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特開2024-53139地盤注入材および地盤注入材を用いた地盤注入工法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053139
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】地盤注入材および地盤注入材を用いた地盤注入工法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
E02D3/12 101
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159194
(22)【出願日】2022-10-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-12-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)ウェブサイトの掲載日:令和4年6月30日 ウェブサイトのアドレス:https://www.jiban.or.jp/?page_id=1094 https://confit.atlas.jp/jgs57 (2)ウェブサイトの掲載日:令和4年7月7日 ウェブサイトのアドレス:http://www.kyokado-eng.com http://www.kyokado-eng.com/pdf/20220707_teitanso.pdf (3)ウェブサイトの掲載日:令和4年7月7日 ウェブサイトのアドレス:https://www.satokogyo.co.jp/news/detail.php?id=284 (4)ウェブサイトの掲載日:令和4年8月1日 ウェブサイトのアドレス:https://zenkokutaikai.jsce.or.jp/2022/ (5)発行日:令和4年7月7日 刊行物:建設通信新聞 令和4年7月7日付,第3面 (6)発行日:令和4年7月7日 刊行物:日刊建設工業新聞 令和4年7月7日付,第3面 (7)発行日:令和4年7月25日 (7)発行日:令和4年7月25日 刊行物:月刊建設人 2022年8月号 第26頁
(71)【出願人】
【識別番号】000162652
【氏名又は名称】強化土エンジニヤリング株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】592254526
【氏名又は名称】学校法人五島育英会
(71)【出願人】
【識別番号】000172813
【氏名又は名称】佐藤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】島田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆光
(72)【発明者】
【氏名】末政 直晃
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和也
(72)【発明者】
【氏名】永尾 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田代 怜
【テーマコード(参考)】
2D040
【Fターム(参考)】
2D040AA01
2D040AB01
2D040CA01
2D040CA03
2D040CA04
2D040CA05
2D040CA10
2D040CB03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】セメントや石灰や水ガラス等のアルカリ剤を用いなくても、産業副生品を用いて十分液状化対策に要求される強度や浸透固結性を得ることができる経済的で環境にすぐれた懸濁型の地盤固結材を提供する。
【解決手段】本発明の地盤注入材は、地盤内に注入することで地盤の密度を増大させる地盤注入材であり、高炉スラグを主剤とし、これに反応剤として石膏または酸化マグネシウム、あるいはその両者を有効成分として加え、必要に応じてさらにアルカリ剤として水ガラス、セメントおよび苛性ソーダを加えてなる。また、本発明の地盤注入工法は、この地盤注入材を地盤内に注入することで、地盤の密度を増大させる工法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤内に微粒子を注入して密度を増大させる地盤注入工法に用いる地盤注入材であって、高炉スラグを主剤とし、これに反応剤として石膏または酸化マグネシウムあるいは両方を有効成分として加えてなり、該地盤注入材のpHが8~12となるようにしたことを特徴とする地盤注入材。
【請求項2】
地盤内に微粒子を注入して密度を増大させる地盤注入工法に用いる地盤注入材であって、高炉スラグを主剤とし、これに反応剤として石膏または酸化マグネシウムあるいは両方を有効成分として加え、さらにアルカリ剤として水ガラス、セメントおよび苛性ソーダを加えてなることを特徴とする地盤注入材。
【請求項3】
請求項1または2記載の地盤注入材において、さらにゲルタイム調整剤、強度補強材、分散剤、気泡剤、高分子剤、潤滑剤のいずれかまたは複数を加えてなることを特徴とする地盤注入材。
【請求項4】
請求項1または2記載の地盤注入材において、前記高炉スラグは4000~20000cm/gのブレーン値を有する高炉スラグ微粉末であることを特徴とする地盤注入材。
【請求項5】
請求項1または2記載の地盤注入材において、さらにフライアッシュ、珪華、珪藻土、火山灰、粘土、ポゾランのいずれかまたは複数を含むことを特徴とする地盤注入材。
【請求項6】
請求項1または2記載の地盤注入材において、前記高炉スラグをさらに粉砕して超微細粒子化してなることを特徴とする地盤注入材。
【請求項7】
請求項1または2記載の地盤注入材を地盤内に注入することにより、地盤の密度を増大させることを特徴とする地盤注入工法。
【請求項8】
請求項7記載の地盤注入工法において、前記地盤注入材を複数回繰り返して地盤内に注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項9】
請求項7記載の地盤注入工法において、前記地盤注入材を土粒子間浸透可能な注入速度で所定の改良効果が得られるように充填することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項10】
請求項7記載の地盤注入工法において、該地盤注入材を地盤の液状化対策に用いることを特徴とする地盤注入工法。
【請求項11】
請求項1または2記載の地盤注入材を地盤内に注入することにより、地盤を固結させることを特徴とする地盤注入工法。
【請求項12】
請求項11記載の地盤注入工法において、前記地盤注入材を複数回繰り返して地盤内に注入することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項13】
請求項11記載の地盤注入工法において、前記地盤注入材を土粒子間浸透可能な注入速度で所定の改良効果が得られるように充填することを特徴とする地盤注入工法。
【請求項14】
請求項11記載の地盤注入工法において、該地盤注入材を地盤の液状化対策に用いることを特徴とする地盤注入工法。
【請求項15】
