(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053086
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】情報処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20240405BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036159
(22)【出願日】2024-03-08
(62)【分割の表示】P 2022130577の分割
【原出願日】2022-08-18
(71)【出願人】
【識別番号】520150706
【氏名又は名称】匠技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 将太
(72)【発明者】
【氏名】井坂 星南
(72)【発明者】
【氏名】原 崇文
(57)【要約】
【課題】過去の見積情報を参照して新たな見積情報を生成することを支援する。
【解決手段】サーバ10は、製品の製造について作成された見積情報とを記憶し、見積の
対象製品の製造に関する情報を入力し、入力された情報の全部又は一部に類似する情報を
有する見積情報を抽出し、抽出された見積情報に基づいて、対象製品の見積情報を作成す
る際における留意事項を示す留意情報を生成し、生成された留意情報を通知する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品の製造について作成された見積情報とを記憶する記憶手段と、
見積の対象製品の製造に関する情報を入力する入力手段と、
前記記憶手段から、前記入力手段にて入力された情報の全部又は一部に類似する情報を
有する見積情報を抽出する抽出手段と、
前記抽出手段にて抽出された見積情報に基づいて、前記対象製品の見積情報を作成する
際における留意事項を示す留意情報を生成する生成手段と、
前記生成手段にて生成された留意情報を通知する通知手段と
を有する情報処理装置。
【請求項2】
前記記憶手段には、見積額の算出に用いる基準情報がさらに記憶され、
前記生成手段は、前記基準情報を用いて算出した見積額と、前記抽出された見積情報に
含まれる見積額との乖離の度合が所定の閾値を超える場合に、前記留意情報を生成する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記記憶手段には、見積額の妥当性に関する妥当性情報がさらに記憶され、
前記生成手段は、前記妥当性情報に基づいて前記留意情報を生成する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記妥当性情報は、前記見積額が依頼者の承認を得られた否かを表す
請求項3記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記妥当性情報は、前記見積額が製造コストを上回った否かを表す
請求項3記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記抽出された見積情報に含まれる図面データと、前記入力された情
報に含まれる図面データとの相違点を表す情報を生成する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記入力手段にて入力された情報に対して複数の見積情報が前記抽出手段にて抽出され
た場合、前記通知手段は、前記入力手段にて入力された情報と各見積情報との共通性に基
づいて決定される優先度に従って、当該複数の見積情報のうち1以上の見積情報を、前記
留意情報とともに表示する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記入力手段にて入力された情報に対して複数の見積情報が前記抽出手段にて抽出され
た場合、前記通知手段は、当該複数の見積情報に基づいて新たに生成される一の見積情報
を、前記留意情報とともに表示する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記入力手段は、前記見積の対象製品についての見積情報の入力をさらに受け付け、
前記留意情報には、前記記憶手段に記憶された複数の見積情報に基づいて決定される、
予測受注率、推奨見積額、および当該対象製品の製造時に発生すると予測される二酸化炭
素排出量のうち少なくともいずれか一つが含まれる
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
製品の製造について作成された見積情報とを記憶する記憶手段を有するコンピュータに
、
見積の対象製品の製造に関する情報を入力するステップと、
前記記憶手段から、前記入力するステップにて入力された情報の全部又は一部に類似す
る情報を有する見積情報を抽出するステップと、
