(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053103
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240405BHJP
B60N 2/14 20060101ALI20240405BHJP
B60N 2/64 20060101ALI20240405BHJP
A47C 7/62 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/14
B60N2/64
A47C7/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036805
(22)【出願日】2024-03-11
(62)【分割の表示】P 2022544487の分割
【原出願日】2021-08-18
(31)【優先権主張番号】63/072,536
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田辺 仁一
(72)【発明者】
【氏名】三好 晃
(57)【要約】
【課題】乗物用シートにおいて、乗員がシートの形状変化を予期できるようにする。
【解決手段】乗物に設けられる乗物用シート2であって、シートクッション5及びシートバック6を有するシート本体8と、シート本体に変位可能に設けられ、シート本体に着座した乗員を押圧する乗員支持装置20と、シート本体に設けられ、乗員に報知するための報知装置21と、乗物の周辺環境及び乗物の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置90と、情報に基づいて乗員支持装置及び報知装置を制御する制御装置76とを有する。報知装置は、乗員支持装置に設けられてもよい。制御装置は、乗物が旋回するときに、旋回方向と相反する側に配置されたバイブレータを振動させてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設けられる乗物用シートであって、
シートクッション及びシートバックを有するシート本体と、
前記シート本体に変位可能に設けられ、前記シート本体に着座した乗員を押圧する乗員支持装置と、
前記シート本体に設けられ、前記乗員に報知するための報知装置と、
前記乗物の周辺環境及び前記乗物の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置と、
前記情報に基づいて前記乗員支持装置及び前記報知装置を制御する制御装置とを有し、
前記報知装置は、前記乗員支持装置に設けられ、
前記乗員支持装置及び前記報知装置は、左右一対設けられ、
前記報知装置は、バイブレータであり、
前記情報取得装置は、前記乗物の旋回状態を取得する旋回状態取得装置を含み、
前記制御装置は、前記乗物が旋回するときに、旋回方向と相反する側に配置された前記バイブレータを振動させる乗物用シート。
【請求項2】
前記シート本体は、前記乗物のフロアに対して鉛直軸回りに回転可能に設けられている請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
乗物に設けられる乗物用シートであって、
シートクッション及びシートバックを有するシート本体と、
前記シート本体に変位可能に設けられ、前記シート本体に着座した乗員を押圧する乗員支持装置と、
前記シート本体に設けられ、前記乗員に報知するための報知装置と、
前記乗物の周辺環境及び前記乗物の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置と、
前記情報に基づいて前記乗員支持装置及び前記報知装置を制御する制御装置とを有し、
前記シート本体は、前記乗物のフロアに対して鉛直軸回りに回転可能に設けられ、
前記情報取得装置は、前記シート本体の前記フロアに対する前記鉛直軸回りの回転角を検出するシート回転角センサを含み、
前記制御装置は、前記回転角が大きいときには、前記回転角が小さいときに比べて前記乗員支持装置の作動量を小さくする乗物用シート。
【請求項4】
前記情報取得装置は、前記乗物の旋回状態を取得する旋回状態取得装置を含み、
前記制御装置は、前記乗物が旋回するときに、旋回方向と同じ方向に前記シート本体を前記鉛直軸回りに回転させる請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記乗員支持装置は、左右一対設けられ、
前記制御装置は、前記乗物が旋回するときに、前記旋回方向と異なる側に配置された前記乗員支持装置を作動させる請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記情報取得装置は、前記乗物のステアリングホイールに設けられた把持センサを含み、
前記制御装置は、前記ステアリングホイールが前記乗員によって把持されているときには、前記ステアリングホイールが把持されていないときに比べて、前記乗員支持装置の作動量を小さくする請求項1~5のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項7】
乗物に設けられる乗物用シートであって、
シートクッション及びシートバックを有するシート本体と、
前記シート本体に変位可能に設けられ、前記シート本体に着座した乗員を押圧する乗員支持装置と、
前記シート本体に設けられ、前記乗員に報知するための報知装置と、
前記乗物の周辺環境及び前記乗物の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置と、
前記情報に基づいて前記乗員支持装置及び前記報知装置を制御する制御装置とを有し、
前記情報取得装置は、前記乗物のステアリングホイールに設けられた把持センサを含み、
前記制御装置は、前記ステアリングホイールが前記乗員によって把持されているときには、前記ステアリングホイールが把持されていないときに比べて、前記乗員支持装置の作動量を小さくする乗物用シート。
【請求項8】
前記情報取得装置は、前記乗員の覚醒度を検出する覚醒度取得装置を含み、
前記制御装置は、前記覚醒度が高いときには、前記覚醒度が低いときに比べて前記乗員支持装置の作動量を小さくする請求項1~7のいずれか1つの項に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記情報取得装置は、前記シート本体に設けられ、前記乗員から受ける圧力を検出する圧力センサを含み、
前記制御装置は、前記圧力が高いときには、前記圧力が低いときに比べて前記乗員支持装置の作動量を小さくする請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
乗物に設けられる乗物用シートであって、
シートクッション及びシートバックを有するシート本体と、
前記シート本体に変位可能に設けられ、前記シート本体に着座した乗員を押圧する乗員支持装置と、
前記シート本体に設けられ、前記乗員に報知するための報知装置と、
前記乗物の周辺環境及び前記乗物の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置と、
前記情報に基づいて前記乗員支持装置及び前記報知装置を制御する制御装置とを有し、
前記情報取得装置は、前記乗物の周囲に存在する障害物を検出する障害物センサを含み、
前記制御装置は、前記乗物と前記障害物との距離が近いときには、前記乗物と前記障害物との距離が遠いときよりも前記乗員支持装置の作動量を小さくする乗物用シート。
【請求項11】
乗物に設けられる乗物用シートであって、
シートクッション及びシートバックを有するシート本体と、
前記シート本体に変位可能に設けられ、前記シート本体に着座した乗員を押圧する乗員支持装置と、
前記シート本体に設けられ、前記乗員に報知するための報知装置と、
前記乗物の周辺環境及び前記乗物の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置と、
前記情報に基づいて前記乗員支持装置及び前記報知装置を制御する制御装置とを有し、
前記乗員支持装置は、圧縮空気が供給されることによって膨張するエアセルと、前記エアセルの前端に設けられた支持プレートを有し、
前記報知装置は、前記支持プレートの前記エアセル側と相反する側に設けられたバイブレータを有する乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、中央部フレームと、中央部フレームに対して回動可能に設けられた左右の側部フレームと、左右の側部フレームを回動させるアクチュエータとを有するシートバックを備えた車両用シートを開示している。左右の側部フレームは、車両の旋回方向に基づいて回動量が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乗員が予期しないときにシートの形状が変化すると、乗員は違和感を覚える虞がある。そのため、乗物の周辺環境や運転状態に基づいてシートの形状が変化するときには、乗員がシートの形状変化を予期できることが好ましい。
【0005】