請求項1または2記載の地盤注入材を地盤内に高圧噴射により注入して地盤改良することを特徴とする地盤改良工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は地盤中に微粒子スラグを注入して該地盤の密度を増大する地盤改良工法にかかり、非セメント系微粒子注入材を用いた低炭素型地盤改良技術に関するものである。
【0002】
本地盤注入材の主材となる高炉スラグの生産時のCO2排出量はセメントに比べ、10分の1程度であり、セメントを使用した懸濁型の注入材に比べ、CO2削減効果が期待できる。また、本発明は産業副成品を素材として用いることにより、特に液状化対策工を経済的に行うことができ、環境負荷を低減した地盤改良工法である。
【背景技術】
【0003】
液状化対策には、砂や礫などを地盤に圧入することにより密度を増大させる締固め工法や、セメントの混合や薬液を注入することにより粘着力を増加させる固化工法などがある。
【0004】
締固め工法に用いる施工機械は大きいため、狭隘な場所における施工が困難であることや、浅層部の改良における隆起、振動・騒音などの問題がある。
【0005】
一方、セメントを混合することにより固化する工法においては既設構造物直下・近傍での施工が行えないことや、改良後の地盤や施工近傍の地下水が高アルカリ性となるなどの問題点がある。
【0006】
また、薬液注入工法より耐久性が求められる地盤改良においては、溶液型注入材では活性シリカコロイドを主剤とする注入を使用するために工事費が高くなる。一方、懸濁型の地盤固結材としては、セメントを用いた注入工法が用いられてきた。
【0007】
これらの問題点を解決する方法として、微粒子を地盤の間隙に注入し、密度を増大させる工法が近年開発された。さらに近年、地球温暖化の問題から生産時のCO2排出量の多いセメントに代わる高炉スラグの有効利用が社会的に求められている。
【0008】
地盤中に注入して該地盤を固結する懸濁型の地盤固結材として、例えば、モル比が小さく、アルカリ度の高い水ガラスを用いたスラグ系ガラスグラウトが知られている。このグラウトは大きな固結強度がえられるという特徴がある。
【0009】
また、水ガラスと酸を混合して得られる酸性シリカゾルと、セメントや消石灰を含有してなるグラウトも知られている。このグラウトはゲル化時間が短く、かつフロック状の沈澱を生じやすいため、浸透性に劣るものである。
【0010】
さらに、前記酸性シリカゾルと、スラグとを含有してなるグラウトも知られている。この場合、スラグは酸性シリカゾルに対して中和剤として作用してゲル化時間を促進するが、強度的にはほとんど寄与しない。
【0011】
さらにまた、水ガラス中のアルカリの大部分をイオン交換樹脂を用いて除去して得られたシリカゾル(以下中性シリカゾルと記す)と、スラグとを含有してなるシリカゾルも考えられる。この場合、スラグは中性シリカゾルに対して反応性をほとんど示さず、強度発現も起こさない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平08-253765号公報
【特許文献2】特開平08-183956号公報
【特許文献3】特許第5598886号公報
【特許文献4】特許第3437084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したように、高炉スラグにセメントや石灰や水ガラスや苛性アルカリ等のアルカリ剤を加えて高炉スラグの潜在水硬性を刺激して高強度の固結体を得る地盤固結材は知られている。
【0014】
そこで、本発明の目的は、高炉スラグを用いて密度を増大させるとともに、セメントや石灰や水ガラス等のアルカリ剤を用いなくても、産業副生品を用いて十分液状化対策に要求される強度や浸透固結性を得ることができる経済的で環境にすぐれた懸濁型の地盤固結材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ブレーン比表面積の値(以下、「ブレーン値」という)が4000cm2/g以上の高炉スラグと、石膏を主要材料として中性に近いpH領域で液状化対策工に必要な強度を得ることを見出した。さらにMgO含有化合物を用いて比較的低アルカリで強度増加が可能になる。上記高炉スラグとして産業副生品である高炉スラグを石膏として廃膏を主剤と用いることができる。さらに、上述の組成にゲル化調整剤、強度増強剤を含むことによって、液状化対策工の他に高強度を要求される多くの地盤改良工法に適用することができる地盤注入材とその地盤改良工法である。
【0016】
具体的には、本発明の地盤注入材は、地盤内に微粒子を注入して密度を増大させる地盤注入工法に用いる地盤注入材であって、高炉スラグを主剤とし、これに反応剤として石膏または酸化マグネシウムあるいは両方を有効成分として加えてなり、該地盤注入材のpHが8~12となるようにしたことを特徴とする。
【0017】
また、他の形態として、高炉スラグを主剤とし、これに反応剤として石膏または酸化マグネシウムあるいは両方を有効成分として加え、さらにアルカリ剤として水ガラス、セメントおよび苛性ソーダを加えてなることを特徴とする。
【0018】
これらの地盤注入材において、さらにゲルタイム調整剤、強度補強材、分散剤、気泡剤、高分子剤、潤滑剤のいずれかまたは複数を加えることができる。
【0019】
また、これらの地盤注入材において、高炉スラグは4000~20000cm/gのブレーン値を有する高炉スラグ微粉末を用いることができる。
【0020】
また、これらの地盤注入材において、さらにフライアッシュ、珪華、珪藻土、火山灰、粘土、ポゾランのいずれかまたは複数を加えることもできる。
【0021】
また、これらの地盤注入材において、高炉スラグをさらに粉砕して超微細粒子化したものを用いることもできる。
【0022】
本発明の地盤注入工法は、上述の地盤注入材を地盤内に注入することにより、地盤の密度を増大させることを特徴とするものである。
【0023】
また、他の形態として、これらの地盤注入材を地盤内に注入することにより、地盤を固結させることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の地盤注入工法において、地盤注入材を複数回繰り返して地盤内に注入するようにしてもよい。
【0025】
また、地盤注入材を土粒子間浸透可能な注入速度で所定の改良効果が得られるように充填することができる。
【0026】
また、本発明の地盤注入工法において、地盤注入材を地盤の液状化対策に用いることもできる。
【0027】
さらに、他の形態として、これらの地盤注入材を地盤内に高圧噴射により注入して地盤改良することを特徴とする。
【0028】
本発明に関しては、ジオポリマーやドロマイトの固化原理に着目し、産業副産物の一種である高炉スラグ微粉末と廃石膏ボードの再利用が進むことから半水石膏を微粒子として選定し、それらを混合させた配合の固化可能性を探ることで、一液状化抑止必要な改良強度を満たすか確認した。これらの結果から以下の知見が得られた。
【0029】
1) 混合法を用いた一軸圧縮試験より、高炉スラグ微粉末:半水石膏:酸化マグネシウムを1:9:1から5:5:1で混合させることで液状化対策に求められる改良体の一軸圧縮強さを満たした。また水粉体比P/W=0.10における一年間の長期養生を行った結果、CaSO4:BS:MgO=1:9:1配合は、養生84日目以降から強度はほぼ一定で300kN/m2から450kN/m2の強度を有することが確認された。
【0030】
