出する少なくとも1つのセンサと、前記少なくとも1つのセンサの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路と、を含み、
前記外輪の端部と前記内輪の端部とで形成された環状空間内に前記回路基板が配置される、軸受装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのセンサおよび前記ワイヤレス通信回路で使用可能な直流電力に変換する電源回路をさらに備え、
前記回路基板の形状は、円弧状であり、
前記少なくとも1つのセンサと前記ワイヤレス通信回路と前記電源回路とは、前記回路基板の円周上に、軸方向で互いに重ならないように配置される、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記特定の規格は、ISOまたはJISである、請求項1または請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記標準軸受は、ラジアル軸受であり、
前記ラジアル軸受の主要寸法は、ISO15またはJISB1512-1に規定される寸法である、請求項3に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受と発電機とを組み合わせ、センサ、無線通信などの電源として使用する軸受装置が知られている。
【0003】
特開2017-72170号公報(特許文献1)には、センサからの情報を無線送信するワイヤレスセンサ付き軸受装置が開示されている。特許文献1に開示された軸受装置は、転動体を保持する保持器の一方端に多極リング磁石が固定され、多極リング磁石と対向するシール側にコイルが配置される構造である。特許文献1に開示された軸受装置では、アキシャル方向に配置される多極リング磁石とコイルとの相対回転によって電力を発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、保持器は、使用に伴う軸受の軸方向のガタつきが大きい。このため、特許文献1の軸受装置は、使用に伴う保持器のガタつきによりアキシャル方向における多極リング磁石とコイルとの隙間が変動しやすい。特許文献1の軸受装置は、隙間が大きくなった場合に、発電量が低下することによってセンサ等の電子部品の駆動に影響することが想定される。特許文献1の軸受装置は、逆に隙間が小さくなった場合に、多極リング磁石とセンサ等の電子部品と接触することが想定される。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであって、その目的は、軸受装置の寸法を抑えつつも正常に機能することのできる軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の軸受装置は、外輪、内輪および転動体を含む軸受の主要寸法が特定の規格に記載の標準軸受を備える。軸受装置は、回路基板を備える。回路基板は、標準軸受の状態を検出する少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのセンサの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路と、を含む。外輪の端部と内輪の端部とで形成された環状空間内に回路基板が配置される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の軸受装置によれば、外輪の端部と内輪の端部とで形成された環状空間内に回路基板が配置される。これにより、環状空間内に回路基板を配置できるため軸受の寸法を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態1の軸受装置全体の斜視図である。
【
図2】軸受の回転軸を含む平面における断面図である。
【
図4】軸受装置をセンサユニット側から見た図である。
【
図7】実施の形態2におけるセンサユニットと磁気リングとを抽出した断面図である。
【
図8】実施の形態2のセンサユニットの分解斜視図である。
【
図9】実施の形態2のセンサユニットの組立て後の斜視図である。
【
図10】実施の形態3におけるセンサユニットと磁気リングとを抽出した断面図である。
【
図11】実施の形態3のセンサユニットの分解斜視図である。
【
図12】実施の形態3のセンサユニットの組立て後の斜視図である。
【
図13】実施の形態4におけるセンサユニットと磁気リングとを抽出した断面図である。
【
図14】実施の形態4のセンサユニットの分解斜視図である。
