(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053107
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】組成物、成形体、積層体、及び、樹脂
(51)【国際特許分類】
C08L 101/02 20060101AFI20240405BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20240405BHJP
C08L 27/22 20060101ALI20240405BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C08L101/02
C08F8/30
C08L27/22
C08L101/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024036921
(22)【出願日】2024-03-11
(62)【分割の表示】P 2023164819の分割
【原出願日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2022155426
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304036754
【氏名又は名称】国立大学法人山形大学
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】高橋 辰宏
(72)【発明者】
【氏名】明日 拓也
(72)【発明者】
【氏名】富澤 佑雅
(72)【発明者】
【氏名】山口 修平
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 俊行
(72)【発明者】
【氏名】関 豊光
(72)【発明者】
【氏名】小森 政二
(72)【発明者】
【氏名】岡西 謙
(72)【発明者】
【氏名】山内 昭佳
(57)【要約】
【課題】フッ素樹脂の割合を増加させた場合であっても、ストランドの外観不良の原因となるフッ素樹脂の凝集を抑制できる樹脂を提供する。
【解決手段】下記式で表される基(I)を有し、熱分解温度が330℃以上である樹脂。
[化1]
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素又は有機基であり、互いに結合して環構造を形成してもよい。実線及び破線で表される二重線は、単結合又は二重結合である。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表される基(I)を有し、熱分解温度が330℃以上である樹脂。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素又は有機基であり、互いに結合して環構造を形成してもよい。実線及び破線で表される二重線は、単結合又は二重結合である。)
【請求項2】
アミド基及びエステル基を含む請求項1記載の樹脂。
【請求項3】
前記基(I)がオキサゾリン基である請求項1又は2記載の樹脂。
【請求項4】
前記オキサゾリン基がオキサゾリン化合物に由来するものである請求項3記載の樹脂。
【請求項5】
融点+12℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である請求項1又は2記載の樹脂。
【請求項6】
液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン、又は、ポリエーテルサルフォンである請求項5記載の樹脂。
【請求項7】
フッ素樹脂である請求項1又は2記載の樹脂。
【請求項8】
前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項7記載の樹脂。
【請求項9】
前記フッ素樹脂が非プロトン性溶媒に溶解しない請求項7記載の樹脂。
【請求項10】
前記非プロトン性溶媒が、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、及び、少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項9記載の樹脂。
【請求項11】
樹脂改質剤である請求項1又は2記載の樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、成形体、積層体、及び、樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素樹脂及び液晶ポリマーを含む組成物について、種々の検討が進められている(例えば、特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-187833号公報
【特許文献2】特開2018-177931号公報
【特許文献3】特開2019-065061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らが検討したところ、特許文献2、3の実施例で行われているように、フッ素樹脂の割合を増加させていくと、液晶ポリマーとフッ素樹脂との親和性が低下し、フッ素樹脂の凝集(分散不良)が発生しやすくなることが分かった。フッ素樹脂の凝集は、ストランドの外観不良の原因となるため、できるだけ発生しないことが好ましい。
【0005】
本開示は、フッ素樹脂の割合を増加させた場合であっても、ストランドの外観不良の原因となるフッ素樹脂の凝集を抑制できる組成物、成形体、積層体、及び、樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示(1)は、フッ素樹脂Aと、融点+12℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂B(前記フッ素樹脂Aを除く)とを含み、前記フッ素樹脂A及び前記樹脂Bの少なくとも一方が下記式で表される基(I)を有する組成物(以下、「本開示の組成物」とも記載する)である。
【化1】
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素又は有機基であり、互いに結合して環構造を形成してもよい。実線及び破線で表される二重線は、単結合又は二重結合である。)
【0007】
本開示(2)は、前記フッ素樹脂A及び/又は前記樹脂Bの熱分解温度が330℃以上である本開示(1)記載の組成物である。
【0008】
本開示(3)は、前記フッ素樹脂Aが、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)又は(2)記載の組成物である。
【0009】
本開示(4)は、前記樹脂Bが、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン及びポリエーテルサルフォンからなる群より選択される少なくとも1種である本開示(1)~(3)のいずれかに記載の組成物である。
【0010】
本開示(5)は、前記フッ素樹脂Aの含有量が10体積%以上である本開示(1)~(4)のいずれかに記載の組成物である。
【0011】
本開示(6)は、前記基(I)がオキサゾリン基である本開示(1)~(5)のいずれかに記載の組成物である。
【0012】
本開示(7)は、前記オキサゾリン基がオキサゾリン化合物に由来するものである本開示(6)記載の組成物である。
【0013】
本開示(8)は、本開示(1)~(7)のいずれかに記載の組成物を含む成形体(以下、「本開示の成形体」とも記載する)である。
【0014】