2) 本研究で得られたCaSO4:BS:MgO配合について固化メカニズムを考察したところ、高炉スラグ微粉末の潜在水硬性やドロマイト化作用、石膏の硫酸塩によってドロマイトに近しい状態となり、固化すると考えられる。
【0031】
3) 濃度別に注入を行った結果、強度は濃度と共に二次関数的に増加する。しかし高濃度では、早い段階で目詰まりする可能性が高くなり改良効果は下がる恐れがある。一方、低濃度は目詰まりしづらいが、注入材内の微粒子量が改良範囲に対して不足すると、未浸透部が存在してしまう可能性がある。ただし、低濃度を追加で注入することで未浸透部まで浸透が可能となる。
【0032】
4) 砂間隙を十分に満たせなくとも、注入材が固化することで強度を確保することができることから、目詰まりを生じさせなければ、注入濃度が増加するのに伴い、改良強度も増加することが確認された。
【0033】
5) 注入流量においてが低速の場合、砂間隙に注入材が留まることから目詰まりを起こし、高速の場合、砂間隙に微粒子が留まらないことから目詰まりが発生しづらい。
6) グラウタビリティー比の算出結果と同様に試料砂と微粒子の粒径が浸透性に影響を与えることを再確認された。
【0034】
7) 本配合における理想の注入条件は、間隙に対し一定の改良強度を確保できる注入材濃度を、割裂を起こさない流量で注入することである。これにより広範囲に浸透し、時間経過と共に注入材が固化することで十分な強度を持つ改良体が得られる。
【0035】
本発明において使用するスラグや石膏の超微細化石膏は、市販の高炉スラグ微粉末あるいは超微粉末を用いたり、例えば、特許文献3に記載されているように細粒子を微細粒子化するための循環式微細化粒子製造装置などを用いて製造することができる。
【0036】
また分散剤については、一般に用いられているセメント分散剤であるメラミンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、ポリカルボン酸、グルコン酸系分散剤等をあげることができる。
【0037】
また高分子剤としては本出願人の先願発明(特許文献4)記載のカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエステチルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸+トリウム等を上げることができる。
【発明の効果】
【0038】
主材となる高炉スラグの生産時のCO2排出量は、セメントに比べ10分の1程度であり、セメントを使用した懸濁型注入材に比べ施工時のCO2削減効果が期待できる。
【0039】
改良地盤は、室内試験では一軸圧縮強さで300kN/m2以上を有することが確認され、液状化対策として十分な効果が期待できる。
【0040】
また、材料を粉砕して超微粒子化することにより、材料が低粘性となって凝集しにくくなり、粒子径の大きな材料よりも浸透性能が向上する。
【0041】
従来の薬液注入工法のコンパクトな注入機構をそのまま適用することができ、狭隘な場所でも施工可能である。
【0042】
生産性の向上にも期待ができるほか、これまで環境的な理由や経済的に厳しいなどの理由で地盤改良の適用が難しかった箇所にも適用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明にかかる地盤注入工法としての微粒子注入工法の概要を示す説明図である。
図2】固化判定及びpH測定方法を示す説明図である。
図3】混合法による供試体作製方法を示す説明図である。
図4】各配合のpH変化及び固化結果を示すグラフである。
図5】CaSO:BSIII:MgO配合の注入材による養生日数と一軸圧縮強さとの関係を示すグラフである。
図6】各配合の注入材による養生日数と一軸圧縮強さとの関係を示すグラフである。
図7】供試体の状況(左:1-9、中央:3-1、右:3-5)を示す写真である。
図8】CaSO:BS:MgO=1:9:1配合の注入材による長期養生結果を示すグラフである。
図9】注入材濃度と一軸圧縮強さの関係を示すグラフである。
図10】CaSO:BS:MgO配合の固化メカニズムを示す説明図である。
図11】一次元注入実験の実験概要を示す説明図である。
図12】試料砂と微粒子の粒径を示すグラフである。
図13】注入材の濃度が注入水圧に及ぼす影響を示すグラフである。
図14】注入材の濃度が排液量(注入量)に及ぼす影響を示すグラフである。
図15】注入材の濃度が重量変化量に及ぼす影響を示すグラフである。
図16】注入材の濃度が間隙密度に及ぼす影響を示すグラフである。
図17】注入材の濃度が応力ひずみ関係に及ぼす影響を示すグラフである。
図18】注入流量が注入水圧に及ぼす影響を示すグラフである。
図19】注入流量が排液量(注入量)に及ぼす影響を示すグラフである。
図20】注入流量が重量変化量に及ぼす影響を示すグラフである。
図21】注入流量が間隙密度に及ぼす影響を示すグラフである。
図22】注入流量が応力ひずみ関係に及ぼす影響を示すグラフである。
図23】地盤の粒径が注入水圧に与える影響を示すグラフである。
図24】地盤の粒径が排液量(注入量)に与える影響を示すグラフである。
図25】地盤の粒径が重量変化量に与える影響を示すグラフである。
図26】地盤の粒径が間隙密度に与える影響を示すグラフである。
図27】注入後供試体の状況(左:珪砂6号、右:珪砂7号)を示す写真である。
図28】長尺一次元注入実験装置の概要を示す説明図である。
図29】浸透距離が注入水圧に及ぼす影響を示すグラフである。
図30】浸透距離が排液量に及ぼす影響を示すグラフである。
図31】浸透距離が重量変化量に及ぼす影響を示すグラフである。
図32】浸透距離が間隙密度に及ぼす影響を示すグラフである。
図33】浸透距離が一軸圧縮強さに及ぼす影響を示すグラフである。
図34】浸透距離が推定濃度に及ぼす影響を示すグラフである。
図35】有効応力経路に関する平均有効主応力と軸差応力との関係を示すグラフである。
図36】液状化強度曲線としての繰返し回数とせん断応力比の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を具体的に詳述する。本発明は上述のとおり、例えばブレーン値が4000cm2/g以上の高炉スラグ、石膏、並びに低アルカリ刺激剤として酸化マグネシウムからなる、地盤固結材に関するものである。また上記高炉スラグは更に微細化することにより非セメント系超微粒子注入工法とすることもできる。
【0045】
従来高炉スラグは高いアルカリ剤を加えることにより高強度の固結性が得られないと思われてきた。高炉スラグにセメント、消石灰、水ガラス、苛性アルカリ等の高炉スラグの潜在水硬性を発現するのに必要なアルカリ剤を加えた固結物は通常pHが13~14を呈するため注入地盤は高アルカリ性になる。また高炉スラグの使用量が多くないと固結性が得られないと思われてきた。
【0046】
しかし、本発明では高炉スラグにほとんど中性付近の石膏を加えることによって液状化対策として必要な一軸圧縮強度80kN/m2が得られることを見出した。石膏はほぼ中性値であるため、その固結物はほぼ中性値であり、アルカリは溶出しない。
【0047】
石膏の存在のもとに低アルカリ刺激剤を用いることにより、少量のアルカリ又は酸化マグネシウムのようにアルカリの少ないアルカリ剤と併用して緩やかにアルカリが上昇して高炉スラグの固結強度が増大する。その場合のpH値は殆ど12以下であるとともに地下水へのアルカリの溶出は少なく環境性にすぐれている。
【0048】