【
図15】実施の形態4のセンサユニットの組立て後の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本開示の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。同一の部品、相当部品に対しては、同一の参照番号を付し、重複する説明は繰り返さない場合がある。実施の形態における構成を適宜組み合わせて用いることは当初から予定されている。
【0011】
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1の軸受装置1全体の斜視図である。軸受装置1は、軸受2と、センサユニット6と、磁気リング7とを備える。軸受2は、外輪3と、内輪4とを含む。軸受2は、例えば、外輪3が静止輪となり、内輪4が回転輪となる。軸受2は、深溝玉軸受を一例として説明するが、軸受2の種類は深溝玉軸受に限定されない。
【0012】
ここで、軸受2は、軸受の主要寸法(内径、外径、幅など)が特定の規格に記載の標準軸受である。標準軸受とは、例えば、ISO規格・JIS規格に記載がある寸法の軸受である。軸受2は、ラジアル軸受であり、軸受2の主要寸法は、ISO15またはJISB1512-1に規定される寸法である。以下では、軸受2のことを標準軸受2とも称する。
【0013】
センサユニット6は、ステータ5と、蓋14とを含む。ステータ5の構造の詳細は後述する。蓋14は、非金属の樹脂製部材であり、センサユニット6の内部を保護する。磁気リング7は、N極とS極とを周方向に交互に着磁した磁性体部材である。ステータ5は、外輪3に固定され、磁気リング7は、内輪4に固定される。ステータ5と磁気リング7とによって発電機Gが構成される。発電機Gは、クローポール型の発電機であるが、他の構造の発電機であってもよい。
図1の一点鎖線は、軸受2の回転軸Oである。
【0014】
図2は、軸受2の回転軸Oを含む平面における断面図である。軸受2は、外輪3と、内輪4と、転動体8と、保持器9と、シール10とを含む。軸受2は、軸受2の端面11と転動体8との距離Wがセンサユニット6および磁気リング7を収納可能な標準軸受の型番のサイズから選択すればよい。端面11は、外輪3の端面でもある。
【0015】
外輪3の一方端の内周面には、外輪3の端部の凹部としての段付きの第1の切欠き部3aが形成される。内輪4の一方端の外周面には、第1の切欠き部3aと対向するように内輪4の端部の凹部としての段付きの第2の切欠き部4aが形成される。軸受2の軸方向(アキシャル方向とも称する)において、外輪3から内輪4に亘り、第1の切欠き部3aおよび第2の切欠き部4aにより転動体8へ向けて切欠いた環状の凹部50による環状空間が形成される。
【0016】
センサユニット6は、保持部材12と、回路基板13と、ステータ5と、蓋14とを含む。保持部材12は、軸受2の径方向(ラジアル方向とも称する)に第1の領域12bと第2の領域12cとに保持部材12を隔てる隔壁12aを有する磁性体材料である。第1の領域12bの内底面12dには回路基板13が固定され、第2の領域12cにはステータ5が配置される。蓋14は、内底面12dに固定される回路基板13を保護する。蓋14の代わりに樹脂封止材を用いて回路基板13を封止してもよい。
【0017】
保持部材12の第1の領域12b側の外径面は、外輪3に形成された第1の切欠き部3aに嵌合して固定される。保持部材12は、外輪3の端面11からはみ出さないように、圧入または接着される。なお、保持部材12は、圧入と接着とを併用して固定されてもよいし、これら以外の方法で固定されてもよい。保持部材12を第1の切欠き部3aに固定した際、転動体8と保持部材12との間には一定の隙間が確保される。これにより、転動体8と保持部材12とは、アキシャル方向の変位が生じた場合も隙間により転動体8と保持部材12とが接触しないようにすることができる。
【0018】
ステータ5は、2つの磁性体部材21,22と、ボビン23と、コイル24とを含む。第2の領域12cを含む保持部材12の部分が、ステータ5の磁性体部材21として用いられる。
【0019】
磁気リング7は、芯金7aと、多極磁石7bとを含む。多極磁石7bは、例えば、磁性粉とゴムとを混錬した磁性体材料を芯金7aに加硫接着してから、N極とS極とを軸受2の周方向に交互に着磁したものである。磁気リング7の芯金7aは、剛性を高めるためにフランジ部7cを有している。磁気リング7は、内輪4の外径面4bに圧入等により固定される。フランジ部7cは、内輪4に形成される第2の切欠き部4aに収まる。磁気リング7は、内輪4の端面20からはみ出さないように配置される。