本開示(9)は、誘電材料に用いられる本開示(8)記載の成形体である。
【0015】
本開示(10)は、金属箔と、本開示(8)又は(9)記載の成形体とを含む積層体(以下、「本開示の積層体」とも記載する)である。
【0016】
本開示(11)は、前記金属箔が銅である本開示(10)記載の積層体である。
【0017】
本開示(12)は、下記式で表される基(I)を有し、熱分解温度が330℃以上である樹脂(以下、「本開示の樹脂」とも記載する)である。
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素又は有機基であり、互いに結合して環構造を形成してもよい。実線及び破線で表される二重線は、単結合又は二重結合である。)
【0018】
本開示(13)は、アミド基及びエステル基を含む本開示(12)記載の樹脂である。
【0019】
本開示(14)は、前記基(I)がオキサゾリン基である本開示(12)又は(13)記載の樹脂である。
【0020】
本開示(15)は、前記オキサゾリン基がオキサゾリン化合物に由来するものである本開示(14)記載の樹脂である。
【0021】
本開示(16)は、融点+12℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である本開示(12)~(15)のいずれかに記載の樹脂である。
【0022】
本開示(17)は、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン、又は、ポリエーテルサルフォンである本開示(16)記載の樹脂である。
【0023】
本開示(18)は、フッ素樹脂である本開示(12)~(15)のいずれかに記載の樹脂である。
【0024】
本開示(19)は、前記フッ素樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体及びテトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である本開示(18)記載の樹脂である。
【0025】
本開示(20)は、前記フッ素樹脂が非プロトン性溶媒に溶解しない本開示(18)又は(19)記載の樹脂である。
【0026】
本開示(21)は、前記非プロトン性溶媒が、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル、及び、少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物からなる群から選択される少なくとも1種である本開示(20)記載の樹脂である。
【0027】
本開示(22)は、樹脂改質剤である本開示(12)~(21)のいずれかに記載の樹脂である。
【発明の効果】
【0028】
本開示によれば、フッ素樹脂の割合を増加させた場合であっても、ストランドの外観不良の原因となるフッ素樹脂の凝集を抑制できる組成物、成形体、積層体、及び、樹脂を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書において、「有機基」は、1個以上の炭素原子を含有する基、又は有機化合物から1個の水素原子を除去して形成される基を意味する。
当該「有機基」の例は、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
シアノ基、
ホルミル基、
RaO-、
RaCO-、
RaSO2-、
RaCOO-、
RaNRaCO-、
RaCONRa-、
RaOCO-、
RaOSO2-、及び、
RaNRbSO2-
(これらの式中、Raは、独立して、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアルキニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルケニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいシクロアルカジエニル基、
1個以上の置換基を有していてもよいアリール基、
1個以上の置換基を有していてもよいアラルキル基、
1個以上の置換基を有していてもよい非芳香族複素環基、又は、
1個以上の置換基を有していてもよいヘテロアリール基、
Rbは、独立して、H又は1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基である)
を包含する。
上記有機基としては、1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基が好ましい。
【0030】
以下、本開示を具体的に説明する。
【0031】
<本開示の組成物>
本開示の組成物は、フッ素樹脂Aと、融点+12℃でのメルトフローレート(MFR)が30g/10分以上である樹脂B(フッ素樹脂Aを除く)とを含み、フッ素樹脂A及び樹脂Bの少なくとも一方が下記式で表される基(I)を有する。
【化3】
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素又は有機基であり、互いに結合して環構造を形成してもよい。実線及び破線で表される二重線は、単結合又は二重結合である。)
【0032】
本開示の組成物によれば、フッ素樹脂A及び樹脂Bの少なくとも一方が基(I)を有することで、フッ素樹脂A及び樹脂Bの親和性を向上させることができる。その結果、フッ素樹脂の割合を増加させた場合であっても、ストランドの外観不良の原因となるフッ素樹脂の凝集を抑制できる。
この効果は、一方の樹脂に存在する基(I)と、他方の樹脂に存在するカルボキシ基、フェノール性のOH基、チオール基等の官能基とが結合することによってもたらされると推測される。ここで言う結合は、共有結合の他、水素結合などの非共有結合性の相互作用であっても効果を発揮すると考えられる。
【0033】
本開示の組成物では、フッ素樹脂A及び樹脂Bの一方が基(I)を有していてもよいし、両方が基(I)を有していてもよいが、少なくとも、フッ素樹脂Aが基(I)を有することが好ましい。
【0034】
基(I)は、フッ素樹脂Aや樹脂Bを構成する重合体の末端に導入されていてもよいし、側鎖に導入されていてもよいし、末端及び側鎖の両方に導入されていてもよいが、少なくとも、末端に導入されていることが好ましい。
【0035】
フッ素樹脂Aや樹脂Bを構成する重合体は、分岐構造を有していてもよい。重合体が分岐構造を有する場合、基(I)は、主鎖が有していてもよいし、分岐鎖が有していてもよいし、主鎖及び分岐鎖の両方が有していてもよいが、少なくとも、主鎖が有していることが好ましく、主鎖の末端が有していることがより好ましい。
【0036】
R1及びR2の有機基は、上述のとおりである。
【0037】
R1及びR2が結合して形成される環構造としては、シクロヘキサン環、ベンゼン環等が挙げられる。
【0038】
多くの樹脂に導入されているカルボキシ基と反応し、安定なアミドエステル結合を形成できるという点から、R1及びR2は、水素であることが好ましく、実線及び破線で表される二重線は、単結合であることが好ましい。すなわち、基(I)は、オキサゾリン基であることが好ましい。
【0039】
オキサゾリン基は、オキサゾン化合物に由来するものであることが好ましい。すなわち、オキサゾリン基は、オキサゾン化合物中のオキサゾリン基が導入されたものであることが好ましい。
【0040】
樹脂に基(I)を導入する方法は特に限定されず、樹脂の重合時に基(I)を有する化合物を共重合してもよいし、基(I)を有しない樹脂の重合後、側鎖や末端などを基(I)を有する化合物で修飾(変性)してもよいし、基(I)を有する化合物をグラフトしてもよい。
