(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053148
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】自動車用RFIDタグ、及び自動車用RFIDタグの製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20240408BHJP
G06K 19/04 20060101ALI20240408BHJP
G09F 3/00 20060101ALI20240408BHJP
G09F 3/14 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G06K19/077 200
G06K19/04 010
G06K19/077 140
G09F3/00 M
G09F3/00 E
G09F3/14 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159212
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000186566
【氏名又は名称】小林クリエイト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135460
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 康利
(74)【代理人】
【識別番号】100084043
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 喜多男
(74)【代理人】
【識別番号】100142240
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 優
(72)【発明者】
【氏名】松原 奈央
(57)【要約】
【課題】従来構成に比べて交信性能に優れた自動車用RFIDタグを提供する。
【解決手段】シート状基材2と、シート状基材2の一面側に貼付されたRFIDラベル3を備える自動車用RFIDタグ1にあって、シート状基材2の上部に、自動車のバックミラーPの支軸Qに係合可能なフック形状5を形成し、支軸Qに係合させて、自動車のフロントガラスSの内側に吊り下げるよう構成する。かかる構成によれば、リーダライタの方向に対して、自動車用RFIDタグ1の交信可能距離が比較的変動し難くなるため、従来構成に比べて、種々の方向から情報を適切に読み書き可能となる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状基材と、前記シート状基材の一面側に貼付されたRFIDラベルを備える自動車用RFIDタグであって、
前記シート状基材の上部は、自動車のバックミラーの支軸に係合可能なフック形状に形成されており、
前記支軸に係合させて、自動車のフロントガラスの内側に吊り下げられることを特徴とする自動車用RFIDタグ。
【請求項2】
前記フック形状は、前記支軸に外嵌可能な大きさの係合孔と、前記シート状基材の外縁と前記係合孔とを連通する挿通口とを備え、
前記RFIDラベルは、アンテナが、前記係合孔の上縁よりも下方で、かつ、前記係合孔の中心線と重ならない位置であって、かつ、前記係合孔の上縁から5cm以上離れた位置に貼付されていることを特徴とする請求項1に記載の自動車用RFIDタグ。
【請求項3】
前記RFIDラベルは、略矩形状をなしており、
前記シート状基材には、前記RFIDラベルの少なくとも一辺に沿う貫通孔が形成されており、
前記RFIDラベルは、前記貫通孔の縁から、前記一面側に突出する打抜きバリに、少なくとも一辺を隣接させるように前記シート状基材に貼付されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の自動車用RFIDタグ。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の自動車用RFIDタグの製造方法であって、
前記RFIDラベルは、略矩形状をなしており、