前記抽出するステップにて抽出された見積情報に基づいて、前記対象製品の見積情報を
作成する際における留意事項を示す留意情報を生成するステップと、
前記生成するステップにて生成された留意情報を通知する通知ステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見積の生成を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、見積を自動的に生成する技術が知られている。例えば特許文献1には、過去
の見積データを用いて新たな見積を生成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある案件についての見積の内容を決定するに際し、類似の案件について過去に生成され
た見積書を参照することで、迅速に見積の作成を行うことができる可能性がある。しかし
、過去の見積の内容をそのまま適用すると、適切な内容の見積が得られない場合が考えら
れる。例えば、原材料や工賃、外注費用(製造工程の一部を他の企業に依頼する場合)経
費など、製造に関する状況が見積を行った時点と現時点とでは大きく異なってしまってい
る結果、過去の見積額を同じ見積額では採算が合わなくなっている場合である。あるいは
、過去の案件と今回の見積対象の案件とで製造対象の製品の差異が僅かであったとしても
その差異点に係る製造コストが大きく異なるような場合も考えられる。また、そもそも、
過去になされた見積金額が妥当であるという保証もない。この点に関し、例えば特許文献
1に記載の技術では、入力された図面データに類似した過去の図面データをそのまま適用
して見積を生成しているに過ぎず、材料価格の変動など、適切な見積を生成するために必
要な他の要素が考慮されていなかった。
【0005】
本発明は、過去の見積情報を参照して新たな見積を行う作業を支援することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、製品の製造について作成された見積情報とを記憶する記憶手段と、
見積の対象製品の製造に関する情報を入力する入力手段と、前記記憶手段から、前記入力
手段にて入力された情報の全部又は一部に類似する情報を有する見積情報を抽出する抽出
手段と、前記抽出手段にて抽出された見積情報に基づいて、前記対象製品の見積情報を作
成する際における留意事項を示す留意情報を生成する生成手段と、前記生成手段にて生成
された留意情報を通知する通知手段とを有する情報処理装置を提供する。
【0007】
本開示の別の一態様は、製品の製造について作成された見積情報とを記憶する記憶手段
を有するコンピュータに、見積の対象製品の製造に関する情報を入力するステップと、前
記記憶手段から、前記入力するステップにて入力された情報の全部又は一部に類似する情
報を有する見積情報を抽出するステップと、前記抽出するステップにて抽出された見積情
報に基づいて、前記対象製品の見積情報を作成する際における留意事項を示す留意情報を
生成するステップと、前記生成するステップにて生成された留意情報を通知する通知ステ
ップとを実行させるためのプログラムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、過去の見積情報を参照して新たな見積を行う作業が支援される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る情報処理システムの概要を示す図。
【
図4】ユーザ端末のハードウェア構成を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.構成
図1は、一実施形態に係る情報処理システムSの概要を示す図である。情報処理システ
ムSは、サーバ10、ネットワーク20、及びユーザ端末30から構成される。サーバ1
0は、ユーザ端末30と、ネットワーク20を介して接続されている。ネットワーク20
は、インターネットなどのネットワーク回線網である。ユーザ端末30は、ネットワーク
20に有線又は無線で接続可能であり、ネットワーク20を介して、ネットワーク20に
接続されているサーバ10との通信が可能である。
【0011】
従来から、製品の部品又は製品そのもの(総称して製品という)を製造するサプライヤ
ーが、サプライヤーに製品の発注をした発注企業に向けて、見積書を作成するということ
が行われている。情報処理システムSは、適切な見積書を効率よく作成するため、過去の
データ及び情報を用いて、作成された見積書の内容に関する留意事項を示す留意情報を生
成するシステムである。情報処理システムSは、ユーザ端末30に留意情報を表示させる
。
【0012】
サーバ10は、製品の製造について過去に作成された見積情報を学習済の機械学習モデ
ルMを記憶する。見積情報は、好ましくは製品の図面データを含み、図面データは図面デ
ータ以外の他の見積情報とそれぞれ対応付けて記憶されている。見積情報は、見積に係る
