(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052982
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】クレンジングに好適な組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/37 20060101AFI20240405BHJP
A61Q 1/14 20060101ALI20240405BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K8/37
A61Q1/14
A61Q19/10
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024032977
(22)【出願日】2024-03-05
(62)【分割の表示】P 2019155877の分割
【原出願日】2019-08-28
(71)【出願人】
【識別番号】391023932
【氏名又は名称】ロレアル
【氏名又は名称原語表記】L’OREAL
【住所又は居所原語表記】14 Rue Royale,75008 PARIS,France
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【弁理士】
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 翔
(57)【要約】
【課題】良好なメイクアップ除去性、水での良好な濯ぎ性、使用前の良好な安定性、及び適用中の「クッション性」感触等の良好なテクスチャを有することができる、クレンジングオイル製品として有用である組成物を提供すること。
【解決手段】(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリドと、(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油とを含む組成物に関する。本発明による組成物は、良好なメイクアップ除去性、水での良好な濯ぎ性、使用前の良好な安定性、及び適用中の「クッション性」感触等の良好なテクスチャを提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリドと、
(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、
(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油と
を含む、組成物。
【請求項2】
前記脂肪族モノカルボン酸が、4~10個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子、より好ましくは8~10個の炭素原子を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ジカルボン酸が、2~10個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子、より好ましくは4~6個の炭素原子を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドが、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドである、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物中の前記(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドの量が、組成物の総質量に対して、1質量%~25質量%、好ましくは3質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも2種の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、2~6個のポリグリセリル単位、好ましくは4~6個のポリグリセリル単位、より好ましくは5個又は6個のポリグリセリル単位を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、ジカプリン酸ポリグリセリル-6、ジオレイン酸ポリグリセリル-6、カプリル酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-2、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
組成物中の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの量が、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%の範囲である、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記(c)油が、植物油、脂肪族モノカルボン酸の合成トリグリセリド、及び前記合成トリグリセリド以外の合成エステル油から選択される、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
組成物中の前記(c)油の量が、組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは60質量%~90質量%、より好ましくは70質量%~85質量%の範囲である、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
化粧用組成物、好ましくはクレンジング組成物、より好ましくは皮膚クレンジング組成物である、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための美容方法。
【請求項14】
(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル並びに(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油を含む組成物中における、(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリドの使用であって、前記組成物を皮膚上に適用している間に前記組成物がクッション性テクスチャを提供できるようにするための、使用。
【請求項15】
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリド並びに(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油を含む組成物中における(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルの使用であって、前記組成物を皮膚上に適用している間に前記組成物がクッション性テクスチャを提供できるようにするための、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成分の特定の組み合わせを含む組成物に関し、詳細には、皮膚のための化粧用組成物及び同組成物を使用する美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のクレンジングは、顔のケアにとって非常に重要である。それは、できる限り効率的なものでなければならず、その理由は、脂肪性残渣、例えば過度の皮脂、日常的に使用される化粧料の残留物、及びメイクアップ製品、特にウォータープルーフの製品が、皮膚のひだに蓄積し、皮膚の毛穴を塞いで吹き出物の出現をもたらす可能性があるからである。
【0003】
いくつかのタイプの皮膚クレンジング製品、例えば、濯ぎ可能なクレンジング無水油及びジェル、並びに起泡性クリーム、ローション及びジェルが知られている。
【0004】
濯ぎ可能な無水油及びジェルは、主にこれらの配合物中に存在する油の力により、クレンジング作用を有する。これらの油は、脂肪残渣の溶解及びメイクアップ顔料の分散を可能にする。これらの製品は、効果的であり、耐性に優れる。
【0005】
クレンジングオイル製品等の、理想的な油ベースのメイクアップリムーバーは、良好なメイクアップ除去性、水での良好な濯ぎ性、良好な安定性、及び適用中の「クッション性」感触等の良好なテクスチャを有するべきである。「クッション性」感触は、本明細書では、あたかも指同士の間にクッションが存在していると感じられうるように、指が、メイクアップリムーバー、詳細には油の存在を感じることを意味する。