また、基(I)を有する樹脂(ポリマー)に、更に他の化合物を反応させてもよい。
【0041】
オキサゾリン化合物等の基(I)を有する化合物は、ポリマーやオリゴマーであってもよいし、これら以外の低分子化合物であってもよい。
【0042】
基(I)を有する低分子化合物としては、ベンゼン環、ナフタレン環を含む化合物であることが好ましい。
基(I)を有する低分子化合物において、基(I)の数は、1個以上であればよいが、2個以上であることが好ましい。上限は特に限定されない。基(I)の位置は、基(I)の数や化合物の構造によって適宜設定すればよい。
【0043】
基(I)を有するポリマー、オリゴマーの構造は特に限定されず、ベンゼン環、ナフタレン環を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。
基(I)を有するポリマー、オリゴマーにおいて、基(I)の数は、1個以上であればよいが、複数(2個以上)であることが好ましい。基(I)の数の上限は特に限定されない。基(I)の位置も特に限定されない。
【0044】
基(I)を有するポリマーは、重量平均分子量(Mw)が10000~500000であることが好ましく、数平均分子量(Mn)が5000~200000であることが好ましい。
Mw、Mnは、GPC測定におけるPS換算重量平均分子量に準拠して求めることができる。
【0045】
基(I)を有する化合物の具体例は、低分子化合物のオキサゾリン化合物として、2-ビニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、4,5-ジエチル-2-ビニル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-メチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、5-エチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,4-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,5-ジメチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、4,5-ジエチル-2-イソプロペニル-2-オキサゾリン、1,3-フェニルビスオキサゾリン[1,3-PBO]、1,4-フェニルビスオキサゾリン[1,4-PBO]等が挙げられ、ポリマーのオキサゾリン化合物として、ポリ-2-ビニル-2-オキサゾリン[Pvozo]、日本触媒(株)製のエポクロス(登録商標)等が挙げられる。なかでも、1,3-PBO、Pvozoが好ましく、1,3-PBOがより好ましい。
【0046】
オキサゾリン化合物以外に、基(I)を有する化合物の具体例としては、1,4-ビス(ベンゾオキサゾール-2-イル)ナフタレン[1,4-BBN]等が挙げられる。
【0047】
フッ素樹脂Aとしては、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]、テトラフルオロエチレン[TFE]/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]共重合体[PFA]、TFE/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体[FEP]、エチレン[Et]/TFE共重合体[ETFE]、Et/TFE/HFP共重合体[EFEP]、ポリクロロトリフルオロエチレン[PCTFE]、クロロトリフルオロエチレン[CTFE]/TFE共重合体、CTFE/TFE/PAVE共重合体、Et/CTFE共重合体等が挙げられる。
【0048】
フッ素樹脂Aとしては、樹脂Bとの親和性の点から、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]、テトラフルオロエチレン[TFE]/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]共重合体[PFA]及びテトラフルオロエチレン[TFE]/ヘキサフルオロプロピレン[HFP]共重合体[FEP]からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、PFA及びFEPからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましく、FEPが更に好ましい。
【0049】
PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)単位のみからなるTFE単独重合体であってもよいし、TFE単位及びTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む変性PTFEであってもよい。
【0050】
PTFEは、テトラフルオロエチレン(TFE)単位のみからなるTFE単独重合体であってもよいし、TFE単位及びTFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位を含む変性PTFEであってもよい。
【0051】
変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン[CTFE]等のクロロフルオロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン[VdF]等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;パーフルオロアルキルアリルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン;エチレン等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0052】
パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(1)
CF2=CF-ORf (1)
(式中、Rfは、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0053】
パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、一般式(1)において、Rfが炭素数1~10のパーフルオロアルキル基を表すものであるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)[PAVE]が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0054】
PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]が好ましい。
【0055】
パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、一般式(1)において、Rfが炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rfが下記式:
【0056】
【0057】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rfが下記式:
【0058】
【0059】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0060】