情報である。見積情報は、例えば、合計金額(見積総額)を含んでいる。また、材料費、
外注費、加工手数料(工賃)、税金など、複数の請求項目(細目)と各項目に対応する金
額とを含んでいてもよい。なお、以下では、図面データは見積情報に含まれる例について
説明するが、図面データが見積情報に必ずしも含まれていなくてもよい。なお、図面デー
タの形式は任意であって、PDF(Portable Document Format)形式でもよいしCAD(
Computer Aided Design)の汎用形式であってもよいし、2次元データもよいし、3次元
データであってもよい。
【0013】
サーバ10は、ユーザ端末30から送信された、見積の対象製品の製造に関する情報(
以下、製造情報という)を入力する。サーバ10は、予め記憶されている、図面データ及
び見積情報のうち、入力された製造情報に類似する情報を有する見積情報を抽出する。類
似する情報は、入力された製造情報に似ている情報の他、対象製品に関連する情報を含む
。サーバ10は、抽出された見積情報に基づいて、対象製品の見積情報を作成する際にお
ける留意事項を示す留意情報を生成し、ユーザ端末30に留意情報を通知する。
【0014】
ユーザ端末30は、見積書を作成するユーザが使用するコンピュータ装置又は情報処理
装置、例えばPC又はタブレット端末である。ユーザ端末30は、サーバ10に製造情報
を送信する。ユーザ端末30は、サーバ10から通知された留意情報画面を表示する。
【0015】
図2は、情報処理システムSの機能構成を例示する図である。情報処理システムSは、
送信手段201、取得手段202、入力手段203、記憶手段204、抽出手段206、
取得手段207、判定手段208、判定手段209、生成手段210、通知手段211、
取得手段212、表示手段213、制御手段214、及び制御手段215を有する。
【0016】
サーバ10における機能を説明する。記憶手段204は、機械学習モデルM及び材料デ
ータベースを含む、各種のデータ及びプログラムを記憶する。
【0017】
取得手段202は、ユーザ端末30から送信された製造情報を取得する。製造情報は、
例えば、図面データ、製品名、又は材料名などの、機械学習モデルMに学習済の項目の少
なくとも1つである。入力手段203は、機械学習モデルMにユーザ端末30から取得し
た製造情報に含まれる図面データを入力する。抽出手段206は、入力された図面データ
と見積情報に含まれる図面データのそれぞれとの類似度を判定する。抽出手段206にお
いて、類似度が高い見積情報が優先的に抽出されるため、類似度は優先度に相当する。す
なわち、類似度とは、入力された情報と各見積情報との共通性に基づいて決定される優先
度である。抽出手段206は、出力された類似度の上位3位までの図面データ、及び、そ
の図面データのそれぞれに対応する見積情報を出力する。取得手段207は、材料データ
ベースを読み込み、材料に係るデータを取得する。判定手段208は、製造情報と見積情
報とを用いて、所定の要素に関して、乖離度を判定する。判定手段209は、製造情報に
含まれる図面(以下、入力図面という)と、抽出された見積情報に対応する図面(以下、
類似図面という)との相違点を判定する。生成手段210は、判定された類似度、判定さ
れた乖離度、及び判定された相違点の少なくとも1つを含んだ留意情報を生成する。通知
手段211は、ユーザ端末30に、留意情報を通知する。制御手段214は、各種の制御
を行う。
【0018】
ユーザ端末30における機能を説明する。送信手段201は、サーバ10に製造情報を
送信する。取得手段212は、サーバ10から留意情報を取得する。表示手段213は、
サーバ10から通知された留意情報を表示する。制御手段215は、各種の制御を行う。
【0019】
図3は、サーバ10のハードウェア構成を例示する図である。サーバ10は、CPU(
Central Processing Unit)101、メモリ102、ストレージ103、及び通信IF(I
nterface)104を有するコンピュータ装置である。CPU101は、プログラムを実行
して各種の演算を行い、サーバ10の他のハードウェア要素を制御する制御装置である。
メモリ102は、CPU101がプログラムを実行する際のワークエリアとして機能する
主記憶装置である。ストレージ103は、各種のプログラム及びデータを記憶する不揮発
性の補助記憶装置である。通信IF104は、所定の通信規格(例えばイーサネット(登
録商標))に従って他の装置と通信する通信装置である。
【0020】
この例において、ストレージ103は、コンピュータ装置を情報処理システムSにおけ
るサーバ10として機能させるためのプログラム(以下「サーバプログラム」という)を
記憶する。CPU101がサーバプログラムを実行することにより、コンピュータ装置に
図2の機能が実装される。CPU101がサーバプログラムを実行している状態において