【0006】
しかしながら、従来の油ベースのメイクアップリムーバーが上記の要件を満たすことは難しい。
【0007】
例えば、JP-B-4550676は、3質量%~30質量%の水添ポリブテンを含むクレンジングオイル製品を開示している。水添ポリブテンは、きわめて濃厚な又は粘性の油であり、これによりクッション性感触を提供することができるが、該クレンジングオイルは概して濃厚すぎて又は粘性すぎてべとつき、クレンジングオイルが界面活性剤を含む場合でさえ、容易に濯ぎ落とすことができない場合がある。加えて、濯ぎ落とし後でさえ、べとつく感触が残る場合がある。
【0008】
JP-B-5057611もまた、良好な濯ぎ性を有する、油及び二分枝状脂肪酸ポリエチレングリコールエステルを含むクレンジングオイル製品を開示している。しかしながら、このクレンジングオイル製品がクッション性感触を提供することは難しい。
【0009】
JP-B-6215435もまた、平均重合度が15~30である特定タイプのポリグリセリル脂肪酸エステルを含むクレンジングオイル製品を開示している。これは、良好な濯ぎ性を実現させうる。しかしながら、このクレンジングオイル製品がクッション性感触を提供することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】JP-B-4550676
【特許文献2】JP-B-5057611
【特許文献3】JP-B-6215435
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones (1968)、Academic Press
【非特許文献2】Cosmetics and Toiletries、91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmetics
【非特許文献3】ASTM規格445付録C
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、良好なメイクアップ除去性、水での良好な濯ぎ性、使用前の良好な安定性、及び適用中の「クッション性」感触等の良好なテクスチャを有することができる、クレンジングオイル製品として有用である組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的は、
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリドと、
(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、
(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油と
を含む、組成物によって達成することができる。
【0014】
脂肪族モノカルボン酸は、4~10個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子、より好ましくは8~10個の炭素原子を含んでもよい。
【0015】
脂肪族ジカルボン酸は、2~10個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子、より好ましくは4~6個の炭素原子を含んでもよい。
【0016】
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドは、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドでありうる。
【0017】
本発明による組成物中の(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~25質量%、好ましくは3質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%の範囲であってもよい。
【0018】
本発明による組成物は、少なくとも2種の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルを含んでもよい。
【0019】
(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルは、2~6個のポリグリセリル単位、好ましくは4~6個のポリグリセリル単位、より好ましくは5個又は6個のポリグリセリル単位を含んでもよい。
【0020】
(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルは、ジカプリン酸ポリグリセリル-6、ジオレイン酸ポリグリセリル-6、カプリル酸ポリグリセリル-6、オレイン酸ポリグリセリル-2、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0021】
本発明による組成物中の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%の範囲であってもよい。
【0022】
(c)油は、植物油、脂肪族モノカルボン酸の合成トリグリセリド、及び合成トリグリセリド以外の合成エステル油から選択することができる。
【0023】
本発明による組成物中の(c)油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは60質量%~90質量%、より好ましくは70質量%~85質量%の範囲であってもよい。
【0024】
本発明による組成物は、化粧用組成物、好ましくはクレンジング組成物、より好ましくは皮膚クレンジング組成物であってもよい。
【0025】
本発明はまた、本発明による組成物をケラチン物質に適用する工程を含む、ケラチン物質、好ましくは皮膚のための美容方法にも関する。
【0026】
本発明はまた、(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル並びに(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油を含む組成物中における、(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリドの使用であって、組成物を皮膚上に適用している間に組成物がクッション性テクスチャを提供できるようにするための、使用にも関する。
【0027】
本発明はまた、(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリド並びに(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油を含む組成物中における(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルの使用であって、組成物を皮膚上に適用している間に組成物がクッション性テクスチャを提供できるようにするための、使用にも関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
鋭意検討の結果、本発明者らは、良好なメイクアップ除去性、水での良好な濯ぎ性、使用前の良好な安定性、及び適用中の「クッション性」感触等の良好なテクスチャを有することができる、クレンジング製品として有用な組成物を提供することが可能であることを発見した。
【0029】
本発明による組成物は、
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリドと、
(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルと、
(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油と
を含む。
【0030】
本発明による組成物は、良好なメイクアップ除去性、水での良好な濯ぎ性、使用前の良好な安定性(とりわけ広い温度範囲における)、及び適用中の「クッション性」感触等の良好なテクスチャを有することができる。
【0031】
「クッション性」感触は、本明細書では、あたかも指同士の間にクッションが存在していると感じられうるように、指が組成物の存在を感じることを意味する。
【0032】
「クッション性」感触は、以下の有益性を提供することができる:クッション性感触又はテクスチャを有する油ベースのクレンジング製品は、適用中に、指と顔との間の摩擦を低減させることができ、そのため皮膚の損傷が少なくなりうる。加えて、消費者は、クッション性感触又はテクスチャを有する油ベースのクレンジング製品でのマッサージ動作から快適さを感じる。
