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特開2024-52983加齢および加齢性臓器不全に関連する疾患の処置のためのテロメラーゼ含有エキソソーム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052983
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】加齢および加齢性臓器不全に関連する疾患の処置のためのテロメラーゼ含有エキソソーム
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/14 20060101AFI20240405BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 19/10 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 47/44 20170101ALI20240405BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240405BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240405BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K45/00
A61K45/06
A61P3/02 101
A61P11/00
A61P7/06
A61P21/00
A61P9/10
A61P9/12
A61P9/00
A61P3/10
A61P35/00
A61P19/10
A61P27/02
A61P37/04
A61P25/28
A61K47/44
A61K9/127
A61K38/16
A61K38/18
A61K48/00
A61K31/7105
A61K39/395 A
A61K39/395 H
A61K39/395 M
A61K31/713
A61P31/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024032989
(22)【出願日】2024-03-05
(62)【分割の表示】P 2021546282の分割
【原出願日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】62/803,023
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ラグー カルリ
(57)【要約】
【課題】加齢および加齢性臓器不全に関連する疾患の処置のためのテロメラーゼ含有エキソソームの提供。
【解決手段】本明細書において、治療用のアンチエイジング剤を含む脂質に基づくナノ粒子(例えば、エキソソーム)の組成物が提供される。さらに、加齢関連障害を有する患者を処置するためのそのような組成物の使用方法も提供される。特に、テロメラーゼをコードしているRNAを含むエキソソーム、ならびに加齢関連障害の処置におけるその使用方法が提供される。一実施形態において、本明細書において、テロメラーゼ複合体の活性を増強させる治療剤カーゴを含む脂質に基づくナノ粒子を含む組成物が提供される。いくつかの態様において、前記脂質に基づくナノ粒子は、その表面上にCD47を含む。いくつかの態様において、前記脂質に基づくナノ粒子は、その表面上に増殖因子を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2019年2月8日に出願された米国仮出願第62/803,023号に対する優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、一般に医薬品および腫瘍学の分野に関する。より具体的には、本発明は、カーゴを運搬するエキソソームを投与してテロメラーゼ活性を向上させることによって加齢関連障害を処置するための組成物、および前記処置の方法に関する。
【背景技術】
【0003】
テロメラーゼ欠損は、全身性臓器機能不全に関連しており、また年齢依存的障害に関連している。加齢に伴い、細胞はテロメラーゼを失い、それが細胞機能障害および老化の一因となる。遺伝学的研究によって、テロメラーゼの再発現が、細胞寿命を延長し、加齢に伴う臓器機能を保護し得ることが示されている。しかしながら、全身的な治療戦略が必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
このようなことから、本明細書において、加齢関連障害(例えば、臓器の障害など)を逆転させるためにテロメラーゼmRNAまたは改変テロメラーゼmRNAを細胞に送達するように操作されたエキソソームを含む組成物、および前記エキソソームの投与方法が提供される。
【0005】
一実施形態において、本明細書において、テロメラーゼ複合体の活性を増強させる治療剤カーゴを含む脂質に基づくナノ粒子を含む組成物が提供される。いくつかの態様において、前記脂質に基づくナノ粒子は、その表面上にCD47を含む。いくつかの態様において、前記脂質に基づくナノ粒子は、その表面上に増殖因子を含む。いくつかの態様において、前記脂質に基づくナノ粒子は、リポソームまたはエキソソームである。
【0006】
いくつかの態様において、前記治療剤カーゴは、治療用タンパク質、抗体、阻害性RNA、遺伝子編集システム、または小分子薬物である。いくつかの態様において、前記治療用タンパク質は、TERTタンパク質に相当する。いくつかの態様において、前記抗体は、細胞内抗原に結合する。いくつかの態様において、前記抗体は、完全長抗体、scFv、Fabフラグメント、(Fab)2、ダイアボディ、トリアボディ、またはミニボディである。いくつかの態様において、前記阻害性RNAは、siRNA、shRNA、miRNA、またはpre-miRNAである。いくつかの態様において、前記siRNAは、テロメラーゼ活性をダウンレギュレートするタンパク質の発現をノックダウンする。いくつかの態様において、前記遺伝子編集システムは、CRISPRシステムである。いくつかの態様において、前記CRISPRシステムは、エンドヌクレアーゼおよびガイドRNA(gRNA)を含む。いくつかの態様において、前記エンドヌクレアーゼおよび前記gRNAは、エキソソーム内の単一の核酸分子上にコードされている。いくつかの態様において、前記CRISPRシステムは、TERTまたはTERCの変異を標的とする。
【0007】
一実施形態において、本明細書において、本実施形態のいずれか1つの脂質に基づくナノ粒子と、賦形剤とを含む医薬組成物が提供される。いくつかの態様において、前記組成物は、非経口投与のために製剤化される。いくつかの態様において、前記組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、または腹腔内注射のために製剤化される。いくつかの態様において、前記組成物は、抗微生物剤をさらに含む。いくつかの態様において、前記抗微生物剤は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド(centrimide)、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン(exetidine)、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール(phenylethl alcohol)、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、またはチメロサールである。
【0008】
一実施形態において、本明細書において、それを必要とする患者における疾患または障害を処置する方法であって、本実施形態のいずれか1つの組成物を前記患者に投与することを含む方法が提供される。いくつかの態様において、投与によって、前記治療剤カーゴが、前記患者の細胞に送達される。
【0009】
いくつかの態様において、前記疾患または障害は、加齢関連疾患または障害である。いくつかの態様において、前記疾患または障害は、肺線維症、先天性角化異常症、再生不良性貧血、筋ジストロフィー、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心疾患、がん、脳卒中、糖尿病、糖尿病性潰瘍、アルツハイマー病、骨粗鬆症、黄斑変性、免疫老化、心筋梗塞、または血管性認知症である。
【0010】
いくつかの態様において、前記投与は、全身投与である。いくつかの態様において、前記全身投与は、静脈内投与である。いくつかの態様において、前記組成物は、1回を超える回数投与される。
【0011】
いくつかの態様において、前記方法は、少なくとも第2の療法を患者に施すことをさらに含む。いくつかの態様において、前記第2の療法は、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、または免疫療法を含む。
【0012】
いくつかの態様において、前記患者は、ヒトである。いくつかの態様において、前記脂質に基づくナノ粒子は、エキソソームであり、前記エキソソームは、前記患者について自家性である。いくつかの態様において、前記エキソソームは、前記患者から得られる体液サンプルから得られる。いくつかの態様において、前記体液サンプルは、血液、リンパ、唾液、尿、脳脊髄液、骨髄吸引物、眼滲出液/涙、または血清である。いくつかの態様において、前記エキソソームは、間葉系細胞から得られる。いくつかの態様において、前記方法は、テロメラーゼ複合体の活性を増強させる治療剤カーゴを、患者の肝臓、脳、および/または膵臓に送達する方法とさらに定義される。
【0013】
一実施形態において、本明細書において、治療剤を患者の肝臓組織、脳組織、および/または膵臓組織に送達する方法であって、前記治療剤を運搬する間葉系細胞由来エキソソームを前記患者に投与することを含む方法が提供される。いくつかの態様において、前記エキソソームは、前記患者について自家性である。いくつかの態様において、前記治療剤は、治療用タンパク質、抗体、阻害性RNA、遺伝子編集システム、または小分子薬物である。いくつかの態様において、前記治療剤は、テロメラーゼ複合体の活性を増強させる。いくつかの態様において、前記治療剤は、TERTタンパク質である。いくつかの態様において、前記エキソソームは、1回を超える回数投与される。いくつかの態様において、前記エキソソームは、全身的に投与される。いくつかの態様において、前記エキソソームは、局所的に投与される。
【0014】
本明細書で使用される場合、「本質的に含まない」は、特定のコンポーネントに関して、その特定のコンポーネントが、組成物中に意図的には一切配合されておらず、および/または、混入物としてのみ存在するか、もしくは痕跡量でのみ存在することを意味するために使用される。したがって、あらゆる意図しない組成物の混入物に由来する特定のコンポーネントの総量は、0.05%より十分に少なく、好ましくは0.01%より少ない。最も好ましいのは、前記特定のコンポーネントが、標準的な分析方法によって検出できない組成物である。
【0015】
本明細書で使用される場合、「a」または「an」は、1またはそれを超えることを意味し得る。特許請求の範囲で使用される場合、語句「含む(comprising)」と組み合わせて使用される場合、語句「a」または「an」は、1、または1を超えることを意味し得る。
【0016】
特許請求の範囲における用語「または(or)」の使用は、代替物のみを指すことが明示されているか、または代替物が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、代替物のみ、ならびに「および/または」を指す定義をサポートする。本明細書で使用される場合、「別の(another)」は、少なくとも2番目、またはそれを超えるものを意味し得る。
【0017】
本出願全体を通して、用語「約(about)」は、値が、その値を決定するために使用されるデバイス、方法の誤差に固有の変動、調査対象間に存在する変動、または示されている値の10%以内の値を含むことを指すために使用される。
【0018】
本発明のその他の目的、特徴、および利点が、以下の詳細な説明から明らかとなる。しかしながら、この詳細な説明および特定の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示してはいるが、本発明の趣旨および範囲内の種々の変更および改変がこの詳細な説明から当業者に明らかになることから、単に例証の目的で示されているものであることを理解されたい。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
テロメラーゼ複合体の活性を増強させる治療剤カーゴを含む脂質に基づくナノ粒子を含む組成物。
(項目2)
前記脂質に基づくナノ粒子が、その表面上にCD47を含む、項目1に記載の組成物。
(項目3)
前記脂質に基づくナノ粒子が、その表面上に増殖因子を含む、項目1に記載の組成物。
(項目4)
前記脂質に基づくナノ粒子が、リポソームまたはエキソソームである、項目1に記載の組成物。
(項目5)
前記治療剤カーゴが、治療用タンパク質、抗体、阻害性RNA、遺伝子編集システム、または小分子薬物である、項目1に記載の組成物。
(項目6)
前記治療用タンパク質が、TERTタンパク質に相当する、項目5に記載の組成物。
(項目7)
前記抗体が、細胞内抗原に結合する、項目5に記載の組成物。
(項目8)
前記抗体が、完全長抗体、scFv、Fabフラグメント、(Fab)2、ダイアボディ、トリアボディ、またはミニボディである、項目5に記載の組成物。
(項目9)
前記阻害性RNAが、siRNA、shRNA、miRNA、またはpre-miRNAである、項目5に記載の組成物。
(項目10)
前記siRNAが、テロメラーゼ活性をダウンレギュレートするタンパク質の発現をノックダウンする、項目9に記載の組成物。
(項目11)
前記遺伝子編集システムが、CRISPRシステムである、項目9に記載の組成物。
(項目12)