本発明は、以上の背景に鑑み、乗物用シートにおいて、乗員がシートの形状変化を予期できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、乗物に設けられる乗物用シート(1)であって、シートクッション(5)及びシートバック(6)を有するシート本体(8)と、前記シート本体に変位可能に設けられ、前記シート本体に着座した乗員を押圧する乗員支持装置(20)と、前記シート本体に設けられ、前記乗員に報知するための報知装置(21)と、前記乗物の周辺環境及び前記乗物の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置(90)と、前記情報に基づいて前記乗員支持装置及び前記報知装置を制御する制御装置(76)とを有する。
【0007】
この態様によれば、報知装置による報知によって、乗員がシートの形状変化を予期できる。
【0008】
上記の態様において、前記報知装置は、前記乗員支持装置に設けられてもよい。
【0009】
この態様によれば、シートの形状が変化する部分から報知が発せられるため、乗員はシート形状の変化を適切に予期することができる。
【0010】
上記の態様において、前記乗員支持装置及び前記報知装置は、左右一対設けられ、前記報知装置は、バイブレータ(31)であり、前記情報取得装置は、前記乗物の旋回状態を取得する旋回状態取得装置を含み、前記制御装置は、前記乗物が旋回するときに、旋回方向と相反する側に配置された前記バイブレータを振動させてもよい。
【0011】
この態様によれば、乗員とシートとの密着性が高い部分が振動するため、乗員はシート形状の変化を適切に予期することができる。
【0012】
上記の態様において、前記シート本体は、前記乗物のフロア(4)に対して鉛直軸(A)回りに回転可能に設けられてもよい。
【0013】
この態様によれば、シート本体は、回転することによって、旋回時に乗員を適切に支持することができる。
【0014】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記シート本体の前記フロアに対する前記鉛直軸回りの回転角を検出するシート回転角センサを(92)含み、前記制御装置は、前記回転角が大きいときには、前記回転角が小さいときに比べて前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。
【0015】
この態様によれば、シート本体の回転角に応じて、乗員支持装置の作動量が適切に調節される。
【0016】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記乗物の旋回状態を取得する旋回状態取得装置(98、99)を含み、前記制御装置は、前記乗物が旋回するときに、旋回方向と同じ方向に前記シート本体を前記鉛直軸回りに回転させてもよい。
【0017】
この態様によれば、シート本体は、回転することによって、旋回時に乗員を適切に支持することができる。
【0018】
上記の態様において、前記乗員支持装置は、左右一対設けられ、前記制御装置は、前記乗物が旋回するときに、前記旋回方向と異なる側に配置された前記乗員支持装置を作動させてもよい。
【0019】
この態様によれば、乗物の旋回時に、乗員支持装置が乗員を適切に支持することができる。
【0020】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記乗物のステアリングホイール(71)に設けられた把持センサ(93)を含み、前記制御装置は、前記ステアリングホイールが前記乗員によって把持されているときには、前記ステアリングホイールが把持されていないときに比べて、前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。
【0021】
この態様によれば、乗員が乗物の旋回を認識しているときには、乗員支持装置の不要な作動を省略することができる。これにより、エネルギー消費量を低減することができる。
【0022】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記乗員の覚醒度を検出する覚醒度取得装置(110、109)を含み、前記制御装置は、前記覚醒度が高いときには、前記覚醒度が低いときに比べて前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。
【0023】
この態様によれば、乗員が乗物の旋回を認識しているときには、乗員支持装置の不要な作動を省略することができる。
【0024】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記シート本体に設けられ、前記乗員から受ける圧力を検出する圧力センサ(95)を含み、前記制御装置は、前記圧力が高いときには、前記圧力が低いときに比べて前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。
【0025】
この態様によれば、乗員がシート本体に密着しているときには、乗員支持装置の不要な作動を省略することができる。
【0026】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記乗物の周囲に存在する障害物を検出する障害物センサ(96)を含み、前記制御装置は、前記乗物と前記障害物との距離が近いときには、前記乗物と前記障害物との距離が遠いときよりも前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。
【0027】
この態様によれば、乗物が障害物に衝突する虞があるときには、乗員支持装置の作動力を抑制して、エアバッグへの影響を低減することができる。
【0028】
上記の態様において、前記乗員支持装置は、圧縮空気が供給されることによって膨張するエアセル(42)と、前記エアセルの前端に設けられた支持プレート(47)を有し、前記報知装置は、前記支持プレートの前記エアセル側と相反する側に設けられたバイブレータ(31)を有してもよい。
【0029】
この態様によれば、バイブレータの振動を乗員に効率良く伝達することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一態様は、乗物に設けられる乗物用シート(1)であって、シートクッション(5)及びシートバック(6)を有するシート本体(8)と、前記シート本体に変位可能に設けられ、前記シート本体に着座した乗員を押圧する乗員支持装置(20)と、前記シート本体に設けられ、前記乗員に報知するための報知装置(21)と、前記乗物の周辺環境及び前記乗物の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置(90)と、前記情報に基づいて前記乗員支持装置及び前記報知装置を制御する制御装置(76)とを有する。この態様によれば、報知装置による報知によって、乗員がシートの形状変化を予期できる。
【0031】
上記の態様において、前記報知装置は、前記乗員支持装置に設けられてもよい。この態様によれば、シートの形状が変化する部分から報知が発せられるため、乗員はシート形状の変化を適切に予期することができる。
【0032】
上記の態様において、前記乗員支持装置及び前記報知装置は、左右一対設けられ、前記報知装置は、バイブレータ(31)であり、前記情報取得装置は、前記乗物の旋回状態を取得する旋回状態取得装置を含み、前記制御装置は、前記乗物が旋回するときに、旋回方向と相反する側に配置された前記バイブレータを振動させてもよい。この態様によれば、乗員とシートとの密着性が高い部分が振動するため、乗員はシート形状の変化を適切に予期することができる。
【0033】
上記の態様において、前記シート本体は、前記乗物のフロア(4)に対して鉛直軸(A)回りに回転可能に設けられてもよい。この態様によれば、シート本体は、回転することによって、旋回時に乗員を適切に支持することができる。
【0034】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記シート本体の前記フロアに対する前記鉛直軸回りの回転角を検出するシート回転角センサを(92)含み、前記制御装置は、前記回転角が大きいときには、前記回転角が小さいときに比べて前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。この態様によれば、シート本体の回転角に応じて、乗員支持装置の作動量が適切に調節される。
【0035】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記乗物の旋回状態を取得する旋回状態取得装置(98、99)を含み、前記制御装置は、前記乗物が旋回するときに、旋回方向と同じ方向に前記シート本体を前記鉛直軸回りに回転させてもよい。この態様によれば、シート本体は、回転することによって、旋回時に乗員を適切に支持することができる。
【0036】
上記の態様において、前記乗員支持装置は、左右一対設けられ、前記制御装置は、前記乗物が旋回するときに、前記旋回方向と異なる側に配置された前記乗員支持装置を作動させてもよい。この態様によれば、乗物の旋回時に、乗員支持装置が乗員を適切に支持することができる。