【0033】
クッション性感触又はテクスチャと、水での良好な濯ぎ性とを同時に提供することは困難であった。クッション性感触は、濃厚な又は粘性の高い油で達成できるが、そのような濃厚な又は粘性の高い油は、水で濯ぎ落とすことがより難しく、その理由は、濃厚な又は粘性の高い油が皮膚上に留まる傾向があるためである。一方で、希薄な又は粘性の低い油は、皮膚から水で除去しやすいが、そのような希薄な又は粘性の低い油は、消費者に、適用中に快適さを提供することができず、その理由は、それが、クッション性効果の欠如に起因して、指と皮膚との間の摩擦を増加させる傾向があるためである。
【0034】
徹底的な研究の結果として、本発明者らは、少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド、具体的にはカプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドの、油成分としての使用が、良好なクッション性感触のために適切な濃厚性又は粘性を提供できることを見出した。
【0035】
更に、本発明者らは、ポリグリセリル脂肪酸エステルの使用が、濃厚又は粘性であり且つポリグリセリル脂肪酸エステルなしでは水で皮膚から完全に濯ぎ落としにくい上記トリグリセリドを含む組成物に、水での良好な濯ぎ性を付与できることを見出した。更に、本発明者らは、ポリグリセリル脂肪酸エステルがまた、組成物を皮膚上に適用している間に組成物がクッション性テクスチャを提供できるようにすることにも寄与できることを見出した。
【0036】
以下では、本発明が、詳細に説明される。
【0037】
[脂肪族モノ及びジカルボン酸のトリグリセリド]
本発明による組成物は、少なくとも1種の(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドを含む。2種以上のそのような(a)トリグリセリドが使用される場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドが、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)にて、液体の形態にあることが好ましい。換言すれば、(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドが、25℃未満、より好ましくは20℃以下、より一層好ましくは15℃以下の融点を有することが好ましい。
【0039】
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドが揮発性でないことが好ましい。
【0040】
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドが植物等の天然源に由来することが好ましい。
【0041】
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドは、グリセロールが3種の脂肪酸でエステル化されているアシルグリセロールであることができ、ここで、脂肪酸のうちの少なくとも1種は脂肪族モノカルボン酸であり、脂肪酸のうちの少なくとも1種は脂肪族ジカルボン酸である。脂肪酸のうちの1種が脂肪族モノカルボン酸であってもよく、脂肪酸のうちの2種が脂肪族ジカルボン酸であってもよい。或いは、脂肪酸のうちの1種が脂肪族ジカルボン酸であってもよく、脂肪酸のうちの2種が脂肪族モノカルボン酸であってもよい。
【0042】
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドは、グリセロールと少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸と少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸との混合エステルであることができる。好ましくは、(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドは、グリセロールと2種の脂肪族モノカルボン酸と1種の脂肪族ジカルボン酸との混合エステルであることができる。
【0043】
脂肪族モノカルボン酸は、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪族モノカルボン酸が飽和であることが好ましい。
【0044】
脂肪族モノカルボン酸は、4~30個の炭素原子、好ましくは6~26個の炭素原子、より好ましくは8~22個の炭素原子を含んでもよい。
【0045】
脂肪族モノカルボン酸は、直鎖状又は分枝状の炭素鎖を有してもよい。脂肪族ジカルボン酸が、直鎖状の炭素鎖を有することが好ましい。
【0046】
脂肪族モノカルボン酸は、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸(カプリル酸)、2-エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸(カプリン酸)、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、イソステアリン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、イソアラキジン酸、オクチルドデカン酸、ヘンエイコサン酸及びドコサン酸からなる群から選択することができる。
【0047】
脂肪族モノカルボン酸が、4~10個の炭素原子、好ましくは6~10個の炭素原子、より好ましくは8~10個の炭素原子を含むことが好ましい。そのため、脂肪族モノカルボン酸が、カプリル酸及びカプリン酸から選択されることが、より一層好ましい。
【0048】
脂肪族ジカルボン酸は、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪族ジカルボン酸が飽和であることが好ましい。
【0049】
脂肪族ジカルボン酸は、2~20個の炭素原子、好ましくは3~16個の炭素原子、より好ましくは4~12個の炭素原子を含んでもよい。
【0050】
脂肪族ジカルボン酸は、直鎖状又は分枝状の炭素鎖を有してもよい。脂肪族ジカルボン酸が直鎖状の炭素鎖を有することが好ましい。
【0051】
脂肪族ジカルボン酸は、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸からなる群から選択することができる。
【0052】
脂肪族ジカルボン酸が、2~10個の炭素原子、好ましくは3~8個の炭素原子、より好ましくは4~6個の炭素原子を含むことが好ましい。そのため、脂肪族ジカルボン酸が、コハク酸及びアジピン酸から選択されることが、より一層好ましい。
【0053】
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドが、カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドであることが好ましい。カプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドとして、例えばIOI Oleo GmbH社により市販されているMiglyol 829を使用することができる。
【0054】
本発明による組成物中の(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドの量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってもよい。
【0055】
一方で、本発明による組成物中の(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドの量は、組成物の総質量に対して、25質量%以下、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下であってもよく、但し、(a)トリグリセリドの量は0以外である。
【0056】
したがって、本発明による組成物中の(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~25質量%、好ましくは3質量%~20質量%、より好ましくは5質量%~15質量%の範囲であってもよい。
【0057】