、メモリ102及びストレージ103の少なくとも一方が記憶手段204の一例であり、
CPU101が、入力手段203、記憶手段204、抽出手段206、取得手段207、
判定手段208、判定手段209、生成手段210、及び制御手段214の一例であり、
通信IF104が、取得手段202、及び通知手段211の一例である。
【0021】
図4は、ユーザ端末30のハードウェア構成を例示する図である。ユーザ端末30は、
CPU(Central Processing Unit)301、メモリ302、ストレージ303、通信I
F(Interface)304、入力部305、及びディスプレイ306を有するコンピュータ
装置である。CPU301は、プログラムを実行して各種の演算を行い、ユーザ端末30
の他のハードウェア要素を制御する制御装置である。メモリ302は、CPU301がプ
ログラムを実行する際のワークエリアとして機能する主記憶装置である。ストレージ30
3は、各種のプログラム及びデータを記憶する不揮発性の補助記憶装置である。通信IF
304は、所定の通信規格(例えばイーサネット(登録商標))に従って他の装置と通信
する通信装置である。入力部305は、キーボード、マウス、又はタッチパネルなどで構
成される操作部であり、ユーザの指示操作に応じて各種情報を入力する。ディスプレイ3
06は、液晶ディスプレイ、又は有機ELディスプレイなどのフラットパネルディスプレ
イで構成され、画像又は文字を出力する。
【0022】
この例において、ストレージ303は、コンピュータ装置を情報処理システムSにおけ
るユーザ端末30として機能させるためのプログラム(以下「ユーザ端末プログラム」と
いう)を記憶する。CPU301がサーバプログラムを実行することにより、コンピュー
タ装置に
図2の機能が実装される。CPU301がユーザ端末プログラムを実行している
状態において、CPU301が、制御手段215の一例であり、通信IF304が、送信
手段201、及び取得手段212の一例であり、ディスプレイ306が、表示手段213
の一例である。
【0023】
ユーザ端末30としては、本実施形態では、PC又はタブレット端末が用いられるが、
スマートフォンなどが用いられてもよい。
【0024】
2.動作
以下、情報処理システムSの動作を説明する。
図5は、留意情報通知処理を例示するシ
ーケンス図である。ステップS501において、ユーザ端末30の送信手段201は、サ
ーバ10に製造情報を送信する。サーバ10の取得手段202は、ユーザ端末30から製
造情報を取得する。
【0025】
ステップS502において、サーバ10の入力手段203は、機械学習モデルMに、ユ
ーザ端末30から受信した製造情報に含まれる図面データを入力する。入力される図面デ
ータは、例えば、対象製品の設計図又は外観写真である。
【0026】
機械学習モデルMは、教師データを用いて機械学習済のモデルである。教師データは、
製品の図面データに係る情報を含んだデータであって、過去に作成された見積書に関する
データである。教師データは、例えば、図面データに、その図面データの属性情報が紐づ
けて記憶されているデータである。属性情報は、ファイル名、製品名、依頼者氏名、予想
材料費、実績材料費、予想外注費、実績外注費、予想社内加工費、実績社内加工費、予想
加工時間、実績加工時間、加工単価、合計金額、及び見積作成日を含む。ファイル名は、
図面データのファイルの名称である。製品名は、図面データに対応する製品の名称である
。依頼者氏名は、図面データに対応する見積書の作成を依頼した人物の氏名である。予想
材料費は、見積書が作成された際に見積もられた材料費を示す項目である。予想材料費は
、さらに、材料名、材料単価、及び材料数量の3つの項目を含んでいる。材料名は、製品
を構成する材料の名称である。材料単価は、材料名に対応する材料の単価である。材料数
量は、材料名に対応する材料の数量である。実績材料費は、見積書が作成された後に、実
際にかかった材料費である。予想外注費は、見積書が作成された際に見積もられた外注費
である。実績外注費は、見積書が作成された後に、実際にかかった外注費である。予想社
内加工費は、見積書が作成された際に見積もられた社内加工費である。実績社内加工費は
、見積書が作成された後に、実際にかかった社内加工費である。予想加工時間は、見積書
が作成された際に見積もられた加工時間を示す項目である。実績加工時間は、見積書が作
成された後に実際にかかった加工時間、あるいは加工終了後に見積られた加工時間(いわ
ゆる後見積)である。加工単価は、加工にかかる単価である。合計金額は、見積の合計金
額である。見積作成日は、見積書が作成された日付である。なお、上述した費用その他の
見積情報を構成する項目は一例にすぎず、例えば一部の項目については存在しなくてもよ
い。
【0027】
ステップS503において、サーバ10の抽出手段206は、ステップS502におい