前記CRISPRシステムが、エンドヌクレアーゼおよびガイドRNA(gRNA)を含む、項目11に記載の組成物。
(項目13)
前記エンドヌクレアーゼおよび前記gRNAが、前記エキソソーム内の単一の核酸分子上にコードされている、項目12に記載の組成物。
(項目14)
前記CRISPRシステムが、TERTまたはTERC変異を標的とする、項目11に記載の組成物。
(項目15)
項目1~14のいずれか一項に記載の脂質に基づくナノ粒子と、賦形剤とを含む医薬組成物。
(項目16)
前記組成物が、非経口投与のために製剤化される、項目15に記載の組成物。
(項目17)
前記組成物が、静脈内、筋肉内、皮下、または腹腔内注射のために製剤化される、項目16に記載の組成物。
(項目18)
抗微生物剤をさらに含む、項目16の組成物。
(項目19)
前記抗微生物剤が、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、またはチメロサールである、項目18に記載の組成物。
(項目20)
それを必要とする患者における疾患または障害を処置する方法であって、項目15~19のいずれか一項に記載の組成物を前記患者に投与することを含む、方法。
(項目21)
投与が、前記患者の細胞への、前記治療剤カーゴの送達をもたらす、項目20に記載の方法。
(項目22)
前記疾患または障害が、加齢関連疾患または障害である、項目20に記載の方法。
(項目23)
前記疾患または障害が、肺線維症、先天性角化異常症、再生不良性貧血、筋ジストロフィー、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心疾患、がん、脳卒中、糖尿病、糖尿病性潰瘍、アルツハイマー病、骨粗鬆症、黄斑変性、免疫老化、心筋梗塞、または血管性認知症である、項目20に記載の方法。
(項目24)
前記投与が、全身投与である、項目20に記載の方法。
(項目25)
前記全身投与が、静脈内投与である、項目24に記載の方法。
(項目26)
少なくとも第2の療法を前記患者に施すことをさらに含む、項目20に記載の方法。
(項目27)
前記第2の療法が、外科療法、化学療法、放射線療法、凍結療法、ホルモン療法、または免疫療法を含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
前記患者が、ヒトである、項目20に記載の方法。
(項目29)
前記脂質に基づくナノ粒子が、エキソソームであり、前記エキソソームが、前記患者について自家性である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記エキソソームが、前記患者から得られる体液サンプルから得られる、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記体液サンプルが、血液、リンパ、唾液、尿、脳脊髄液、骨髄吸引物、眼滲出液/涙、または血清である、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記エキソソームが、間葉系細胞から得られる、項目29に記載の方法。
(項目33)
前記方法が、テロメラーゼ複合体の活性を増強させる治療剤カーゴを、前記患者の肝臓、脳、および/または膵臓に送達する方法とさらに定義される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記組成物が、1回を超える回数投与される、項目20に記載の方法。
(項目35)
治療剤を、患者の肝臓組織、脳組織、および/または膵臓組織に送達する方法であって、前記治療剤を運搬する間葉系細胞由来エキソソームを前記患者に投与することを含む、方法。
(項目36)
前記エキソソームが、前記患者について自家性である、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記治療剤が、治療用タンパク質、抗体、阻害性RNA、遺伝子編集システム、または小分子薬物である、項目35に記載の方法。
(項目38)
前記治療剤が、テロメラーゼ複合体の活性を増強させる、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記治療剤が、TERTタンパク質である、項目38に記載の方法。
(項目40)
前記エキソソームが、1回を超える回数投与される、項目35に記載の方法。
(項目41)
前記エキソソームが、全身的に投与される、項目35に記載の方法。
(項目42)
前記エキソソームが、局所的に投与される、項目35に記載の方法。
【0019】
以下の図面は、本明細書の一部を構成し、本発明のある特定の態様をさらに説明するために含められている。本発明は、本明細書に示されている特定の実施形態の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の1つまたは複数を参照することによって、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1-1】図1A~Eは、サルにおける間葉系幹細胞由来エキソソームの体内分布である。図1A~Bは、膵臓への局在を示す。図1C~Dは、肝臓への局在を示す。図1Eは、脳への局在を示す。
図1-2】同上。
【0021】
図2-1】図2Aは、in vitroで転写されたmRNAまたはmodRNAの構造を示す。図2Bは、in vitroでhTERT mRNAおよびリポフェクタミンで処理したBJ細胞における、hTERT mRNA発現を、qPCRによって示す。図2C~Dは、in vitroでhTERT mRNAおよびリポフェクタミンで処理したBJ細胞のテロメラーゼ活性を示す。図2Eは、in vitroでhTERT modRNAおよびリポフェクタミンで処理したBJ細胞における、hTERT modRNA発現を、qPCRによって示す。図2Fは、in vitroでhTERT modRNAおよびリポフェクタミンで処理したBJ細胞のテロメラーゼ活性を示す。図2Gは、ドミナントネガティブhTERT modRNAのトランスフェクションが、テロメラーゼ活性を上昇させないことを示す。図2Hは、hTERT mRNAは細胞死を誘導するが、modRNAは細胞死を誘導しないことを示す。図2Iは、細胞老化に対する、リポフェクタミンを用いたBJ細胞の長時間のhTERT modRNA処理の効果を示す。図2Jは、ドミナントネガティブhTERT modRNAのトランスフェクションは、細胞老化を改善しないことを示す。図2Kは、テロメアシグナルに対する、リポフェクタミンを用いたBJ細胞の長時間のhTERT modRNA処理の効果を示す。
図2-2】同上。
図2-3】同上。
図2-4】同上。
図2-5】同上。
図2-6】同上。
図2-7】同上。
図2-8】同上。
【0022】
図3-1】図3A~Bは、hTERT mRNAのエキソソーム内へのエレクトロポレーションである。図3Aは、エレクトロポレーション後のエキソソームにおけるmodRNA発現を示す。図3Bは、外来性および内在性hTERTのためのプライマーの設計を示す。
図3-2】同上。
【0023】
図4-1】図4A~Eは、hTERT mRNAを電気穿孔したエキソソームによるBJ細胞の処理である。図4Aは、hTERTエキソソーム処理後の、BJ細胞におけるmRNA発現を示す。図4Bは、テロメラーゼ活性に対する、hTERTエキソソーム処理の効果を示す。図4Cは、老化に対する、hTERTエキソソーム処理の効果を示す。図4Dは、hTERT過剰発現エキソソームが、C12FDGシグナルを増加させることを示す。BJ細胞は、hTERT過剰発現エキソソームで2回処理し、次いで採取し、蛍光基質(C12FDG)を用いてベータガラクトシダーゼシグナルについて評価した。C12FDG MFIの低下は、老化の程度がより低いことを示す。図4Eは、BJ hTERT細胞が、より弱い老化シグナルを発することを示す。
図4-2】同上。
図4-3】同上。
図4-4】同上。
【0024】
図5図5A~Bは、hTERTエキソソームによるU2OS細胞の処理(Exofectトランスフェクション)である。図5Aは、hTERTエキソソームによる処理後のU2OS細胞におけるhTERT mRNA発現を示す。図5Bは、hTERTエキソソームによる処理後のU2OS細胞におけるテロメラーゼ活性を示す。
【0025】
図6-1】図6A~Eは、hTERT過剰発現細胞株である。図6Aは、293T hTERT過剰発現細胞が、より多くのhTERTタンパク質を発現することを示す。図6Bは、293T hTERT細胞が、高いテロメラーゼ活性を示すことを示す。図6Cは、293T hTERTエキソソームが、より多くのhTERT mRNAを発現することを示す。図6Dは、hTERT過剰発現細胞が、より高いhTERT mRNAを有することを示す。図6Eは、BJおよびU2OS hTERT過剰発現細胞が、より多くのhTERTタンパク質を発現することを示す。
図6-2】同上。
図6-3】同上。
【0026】
図7図7は、293T hTERTエキソソームによる細胞の処理である。データは、U2OS hTERT細胞が、より高いテロメラーゼシグナルを発することを示す。
【0027】
図8-1】図8A~Jは、エキソソーム内への、tdTomato mRNA送達およびtdTomato mRNAのExofectトランスフェクションである。図8Aは、リポフェクタミンによる293T細胞内へのtdTomatoプラスミドおよびmRNAのトランスフェクションを、FACSによって示す。図8Bは、リポフェクタミンによる293T細胞内へのtdTomatoプラスミドおよびmRNAのトランスフェクションを、免疫蛍光によって示す。図8Cは、in vitroで転写されたtdTomato mRNAまたはmodRNAの構造を示す。図8Dは、エキソソームによる293T細胞へのtdTomato mRNAの送達をFACSによって示す。図8Eは、ExofectおよびtdTomato mRNA/プラスミドで処理したエキソソームによる293T細胞の処理を、FACSによって示す。図8Fは、ExofectおよびtdTomato mRNAで処理したエキソソームによる293T細胞の処理を、FACSによって示す。図8Gは、ExofectおよびtdTomato mRNAで処理したエキソソームによる293T細胞の処理を、免疫蛍光によって示す。図8H~Iは、細胞生存率に対するExofectおよびtdTomato mRNA送達の効果を示す。図8Jは、Exofectを用いたエキソソームによるU2OS細胞へのmRNA送達の可視化を示す。
図8-2】同上。
図8-3】同上。
図8-4】同上。
図8-5】同上。
図8-6】同上。
図8-7】同上。
【発明を実施するための形態】
【0028】
細胞外ベシクル(EV)(エキソソームおよびマイクロベシクルを含む)は、いくつかの生理学的プロセスに関与する、ナノサイズの細胞内伝達ビヒクルである。細胞外ベシクル(EV)は、その生物学的特性およびマウスおよびサルに注入された場合に他の細胞に侵入する能力のために、治療用化合物(例えば、mRNA、マイクロRNA、siRNA、shRNA、CRISPR-Cas9遺伝子編集構築物、治療用タンパク質、サイトカイン、化学療法薬、核酸、および細菌およびウイルスベクターなど)の全身送達に使用することができる。間葉系細胞または293T細胞由来のエキソソームを健常マウスおよびサルに腹腔内または静脈内注射することによって、いくつかの臓器(脳、肝臓、肺、および膵臓を含む)における治療用エキソソームの局在/蓄積がもたらされる。
【0029】
本明細書において、エキソソームを使用して、機能的なmRNA分子を細胞に送達する方法が提供される。エキソソームは、機能的な利益と共に、mRNAを細胞内に送達する点で優れている。そうであるため、エキソソームは、加齢関連臓器機能不全を逆転させるために、テロメラーゼをコードしているmRNAを細胞に送達するために使用してもよい。
【0030】
テロメアは、染色体末端にある反復性のDNA配列である。十分な長さを有するテロメアは、その染色体末端がDNA修復プロセスにおける基質として使用されることを防ぐループを形成する。しかしながら、テロメアは、時間と共に短くなり、その結果染色体末端が露出し、それによって染色体が不安定になり、それが細胞の老化、アポトーシス、またはがんをもたらし得る。
I.脂質に基づくナノ粒子
【0031】
脂質に基づくナノ粒子は、リポソーム、エキソソーム、脂質調製物、または別の脂質に基づくナノ粒子、例えば、脂質ベースのベシクル(例えば、DOTAP:コレステロールベシクル)であり得る。脂質に基づくナノ粒子は、正に荷電していてもよく、負に荷電していてもよく、中性であってもよい。脂質に基づくナノ粒子は、転写および翻訳、シグナル伝達、走化性、またはその他の細胞機能を可能にするために必要なコンポーネントを含んでいてもよい。
【0032】
脂質に基づくナノ粒子は、その表面上にCD47を含んでいてもよい。CD47(インテグリン関連タンパク質)は、ほとんどの組織および細胞上に発現している膜貫通タンパク質である。CD47は、シグナル調節タンパク質アルファ(SIRP-α)のリガンドであり、このシグナル調節タンパク質アルファ(SIRP-α)は、マクロファージおよび樹状細胞などの貪食細胞上に発現している。活性化されたCD47-SIRP-αは、食作用を抑制するシグナル伝達カスケードを開始させる。したがって、理論に束縛されないが、エキソソームの表面上におけるCD47の発現は、マクロファージによる食作用を阻害し得る(WO2016/201323(参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照のこと)。
A.リポソーム
【0033】
「リポソーム」は、封入脂質二重層または凝集体の生成によって形成される、種々の単層脂質ビヒクルおよび多重層脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、一般にリン脂質を含む二重層膜と、一般に水性組成物を含む内部の媒体とを含むベシクル状の構造を有するものとして特徴付けられる。本明細書で提供されるリポソームには、単層リポソーム、多重層リポソーム、および多小胞リポソームが含まれる。本明細書で提供されるリポソームは、正に荷電していてもよく、負に荷電していてもよく、中性に荷電していてもよい。ある特定の実施形態において、リポソームは、電荷が中性である。