[ポリグリセリル脂肪酸エステル]
本発明による組成物は、少なくとも1種の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルを含む。2種以上のそのような(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが使用される場合、それらは、同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
本発明による組成物が、少なくとも2種の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルを含むことが好ましい。
【0059】
(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、2~6個のグリセロール、より好ましくは4~6個のグリセロール、より一層好ましくは5個又は6個のグリセロールに由来するポリグリセロール部分を有することが好ましい。換言すれば、(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、2~6個のポリグリセリル単位、より好ましくは4~6個のポリグリセリル単位、より一層好ましくは5個又は6個のポリグリセリル単位を含むことが好ましい。全ての(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルがポリグリセリル短鎖(例えば、10個未満のポリグリセリル単位、好ましくは9個未満のポリグリセリル単位、より好ましくは8個未満のポリグリセリル単位)を有する場合、本発明による組成物の安定性は強化されうる。
【0060】
(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルは、HLB(親水性親油性バランス)値が、4.0~16.0、好ましくは4.5~15.0、より好ましくは5.0~15.0でありうる。2種以上のポリグリセリル脂肪酸エステルが使用される場合、HLB値は、全てのポリグリセリル脂肪酸エステルのHLB値の質量平均により決定される。
【0061】
(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルは、2~30個の炭素原子、好ましくは4~30個の炭素原子、より好ましくは6~30個の炭素原子を含む、直鎖状又は分枝状で飽和又は不飽和の脂肪酸、好ましくは飽和の脂肪酸の、モノ、ジ及びトリエステル、例えば、ラウリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、カプリン酸、カプリル酸及びミリスチン酸から選ぶことができる。
【0062】
(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルは、カプリル酸PG2、セスキカプリル酸PG2、ジカプリル酸PG2、トリカプリル酸PG2、カプリン酸PG2、セスキカプリン酸PG2、ジカプリン酸PG2、トリカプリン酸PG2、ラウリン酸PG2、セスキラウリン酸PG2、ジラウリン酸PG2、トリラウリン酸PG2、ミリスチン酸PG2、セスキミリスチン酸PG2、ジミリスチン酸PG2、トリミリスチン酸PG2、ステアリン酸PG2、セスキステアリン酸PG2、ジステアリン酸PG2、トリステアリン酸PG2、イソステアリン酸PG2、セスキイソステアリン酸PG2、ジイソステアリン酸PG2、トリイソステアリン酸PG2、オレイン酸PG2、セスキオレイン酸PG2、ジオレイン酸PG2、トリオレイン酸PG2、カプリル酸PG3、セスキカプリル酸PG3、ジカプリル酸PG3、トリカプリル酸PG3、カプリン酸PG3、セスキカプリン酸PG3、ジカプリン酸PG3、トリカプリン酸PG3、ラウリン酸PG3、セスキラウリン酸PG3、ジラウリン酸PG3、トリラウリン酸PG3、ミリスチン酸PG3、セスキミリスチン酸PG3、ジミリスチン酸PG3、トリミリスチン酸PG3、ステアリン酸PG3、セスキステアリン酸PG3、ジステアリン酸PG3、トリステアリン酸PG3、イソステアリン酸PG3、セスキイソステアリン酸PG3、ジイソステアリン酸PG3、トリイソステアリン酸PG3、オレイン酸PG3、セスキオレイン酸PG3、ジオレイン酸PG3、トリオレイン酸PG3、カプリル酸PG4、セスキカプリル酸PG4、ジカプリル酸PG4、トリカプリル酸PG4、カプリン酸PG4、セスキカプリン酸PG4、ジカプリン酸PG4、トリカプリン酸PG4、ラウリン酸PG4、セスキラウリン酸PG4、ジラウリン酸PG4、トリラウリン酸PG4、ミリスチン酸PG4、セスキミリスチン酸PG4、ジミリスチン酸PG4、トリミリスチン酸PG4、ステアリン酸PG4、セスキステアリン酸PG4、ジステアリン酸PG4、トリステアリン酸PG4、イソステアリン酸PG4、セスキイソステアリン酸PG4、ジイソステアリン酸PG4、トリイソステアリン酸PG4、オレイン酸PG4、セスキオレイン酸PG4、ジオレイン酸PG4、トリオレイン酸PG4、カプリル酸PG5、セスキカプリル酸PG5、ジカプリル酸PG5、トリカプリル酸PG5、テトラカプリル酸PG5、カプリン酸PG5、セスキカプリン酸PG5、ジカプリン酸PG5、トリカプリン酸PG5、テトラカプリン酸PG5、ラウリン酸PG5、セスキラウリン酸PG5、ジラウリン酸PG5、トリラウリン酸PG5、テトララウリン酸PG5、ミリスチン酸PG5、セスキミリスチン酸PG5、ジミリスチン酸PG5、トリミリスチン酸PG5、テトラミリスチン酸PG5、ステアリン酸PG5、セスキステアリン酸PG5、ジステアリン酸PG5、トリステアリン酸PG5、テトラステアリン酸PG5、イソステアリン酸PG5、セスキイソステアリン酸PG5、ジイソステアリン酸PG5、トリイソステアリン酸PG5、テトライソステアリン酸PG5、オレイン酸PG5、セスキオレイン酸PG5、ジオレイン酸PG5、トリオレイン酸PG5、テトラオレイン酸PG5、カプリル酸PG6、セスキカプリル酸PG6、ジカプリル酸PG6、トリカプリル酸PG6、テトラカプリル酸PG6、ペンタカプリル酸PG6、カプリン酸PG6、セスキカプリン酸PG6、ジカプリン酸PG6、トリカプリン酸PG6、テトラカプリン酸PG6、ペンタカプリン酸PG6、ラウリン酸PG6、セスキラウリン酸PG6、ジラウリン酸PG6、トリラウリン酸PG6、テトララウリン酸PG6、ペンタラウリン酸PG6、ミリスチン酸PG6、セスキミリスチン酸PG6、ジミリスチン酸PG6、トリミリスチン酸PG6、テトラミリスチン酸PG6、ペンタミリスチン酸PG6、ステアリン酸PG6、セスキステアリン酸PG6、ジステアリン酸PG6、トリステアリン酸PG6、テトラステアリン酸PG6、ペンタステアリン酸PG6、イソステアリン酸PG6、セスキイソステアリン酸PG6、ジイソステアリン酸PG6、トリイソステアリン酸PG6、テトライソステアリン酸PG6、ペンタイソステアリン酸PG6、オレイン酸PG6、セスキオレイン酸PG6、ジオレイン酸PG6、トリオレイン酸PG6、テトラオレイン酸PG6、ペンタオレイン酸PG6、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0063】
(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、
- 2~6個のグリセロール単位を含むモノ又はジカプリン酸ポリグリセリル、
- 2~6個のグリセロール単位を含むモノ又はジオレイン酸ポリグリセリル、及び
- 2~6個のグリセロール単位を含むモノ又はジカプリル酸ポリグリセリル
から選ばれることが好ましい。
【0064】
(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルが、ジカプリン酸ポリグリセリル-6(ジカプリン酸PG6)、ジオレイン酸ポリグリセリル-6(ジオイレイン酸PG6)、カプリル酸ポリグリセリル-6(カプリル酸PG6)、オレイン酸ポリグリセリル-2(オレイン酸PG2)、及びこれらの混合物からなる群から選択されることが、より好ましい。
【0065】
本発明による組成物が、
- 2~6個のグリセロール単位を含むモノ若しくはジカプリン酸ポリグリセリルと、
- 2~6個のグリセロール単位を含むモノ若しくはジオレイン酸ポリグリセリル、及び/又は
- 2~6個のグリセロール単位を含むモノ若しくはジカプリル酸ポリグリセリルと
の組み合わせを含むことが好ましい。
【0066】
本発明による組成物が、
- ジカプリン酸PG6と、
- ジオレイン酸PG6、及び/又は