【0037】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記乗物のステアリングホイール(71)に設けられた把持センサ(93)を含み、前記制御装置は、前記ステアリングホイールが前記乗員によって把持されているときには、前記ステアリングホイールが把持されていないときに比べて、前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。この態様によれば、乗員が乗物の旋回を認識しているときには、乗員支持装置の不要な作動を省略することができる。これにより、エネルギー消費量を低減することができる。
【0038】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記乗員の覚醒度を検出する覚醒度取得装置(110、109)を含み、前記制御装置は、前記覚醒度が高いときには、前記覚醒度が低いときに比べて前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。この態様によれば、乗員が乗物の旋回を認識しているときには、乗員支持装置の不要な作動を省略することができる。
【0039】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記シート本体に設けられ、前記乗員から受ける圧力を検出する圧力センサ(95)を含み、前記制御装置は、前記圧力が高いときには、前記圧力が低いときに比べて前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。この態様によれば、乗員がシート本体に密着しているときには、乗員支持装置の不要な作動を省略することができる。
【0040】
上記の態様において、前記情報取得装置は、前記乗物の周囲に存在する障害物を検出する障害物センサ(96)を含み、前記制御装置は、前記乗物と前記障害物との距離が近いときには、前記乗物と前記障害物との距離が遠いときよりも前記乗員支持装置の作動量を小さくしてもよい。この態様によれば、乗物が障害物に衝突する虞があるときには、乗員支持装置の作動力を抑制して、エアバッグへの影響を低減することができる。
【0041】
上記の態様において、前記乗員支持装置は、圧縮空気が供給されることによって膨張するエアセル(42)と、前記エアセルの前端に設けられた支持プレート(47)を有し、前記報知装置は、前記支持プレートの前記エアセル側と相反する側に設けられたバイブレータ(31)を有してもよい。この態様によれば、バイブレータの振動を乗員に効率良く伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図3】可動フレーム装置を備えたシートバックフレームの斜視図
【
図5】エアセル装置を備えたシートバックフレームの正面図
【
図8】傾斜プレート装置を備えたシートバックフレームの正面図
【
図11】ドップラーセンサが取り付けられたシートバックフレームの正面図
【
図13】ドップラーセンサが取り付けられたシートバックフレームの正面図
【
図14】ドップラーセンサが取り付けられたランバーサポートの背面図
【
図15】ドアが開いたときの可動フレーム装置の作動を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、図面を参照して、本発明に係る乗物用シートを車両1のシート2に適用した実施形態について説明する。以下の説明では、シート2が設けられる車両1を基準として前後、左右、上下を定める。
【0044】
図1に示すように、車両1の車室内には、前列右側シート2A、前列左側シート2B、中列右側シート2C、中列左側シート2D、及び後列シート2Eが設けられている。前列右側シート2A、前列左側シート2B、中列右側シート2C、及び中列左側シート2Dは1人掛けのシートである。後列シート2Eは、二人掛けのシートである。前列右側シート2Aは運転席シートである。前列右側シート2A、前列左側シート2B、中列右側シート2C、及び中列左側シート2Dは、同一の構成であるとよい。
【0045】
図1及び2に示すように、シート2は、フロア4に設けられたシートクッション5と、シートクッション5の後部から上方に延びるシートバック6と、シートバック6の上部に結合されたヘッドレスト7とを有する。シートバック6は、シートクッション5に回動可能に支持されている。シートクッション5及びシートバック6は、シート本体8を構成する。シート本体8は、フロア4に対して鉛直軸回りに回転可能に設けられている。具体的には、シートクッション5は、鉛直方向に延びる回転軸線Aを中心として回動可能にフロア4に支持されている。シートクッション5は、フロア4に設けられたシート回転装置9によって回転軸線A回りに回転可能に支持されているとよい。また、シートクッション5は、スライド装置を介してフロア4に前後に移動可能に支持されてもよい。この場合、回転軸線Aは前後に移動可能に配置されてもよい。スライド装置はシート回転装置9とシートクッション5との間に介装されているとよい。
【0046】
シートクッション5は、シートクッションフレームと、シートクッションフレームに支持されたパッドと、パッドを覆う表皮材とを有する。シートバック6は、シートバックフレーム11と、シートバックフレーム11に支持されたパッド12と、パッド12を覆う表皮材13とを有する。
図3に示すように、シートバックフレーム11は、上下に延びる左右のサイドメンバ15と、横方向に延び、左右のサイドメンバ15の上端に結合したアッパメンバ16と、横方向に延び、左右のサイドメンバ15の下端に結合したロアメンバ17とを有する。
【0047】
図2に示すように、シート2は、シート本体8に変位可能に設けられ、シート本体8に着座した乗員を押圧する乗員支持装置20と、シート本体8に設けられ、乗員に報知するための報知装置21とを有する。報知装置21は、乗員支持装置20に支持されているとよい。
【0048】
図3に示すように、乗員支持装置20の一例は、可動フレーム装置23を含む。可動フレーム装置23は、シートバックフレーム11に変位可能に設けられた左右の可動フレーム24と、左右の可動フレーム24を作動する左右の電動モータ25とを有する。左側の可動フレーム24は左側のサイドメンバ15に回動可能に支持され、右側の可動フレーム24は右側のサイドメンバ15に回動可能に支持されている。左右の可動フレーム24は、サイドメンバ15と平行に延びる軸線を中心として回動可能に対応するサイドメンバ15に支持されている。左右の可動フレーム24は、左右のサイドメンバ15に対して左右外方に延び、シートバック6の左右の側部であるシートバック側部27を形成する。左右のシートバック側部27は、シートバック6の中央部であるシートバック中央部28に対して前方に突出している。シートバック側部27は、ボルテックス部又は土手部ともいわれる。
【0049】
左右の電動モータ25は、対応するサイドメンバ15に支持されている。電動モータ25は、例えばステッピングモータであるとよい。各電動モータ25の駆動軸は、減速機構等を介して対応する可動フレーム24に接続されている。各電動モータ25が駆動することによって、対応する可動フレーム24がシートバック6に対して回動する。
図4に示すように、各可動フレーム24が回動することによって、対応するシートバック側部27の前方への突出量が変化する。左右のシートバック側部27の前方への突出量が変化することによって、シートバック6の前側面である座面の向きが左右に変化する。
【0050】
報知装置21は、バイブレータ31、スピーカ32、タッチパネルディスプレイ33、警告灯の少なくとも1つであってよい。報知装置21は、例えばタッチパネルディスプレイ33によって構成される表示装置であってよい(
図10参照)。タッチパネルディスプレイ33は、車両1のインストルメントパネルに設けられるとよい。また、報知装置21は、インストルメントパネル、ドアライニング、シートクッション5、シートバック6、ヘッドレスト7の少なくとも1つに設けられたスピーカ32であるとよい(
図10参照)。本実施形態では、報知装置21は、左右のバイブレータ31であり、可動フレーム24のそれぞれに支持されている。バイブレータ31は、電動モータと、電動モータの駆動軸に結合された偏心錘とを有する。バイブレータ31は、電動モータが回転することによって振動を発生させる。
【0051】
図3に示すように、左右のバイブレータ31は、対応する可動フレーム24に結合されている。この場合、バイブレータ31の前方に位置するパッド12の厚みは、他の部分に対して薄く形成されているとよい。また、パッド12のバイブレータ31に対応する部分には貫通孔が設けられていてもよい。これにより、バイブレータ31の振動が乗員に伝達され易くなる。また、左右のバイブレータ31は、パッド12を介して可動フレーム24に支持されてもよい。左右のバイブレータ31は、可動フレーム24の前方であって、パッド12と表皮材13との間に配置されてもよい。
【0052】