【0034】
多重層リポソームは、水性媒体で隔てられた複数の脂質層を有する。このようなリポソームは、リン脂質を含む脂質を過剰量の水溶液中で懸濁した場合、自発的に形成される。脂質コンポーネントは、閉じた構造を形成する前に自己再構成を起こし、脂質二重層の間に水および溶解した溶質を捕捉する。親脂性分子または親油性領域を有する分子は、同様に、脂質二重層内に溶解し得るか、または脂質二重層と会合し得る。
【0035】
特定の態様において、ポリペプチド、核酸、または小分子薬物は、例えば、リポソームの水性内部に封入されてもよく、リポソームの脂質二重層内に分散されてもよく、リポソームとポリペプチド/核酸の両方に結合する連結分子によってリポソームに結合されてもよく、リポソーム内に捕捉されてもよく、リポソームと複合体を形成してもよい。
【0036】
本実施形態に従って使用されるリポソームは、当業者に知られているように、様々な方法によって作製することができる。例えば、リン脂質(例えば、中性リン脂質であるジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)など)は、TERT-ブタノールに溶解される。この脂質(単数または複数)は、次いでポリペプチド、核酸、および/またはその他のコンポーネント(単数または複数)と混合される。この脂質混合物に対して、Tween(登録商標) 20が組成物重量の約5%になるように、Tween(登録商標) 20を加える。この混合物に、TERT-ブタノールの体積が少なくとも95%になるように、過剰量のTERT-ブタノールを加える。この混合物を、ボルテックスし、ドライアイス/アセトン浴中で凍結させ、終夜凍結乾燥させる。凍結乾燥された調製物は、-20℃で保存し、最大3か月間使用可能である。必要な場合、凍結乾燥されたリポソームは、0.9%食塩水中で再構成される。
【0037】
あるいは、リポソームは、容器内、例えばガラスナシ型フラスコ内で、脂質を溶媒中で混合することによって調製することができる。容器は、リポソーム懸濁液の予期される体積に対して、10倍の容量を有するべきである。溶媒は、ロータリーエバポレーターを使用して、陰圧下で、およそ40℃で除去される。溶媒は、リポソームの所望の体積に応じて、通常約5分間~2時間以内で除去される。組成物は、真空下で、デシケーター内でさらに乾燥してもよい。乾燥させた脂質は、時間と共に劣化する傾向があるため、通常約1週間後に廃棄される。
【0038】
乾燥させた脂質は、およそ25~50mMのリン脂質を、滅菌パイロジェンフリー水中で、全ての脂質薄膜が再懸濁されるまで振盪することによって水和させることができる。次いで、その水性リポソームを、アリコートに分け、各アリコートをバイアル中に入れ、真空下で凍結乾燥および密封してもよい。
【0039】
上記のように調製された、乾燥させた脂質または凍結乾燥したリポソームは、脱水し、タンパク質またはペプチドの溶液中で再構成し、適した溶媒、例えばDPBSで、適切な濃度に希釈してもよい。その混合物を、次いで、ボルテックスミキサー内で激しく振盪する。封入されていない余分な材料、例えば、それらに限定されないが、ホルモン、薬物、核酸構築物などを含む薬剤を、遠心分離によって29,000×gで除去し、得られたリポソームペレットを洗浄する。洗浄したリポソームを、適切な総リン脂質濃度、例えば約50~200mMで再懸濁する。余分な材料または封入された活性薬剤の量は、標準的な方法に従って決定することができる。余分な材料、またはリポソーム調製物中に封入された活性薬剤の量を決定した後、リポソームを適切な濃度に希釈し、使用まで4℃で保存してもよい。リポソームを含む医薬組成物は、通常、無菌の医薬的に許容され得る担体または希釈剤、例えば水または食塩溶液を含有する。
【0040】
本実施形態に有用であり得るさらなるリポソームとしては、例えば、WO02/100435A1、米国特許第5,962,016号、米国特許出願第2004/0208921号、WO03/015757A1、WO04/029213A2、米国特許第5,030,453号、および米国特許第6,680,068号(これらの全ては、ディスクレーマーなしに、参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されているような、カチオン性リポソームがあげられる。
【0041】
そのようなリポソームの調製において、本明細書に記載されている任意のプロトコル、または当業者に知られている任意のプロトコルを使用することができる。リポソーム調製のさらなる非限定的な例は、米国特許第4,728,578号、米国特許第4,728,575号、米国特許第4,737,323号、米国特許第4,533,254号、米国特許第4,162,282号、米国特許第4,310,505号、および米国特許第4,921,706号;国際出願PCT/US85/01161および国際出願PCT/US89/05040(それぞれ、参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0042】
ある特定の実施形態において、脂質に基づくナノ粒子は、中性リポソーム(例えば、DOPCリポソーム)である。「中性リポソーム」または「非荷電リポソーム」は、本明細書で使用される場合、本質的に中性の正味電荷(実質的に非荷電)をもたらす1つまたはそれを超える脂質コンポーネントを有するリポソームと定義される。「本質的に中性」または「本質的に非荷電」とは、所与の集団(例えば、リポソームの集団)内の、別のコンポーネントの反対の電荷によって打ち消されない電荷を含む脂質コンポーネントが、あるとすれば、わずかである(すなわち、コンポーネントの10%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満が、打ち消されない電荷を有する)という意味である。ある特定の実施形態において、中性リポソームは、生理的条件下で(すなわち、約pH7において)それ自体が中性である脂質および/またはリン脂質を主として含んでいてもよい。
【0043】
本実施形態のリポソームおよび/または脂質に基づくナノ粒子は、リン脂質を含んでいてもよい。ある特定の実施形態において、単一の種類のリン脂質をリポソームの作製に使用してもよい(例えば、DOPCなどの中性リン脂質を、中性リポソームを生成させるために使用してもよい)。他の実施形態において、1種類を超えるリン脂質を、リポソームを作製するために使用してもよい。リン脂質は、天然物起源であってもよく、合成物起源であってもよい。リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルグリセロール、およびホスファチジルエタノールアミンがあげられ;ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルコリンは、生理的条件下で(すなわち、約pH7において)非荷電であるため、これらの化合物は中性リポソームの生成のために特に有用であり得る。ある特定の実施形態において、非荷電リポソームを作製するために、リン脂質DOPCが使用される。ある特定の実施形態において、リン脂質ではない脂質(例えば、コレステロール)を使用してもよい。
【0044】
リン脂質には、グリセロリン脂質およびある特定のスフィンゴ脂質が含まれる。リン脂質としては、それらに限定されないが、ジオレオイルホスファチジルコリン(dioleoylphosphatidylycholine)(「DOPC」)、卵ホスファチジルコリン(「EPC」)、ジラウロイルホスファチジルコリン(dilauryloylphosphatidylcholine)(「DLPC」)、ジミリストイルホスファチジルコリン(「DMPC」)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(「DPPC」)、ジステアロイルホスファチジルコリン(「DSPC」)、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「MPPC」)、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン(「PMPC」)、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン(「PSPC」)、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン(「SPPC」)、ジラウロイルホスファチジルグリセロール(dilauryloylphosphatidylglycerol)(「DLPG」)、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(「DPPG」)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(「DSPG」)、ジステアロイルスフィンゴミエリン(「DSSP」)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(「DSPE」)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(「DOPG」)、ジミリストイルホスファチジン酸(「DMPA」)、ジパルミトイルホスファチジン酸(「DPPA」)、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン(「DMPE」)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(「DPPE」)、ジミリストイルホスファチジルセリン(「DMPS」)、ジパルミトイルホスファチジルセリン(「DPPS」)、脳ホスファチジルセリン(「BPS」)、脳スフィンゴミエリン(「BSP」)、ジパルミトイルスフィンゴミエリン(「DPSP」)、ジミリスチルホスファチジルコリン(dimyristyl phosphatidylcholine)(「DMPC」)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DAPC」)、1,2-ジアラキドイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DBPC」)、1,2-ジエイコセノイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(「DEPC」)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(「DOPE」)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(palmitoyloeoyl phosphatidylcholine)(「POPC」)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(palmitoyloeoyl phosphatidylethanolamine)(「POPE」)、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、およびジリノレオイルホスファチジルコリン(dilinoleoylphosphatidylcholine)があげられる。
B.エキソソーム
【0045】
用語「マイクロベシクル」および「エキソソーム」は、本明細書で使用される場合、直径(または、粒子が球状ではない場合は、最大の寸法)が、約10nm~約5000nm、より典型的には30nm~1000nm、最も典型的には約50nm~750nmである膜性の粒子を指し、ここで、エキソソームの膜の少なくとも一部は、細胞から直接得られる。最も一般的には、エキソソームは、ドナー細胞のサイズの、最大で5%までのサイズ(平均粒径)を有する。したがって、特に意図されるエキソソームとしては、細胞から排出されるエキソソームがあげられる。
【0046】
エキソソームは、任意の適切なサンプルタイプ(例えば、体液など)において検出され得るか、またはそのようなサンプルタイプから単離され得る。本明細書で使用される場合、用語「単離される」は、その自然環境から分離されることを指し、少なくとも部分精製を含むことを意図し、実質的な精製を含んでもよい。本明細書で使用される場合、用語「サンプル」は、本発明によって提供される方法に適した任意のサンプルを指す。サンプルは、検出または単離に適したエキソソームを含む任意のサンプルであり得る。サンプルの起源としては、血液、骨髄、胸水、腹水、脳脊髄液、尿、唾液、羊水、悪性腹水、気管支肺胞洗浄液、滑液、母乳、汗、涙、関節液、および気管支洗浄液があげられる。1つの態様において、サンプルは、血液サンプルであり、血液サンプルには、例えば、全血、またはその任意のフラクションもしくはコンポーネントが含まれる。本発明と共に使用するために適した血液サンプルは、血液細胞またはそのコンポーネントを含むことが知られている任意の源(source)、例えば、静脈源、動脈源、末梢源、組織源、臍帯源などから抽出することができる。例えば、サンプルは、周知かつ日常的な臨床的方法(例えば、全血を抜き取り、処理するための手順)によって取得し、処理することができる。1つの態様において、例示的なサンプルは、がんを有する対象から抜き取られた末梢血であり得る。
【0047】
エキソソームは、また、組織サンプルから、例えば、外科的サンプル、生検サンプル、組織、糞便、および培養細胞から単離することもできる。組織源からエキソソームを単離する場合、単一の細胞懸濁液を得るために組織をホモジナイズし、次いで細胞を溶解させ、エキソソームを遊離させることが必要であり得る。組織サンプルからエキソソームを単離する場合、エキソソームを破壊させないホモジナイズ手順および溶解手順を選択することが重要である。本明細書において意図されているエキソソームは、好ましくは、生理学的に許容され得る溶液(例えば、緩衝食塩水、成長培地、種々の水性媒体など)中で体液から単離される。
【0048】