- カプリル酸PG6と
の組み合わせを含むことが、より好ましい。
【0067】
ジカプリン酸PG6として、例えば太陽化学株式会社により市販されているSunsoft Q-102H-Cを使用することができる。ジオレイン酸PG6として、太陽化学株式会社により市販されているSunsoft Q-172H-Cを使用することができる。カプリル酸PG6として、太陽化学株式会社により市販されているSunsoft Q-8H-Cを使用することができる。
【0068】
本発明による組成物中の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、1質量%以上、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上であってもよい。
【0069】
一方で、本発明による組成物中の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下であってもよく、但し、(b)ポリグリセリル脂肪酸の量は0以外である。
【0070】
したがって、本発明による組成物中の(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルの量は、組成物の総質量に対して、1質量%~20質量%、好ましくは3質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%の範囲であってもよい。
【0071】
[油]
本発明による組成物は、(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油を含む。2種以上のそのような(c)油が使用される場合、それらは、同一であっても異なっていてもよい。
【0072】
(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油は、追加の油とみなすことができる。
【0073】
本明細書では、「油」は、大気圧(760mmHg)下、室温(25℃)にて、液状又はペースト状(非固体)の形態にある脂肪化合物又は脂肪物質を意味する。そのため、(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油は、25℃未満、より好ましくは20℃以下、より一層好ましくは15℃以下の融点を有する。油として、化粧料中で一般に使用されるものを、単独で又はそれらの組み合わせにおいて使用することができる。これらの油は、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0074】
(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油は、炭化水素油、シリコーン油等の非極性油、植物油若しくは動物油及びエステル油若しくはエーテル油等の極性油、又はこれらの混合物であってもよい。
【0075】
(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油は、植物又は動物起源、合成油、シリコーン油、炭化水素油及び脂肪族アルコールからなる群から選択することができる。
【0076】
植物油の例として、例えば、亜麻仁油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、アボカド油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、ホホバ油、ヒマワリ油、アーモンド油、菜種油、ゴマ油、ダイズ油、ピーナツ油、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0077】
合成油の例として、アルカン油、例えばイソドデカン及びイソヘキサデカン、エステル油、エーテル油及び人工トリグリセリドを挙げることができる。
【0078】
エステル油は、好ましくは、飽和又は不飽和で直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族一酸又は多酸と、飽和又は不飽和で直鎖状又は分枝状のC1~C26脂肪族モノアルコール又は多価アルコールとの液状エステルであり、これらのエステルの合計炭素原子数は10以上である。
【0079】
好ましくは、モノアルコールのエステルの場合、本発明のエステルが由来するアルコール及び酸のうちの少なくとも1つは、分枝状である。
【0080】
一酸とモノアルコールとのモノエステルの中でも、パルミチン酸エチル、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ミリスチン酸アルキル、例えばミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸エチル、ステアリン酸イソセチル、イソノナン酸2-エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ネオペンタン酸イソデシル及びネオペンタン酸イソステアリルを挙げることができる。
【0081】
C4~C22ジカルボン酸又はトリカルボン酸とC1~C22アルコールとのエステル、及びモノカルボン酸、ジカルボン酸又はトリカルボン酸と、非糖C4~C26ジヒドロキシ、トリヒドロキシ、テトラヒドロキシ又はペンタヒドロキシアルコールとのエステルもまた使用することができる。
【0082】
特に挙げることができるのは以下である:セバシン酸ジエチル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジ-n-プロピル、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソステアリル、マレイン酸ビス(2-エチルヘキシル)、クエン酸トリイソプロピル、クエン酸トリイソセチル、クエン酸トリイソステアリル、トリ乳酸グリセリル、トリオクタン酸グリセリル、クエン酸トリオクチルドデシル、クエン酸トリオレイル、ジヘプタン酸ネオペンチルグリコール及びジイソノナン酸ジエチレングリコール。
【0083】
エステル油として、C6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸の糖エステル及びジエステルを使用することができる。用語「糖」は、いくつかのアルコール官能基を含有し、アルデヒド又はケトン官能基を有し又は有さず、且つ少なくとも4個の炭素原子を含む、酸素含有炭化水素系化合物を意味することが想起される。これらの糖は、単糖、オリゴ糖又は多糖であってもよい。
【0084】
挙げることができる好適な糖の例としては、スクロース(又はサッカロース)、グルコース、ガラクトース、リボース、フコース、マルトース、フルクトース、マンノース、アラビノース、キシロース及びラクトース、並びにそれらの誘導体、特にアルキル誘導体、例えばメチル誘導体、例としてはメチルグルコースがある。
【0085】
脂肪酸の糖エステルは、前述の糖と、直鎖状若しくは分枝状で飽和若しくは不飽和のC6~C30、好ましくはC12~C22脂肪酸とのエステル、又はエステル混合物を含む群から特に選ぶことができる。これらの化合物は、不飽和である場合、1~3個の共役又は非共役の炭素-炭素二重結合を有しうる。
【0086】
この変形によるエステルはまた、モノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びポリエステル、並びにこれらの混合物からも選択することができる。
【0087】
これらのエステルは、例えば、オレイン酸エステル、ラウリン酸エステル、パルミチン酸エステル、ミリスチン酸エステル、ベヘン酸エステル、ヤシ脂肪酸エステル、ステアリン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル、カプリン酸エステル及びアラキドン酸エステル、又はこれらの混合物、例えば特に、オレオパルミチン酸、オレオステアリン酸、及びパルミトステアリン酸の混合エステル、並びにテトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルであってもよい。
【0088】
より詳細には、モノエステル及びジエステル、特にスクロース、グルコース又はメチルグルコースのモノオレイン酸エステル又はジオレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、ベヘン酸エステル、オレオパルミチン酸エステル、リノール酸エステル、リノレン酸エステル及びオレオステアリン酸エステルが使用される。