て入力された図面データと、見積情報に対応する図面データのそれぞれとの類似度を出力
する。すなわち、抽出手段206は、入力図面に類似する図面データを検索する。類似度
は、製造情報に含まれる図面データの図面全体と見積情報に対応する図面データの図面全
体とにおいて、どの程度類似しているかを示す指標である。類似度は、例えば0%から1
00%までの数値で表され、類似度が高いほど、製造情報に含まれる図面データと見積情
報に対応する図面データとが類似していることを示す。
【0028】
ステップS504において、サーバ10の抽出手段206は、ステップS503におい
て出力された類似度の上位3位までの図面データ(以下、類似図面データという)、及び
、類似図面データのそれぞれに対応する見積情報を出力する。すなわち、抽出手段206
は、機械学習モデルMに含まれる見積情報のうち、入力図面をキーとして、入力図面と類
似する図面に紐づいている見積情報を抽出する。抽出手段206において抽出される見積
情報は、ステップS502において入力された情報の全部または一部に類似する情報を有
していればよい。抽出手段206は、ステップS503及びステップS504の処理を経
て、類似度、類似図面データ、及び類似図面データのそれぞれに対応する見積情報を出力
する。類似図面データは、例えば、製品の設計図又は外観写真である。
【0029】
ステップS505において、サーバ10の取得手段207は、材料データベースを読み
込み、材料に係るデータを取得する。
【0030】
図6は、材料データベースを例示する図である。材料データベースは、材料名、材料単
価、及び更新日を紐づけて記憶している。材料名は、材料の名称である。材料単価は、材
料の単価である。更新日は、対応するレコードを作成又は修正した日付である。
【0031】
ステップS506において、サーバ10の判定手段208は、ステップS501におい
て送信された製造情報とステップS504において抽出された見積情報とを用いて、所定
の要素に関して、乖離度(乖離の度合の一例)を判定する。乖離度の判定は、ステップS
504において抽出された見積情報のレコードごとに行われる。所定の要素とは、例えば
、材料費、外注費、又は社内加工費などである。
【0032】
判定手段208は、基準情報を用いて算出した見積額と、見積情報に含まれる見積額と
の乖離度を判定する。基準情報とは、例えば、原材料価格(の推移に関する)情報、外注
費(実際に外注に発注した額)、予想加工時間などであって、見積額の算定の根拠として
用いることができるあらゆる指標や算出アルゴリズムを含む。製造情報に含まれる材料名
と見積情報に含まれる材料名とが一致する場合であっても、以前に見積書を作成したとき
から材料単価が変動している可能性がある。判定手段208は、見積情報に含まれる予想
材料費の材料単価と、ステップS505において取得された材料単価とについて、乖離度
を判定する。この場合、基準情報を用いて算出した見積額は、予想材料費の材料単価に相
当し、見積情報に含まれる見積額は、ステップS505において取得された材料単価に相
当する。
【0033】
また、見積情報に含まれる予想材料費及び予想外注費のそれぞれが、同じ見積情報に含
まれる実績材料費及び実績外注費のそれぞれとは異なっている可能性もある。判定手段2
08は、見積情報に含まれる予想材料費及び予想外注費のそれぞれと、同じ見積情報に含
まれる実績材料費及び実績外注費のそれぞれとについて、乖離度を判定する。この場合、
基準情報を用いて算出した見積額は、見積情報に含まれる予想材料費及び予想外注費のそ
れぞれに相当し、見積情報を用いて算出した見積額は、実績材料費及び実績外注費のそれ
ぞれに相当する。
【0034】
さらに、見積情報に含まれる予想加工時間と実績加工時間とが異なっている可能性があ
る。判定手段208は、見積情報に含まれる予想加工時間に加工単価を乗じて得られる予
想加工費と、見積情報に含まれる実績加工時間に加工単価を乗じて得られる実績加工費と
について、乖離度を判定する。この場合、基準情報を用いて算出した見積額は、予想加工
費に相当し、見積情報を用いて算出した見積額は、実績加工費に相当する。判定手段20
8は、予想加工費と実績加工費との乖離度を判定するのではなく、予想加工時間と実績加
工時間との乖離度を判定するのでもよい。
【0035】
乖離度dを判定するための2つの数値をそれぞれa及びbとしたとき、乖離度dは以下
の式1を用いて導かれる。2つの数値のそれぞれのどちらをaとし、どちらをbとするか
は、ユーザによって予め定められている。
[式1]
d=(|a-b|)/a×100
【0036】
ステップS507において、サーバ10の判定手段209は、入力図面と類似図面のそ
れぞれとの相違点を判定する。より具体的には、判定手段209は、入力図面データの図
面全体と類似図面データの図面全体とにおいて、どの箇所が相違しているかを判定する。
【0037】