(パーフルオロアルキル)エチレンとしては特に限定されず、例えば、(パーフルオロブチル)エチレン[PFBE]、(パーフルオロヘキシル)エチレン[PFHE]、(パーフルオロオクチル)エチレン等が挙げられる。
【0061】
変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VdF、PPVE、PFBE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種である。
【0062】
変性PTFEにおいて、上記変性モノマー単位の含有量は、0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の含有量の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましく、0.005質量%が更により好ましく、0.010質量%が殊更に好ましく、0.030質量%が特に好ましい。変性モノマー単位の含有量の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましい。
本明細書において、変性モノマー単位とは、変性PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味する。
【0063】
PTFEは、融点が324~360℃であることが好ましい。上記PTFEの融点は第一融点を意味する。上記第一融点は、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0064】
PTFEは、標準比重(SSG)が2.130~2.280であることが好ましい。上記標準比重は、2.220以下であることがより好ましく、2.200以下であることが更に好ましい。また、2.140以上であることが好ましく、2.150以上であることが更に好ましい。上記SSGは、ASTM D 4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D-792に準拠した水置換法により測定する。
【0065】
PTFEは、非溶融二次加工性を有することが好ましい。上記非溶融二次加工性とは、ASTM D-1238及びD-2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質を意味する。
【0066】
PFAとしては、特に限定されないが、TFE単位とPAVE単位とのモル比(TFE単位/PAVE単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.9/1.1以下である。上記PFAは、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%(TFE単位及びPAVE単位が合計で90~99.9モル%である共重合体)であることが好ましく、0.1~5モル%であることがより好ましく、0.2~4モル%であることが特に好ましい。
【0067】
TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、HFP、式(I):CZ1Z2=CZ3(CF2)nZ4(式中、Z1、Z2及びZ3は、同一若しくは異なって、水素原子又はフッ素原子を表し、Z4は、水素原子、フッ素原子又は塩素原子を表し、nは2~10の整数を表す。)で表されるビニル単量体、及び、式(II):CF2=CF-OCH2-Rf1(式中、Rf1は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体、式(X):CZ5Z6=CZ7-CZ8Z9-O-Rf4(式中、式中、Z5、Z6及びZ7は、同一又は異なって、水素原子、塩素原子又はフッ素原子を表し、Z8及びZ9は、水素原子又はフッ素原子を表し、Rf4は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるアリルエーテル単量体等が挙げられる。上記アリルエーテル単量体としては、CH2=CFCF2-O-Rf4、CF2=CFCF2-O-Rf4(パーフルオロアルキルアリルエーテル)、CF2=CFCH2-O-Rf4、CH2=CHCF2-O-Rf4(式中、Rf4は上記式(X)と同じ)等が好ましく挙げられる。
また、TFE及びPAVEと共重合可能な単量体としては、更にイタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の酸無水物等も挙げられる。
【0068】
PFAは、融点が180~324℃未満であることが好ましく、230~320℃であることがより好ましく、280~320℃であることが更に好ましい。
【0069】
FEPとしては、特に限定されないが、TFE単位とHFP単位とのモル比(TFE単位/HFP単位)が70/30以上99/1未満である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は、70/30以上98.9/1.1以下であり、更に好ましいモル比は、80/20以上98.9/1.1以下である。上記FEPは、TFE及びHFPと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%(TFE単位及びHFP単位が合計で90~99.9モル%である共重合体)であることが好ましく、0.1~5モル%であることがより好ましく、0.2~4モル%であることが特に好ましい。
【0070】
TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、PAVE、式(X)で表される単量体、式(II)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体等が挙げられる。また、TFE及びHFPと共重合可能な単量体としては、更にイタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の酸無水物等も挙げられる。
【0071】
FEPは、融点が150~324℃未満であることが好ましく、200~320℃であることがより好ましく、240~320℃であることが更に好ましい。
【0072】
ETFEとしては、TFE単位とエチレン単位とのモル比(TFE単位/エチレン単位)が20/80以上90/10以下である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は37/63以上85/15以下であり、更に好ましいモル比は38/62以上80/20以下である。ETFEは、TFE、エチレン、並びに、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよい。上記ETFEは、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体に由来する単量体単位が0.1~10モル%(TFE単位及びエチレン単位が合計で90~99.9モル%である共重合体)であることが好ましく、0.1~5モル%であることがより好ましく、0.2~4モル%であることが特に好ましい。
【0073】
TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、下記式