また、高炉スラグのアルカリによる強度発現は重合結合までの時間を要するため注入による地盤への浸透過程において、地下水に希釈等による固結性が低減するが、液状化対策に十分な強度を得るスラグ使用量は低く設定できるため、浸透性を確保することが可能になった。
【0049】
また、注入初期の段階で石膏による安定した固化が得られるため、地下水面下の注入、或いは高圧噴射注入において、重合結合が生ずるまでの期間、地下水や高圧噴射の影響を受けることなく、さらに同じ理由で高炉スラグのブレーン値が4000~8000cm2/gでの固結範囲が拡がった安定した固結体を形成することができる。
【0050】
また、スラグ使用量が少ないことは粒子である高炉スラグの浸透性を改善し、広範囲の浸透を可能にし、経済的な液状化対策を可能にすることが判った。
【0051】
また、再掘削を必要とする工事に使用されるセメントグラウト等の微粒子注入材の強度が大きくなりすぎ掘削しにくいという欠点を改良し、高炉スラグの使用濃度を調整して自由に強度、ゲル化時間が調整でき、早期に地盤改良効果を得ることができる。
【0052】
上記の注入材の構成成分である高炉スラグの含有量は約9~90%、石膏の含有量は約0~90%、酸化マグネシウムの含有量は0~10であることが好ましい。高炉スラグが40%未満では得られるグラウト材の粘性が上昇し、90%以上になると初期ないし中期の強度発現が悪い。
【0053】
石膏(無水石膏)単体を刺激剤とする配合において、石膏が40%以下では初期強度増進効果が小さく、10%以下になると地盤の強度低下をまねくおそれがある。これらの成分からなる高炉スラグのブレーン値を6000cm2/g以上に微粉化することが浸透性の向上をもたらす上で必要である。
【0054】
上記配合には水ガラスや中性シリカゾルや粘土やポゾランを加え、ゲルタイム調整や強度増加やブリージングの低減に用いることもできる。
【0055】
ここで、上記のゲルタイムを調整するための中性シリカゾルの混合割合は全配合中において中性シリカゾルからくるSiO2量が1.5~9%程度が適当である。
【0056】
上述中性シリカゾルはこれを混合することによって、配合液のブリージングが非常に少くなり、石膏の初期強度増進効果を助長し、ブレーン値の大きな微粒子の再凝集が起こりにくく、分散性の悪化防止に著しく役立つ。微粒子スラグは、ブレーン値を大きくすればする程、浸透性は著しく向上する。このように高炉スラグの微粉化および石膏と中性シリカゾルとの間では相乗効果的に作用しあうことがわかった。
【0057】
本発明はさらにフライアッシュ、石灰石、高炉スラグ、珪石、粘土等を粉砕分級した単品またはそれらの混合物よりなり、ブレーン値が8000cm2/g以上のものが好ましい。
【0058】
上記のグラウトに加える中性シリカゾル以外のゲル化調整剤としては、アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩、セスキ炭酸塩等が挙げられる。これらのゲル化調整剤は固結強度の低下を招くことなく、粘性にほとんど影響を及ぼさずにゲル化時間を遅延せしめる効果があるので、浸透性の向上に著しい効果がある。
【0059】
アルカリ金属の炭酸水素塩、炭酸塩、セスキ炭酸塩等のゲル化調整剤の配合量は全配合中0.2~2.2%が好ましく、これが0.2%以下ではゲル化時間の遅延はほとんどみられず、また2.2%以上添加してもそれ以上のゲル化時間の遅延はほとんどみられず、徐々に固結強度低下の傾向を示すようになる。
【0060】
廃石膏ボードの再利用が進むことから半水石膏を微粒子として選定した。液状化対策工法として、これらの微粒子を用いた新たな注入材を検討するために、固化可能性や強度特性、浸透性を把握することを目的として以下の実験を行った。
【0061】
[微粒子の選定]
本発明では、ジオポリマーとドロマイトの固化原理に着目した。ジオポリマーとはセメントの代わりに水とアルカリシリカ溶液(活性シリカとアルカリ源)、活性フィラー(アルカリに活性のある成分を含む非晶質粉体)を用いるものである。活性フィラーから溶出した金属イオンがアルカリシリカ溶液と接すると,珪酸錯体を架橋しポリマー化するため、固化すると言われている。また、本発明に用いるMgO含有化合物は一般にドロマイトと呼ばれる。ドロマイトは、石灰石(CaCO3)とマグネサイト(MgCO3)の中間の自然鉱石で、石灰石に含まれるカルシウムの一部が海水中でマグネシウムに置き換わった生成物(CaMg(CO3)2)である。
【0062】
本実験で使用した微粒子、酸化マグネシウム(以下MgOと記す)、また産業副産物として石膏が添加されたA社製高炉スラグ微粉末(以下BSIと記す)と石膏が添加されていないA社製高炉スラグ微粉末(以下BSIIと記す)、石膏が添加されていないB社製高炉スラグ微粉末(以下BSIIIと記す)からなる3種類の高炉スラグ微粉末を用いた。他に単体の石膏には建築・土木用の半水石膏(以下CaSO4と記す)を用いた。
【0063】
[実験概要]
複数の種類の微粒子を混合した配合試料の固化可能性を探るため、表1に示す配合条件にて固化実験を行った。ここで配合比とは用いた微粒子の質量比である。またP/Wとは水粉体比であり、複数の種類の微粒子の総量に対する用いた水量の比で表される。
【0064】
Case1の配合では石膏の自硬性と高炉スラグ微粉末の潜在水硬性に期待して、CaSO4とBSIIを用いた。Case2およびCase3の配合では、ドロマイトプラスターがマグネシウムやカルシウムによって構成されていることから、BSI、BSII、BSIII、のそれぞれにMgOあるいはCaSO4を加えた配合とした。
【0065】
簡易的な固化判定およびpH測定方法を図2に示す。実験では、まず微粒子と水道水を計量し、これらをビーカー内で薬さじを用いて十分に攪拌混合した、攪拌後、ビーカーの開口部をPP製フィルムで被覆し、室温(25±3)℃で静置、混合後1、3、7日後に固化判定を行った。
【0066】
判定方法は、ビーカーを傾けることによる目視での判断と、直径3mmの金属棒を手で貫入・攪拌した際の抵抗の有無による方法である。固化した場合を○、固化したが抵抗が小さい場合を△、未固化を×と記した。また、コンパクトpHメータ(LAQUAtwin(商標登録第5555887号)、株式会社堀場製作所製)により固化過程におけるpH変化を確認した。これら一連の固化実験の結果より、十分に固化した配合に対してサンドゲルを作製して、その一軸圧縮試験を実施した。
【0067】
注入材と砂を混合させた供試体(以下、サンドゲルと記す)を作製するために用いた混合法による供試体作製方法を図3に示す。モールドには内径50mm、高さ100mmのプラスチック製のものを使用し、脱型を容易にするため側面にグリースを塗布し、供試体の下端にOHPシートを敷いた。
【0068】
作製手順として、モールド内に注入材を注ぎ、珪砂6号を液中落下させた。供試体作製過程では密度を管理するため、供試体の上方に常に湛水部ができるように砂と注入材を投入しながら、側面を叩くことで高さを調整した。投入完了後、供試体上端に有孔板を設置し、供試体上端部を水平に均すとともに、上部に溜まった注入材を取り除いた。その後、計測した供試体高さから供試体の相対密度Drが(60±3)%の範囲にあることを確認した。同様の供試体を各配合2本ずつ作製した。
【0069】
【表1】
【0070】