前記シート状基材を前記一面側の反対側から打ち抜いて、前記RFIDラベルの貼付予定部位に沿った貫通孔を形成する打抜工程と、
前記打抜工程の後に、前記貫通孔の縁に形成された打抜きバリと、前記RFIDラベルの一辺を隣接させるように、前記RFIDラベルを前記シート状基材に貼付する貼付工程と
を含むことを特徴とする自動車用RFIDタグの製造方法。
【請求項5】
前記打抜工程では、打抜き刃により、シート状基材に、前記フック形状と前記貫通孔を同時に形成することを特徴とする請求項4に記載の自動車用RFIDタグの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に一時的に取り付ける自動車用RFIDタグに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の輸送時や中古車のオークションにおいて、当該自動車の輸送先,型式,到着予定日や出品番号等の所要情報を印字したタグをフロントガラスの内側に取り付けて、フロントガラスの外側から所要情報を視認し得るようにしている(例えば、特許文献1)。また、近年では、所要情報を機械的に読取可能にするために、タグへの印字に替えて、又は、印字に加えて、所要情報を記録したRFIDラベルがタグに貼付されている。具体的には、
図9(A)に示すように、従来構成のタグ1aは、上部に粘着剤層4が設けられたシート状基材2aの一側面にRFIDラベル3を貼付してなるものであり、
図9(B)に示すように、シート状基材2aの上部をフロントガラスSの内面に貼付することにより、自動車に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうした自動車用RFIDタグは、種々の方向から情報を読み書きできることが望ましい。しかしながら、自動車用RFIDタグは、タグの特性や外部環境の影響により、ある方向からは比較的遠くから交信可能であるが、別の方向からは比較的近づかないと交信できないといった具合に、リーダライタの方向によって交信可能距離が変動する。
【0005】
交信可能距離は、リーダライタの出力に応じて増減するため、リーダライタの出力を高くすれば、交信可能距離が比較的短い方向からでも遠方から交信可能となる。しかしながら、リーダライタを高出力にした場合、交信可能範囲が全体的に拡がるため、近隣車両のRFIDタグとも同時交信可能となって、RFIDタグの峻別に手間取ったり、誤って他の車両のRFIDタグの情報を読み書きしまったりすることが懸念される。これに対して、リーダライタの出力を抑えれば、近隣車両のRFIDタグとの同時交信は回避できるが、交信可能距離が比較的短い方向からは、リーダライタをRFIDタグに近接させなければ、情報を読み書きできなくなる。
【0006】
本発明はかかる現状に鑑みてなされたものであり、従来構成に比べて交信性能に優れた自動車用RFIDタグの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、上記課題を解決するために、試行錯誤を重ねた上に、タグをフロントガラスの内面に貼付せず、フロントガラスから離して、バックミラーの支軸に吊り下げた場合に、リーダライタの方向に対して、交信可能距離が比較的変動し難くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、シート状基材と、前記シート状基材の一面側に貼付されたRFIDラベルを備える自動車用RFIDタグであって、前記シート状基材の上部は、自動車のバックミラーの支軸に係合可能なフック形状に形成されており、前記支軸に係合させて、自動車のフロントガラスの内側に吊り下げられることを特徴とする自動車用RFIDタグである。
【0009】
かかる構成のように、自動車用RFIDタグをバックミラーの支軸に吊り下げた場合、上述のように、リーダライタの方向に対して、交信可能距離が比較的変動し難くなる。このため、本発明の自動車用RFIDタグは、従来構成に比べて、種々の方向から情報を適切に読み書き可能となる。
【0010】