【0020】
環状の凹部50の内部には、磁気リング7、ステータ5、および回路基板13が軸受2の軸方向に互いに重ならないように配置される。これにより、環状の凹部50の内部に各部品を配置できるため軸受2の寸法を抑えることができる。さらに、軸受装置1は、例えば、磁気リング7が内輪4に固定され、対向する位置の外輪3にステータ5が固定される。内輪4および外輪3は、軸受2の軸方向への変動が保持器9と比較し小さいため、発電機Gによって安定した発電量を確保し、軸受装置の寸法を抑えつつも正常に機能することができる。
【0021】
図3は、保持器9を説明するための図である。保持器9には、環状の保持器本体の軸方向の端面91の周方向に沿って所定ピッチで凹部93が形成される。凹部93の周方向に対向する開口端から突出するように一対の爪部94,94が形成される。凹部93と一対の爪部94,94とによって
図2に示す転動体8が収納されるポケット95が形成される。このように、保持器9の形状は、一方の端面91側が開放され、他方の端面92が連結された形状である。保持器9は、樹脂製部材であり、開放側にセンサユニット6と磁気リング7とが端面11および端面20からはみ出さないように配置される。
【0022】
図4は、軸受装置1をセンサユニット6側から見た図である。
図4では、センサユニット6の内部が分かるように蓋14の一部を省略して図示している。回路基板13には、軸受2の状態を監視するセンサが1つ以上実装されている。例えば、回路基板13には、加速度センサ15と温度センサ16とが実装される。なお、温度センサ16は、保持部材12の内底面12dに設けた図示しない孔から挿入され、外輪3の第1の切欠き部3aの端面に近接(または接触)させるように、回路基板13の裏面に実装してもよい。これにより、温度センサ16が外輪3に近づき、軸受2の温度を正確に測定することができる。
【0023】
回路基板13には、さらに、電源回路17と、ワイヤレス通信回路18とが実装されている。電源回路17は、発電機Gで生成される交流電力を整流して直流電力に変換する。加速度センサ15、温度センサ16、およびワイヤレス通信回路18では、電源回路17によって変換された直流電力が使用される。回路基板13には、端子25が配置されている。
【0024】
ワイヤレス通信回路18は、アンテナ部18aを含む。ワイヤレス通信回路18は、軸受2の状態を監視する加速度センサ15および温度センサ16の出力をアンテナ部18aを用いて無線で外部に送信する。回路基板13は、複数のねじ19により保持部材12に固定されている。なお、回路基板13は、保持部材12に対し接着固定されてもよい。ワイヤレス通信回路18を実装した回路基板13は、樹脂製の蓋14と対向して配置される。これにより、ワイヤレス通信回路18は、金属などの導電性材料で密閉されない構造となる。このため、ワイヤレス通信回路18内のアンテナ部18aを用いて無線通信が可能となる。
【0025】
図5は、センサユニット6の分解斜視図である。
図6は、センサユニット6の組立て後の斜視図である。センサユニット6は、保持部材12と、回路基板13と、ステータ5とを含む。回路基板13は、保持部材12の第1の領域12bの内底面12dに固定される。ステータ5は、保持部材12の第2の領域12cに配置される。ステータ5は、2つの磁性体部材21,22と、ボビン23と、コイル24とを含む。第2の領域12cの隔壁12aを含む保持部材12の一部が、ステータ5の磁性体部材21として用いられる。
【0026】
磁性体部材21,22の断面は、U字状である。磁性体部材21の内周部には、複数の爪部21aが形成される。磁性体部材22の内周部には、複数の爪部22aが形成される。ボビン23の円周方向に設けられた溝には、マグネットワイヤを複数回巻いたコイル24が配置される。なお、ボビン23は、省略してもよい。
【0027】
ステータ5の組立方法について以下に述べる。まず、コイル24を巻いたボビン23を磁性体部材22の内部に挿入した状態で、磁性体部材21の複数の爪部21aと磁性体部材22の複数の爪部22aとが周方向に隙間を開けて交互に配置されるように組立てる。次いで、磁性体部材22の外周面22bを磁性体部材21の隔壁12aの内周面に嵌合するように固定する。
【0028】
磁性体部材21の複数の爪部21aおよび磁性体部材22の複数の爪部22aは、