CH2=CX1Rf2、CF2=CFRf2、CF2=CFORf2、CH2=C(Rf2)2(式中、X1は水素原子又はフッ素原子、Rf2はエーテル結合を含んでいてもよいフルオロアルキル基を表す。)で表される単量体や式(X)で表される単量体が挙げられ、なかでも、CF2=CFRf2、CF2=CFORf2及びCH2=CX1Rf2で表される含フッ素ビニルモノマー、式(X)で表される単量体が好ましく、HFP、CF2=CF-ORf3(式中、Rf3は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、CF2=CF-CF2-O-Rf4(式中、Rf4は炭素数1~5のパーフルオロアルキル基を表す。)で表されるパーフルオロアルキルアリルエーテル及びRf2が炭素数1~8のフルオロアルキル基であるCH2=CX1Rf2で表される含フッ素ビニルモノマーがより好ましい。また、TFE及びエチレンと共重合可能な単量体としては、更にイタコン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物等の不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の酸無水物等も挙げられる。
【0074】
ETFEは、融点が140~324℃未満であることが好ましく、160~320℃であることがより好ましく、195~320℃であることが更に好ましい。
【0075】
上述した重合体の各単量体単位の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0076】
フッ素樹脂Aの熱分解温度は、好ましくは330℃以上、より好ましくは350℃以上、更に好ましくは370℃以上であり、また、好ましくは500℃以下、より好ましくは480℃以下、更に好ましくは470℃以下である。
【0077】
なお、フッ素樹脂Aの熱分解温度は、株式会社日立ハイテクサイエンス社製熱分析装置 STA7200を用いて測定した。測定は200mL/minの窒素パージ雰囲気下で行った。アルミ製パンに試料10mgを入れ、25℃で10分間保持した後、10℃/minの昇温速度で600℃まで昇温した。その際の初期質量から5%質量減少温度(Td5)を熱分解温度とした。
【0078】
フッ素樹脂Aは、主鎖炭素数106個あたり100~2000個の不安定末端基を有していてもよい。不安定末端基は-COF、-COOHであり、上記個数はこれらの総数である。
【0079】
なお、不安定末端基の数は、赤外分光分析法によって測定できる。具体的には、まず、フッ素樹脂Aを溶融押出成形して、厚さ0.25~0.3mmのフィルムを作製する。このフィルムをフーリエ変換赤外分光分析により分析して、フッ素樹脂Aの赤外吸収スペクトルを得、完全にフッ素化処理されて不安定末端基が存在しないベーススペクトルとの差スペクトルを得る。この差スペクトルに現れる特定の不安定末端基の吸収ピークから、下記式(A)に従って、フッ素樹脂Aにおける炭素原106個あたりの不安定末端基数Nを算出する。
N=I×K/t (A)
I:吸光度
K:補正係数
t:フィルムの厚さ(mm)
【0080】
本開示の組成物は、樹脂Bが海、フッ素樹脂Aが島の海島構造を形成していることが好ましい。
【0081】
樹脂Bとしては、融点+12℃でのメルトフローレート(MFR)が30g/10分以上のものであれば特に限定されないが、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等を使用できる。なかでも、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリールエーテルケトン、ポリサルフォン及びポリエーテルサルフォンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン及びポリエーテルサルフォンからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、液晶ポリマーが特に好ましい。
【0082】
液晶ポリマーとしては特に限定されないが、液晶化温度(すなわち融点)が180℃~380℃であるポリマーであってよく、加熱してネマチック等の液晶状態となるサーモトロピック液晶ポリマーが好ましく、たとえば、
I型液晶ポリマー(ビフェノール/安息香酸/パラオキシ安息香酸(POB)共重合体など)
II型液晶ポリマー(ヒドロキシナフトエ酸(HNA)/POB共重合体など)
III型液晶ポリマー(POB/エチレンテレフタレート共重合体など)
などがあげられる。なかでも、混練温度と液晶転移温度の観点から、I型液晶ポリマー及びII型液晶ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、II型液晶ポリマーがより好ましい。
【0083】
液晶ポリマーの融点は、好ましくは280℃以上、より好ましくは310℃以上であり、また、好ましくは380℃以下、より好ましくは350℃以下である。
【0084】
ポリエーテルイミドとしては、例えば、分子内にイミド結合及びエーテル結合を有するものを使用できる。
【0085】
ポリエーテルイミドのガラス転移温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上であり、また、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下である。
【0086】
ポリフェニレンサルファイドとしては、例えば、下記式で表される構造単位を有する樹脂を使用できる。この構造単位の割合は、70モル%以上が好ましい。
-(Ph-S)-
式中のPhはフェニレン基であり、当該フェニレン基としては、p-フェニレン、m-フェニレン、o-フェニレン、アルキル置換フェニレン、フェニル置換フェニレン、ハロゲン置換フェニレン、アミノ置換フェニレン、アミド置換フェニレン、p,p’-ジフェニレンスルホン、p,p’-ビフェニレン、p,p’-ビフェニレンエーテル等が挙げられる。なかでも、p-フェニレンが好ましい。
【0087】
ポリフェニレンサルファイドの融点は、好ましくは240℃以上、より好ましくは270℃以上であり、また、好ましくは380℃以下、より好ましくは350℃以下である。
【0088】
ポリアリールエーテルケトンとしては、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)等が挙げられる。なかでも、PEEKが好ましい。
【0089】
ポリアリールエーテルケトンの融点は、好ましくは320℃以上、より好ましくは340℃以上であり、また、好ましくは400℃以下、より好ましくは380℃以下である。
【0090】
ポリサルフォン(ポリスルホン)としては特に限定されず、一般的なものを使用可能である。
【0091】
ポリサルフォンのガラス転移温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは220℃以上であり、また、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは260℃以下である。
【0092】
ポリエーテルサルフォン(ポリエーテルスルホン)としては特に限定されず、一般的なものを使用可能である。
【0093】
ポリエーテルサルフォンのガラス転移温度は、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは220℃以上であり、また、好ましくは300℃以下、より好ましくは280℃以下、更に好ましくは260℃以下である。
【0094】
なお、液晶ポリマー、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びポリアリールエーテルケトンの融点は、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