ステップS508において、サーバ10の生成手段210は、ステップS503におい
て出力された類似度、ステップS504において出力された類似図面データ及びその見積
情報、ステップS506において判定された乖離度、及びステップS507において判定
された相違点に基づいて、留意情報を生成する。留意情報とは、類似図面に対応する見積
情報をそのまま入力図面へ引用することに対する警告を含む情報である。具体的には、生
成手段210は、留意情報として、どの入力図面とどの類似図面との類似度がいくつであ
るのかを示す情報、どの要素とどの要素との乖離度がいくつであるのかを示す情報、及び
入力図面におけるどの箇所と類似図面におけるどの箇所とが相違しているのかを示す情報
を含んだ情報を生成する。
【0038】
また、生成手段210は、留意情報を含んだ留意情報画面を生成する。留意情報画面は
、少なくとも、入力図面、類似図面、及び留意情報を含んでいる。留意情報画面は、類似
図面データに対応する見積情報を含んでいてもよい。
【0039】
ステップS509において、サーバ10の通知手段211は、ユーザ端末30に留意情
報を通知する。具体的には、通知手段211は、ユーザ端末30に留意情報画面のデータ
を送信する。ユーザ端末30の取得手段212は、ユーザ端末30から留意情報の通知を
取得する。具体的には、取得手段212は、ユーザ端末30から留意情報画面のデータを
取得する。
【0040】
ステップS510において、ユーザ端末30の表示手段213は、ステップS509に
おいて通知された留意情報を表示する。具体的には、ステップS509において送信され
た留意情報画面を表示する。
【0041】
図7は、ユーザ端末30における留意情報画面を例示する図である。
図7に示す留意情
報画面は、入力図面701、類似図面702、類似図面703、類似図面704、類似度
705、類似度706、類似度707、及びメッセージ708を含んでいる。類似度70
5、類似度706、類似度707、及びメッセージ708は、留意情報の一例である。入
力図面701は、ステップS701において送信された製造情報に含まれている図面であ
る。類似図面702、類似図面703、及び類似図面704は、ステップS504におい
て抽出された見積情報に含まれている図面である。類似図面は、類似度が高い順に並んで
いる。すなわち、類似図面702が、3つの類似図面の中で最も類似度が高く、類似図面
704が、3つの類似図面の中で最も類似度が低い。類似度705は、入力図面701と
類似図面702との類似度を示している。類似度が第1の所定範囲、例えば100%であ
る場合は、類似度とともに、「<リピート案件>」というメッセージが表示される。この
メッセージは、類似度が100%であることを理由に、入力図面701と同じ図面を用い
た見積を以前もしたことがあるということを示している。類似度が第2の所定範囲、例え
ば99%以上100%未満である場合は、類似度とともに、「<リビジョン案件>」とい
うメッセージが表示される。このメッセージは、類似度が100%には満たないものの限
りなく100%に近いことを理由に、入力図面701は類似図面703を修正した図面で
あることを示している。類似度が第3の所定範囲、例えば95%以上99%未満である場
合は、類似度とともに、「<類似案件>」というメッセージが表示される。入力図面とと
もに類似図面及び類似度がユーザ端末30に表示されることによって、ユーザは入力図面
に類似した過去の図面を認識できるだけではなく、その過去の図面が入力図面にどの程度
類似しているかを把握することができる。また、入力図面と類似図面との相違点が表示さ
れることによって、ユーザが図面上の相違点を考慮せずに類似図面と同じ見積額を生成し
てしまうことを防止することができる。
【0042】
なお、
図7に示す留意情報はあくまで一例であって、例えば、算出した類似度および/
または乖離度の表示は省略してもよい。この場合、類似度を数値で表現することに替えて
または加えて、類似度の高さに基づいて、類似図面の表示態様(表示する位置やサイズ)
を変更してもよい。例えば、類似度が高いものほど大きいサイズで表示し、あるいは類似
度に従って上から下その他の所定の配列に並べて表示する。同様に、上記各メッセージの
表示を省略してもよい。
【0043】
メッセージ708は、乖離度を通知するためのメッセージである。ステップS506に
おいて判定された乖離度は、ユーザによって予め定められた閾値を超えている場合に、メ
ッセージ708として表示される。メッセージ708の1行目は、材料名が「xxx」で
ある材料の単価について、見積情報に含まれている予想材料費と材料データベースに含ま
れている材料単価との乖離度が20%であることを示している。メッセージ708の2行
目は、見積情報に含まれる予想外注費と実績外注費との乖離が10%であることを示して
いる。メッセージ708の3行目は、見積情報に含まれる予想加工時間と実績加工時間と