図2に示す磁気リング7の多極磁石7bとの隙間が確保された状態で、対向して配置される。ステータ5における磁性体部材21の複数の爪部21aおよび磁性体部材22の複数の爪部22aと磁気リング7とによってクローポール型の発電機Gが構成される。複数の爪部21a,22aを合わせた数は、多極磁石7bの極数(N極とS極を合わせた数)と等しい。
【0029】
多極磁石7bのN極から出た磁束は、例えば、磁極である複数の爪部21a(または複数の爪部22a)から磁性体部材21(まはた磁性体部材22)に入り、コイル24の周りを回って隣接する複数の爪部22a(または複数の爪部21a)を経由し多極磁石7bのS極に戻る。内輪4の回転によって多極磁石7bのN極とS極との位置が入れ替わると磁束の向きが逆になる。このようにして発生する交番磁界により、コイル24の両端に交流電力が発生する。
【0030】
ステータ5から引き出されたコイル24の巻き始めおよび巻き終わりの図示しない各端部は、回路基板13に設けられた端子25に接続される。内輪4が回転することによって発電機Gから出力される交流電力は、電源回路17によって直流電力に変換される。
【0031】
軸受装置1のセンサユニット6は、隔壁12aにより保持部材12の径方向に、第1の領域12bと第2の領域12cに領域が2分割される。第1の領域12bには回路基板13が配置され、第2の領域12cにはクローポール型の発電機Gにおけるステータ5が配置される。磁気リング7は、ステータ5と対向する内径側に配置される。
【0032】
このように、軸受装置1は、回路基板13とステータ5と磁気リング7とが軸受2の軸方向に互いに重ならないように順に配置される構造である。さらに、軸受装置1は、軸受2の端面11からセンサユニット6がはみ出さない形状であるとともに、内輪4の端面20から磁気リング7がはみ出さない形状である。これにより、軸受装置1では、アキシャル方向においてセンサユニット6を薄く製作することができる。
【0033】
軸受装置1は、ラジアル方向にステータ5と磁気リング7とが配置されクローポール型の発電機Gを構成する。このため、ステータ5および磁気リング7は、軸受装置1の使用によるガタつきが少ない部品に固定されるため、発電機Gによって安定した発電量を確保することができる。
【0034】
ここで、保持部材12は、隔壁12aにより第1の領域12bと第2の領域12cとの2つの領域に分割される。第1の領域12bを含む保持部材12の部分は、回路基板13を保持するために用いられ、第2の領域12cを含む保持部材12の部分は、磁性体部材21として兼用される。このため、軸受装置1は、部品点数を削減することができるとともに、保持部材12にステータ5を強固に固定することができる。
【0035】
[実施の形態2]
実施の形態2においては、実施の形態1のセンサユニット6と異なる構造のセンサユニット6Aについて説明する。
図7は、実施の形態2におけるセンサユニット6Aと磁気リング7とを抽出した断面図である。
図8は、実施の形態2のセンサユニット6Aの分解斜視図である。
図9は、実施の形態2のセンサユニット6Aの組立て後の斜視図である。以下では、実施の形態1のセンサユニット6と同様の構成については説明を省略する。
【0036】
センサユニット6Aは、保持部材12Aと、回路基板13と、ステータ5Aと、蓋14とを含む。保持部材12Aは、実施形態1の隔壁12aが削除されている。保持部材12Aの形状は、環状であるとともに、外周部12Abと内周部12Aaと外周部12Abおよび内周部12Aaを繋ぐ底部12Adとを有する断面がU字状である。内周部12Aaの側面には、ステータ5Aが圧入により固定される。ステータ5Aは、接着で固定されてもよく、または圧入および接着を併用して固定されるようにしてもよい。保持部材12Aの底部12Adには、回路基板13が固定される。
【0037】
ステータ5Aは、磁性体部材26と、ボビン23と、コイル24とを含む。磁性体部材26は、磁性体部材26-1と磁性体部材26-2とを含む。磁性体部材26-1,26-2の断面は、U字状である。磁性体部材26-1の内周部には、複数の爪部26aが形成される。磁性体部材26-2の内周部には、複数の爪部26bが形成される。複数の爪部26aと複数の爪部26bとは、周方向に隙間を開けて交互に配置される。
【0038】
磁性体部材26-1および磁性体部材26-2の外周部には、凹部26cと凸部26dとが複数形成されている。凹部26cと凸部26dとを嵌合させることにより、複数の爪部26aと複数の爪部26bとの位置合わせが容易になる。
【0039】
保持部材12A、磁性体部材26-1、および磁性体部材26-2は、断面がU字状であり形状が簡単であるため、プレス加工が容易となり、製作コストを低減することができる。