図5に示すように、乗員支持装置20の他の例は、シートバックフレーム11に設けられた複数のエアセル装置41を含む。エアセル装置41は、圧縮空気供給装置と接続され、圧縮空気が供給されることによって膨張するエアセル42を有する。エアセル42は、左右のサイドメンバ15及びアッパメンバ16を含むシートバックフレーム11に直接に支持されてもよい。左右のアッパメンバ16に板状のランバーサポート44が支持され、ランバーサポート44の前面に複数のエアセル42が設けられてもよい。ランバーサポート44は、左右のサイドメンバ15に掛け渡されたワイヤ45に支持されている。ワイヤ45は、可撓性を有する。
【0053】
各エアセル42の前端には支持プレート47が設けられてもよい。すなわち、エアセル42はランバーサポート44と支持プレート47との間に配置されている。支持プレート47の一端は、ランバーサポート44に回動可能に結合されていてもよい。エアセル42が膨張すると、支持プレート47がランバーサポート44に対して回動し、かつ前方に移動する。
【0054】
複数のエアセル42は、ランバーサポート44の上部に設けられた左右一対の上段エアセル51と(
図6参照)、ランバーサポート44において一対の上段エアセル51よりも下方かつ左右外方に設けられた左右一対の中段エアセル52と(
図7参照)、左右のサイドメンバ15のそれぞれに設けられ、一対の中段エアセル52よりも下方かつ左右外方に設けられた左右一対の下段エアセル53とを含む。上段エアセル51は、膨張時に上部が下部よりも前方により突出する。中段エアセル52及び下段エアセル53は、膨張時に左右外側部が左右内側部よりも前方により突出する。
【0055】
各支持プレート47には、報知装置21としてのバイブレータ31が設けられている。バイブレータ31は支持プレート47のエアセル42側と相反する面に設けられるとよい。これにより、バイブレータ31の振動が乗員に伝達し易くなる。また、バイブレータ31とエアセル42との接触を避けることができる。また、バイブレータ31は支持プレート47のエアセル42側の面に設けられてもよい。これにより、バイブレータ31の振動が支持プレート47を介して乗員に広範囲に伝達される。
【0056】
図8に示すように、乗員支持装置20の他の例は、傾斜プレート装置61を含む。傾斜プレート装置61は、傾斜プレート62と、傾斜プレート62をシートバックフレーム11に対して傾斜させる傾動装置63とを含む。傾斜プレート62は、板状に形成され、乗員の背部を支持する。傾動装置63は、左右のサイドメンバ15に設けられた左右の電動モータ65と、左右の電動モータ65の駆動軸のそれぞれに設けられた左右のリンク66と、横方向に延び、左右のリンク66に接続された第1ワイヤ67と、第1ワイヤ67の下方を横方向に延び、左右のサイドメンバ15に結合された第2ワイヤ68とを有する。左右の電動モータ65は、例えばステッピングモータである。左右の電動モータ65の駆動軸は左右のサイドメンバ15と平行に延びている。左右のリンク66は左右の電動モータ65の駆動軸から径方向に延びている。第1ワイヤ67の両端は、左右において対応するリンク66の先端に接続されている。第1ワイヤ67及び第2ワイヤ68は、屈曲部を有し、長手方向(横方向)に伸縮可能となっている。傾斜プレート62は、第1ワイヤ67の中央部と、第2ワイヤ68の中央部とに支持されている。
【0057】
図9に示すように、初期位置において、左右のリンク66は左右内方に延びている。これにより、第1ワイヤ67は横方向と平行に延び、傾斜プレート62は正面を向く。左右の電動モータ65が独立して回転することによって、左右のリンク66は独立して回動する。左側のリンク66が後方に延び、かつ右側のリンク66が前方に延びた状態では、第1ワイヤ67は左端から右端に向けて前方に傾斜する。これにより、傾斜プレート62は左方に向けて傾斜する。左側のリンク66が前方に延び、かつ右側のリンク66が後方に延びた状態では、第1ワイヤ67は左端から右端に向けて後方に傾斜する。これにより、傾斜プレート62は右方に向けて傾斜する。第2ワイヤ68は、傾斜プレート62の傾斜に応じて変形する。
【0058】
傾斜プレート装置61の他の例は、複数の傾斜プレート62と、各傾斜プレート62に対応した傾動装置63を有するとよい。この態様によれば、複数の傾斜プレート62を互いに独立して作動させることができる。例えば、傾斜プレート62は、左右に並べて配置されるとよい。
【0059】
図8に示すように、乗員支持装置20が、傾斜プレート装置61を含む場合、報知装置21としてのバイブレータ31は、傾斜プレート62に設けられるとよい。バイブレータ31は傾斜プレート62の乗員側の面、又は乗員と相反する側の面に設けられるとよい。傾斜プレート62の左側部及び右側部のそれぞれにバイブレータ31が設けられるとよい。傾斜プレート62の左右の側部には、補強構造69が設けられていると良い。補強構造69は、複数のリブによって形成されてもよい。また、補強構造69は、傾斜プレート62の厚みを他の部分に対して増加させることによって形成されてもよい。バイブレータ31は、補強構造69の前面又は後面に設けられるとよい。傾斜プレート装置61は、シートクッション5に設けられてもよい。この場合、傾斜プレート62が上下を向くように配置され、第1ワイヤ67及び第2ワイヤ68が前後に並んで配置され、左右の電動モータ65及びリンク66がシートクッション5の左右のサイドメンバに設けられるとよい。
【0060】
図1に示すように、後列シート2Eを構成するシート2は、複数の着座部を有する。各着座部には、シート2と同様の乗員支持装置20及び報知装置21が設けられるとよい。
【0061】
車室の前部は、乗員によって操作されるステアリングホイール71が設けられている。車両1の左右の側部には、前側ドア72と、後側ドア73とが設けられている。
【0062】
図1及び10に示すように、車両1は、走行制御装置75とシート制御装置76とを有する。走行制御装置75及びシート制御装置76は、プロセッサと、揮発性メモリと、プログラムを格納する不揮発性メモリと、入出力インターフェースとを有する電子制御装置である。走行制御装置75とシート制御装置76とは互いに通信している。
【0063】
走行制御装置75は、自動運転モードと手動運転モードとを実行可能である。走行制御装置75は、自動運転モードにおいて、各種センサからの信号に基づいて、車両1の駆動源、制動装置、操舵装置等を制御して、車両1を走行させる。走行制御装置75は、手動運転モードにおいて、乗員のステアリングホイール71、アクセルペダル、ブレーキペダルへの運転操作に基づいて、車両1の駆動源、制動装置、操舵装置等を制御して、車両1を走行させる。走行制御装置75は、乗員の操作に基づいて自動運転モードと手動運転モードとを切り替えるとよい。タッチパネルディスプレイ33が、乗員による運転モードの切替操作を受け付けるとよい。
【0064】
車両1には、車両1の周辺環境及び車両1の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置90が設けられている。シート制御装置76は、情報取得装置90が取得した情報に基づいて乗員支持装置20及び報知装置21を制御する。
【0065】
情報取得装置90は、各シート2のフロア4に対する鉛直軸回りの回転角を検出するシート回転角センサ92、乗物のステアリングホイール71に設けられた把持センサ93、シート2に設けられ、乗員から受ける圧力を検出する圧力センサ95、車両1の周囲に存在する障害物を検出する障害物センサ96を含む。情報取得装置90は、更に、車両1の車速を検出する車速センサ97、車両1の横加速度を検出する横加速度センサ98、ステアリングホイール71の操舵角を検出する操舵角センサ99、各ドアの開閉を検出するドア開閉センサ101を含むとよい。
【0066】
横加速度センサ98及び操舵角センサ99の少なくとも1つは、車両1の旋回状態を取得する旋回状態取得装置として機能する。旋回状態は、旋回方向及び横加速度を含む。
シート制御装置76は、横加速度センサ98が取得した横加速度に基づいて旋回状態を取得するとよい。また、シート制御装置76は、操舵角センサ99が取得した操舵角、及び車速センサ97が取得した車速に基づいて、将来の旋回状態を予測するとよい。
【0067】
把持センサ93は、ステアリングホイール71に設けられた静電容量センサ、圧力センサ、メンブレンスイッチのいずれかであるとよい。シート制御装置76は、把持センサ93からの信号に基づいて、ステアリングホイール71が保持されているか否かを判定する。
【0068】
シート2は、覚醒度取得装置として機能する車内カメラ109及びドップラーセンサ110を有する。車内カメラ109は、乗員を撮像する。シート制御装置76は、車内カメラ109が撮像した乗員の画像に基づいて、乗員のまぶたの開閉度を検出し、まぶたの開閉度から乗員の覚醒度を取得する。ドップラーセンサ110は、乗員の胸部に向けて電磁波を照射し、反射波の周波数変化を検出することによって、胸部の動きを検出する。シート制御装置76は、ドップラーセンサ110からの信号に基づいて乗員の胸部の動きの周期を取得し、乗員の呼吸数を取得する。そして、シート制御装置76は、乗員の呼吸数から乗員の覚醒度を取得する。他の実施形態では、覚醒度取得装置として、乗員に装着されるウェアラブル端末が使用されてもよい。ウェアラブル端末は、乗員の脈拍や呼吸数、体温、血圧等を取得するとよい。