の乖離度が15%であることを示している。このように、類似度が100%である類似図
面であっても、材料価格の変動などによって、類似図面の見積情報をそのまま入力図面に
引用することが好ましくないことがある。乖離度を通知するメッセージ708がユーザ端
末30に表示されることによって、ユーザにより適切な見積書の作成を促すことができる
。
【0044】
図8は、
図7に引き続き、ユーザ端末30における留意情報画面を例示する図である。
図8に示す留意情報画面は、相違エリア801及び相違エリア802を含んでいる。相違
エリア801及び相違エリア802は、留意情報の一例であって、ステップS507にお
いて判定された相違点に対応する箇所を示している。入力図面及び類似図面における相違
エリアがユーザ端末30に表示されることによって、ユーザは入力図面と類似図面とにお
いて相違する箇所を容易に認識することができる。
【0045】
図6~
図8に示したような留意情報画面がユーザ端末30に表示されることによって、
ユーザは、新たな見積書に類似度の高い見積情報をそのまま用いてよいかを判断すること
ができる。
【0046】
上記実施例によれば、過去の見積情報を参照しつつ、確認や修正が必要となる蓋然性が
高い場合などにおいて、留意情報を適宜ユーザに通知することにより、確認や修正(再検
討)が促される。この結果、ユーザが類似案件についての過去の見積情報を盲目的に信用
するあるいは無条件に適用することによって不適当な内容の見積情報が生成される可能性
が低くなる。一方、類似案件が存在する場合は一から見積情報を作成する必要がなく、確
認や必要な修正を行うだけでよいので、見積作成に要する時間が短縮される。すなわち、
作成の迅速化と精度(見積内容の妥当性)が両立する。特に、過去の取引に関する状況を
深く把握していない新入社員や見積作成業務に不慣れな技術者になどが使用した場合であ
っても、見積作成業務のベテランと同様の作業スピードや精度を発揮することが可能であ
る。この結果、見積作成業務に係る属人化の解消や製造業者の業務効率化につながること
が期待される。
【0047】
3.変形例
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。以
下、変形例をいくつか説明する。以下の変形例に記載した事項のうち2つ以上のものが組
み合わせて用いられてもよい。
【0048】
サーバ10の記憶手段204は、見積額の妥当性に関する妥当性情報を記憶し、生成手
段210は、妥当性情報にもとづいて留意情報を生成してもよい。妥当性情報とは、例え
ば、受注情報、収益情報、又は製品の完成までに要した工数である。受注情報は、見積額
が見積の依頼者の承認を得られたか否かを表す情報であって、例えば、「受注」、「再見
積もり」、又は「失注」である。収益情報は、見積額が製造コストを上回ったか否かを表
す情報であって、例えば、「赤字」又は「黒字」である。サーバ10の記憶手段204は
、経理データベース(不図示)に、収益情報を生成するために要するデータを記憶してい
てもよい。
【0049】
データベース化される情報は、材料データベースに示されるような材料に係る情報に限
定されず、他の情報がデータベースにまとめられていてもよい。データベース化される情
報は、例えば、外注費、社内加工費、又は輸送費に係る情報であってもよいし、電気代な
どのエネルギーコストに係る情報であってもよい。
【0050】
見積情報は、機械学習モデルMに学習されるのではなく、見積情報の一部又は全部が、
他のデータベースに記憶されていてもよい。例えば、見積情報のうち図面データのみが機
械学習モデルMに学習され、その他の情報はデータベースに記憶されていてもよい。
【0051】
図面データは見積情報に含まれることに限定されず、例えば、見積情報は図面データを
含んでいなくてもよい。
【0052】
抽出手段206において抽出される見積情報の数は、3つに限定されない。抽出される
見積情報は、例えば、1つであってもよく、類似度が最も高い見積情報であってもよい。
また、類似度が所定値以上の見積情報を抽出するようにしてもよい。
【0053】
留意情報は、類似度、乖離度、及び相違点に基づくことに限定されない。また、留意情
報は、必ずしも、どの入力図面とどの類似図面との類似度がいくつであるのかを示す情報
、どの要素とどの要素との乖離度がいくつであるのかを示す情報、及び入力図面における
どの箇所と類似図面におけるどの箇所とが相違しているのかを示す情報の全てを含むこと
に限定されず、これらの一部のみであってもよいし、これらとは異なる他の情報であって
もよい。留意情報は、例えば、抽出手段206において抽出された見積情報が予め定めら
れた日付よりも前の日付に作成された見積情報であることを示す情報であってもよい。ま
た、留意情報は、例えば、予測受注率、推奨見積額、又は見積の対象製品の製造時に発生
すると予測される二酸化炭素排出量であってもよい。この場合、予測受注率及び推奨見積