【0040】
[実施の形態3]
実施の形態3においては、実施の形態1のセンサユニット6と異なる構造のセンサユニット6Bについて説明する。
図10は、実施の形態3におけるセンサユニット6Bと磁気リング7とを抽出した断面図である。
図11は、実施の形態3のセンサユニット6Bの分解斜視図である。
図12は、実施の形態3のセンサユニット6Bの組立て後の斜視図である。以下では、実施の形態1のセンサユニット6と同様の構成については説明を省略する。
【0041】
センサユニット6Bは、保持部材12Bと、回路基板13と、ステータ5Bと、蓋14とを含む。センサユニット6Bの保持部材12Bは、回路基板13を固定する機能と、ステータ5Bの磁性体部材27としての機能を有する。保持部材12B(磁性体部材27)の形状は、環状であるとともに、外周部27aと内周部27bと外周部27aおよび内周部27bを繋ぐ底部27cとを有する断面がU字状である。内周部27bは、複数の爪部27dによって形成される。底部27cには、軸受2の周方向に離間する複数の凹部27eが形成される。
【0042】
ステータ5Bは、磁性体部材28を含む。磁性体部材28の形状は、環状であるとともに、外周部28aと内周部28bと外周部28aおよび内周部28bを繋ぐ底部28cとを有する断面がU字状である。内周部28bは、磁性体部材27の複数の爪部27dと対向する複数の爪部28dによって形成される。外周部28aにおける軸受2の軸方向の端部には、軸受2の周方向に離間する複数の凸部28eが形成される。
【0043】
ステータ5Bの組立方法について以下に述べる。コイル24を巻いたボビン23を磁性体部材28の内部に挿入した状態で、磁性体部材28の凸部28eと磁性体部材27の凹部27eを嵌合させる。複数の凹部27eと複数の凸部28eとが嵌合することによって、磁性体部材27の複数の爪部27dと、磁性体部材28の複数の爪部28dとが周方向に隙間を開けて交互に配置される。複数の凹部27eと複数の凸部28eとによって、複数の爪部27dと、複数の爪部28dとの位置合わせが容易となる。磁性体部材28の凸部28eを除く端面は、磁性体部材27の底部27cに当接する。
【0044】
磁性体部材27の凹部27eと磁性体部材28の凸部28eとは、圧入により固定される。しかし、凹部27eと凸部28eとは、接着、レーザを用いた溶接によって固定されるようにしてもよい。または、圧入、接着、溶接を組み合わせて凹部27eと凸部28eとを固定してもよい。凹部27eと凸部28eとを嵌合させることにより、治具を用いることなく2つの磁性体部材27,28の同軸を合わせるとともに、複数の爪部27d,28dの位置合わせを容易に行うことができる。なお、凹部27eと凸部28eとは、それぞれ3個以上形成されるのが好ましい。
【0045】
保持部材12Bは、磁性体部材27の機能を兼用するため、部品点数を削減できる。磁性体部材27および磁性体部材28は、断面がU字状であり形状が簡単であるため、プレス加工が容易となり、製作コストを低減することができる。
【0046】
なお、凹部27eと凸部28eとは省略してもよい。この場合、図示しない治具を用いて磁性体部材27,28の同軸と、複数の爪部27d,28dの位置合わせを行った状態において、磁性体部材27の底部27cと磁性体部材28の外周部28aの端部との当接面をレーザ溶接等により固定してもよい。
【0047】
[実施の形態4]
実施の形態4においては、実施の形態1のセンサユニット6と異なる構造のセンサユニット6Cについて説明する。
図13は、実施の形態4におけるセンサユニット6Cと磁気リング7とを抽出した断面図である。
図14は、実施の形態4のセンサユニット6Cの分解斜視図である。
図15は、実施の形態4のセンサユニット6Cの組立て後の斜視図である。以下では、実施の形態1のセンサユニット6と同様の構成については説明を省略する。
【0048】
センサユニット6Cは、回路基板13と、ステータ5Cとを含む。センサユニット6Cは、ステータ5Cを保持する保持部材自体が軸受2の径方向に延伸された磁性体部材29により形成される。磁性体部材29は、磁性体部材29-1と磁性体部材29-2とを含む。磁性体部材29-1の形状は、環状であるとともに、外周部29-1bと内周部29-1aと外周部29-1bおよび内周部29-1aを繋ぐ底部29-1dとを有する断面がU字状である。内周部29-1aは、複数の爪部29aによって形成される。
【0049】