【0069】
ドップラーセンサ110は、シートバック6の内部に配置されるとよい。
図5に示すように、ドップラーセンサ110は、シートバックフレーム11又はランバーサポート44に支持されているとよい。
図5に示すように、ランバーサポート44の代わりに傾斜プレート62が設けられている場合、ドップラーセンサ110は傾斜プレート62に設けられるとよい。ドップラーセンサ110は、ランバーサポート44の後面に取り付けられるとよい。前後方向から見て、ドップラーセンサ110はワイヤ45と重ならない位置に配置されているとよい。ドップラーセンサ110は係止爪又はフックを有し、ランバーサポート44又は傾斜プレート62に係止されるとよい。また、ドップラーセンサ110はねじやクリップ、バンド等の締結部材によってランバーサポート44又は傾斜プレート62に締結されてもよい。
【0070】
また、
図11に示すように、ランバーサポート44は、上下に延びる複数の縦ワイヤ111と、複数の縦ワイヤ111に掛け渡された複数の横ワイヤ112とを有するネット構造113に形成されてもよい。ネット構造113の上部は、取付ワイヤ114によって左右のサイドメンバ15に結合されている。ネット構造113の下方には、左右に延び、左右のサイドメンバ15に結合された支持ワイヤ115が設けられている。複数の縦ワイヤ111の下部は、支持ワイヤ115が通過する環状に形成されている。これにより、ネット構造113の下部は、支持ワイヤ115に対して前後に移動可能になっている。ネット構造113の左右の下部は、一対のコントロールケーブル117によって左右のサイドメンバ15の下部に結合されている。各コントロールケーブル117のスリーブ118は、左右の縦ワイヤ111の下部に結合された第1端と、サイドメンバ15の外側面に設けられた巻き取り装置119に結合された第2端とを有する。一対のスリーブ118の第2端側は互いに結束され、一対のスリーブ118の第1端側は互いに分岐している。各スリーブ118に受容されたケーブル121は、各スリーブ118の第1端から突出し、サイドメンバ15の前縁に結合された第1端と、巻き取り装置119に結合された第2端とを有する。巻き取り装置119によってケーブル121を巻き取ると、スリーブ118の第1端とケーブル121の第1端とが近づき、ネット構造113の下部が前方に移動する。巻き取り装置119は、乗員によって操作されてもよく、電動モータによって駆動されてよい。
【0071】
ランバーサポート44がネット構造113を有する場合、ドップラーセンサ110は、複数の横ワイヤ112に係止されるとよい。複数の横ワイヤ112を係止する係止部125が、ドップラーセンサ110のケーシング124の前部に設けられるとよい。係止部125は、フック又はクランプであるとよい。ケーシング124は、樹脂によって形成され、係止部125も樹脂によって一体に形成されるとよい。ドップラーセンサ110は、複数の横ワイヤ112の後方に配置される。ドップラーセンサ110の発信部126及び受信部127は、前後方向から見て複数の縦ワイヤ111及び複数の横ワイヤ112と重ならない位置に配置されるとよい。すなわち、ドップラーセンサ110の発信部126及び受信部127は、上下に隣り合う2つの横ワイヤ112の間、かつ左右に隣り合う2つの縦ワイヤ111の間に配置されているとよい。
【0072】
圧力センサ95は、メンブレンスイッチや圧電センサであってよい。障害物センサ96は、ソナーや、レーザ、ライダであってよい。
【0073】
シート制御装置76は、車両1が旋回するときに乗員支持装置20を制御してシートバック6の座面を旋回方向に向ける。シート制御装置76は、横加速度センサ98が取得した横加速度に基づいて旋回状態を取得する。また、シート制御装置76は、操舵角センサ99が取得した操舵角、及び車速センサ97が取得した車速に基づいて、将来の旋回状態を予測する。そして、シート制御装置76は、旋回状態及び将来の旋回状態に基づいて、乗員支持装置20を制御する。
【0074】
図12に示すように、シート制御装置76は、最初に車両1の旋回方向に基づいて、シートバック6の座面(前面)の傾斜方向を決定する(S1)。旋回方向が右方向である場合、シート制御装置76はシートバック6の座面の傾斜方向を右方に決定する。一方、旋回方向が左方向である場合、シート制御装置76はシートバック6の座面の傾斜方向を左方に決定する。
【0075】
次に、シート制御装置76は、旋回状態に基づいてシートバック6の座面の傾斜量を決定する(S2)。シート制御装置76は、例えば、横加速度の絶対値に基づいてシートバック6の座面の傾斜量を決定するとよい。横加速度の絶対値が大きいほど、シートバック6の座面の傾斜量は大きく設定される。横加速度の絶対値と、シートバック6の座面の傾斜量との関係は、予めマップに規定されているとよい。
【0076】
次に、シート制御装置76は、旋回方向と相反する側に配置された報知装置21を作動させる(S3)。報知装置21は、バイブレータ31であるとよい。シート制御装置76は、バイブレータ31を所定期間振動させるとよい。
【0077】
続いて、シート制御装置76は、シートバック6の座面の傾斜方向と、シートバック6の座面の傾斜量とに基づいて、乗員支持装置20を制御する(S4)。乗員支持装置20が作動開始するときに、報知装置21の作動は完了していてもよく、作動が継続していてもよい。乗員支持装置20が可動フレーム装置23又はエアセル装置41である場合、旋回方向と相反する側に設けられた可動フレーム装置23及びエアセル装置41を作動させ、旋回方向と相反する側のシート2の側部を前方に突出させる。乗員支持装置20が、傾斜プレート装置61である場合、傾斜プレート62の正面が旋回方向を向くように傾斜プレート装置61を作動させる。これにより、車両1の旋回時に乗員が旋回方向と相反する側に移動することを防止することができる。また、乗員支持装置20が作動する前に報知装置21が乗員に報知を行うため、乗員が感じる違和感を低減することができる。また、乗員は、報知を受けて車両1が旋回することを認識することができるため、乗り物酔いが抑制される。
【0078】
シート制御装置76は、ステップS1及びS2において、車速及び操舵角に基づく将来の旋回状態に基づいて、シートバック6の座面の傾斜方向及び傾斜量を決定してもよい。また、シート制御装置76は、地図情報から車両1が例えば5秒後等の将来に走行する道路の曲率を取得し、曲率と車速とに基づいて省略の旋回状態を予測してもよい。そして、シート制御装置76は、予測した将来の旋回状態に基づいてシートバック6の座面の傾斜方向及び傾斜量を決定してもよい。
【0079】
シート制御装置76は、把持センサ93からの信号に基づいて乗員がステアリングホイール71を把持しているか否かを判定し、ステアリングホイール71が乗員によって把持されているときには、ステアリングホイール71が把持されていないときに比べて、乗員支持装置20の作動量を小さくしてもよい。この態様によれば、乗員が乗物の旋回を認識しているときには、乗員支持装置20の不要な作動を省略することができる。
【0080】
シート制御装置76は、覚醒度が高いときには、覚醒度が低いときに比べて乗員支持装置20の作動量を小さくするとよい。この態様によれば、乗員が乗物の旋回を認識しているときには、乗員支持装置20の不要な作動を省略することができる。
【0081】
シート制御装置76は、シート本体8に設けられた圧力センサ95が検出した圧力に基づいて、圧力が高いときには、圧力が低いときに比べて乗員支持装置20の作動量を小さくするとよい。乗員がシート本体8に密着しているときには、乗員支持装置20の不要な作動を省略することができる。
【0082】
シート制御装置76は、車両1と障害物との距離が近いときには、車両1と障害物との距離が遠いときよりも乗員支持装置20の作動量を小さくするとよい。この態様によれば、乗物が障害物に衝突する虞があるときには、乗員支持装置20の作動量を抑制して、シートバック6の側部に設けられたサイドエアバッグへの影響を低減することができる。
【0083】
シート2は、乗員の操作によって、軸線Aを中心として回動することができる。すなわち、シート2の軸線Aを中心とする角度は任意に設定することができる。乗員は、シート2を車内内方に向けたり、後方に向けたりしてよい。シート2の軸線Aを中心とした角度は、前方を向く位置を0度(基準)として、右回りに正の角度、左回りに負の角度とする。シート2の角度は、シート回転角センサ92によって検出される。シート回転角センサ92は、ポテンショスタットやロータリエンコーダ等の公知の回転センサであるとよい。
【0084】
シート回転装置9は電動モータを有するとよい。シート制御装置76は、車両1の旋回状態に基づいてシート回転装置9を制御し、シート2を回動させる。シート制御装置76は、車両1が旋回するときに、旋回方向と同じ方向にシート2を軸線A回りに回動させるとよい。また、シート制御装置76は、車両1の横加速度が大きいほど、シート2の回転角を大きくするとよい。シート2が回転することによって、旋回時に乗員を適切に支持することができる。