ポリエーテルイミド、ポリサルフォン及びポリエーテルサルフォンのガラス転移温度は、示差走査熱量計(メトラー・トレド社製、DSC822e)を用い、試料10mgを10℃/minで昇温することによりDSC曲線を得て、DSC曲線の二次転移前後のベースラインの延長線と、DSC曲線の変曲点における接線との2つの交点の中点を示す温度として求めることができる。
【0095】
樹脂Bの融点+12℃でのMFRは、30g/10分以上であればよいが、好ましくは50g/10分以上、より好ましくは100g/10分以上であり、また、好ましくは800g/10分以下、より好ましくは600g/10分以下である。
【0096】
なお、樹脂BのMFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサー((株)安田精機製作所製)を用いて、2.16kg荷重下で内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
また、樹脂Bの融点は、上述の液晶ポリマー等と同様、示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0097】
樹脂Bの熱分解温度は、好ましくは330℃以上、より好ましくは350℃以上であり、また、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下である。
【0098】
なお、樹脂Bの熱分解温度は、窒素雰囲気ではなく空気中で測定した点を除き、フッ素樹脂Aと同様の方法で測定した。
【0099】
樹脂Bは、重量平均分子量(Mw)が10000~500000であることが好ましく、数平均分子量(Mn)が5000~20000であることが好ましい。
Mw、Mnの測定方法は、樹脂Bの種類によって測定に用いる溶媒を選定する必要はあるが、上記と同様にGPCである。
【0100】
フッ素樹脂Aは、非プロトン性溶媒に溶解しないものであることが好ましい。
なお、非プロトン性溶媒に溶解しないとは、室温下、1gのサンプルに対して10mLの非プロトン性溶媒を加えた際、目視観察において、サンプルが完全に溶解せず、溶け残りの存在を確認できることを意味する。
【0101】
非プロトン性溶媒としては、含フッ素非プロトン性溶媒が例示される。含フッ素非プロトン性溶媒としては、パーフルオロ芳香族化合物、パーフルオロトリアルキルアミン、パーフルオロアルカン、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロ環状エーテル、ハイドロフルオロエーテル等をあげることができる。また、少なくとも一つの塩素原子を含むオレフィン化合物も使用可能である。なかでも、ハイドロフルオロエーテル(HFE)が好ましい。
【0102】
非プロトン性溶媒に溶解しないフッ素樹脂Aとしては、FEP、PFA、PTFE、ETFE等が挙げられる。
【0103】
フッ素樹脂A及び/又は樹脂Bは、アミド基及びエステル基を含むことが好ましい。アミド基及びエステル基を含む樹脂は、例えば、オキサゾリン化合物と、カルボキシ基を含む樹脂とを反応させることで得られる。より詳細には、オキサゾリン化合物中のオキサゾリン基と、樹脂中のカルボキシ基とが反応することで、アミド基及びエステル基が形成される。
なお、アミド基及びエステル基の有無は、FT-IR測定によって確認することができる。
【0104】
本開示の組成物において、フッ素樹脂Aの含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは30体積%以上であり、また、好ましくは45体積%以下、より好ましくは40体積%以下、更に好ましくは35体積%以下である。
【0105】
本開示の組成物において、樹脂Bの含有量は、好ましくは55体積%以上、より好ましくは60体積%以上、更に好ましくは65体積%以上であり、また、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下、更に好ましくは70体積%以下である。
【0106】
本開示の組成物において、フッ素樹脂A及び樹脂Bの合計含有量は、好ましくは70体積%以上、より好ましくは80体積%以上、更に好ましくは90体積%以上である。上限は特に限定されず、100体積%であってもよい。
【0107】
本開示の組成物において、フッ素樹脂Aと樹脂Bとの体積比(フッ素樹脂A/樹脂B)は、好ましくは10/90以上、より好ましくは20/80以上、更に好ましくは30/70以上であり、また、好ましくは45/55以下、より好ましくは40/60以下、更に好ましくは30/70以下である。
【0108】
本開示の組成物は、さらに、添加剤を含んでもよい。
【0109】
添加剤としては、エポキシ化合物、アミン化合物、オキサゾリン化合物、酸無水物等を使用できる。なかでも、オキサゾリン化合物が好ましい。オキサゾリン化合物は、上記で説明したものを使用可能である。
【0110】
添加剤としては、フィラーも使用可能である。フィラーの具体例としては、シリカ(より具体的には結晶性シリカ、溶融シリカ、球状溶融シリカ等)、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、チタン酸カリウム、窒化アルミニウム、酸化インジウム、アルミナ、酸化アンチモン、酸化セリウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の無機化合物;モンモリロナイト、タルク、マイカ、ベーマイト、カオリン、スメクタイト、ゾノライト、バーキュライト、セリサイト等の鉱物;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ等の炭素化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物;ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラスバルーン等の各種ガラス等;が挙げられる。
【0111】
添加剤としては、上記で説明したもの以外に、架橋剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、発泡剤、発泡核剤、酸化防止剤、界面活性剤、光重合開始剤、摩耗防止剤、表面改質剤等、樹脂に使用される一般的な添加剤も使用可能である。
また、フッ素樹脂A及び樹脂B以外の樹脂を添加剤として使用してもよい。
【0112】
本開示の組成物において、添加剤の含有量は、好ましくは0.1体積%以上、より好ましくは1体積%以上、更に好ましくは3体積%以上であり、また、好ましくは15体積%以下、より好ましくは10体積%以下、更に好ましくは8体積%以下である。
【0113】
<本開示の成形体>
本開示の成形体は、本開示の組成物を含む。
【0114】
本開示の成形体は、本開示の組成物を成形することで得られる。成形方法としては特に限定されず、射出成形、ブロー成形、インフレーション成形、真空・圧空成形等、通常の方法を使用できる。
【0115】
本開示の成形体は、誘電材料、特に、低誘電基板材料(例えば、絶縁材料)として好適に用いられる。
なお、本明細書において、「低誘電基板材料」は、25℃、10GHzの比誘電率が5.0以下、かつ、25℃、10GHzの誘電正接が0.003以下である材料を意味し、25℃、10GHzの比誘電率が4.0以下、かつ25℃、10GHzの誘電正接が0.002以下である材料がより好ましく、25℃、10GHzの比誘電率が3.5以下、かつ25℃、10GHzの誘電正接が0.0012以下である材料が更に好ましい。
【0116】