供試体は次のように養生された。モールドの開口部をPP製フィルムで被覆し、プラスチック製の密閉容器内の底に十分に湿らした紙ワイパー(タオルタイプ)を敷き詰め、その上にモールドを並べた。並べたモールドの上に湿らせた紙ワイパーを被せ、乾燥しないように定期的に霧吹き等で湿らせた。モールドが入った密閉容器を空調25℃に保った室内で静置した。養生3、7、28、56、84日目にプラスチックモールドから脱型し、成型後に一軸圧縮試験を行った。
【0071】
微粒子混合供試体と比較するため、注入材単体からなる供試体の強度についても調べた。その供試体(以下、ホモゲルと記す)は、水粉体比P/W=0.80で練った注入材単体をプラスチックモールドに注ぐことで作製された。養生から一軸圧縮試験までの過程はサンドゲルと同様である。ただし、これらについては養生1、2、3、4、5、6、7日目に一軸圧縮試験を行った。
【0072】
[実験結果]
図4に各配合のpH変化と固化判定の結果を示す。CaSO4:BSII配合(以下、Case1配合と記す)ではCaSO4が多くなるほど固化発現が早く、固化抵抗は大きくなった。混合スラリーのpHは6から10程度であった。ただし、この配合では固化抵抗が相対的に低いことから、自硬性のある石膏のみによる固化が発現している可能性が考えられる。
【0073】
次にBSII:MgO配合(以下、Case2配合と記す)ではCaSO4の添加の有無に関係なく作製直後は固化発現しないものの、3日目において固化抵抗は大きくなった。pHはMgOがアルカリ材として働くため、初期pHは10程度であったが、その後CaSO4が添加されていない場合にはpHの変化はなく、CaSO4が添加されている場合にはpHが12近くまで上昇することが確認された。
【0074】
CaSO4:BSII:MgO配合(以下、Case3配合と記す)ではCase1配合と異なり、CaSO4が多く、BSが少なくなるほど固化抵抗は小さくなる傾向を示した。pHは石膏が添加されたCase2-2と同様にMgOがアルカリ材として働き、初期pHは10程度であったが、CaSO4が添加されることでpHが12近くまで上昇することが確認された。
【0075】
これよりMgOを配合しない中性注入材の場合には、Case1配合のような石膏の自硬性に期待した石膏が主材となる配合が良く、アルカリ性注入材の場合には、BSの潜在水硬性に期待して、BSが主材であり、かつ少量の石膏が添加されることでアルカリ材を補助する配合が良いと考えられる。
【0076】
(水色マーカー部分要確認)
図5にCaSO4:BSIII:MgO配合のホモゲルの一軸圧縮強さ(注入材強度)を示す。養生日数に伴い徐々に一軸圧縮強さが増加していく中で、養生3日目から急激に強度が増加することが確認された。この傾向は表1の金属棒による固化判定結果と同様であった。
【0077】
図7にサンドゲルの状況を示す。Case1-9供試体では注入材と砂を交互に落下させて供試体を作製したため、層毎に固化してしまい供試体全体が改良されず自立しなかった。Case1-9は他の配合より石膏を多く含む配合であり、固化実験では注入材作製直後である0日目から若干の固化が確認されていた。供試体作製中から注入材の固化が他配合と比べ早く進んだため層毎となったと考えられる。
【0078】
Case3-1供試体は全体が青色に変化した一方、Case3-5供試体は発色が確認されなかった。青色に変化するのはBSによる影響が考えられる。これは高炉セメントコンクリートにおいても同様の現象が確認されていて、高炉スラグに含まれる硫化物(HSやS2)が重合反応した際に電子を受けとること(還元反応)により反応領域が還元性になることでFeやMnの酸化数が少ない状態で他の重合物に固溶し、硫化鉄(I)が還元され水酸化鉄(II)になることで発色が起こる。
【0079】
よって酸化数が減ることで還元されて青く発色が起こるが、重合反応を伴っていることから高炉セメントコンクリートと同様に強度や耐久性に影響はないとされる。BSが多いCase3-1供試体ほど色が濃いことから重合反応が生じており、BSとCaSO4が同量のCase3-5供試体は重合反応があまり生じていないと考えられる。
【0080】
図6にCase2配合およびCase3配合のサンドゲルの一軸圧縮強さを示す。石膏が最も少なくBSが最も多いCase3-1配合で高強度を示し、石膏が多くBSが少なくなるほど強度は小さくなる傾向が確認された。
【0081】
特にCase3-1からCass3-4は液状化対策に求められる改良体の一軸圧縮強さの下限値である80kN/m2を7日目にて満たすことが確認された。石膏量がBS量と等しいもしくは多い配合であるCase3-5からCase3-9では、養生7日目以降からの強度の増加傾向が乏しく、養生28日目以降の強度変化は見られないまたは低下する結果となった。よって微粒子として半水石膏や高炉スラグ微粉末、酸化マグネシウムを用いた場合、高炉スラグ微粉末を母材とし、少量の半水石膏と酸化マグネシウムを用いた配合が液状化対策に用いる場合における適した配合となると言える。
【0082】
Case3-1が高強度であることから、使用したBSの平均粒径D50に着目して、BSII(D50=18μm)より粒径が小さいBSIII(D50=6μm)を用いた同配合Case3-10について検討を行い、長期養生における一軸圧縮強さについて調べた。図8にその長期養生結果を示す。
【0083】
粒径が小さくなるほど微粒子の比表面積は大きくなり化学反応を促進することから、Case3-1よりCase3-10のほうが強度は増加すると考えられたが、明確な強度差は確認されなかった。Case3-10に着目すると養生7、14日目において強度は急激に増加し、養生56日目にかけて徐々に強度増加した。強度が一度下がることもあるが、これは供試体作製における誤差であると考えられる。
【0084】
養生84日目以降も徐々に強度は増加し、養生364日(養生1年目)時点では364kN/m2となり、上昇幅は養生84日目前と比べ小さくなった。このことから水粉体比P/W=0.10におけるCaSO4:BS:MgO=1:9:1配合では、養生84日目以降強度はほぼ一定であり、300kN/m2から400kN/m2の強度を有することが示された。
【0085】
次にCase3-10配合において水粉体比を変化させた場合について検討した。養生日数別における注入材濃度とサンドゲルの一軸圧縮強さの関係を図9に示す。
【0086】
水粉体比0.07、0.10、0.15、0.30、0.60、0.80の供試体を混合法にてサンドゲルを作製し、養生3、7、28、58日目において一軸圧縮試験を行った。どの濃度においても液状化対策に求められる改良体の一軸圧縮強さの下限値である80kN/m2を7日目以降に満たすことが確認された。濃度に関しては、P/W=0.07では養生28日以降強度の増加は見られず、P/W=0.10では養生28日以降においても微小であるが強度の増加が確認された。
【0087】
P/W=0.15、P/W=0.30、P/W=0.80においてもP/W=0.10と同様に強度の増加が見られた。P/W=0.60では養生58日目における強度の増加は見られなかったが、これは供試体作製による誤差であると考えられる。濃度が高くなるほど強度が増加し、特に濃度が高く養生日数が経過するほど強度が増加する傾向が確認された。
【0088】
図10にCaSO4:BS:MgO=1:9:1配合の固化メカニズムの模式図を示す。図の(1)段階では、ジオポリマーの固化原理に着目し微粒子を分類すると、MgOは供試体内の間隙水をアルカリ雰囲気にするアルカリ材と位置付けられる。また、MgOに少量の石膏を加えることで更にアルカリ度が上昇し強度も増加したことから、石膏は固化促進を促す活性材であると考えられる。そしてBSはGPと同様にアルカリに活性のある非晶質粉体であると位置づけられる。