【0085】
シート制御装置76は、シート2の回転角が大きいときには、シート2の回転角が小さいときに比べて乗員支持装置20の作動量を小さくするとよい。これにより、シート2の回転角に応じて、乗員支持装置20の作動量が適切に調節される。
【0086】
シート制御装置76は、周辺環境としての道路状況、及び運転状況の少なくとも1つに基づいて、シート2を回動させるべくシート回転装置9を作動させるとよい。道路状況は、レーダ、ライダ、カメラ等の各種センサや、地図情報に含まれる道路の形状や曲率、渋滞情報等の受信した道路交通情報を含む。運転状況は、車速、前後加速度、横加速度、ヨーレート、アクセル操作量、ブレーキ操作量、ウインカー操作情報、自車と他車との車間距離、自車と障害物との距離等を含む。シート制御装置76は、道路の曲率半径が小さくなるほど、シート2の回転角を増加させるようにするとよい。
【0087】
シート制御装置76は、道路の曲率半径に応じてシート2の回転角を、例えば、5度、10度、15度、20度、25度、30度等に任意に設定してよい。また、シート制御装置76は、シート2の回転角の上限値を例えば30度になどに制限してもよい。また、シート制御装置76は、車両1が車線変更をするときには、シート2の回転角を0度に固定してもよい。
【0088】
シート制御装置76は、走行制御装置75からの信号に基づいて運転モードを取得する。シート制御装置76は、運転モードが手動運転モードである場合に、運転席に対応した右前席のシート2の回転を禁止、他のシート2の回転を許容する。シート制御装置76は、運転モードが自動運転モードである場合に、他のシート2と同様に、運転席に対応した右前席のシート2の回転を許容する。
【0089】
シート制御装置76は、シート回転装置9と、乗員支持装置20の作動とを協調させてもよく、独立させてもよい。
【0090】
図2に示すように、乗員支持装置20及び報知装置21は、シートクッション5及びヘッドレスト7に設けられてもよい。また、シート2がオットマンを有する場合には、乗員支持装置20及び報知装置21は、オットマンに設けられてもよい。乗員支持装置20は、上述した可動フレーム装置23、エアセル装置41、傾斜プレート装置61であってよく、シートクッション5の上部の左右の側部、ヘッドレスト7の前部の左右の側部、オットマンの前部の左右の側部に設けられるとよい。シートクッション5、ヘッドレスト7、及びオットマンの左右の側部はそれぞれ中央部に対して突出しているとよい。
【0091】
乗員支持装置20が複数設けられている場合に、シート制御装置76はシートバック6に設けられた乗員支持装置20の作動を優先するとよい。シート制御装置76は、次に、シートクッション5に設けられた乗員支持装置20の作動を優先するとよい。シート制御装置76は、次に、シート2の回転装置の作動を優先するとよい。ヘッドレスト7及びオットマンにも乗員支持装置20が設けられている場合には、シート制御装置76は、シートバック6に設けられた乗員支持装置20、シートクッション5に設けられた乗員支持装置20、ヘッドレスト7及びオットマンに設けられた乗員支持装置20、シート2回転装置の優先順位で各装置を作動させるとよい。また、シート制御装置76は、シートバック6に設けられた乗員支持装置20、シートクッション5に設けられた乗員支持装置20、シート2回転装置、ヘッドレスト7及びオットマンに設けられた乗員支持装置20の優先順位で各装置を作動させるとよい。シート制御装置76は、電力消費量が少ない乗員支持装置20の優先度を高くしてもよい。シート制御装置76が作動させる乗員支持装置20の優先度は、タッチパネルディスプレイ33の操作によって変更することができる。
【0092】
図10に示すように、シート制御装置76は、乗員を拘束するシートベルトを引き込むシートベルト装置129と接続されてもよい。シート制御装置76は、乗員支持装置20と同時にシートベルト装置129を作動させ、シートベルトを引き込み、乗員の拘束力を増加させてもよい。シートベルト装置129が乗員の拘束力を増加させることによって、乗員が乗員支持装置20に密着するため、乗員支持装置20が乗員を効率良く支持することができる。シート制御装置76は、障害物センサ96からの信号に基づいて自車と他車との距離を取得し、自車と他車との距離が所定の閾値以下である場合に、シートベルト装置129によってシートベルトを引き込むとよい。
【0093】
乗員支持装置20は、可動フレーム24、エアセル42、及び傾斜プレート装置61の少なくとも2つを組み合わせて使用してもよい。この場合、シート制御装置76は、乗員の覚醒度が低い場合に、作動させる乗員支持装置20として傾斜プレート装置61を選択するとよい。
【0094】
シート制御装置76は、各乗員支持装置20を複数同時に作動させてもよい。その場合、シート制御装置76は、各乗員支持装置20の作動量を小さくすると共に、作動期間を短くしてもよい。乗員は、タッチパネルディスプレイ33を操作して、使用する乗員支持装置20を選択してもよい。シート制御装置76は、タッチパネルディスプレイ33からの選択信号に応じて作動させる乗員支持装置20を決定するとよい。シート制御装置76は、乗員による乗員支持装置20の選択結果を学習し、学習結果に応じて使用する乗員支持装置20を決定してもよい。
【0095】
シート制御装置76は、運転状況に基づいて危険度を設定し、危険度に応じて作動させる報知装置21を変更してもよい。シート制御装置76は、危険度が比較的低いレベル1であるときに、タッチパネルディスプレイ33に報知画像を表示させる、又はスピーカ32に報知音を発生させるとよい。シート制御装置76は、危険度がレベル1より高いレベル2であるときに、シート2に設けられたバイブレータ31を作動させるとよい。シート制御装置76は、危険度がレベル2より高いレベル3であるときに、シート2に設けられた乗員支持装置20を作動させるとよい。
【0096】
シート制御装置76は、周辺環境としての道路状況又は運転状況に基づいて、情報取得装置90の異常を検出したときには、乗員支持装置20の作動を制限してもよい。この場合、シート制御装置76は、乗員支持装置20の作動を禁止してもよく、作動量を通常時よりも小さくしてもよい。異常の検出は、例えば道路状況に基づいて行われるとよい。例えば、道路の曲率半径、凹凸、傾斜、分岐形状が、所定の範囲内から逸脱した異常値を示すときに、カメラ、レーダ(ミリ波レーダ)、ライダを含む障害物センサ96、又は地図情報に異常が発生したと判定してもよい。乗員支持装置20の異常は、電動モータ25の電流値、エアセル42の圧力等に基づいて判定されるとよい。シート制御装置76は、異常値の程度に応じて異常レベルを設定するとよい。
【0097】
シート制御装置76は、異常レベルに応じて乗員支持装置20の作動量を変更するとよい。シート制御装置76は、異常レベルが高いほど、乗員支持装置20の作動量を小さくするとよい。また、シート制御装置76は、異常レベルが所定値以上の場合に、乗員支持装置20の作動を禁止してもよい。
【0098】
シート制御装置76は、シートクッション5及びシートバック6の座面に設けられたシートヒータ107に接続されてもよい。シートヒータ107は、例えば不織布等のシート状部材と、シート状部材に結合された電熱線を有するとよい。シートヒータ107は、パッド12と表皮材13との間に配置されている。シート制御装置76は、シートヒータ107への電力供給を制御する。シート制御装置76は、乗員支持装置20を使用する場合、乗員支持装置20を使用しない場合に比べてシートヒータ107への電力供給量を低下させてもよい。また、シート制御装置76は、シートヒータ107を使用している場合、シートヒータ107を使用していない場合に比べて、乗員支持装置20の作動量を低下させてもよい。これにより、乗員に密着する部分の温度上昇を抑制することができる。
【0099】
シート制御装置76は、シートクッション5及びシートバック6の座面に設けられた、乗員の動きを検出するための複数の圧力センサ95と接続されてもよい。複数の圧力センサ95は、圧電センサやメンブレンスイッチであってよい。シート制御装置76には、ゲームやエクササイズを行うためのアプリケーションが格納されており、複数の圧力センサ95からの入力に基づいてアプリケーションを実行するとよい。アプリケーションは、タッチパネルディスプレイ33や乗員が使用するスマートホン等の携帯端末にアプリケーション画像を表示するとよい。シート制御装置76は、乗員支持装置20を作動させている場合に、ゲーム等のアプリケーションの使用を禁止してもよい。また、シート制御装置76は、ゲーム等のアプリケーションを使用している場合に、使用していない場合に比べて乗員支持装置20の作動量を低下させてもよい。
【0100】
シート制御装置76は、乗員を撮像する車内カメラ109と接続され、車内カメラ109からの画像情報に基づいて乗員支持装置20を制御してもよい。シート制御装置76は、運転モードに応じて乗員支持装置20を制御するとよい。シート制御装置76は、手動運転モードである場合に自動運転モードである場合よりも、乗員支持装置20の作動量を小さくするとよい。
【0101】