本発明にあって、前記フック形状は、前記支軸に外嵌可能な大きさの係合孔と、前記シート状基材の外縁と前記係合孔とを連通する挿通口とを備え、前記RFIDラベルは、アンテナが、前記係合孔の上縁よりも下方で、かつ、前記係合孔の中心線と重ならない位置であって、かつ、前記係合孔の上縁から5cm以上離れた位置に貼付されていることが提案される。
【0011】
バックミラーの支軸に係合孔を外嵌させて吊り下げる点を考慮すると、本発明に係るRFIDラベルは係合孔の上縁よりも下方に貼付することが望ましい。また、上述のように、リーダライタの出力を高くすれば、自動車用RFIDタグとの交信可能距離を延ばすことができるが、一般的に高出力のリーダライタほど高価であり、また、一定出力以上のものは使用許可が必要となる。かかる観点では、アンテナが、係合孔の中心線と重ならず、かつ、係合孔の上縁から5cm以上離れる位置にRFIDラベルを貼付することが望ましい。発明者の研究によれば、かかる位置にRFIDラベルを貼付することにより、自動車用RFIDタグの交信可能距離が比較的長くなる。このため、かかる構成とすれば、リーダライタの出力を高くすることなく、自動車用RFIDタグの交信可能距離を簡便に延ばすことができる。
【0012】
また、本発明にあって、前記RFIDラベルは、略矩形状をなしており、前記シート状基材には、前記RFIDラベルの少なくとも一辺に沿う貫通孔が形成されており、前記RFIDラベルは、前記貫通孔の縁から、前記一面側に突出する打抜きバリに、少なくとも一辺を隣接させるように前記シート状基材に貼付されている構成が提案される。
【0013】
本発明の自動車用RFIDタグの交信可能範囲は、RFIDラベルの貼付角度によって比較的大きく変化するため、本発明にあっては、RFIDラベルの貼付角度の誤差を低減させることが望ましい。これに対して、かかる構成によれば、RFIDラベルをシート状基材に貼付する際に、RFIDラベルの一辺の端縁を打抜きバリに当接させることで、RFIDラベルの貼付角度を正しく合わせられるため、手作業や低機能のラベル貼り機を使用して、RFIDラベルを貼付する場合でも、所要の貼付角度で、正確かつ容易に貼付可能となる。
また、かかる打抜きバリは、シート状基材に貫通孔を打ち抜くだけで形成できるため、RFIDラベルの貼付部位にトリムマークを印刷するよりも製造容易であり、また、トリムマークに比べて目立ち難く、美観に優れる。
【0014】
本発明の自動車用RFIDタグの製造方法として、前記RFIDラベルは、略矩形状をなしており、前記シート状基材を前記一面側の反対側から打ち抜いて、前記RFIDラベルの貼付予定部位に沿った貫通孔を形成する打抜工程と、前記打抜工程の後に、前記貫通孔の縁に形成された打抜きバリと、前記RFIDラベルの一辺を隣接させるように、前記RFIDラベルを前記シート状基材に貼付する貼付工程とを含むことを特徴とする自動車用RFIDタグの製造方法が挙げられる。
【0015】
かかる製造方法によれば、貼付工程において、手作業や低機能のラベル貼り機を使用して、RFIDラベルを貼付する場合でも、RFIDラベルを、所要の貼付角度で、正確かつ容易に貼付可能となる。
【0016】
また、上記製造方法にあって、前記打抜工程では、打抜き刃により、シート状基材に、前記フック形状と前記貫通孔を同時に形成することが提案される。
【0017】
かかる構成にあっては、シート状基材を打ち抜く工数を増加させることなく、RFIDラベルの貼付予定部位の周囲に貫通孔を低廉に形成できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の自動車用RFIDタグは、従来構成に比べて交信性能に優れたものとなる。また、本発明の製造方法によれば、当該自動車用RFIDタグを容易に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例の自動車用RFIDタグ1の(A)表面図と(B)裏面図である。
【
図2】シート状基材2とRFIDラベル3を分離して示す、実施例の自動車用RFIDタグ1の斜視図である。
【
図3】実施例の自動車用RFIDタグ1をバックミラーPの支軸Qに取り付けた状態を示す説明図である。
【
図4】(A)は
図1(B)中のX部分の拡大図である。(B)は(A)中のY-Y線拡大断面図である。
【
図5】シート状基材2のラベル貼付部14にRFIDラベル3を貼付する態様を示す説明図である。