【0089】
図の(2)段階は重合反応初期段階であり、水とMgOのアルカリ環境下によってBSの化学組成に含まれているSiO2、Al2O3、CaOの不安定な結合がpHが11以上で切断されることで、カルシウム系重合物であるカルシウムシリケート重合物(C-S-Hゲル)とカルシウムアルミネート重合物(C-A-Hゲル)を生成して、BSの潜在水硬性が発現される。同時に石膏も自硬性により重合反応し凝結硬化し始める。
【0090】
しかし、石膏内の硫酸塩の存在により、本来BSのアルミネート相が引き起こすとされる発熱と急結が緩和させるため、固化が遅延される。また高炉水砕スラグに用いられるアルカリ刺激剤の中でマグネシウム系は養生液にスラグ含有成分であるカルシウムやマグネシウムを多く含ませることで硬化促進を狙うものであるが、マグネシウム系の添加物では硬化の開始が遅く、明確な強度増加が得られないとされる。このことからもMgOに含まれるマグネシウム分が固化を遅延すると考えられる。
【0091】
図の(3)段階では、ドロマイトの固化原理に着目する。ドロマイト鉱物は塩分や溶液のMg2/Ca2比や反応抑制物としてのSO4 2-の存在がドロマイト化作用の重要な支配要因として指摘されている。徐々に固化が進んでいく中、石膏とBSから生成されたカルシウム系重合物からなるカルシウム分と、MgOとBS内にも含まれるマグネシウム分、石膏の硫酸塩がそれぞれ存在することでドロマイト化作用が働き、ドロマイトの理想科学式(CaMg(CO3)2)に近しい状態となることで固化したと考えられる。
【0092】
[一次元注入実験における浸透試験]
本実験では複数の種類の微粒子を浸透注入した際に、微粒子が間隙内に残留するかを検討するために、CaSO4:BSIII:MgO=1:9:1の配合を用いて一次元注入実験を行った。図11に実験概要を示す。
【0093】
一次元注入実験装置における供試体作製方法は、次の通りである。まず、アクリル製モールド内に相対密度Dr=60%、直径50mm、高さ100mmとなるように試料砂を空中落下させた。注入材が試料砂に均質に注入されるようにフィルター層として試料砂の上下に、高さ20 mm、Dr=60%の珪砂2号を空中落下させた。試料砂とフィルター層の境界には、試料砂は通過しないものの注入材は通過することができる目開きの金属メッシュ(#80,SUS304線径0.12mm)を挟んだ。なお、材料の通過の有無は事前に調査した。フィルター層の直上に上部ピストンを固定した。
【0094】
注入材の注入では、まず一次元注入実験装置から排出される排液用の管内を脱気水で満たした後、一定流量で注入することができるピストン式ポンプを用いて一次元注入実験装置の下部から注入材を注入した。この時、注入ポンプと一次元注入実験装置の経路間に水圧計を設置し、注入時における圧力(以下、注入水圧と記す)を計測した。
【0095】
注入材の注入量は一次元注入実験装置から排出される排液量として計測された。この排液量と供試体の重量変化量は、それぞれ電子天秤にて1秒間隔で測定された。注入の完了は、1)注入材が排出されたことが目視で確認された、2)目詰まりが起こることで排液が停止した、3)供試体内の間隙体積に対して約3倍の注入材の全量を注入し終えた、のいずれかを満たした時点とした。表2に実験条件を示す。
【0096】
Case3-10-1では注入材の水粉体比を変化させた場合の比較を、Case3-10-2では注入流量を変化させた場合の比較を、Case3-10-3では粒径が異なる珪砂6号と珪砂7号を用いた砂間隙の大きさの比較を行った。
【0097】
珪砂6号と珪砂7号と注入材に用いた微粒子の粒径加積曲線を図12に示す。通常、懸濁型の注入材の地盤への浸透の可否を判定する指標にはグラウタビリティー比(以下、GRと記す)が用いられている。GRは注入する微粒子の粒径と注入対象の地盤の粒径を比較することでその浸透性を判断するものであり、以下の式(1)と式(2)で表わされる。
【0098】
【数1】
【0099】
【数2】
【0100】
ここで、D15は砂の15%粒径、D10は砂の10%粒径、G85は注入材の85 %粒径、G95は注入材の95%粒径である。King&Bushによると、式(1)、式(2)を同時に満足する地盤に対しては懸濁型注入材の使用が可能であると判断される。一方、Mitchellによると、式(1)においてGR>24であれば注入可能であり、GR<11であれば浸透不可能と判断する提案もなされている。
【0101】
得られた粒径加積曲線から式(1)、式(2)式を用いてそれぞれの微粒子に対してGRを算出した結果を表-3に示す。珪砂6号では式(1)において3~14であり15以下であること、式(2)においては1~8であり8以下であることから片方の式のみを満たすとされ、目詰まりする可能性はあるが浸透させることは可能であると考えられる。
【0102】
一方、珪砂7号では式(1)において2~9であり15以下であること、式(2)においては1~6であり8以下であることから両式とも満たさず、目詰まりする可能性が考えられる。本実験で用いられる配合はBSが最も多く、CaSO4とMgOは少ない配合であることから注入材の浸透を可能とするためにはBSが通過できることが必須条件であるといえる。
【0103】
【表2】
【0104】
【表3】
【0105】
[短尺供試体実験結果]
水粉体比を変化させた場合における養生日数と強度の関係から水粉体比が増加するほど強度が増加する傾向が確認されている。注入濃度別における注入水圧、排液量、重量変化量、間隙密度の経時変化をそれぞれ図13図16に示す。
【0106】
全ての濃度において90秒付近で排液から目視による注入材の排出が確認された。各濃度の注入水圧を見ると、P/W=0.15では620秒で、P/W=0.10では1,800秒で注入圧が200kPaを超えて目詰まりが生じた。しかしながら、P/W=0.03、P/W=0.06では注入終了まで注入圧が50kPaを超えることなく注入がなされた。また、P/W=0.15では排液量が950gであったのに対し、P/W=0.03からP/W=0.10では3,000g以上となった。
【0107】
図16に示す供試体の重量変化量を見ると、目詰まりが生じたためにP/W=0.15では30g、P/W=0.10では47gに留まった。P/W=0.03、P/W=0.06は目詰まりを生じなかったことから30g以下となった。また、排液量と試料内間隙から算出された間隙密度は、初期に脱気水で満たされた状態における値である1.00 Mg/m3から、間隙が全て注入材に置換されたと考えられる90秒時点でP/W=0.03では1.02Mg/m3,P/W=0.06では1.04Mg/m3、P/W=0.10では1.06Mg/m3,P/W=0.15では1.09Mg/m3となり、作製した注入材密度と同じくなった。置換後は濃度が高いほど砂間隙に注入材が満たされていくことから、間隙密度も増加したが、目詰まりを起こすとその時点で注入不可になるためにそれ以上の密度増加は確認されなかった。
【0108】
【表4】
【0109】
【表5】
【0110】