磁性体部材29-2の形状は、環状であるとともに、外周部29-2bと内周部29-2aと外周部29-2bおよび内周部29-2aを繋ぐ底部29-2dとを有する断面がU字状である。内周部29-2aは、複数の爪部29bによって形成される。複数の爪部29aと複数の爪部29bとは、周方向に隙間を開けて交互に配置される。
【0050】
磁性体部材29-1および磁性体部材29-2の外周部29-1b,29-2bには、凸部29cと凹部29dとが複数形成されている。凸部29cと凹部29dとを嵌合させることにより、複数の爪部29aと複数の爪部29bとの位置合わせが容易になる。磁性体部材29は、軸受2の一方端に配置される。
【0051】
コイル24を巻いたボビン23は、複数の爪部29aおよび複数の爪部29bが位置する内周側に配置される。回路基板13は、コイル24と軸受2の径方向と反対の外周側に配置される。回路基板13は、例えば、磁性体部材29-1の底部29-1dに図示しないねじで固定される。ワイヤレス通信回路18のアンテナ部18aが配置される位置と対向する磁性体部材29-2の側面の位置(底部29-2d)には、孔部29eが形成される。
【0052】
孔部29eは、非導電性部材である樹脂部材30により閉塞される。これにより、センサユニット6Cは、孔部29eからワイヤレス通信の電波を外部に発信することができるとともに、外部から磁性体部材29の内部空間に異物が入ることを防止することによって内部に位置するコイル24、回路基板13等を保護することができる。なお、孔部29eから樹脂封止材を注入して回路基板13等を樹脂材料によって覆うようにしてもよい。この場合、磁性体部材29-2の底部29-2dの周方向に複数の孔部を設け、それぞれの孔部から樹脂封止材を注入し、磁性体部材29の内部空間に気泡が残らないようにすればよい。
【0053】
センサユニット6Cは、磁性体部材29-1と磁性体部材29-2とにより形成される内部空間に回路基板13が実装される。これにより、磁性体部材29により回路基板13を保護することができる。センサユニット6Cは、保持部材自体が磁性体部材29-1により形成されるとともに、磁性体部材29-2が蓋を兼ねるため、部品点数を削減できる。
【0054】
(変形例)
前述の実施の形態においては、外輪3を固定輪、内輪4を回転輪とした例で説明したが、外輪3を回転輪、内輪4を固定輪としてもよい。この場合、外輪3に磁気リング7、内輪4にセンサユニット6,6A,6B,6Cが固定された構造とすればよい。
【0055】
(まとめ)
本開示の軸受装置1は、外輪3、内輪4および転動体8を含む軸受2と、外輪3または内輪4のいずれか一方に固定される磁気リング7と、磁気リング7と軸受2の径方向に対向するように配置され、外輪3または内輪4のいずれか他方に固定されるステータ5と、回路基板13と、を備える。磁気リング7とステータ5とは、交流電力を生成する発電機Gを構成する。回路基板13は、軸受2の状態を検出する少なくとも1つのセンサ(例えば、加速度センサ15,温度センサ16)と、少なくとも1つのセンサの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路18と、発電機Gで生成される交流電力を少なくとも1つのセンサおよびワイヤレス通信回路18で使用可能な直流電力に変換する電源回路17と、を含む。外輪3の端部と内輪4の端部とで形成された環状空間内には、磁気リング7、ステータ5、および回路基板13が軸受2の軸方向に互いに重ならないように配置される。
【0056】
このような構成を備えることによって、環状空間内には、磁気リング7、ステータ5、および回路基板13が軸受2の軸方向に互いに重ならないように配置される。これにより、環状空間内に各部品を配置できるため軸受2の寸法を抑えることができる。さらに、軸受装置1は、例えば、磁気リング7が内輪4に固定され、対向する位置の外輪3にステータ5が固定される。内輪4および外輪3は、軸受2の軸方向への変動が小さいため、発電機Gによって安定した発電量を確保し、軸受装置の寸法を抑えつつも正常に機能することができる。
【0057】
好ましくは、環状空間は、外輪3の一方端の内周面に形成される第1の切欠き部3aと、第1の切欠き部3aに対向するように、内輪4の一方端の外周面に形成される第2の切欠き部4aと、によって形成される。
【0058】
このような構成を備えることによって、第1の切欠き部3aと第2の切欠き部4aとによって形成される環状空間に各部品を配置できるため軸受2の寸法を抑えることができる。
【0059】
好ましくは、第1の切欠き部3aまたは第2の切欠き部4aの一方には、回路基板13およびステータ5を保持する保持部材12が固定され、第1の切欠き部3aまたは第2の切欠き部4aの他方には、磁気リング7が固定される。