【
図6】自動車用RFIDタグ1に対するリーダライタの交信方向を示す説明図である。
【
図7】(A)は評価試験1の結果を示す図表であり、(B)は(A)の結果から算出した分散係数を表す図表である。
【
図9】(A)は、従来構成の自動車用RFIDタグ1aの裏面図であり、(B)は、従来構成の自動車用RFIDタグ1aを自動車のフロントガラスSに取り付けた状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態を、以下の実施例によって説明する。
なお、以下の実施例において、本発明に係るシート状基材の一面側は、シート状基材2の裏側に相当する。また、本発明に係るフック形状は、係合フック5に相当する。また、本発明に係る貼付予定部位は、ラベル貼付部14に相当する。
【0021】
本実施例の自動車用RFIDタグ1(以下、単に「タグ」とも言う。)は、シート状をなしており、
図1,2に示すように、略縦長矩形状をなすシート状基材2と、該シート状基材2の裏側に貼付されたRFIDラベル3により構成される。
【0022】
シート状基材2は、適度な可撓性と強度を有するシートにより構成される。シート状基材2は、RFIDラベル3の無線通信を阻害しない材質であることが望ましく、紙や樹脂シートによって好適に構成され得る。シート状基材2は単層のものでよいが、複数のシートを積層したものであってもよい。シート状基材2に採用し得る樹脂材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が挙げられる。なお、本実施例のタグ1は、無線通信によってRFIDラベル3の記憶情報を読み書きするだけのものであり、シート状基材2には印刷は施されず、無地となっている。
【0023】
RFIDラベル3は、無線通信によって情報を非接触で読書き可能な薄膜の情報媒体である。かかるRFIDラベル3は、従来構成の自動車用RFIDタグに使用される汎用品を広く用いることができる。
【0024】
図2に示すように、RFIDラベル3は、合成樹脂製フィルムからなる略縦長矩形状のラベル基材10の一面側に、ICチップ11と薄膜状のアンテナ12を配置し、ラベル基材10の他面側に、粘着剤層(図示省略)を形成してなるものである。
【0025】
アンテナ12は、ラベル基材10の一面側に、導電性材料を所定パターンで印刷することにより形成され得る。本実施例に係るアンテナ12は、UHF帯域の電磁波で無線通信するための平面型のダイポールアンテナである。本発明に係るRFIDラベルが無線通信に使用する電磁波は、UHF帯域の電磁波に限られないが、比較的長距離交信が可能なUHF帯域の電磁波で通信するものが好適である。
【0026】
ICチップ11は、アンテナ12の所定の接続部位の上に固着され、アンテナ12と電気的に接続される。ICチップ11は、情報を書き換え可能に格納可能なメモリを具備し、アンテナ12を介して外部装置と無線通信することにより、所要情報をメモリに記憶し、記憶した情報を随時読み出し得るよう構成される。本実施例の自動車用RFIDタグ1では、自動車の識別情報や、輸送先、到着予定日、輸送状況等がICチップ11に記憶され、当該自動車の管理に利用される。
【0027】
本実施例のタグ1は、
図3に示すように、表側を自動車の正面に向けた状態で、自動車のバックミラーPの支軸Qから吊り下げて使用される。
図1に示すように、シート状基材2の上部には、タグ1をバックミラーPの支軸Qに引っ掛けるための係合フック5が形成される。係合フック5は、シート状基材2を、支軸Qに係合可能な開環状のフック形状に打ち抜いてなるものであり、支軸Qに外嵌可能な大きさの横長楕円形状の係合孔6と、シート状基材2の上縁と係合孔6を連通する挿通口7とからなる。係合フック5は、タグ1が傾かずに吊り下がるように、タグ1の幅方向の中央部に、左右対称形状に形成される。
【0028】
係合孔6は、殆どの車種のバックミラーPの支軸Qが遊嵌可能な幅寸法に形成される。挿通口7は、シート状基材2の上縁と係合孔6の上縁中央部とを連通する上下方向の切込線であり、シート状基材2を左右に二分する位置に形成される。