養生28日目における一軸圧縮強さを図17に、濃度と強度の関係式より求めた推定濃度を表4に示す。一軸圧縮強さはP/W=0.03では1,172kN/m2、P/W=0.06では3,100kN/m2、P/W=0.10では2,251kN/m2、P/W=0.15では1,182kN/m2となり、各濃度共に液状化対策に求められる改良体の一軸圧縮強さの下限値である80kN/m2を満たすことが確認された。推定濃度は,P/W=0.03の14倍であるP/W=0.43に、P/W=0.06では10倍のP/W=0.64に、P/W=0.10では5倍のP/W=0.52に、P/W=0.15では2倍のP/W=0.31にまで増加する結果となった。
【0111】
図9より注入材の濃度の増加に対して一軸圧縮強さも増加するとしていたが、強度が必ずしも比例して増加しなかった。要因として、注入材の濃度が高い場合には早期に目詰まりが生じ、注入材が間隙を十分に満たすことができないため、強度の増加に繋がらなかったと考えられる。
【0112】
P/W=0.10ではP/W=0.03、P/W=0.06と同量が注入されたが、図13よりP/W=0.03、P/W=0.06と比べて注入水圧の振幅が大きい。これは微粒子が一時的に目詰まるがすぐに解消されるといった現象を繰り返しながら浸透していったと考えられる。一時的な目詰まりによって注入材は間隙を均質に満たせなかったことからP/W=0.10の一軸圧縮強さはP/W=0.06を下回る結果となったと考えられる。
【0113】
最も高強度を呈したP/W=0.06では、一時的な目詰まりが発生せずに注入されたことから、P/W=0.10より注入材濃度が低く、注入材が十分に間隙を満たさなくても均質な注入より強度を確保することができたと言える。
【0114】
また、P/W=0.06と同量を注入することができたP/W=0.03の一軸圧縮強さは、P/W=0.06を下回ったことから、図9の結果と同様に強度に対する水粉体比の二次関数的な関係を確認することができた。
【0115】
濃度別に注入を行った結果、液状化対策に求められる改良体の一軸圧縮強さの下限値を大きく上回るが、濃度が高ければ早い段階で目詰まりする可能性は高くなり、改良効果は下がる恐れがある。一方、目詰まりがなかなか起こらない濃度であれば強度は濃度と共に二次関数的に増加すると考えられる。
【0116】
注入流量別における注入水圧、排液量、重量変化量、間隙密度の経時変化をそれぞれ図18図21に示す。各注入速度における注入水圧をみると、注入流量50mL/minでは1,000秒で、100mL/minでは1,800秒で200kPaを超えて目詰まりが生じた。150mL/minでは注入終了まで注入圧が50kPaを超えることはなく最大で13kPaとなった。また、排液量は50mL/minでは870gであったのに対し、100mL/min、150mL/minでは3,000g以上となった。重量変化量を見ると、目詰まりが生じたために50mL/minでは30g、100mL/minでは47gが間隙に留まったことになる。150mL/minでは目詰まりは生じなかったことから30g以下となった。間隙密度は注入速度が違うことから注入材密度1.06Mg/m3に到達するまでの時間は異なるが、置換まで同様の増加傾向が確認された。
【0117】
養生28日目における一軸圧縮強さを図22に、濃度と強度の関係式より求めた推定濃度を表5に示す。注入流量50mL/minでは1,342kN/m2、100mL/minでは2,251kN/m2、150mL/minでは2,262kN/m2となり、どの注入流量においても液状化対策に求められる改良体の一軸圧縮強さの下限値である80kN/m2を満たすことが確認された。また推定濃度は注入材濃度P/W=0.10に対し、50 mL/minではP/W=0.35、150mL/minではP/W=0.52、150mL/minではP/W=0.56となった。
【0118】
注入流量が低速の場合、先行注入材は後行注入材に強く押し出されないため、注入口付近の砂間隙に留まりやすくなり目詰まりが早く発生する。そのため供試体を十分に浸透できないことから改良強度は低くなる。一方、高速の場合、先行注入材は後行注入材に押し出されるため注入口付近の砂間隙に留まることなく、通過していくため目詰まりは生じない。
【0119】
間隙密度は、まず注入材が試料間隙内を下から上に通過する初期には高い傾きを示すが、その後緩やかな増加傾向になり、徐々に充填されていく。そのため目詰まりが発生するまで注入材が間隙に多く充填されることから供試体全体の改良強度は高くなる。また、濃度が低い場合と同様に改良材が十分に間隙を満たさなくても注入材の固化により強度を確保することが可能である。
【0120】
注入材それぞれの微粒子に対してGRを算出した結果、珪砂6号では目詰まりする可能性があるが浸透させることは可能である一方、珪砂7号では浸透せずに目詰まりする可能性があることが示された。
【0121】
地盤の粒径別における注入水圧、排液量、重量変化量、間隙密度の経時変化をそれぞれ図23図26に示す。各珪砂の注入水圧は珪砂6号では1800秒で、珪砂7号では140秒で200kPaを超え、目詰まりが生じた。排液量では珪砂7号では250g注入した時点で目詰まりが生じた。
【0122】
注入後の珪砂6号、珪砂7号の供試体の状況を図27に示す。どちらも養生1日目に脱型したものである。珪砂6号では供試体全体が青色に変化していることから全体に浸透していることがわかる。珪砂7号では排液量が250gになったことから、間隙が注入材によって全て置換されるまで注入材が注入されたと考えられる。しかしながら、供試体の下部から中部までは十分に固化しているものの、上部が脆いことから、注入材は中部までは浸透したと考えられる。GRは試料砂と微粒子の粒径を考慮した判定法であり、本実験で検討した注入速度については考慮されていない。しかし本実験のように異なる注入速度を用いた場合においてもGRの算出結果と同様に試料砂と微粒子の粒径の影響を受けることを確認した。
【0123】
[長尺供試体実験概要]
浸透距離ごとにおける注入材の浸透性およびそれによる強度を把握するため、本実験では長尺を用いた一次元注入実験を行った。長尺に用いた一次元注入実験装置を図28に示す。
【0124】
内径50mm、高さ100mmのアクリル製分割モールド11個を縦に繋ぎ合わせることで高さ1,100mmの分割可能なモールドとした。その内部に相対密度Dr=60%、直径50mm、高さ1,000mmとなるように珪砂6号を空中落下させることで供試体を作製した。実験方法は短尺と同様である。
【0125】
表6に実験条件を示す。Case3-10-4では注入材の水粉体比を変化させた場合について検討した。Case3-10-5ではP/W=0.03の注入材4.5Lを2回連続して注入したケースを行い、結果をCase3-10-4と比較した。
【0126】
[長尺供試体実験結果]
注入材の濃度別及びP/W=0.03の2回注入における注入水圧、排液量、重量変化量、間隙密度の経時変化をそれぞれ図29図32に示す。
【0127】
目視より注入材の排出がP/W=0.10では720秒、P/W=0.06では1,200秒付近で確認されたものの、P/W=0.03では注入材の排出は確認されず、水のみが排出され続けた。各濃度の注入水圧は、濃度P/W=0.10では200秒付近から急激に上昇して、1,400秒付近で200kPaを超えたが、P/W=0.03、P/W=0.06では注入終了まで50kPa以下に留まる結果となった。排液量は目詰まりを起こしたP/W=0.10が2,000gであり、その他のP/W=0.03、P/W=0.06では3,000g以上となった。
【0128】