【0089】
挙げることができる例は、Amerchol社により名称Glucate(登録商標)DOで販売されている製品であり、これは、ジオレイン酸メチルグルコースである。
【0090】
好ましいエステル油の例として、例えば、アジピン酸ジイソプロピル、アジピン酸ジオクチル、ヘキサン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸エチル、オクタン酸セチル、オクタン酸オクチルドデシル、ネオペンタン酸イソデシル、プロピオン酸ミリスチル、2-エチルヘキサン酸2-エチルヘキシル、オクタン酸2-エチルヘキシル、(カプリル酸/カプリン酸)2-エチルヘキシル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸イソプロピル、炭酸ジカプリリル、ラウロイルサルコシン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸エチルヘキシル、ラウリン酸イソヘキシル、ラウリン酸ヘキシル、ステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸イソデシル、トリ(2-エチルヘキサン酸)グリセリル、テトラ(2-エチルヘキサン酸)ペンタエリスリチル、コハク酸2-エチルヘキシル、セバシン酸ジエチル、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0091】
人工トリグリセリドの例として、例えば、カプリルカプリリルグリセリド、トリミリスチン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、トリリノレン酸グリセリル、トリラウリン酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、トリカプリル酸グリセリル、トリ(カプリン酸/カプリル酸)グリセリル及びトリ(カプリン酸/カプリル酸/リノレン酸)グリセリルを挙げることができる。
【0092】
シリコーン油の例として、例えば、直鎖状オルガノポリシロキサン、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等、環状オルガノポリシロキサン、例えばシクロヘキサシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0093】
好ましくは、シリコーン油は、液状ポリジアルキルシロキサン、特に液状ポリジメチルシロキサン(PDMS)、及び少なくとも1つのアリール基を含む液状ポリオルガノシロキサンから選ばれる。
【0094】
これらのシリコーン油はまた、有機変性されていてもよい。本発明に従って使用されうる有機変性シリコーンは、上で定義されたシリコーン油であり、それらの構造中に、炭化水素系基を介して結合されている1つ又は複数の有機官能基を含む。
【0095】
オルガノポリシロキサンは、Walter Noll著、Chemistry and Technology of Silicones (1968)、Academic Pressにおいて、より詳細に定義されている。これらは、揮発性であっても不揮発性であってもよい。
【0096】
それらが揮発性である場合、シリコーンは、より詳細には、沸点が60℃から260℃の間であるものから選ばれ、より一層詳細には、以下から選ばれる:
(i)3~7個、好ましくは4~5個のケイ素原子を含む環状ポリジアルキルシロキサン。それらは、例えば、特にUnion Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標)7207で、又はRhodia社により名称Silbione(登録商標)70045 V2で販売されているオクタメチルシクロテトラシロキサン、Union Carbide社により名称Volatile Silicone(登録商標)7158で、Rhodia社により名称Silbione(登録商標)70045 V5で販売されているデカメチルシクロペンタシロキサン、及びMomentive Performance Materials社により名称Silsoft 1217で販売されているドデカメチルシクロペンタシロキサン、並びにこれらの混合物である。ジメチルシロキサン/メチルアルキルシロキサン等のタイプのシクロコポリマー、例えば式:
【0097】
【0098】
の、Union Carbide社により販売されているSilicone Volatile(登録商標)FZ 3109もまた挙げることができる。
環状ポリジアルキルシロキサンの有機ケイ素化合物との混合物もまた挙げることができ、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサンとテトラトリメチルシリルペンタエリスリトールとの混合物(50/50)、及びオクタメチルシクロテトラシロキサンとオキシ-1,1'-ビス(2,2,2',2',3,3'-ヘキサトリメチルシリルオキシ)ネオペンタンとの混合物である。並びに
(ii)2~9個のケイ素原子を含有し、25℃にて5×10-6m2/s以下の粘度を有する直鎖状揮発性ポリジアルキルシロキサン。例は、特にトーレ・シリコーン株式会社により名称SH 200で販売されているデカメチルテトラシロキサンである。この部類に属するシリコーン類はまた、Cosmetics and Toiletries、91巻、76年1月、27~32頁、Todd & Byers、Volatile Silicone Fluids for Cosmeticsにおいて公表されている論文にも記載されている。シリコーンの粘度は、ASTM規格445付録Cに従って25℃にて測定される。
【0099】
不揮発性ポリジアルキルシロキサンもまた使用することができる。これらの不揮発性シリコーンは、より詳細には、ポリジアルキルシロキサンから選ばれ、その中でも、トリメチルシリル末端基を含有するポリジメチルシロキサンを主に挙げることができる。
【0100】
これらのポリジアルキルシロキサンの中でも、非限定的に、以下の市販製品を挙げることができる:
- Rhodia社により販売されているSilbione(登録商標)油の47及び70 047シリーズ又はMirasil(登録商標)油、例としては70 047 V 500 000油、
- Rhodia社により販売されているMirasil(登録商標)シリーズの油、
- Dow Corning社製の200シリーズの油、例えば粘度60,000mm2/sのDC200、並びに
- General Electric社製のViscasil(登録商標)油、及びGeneral Electric社製のSFシリーズの一定の油(SF 96、SF 18)。
【0101】
名称ジメチコノール(CTFA)で知られている、ジメチルシラノール末端基を含有するポリジメチルシロキサン、例えばRhodia社製の48シリーズの油もまた挙げることができる。
【0102】
アリール基を含有するシリコーンの中でも、ポリジアリールシロキサン、特にポリジフェニルシロキサン及びポリアルキルアリールシロキサン、例えばフェニルシリコーン油を挙げることができる。
【0103】
フェニルシリコーン油は、以下の式:
【0104】
【0105】
(式中、
R1~R10は、互いに独立に、飽和又は不飽和で直鎖状、環状又は分枝状のC1~C30炭化水素系基、好ましくはC1~C12炭化水素系基、より好ましくはC1~C6炭化水素系基、特にメチル、エチル、プロピル又はブチル基であり、
m、n、p及びqは、互いに独立に、両端を含む0~900、好ましくは両端を含む0~500、より好ましくは両端を含む0~100の整数であり、
但し、n+m+qの和は0以外である)
のフェニルシリコーンから選ぶことができる。
【0106】
挙げることができる例には、以下の名称で販売されている製品がある:
- Rhodia社製のSilbione(登録商標)油の70 641シリーズ、
- Rhodia社製のRhodorsil(登録商標)70 633及び763シリーズの油、
- Dow Corning社製のDow Corning 556 Cosmetic Grade Fluid油、
- Bayer社製のPKシリーズのシリコーン、例えばPK20製品、並びに
- General Electric社製のSFシリーズの一定の油、例えばSF 1023、SF 1154、SF 1250及びSF 1265。
【0107】