シート制御装置76は、シートモードに応じて乗員支持装置20を制御してもよい。シートモードは、通常モード及びリラックスモードを含む。シートモードは、更に、ビジネスモード(学習モード)を含んでもよい。シート制御装置76は、シートバック6のリクライニング角度に基づいて通常モード及びリラックスモードを判定するとよい。リクライニング角度は、シートクッション5とシートバック6との結合部に設けられたリクライニング角センサ131によって取得されるとよい。シート制御装置76は、例えばシート2に設けられた収納可能なテーブルの位置、車内灯の点灯状態に応じて、通常モード及びビジネスモードを判定するとよい。シート制御装置76は、例えばテーブルが展開にある場合、又は車内灯が点灯されている場合に、シートモードがビジネスモードであると判定するとよい。
【0102】
シート制御装置76は、シートモードがリラックスモードである場合に、通常モードである場合に比べて、乗員支持装置20の作動量を大きくするとよい。これにより、乗員支持装置20は乗員を確実に支持することができる。一方、シート制御装置76は、シートモードがリラックスモードである場合に、通常モードである場合に比べて、乗員支持装置20の作動量を小さくしてもよい。これにより、乗員支持装置20がリラックス状態の乗員に与える違和感を低減することができる。
【0103】
シート制御装置76は、シートモードがビジネスモードである場合に、通常モードである場合に比べて、乗員支持装置20の作動量を大きくするとよい。これにより、乗員支持装置20が乗員を確実に支持するため、乗員は作業を行い易い。一方、シート制御装置76は、シートモードがリラックスモードである場合に、通常モードである場合に比べて、乗員支持装置20の作動量を小さくしてもよい。これにより、乗員支持装置20がリラックス状態の乗員に与える違和感を低減することができる。
【0104】
シート制御装置76は、シートクッション5及びシートバック6に設けられたマッサージ装置133と接続されてもよい。マッサージ装置133は、例えば圧縮空気が供給されることによって膨張するエアセルを有するとよい。シート制御装置76は、マッサージ装置133が作動している場合に、マッサージ装置133が作動していない場合に比べて、乗員支持装置20の作動量を大きくするとよい。これにより、乗員支持装置20は乗員を確実に支持することができる。一方、シート制御装置76は、マッサージ装置133が作動している場合に、マッサージ装置133が作動していない場合に比べて、乗員支持装置20の作動量を小さくしてもよい。これにより、マッサージ装置133の作用を乗員に確実に伝達することができる。シート制御装置76は、旋回状態に基づいて、マッサージ装置133の作動を禁止してもよい。シート制御装置76は、横加速度が所定値以上である場合や、地図情報から取得した走行路の曲率半径が所定値以下である場合に、マッサージ装置133の作動を禁止するとよい。
【0105】
乗員支持装置20が報知装置21を兼ねてもよい。例えば、乗員支持装置20が振動作動することによって、乗員に報知を行ってもよい。乗員支持装置20は、振動作動を行った後に通常作動を行ってもよい。これにより、乗員支持装置20が、作動することを乗員に報知することができる。
【0106】
乗員支持装置20が、可動フレーム装置23やエアセル装置41のように複数設けられている場合、各装置を互いに独立して作動させるとよい。
【0107】
シート制御装置76は、道路状況又は運転状況に基づいて所定期間後に発生する横加速度である横加速度予測値を予測する。そして、シート制御装置76は、横加速度予測値が所定の閾値以上になる場合に、乗員支持装置20及び報知装置21を作動させる。シート制御装置76は、乗員支持装置20及び報知装置21を作動させるタイミングを異ならせてもよい。また、シート制御装置76は、報知装置21を作動させるタイミングを、乗員支持装置20を作動させるタイミングよりも早めてもよい。また、シート制御装置76は、報知装置21を作動させるタイミングを、乗員支持装置20を作動させるタイミングと一致させてもよい。
【0108】
車両1の旋回時に作動する報知装置21は、乗員の選択に応じて変更してもよい。タッチパネルディスプレイ33は乗員の選択操作を受け付け、シート制御装置76は選択操作に応じて作動させる報知装置21を決定してもよい。例えば、車両1が右旋回するときに、シート2の右側に配置された報知装置21が報知を行うようにしてもよい。
【0109】
シート制御装置76は、車両1の旋回時に報知装置21を作動させると共に、タッチパネルディスプレイ33に旋回方向及び車両1の動作を示す画像又は文字を表示させてもよい。また、シート制御装置76は、更に、スピーカ32に旋回方向及び車両1の動作を示す音声を出力させてもよい。シート制御装置76は、乗員支持装置20を作動させるより所定時間前に、タッチパネルディスプレイ33及びスピーカ32を作動させるとよい。シート制御装置76は、車速又は車両1の前後加速度に基づいて所定時間を変更してもよい。シート制御装置76は、車速及び車両1の前後加速度が大きいほど、所定時間を長くするとよい。
【0110】
シート制御装置76は、車両1の旋回時に旋回方向と同じ側に設けられた乗員支持装置20及び報知の作動を禁止してもよい。車両1の旋回時に旋回方向と同じ側に設けられた乗員支持装置20及び報知は、乗員との密着性が低いため、作動を禁止することによってエネルギー消費量を低減することができる。
【0111】
報知装置21としてのバイブレータ31は、乗員支持装置20のパッド12側と相反する側に設けられてもよい。すなわち、バイブレータ31は、シートバック6において、可動フレーム24の後面、エアセル42の後面、傾斜プレート62の後面に設けられてもよい。これにより、バイブレータ31が乗員支持装置20を振動させ、乗員支持装置20を介して振動がシート2に着座した乗員に伝達される。すなわち、乗員は、比較的広い領域から振動を受けることができる。報知装置21及び乗員支持装置20がシートクッション5に設けられている場合には、報知装置21は乗員支持装置20の下側に設けられているとよい。
【0112】
報知装置21は、バイブレータ31とスピーカ32との両方を有してもよい。シート制御装置76は、最初にスピーカ32を作動させ、遅れてバイブレータ31を作動させるとよい。このとき、シート制御装置76は、同じ領域に配置されたスピーカ32及びバイブレータ31を作動させるとよい。例えば、車両1が右方向に旋回するとき、シート制御装置76は、最初にシート2の左側に設けられたスピーカ32を作動させ、続いて所定期間経過後にシート2の左側に設けられたバイブレータ31を作動させるとよい。乗員は、最初にスピーカ32からの音声によって報知を受け、続いてバイブレータ31からの振動によって報知を受けるため、確実に報知を認識することができる。
【0113】
乗員支持装置20及び報知装置21は、シートバック6から省略してもよい。乗員支持装置20及び報知装置21がシートバック6に設けられる場合には、乗員支持装置20及び報知装置21が水平方向においてシートバック6の側部に設けられるサイドエアバッグ装置と重ならない位置に設けるとよい。これにより、乗員支持装置20、報知装置21、サイドエアバッグ装置をシートバック6の側部において、コンパクトに配置することができる。
【0114】
車両1には、アクティブサスペンション装置135が設けられてもよい。アクティブサスペンション装置135は、車体と車輪との間に設けられ、伸縮状態又はばね特性を変更することができる。アクティブサスペンション装置135は、例えば油圧装置、空気圧装置、又は電動モータ25の駆動力を受けて伸縮する。走行制御装置75は、車体の上下動及び振動を抑制するべく、アクティブサスペンション装置135を制御する。シート制御装置76は、走行制御装置75からの信号に基づいて走行制御装置75がアクティブサスペンション装置135を制御していると判定したときには、乗員支持装置20の作動量を小さくしてもよい。また、シート制御装置76は、走行制御装置75からの信号に基づいて走行制御装置75がアクティブサスペンション装置135を制御していると判定したときには、乗員支持装置20の作動を禁止してもよい。
【0115】
報知装置21は、ステアリングホイール71に設けられたバイブレータ31を含んでもよい。シート制御装置76は、シート2に設けられたバイブレータ31と、ステアリングホイール71に設けられたバイブレータ31とを協調させて振動させてもよい。
【0116】
シート制御装置76は、運転モードが自動運転モードである場合において、自動運転のレベルが変化するときに、報知装置21を作動させてもよい。例えば、シート制御装置76は、運転の主体が車であるレベル(レベル3)から、運転の主体が人であるレベル(レベル2)に変化するときに、報知装置21を作動させてもよい。
【0117】
乗員支持装置20は、
図13に示すようなランバーサポート141であってもよい。ランバーサポート141は、板状のプレート部材142と、プレート部材142を左右のサイドメンバ15に接続する懸架装置143とを有する。懸架装置143は、左右のサイドメンバ15に接続された可撓性のワイヤ144と、ワイヤ144の長さを調節する調節機構145とを有する。調節機構145は、調節機構ケース146と、調節機構ケース146に受容されたドラム及び電動モータとを有する。ドラムには、ワイヤ144の一部が巻きかけられている。調節機構ケース146は、プレート部材142の背面に結合されている。