【0060】
このような構成を備えることによって、例えば、第1の切欠き部3aに回路基板13およびステータ5を保持する保持部材12が固定され、第2の切欠き部4aに磁気リング7が固定される。このため、ステータ5および磁気リング7は、軸受装置1の使用によるガタつきが少ない部品に固定されるため、発電機Gによって安定した発電量を確保することができる。
【0061】
好ましくは、保持部材12は、軸受2の径方向に第1の領域12bと第2の領域12cとに保持部材12を隔てる隔壁12aを有する磁性体材料である。第1の領域12bまたは第2の領域12cのいずれか一方を含む保持部材12の部分は、ステータ5として用いられる。
【0062】
このような構成を備えることによって、例えば、保持部材12は、隔壁12aにより第1の領域12bと第2の領域12cとの2つの領域に分割される。第1の領域12bを含む保持部材12の部分は、回路基板13を保持するために用いられ、第2の領域12cを含む保持部材12の部分は、磁性体部材21として兼用される。このため、軸受装置1は、部品点数を削減することができるとともに、保持部材12にステータ5を強固に固定することができる。
【0063】
好ましくは、保持部材12Aの形状は、環状であるとともに、外周部12Abと内周部12Aaと外周部12Abおよび内周部12Aaを繋ぐ底部12Adとを有する断面がU字状である。ステータ5は、外周部12Abまたは内周部12Aaのいずれか一方に固定され、回路基板13は、底部12Adに固定される。
【0064】
このような構成を備えることによって、保持部材12Aは、断面がU字状であり形状が簡単であるため、プレス加工が容易となり、製作コストを低減することができる。
【0065】
好ましくは、ステータ5Bは、コイル24と、複数の爪部27dが形成された磁性体部材27および複数の爪部28dが形成された磁性体部材28とを含む。コイル24は、磁性体部材27と磁性体部材28とを組合せることによって形成される内部空間に収納される。保持部材12Bは、磁性体部材27である。磁性体部材27の形状は、環状であるとともに、外周部27aと内周部27bと外周部27aおよび内周部27bを繋ぐ底部27cとを有する断面がU字状である。内周部27bは、複数の爪部27dによって形成される。底部27cには、軸受2の周方向に離間する複数の凹部27eが形成される。磁性体部材28の形状は、環状であるとともに、外周部28aと内周部28bと外周部28aおよび内周部28bを繋ぐ底部28cとを有する断面がU字状である。内周部28bは、複数の爪部27dと対向する複数の爪部28dによって形成される。外周部28aにおける軸受2の軸方向の端部には、軸受2の周方向に離間する複数の凸部28eが形成される。複数の凹部27eと複数の凸部28eとが嵌合することによって、複数の爪部27dおよび複数の爪部28dが、軸受2の周方向に隙間を空けて交互に配置される。
【0066】
このような構成を備えることによって、保持部材12Bは、磁性体部材27の機能を兼用するため、部品点数を削減できる。磁性体部材27および磁性体部材28は、断面がU字状であり形状が簡単であるため、プレス加工が容易となり、製作コストを低減することができる。凹部27eと凸部28eとを嵌合させることにより、治具を用いることなく2つの磁性体部材27,28の同軸を合わせるとともに、複数の爪部27d,28dの位置合わせを容易に行うことができる。
【0067】
好ましくは、ステータ5Cは、コイル24と、複数の爪部29aが形成された磁性体部材29-1および複数の爪部29bが形成された磁性体部材29-2とを含む。コイル24は、磁性体部材29-1と磁性体部材29-2とを組合せることによって形成される内部空間に収納される。保持部材は、磁性体部材29-1および磁性体部材29-2である。磁性体部材29-1の形状は、環状であるとともに、外周部29-1bと内周部29-1aと外周部29-1bおよび内周部29-1aを繋ぐ底部29-1dとを有する断面がU字状である。外周部29-1bまたは内周部29-1aは、複数の爪部29aによって形成される。磁性体部材29-2の形状は、環状であるとともに、外周部29-2bと内周部29-2aと外周部29-2bおよび内周部29-2aを繋ぐ底部29-2dとを有する断面がU字状である。外周部29-2bまたは内周部29-2aは、複数の爪部29bによって形成される。磁性体部材29は、軸受2の一方端に配置される。複数の爪部29aおよび複数の爪部29bは、軸受2の周方向に隙間を空けて交互に配置される。コイル24は、複数の爪部29aおよび複数の爪部29bが位置する側に配置される。回路基板13は、コイル24と軸受の径方向の反対側に配置される。ワイヤレス通信回路18は、アンテナ部18aを含む。アンテナ部18aが配置される位置と対向する磁性体部材29-2の側面の位置には、孔部29eが形成される。