図1に示すように、挿通口7は、通常は、その両側縁が隙間なく当接しているが、挿通口7の両側のシート状基材2を表裏逆方向に撓ませて一時的に離間させることによって、バックミラーPの支軸Qを挿通可能な幅寸法に拡開可能となっている。
【0029】
図1に示すように、係合フック5の係合孔6には、上縁中央部に、下方に突出する突部9が形成される。かかる構成にあっては、タグ1を比較的太径な支軸Q1から吊り下げる場合は、
図1(A)に示すように、係合孔6の突部9の下端を支軸Q1の中央部に当接させて、係合フック5と支軸Qを点接触させることにより、タグ1を傾かせずに吊り下げることができる。一方、タグ1を比較的細径な支軸Q2から吊り下げる場合は、
図1(B)に示すように、突部9の両脇を支軸Q2の上面に当接させることにより、タグ1を傾かせずに吊り下げることができる。
【0030】
図1,2に示すように、RFIDラベル3は、粘着剤層を介して、シート状基材2の裏側の下部一側に設けられたラベル貼付部14に縦向きに貼付される。ラベル貼付部14は、RFIDラベル3よりも僅かに大きい縦長矩形状の領域である。ラベル貼付部14の四隅には、ラベル貼付部14の外周縁に沿うスリット状の貫通孔16が、縦横に形成されており、RFIDラベル3は、四隅の各貫通孔16と重ならず、貫通孔16の内側に収まるように貼付される。
【0031】
ラベル貼付部14の四隅の貫通孔16は、シート状基材2を表側から裏側に打ち抜いてなるものであり、
図4に示すように、貫通孔16の縁には、シート状基材2の裏側に突出する打抜きバリ17が形成される。かかる構成によれば、RFIDラベル3をラベル貼付部14に貼付する際に、ラベル貼付部14の四隅の貫通孔16を目印にできるだけでなく、貫通孔16の縁に形成される打抜きバリ17を、位置決め用のガイドとして利用できる。すなわち、各貫通孔16の打抜きバリ17は、ラベル貼付部14の外周縁に沿って、縦横に形成されるため、
図4(A),4(B)に示すように、RFIDラベル3の一辺を、ラベル貼付部14のいずれか一辺の貫通孔16の打抜きバリ17と隣接させるように貼付することで、RFIDラベル3を正しい貼付角度で貼付できる。
【0032】
具体的には、RFIDラベル3を貼付する際に、
図5(A)→5(B)に示すように、RFIDラベル3のいずれか一辺の端縁を、ラベル貼付部14の下縁に形成された打抜きバリ17に突き当てて、かかる状態で、ラベル貼付部14の一辺を、当該打抜きバリ17に隣接させるように貼付すれば、手作業や低機能のラベル貼り機を使用してRFIDラベル3を貼付する場合でも、RFIDラベル3を正しい向きに、容易に貼付できる。自動車用RFIDタグ1の交信可能範囲は、RFIDラベル3の角度により変化し易いため、RFIDラベル3を一定の貼付角度で正確に貼付することが求められるが、このように、打抜きバリ17を位置合わせガイドとして利用すれば、手作業や低機能のラベル貼り機を使用しても、RFIDラベル3を、正しい貼付角度で、容易に貼付可能となる。
【0033】
また、かかる貫通孔16や打抜きバリ17は、ラベル貼付部14の周囲に貫通孔16を打ち抜くだけで容易に形成できる。特に、本実施例に係るシート状基材2aは無地であるため、ラベル貼付部14の周囲にトリムマーク等の目印を印刷すると、当該目印を印刷するために工数を増やす必要があり、当該目印によってシート状基材2aの美観も損なわれるが、貫通孔16であれば、係合フック5等と同時に打ち抜くことができるため工数を増やす必要はなく、目印を印刷するよりもシート状基材2の美観が損なわれ難い。
【0034】
また、貫通孔16の縁に形成される打抜きバリ17は、筋入れ加工で形成される突部に比べて、シート状基材2の表面から鋭角に立ち上がっているため、RFIDラベル3を貼付する際に、RFIDラベル3の端縁を位置決めするガイドとして適している。なお、かかる打抜きバリ17の高さは特に限定されないが、発明者の研究によれば、少なくともシート状基材2の裏面から10μm以上突出していれば、RFIDラベル3の端縁を位置決めするガイドとして十分機能し得る。
【0035】
なお、