額は、複数の見積情報に基づいて、類似製品の過去の受注情報又は収益情報などを用いて
算出されてもよい。
【0054】
複数の類似図面がある場合、留意情報画面において類似図面が並べられる順番は、類似
度が高い順に限定されない。例えば、類似度が最も高い類似図面を他の類似図面よりも大
きく表示させてもよいし、類似度が最も高い類似図面を囲う枠の色又は種類などを、他の
類似図面を囲う枠の色又は種類と異ならせてもよい。すなわち、類似度が最も高い類似図
面は、他の類似図面と識別可能であるように表示されてもよい。
【0055】
複数の類似図面がある場合、留意情報画面は、留意情報とともに、複数の見積情報に基
づいて新たに生成される見積情報を表示してもよい。複数の見積情報に基づいて新たに生
成される見積情報とは、例えば、複数の類似図面のそれぞれに対応する見積額の平均額で
ある。
【0056】
留意情報画面において類似度とともに表示されるメッセージは、「<リピート案件>」
、「<リビジョン案件>」、及び「<類似案件>」に限定されない。例えば、メッセージ
は、「以前に見積書を作成したときに使用されていた図面です。」であってもよい。
【0057】
類似度とともに表示されるメッセージは、類似度が示す数値に基づいているが、その閾
値は、ユーザによって自由に設定されてよい。
【0058】
類似度はパーセンテージで示されることに限定されず、例えば、1から10までの数字
で示されても良いし、AからEまでのアルファベットで表されてもよいし、類似度を示す
任意の区分が設定されてもよい。
【0059】
機械学習モデルMに入力されるデータは、図面データに限定されない。例えば、材料名
であってもよい。すなわち、類似度、類似図面データ、及びその見積情報は、図面データ
に基づいて出力されることに限定されない。
【0060】
留意情報画面に表示される相違エリアの個数は、1つに限定されず、複数であってもよ
い。例えば、留意情報画面は、相違がある箇所すべてを相違エリアとして表示してもよい
。また、サーバ10が、相違点の相違レベルを算出し、留意情報画面に予め定められた閾
値に基づいて、条件を満たした相違エリアのみを表示させるようにしてもよい。
【0061】
情報処理システムSにおける機能要素とハードウェア要素との対応関係は実施形態にお
いて例示したものに限定されない。例えば、実施形態においてサーバ10の機能として説
明したものの一部が、別のサーバに実装されてもよい。あるいは、実施形態においてサー
バ10の機能として説明したものの一部を、ネットワーク上の他の装置に実装してもよい
。サーバ10は物理サーバであってもよいし、仮想サーバ(いわゆるクラウドを含む)で
あってもよい。ユーザ端末30の機能の一部または全部がサーバ10に実装されてもよい
。
【0062】
情報処理システムSの動作は上述した例に限定されない。情報処理システムSの処理手
順は、矛盾の無い限り、順序が入れ替えられてもよい。また、情報処理システムSの一部
の処理手順が省略されてもよい。
【0063】
要するに、本発明に係る情報処理システムにおいて、製品の製造について過去に作成さ
れた見積情報を記憶手段に記憶するステップと、見積の対象製品の製造に関する情報の入
力を受け付けるステップと、前記記憶手段から、前記入力手段にて入力された情報の全部
または一部に類似する情報を有する見積情報を抽出するステップと、前記抽出手段にて抽
出された見積情報に基づいて、前記対象製品の見積情報を作成する際における留意事項を
示す留意情報を生成するステップと、前記生成手段にて生成された留意情報を通知する通
知ステップと、が実行されていればよい。
【0064】
実施形態において例示した各種のプログラムは、それぞれ、インターネット等のネット
ワークを介したダウンロードにより提供されてもよいし、DVD-ROM(Digital Vers
atile Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体に記
録された状態で提供されてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…サーバ、20…ネットワーク、30…ユーザ端末、101…CPU、102…メモ
リ、103…ストレージ、104…通信IF、201…送信手段、202…取得手段、2
03…入力手段、204…記憶手段、206…抽出手段、207…判定手段、208…判
定手段、209…判定手段、210…生成手段、211…通知手段、212…取得手段、
213…表示手段、214…制御手段、215…制御手段、301…CPU、302…メ
モリ、303…ストレージ、304…通信IF、305…入力部、306…ディスプレイ
、701…入力図面、702…類似図面、703…類似図面、704…類似図面、705
…類似度、706…類似度、707…類似度、708…メッセージ、801…相違エリア
、802…相違エリア