【0068】
このような構成を備えることによって、保持部材自体が磁性体部材29-1により形成されるとともに、磁性体部材29-2が蓋を兼ねるため、部品点数を削減できる。さらに、孔部29eからワイヤレス通信の電波を外部に発信することができるとともに、外部から磁性体部材29の内部空間に異物が入ることを防止することによって内部に位置するコイル24、回路基板13等を保護することができる。
【0069】
本開示の軸受装置1は、外輪3、内輪4および転動体8を含む軸受の主要寸法が特定の規格に記載の標準軸受2を備える。軸受装置1は、外輪3または内輪4のいずれか一方に固定される磁気リング7と、磁気リング7と標準軸受2の径方向に対向するように配置され、外輪3または内輪4のいずれか他方に固定されるステータ5と、回路基板13と、を備える。磁気リング7とステータ5とは、交流電力を生成する発電機Gを構成する。回路基板13は、標準軸受2の状態を検出する少なくとも1つのセンサ(例えば、加速度センサ15,温度センサ16)と、少なくとも1つのセンサの出力を無線で外部に送信するワイヤレス通信回路18と、発電機Gで生成される交流電力を少なくとも1つのセンサおよびワイヤレス通信回路18で使用可能な直流電力に変換する電源回路17と、を含む。外輪3の端部と内輪4の端部とで形成された環状空間内には、磁気リング7、ステータ5、および回路基板13が配置される。
【0070】
このような構成を備えることによって、環状空間内に各部品を配置できるため標準軸受2の寸法を抑えることができる。さらに、軸受装置1は、例えば、磁気リング7が内輪4に固定され、対向する位置の外輪3にステータ5が固定される。内輪4および外輪3は、軸受2の軸方向への変動が小さいため、発電機Gによって安定した発電量を確保し、軸受装置の寸法を抑えつつも正常に機能することができる。
【0071】
好ましくは、環状空間内には、磁気リング7、ステータ5、および回路基板13が標準軸受2の軸方向に互いに重ならないように配置される。
【0072】
このような構成を備えることによって、環状空間内に各部品を配置できるため標準軸受2の寸法を抑えることができる。
【0073】
好ましくは、回路基板13の形状は、円弧状である。少なくとも1つのセンサとワイヤレス通信回路18と電源回路17とは、回路基板13の円周上に、軸方向で互いに重ならないように配置される。
【0074】
このような構成を備えることによって、標準軸受2の軸方向への厚みを増加させることなく複数の電子部品を回路基板13の円周上に配置することができ、標準軸受2の寸法を抑えることができる。
【0075】
好ましくは、特定の規格は、ISOまたはJISである。
このような構成を備えることによって、ISOまたはJISの規格にある寸法の標準軸受に適用することができる。
【0076】
好ましくは、標準軸受2は、ラジアル軸受である。ラジアル軸受の主要寸法は、ISO15またはJISB1512-1に規定される寸法である。
【0077】
このような構成を備えることによって、ISO15またはJISB1512-1に規定される寸法の標準軸受に適用することができる。
【0078】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1 軸受装置、2 軸受、標準軸受、3 外輪、3a 第1の切欠き部、4 内輪、4a 第2の切欠き部、5,5A,5B,5C ステータ、6,6A,6B,6C センサユニット、7 磁気リング、7a 芯金、7b 多極磁石、8 転動体、9 保持器、10 シール、12,12A,12B 保持部材、12Aa,27b,28b,29-1a
内周部、12Ab,27a,28a,29-1b 外周部、12Ad,27c,28c,29-1d 底部、12a 隔壁、12b 第1の領域、12c 第2の領域、13 回路基板、14 蓋、15 加速度センサ、16 温度センサ、17 電源回路、18 ワイヤレス通信回路、18a アンテナ部、21,22,26,27,28,29 磁性体部材、21a,22a,26a,26b,27d,28d,29a,29b 複数の爪部、23 ボビン、24 コイル、26c,27e,29d 凹部、26d,28e,29c 凸部、29e 孔部、30 樹脂部材、50 環状の凹部、G 発電機、O 回転軸。