本開示の成形体を誘電材料とする場合、その用途としては特に限定はない。例えば、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品;ICトレー、ウエハーキャリヤー等の半導体製造プロセス関連部品、VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品、ランプリフレクター、ランプホルダー等の照明器具部品、コンパクトディスク、スピーカー等の音響製品部品、光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品、分離爪、ヒータホルダー等の複写機関連部品、インペラー、ファン、歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品、自動車用機構部品、エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品、マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具、床材、壁材等の断熱、防音用材料や、梁、柱等の支持材料や、屋根材等の建築資材又は土木建築用材料、航空機、宇宙機、宇宙機器用部品、原子炉等の放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品等の広範な用途に使用可能である。
【0117】
<本開示の積層体>
本開示の積層体は、金属箔と、本開示の成形体とを含む。
【0118】
金属箔の金属としては、アルミニウム、鉄、銀、金、ルテニウム等が挙げられる。また、これらの合金も使用可能である。なかでも、銅が好ましい。銅としては、圧延銅、電解銅等を使用できる。
【0119】
本開示の積層体の厚みは、10μm~1000μmが好ましい。また、本開示の積層体において、本開示の成形体の厚みは、1μm~100μmが好ましい。
なお、本開示の積層体及び成形体は、厚みが略一定のシート状であることが好ましいが、厚みが異なる部分が存在する場合、長手方向に等間隔に10分割した地点の厚みを測定し、それらを平均したものとする。
【0120】
本開示の積層体は、上述の金属箔及び本開示の成形体以外に、他の層が積層されていてもよい。
【0121】
本開示の積層体は、回路基板、特に、プリント基板、積層回路基板(多層基板)、高周波回路基板として好適に用いられる。
【0122】
高周波回路基板は、高周波帯域でも動作させることが可能な回路基板である。高周波帯域とは、1GHz以上の帯域であってよく、3GHz以上の帯域であることが好ましく、5GHz以上の帯域であることがより好ましい。上限は特に限定されないが、100GHz以下の帯域であってもよい。
【0123】
<本開示の樹脂>
本開示の樹脂は、下記式で表される基(I)を有し、熱分解温度が330℃以上である。
【化6】
(式中、R
1及びR
2は、同一又は異なって、水素又は有機基であり、互いに結合して環構造を形成してもよい。実線及び破線で表される二重線は、単結合又は二重結合である。)
【0124】
本開示の樹脂は、新規な樹脂であり、他の樹脂との親和性に優れる。
【0125】
本開示の樹脂は、少なくとも、末端(特に主鎖の末端)に基(I)を有していることが好ましい。
【0126】
本開示の樹脂は、分岐構造を有していてもよい。本開示の樹脂が分岐構造を有する場合、基(I)は、主鎖及び側鎖の一方が有していてもよいし、両方が有していてもよいが、少なくとも、主鎖が有していていることが好ましい。
【0127】
基(I)は、本開示の組成物で説明したものと同様のもので、好ましい形態も同様である。
【0128】
本開示の樹脂は、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、例えば、本開示の組成物におけるフッ素樹脂A、樹脂Bと同様のものが挙げられる。
【0129】
本開示の樹脂は、結晶性樹脂であってもよいし、非晶性樹脂であってもよい。
【0130】
本開示の樹脂は、フッ素樹脂であることが好ましい。フッ素樹脂は、本開示の組成物におけるフッ素樹脂Aと同様のもので、好ましい形態も同様である。
【0131】
本開示の樹脂は、融点+12℃でのメルトフローレートが30g/10分以上であることも好ましい。このような樹脂は、本開示の組成物における樹脂Bと同様のもので、好ましい形態も同様である。
【0132】
本開示の樹脂の熱分解温度は、330℃以上であればよいが、好ましくは350℃以上、より好ましくは370℃以上であり、また、好ましくは520℃以下、より好ましくは500℃以下、更に好ましくは480℃以下である。
【0133】
なお、本開示の樹脂の熱分解温度は、本開示の樹脂がフッ素樹脂Aに該当する場合は上述のフッ素樹脂Aの熱分解温度と同様の方法で測定したものであり、本開示の樹脂が樹脂Bに該当する場合は樹脂Bの熱分解温度と同様の方法で測定したものある。
【0134】
本開示の樹脂は、液晶化温度(融点)及びガラス転移温度の少なくとも一方が150℃以上であることが好ましい。
本開示の樹脂の液晶化温度(融点)は、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、また、好ましくは450℃以下、より好ましくは400℃以下、更に好ましくは350℃以下である。
本開示の樹脂のガラス転移温度は、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上であり、また、好ましくは300℃以下、より好ましくは270℃以下、更に好ましくは240℃以下である。
【0135】
なお、本開示の樹脂の液晶化温度(融点)は、上述の液晶ポリマー等の融点と同様の方法で測定できる。
本開示の樹脂のガラス転移温度は、上述のポリエーテルイミド等のガラス転移温度と同様の方法で測定できる。
【0136】
本開示の樹脂は、重量平均分子量(Mw)が10000~500000であることが好ましく、数平均分子量(Mn)が5000~20000であることが好ましい。
Mw、Mnの測定方法は上記と同様である。
【0137】
本開示の樹脂は、非プロトン性溶媒に溶解しないものであることが好ましい。
「非プロトン性溶媒に溶解しない」の定義や、非プロトン性溶媒の種類は、本開示の組成物で説明したものと同様である。
【0138】
本開示の樹脂が非プロトン性溶媒に溶解しないフッ素樹脂である場合、372℃、荷重5kgにおける溶融粘度が5000~550000Poiseであることが好ましい。
溶融粘度は、フッ素樹脂AのMFRの数値から、換算式(531700/MFR(g/10min)=粘度(poise))を用いて算出される。
フッ素樹脂AのMFRは、測定温度372℃、荷重5kgとした点を除き、樹脂BのMFRと同様の方法で測定したものである。
【0139】
本開示の樹脂は、樹脂改質剤として用いることができる。例えば、樹脂の親和性向上剤として用いることができ、特に、フッ素樹脂と融点+12℃でのメルトフローレートが30g/10分以上である樹脂との親和性向上剤として好適である。
【0140】
本開示の樹脂を樹脂改質剤として用いる場合、通常、他の樹脂と混合し、組成物として使用される。本開示の樹脂改質剤の使用量は、他の樹脂との混合物100体積%中、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上、更に好ましくは5体積%以上であり、また、好ましくは45体積%以下、より好ましくは40体積%以下、更に好ましくは35体積%以下である。
【0141】