エキソソームは、採取した新鮮なサンプルから単離してもよく、または冷凍もしくは冷蔵保存されたサンプルから単離してもよい。いくつかの実施形態において、エキソソームは、細胞培養培地から単離してもよい。必須ではないが、体積排除ポリマーによる沈殿の前に、液体サンプルが清澄化され、サンプルから任意のデブリが除去されている場合、より高い純度のエキソソームが得られ得る。清澄化の方法としては、遠心分離、超遠心分離、濾過、または限外濾過があげられる。最も典型的には、エキソソームは、当該技術分野において知られている数多くの方法によって単離することができる。好ましい方法の1つは、体液または細胞培養上清からの分画遠心分離である。エキソソームの単離のための例示的な方法は、(Loscheら、2004;MesriおよびAltieri、1998;Morelら、2004)に記載されている。あるいは、エキソソームは、また、(Combesら、1997)に記載されているように、フローサイトメトリーによって単離することもできる。
【0049】
エキソソームを単離するための確立したプロトコルの1つとしては、超遠心分離があげられ、比較的低密度のエキソソームを浮遊させるために、ショ糖密度勾配またはショ糖クッションと組み合わされることが多い。連続的分画遠心分離によるエキソソームの単離は、サイズ分布が他のマイクロベシクルまたは巨大分子複合体と重なり合っている可能性があるために、複雑である。さらに、遠心分離によって提供されるサイズに基づくベシクルの分離手段は、不十分であり得る。しかしながら、ショ糖勾配超遠心分離と組み合わせた場合、連続的遠心分離によって、エキソソームの高富化を実現し得る。
【0050】
超遠心分離ルートの代替手段を用いた、サイズに基づくエキソソームの単離は、別の選択肢である。超遠心分離よりも時間がかからず、特別な機器を使用する必要がない、限外濾過手順を用いたエキソソームの精製が成功したことが報告されている。同様に、流体を押しやるために陽圧を利用して、1つのマイクロフィルター上で細胞、血小板、および細胞デブリを除去し、2番目のマイクロフィルター上に30nmより大きいベシクルを捕捉する、市販のキット(EXOMIR(商標)、Bioo Scientific)が利用可能である。しかしながら、このプロセスにおいては、エキソソームは回収されず、そのRNA内容物が、第2のマイクロフィルター上に捕捉された材料から直接抽出され、次いで、それがPCR分析に使用され得る。HPLCベースのプロトコルによって、潜在的には、非常に純粋なエキソソームの取得が可能になり得るが、これらのプロセスは、専用の機器を必要とし、またスケールアップが困難である。重大な問題は、血液と細胞培養培地が、どちらも、エキソソームと同じサイズ範囲内のナノ粒子(ある程度非ベシクル性)を多数含有していることである。例えば、ある程度のmiRNAは、エキソソームではなくて、細胞外タンパク質複合体内に含まれている場合があるが、プロテアーゼ(例えば、プロテイナーゼK)による処理を行い、「エキソソーム外」タンパク質による任意の起こり得る混入を排除することができる。
【0051】
別の実施形態において、がん細胞由来エキソソームは、サンプルをエキソソームについて富化するために一般に使用される技術、例えば、免疫特異性相互作用を利用する技術(例えば、免疫磁気捕捉)によって捕捉してもよい。免疫磁気捕捉(免疫磁気細胞分離としても知られる)は、典型的には、特定の細胞タイプ上に見出されるタンパク質に対する抗体を、小さな常磁性ビーズに結合させることを含む。この抗体でコーティングしたビーズをサンプル(例えば、血液)と混合すると、ビーズはその特定の細胞に付着し、細胞を取り囲む。次いで、サンプルを強磁場に置き、それによってビーズを片側にペレット化させる。血液を取り除いた後、捕捉された細胞はビーズによって保持される。この一般的な方法の多くの変形が当該技術分野において周知であり、エキソソームを単離するための使用に適している。1つの例において、エキソソームを磁気ビーズ(例えば、アルデヒド/サルフェートビーズ)に付着させ、次いでその混合物に抗体を加え、ビーズに付着させたエキソソームの表面上のエピトープを認識させてもよい。がん細胞由来エキソソーム上に見出されることが知られている例示的なタンパク質としては、ATP結合性カセットサブファミリーAメンバー6(ABCA6)、テトラスパニン-4(TSPAN4)、SLITおよびNTRK様タンパク質4(SLITRK4)、推定プロトカドヘリンベータ-18(PCDHB18)、骨髄細胞表面抗原CD33(CD33)、およびグリピカン1(GPC1)があげられる。がん細胞由来エキソソームは、例えば、これらのうちの1つまたはそれを超えるタンパク質に対する抗体またはアプタマーを使用して単離してもよい。
【0052】
細胞において発現される全てのタンパク質が、その細胞によって分泌されるエキソソーム内に見出されるわけではないことに留意すべきである。例えば、カルネキシン、GM130、およびLAMP-2は、全てMCF-7細胞内で発現されるタンパク質であるが、MCF-7細胞が分泌するエキソソーム内には見出されない(Baiettiら、2012)。別の例として、1つの試験により、膵管腺癌患者190名中190名において、GPC1+エキソソームのレベルが健常対照よりも高いことが見出された(Meloら、2015(参照によってその全体が本明細書に援用される))。注目すべきことに、GPC1+エキソソームを有する健常対照は、平均で、わずか2.3%であった。
1.細胞培養物からエキソソームを採取するための例示的なプロトコル
【0053】
第1日に、T225フラスコ中で、10%FBSを含む培地に、細胞が翌日に約70%コンフルエントになるように、十分な細胞(例えば、約500万個の細胞)を播種する。第2日に、細胞上の培地を吸引し、細胞をPBSで2回洗浄し、次いで25~30mLの基本培地(すなわち、PenStrepもFBSも含まない)を細胞に加える。細胞を24~48時間インキュベートする。48時間のインキュベーションが好ましいが、いくつかの細胞株は無血清培地に対してより感受性が高く、そのため、インキュベーション時間を24時間に短縮すべきである。FBSは、NanoSightの結果を大きく歪めるエキソソームを含んでいることに留意されたい。
【0054】
第3/4日に、培地を採取し、室温で5分間、800×gで遠心分離して、死細胞と大きなデブリをペレット化する。上清を新しいコニカルチューブに移し、培地をさらに10分間、2000×gで遠心分離して、他の大きなデブリと大きなベシクルを除去する。培地を0.2μmのフィルターに通し、次いで超遠心分離管(例えば、25×89mmのBeckman Ultra-Clear)に、遠心管あたり35mLずつ分注する。遠心管あたりの培地量が35mL未満である場合、遠心管の残りをPBSで満たし、35mLにする。培地を、SW32Tiローター(kファクターが266.7、最大RCFが133,907)を使用して、4℃で2~4時間、28,000rpmで超遠心分離する。上清を、液体の残量がおよそ1インチになるまで注意深く吸引する。遠心管を傾け、残りの培地がアスピレーターピペットにゆっくり入るようにする。所望により、エキソソームペレットをPBS中に再懸濁し、再度28,000rpmでの超遠心分離を1~2時間繰り返し、エキソソームの集団をさらに精製してもよい。
【0055】
最後に、エキソソームペレットを210μLのPBS中に再懸濁する。各サンプルにつき複数の超遠心分離管がある場合、同じ210μLのPBSを使用して、各エキソソームペレットを順次再懸濁する。各サンプルにつき、10μLを取り、990μLのHOに加えてナノ粒子トラッキング解析に使用する。残りの200μLのエキソソーム含有懸濁液を下流のプロセスに使用するか、またはすぐに-80℃で保管する。
2.血清サンプルからエキソソームを抽出するための例示的なプロトコル
【0056】
まず、血清サンプルを氷上で解凍する。次いで、250μLの無細胞血清サンプルを11mLのPBS中に希釈し;ポアサイズ0.2μmのフィルターを通して濾過する。希釈したサンプルを、4℃で終夜、150,000×gで超遠心分離する。翌日、上清を注意深く除き、エキソソームペレットを11mLのPBS中で洗浄する。2回目の超遠心分離を、4℃で2時間、150,000×gで実施する。最後に、上清を注意深く除き、エキソソームペレットを、分析のために、100μLのPBS中に再懸濁する。
C.エキソソームおよびリポソームのエレクトロポレーションのための例示的なプロトコル
【0057】
1×10のエキソソーム(NanoSight分析によって測定する)または100nmリポソーム(例えば、Encapsula NanoSciencesから購入する)と、1μgのsiRNA(Qiagen)またはshRNAを、400μLのエレクトロポレーションバッファー(1.15mMリン酸カリウム、pH7.2、25mM塩化カリウム、21%Optiprep)中で混合する。エキソソームまたはリポソームを、4mmキュベットを使用して電気穿孔する(Alvarez-Ervitiら、2011;El-Andaloussiら、2012を参照のこと)。エレクトロポレーション後、エキソソームまたはリポソームをプロテアーゼフリーRNAseで処理し、次いで10倍濃縮のRNAse阻害剤を加える。最後に、エキソソームまたはリポソームを、上記のように、超遠心分離下で、PBSで洗浄する。
II.疾患の処置
【0058】
本発明のある特定の態様は、細胞内のテロメラーゼ活性を増強させる治療剤を発現するか、またはそれを含むエキソソームによる、患者の処置を提供する。「治療剤」は、本明細書で使用される場合、加齢関連障害またはその他の状態の処置において有用な原子、分子、または化合物である。治療剤としては、それらに限定されないが、例えば、薬物、化学療法剤、治療用抗体および抗体フラグメント、毒素、放射性同位体、酵素、核酸、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、アンチセンスオリゴヌクレオチド、遺伝子編集システム、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、ならびに色素があげられる。
【0059】
短くなったテロメアと関連する遺伝的疾患の例としては、特発性肺線維症、先天性角化異常症、および再生不良性貧血があげられる。短くなったテロメアと関連があることが知られている他の疾患としては、筋ジストロフィー、アテローム性動脈硬化症、高血圧、心疾患、がん、脳卒中、糖尿病、糖尿病性潰瘍、アルツハイマー病、骨粗鬆症、黄斑変性、免疫老化、心筋梗塞、および血管性認知症があげられる。
【0060】
エキソソームはDICERおよび活性なRNAプロセシングRISC複合体を含むことが知られている通り(国際特許出願公開WO2014/152622(参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照のこと)、エキソソーム内にトランスフェクトされたshRNAは、そのエキソソームの中で、RISC複合体結合siRNAへと成熟し得る。あるいは、成熟したsiRNA自体をエキソソームまたはリポソーム内にトランスフェクトしてもよい。よって、例として、阻害性RNAを、本発明の方法において、テロメラーゼ活性(例えば、Menin、SIP1、pRB、p38、p53、p73、MKRN1、CHIP、HSP70、アンドロゲン、TGF-ベータ、Arc1、cAbl、Pinx1、CRM1、POT1、p19/Arf)をモジュレートするために使用してもよい。任意の阻害性核酸を、その阻害性核酸が目的のタンパク質の確かなダウンレギュレーターであることが任意のソースによって見出されていれば、本発明の組成物および方法に適用することができる。
【0061】
RNAiの設計において、siRNAの性質、サイレンシング効果の持続性、および送達システムの選択など、いくつかの因子を考慮する必要がある。RNAi効果を生じさせるために、生物に導入されるsiRNAは、典型的にはエクソン配列を含有する。さらに、RNAiプロセスは相同性依存的であるため、その配列は、相同ではあるが遺伝子特異的ではない配列間の交差干渉の可能性を最小にしつつ、遺伝子特異性が最大になるように注意深く選択しなければならない。好ましくは、siRNAは、そのsiRNAの配列と阻害される遺伝子との間で、80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、または、さらには100%の同一性を示す。標的遺伝子に対する同一性が約80%未満の配列は、実質的に有効性が低い。よって、siRNAと阻害される遺伝子との間の相同性が大きいほど、無関係な遺伝子の発現が影響を受ける可能性は低い。
【0062】
エキソソームはmRNA転写およびタンパク質翻訳を完成させるために必要な機構を含むことが知られているため(PCT/US2014/068630(参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照のこと)、治療用タンパク質をコードしているmRNAまたはDNA核酸を、エキソソーム内にトランスフェクトしてもよい。あるいは、治療用タンパク質自体をエキソソーム内にエレクトロポレーションしてもよく、またはリポソーム内に直接組み込んでもよい。例示的な治療用RNAとしては、テロメラーゼRNAコンポーネント(TERC)があげられる。例示的な治療用タンパク質としては、それらに限定されないが、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT(NP_937983.2またはNP_001180305.1))、TCAB1、ジスケリン、Gar1、Nhp2、Nop10、RHAU、ヘリカーゼ、UPF1、HSP90、PKC、Shp-2、NFkB p65、TPP1、ATM、DAT、TRF1、TRF2、Rap1、Rif1、TIN2、NBS、MRE17、RAD50、EGF、IGF-1、FGF-2、VEGF、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-13、IL-15、およびAktがあげられる。
【0063】