【0118】
電動モータは、ドラムを回転させる。ドラムが正方向に回転することによってワイヤ144が巻き取られ、調節機構ケース146から延出したワイヤ144の長さが短くなる。これにより、プレート部材142がワイヤ144と左右のサイドメンバ15との結合部に近づく。また、プレート部材142のサイドメンバ15に対する可動範囲が小さくなる。一方、ドラムが負方向に回転することによってワイヤ144が引き出され、調節機構ケース146から延出したワイヤ144の長さが長くなる。これにより、プレート部材142がワイヤ144と左右のサイドメンバ15との結合部から離れることができる。また、プレート部材142のサイドメンバ15に対する可動範囲が大きくなる。
【0119】
調節機構ケース146は左右に延在している。調節機構ケース146は、プレート部材142の上下方向における中間部に配置されている。ワイヤ144は、調節機構ケース146の左右の端部から左右外方に延びている。前方から見て、生体センサとしてのドップラーセンサ110は、調節機構ケース146及びワイヤ144と重ならない位置に配置されている。ドップラーセンサ110は、調節機構ケース146及びワイヤ144の上方又は下方に配置されているとよい。
【0120】
プレート部材142は、樹脂によって形成されている。
図14に示すように、プレート部材142には、複数のリブ148が設けられている。リブ148は、プレート部材142の剛性を高める。複数のリブ148は、縦方向及び横方向に延びているとよい。複数のリブ148は、格子状に配置されているとよい。複数のリブ148は、プレート部材142の背面に設けられているとよい。プレート部材142の背面には、複数のリブ148によって囲まれた凹部151が形成されている。凹部151には、リブ148は設けられていない。そのため、プレート部材142は、凹部151において、前後方向の厚さが薄くなっている。ドップラーセンサ110は、凹部151に配置されるとよい。ドップラーセンサ110は、プレート部材142を透過して前方に向けて電波を照射する。このように、ドップラーセンサ110は、ワイヤ144、調節機構ケース146、及びリブ148を避けた位置に配置される。ドップラーセンサ110は、プレート部材142の左右方向における中央に対して左右にずれた位置に配置されてもよい。乗員の背部の背骨部分は、その左右の部分に対して凹んでいる。そのため、ドップラーセンサ110が中央から左右にずれた位置に配置されることによって、乗員の背部とプレート部材142とが密着する部分にドップラーセンサ110が配置される。
【0121】
ランバーサポート141の上方には、左右に延び、左右のサイドメンバ15に結合したワイヤ153が設けられているとよい。
【0122】
プレート部材142には、ドップラーセンサ110に代えて他の生体センサが設けられてもよい。他の生体センサは、例えば、温度センサや、湿度センサ、圧力センサを含む。
【0123】
ドップラーセンサ110をプレート部材142の背面に配置することによって、ドップラーセンサ110のレイアウト自由度が向上する。これにより、ドップラーセンサ110を、乗員に対して適切な位置に配置することができる。また、ドップラーセンサ110がプレート部材142の背面に配置されているため、ドップラーセンサ110によってプレート部材142の撓みが阻害されることが抑制される。そのため、プレート部材142は、柔軟に変形して、乗員の背部を適切に支持することができる。
【0124】
図15に示すように、シート制御装置76は、ドア開閉センサ101からの信号に基づいてドア72の開閉状態を取得し、ドア72が開かれたことを検知したときに、ドア72に対応するシート2の乗員支持装置20を作動させると共に、報知装置21を作動させるとよい。具体的には、シート2のドア72側(右側)の可動フレーム24を後方に回動させると共に、シート2のドア72と相反する側(左側)の可動フレーム24を前方に回動させる。これにより、シート2の右側のシートバック側部27の前方への突出量が小さくなって乗員がドア72側に移動し易くなると共に、シート2の左側のシートバック側部27の前方への突出量が大きくなって乗員をドア72側に向けることができる。このとき、バイブレータ31が振動することによって、乗員はドア72が開かれたことを認識することができる。バイブレータ31は、可動フレーム装置23の作動より前に作動してもよく、可動フレーム装置23の作動と同時に作動してもよい。
【0125】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。
【符号の説明】
【0126】
1 :車両
2 :シート
4 :フロア
5 :シートクッション
6 :シートバック
8 :シート本体
9 :シート回転装置
11 :シートバックフレーム
15 :サイドメンバ
16 :アッパメンバ
17 :ロアメンバ
20 :乗員支持装置
21 :報知装置
23 :可動フレーム装置
24 :可動フレーム
25 :電動モータ
27 :シートバック側部
28 :シートバック中央部
31 :バイブレータ
32 :スピーカ
33 :タッチパネルディスプレイ
41 :エアセル装置
42 :エアセル
44 :ランバーサポート
47 :支持プレート
61 :傾斜プレート装置
62 :傾斜プレート
63 :傾動装置
71 :ステアリングホイール
75 :走行制御装置
76 :シート制御装置
90 :情報取得装置
110 :ドップラーセンサ
【手続補正書】
【提出日】2024-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設けられる乗物用シートであって、
シートクッション及びシートバックを有するシート本体と、
前記シート本体に変位可能に設けられ、前記シート本体に着座した乗員を押圧する乗員支持装置と、
前記乗員支持装置に設けられ、前記乗員に報知するためのバイブレータと、
前記乗物の周辺環境及び前記乗物の運転状態の少なくとも1つを含む情報を取得する情報取得装置と、
前記情報に基づいて前記乗員支持装置及び前記バイブレータを制御する制御装置とを有し、
前記バイブレータは前記乗員支持装置に重ねて設けられている乗物用シート。
【請求項2】
前記乗員支持装置は、圧縮空気が供給されることによって膨張するエアセルと、前記エアセルの前端に設けられた支持プレートを有し、
前記バイブレータは、前記支持プレートに設けられている請求項1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前方から見て、前記エアセル及び前記支持プレートは、前記シートバックの中央を囲むように、前記シートバックの左右の側部及び上部に複数設けられ、
前記バイブレータは、前記支持プレートのそれぞれに設けられている請求項2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記シートバックは、シートバックフレームと、前記シートバックフレームに支持された板状のランバーサポートとを有し、
複数の前記エアセルの一部は、前記ランバーサポートの前面に支持されている請求項3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
複数の前記エアセルは、前記ランバーサポートの上部に設けられた左右一対の上段エアセルと、前記ランバーサポートにおいて一対の前記上段エアセルよりも下方かつ左右外方に設けられた左右一対の中段エアセルとを含む請求項4に記載の乗物用シート。
【請求項6】
前記シートバックフレームは、上下に延びる左右のサイドメンバと、横方向に延び、左右の前記サイドメンバの上端に結合したアッパメンバとを有し、
複数の前記エアセルの一部は、前記シートバックフレームに直接に支持されている請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項7】
複数の前記エアセルは、左右の前記サイドメンバのそれぞれに設けられ、一対の前記中段エアセルよりも下方かつ左右外方に設けられた左右一対の下段エアセルを含む請求項6に記載の乗物用シート。
【請求項8】
複数の前記エアセルの一部は、前記ランバーサポートと前記支持プレートとの間に配置されている請求項5に記載の乗物用シート。
【請求項9】
前記支持プレートの一端は、前記ランバーサポートに回動可能に結合されている請求項8に記載の乗物用シート。
【請求項10】
前記エアセルが膨張すると、対応する前記支持プレートが前記ランバーサポートに対して回動し、かつ前方に移動する請求項9に記載の乗物用シート。
【請求項11】
前記バイブレータの少なくとも1つは、対応する前記支持プレートの前記エアセル側と相反する面に設けられている請求項10に記載の乗物用シート。
【請求項12】
前記バイブレータの少なくとも1つは、対応する前記支持プレートの前記エアセル側の面に設けられている請求項10に記載の乗物用シート。