フェニルシリコーン油として、フェニルトリメチコン(上記の式中、R1~R10は、メチルであり、p、q及びn=0であり、m=1である)が好ましい。
【0108】
有機変性液状シリコーンは、特に、ポリエチレンオキシ基及び/又はポリプロピレンオキシ基を含有してもよい。そのため、信越化学工業株式会社によって提案されているシリコーンKF-6017、及びUnion Carbide社製のSilwet(登録商標)L722油及びL77油を挙げることができる。
【0109】
炭化水素油は、以下から選ぶことができる:
- 直鎖状又は分枝状の、任意選択で環状のC6~C16低級アルカン。挙げることができる例には、ヘキサン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、及びイソパラフィン、例としてはイソヘキサデカン、イソドデカン及びイソデカンがある。並びに
- 16個超の炭素原子を含有する直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えば流動パラフィン、液状ワセリン、ポリデセン及び水添ポリイソブテン、例えばParleam(登録商標)、並びにスクアラン。
【0110】
炭化水素油の好ましい例としては、例えば、直鎖状又は分枝状の炭化水素、例えばイソヘキサデカン、イソドデカン、スクアラン、鉱物油(例えば、流動パラフィン)、パラフィン、ワセリン又はペトロラタム、ナフタレン等、水添ポリイソブテン、イソエイコサン及びデセン/ブテンコポリマー、並びにこれらの混合物を挙げることができる。
【0111】
水添又は非水添ポリブテンが、(c)油として使用されないことが好ましい。
【0112】
脂肪族アルコールにおける用語「脂肪族」は、比較的大きい数の炭素原子を包含することを意味する。そのため、4個以上、好ましくは6個以上、より好ましくは12個以上の炭素原子を有するアルコールが、脂肪族アルコールの範囲内に包含される。脂肪族アルコールは、飽和であっても不飽和であってもよい。脂肪族アルコールは、直鎖状であっても分枝状であってもよい。
【0113】
脂肪族アルコールは、構造R-OH(式中、Rは、4~40個の炭素原子、好ましくは6~30個の炭素原子、より好ましくは12~20個の炭素原子を含有する、飽和及び不飽和で直鎖状及び分枝状の基から選ばれる)を有してもよい。少なくとも1つの実施形態では、Rは、C12~C20アルキル及びC12~C20アルケニル基から選ばれうる。Rは、少なくとも1つのヒドロキシル基で置換されていてもよく、置換されていなくてもよい。
【0114】
脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、パルミトレイルアルコール、アラキドニルアルコール、エルシルアルコール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0115】
脂肪族アルコールが飽和脂肪族アルコールであることが好ましい。
【0116】
そのため、脂肪族アルコールは、直鎖状又は分枝状で飽和又は不飽和のC6~C30アルコール、好ましくは直鎖状又は分枝状で飽和のC6~C30アルコール、更に好ましくは直鎖状又は分枝状で飽和のC12~C20アルコールから選択することができる。
【0117】
用語「飽和脂肪族アルコール」は、本明細書では、脂肪族飽和炭素の長鎖を有するアルコールを意味する。飽和脂肪族アルコールが、任意の直鎖状又は分枝状で飽和のC6~C30脂肪族アルコールから選択されることが好ましい。直鎖状又は分枝状で飽和のC6~C30脂肪族アルコールの中でも、直鎖状又は分枝状で飽和のC12~C20脂肪族アルコールが、好ましくは使用される。任意の直鎖状又は分枝状で飽和のC16~C20脂肪族アルコールが、より好ましくは使用される。分枝状のC16~C20脂肪族アルコールが、より一層好ましくは使用される。
【0118】
飽和脂肪族アルコールの例として、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ウンデシレニルアルコール、ミリスチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物を挙げることができる。一実施形態では、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、又はこれらの混合物(例えば、セテアリルアルコール)、及びベヘニルアルコールを、飽和脂肪族アルコールとして使用することができる。
【0119】
少なくとも1つの実施形態によれば、本発明による組成物中で使用される脂肪族アルコールは、好ましくは、セチルアルコール、オクチルドデカノール、ヘキシルデカノール、及びこれらの混合物から選ばれる。
【0120】
(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油が、植物油、脂肪族モノカルボン酸の合成トリグリセリド、及び合成トリグリセリド以外の合成エステル油から選ばれることが好ましい。
【0121】
植物油として、上で説明したものを挙げることができる。
【0122】
脂肪族モノカルボン酸の合成トリグリセリドとして、上記の人工トリグリセリド、例えばカプリル酸/カプリン酸トリグリセリドを挙げることができる。脂肪族モノカルボン酸のトリグリセリドは、そこでグリセロールが、同一の又は異なる3種のモノカルボン酸でエステル化されているアシルグリセロールであることができる。そのため、脂肪族モノカルボン酸の合成トリグリセリドは、グリセロールと脂肪族モノカルボン酸との混合エステルであり、脂肪族ジカルボン酸に由来する単位を一切含まない。
【0123】
合成エステル油として、上で説明したものを挙げることができる。
【0124】
(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油が、植物油から選ばれることが、より好ましい。
【0125】
本発明による組成物中の(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上であってもよい。
【0126】
一方で、本発明による組成物中の(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油の量は、組成物の総質量に対して、95質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下であってもよく、但し、(c)油の量は0以外である。
【0127】
したがって、本発明による組成物中の(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の油の量は、組成物の総質量に対して、50質量%~95質量%、好ましくは60質量%~90質量%、より好ましくは70質量%~85質量%の範囲であってもよい。
【0128】
[他の成分]
本発明による組成物はまた、少なくとも1種の任意選択の又は追加の成分も含んでもよい。
【0129】
任意選択の又は追加の成分は、カチオン性、アニオン性、非イオン性又は両性ポリマー;上記の成分(b)以外のカチオン性、アニオン性、非イオン性又は両性界面活性剤;増粘剤;染料;日焼け防止剤;ビタミン又はプロビタミン;香料;保存料、共保存料、安定剤;及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0130】
言うまでもなく、当業者であれば、本発明による組成物に本質的に関連する有利な特性が、想定される添加によって悪影響を受けない又は実質的に受けないように、本発明による組成物に添加される任意選択の又は追加の成分を注意深く選択することになる。
【0131】
任意選択の又は追加の成分の量は限定されないが、本発明による組成物の総質量に対して、0.001質量%~10質量%、好ましくは0.01質量%~5質量%、より好ましくは0.1質量%~1質量%であってもよい。
【0132】
[調製]
本発明による組成物は、必須成分としての成分(a)~(c)と、上で説明した任意選択の又は追加の成分とを混合することによって調製することができる。
【0133】
上記の必須成分と任意選択の成分とを混合する方法及び手段は限定されない。上記の必須成分と任意選択の成分とを混合するために、任意の従来の方法及び手段を使用して、本発明による組成物を調製することができる。
【0134】
[形態]
本発明による組成物は、油ベースの組成物であることができる。そのため、本発明による組成物は、液体等の形態であってもよい。
【0135】
本発明による組成物は、好ましくは透明又は半透明でありうる。