疾患細胞の細胞内空間内に導入することが望ましい場合があるある特定の種類のタンパク質は、細胞内抗原に特異的または選択的に結合し得る抗体(例えば、モノクローナル抗体)である。そのような抗体は、細胞内タンパク質の機能を破綻させ得、および/または細胞内タンパク質間相互作用を破綻させ得る。そのようなモノクローナル抗体の例示的な標的としては、それらに限定されないが、Menin、SIP1、pRB、p38、p53、p73、MKRN1、CHIP、HSP70、アンドロゲン、TGF-ベータ、Arc1、cAbl、Pinx1、CRM1、POT1、およびp19/Arfがあげられる。モノクローナル抗体に加えて、その任意の抗原結合性フラグメント、例えば、scFv、Fabフラグメント、Fab’、F(Ab’)2、Fv、ペプチボディ、ダイアボディ、トリアボディ、またはミニボディも意図されている。このような抗体または抗体フラグメントのいずれも、グリコシル化されていてもよく、またはグリコシル化されていなくてもよい。
【0064】
エキソソームは、また、テロメラーゼ複合体における遺伝的欠陥(例えば、TERTまたはTERCの変異)を修正する遺伝子編集システム(例えば、CRISPR/Casシステム)を含むように操作されていてもよい。一般に、「CRISPRシステム」は、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するか、またはその活性を指示する転写物およびその他のエレメントを総称的に指し、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子には、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性な部分tracrRNA)、tracrメイト配列(内在性CRISPRシステムの文脈において、「ダイレクトリピート」およびtracrRNA-processedパーシャルダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内在性CRISPRシステムの文脈において、「スペーサー」とも呼ばれる)、ならびに/またはCRISPR部位由来の他の配列および転写物が含まれる。いくつかの態様において、CasヌクレアーゼおよびgRNA(標的配列に特異的なcrRNAと、配列が決まっているtracrRNAの融合物を含む)を細胞に導入する。一般に、gRNAの5’末端にある標的サイトは、相補的塩基対合を用いて、Casヌクレアーゼをその標的サイト(例えば、遺伝子)に向ける。標的サイトは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列(例えば、典型的にはNGG、またはNAG)のすぐ5’側である、その位置に基づいて選択され得る。この点に関し、gRNAは、そのガイドRNAの最初の20、19、18、17、16、15、14、14、12、11、または10ヌクレオチドを、標的DNA配列に対応するように改変することによって、所望の配列に向けられる。一般に、CRISPRシステムは、標的配列の部位におけるCRISPR複合体の形成を促進するエレメントによって特徴付けられる。典型的には、「標的配列」は、一般に、それに対してガイド配列が相補性を有するように設計された配列を指し、ここで、標的配列とガイド配列の間のハイブリダイゼーションによって、CRISPR複合体の形成が促進される。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進する十分な相補性がある限り、完全な相補性は必ずしも必要ではない。そのようなシステムを含むように操作されたエキソソーム内のCRISPRシステムは、標的細胞内部のゲノムDNAを編集するように機能することができ、またはそのようなシステムが、エキソソーム自体の内部のDNAを編集することができる。遺伝子編集システムを送達する手段としてのエキソソームの使用に関するさらなる態様については、米国特許出願番号第62/599,340号(参照によりその全体が本明細書に援用される)を参照のこと。
【0065】
タンパク質ベースの治療薬および核酸ベースの治療薬に加えて、エキソソームは、小分子薬物を、単独で、またはタンパク質ベースの治療薬もしくは核酸ベースの治療薬と組み合わせて送達するために使用してもよい。本実施形態における使用が意図される例示的な小分子薬物としては、それらに限定されないが、TA-65(Harleyら、Rejuvenation Research,14:45-56,2011)、エストロゲン、エリスロポエチン、レスベラトロール、シクロアストラゲノール(TAT2)、TA-65、TAT153、およびオカダ酸があげられる。
【0066】
用語「対象」は、本発明で使用される場合、対象となる方法が行われる任意の個体または患者を指す。一般に、対象はヒトであるが、当業者に理解されているように、対象は動物であってもよい。よって、哺乳類、例えばげっ歯類(マウス、ラット、ハムスター、およびモルモットを含む)、ネコ、イヌ、ウサギ、農場動物(ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタなどを含む)、および霊長類(サル、チンパンジー、オランウータン、およびゴリラを含む)を含む他の動物は、対象の定義に含まれる。
【0067】
「処置(treatment)」および「処置すること(treating)」は、疾患もしくは健康に関連する状態の治療的利益を得ることを目的として、対象に対して治療剤を投与もしくは適用すること、または対象に対して手順もしくはモダリティを実施することを指す。例えば、処置は、カーゴ運搬エキソソームを投与すること、化学療法、免疫療法、もしくは放射線療法を施すこと、外科手術を実施すること、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0068】
用語「治療的利益」または「治療的に有効」は、本出願全体を通して使用される場合、この状態の医学的処置に関して、対象の福祉(well-being)を促進または増強するあらゆるものを指す。これには、それらに限定されないが、疾患の徴候もしくは症状の頻度もしくは重症度の低下が含まれる。例えば、がんの処置は、例えば、腫瘍の侵襲性の低下、がんの成長速度の低下、または転移の防止を含んでもよい。がんの処置は、また、がんを有する対象の生存期間を延長することを指してもよい。
【0069】
用語「接触させる」および「曝露させる」は、細胞に適用する場合、本明細書において、それによって治療剤が標的細胞に送達されるプロセス、または治療剤が標的細胞に対して直接並置して配置されるプロセスを記述するために使用される。テロメアの伸長を実現するために、例えば、テロメラーゼの機能を増強するために有効な量の1つまたはそれを超える薬剤が、細胞に送達される。
【0070】
処置に対する患者の有効な応答、または患者の「応答性」とは、疾患または障害のリスクがあるか、または疾患または障害に罹患している患者にもたらされる臨床的もしくは治療的利益を指す。そのような利益には、細胞応答または生物学的応答、完全奏効、部分奏効、安定病態(増悪も再発もない)、または後に再発がある応答が含まれる。本明細書に記載された方法によって、処置の成績を予測およびモニタリングすることができ、および/またはそのような処置から利益を受ける患者を同定または選択することができる。
【0071】
疾患の処置について、治療用組成物の適切な投与量は、上で定義した処置される疾患の種類、疾患の重症度および経過、患者の臨床歴および薬剤に対する応答、および主治医の裁量によって決まるう。薬剤は、一度に、または一連の処置にわたって、患者に適切に投与される。
【0072】
治療および予防の方法ならびに組成物は、所望の効果を実現するために効果的な、組み合わせた量で提供してもよい。組織、腫瘍、または細胞は、1つまたはそれを超える薬剤を含む1つまたはそれを超える組成物もしくは薬理学的製剤(単数または複数)と接触させてもよく、または組織、腫瘍、および/または細胞を、2つまたはそれを超える別々の組成物もしくは製剤と接触させることによって接触させてもよい。また、このような併用療法は、化学療法、放射線療法、外科療法、または免疫療法と組み合わせて使用できることが意図されている。
【0073】
併用投与は、2つまたはそれを超える薬剤の、同じ剤形での同時投与、別々な剤形での同時投与、および別々の投与を含み得る。すなわち、対象とする治療用組成物と別の治療剤を、同じ剤形中に一緒に製剤化して、同時に投与してもよい。あるいは、対象とする治療用組成物と別の治療剤を、両方の薬剤が別々の製剤中に存在する状態で、同時に投与してもよい。別の選択肢において、対象とする治療剤を投与した直後に別の治療剤を投与してもよく、またはその逆であってもよい。別々の投与プロトコルにおいて、対象とする治療用組成物と別の治療剤は、数分間の間隔で、数時間の間隔で、または数日間の間隔で投与してもよい。
III.医薬組成物
【0074】
治療剤を発現するか、または含むエキソソームは、テロメラーゼ活性を増強するために、全身的または局所的に投与できることが意図されている。それらのエキソソームは、静脈内、髄腔内、および/または腹腔内に投与することができる。それらのエキソソームは、単独で投与してもよく、第2の薬物と組み合わせて投与してもよい。
【0075】
本発明は、治療用調製物の特定の性質によって限定されることは意図されていない。例えば、このような組成物は、生理学的に忍容性がある液体、ゲル、固体担体、希釈剤、または賦形剤と一緒になった製剤で提供することができる。これらの治療用調製物は、哺乳類に対して、獣医学的用途(例えば飼育動物に対して)で、およびヒトにおける臨床用途で、他の治療剤と同様のやり方で投与してもよい。一般に、治療的有効性のために必要とされる投与量は、使用の種類および投与のモード、ならびに個々の対象の特定の必要性によって変わる。
【0076】
臨床適用が意図される場合、意図する適用のために適切な形態でエキソソームを含む医薬組成物を調製することが必要となり得る。一般に、医薬組成物は、医薬的に許容され得る担体に溶解または分散させた、有効量の1つまたはそれを超えるエキソソーム、および/または追加の薬剤を含んでいてもよい。語句「医薬的または薬理学的に許容され得る」は、動物(例えば、適切であれば、ヒトなど)に投与した場合に、有害な反応、アレルギー性の反応、またはその他の不都合な反応を生じさせない分子的実体または組成物を指す。本明細書に開示されたエキソソームを含む医薬組成物の調製、または追加の活性成分は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版、1990年(参照により本明細書に援用される)に例示されているように、本開示を考慮して、当業者によって理解される。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与のためには、調製物は、FDA Office of Biological Standardsによって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性、および純度の基準を満たすべきであることが理解されよう。
【0077】
さらに、本発明のある特定の態様に従って、投与に適した組成物は、不活性な希釈剤を含むか、または含まない、医薬的に許容され得る担体中で提供され得る。本明細書で使用される場合、「医薬的に許容され得る担体」は、当業者に知られているように、あらゆる全ての水性溶媒(例えば、水、アルコール性/水性溶液、エタノール、食塩溶液、非経口ビヒクル(例えば、塩化ナトリウム、リンゲルデキストロース)など)、非水性溶媒(例えば、脂肪、油、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、および注射可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル(ethyloleate))、脂質、リポソーム、分散媒、コーティング(例えば、レシチン)、界面活性剤、抗酸化剤、保存剤(例えば、抗細菌剤または抗真菌剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガス、パラベン(例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール、またはそれらの組み合わせ)、等張化剤(例えば、糖および塩化ナトリウム)、吸収遅延剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチン)、塩、薬物、薬物安定剤、ゲル、樹脂、フィラー、結合剤、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、甘味剤、着香料、染料、流体および栄養補給剤、これらと同様の材料、およびそれらの組み合わせを含む。担体は、吸収可能であるべきであり、担体としては、液体、半固体(すわなち、ペースト)、または固体担体があげられる。加えて、所望により、組成物は、少量の補助的な物質、例えば、湿潤剤もしくは乳化剤、安定化剤、またはpH緩衝剤を含んでいてもよい。pHおよび医薬組成物中の種々のコンポーネントの正確な濃度は、周知のパラメーターに従って調整される。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングを使用することによって維持することができ、分散物のケースでは必要とされる粒径を維持することによって維持することができ、また界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0078】
医薬的に許容され得る担体は、特にヒトへの投与のために配合されるが、ある特定の実施形態においては、非ヒト動物への投与のために配合されるが、ヒトへの投与のためには(例えば、政府の規制によって)許容できない医薬的に許容され得る担体の使用が望ましい場合がある。活性成分に対して非適合性である(例えば、レシピエントに対して不利益であるか、またはそれに含まれる組成物の治療的有効性に対して不利益である)場合を除き、任意の従来の担体は、治療用組成物または医薬組成物における使用が意図される。本発明のある特定の態様に従って、組成物は、任意の便宜で実際的なやり方、すなわち、溶解、懸濁、乳化、混合、カプセル化、吸収などによって、担体と混ぜ合わされる。このような手順は、当業者にとって日常的な作業である。