重量変化量は濃度が高いほど大きい傾向が見られたが、P/W=0.06では目詰まりを起こさずに注入されたことから間隙密度がP/W=0.10を超える結果となった。濃度が低いP/W=0.03では供試体全体に対する微粒子量が不足するため、特に浸透距離が長い位置で固化が見られず、未浸透の状態となった。
【0129】
【表6】
【0130】
そのためP/W=0.03を一度注入した後に更にP/W=0.03を追注入することで一度に6%を注入した場合と同様になるのかを検討した。2回目の注入を開始してから80秒後、排液から薄い注入材が排出され始め、さらに約600秒後、注入材と同様の濃度の白濁した注入材が排出されたことから、この時点で供試体は注入材により完全に置換されたと考えられる。
【0131】
注入水圧は、1回目では50kPaほどに留まり、2回目では注入を開始してから急激に200kPaまで上昇した。2回目注入終了時には、排液量は1回目のそれの約2倍となり、重量変化量は1回目のそれの1.7倍まで増加して、P/W=0.10と同量になった。間隙密度は1回目終了時では1.11Mg/m3となり、2回目終了時は1.19Mg/m3まで上昇しP/W=0.06、P/W=0.10を超える結果となった。
【0132】
養生28日目における一軸圧縮強さを図33に、濃度と強度の関係式より求めた浸透距離ごとの推定濃度を図34に、浸透距離が推定濃度に与える影響を表7に示す。
【0133】
P/W=0.06、P/W=0.10では未浸透がなく、P/W=0.03では900mmから1,000mm区間に未浸透があった。各濃度の一軸圧縮強さは、P/W=0.03では平均1,396kN/m2、最大2,715kN/m2、最小566kN/m2、P/W=0.06では平均2,821kN/m2、最大4,101kN/m2、最小2,067kN/m2、P/W=0.10では平均2,032kN/m2、最大2,775kN/m2、最小1,382kN/m2となり、未浸透部分を除いて各濃度ともに液状化対策に求められる改良体の一軸圧縮強さの下限値である80kN/m2を満たすことが確認された。
【0134】
推定濃度はP/W=0.03では平均12倍のP/W=0.31、最大19倍のP/W=0.59、最小7倍のP/W=0.16となった。P/W=0.06では平均10倍のP/W=0.59、最大12倍のP/W=0.73、最小8倍のP/W=0.49となった。P/W=0.10では平均5倍のP/W=0.48、最大6倍のP/W=0.60、最小4倍のP/W=0.36にまで上昇するという結果になった。
【0135】
各濃度ともに、注入濃度から5倍から12倍まで上昇することが分かった。またどの濃度においても浸透距離0cmである注入口側において強度が高く、浸透距離が長くなるについて強度が低下していく傾向が確認された。P/W=0.03において浸透距離が長い位置で未浸透になったのは、微粒子が供試体内の間隙を満たしていく過程で微粒子の多くが消費され、浸透距離が長い位置まで微粒子が送られなかったためと考えられる。
【0136】
注入材の濃度が低い場合、浸透過程で注入材内の微粒子が徐々に消費されていくことから、浸透距離が長くなるほど改良に必要な微粒子量は不足していく。一方、注入濃度が高い場合、浸透距離が長い位置まで改良は可能であるが同時に浸透距離が短い位置で目詰まりが生じてしまう恐れがある。そのため注入速度が同条件の場合、目詰まりしない濃度で注入することが重要である。
【0137】
P/W=0.03の2回目注入の場合における供試体の一軸圧縮強さは平均2,916kN/m2、最大6,207kN/m2、最小952kN/m2となり、各濃度とも液状化対策に求められる改良体の一軸圧縮強さの下限値である80kN/m2を満たすことが確認された。推定濃度はP/W=0.03を2回分注入したため、濃度P/W=0.06の値と比較すると平均10倍のP/W=0.55、最大13倍のP/W=0.74、最小5倍のP/W=0.26に、P/W=0.03の値と比較すると平均19倍、最大26倍、最小9倍となり、注入材濃度P/W=0.03から平均20倍上昇することが分かった。
【0138】
P/W=0.03の場合には1回目注入時に未浸透であった部分においても2回目注入時に浸透していることが確認され、充分な強度が得られた。
【0139】
2回注入の一軸圧縮強さをP/W=0.03、P/W=0.06の1回注入の結果と比較すると、P/W=0.03に対しては約2倍の強度となり、P/W=0.06に対しては浸透距離が短い位置から中間までの位置において同等の強度を、浸透距離が長い位置においては1/2倍程度の強度を呈した。1回目の注入で排出されなかった細かな微粒子が残存した結果、間隙は1回注入より密になる。
【0140】
しかし2回目の注入材は1回目の微粒子によって小さくなった間隙を通過することで浸透しなければならない。そのため浸透距離が長い位置で強度を増加させることは難しい。浸透距離が長い位置で十分な改良強度を求めるのであれば、注入速流量を速くするなどして、1回の注入で浸透距離の長い位置まで微粒子を満たすことである。本実験より2回注入を行うことで浸透距離が長く未浸透であった位置を改良することが可能であるが、目詰まりが発生しやすくなるため浸透距離で改良強度に差が発生することが確認できた。
【0141】
【表7】
【0142】
本発明における密度増大および低強度固化の効果確認として実施した改良土の液状化試験を行った。試料は硅砂6号を用い、未改良砂を扱ったCase1-aでは、空中落下法で相対密度Drが60%となるように供試体を作製した。
【0143】
一方、Case1-b,cにおいては、高炉スラグBSと石膏CaSO4を表8に示すような配合で混合した注入材をDrが60%の試料に浸透注入させることで改良体を作製した。なお、表中のP/Wは、粉体(P)と水(W)の配合割合を重量比で示している。供試体作製後、脱型して7日間養生し、三軸試験機内に設置した。
【0144】
なお、改良土の乾燥密度は石膏および高炉スラグの粒子分増加するため、Case1-bの相対密度は70%程度となり、Case1-cでは相対密度が75%となる。また、微粒子の固化によりCase1-bの一軸圧縮強さは材令7日で80kN/m2、Case1-cでは100kN/m2となる。
【0145】
供試体設置完了後、すべてのケースにおいて、CO2を透気、脱気水を200ml以上通水して飽和し、B値を確認した。表8には各供試体のB値も示しており、B値が0.90以上となった供試体のみを用いた。なお、試験時の載荷周波数は、供試体端部での局所的な水圧の上昇を避けるために0.01Hzとした。また、試験終了後の供試体の体積変化を計測し、液状化後の体積ひずみを算定した。
【0146】
図35は、有効応力経路を示している。有効応力経路から、未改良砂では、平均有効応力が徐々に低下している。それに対して、固結砂の有効応力経路は、載荷初期から平均有効応力が低下し、繰返し載荷を数回経る間にほぼ一定の値に収束する。特に、P/Wが0.10の注入材で改良したc-3の結果では、平均有効応力の最小値が正の値を保っている。
【0147】
次に、図36に液状化強度曲線を示す。図から、P/Wが0.07である注入材を注入したCase6-bでは約1.9倍、Case1-cについては、3.6倍程度の液状化強度が得られている。このことから、十分な液状化抵抗性が得られていることが確認できる。
【0148】
【表8】
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