【0136】
更に、本発明による組成物は、好ましくは粘性であってもよく、それは、例えば、保管されているときに非常に良好な安定性を呈することができる。「粘性」とは、本明細書では、本発明による組成物が流れないこと、換言すると、それが一定の粘度を有することを意味する。本発明による組成物の粘度は、例えば、5~190ポアズ(0.5~19Pa.s)、好ましくは5~150ポアズ(0.5~15Pa.s)、より好ましくは10~120ポアズ(1~12Pa.s)の範囲であってもよく、この粘度は、Rheomat 180粘度計を用いて剪断率200s-1及び25℃にて測定される。
【0137】
好ましくは、本発明による組成物は、実質的に無水である。用語「実質的に無水である」は、本明細書では、本発明による組成物が、ごくわずかな水を含有してもよく、好ましくは水を含有しないことを意味する。そのため、水の量は、組成物の総質量に対して、2質量%以下、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%であってもよい。本発明による組成物が、意図的に添加される個別の成分としての水を含有しないことが特に好ましい。一方で、本発明による組成物に含まれることになる成分自体中に、少量又は微量の水が存在しうる。
【0138】
[美容方法]
本発明による組成物は、好ましくは、化粧用組成物として使用することができる。該化粧用組成物は、クレンジング組成物、例えば皮膚クレンジング組成物であってもよい。皮膚は、本明細書では、顔面の皮膚、首の皮膚及び頭皮を包含する。好ましい実施形態では、本発明による組成物は、メイクアップリムーバーであることができる。本発明による組成物はまた、唇等の粘膜にも使用することができる。
【0139】
詳細には、本発明による組成物は、ケラチン物質上、例えば皮膚又は唇上、好ましくは皮膚上への適用が意図されてもよい。そのため、本発明による組成物は、皮膚又は唇のための美容方法、好ましくは皮膚又は唇のためのクレンジング方法、より好ましくは皮膚上のメイクアップを除去するための皮膚のためのクレンジング方法に使用することができる。
【0140】
本発明による、皮膚又は唇等のケラチン物質のための美容方法又は化粧料の使用は、少なくとも、本発明による組成物をケラチン物質上に適用する工程を含む。本発明による、皮膚又は唇等のケラチン物質のための美容方法又は化粧料の使用はまた、本発明による組成物をケラチン物質から濯ぎ落とす工程も含むことができる。濯ぎ落とす工程は、本発明による組成物をケラチン物質から濯ぎ落とすために、水を用いることができる。
【0141】
[使用]
本発明はまた、
(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステル並びに(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油を含む組成物中における、(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリド使用であって、組成物を皮膚上に適用している間に組成物がクッション性テクスチャを提供できるようにするための、使用、
又は
(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸の少なくとも1種のトリグリセリド並びに(c)(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド以外の少なくとも1種の油を含む組成物中における(b)少なくとも1種のポリグリセリル脂肪酸エステルの使用であって、組成物を皮膚上に適用している間に組成物がクッション性テクスチャを提供できるようにするための、使用
にも関する。
【実施例0142】
本発明を、実施例によって、より詳細に説明する。しかしながら、これらの実施例が本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【0143】
(実施例1~3及び比較例1~3)
[調製]
実施例1~3及び比較例1~3によるクレンジング化粧用組成物のそれぞれを、表1中の「A」の行に示す成分をおよそ70℃にて混合してA相を形成し、表1中の「B」の行に示す成分をおよそ70℃にて混合してB相を形成し、次いでA相とB相とを混合して混合物を得、続いて、そのように得た混合物を室温へ冷却することによって調製した。表1に示す成分の量の数値は、全て、組成物の総質量に対する有効原料の「質量%」に基づく。
【0144】
【0145】
[評価]
(濯ぎ落とし後の感触)
各組成物4mLを5人のパネリストの顔に指を用いて適用し、円を描く動作で、顔全体を30秒間、目の領域を10秒間マッサージした。最後に、該組成物を、顔全体から、特に目の領域から、微温水で濯ぎ落とした。パネリストらは、濯ぎ落とし直後の感触(皮膚の仕上がり)を、1(非常に不良)~5(優良)のグレードで評価した。
【0146】
平均スコアを表1に示す。
【0147】
(テクスチャ(クッション性感触))
各組成物4mLを5人のパネリストの顔に指を用いて適用し、円を描く動作で、顔全体を30秒間、目の領域を10秒間マッサージした。パネリストらは、適用している間のクッション性感触を、1(非常に希薄)~5(非常にクッション性がある)のグレードで評価した。
【0148】
平均スコアを表1に示す。
【0149】
(メイクアップ除去性)
5人のパネリストのそれぞれが、マスカラ製品(MAYBELLINE Volum'Express Hypercurl Waterproof N 01 Black)を、睫毛に、ブラシを用いて総計40回の塗りで(1回ごとにブラシをマスカラボトル中に浸した)塗布することによって自分の顔をメイクアップした。
【0150】
次いで、各組成物4mLを5人のパネリストの顔に指を用いて適用し、円を描く動作で、顔全体を30秒間、目の領域を10秒間マッサージした。最後に、該組成物を、顔全体から、特に目の領域から、微温水で濯ぎ落とした。パネリストらは、メイクアップ除去性を、1(非常に不良)~5(非常に良好)のグレードで評価し、その評価の平均を以下の基準に従って分類した。
非常に良好(5.0~4.0):メイクアップ残渣は全く観察されなかった。
良好(3.9~3.0):メイクアップ残渣はほとんど観察されなかった。
不良(2.9~2.0):メイクアップ残渣はわずかに観察された。
非常に不良(1.9~1.0):メイクアップ残渣は目に見えて観察された。
【0151】
結果を表1に示す。
【0152】
(安定性)
各組成物を透明なガラス瓶中に満たし、そのガラス瓶を、-5℃、4℃、25℃、40℃、45℃及び50℃の温度条件下で2か月間保持した。次いで、各瓶の外見を、変化の程度(透明性、色及び匂い)について検査し、以下の基準によって評価した。
非常に良好:製造時とほぼ同じ状態。
良好:透明性、色及び匂いの点で小さな変化が観察された。
不良:透明性、色及び匂いの点で変化が明らかに観察された。沈殿又は濁った外見のいずれかもまた明らかに観察された。
非常に不良:透明性、色及び匂いの点で変化が顕著に観察された。沈殿又は濁った外見のいずれかもまた顕著に観察された。
【0153】
結果を表1に示す。
【0154】
実施例1~3は、(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリド、例えばカプリル酸/カプリン酸/コハク酸トリグリセリドと、(b)ポリグリセリル脂肪酸エステルと、(c)追加の油、例えば植物油及び合成エステル油との組み合わせの使用が、組成物に、良好なメイクアップ除去性、水での良好な濯ぎ性、幅広い温度変化にわたる良好な安定性、及び良好なテクスチャ、即ち適用中の「クッション性」感触を提供することができることを示している。そのため、該組成物は、クレンジングに好適であり、したがって、該組成物は、美容目的のためのクレンジング製品として適切でありうる。
【0155】
比較例1及び2は、上記の(a)少なくとも1種の脂肪族モノカルボン酸及び少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸のトリグリセリドが使用されない場合に、適用している間のクッション性テクスチャが悪くなることを示している。
【0156】
比較例3は、上記の(b)ポリグリセリル脂肪酸が使用されない(代わりに、別の非イオン性界面活性剤、即ちトリイソステアリン酸PEG-20グリセリルが使用される)場合に、適用している間のクッション性テクスチャが悪くなることを示している。