【0079】
本発明のある特定の実施形態には、投与が固体、液体、またはエアロゾルの形態で行われるかどうか、および投与経路(例えば注射)のために無菌である必要があるかどうかに応じて、異なる種類の担体が含まれ得る。組成物は、当業者に知られているように、静脈内に、皮内に、経皮的に、髄腔内に、動脈内に、腹腔内に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、筋肉内に、皮下に、経粘膜的に、経口的に、局所的に、局部的に、吸入(例えば、エアロゾル吸入)によって、注射によって、注入によって、持続注入によって、標的細胞を直接浸す局部的な灌流によって、カテーテルによって、洗浄によって、脂質組成物(例えば、リポソーム)中で、もしくはその他の方法、または前述のものの任意の組み合わせによって投与することができる(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版、1990年(参照により本明細書に援用される)を参照のこと)。
【0080】
エキソソームは、非経口投与のために製剤化してもよく、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射のために、さらには腹腔内経路による注射のために製剤化してもよい。典型的には、このような組成物は、液体の液剤もしくは懸濁剤のいずれかとして調製してもよく;注射の前に液体を加えて液剤または懸濁剤を調製するための使用に適した固体形態で調製してもよく;また、調製物は乳化させてもよい。
【0081】
注射での使用に適した医薬製剤としては、無菌の水性液剤または分散液剤;ゴマ油、ピーナッツ油、または水性プロピレングリコールを含む製剤;および滅菌された注射用液剤または分散液剤の即時調製用の無菌の粉剤・散剤(powder)があげられる。全てのケースにおいて、製剤は、無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流体でなければならない。また、製造および保存条件下で安定であるべきであり、かつ微生物(例えば、細菌および真菌)の汚染作用に対して保護されていなければならない。
【0082】
製剤化したら、液剤は、投与剤形に適合するやり方で、かつ治療的に有効な量で投与される。製剤は、例えば非経口投与のために製剤化した剤形(例えば、注射用液剤、または肺に送達するためのエアロゾル剤など)、または消化管投与のために製剤化した剤形(例えば、薬物放出カプセル剤など)などの種々の剤形で容易に投与される。
【0083】
用語「単位用量」または「投与量」は、対象において使用するために適した物理的に別々の単位を指し、各単位は、その投与(すなわち、適切な経路および処置レジメン)に関連して上記で述べた、所望の応答を生じさせるように計算された所定量の治療用組成物を含む。投与される量(処置の回数と単位用量の両方による)は、所望の効果に依存する。患者または対象に投与される本発明の組成物の実際の投与量は、物理的因子および生理的因子、例えば、対象の体重、年齢、健康状態、および性別、処置される疾患の種類、疾患の浸透の程度、過去の治療的介入または並行する治療的介入、患者の特発性疾患、投与経路、ならびにその特定の治療用物質の力価、安定性、および毒性によって決定することができる。例えば、用量は、また、投与あたり約1μg/kg/体重~約1000mg/kg/体重(このような範囲は、中間の用量を含む)またはそれを超える量、およびその中で導き出せる任意の範囲を含み得る。本明細書に列挙された数から導き出せる範囲の非限定的な例において、約5μg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5μg/kg/体重~約500mg/kg/体重などの範囲で投与することができる。別の例として、用量は、また、投与あたり約10億~約5000億のエキソソーム(このような範囲は、中間の用量を含む)またはそれを超えるエキソソーム、およびその中で導き出せる任意の範囲を含み得る。本明細書に列挙された数から導き出せる範囲の非限定的な例において、約100万のエキソソーム~約5000億のエキソソーム、約500万のエキソソーム~約2500億のエキソソームなどの範囲で投与することができる。1つの例において、用量は、体積5mL中に約1500億のエキソソームを含んでいてもよく、そのような用量は、体重70kgのヒト患者に投与されてもよい。いずれにせよ、投与に責任を有する従事者が、組成物中の活性成分(単数または複数)の濃度、および個々の対象に対する適切な用量(単数または複数)を決定する。
【0084】
動物患者に投与される組成物の実際の投与量は、物理的因子および生理的因子、例えば、体重、状態の重症度、処置される疾患の種類、過去の治療的介入または並行する治療的介入、患者の特発性疾患、および投与経路によって決定することができる。投与量および投与経路に応じて、好ましい投与量および/または有効量の投与回数は、対象の応答によって変更してもよい。いずれにせよ、投与に責任を有する従事者が、組成物中の活性成分(単数または複数)の濃度、および個々の対象に対する適切な用量(単数または複数)を決定する。
【0085】
ある特定の実施形態において、医薬組成物は、例えば、少なくとも約0.1%の活性化合物を含んでいてもよい。他の実施形態において、活性化合物は、例えば、単位の重量の約2%~約75%、または約25%~約60%、およびその中で導き出せる任意の範囲を構成し得る。当然ながら、治療的に有用な各組成物中の活性化合物(単数または複数)の量は、化合物の任意の所与の単位用量中で適切な投与量が得られるように調製してもよい。溶解性、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与経路、製品の貯蔵寿命などの因子、ならびにその他の薬理学的な考慮事項が、そのような医薬製剤調製の技術分野における当業者によって意図され、そうであるから、種々の投薬量および処置レジメンが望ましい場合がある。
【0086】
他の非限定的な例において、用量は、また、投与あたり、約1マイクログラム/kg/体重から、約5マイクログラム/kg/体重から、約10マイクログラム/kg/体重から、約50マイクログラム/kg/体重から、約100マイクログラム/kg/体重から、約200マイクログラム/kg/体重から、約350マイクログラム/kg/体重から、約500マイクログラム/kg/体重から、約1ミリグラム/kg/体重から、約5ミリグラム/kg/体重から、約10ミリグラム/kg/体重から、約50ミリグラム/kg/体重から、約100ミリグラム/kg/体重から、約200ミリグラム/kg/体重から、約350ミリグラム/kg/体重から、約500ミリグラム/kg/体重から、約1000ミリグラム/kg/体重まで、またはそれを超える量、およびその中で導き出せる任意の範囲を含み得る。本明細書に列挙された数から導き出せる範囲の非限定的な例において、上記の数に基づき、約5ミリグラム/kg/体重~約100ミリグラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重などの範囲で投与することができる。
IV.エキソソームカーゴ
A.核酸およびベクター
【0087】
本発明のある特定の態様において、治療用タンパク質または抗体をコードする核酸配列が開示され得る。どの発現系が使用されるかに応じて、核酸配列は、従来の方法に基づいて選択することができる。例えば、それぞれの遺伝子またはそのバリアントは、ある特定の系における発現に対してコドン最適化され得る。種々のベクターもまた、目的のタンパク質を発現させるために使用することができる。例示的なベクターとしては、それらに限定されないが、プラスミドベクター、ウイルスベクター、トランスポゾン、またはリポソームベースのベクターがあげられる。
B.組換えタンパク質
【0088】
いくつかの実施形態は、組換えタンパク質およびポリペプチド、例えば、治療用抗体などに関する。いくつかの態様において、治療用抗体は、細胞内タンパク質に対して特異的または選択的に結合する抗体であってもよい。さらなる態様において、タンパク質またはポリペプチドは、血清安定性を増加させるために改変されていてもよい。よって、本出願において「改変タンパク質」または「改変ポリペプチド」の機能または活性に言及する場合、当業者は、例えば、改変されていないタンパク質またはポリペプチドに対してさらなる利点を有するタンパク質またはポリペプチドが含まれることを理解する。「改変タンパク質」に関する実施形態は、「改変ポリペプチド」について実施することができ、その逆も同じであることが特に意図されている。
【0089】
本明細書で使用される場合、タンパク質またはペプチドは、一般に、それらに限定されないが、約200アミノ酸より大きく、最大で遺伝子から翻訳される完全長配列までのタンパク質;約100アミノ酸より大きいポリペプチド;および/または約3~約100アミノ酸のペプチドを指す。便宜のために、用語「タンパク質」、「ポリペプチド」、および「ペプチド」は、本明細書において、互換的に使用される。
【0090】
本明細書で使用される場合、「アミノ酸残基」は、当該技術分野で知られている任意の天然に存在するアミノ酸、任意のアミノ酸誘導体、または任意のアミノ酸模倣物を指す。ある特定の実施形態において、タンパク質またはペプチドの残基は、連続的であり、アミノ酸残基の配列を中断するいかなる非アミノ酸も含まない。他の実施形態において、配列は、1つまたはそれを超える非アミノ酸部分を含んでいてもよい。特定の実施形態において、タンパク質またはペプチドの残基の配列は、1つまたはそれを超える非アミノ酸部分によって中断されていてもよい。
【0091】
したがって、用語「タンパク質またはペプチド」は、天然に存在するタンパク質中に見出される20種類の一般的なアミノ酸の少なくとも1つ、または少なくとも1つの改変または普通でないアミノ酸を含むアミノ酸配列を包含する。
C.阻害性RNA
【0092】
siRNA(例えば、siNA)は、当該技術分野において周知である。例えば、siRNAおよび二本鎖RNAは、米国特許第6,506,559号および米国特許第6,573,099号、ならびに米国特許出願第2003/0051263号、第2003/0055020号、第2004/0265839号、第2002/0168707号、第2003/0159161号、および第2004/0064842(これらの全ては、参照によりその全体が本明細書に援用される)に記載されている。
【0093】
siRNA内において、核酸のコンポーネントは、全体を通して同じタイプまたは相同のタイプ(the same type or homogenous)である必要はない(例えば、siRNAは、ヌクレオチドおよび核酸またはヌクレオチドアナログを含んでいてもよい)。典型的には、siRNAは、二本鎖構造を形成し;この二本鎖構造は、部分的または完全に相補的な2つの別個の核酸に起因していてもよい。本発明のある特定の実施形態において、siRNAは、単一の核酸(ポリヌクレオチド)または核酸アナログのみを含み、それ自体で補完することによって二本鎖構造を形成(例えば、ヘアピンループを形成)してもよい。siRNAの二本鎖構造は、16個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、100個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、またはそれを超える個数の連続した核酸塩基(それらの中の全ての範囲を含む)を含んでいてもよい。siRNAは、相補的核酸(同じ核酸の別の部分であってもよく、または別個の相補的核酸であってもよい)とハイブリダイズして二本鎖構造を形成する、17~35個の連続した核酸塩基、より好ましくは18~30個の連続した核酸塩基、より好ましくは19~25個の核酸塩基、より好ましくは20~23個の連続した核酸塩基、もしくは20~22個の連続した核酸塩基、または21個の連続した核酸塩基を含んでいてもよい。
【0094】
本発明の方法を実施するために有用な本発明の薬剤としては、それらに限定されないが、siRNAがあげられる。典型的には、二本鎖RNA(dsRNA)(本明細書において、別称として低分子干渉RNA(siRNA)と呼ばれることがある)の導入により、強力で特異的な遺伝子サイレンシング(RNA干渉またはRNAiと呼ばれる現象)が誘導される。RNA干渉は、「共抑制」、「転写後遺伝子サイレンシング」、「センス抑制」、および「クエリング(quelling)」と呼ばれてきた。RNAiは、特定の遺伝子の活性をノックアウトする手段を提供するため、魅力的なバイオテクノロジーツールである。
【0095】
RNAiの設計において、siRNAの性質、サイレンシング効果の持続性、および送達システムの選択など、いくつかの因子を考慮する必要がある。RNAi効果を生じさせるために、生物に導入されるsiRNAは、典型的にはエクソン配列を含有する。さらに、RNAiプロセスは相同性依存的であるため、その配列は、相同ではあるが遺伝子特異的ではない配列間の交差干渉の可能性を最小にしつつ、遺伝子特異性が最大になるように注意深く選択しなければならない。好ましくは、siRNAは、そのsiRNAの配列と阻害される遺伝子との間で、80%超、85%超、90%超、95%超、98%超、または、さらには100%の同一性を示す。標的遺伝子に対する同一性が約80%未満の配列は、実質的に有効性が低い。よって、siRNAと阻害される遺伝子との間の相同性が大きいほど、無関係な遺伝子の発現が影響を受ける可能性は低い。
【0096】
さらに、siRNAのサイズは、重要な考慮事項である。いくつかの実施形態において、本発明は、少なくとも約19~25個のヌクレオチドを含有し、かつ遺伝子発現をモジュレートすることができるsiRNA分子に関する。本発明の文脈において、siRNAは、好ましくは、長さが500ヌクレオチド未満、200ヌクレオチド未満、100ヌクレオチド未満、50ヌクレオチド未満、または25ヌクレオチド未満である。より好ましくは、siRNAは、長さが約19ヌクレオチド~約25ヌクレオチドである。