図4等に示すRFIDラベル3は、ラベル貼付部14の下辺に沿って形成された打抜きバリ17と隣接させるように貼付されるが、RFIDラベル3の上辺に沿って形成された打抜きバリ17と隣接させるように貼付しても、同様に、RFIDラベル3を正しい貼付角度で、ラベル貼付部14に容易に貼付できる。
【0036】
ここで、ラベル貼付部14の縦幅は、RFIDラベル3の縦幅よりも数mm幅広に形成される。かかる構成によれば、RFIDラベル3をラベル貼付部14の下辺と隣接させたタグ1と、RFIDラベル3をラベル貼付部14の上辺と隣接させたタグ1を製造して、それらを積み重ねることで、タグ1を積み重ねて保管する際に、ICチップ11が破損し難くなる。
すなわち、一般的に、RFIDラベル3はICチップ11の配設部位が盛り上がっているため、RFIDラベル3が同じ位置に貼付されたタグ1を積み重ねた場合、ICチップ11の配設部位が局所的に厚くなって、上下方向からの圧力に対して破損し易くなる。これに対して、RFIDラベル3をラベル貼付部14の下辺と隣接させたタグ1と、RFIDラベル3をラベル貼付部14の上辺と隣接させたタグ1は、RFIDラベル3の貼付位置のズレがICチップの幅(約1mm角)よりも大きく、それらを積み重ねた時に夫々のICチップ11が厚み方向に重ならないため、ICチップ11の配設部位が比較的厚くなり難く、上下方向からの圧力に対して比較的破損し難くなる。
【0037】
本実施例のタグ1は、例えば、原反からシート状基材2を打ち抜く打抜工程と、打ち抜いたシート状基材2にRFIDラベル3を貼付する貼付工程とにより製造され得る。
【0038】
打抜工程では、打抜き刃で原反をシート状基材2の形状に打ち抜くことにより、シート状基材2を形成する。打抜工程では、シート状基材2の上部を係合フック5の形状を打ち抜くのと同時に、ラベル貼付部14の周縁の沿って貫通孔16を打ち抜くことで、製造工程を簡略化できる。また、かかる打抜工程において、貫通孔16を、シート状基材2の表側から裏側に打ち抜くことで、貫通孔16の縁に、シート状基材2の裏側に突出する打抜きバリ17を形成できる。
【0039】
貼付工程では、打ち抜かれたシート状基材2のラベル貼付部14に、RFIDラベル3を貼付する。RFIDラベル3は、ラベル貼り機を用いて貼付してもよいが、手貼りする場合でも、上述のように、RFIDラベル3の一辺を、貫通孔16の縁の打抜きバリ17と隣接させるように貼付すれば、正しい貼付角度で容易に貼付できる。
【0040】
上述のように、本実施例のタグ1は、自動車のバックミラーPの支軸Qに吊り下げられた状態で使用される(
図3参照)。なお、一般的に、RFIDラベル3のICチップ11には、タグ1を自動車に取り付ける前に、当該車両の識別情報等が記録される。
【0041】
タグ1は、バックミラーPの支軸Qに吊り下げた状態で、RFIDラベル3の記録情報を、リーダライタによって、自動車の外側から非接触で読み書きし得るよう構成される。具体的には、
図6に示すように、タグ1は、主に、タグ1の設置位置の前方、斜め前方、及び両側から、リーダライタと交信可能に構成される。タグ1の設置位置よりも後方寄りからは、自動車のドライバーやシート、バックミラー等の障害物が多く、交信しづらいためである。なお、リーダライタは、RFIDラベル3の情報を読書き可能なものであればよく、作業者が手に持って使用する携帯型でもよいし、自動車の入出ゲート等に設置される据置型も使用され得る。
【0042】
本実施例のタグ1は、前方、斜め前方、及び両側から、リーダライタと交信可能に構成されるため、リーダライタとの交信方向は、用途や状況に応じてされ得る。ここで、タグ1の交信可能範囲は、RFIDラベル3の性能、貼付位置、リーダライタの性能等によって変動するが、本実施例のように、バックミラーPの支軸Qから吊り下げたタグ1は、フロントガラスSに貼付する従来構成のタグよりも、リーダライタとの交信方向に対して、交信可能距離の変動が小さくなる。これは、
図3に示すように、バックミラーPは、フロントガラスSの上部中央の手前側に配置されており、バックミラーPの支軸Qに吊り下げられる本実施例のタグ1は、従来構成のタグ1aに比べて、フロントガラスSから離間した位置に配置されるため、フロントガラスSと干渉し難くなると考えられる。
【0043】