本開示の樹脂を樹脂改質剤として用いる場合、他の添加剤と併用してもよい。添加剤としては、例えば、フィラー等、本開示の組成物で説明したものを使用可能である。
【0142】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0143】
次に実施例を挙げて本開示を更に詳しく説明するが、本開示はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0144】
実施例で使用する材料は、以下のとおりである。
(フッ素樹脂A)
FEP(TFE単位/HFP単位(モル比)=88.0/12.0、融点:260℃、非プロトン性溶媒(HFE)への溶解性:なし、アミド基及びエステル基:なし)
PBO変性FEP(熱分解温度:430℃、非プロトン性溶媒(HFE)への溶解性:なし、アミド基及びエステル基:あり)
Pvozo変性FEP(熱分解温度:457℃、非プロトン性溶媒(HFE)への溶解性:なし、アミド基及びエステル基:あり)
PFA(TFE単位/PPVE単位(モル比)=97.2/2.8、融点:301℃、非プロトン性溶媒(HFE)への溶解性:なし、アミド基及びエステル基:なし)
Pvozo変性PFA(熱分解温度:473℃、非プロトン性溶媒(HFE)への溶解性:なし、アミド基及びエステル基:あり)
(樹脂B)
LCP(II型液晶ポリマー、MFR(融点+12℃):206.5g/10分、熱分解温度:513℃、液晶化温度(融点):313℃、アミド基及びエステル基:なし)
Pvozo変性LCP(II型液晶ポリマー、MFR(融点+12℃):206.5g/10分、熱分解温度:513℃、液晶化温度(融点):313℃、アミド基及びエステル基:あり)
【0145】
PBO変性FEPの作製手順
50ccサンプル瓶にPBO(1,3-フェニルビスオキサゾリン)を0.1g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を9.9gそれぞれ入れ、10min超音波攪拌した後、サンプル瓶にFEPを1g入れた。
次いで、サンプル瓶に攪拌子を入れ、オイルバスで100℃、24h反応させた後、サンプル瓶中のPGMEを排出した。
次いで、メタノール25gをサンプル瓶に入れてから、サンプル瓶を振ってFEPを洗浄した。その後、FEPが沈降するまでサンプル瓶を静置してから、上澄み液を排出した。この洗浄作業を5回行った。
その後、サンプル瓶に残った生成物を乾燥機で70℃、3h乾燥させることで、PBO変性FEPを作製した。
得られたPBO変性FEPをFT-IRで測定すると、1740cm-1付近にカルボニル由来のピーク、1680~1640cm-1付近にオキサゾリン環由来のC=Nのピーク及びアミドエステル由来のピークを確認した。この結果から、FEPの主鎖の末端にオキサゾリン基が存在することが確認できた。このオキサゾリン基はPBOに由来するものである。
【0146】
Pvozo変性FEPの作製手順
50ccサンプル瓶にPvozo(ポリ-2-ビニル-2-オキサゾリン、Mw:110,000、Mn:47,500)を0.1g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を9.9gそれぞれ入れ、2h超音波攪拌した後、FEPを1g入れた。
次いで、サンプル瓶に攪拌子を入れ、オイルバスで100℃、24h反応させた後、サンプル瓶中のPGMEを排出した。
次いで、メタノール25gをサンプル瓶に入れてから、サンプル瓶を振ってFEPを洗浄した。その後、FEPが沈降するまでサンプル瓶を静置してから、上澄み液を排出した。この洗浄作業を5回行った。
その後、サンプル瓶に残った生成物を乾燥機で70℃、3h乾燥させることで、Pvozo変性FEPを作製した。
得られたPvozo変性FEPをFT-IRで測定すると、1740cm-1付近にカルボニル由来のピーク、1680~1640cm-1付近にオキサゾリン環由来のC=Nのピーク及びアミドエステル由来のピークを確認した。この結果から、FEPの主鎖の末端にオキサゾリン基が存在することが確認できた。このオキサゾリン基はPvozoに由来するものである。
【0147】
Pvozo変性PFAの作製手順
50ccサンプル瓶にPvozo(ポリ-2-ビニル-2-オキサゾリン、Mw:110,000、Mn:47,500)を0.1g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を9.9gそれぞれ入れ、2h超音波攪拌した後、PFAを1g入れた。
次いで、サンプル瓶に攪拌子を入れ、オイルバスで100℃、24h反応させた後、サンプル瓶中のPGMEを排出した。
次いで、メタノール25gをサンプル瓶に入れてから、サンプル瓶を振ってPFAを洗浄した。その後、PFAが沈降するまでサンプル瓶を静置してから、上澄み液を排出した。この洗浄作業を5回行った。
その後、サンプル瓶に残った生成物を乾燥機で70℃、3h乾燥させることで、Pvozo変性PFAを作製した。
得られたPvozo変性PFAをFT-IRで測定すると、1740cm-1付近にカルボニル由来のピーク、1680~1640cm-1付近にオキサゾリン環由来のC=Nのピーク及びアミドエステル由来のピークを確認した。この結果から、PFAの主鎖の末端にオキサゾリン基が存在することが確認できた。このオキサゾリン基はPvozoに由来するものである。
【0148】
Pvozo変性LCPの作製手順
50ccサンプル瓶にPvozo(ポリ-2-ビニル-2-オキサゾリン、Mw:110,000、Mn:47,500)を0.1g、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を9.9gそれぞれ入れ、2h超音波攪拌した後、LCPを1g入れた。
次いで、サンプル瓶に攪拌子を入れ、オイルバスで100℃、24h反応させた後、サンプル瓶中のPGMEを排出した。
次いで、メタノール25gをサンプル瓶に入れてから、サンプル瓶を振ってLCPを洗浄した。その後、LCPが沈降するまでサンプル瓶を静置してから、上澄み液を排出した。この洗浄作業を5回行った。
その後、サンプル瓶に残った生成物を乾燥機で70℃、3h乾燥させることで、Pvozo変性LCPを作製した。
得られたPvozo変性LCPをFT-IRで測定すると、1740cm-1付近にカルボニル由来のピーク、1680~1640cm-1付近にオキサゾリン環由来のC=Nのピーク及びアミドエステル由来のピークを確認した。この結果から、LCPの主鎖の末端にオキサゾリン基が存在することが確認できた。このオキサゾリン基はPvozoに由来するものである。
【0149】
実施例、比較例
循環式二軸押出機(Xplore MC15HT:Xplore Instruments社製)を用いて、表1の条件で、樹脂B(LCP)13.72gとフッ素樹脂A(FEP)9.03gとの混練を検討した。材料は事前にドライブレンドしてからホッパーから投入し、320℃、5min、500rpmの条件で混練した。混練後、サンプルをストランドとして採取した。
得られたストランドの断面をレーザー顕微鏡で観察し、混練後のモルフォロジー(樹脂の分散状態)を評価した。いずれも樹脂Bが海、フッ素樹脂Aが島の海島構造を形成したが、比較例よりも実施例の方が島(フッ素樹脂A)の分散粒子径が小さく、分散状態が良好であること、そして、ストランドの外観も良好であることが確認できた。また、実施例3の結果から、Pvozo変性FEPが樹脂改質剤としての効果を発揮していることが確認できた。
なお、ストランドの外観の評価基準は以下のとおりである。
A:ストランド表面にざらつきや凝集がみられない
B:ストランド表面にざらつきや凝集がみられる
【0150】