【0097】
標的遺伝子は、一般に、ポリペプチドをコードする領域を含むポリヌクレオチド、または、複製、転写、もしくは翻訳、もしくはポリペプチドの発現に重要な他のプロセスを調節するポリヌクレオチド領域、または、ポリペプチドをコードする領域とそこに作動可能に連結された、発現を調節する領域の両方を含むポリヌクレオチド、を意味する。細胞内で発現している任意の遺伝子が標的とされ得る。好ましくは、標的遺伝子は、疾患に重要な細胞活性の増悪に関与または関係するもの、または研究目的として特に興味深いものである。
【0098】
siRNAは、商業的供給源から得ることができ、天然源から得ることができ、または当業者に周知の多数の技術のいずれかを用いて合成することができる。例えば、予め設計されたsiRNAの商業的供給源の1つは、Ambion(登録商標)(Austin、Tex)である。別の1つは、Qiagen(登録商標)(Valencia、Calif.)である。本発明の組成物および方法において適用することができる阻害性核酸は、目的のタンパク質の確かなダウンレギュレーターであることが任意のソースによって確認されている、任意の核酸配列であり得る。過度な実験を行うことなく、本発明の開示を用いて、本発明の方法を実施するために、さらなるsiRNAを設計し、使用できることが理解される。
【0099】
siRNAは、また、1つまたはそれを超えるヌクレオチドの変更を含んでいてもよい。このような変更は、例えば、19~25ヌクレオチドのRNAの末端(単数または複数)への非ヌクレオチド材料の追加、または内部的な(RNAの1つまたはそれを超えるヌクレオチドにおける)追加を含んでいてもよい。ある特定の態様において、RNA分子は、3’-ヒドロキシル基を含有する。本発明のRNA分子中のヌクレオチドは、また、非標準的なヌクレオチド(天然に存在しないヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが含まれる)を含んでいてもよい。二本鎖オリゴヌクレオチドは、修飾されたバックボーン、例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、もしくは当該技術分野で知られているその他の修飾されたバックボーンを含んでいてもよく、または非天然のヌクレオシド間結合を含んでいてもよい。siRNAのさらなる改変(例えば、2’-O-メチルリボヌクレオチド、2’-デオキシ-2’-フルオロリボヌクレオチド、「ユニバーサル塩基」ヌクレオチド、5-C-メチルヌクレオチド、1つまたはそれを超えるホスホロチオエートヌクレオチド間結合、および逆位デオキシ無塩基残基の組み込み)は、米国特許出願公開第2004/0019001号および米国特許第6,673,611号(これらは、それぞれ参照によりその全体が援用される)中に見出すことができる。上記の変更された核酸またはRNAの全てを総称して、改変siRNAと呼ぶ。
D.遺伝子編集システム
【0100】
一般に、「CRISPRシステム」は、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子の発現に関与するか、またはその活性を指示する転写物およびその他のエレメントを総称的に指し、CRISPR関連(「Cas」)遺伝子には、Cas遺伝子をコードする配列、tracr(トランス活性化CRISPR)配列(例えば、tracrRNAまたは活性な部分tracrRNA)、tracrメイト配列(内在性CRISPRシステムの文脈において、「ダイレクトリピート」およびtracrRNA-processedパーシャルダイレクトリピートを包含する)、ガイド配列(内在性CRISPRシステムの文脈において、「スペーサー」とも呼ばれる)、ならびに/またはCRISPR部位由来の他の配列および転写物が含まれる。
【0101】
CRISPR/CasヌクレアーゼまたはCRISPR/Casヌクレアーゼシステムは、非コードRNA分子(ガイド)RNA(これは、配列特異的にDNAに結合する)、およびヌクレアーゼ機能性(例えば、2つのヌクレアーゼドメイン)を有するCasタンパク質(例えば、Cas9)を含んでいてもよい。CRISPRシステムの1つまたはそれを超えるエレメントは、タイプI、タイプII、またはタイプIIICRISPRシステム由来であってもよく、例えば、Streptococcus pyogenesなどの、内在性CRISPRシステムを含む特定の生物由来であってもよい。
【0102】
いくつかの態様において、CasヌクレアーゼおよびgRNA(標的配列に特異的なcrRNAと、配列が決まっているtracrRNAの融合物を含む)を細胞に導入する。一般に、gRNAの5’末端にある標的サイトは、相補的塩基対合を用いて、Casヌクレアーゼをその標的サイト(例えば、遺伝子)に向ける。標的サイトは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列(例えば、典型的にはNGG、またはNAG)のすぐ5’側である、その位置に基づいて選択され得る。この点に関し、gRNAは、そのガイドRNAの最初の20、19、18、17、16、15、14、14、12、11、または10ヌクレオチドを、標的DNA配列に対応するように改変することによって、所望の配列に向けられる。一般に、CRISPRシステムは、標的配列の部位におけるCRISPR複合体の形成を促進するエレメントによって特徴付けられる。典型的には、「標的配列」は、一般に、それに対してガイド配列が相補性を有するように設計された配列を指し、ここで、標的配列とガイド配列の間のハイブリダイゼーションによって、CRISPR複合体の形成が促進される。ハイブリダイゼーションを引き起こし、CRISPR複合体の形成を促進する十分な相補性がある限り、完全な相補性は必ずしも必要ではない。
【0103】
CRISPRシステムは、本明細書において述べるように、標的サイトにおいて二本鎖切断(DSBs)を誘導し、次いでそれを破壊することができる。他の実施形態において、Cas9バリアント(「ニッカーゼ」とみなされる)が、標的サイトにおいて一本鎖にニックを入れるために使用される。ペアのニッカーゼを、例えば、特異性を向上させるために使用することができ、各ニッカーゼは、同時にニックが導入されると5’オーバーハングが導入されるように、1組の異なるgRNAターゲティング配列によって方向付けられている。他の実施形態において、触媒的に不活性なCas9が、遺伝子発現に影響を及ぼすように、異種性のエフェクタードメイン(例えば、転写抑制因子または転写活性化因子)に融合される。
【0104】
標的配列は、任意のポリヌクレオチド、例えばDNAまたはRNAポリヌクレオチドを含んでいてもよい。標的配列は、細胞の核または細胞質中に、例えば、細胞のオルガネラ内に位置していてもよい。一般に、標的配列を含む標的部位中への組換えに使用され得る配列またはテンプレートは、「編集テンプレート」、または「編集ポリヌクレオチド」もしくは「編集配列」と呼ばれる。いくつかの態様において、外来性のテンプレートポリヌクレオチドは、編集テンプレートと呼ばれる。いくつかの態様において、組換えは、相同組換えである。
【0105】
典型的には、内在性CRISPRシステムの文脈において、CRISPR複合体(標的配列とハイブリダイズし、1つまたはそれを超えるCasタンパク質と複合体を形成したガイド配列を含む)の形成によって、標的配列中、または標的配列近傍(例えば、標的配列から1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、50、またはそれを超える塩基対以内)における、一方または両方の鎖の切断という結果がもたらされる。tracr配列(野生型tracr配列の全体を含んでいても、それから構成されていてもよく、または野生型tracr配列の一部(例えば、野生型tracr配列の、約20、約26、約32、約45、約48、約54、約63、約67、約85、もしくはそれを超える、または約20超、約26超、約32超、約45超、約48超、約54超、約63超、約67超、約85超、もしくはそれを超えるヌクレオチド)を含んでいても、それから構成されていてもよい)は、また、例えば、ガイド配列に作動可能に連結されたtracrメイト配列の全体または一部に対する少なくともtracr配列の一部に沿ったハイブリダイゼーションによって、CRISPR複合体の一部を形成してもよい。tracr配列は、tracrメイト配列に対して、ハイブリダイズし、かつ、CRISPR複合体の形成に関与するために十分な相補性、例えば、最適にアラインされた場合、tracrメイト配列の長さに沿って、少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の配列相補性を有する。
【0106】
CRISPRシステムのエレメントの発現が、1つまたはそれを超える標的サイトにおいて、CRISPR複合体の形成を指示するように、CRISPRシステムの1つまたはそれを超えるエレメントの発現を推進する1つまたはそれを超えるベクターを、細胞内に導入してもよい。コンポーネントもまた、タンパク質および/またはRNAとして細胞に送達されてもよい。例えば、Cas酵素、tracrメイト配列に連結されたガイド配列、およびtracr配列は、それぞれ別々のベクター上の、別々の調節エレメントに作動可能に連結されていてもよい。あるいは、同じか、または異なる調節エレメントから発現される2つまたはそれを超えるエレメントが、単一のベクター内で組み合わされ、かつ、1つまたはそれを超える追加のベクターが、第1のベクターに含まれていないCRISPRシステムの任意のコンポーネントをもたらしてもよい。ベクターは、制限エンドヌクレアーゼ認識配列などの1つまたはそれを超える挿入部位(「クローニングサイト」とも呼ばれる)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、1つまたはそれを超える挿入部位は、1つまたはそれを超えるベクターの1つまたはそれを超える配列エレメントの上流および/または下流に位置している。複数の異なるガイド配列が使用される場合、単一の発現構築物が、CRISPR活性を、細胞内の複数の異なる対応する標的配列に向けるために使用され得る。
【0107】
ベクターは、Casタンパク質などのCRISPR酵素をコードする酵素コード配列に作動可能に連結されている調節エレメントを含んでいてもよい。Casタンパク質の非限定的な例としては、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9(Csn1およびCsx12としても知られる)、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csfl、Csf2、Csf3、Csf4、それらのホモログ、またはそれらの改変形態があげられる。これらの酵素は知られており;例えば、S.pyogenes Cas9タンパク質のアミノ酸配列は、SwissProtデータベース中に、受託番号Q99ZW2で見出すことができる。
【0108】
CRISPR酵素は、Cas9(例えば、S.pyogenesまたはS.pneumonia由来の)であってもよい。CRISPR酵素は、標的配列の位置、例えば標的配列内および/または標的配列の相補配列内における一方または両方の鎖の切断を指示することができる。ベクターは、改変されたCRISPR酵素が、標的配列を含む標的ポリヌクレオチドの一方または両方の鎖を切断する能力を欠くように、対応する野生型酵素に対して改変されたCRISPR酵素をコードしていてもよい。例えば、S.pyogenes由来のCas9のRuvC I触媒ドメインにおけるアスパラギン酸からアラニンへの置換(D10A)は、Cas9を、両方の鎖を切断するヌクレアーゼからニッカーゼ(一本鎖を切断する)に変換する。いくつかの実施形態において、Cas9ニッカーゼは、例えば、それぞれがDNA標的のセンス鎖およびアンチセンス鎖を標的とする2つのガイド配列などの、ガイド配列(単数または複数)と組み合わせて使用してもよい。この組み合わせによって、両方の鎖にニックが入れられ、NHEJまたはHDRを導入するために使用することが可能になる。
【0109】
いくつかの実施形態において、CRISPR酵素をコードする酵素コード配列は、真核細胞などの特定の細胞の発現に対してコドン最適化されている。真核細胞は、哺乳動物などの特定の生物の細胞、またはそのような生物に由来する細胞であってもよく、哺乳動物としては、それらに限定されないが、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、または非ヒト霊長類があげられる。一般に、コドン最適化は、目的の宿主細胞における発現を増加させるために、天然の配列の少なくとも1つのコドンを、その天然のアミノ酸配列を維持しつつ、目的の宿主細胞の遺伝子においてより高頻度または最も高頻度に使用されているコドンで置き換えることによって、核酸配列を改変するプロセスを指す。種々の型において、特定のアミノ酸のある特定のコドンについて特定のバイアスが見られる。コドンバイアス(生物間のコドン使用頻度の相異)は、メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳効率(これは、また、とりわけ翻訳されているコドンの性質、および特定のトランスファーRNA(tRNA)分子の利用可能性に依存すると考えられている)に関連することが多い。細胞における選択されたtRNAの優位性は、一般に、ペプチド合成において最も高頻度に用いられるコドンを反映している。したがって、コドン最適化に基づいて、所与の生物における最適な遺伝子発現のために、遺伝子を調整することができる。
【0110】
一般に、ガイド配列は、標的ポリヌクレオチド配列との十分な相補性を有し、その標的配列とハイブリダイズし、CRISPR複合体のその標的配列への配列特異的結合を指示する、任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態において、ガイド配列と、それに対応する標的配列の間の相補性の程度は、適切なアライメントアルゴリズムを用いて最適にアラインした場合、約50%、約60%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、約97.5%、約99%、もしくはそれを超えるか、または約50%超、約60%超、約75%超、約80%超、約85%超、約90%超、約95%超、約97.5%超、約99%超、もしくはそれを超える。
【0111】
最適なアライメントは、配列をアラインするための任意の適切なアルゴリズムを使用して決定することができ、そのようなアルゴリズムとしては、それらに限定されないが、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズム、Burrows-Wheeler変換に基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、Clustal W、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies、ELAND(Illumina、San Diego、Calif.),SOAP(soap.genomics.org.cnで利用可能)、およびMaq(maq.sourceforge.netで利用可能)があげられる。
【0112】
CRISPR酵素は、1つまたはそれを超える異種性のタンパク質ドメインを含む融合タンパク質の一部であってもよい。CRISPR酵素融合タンパク質は、任意の追加のタンパク質配列、および、必要に応じて、任意の2つのドメイン間に、リンカー配列を含んでいてもよい。CRISPR酵素に融合し得るタンパク質ドメインの例としては、限定するものではないが、エピトープタグ、レポーター遺伝子配列、および以下の活性のうちの1つまたはそれを超える活性を有するタンパク質ドメインがあげられ、その活性とは、メチラーゼ活性、脱メチル化酵素活性、転写活性化活性、転写抑制活性、転写放出因子活性、ヒストン修飾活性、RNA切断活性、および核酸結合活性である。エピトープタグの非限定的な例としては、ヒスチジン(His)タグ、V5タグ、FLAGタグ、インフルエンザヘマグルチニン(HA)タグ、Mycタグ、VSV-Gタグ、およびチオレドキシン(Trx)タグがあげられる。レポーター遺伝子の例としては、それらに限定されないが、グルタチオン-5-トランスフェラーゼ(GST)、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)ベータガラクトシダーゼ、ベータグルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、および青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自己蛍光タンパク質があげられる。CRISPR酵素は、DNA分子に結合もしくはその他の分子に結合するタンパク質またはタンパク質のフラグメント(それらに限定されないが、マルトース結合タンパク質(MBP)、Sタグ、Lex A DNA結合ドメイン(DBD)融合物、GAL4A DNA結合ドメイン融合物、および単純ヘルペスウイルス(HSV)BP16タンパク質融合物を含む)をコードする遺伝子配列に融合されてもよい。CRISPR酵素を含む融合タンパク質の一部を形成し得るさらなるドメインは、US20110059502(参照により本明細書に援用される)に記載されている。
V.キットおよび診断
【0113】
本発明の種々の態様において、体液または組織培養培地からエキソソームを精製するために必要なコンポーネントを含むキットが意図される。他の態様において、エキソソームを単離し、それを治療用核酸、治療用タンパク質、または阻害性RNAでトランスフェクトするために必要なコンポーネントを含むキットが意図される。キットは、このようなコンポーネントのいずれかを含む1つまたはそれを超える密封バイアルを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、キットは、また、キットのコンポーネントと反応しない容器である適切な容器手段(例えばエッペンドルフチューブ、アッセイプレート、シリンジ、ボトル、または管)を含んでいてもよい。容器は、プラスチックまたはガラスなどの滅菌可能な材料から作られていてもよい。キットは、本明細書に記載された方法の手順のステップの概要を示す指示書をさらに含んでいてもよく、本明細書に記載されたものと実質的に同じ手順に従うか、または当業者に知られている。指示の情報は、コンピューターを使用して実行した場合に、サンプルからエキソソームを精製し、そのエキソソームを治療用カーゴでトランスフェクトする実際の手順または仮想的な手順を表示させる機械可読指示(machine-readable instruction)を含む、コンピューター可読媒体中にあってもよい。
VI.実施例
【0114】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を説明するために含められている。以下の実施例において開示されている技術は、本発明の実施において良好に機能することが本発明者らによって見出された技術を示し、したがって、本発明の実施のための好ましいモードを構成するものとみなされ得ることを、当業者は理解すべきである。しかしながら、当業者は、本開示を考慮して、開示されている特定の実施形態に対して多くの変更を加えることができ、それでもなお、本発明の趣旨および範囲を逸脱することなく、同様または類似の結果が得られ得ることを理解すべきである。
【実施例0115】
サルにおける間葉系幹細胞由来エキソソームの体内分布
3匹の雄のアカゲザルの成体(体重6kg)を使用した。1匹は、PHK-67標識エキソソームの静脈内投与を受け;1匹は、DiR標識エキソソームの静脈内投与を受け;1匹は、DiR標識エキソソームの腹腔内投与を受けた。エキソソーム投与の前に、それぞれのサルから、5mLの全血を採取した。エキソソーム投与は、NanoSightポストラベリングで評価して、680億のエキソソームを含む2.5mLからなるものであった。アカゲザルは、エキソソーム投与の24時間後に安楽死させた。尿の採取を行った。血液は、以下のようにして採取した:2×5mL全血、2×5mL EDTA、2×5mLヘパリン。臓器を採取して、ホルマリン固定のために処理し、HE染色のためにパラフィン包埋し、液体窒素中で急速凍結させ、OCT包埋し、ドライアイス上でゆっくりと冷却するか、または臓器を採取して、IVISイメージングのために新鮮な状態に保った。大腿骨から骨髄を採取した。イメージング結果によって、エキソソームが、膵臓(図1A~B)、肝臓(図1C~D)、および脳(図1E)に局在することが示された。
【実施例0116】
エキソソームを用いたtdTomato mRNA送達
プリンシパル(principal)の実証として、293T細胞を、tdTomatoをコードするプラスミドDNAまたはRNAのいずれかでトランスフェクトした(図8C)。トランスフェクトした細胞を、トランスフェクションの24時間後に、FACS(図8A)および免疫蛍光(図8B)を用いてアッセイした。次に、293T細胞をtdTomato mRNAで電気穿孔したエキソソームで処理し、24時間後にFACSを用いてアッセイした(図8D)。293T細胞を、同様に、ExofectとtdTomato mRNAまたはプラスミドDNAで処理したエキソソームでトランスフェクトした。細胞を、24時間後に、tdTomato発現(図8EおよびF)および細胞生存率(図8HおよびI)について、FACSによってアッセイした。細胞を、同様に、tdTomato発現について、免疫蛍光によってアッセイした(図8G)。最後に、Exofectを用いたエキソソームによるmRNAの送達を、U2OS細胞を用いて可視化した(図8J)。
【実施例0117】
抗加齢療法のためのテロメラーゼエキソソーム
プリンシパル(principal)の実証として、BJ細胞を、96時間の時間経過にわたって、リポフェクタミンを用いて、in vitroで転写されたhTERT mRNA(図2A)でトランスフェクトした。この時間経過の間、mRNAを細胞から単離し、hTERT mRNAのレベルをqPCRによって評価した。hTERT mRNAレベルは、24時間にわたって、比較的一定のままであった(図2B)。同様にこの時間経過の間、タンパク質を単離し、テロメラーゼ活性について試験した。相対テロメラーゼ活性は、トランスフェクション後24時間の間、上昇したままであった(図2CおよびD)。
【0118】
BJ細胞を、同様に、96時間の時間経過にわたって、リポフェクタミンを用いて、in vitroで転写された改変hTERT mRNA(hTERT modRNA)でトランスフェクトした。この時間経過の間、mRNAを細胞から単離し、hTERT mRNAのレベルをqPCRによって評価した。hTERT mRNAレベルは、24時間にわたって、比較的一定のままであった(図2E)。同様にこの時間経過の間、タンパク質を単離し、テロメラーゼ活性について試験した。相対テロメラーゼ活性は、トランスフェクション後24時間の間、上昇したままであった(図2F)。注目すべきことに、ドミナントネガティブhTERT modRNAは、テロメラーゼ活性を上昇させなかった(図2G)。
【0119】
細胞生存率に対するhTERT mRNAおよびhTERT modRNAの効果を、細胞を24時間または48時間のいずれかの時間トランスフェクトし、その培養物を細胞死についてアッセイすることによって試験した。hTERT mRNAは細胞死を誘導するが、hTERT modRNAは誘導しないことが見出された(図2H)。
【0120】
細胞老化に対するhTERT modRNAの効果を、リポフェクタミンを用いて、細胞をhTERT modRNAで3週間にわたって4回処理することによって試験した。リポフェクタミン単独を対照として使用した。最後に細胞を採取し、βガラクトシダーゼ発現について評価した。hTERT modRNAによる処理は、細胞老化のレベルを低下させたが、ドミナントネガティブhTERT modRNAによる処理は低下させなかった(図2IおよびJ)。
【0121】
FISHで検出したときのテロメアシグナルに対するhTERT modRNAの効果を、リポフェクタミンを用いて、細胞をhTERT modRNAで3週間にわたって4回処理することによって検出した。リポフェクタミン単独を対照として使用した。最後に細胞を採取し、PNA-FISHを用いてテロメアシグナルを評価した。細胞をイメージングし、テロメアシグナルを、シグナル積分密度(signal integrated
density)に基づいてソフトウェアを用いて評価した。hTERT modRNAによる処理は、より高いテロメアシグナルを示す細胞の相対頻度を増加させた(図2K)。
【0122】
次に、BJ細胞を、hTERT modRNAで電気穿孔したエキソソームを用いて調べた。エレクトロポレーション後のエキソソームにおけるmodRNAの発現(図3Bに示すプライマーを使用して行った)が、より効率的であることを示す(図3A)。BJ細胞は、0時間および48時間において、hTERT modRNAを含有するエキソソームで処理した。72時間において細胞を採取し、hTERT mRNAおよびmodRNAレベルについて試験した(図4A)。細胞を、同様に、テロメラーゼ活性(図4B)および老化(図4C~E)について試験した。
【0123】
U2OS細胞を、Exofectを用いて、hTERT modRNAでトランスフェクトしたエキソソームで処理し、24時間後に、hTERT mRNA発現(図5A)およびテロメラーゼ活性(図5B)について試験した。
【0124】
hTERTは、293T細胞において過剰発現していた(図6A)。hTERT過剰発現293T細胞は、より高いテロメラーゼ活性を示し(図6B)、かつより多くのhTERT mRNAを発現すること(図6C)が見出された。hTERTは、同様に、BJ細胞およびU2OS細胞においても過剰発現しており、それらは、同様に、より高いhTERT mRNAレベル(図6D)およびタンパク質レベル(図6E)も示した。hTERT過剰発現293T細胞から単離されたエキソソームを、BJ細胞およびU2OS細胞を処理するために使用した。処理したU2OS細胞は、より強いテロメアシグナルを示した(図7)。
【0125】
本明細書に記載および特許請求されている方法の全ては、本開示を考慮して、過度な実験を行うことなく実施または実行することができる。本発明の組成物および方法は、好ましい態様によって説明されてきたが、本発明の概念、趣旨、および範囲を逸脱することなく、その方法に対して、ならびに本明細書に記載されている方法のステップまたは一連のステップにおいて、変更を加えてもよいことが当業者には明らかである。より具体的には、化学的にも生理学的にも関連するある特定の薬剤を、本明細書に記載されている薬剤の代用としてもよく、それでもなお同じまたは類似の結果が達成されることが明らかである。当業者に明らかなこのような類似の置換および改変は、全て、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨、範囲、および概念の範囲内であるとみなされる。
参考文献
以下の参考文献は、本明細書に記載されているものを補足する、例示的な手順上またはその他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に援用される。
米国特許第4,870,287号
米国特許第5,739,169号
米国特許第5,760,395号
米国特許第5,801,005号
米国特許第5,824,311号
米国特許第5,830,880号
米国特許第5,846,945号
【化1-1】
【化1-2】
図1-1】
図1-2】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図2-8】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図5
図6-1】
図6-2】
図6-3】
図7
図8-1】
図8-2】
図8-3】
図8-4】
図8-5】
図8-6】
図8-7】
【外国語明細書】