このように、本実施例のタグ1は、従来構成に比べて、リーダライタとの交信方向に対する、交信可能距離の変動が小さいため、交信方向に応じてリーダライタの出力を調整する手間が少なくなり、また、近隣車両のタグと同時交信可能となって、タグの峻別に手間取ったり、誤って他の車両のタグの情報を読み書きしまったりする不具合も低減される。
【0044】
また、従来構成のタグは、フロントガラスSに対する貼付位置が定まっておらず、貼付する作業者によって、タグの配置が相違するため、タグの交信可能範囲が貼付位置によってばらつくこととなるが、バックミラーPの支軸Qに吊り下げる本実施例のタグ1では、タグ1は常に同じ位置に配置されるため、タグ1の交信可能範囲が定まり易いという利点がある。
【0045】
また、従来構成のタグ1aは、フロントガラスSに貼付するため、運転時の視界の妨げとなり易く、タグ1aを貼付した状態で運転するのであれば、タグ1aをフロントガラスSの助手席側に貼付する必要がある。これに対して、本実施例のタグ1は、バックミラーPの支軸Qに吊り下げられて、バックミラーPの裏側に配置されるため、運転時の視界の妨げとなり難く、タグ1を吊り下げた状態でも当該車両を運転できる。
【0046】
実施例のタグ1の交信性能を、下記の評価試験により評価した。
<試験品>
上記実施例に則って、以下の仕様のタグを作製し、試験品とした。
1.シート状基材:白板紙、縦180mm、横105mm、厚さ240μm
2.RFIDラベル:KT-7xm(小林クリエイト)、
縦73mm、横17mm、周波数帯域860~960MHz
3.貼付位置:シート状基材2の裏側右下部に縦向きに貼付。
【0047】
<比較品>
フロントガラスSに貼付する従来構成のタグを作製し、比較品とした。なお、RFIDラベルは上記試験品と同じものを用い、タグのサイズも上記試験品と略同じとした。
【0048】
<評価試験1>
上記試験品を、車両A,Bのバックミラーの支軸に取り付けて、種々の方向からリーダライタA,Bの交信可能距離を測定した。同様に、上記比較品を車両A,Bのフロントガラスに貼付して、種々の方向からリーダライタA,Bの交信可能距離を測定した。測定条件の詳細は下記の通りである。
車両A:ステーションワゴン(トヨタ)
車両B:ファストバックセダン(マツダ)
リーダライタA:BHT-615(デンソーウェーブ)
出力24dBm、交信周波数920MHz
リーダライタB:ASR0230D(アスタリスク)
出力24dBm、交信周波数920MHz
測定方向:タグの右方、右前方、前方、左前方の4方向。
測定高さ:リーダライタとタグのアンテナが同じ高さとなる位置で測定。
測定方法:リーダライタのアンテナを、タグに向けた状態で、遠方からタグの記録情報の読取りを試みながら距離を縮めていき、タグの記録情報の読取りに成功した位置を、当該測定条件での交信可能距離とした。
【0049】
評価試験1の結果を
図7(A)に示す。
図7(A)に示すように、試験品及び比較品の交信可能距離は、タグに対するリーダライタの方向によってバラツキが認められたが、
図7(B)に示すように、測定方向に対するバラツキ度合い(分散係数)は、試験品の方が比較品よりも小さかった。この結果は、タグをバックミラーPの支軸Qに吊り下げた方が、タグをフロントガラスSの内面に貼付した場合よりも、リーダライタの方向に対する、交信可能距離の変動が抑えられることを示唆している。
【0050】
<試験品>
幅広なシート状基材2を用意して、シート状基材2に対するRFIDラベル3の貼付位置の相違する12個の試験品を作製した。
1.シート状基材:白板紙、縦180mm、横300mm、厚さ240μm
2.RFIDラベル:KT-7xm(小林クリエイト)、
縦73mm、横17mm、周波数帯域860~960MHz
【0051】
<評価試験2>
夫々の試験品を、車両Bのバックミラーの支軸に取り付けて、リーダライタAの交信可能距離を測定した。測定条件の詳細は下記の通りである。
車両B:ファストバックセダン(マツダ)
リーダライタA:BHT-615(デンソーウェーブ)
出力24dBm、交信周波数920MHz
測定方向:タグの右前方
測定高さ:リーダライタとタグのアンテナが同じ高さとなる位置で測定。
測定方法:リーダライタのアンテナを、タグに向けた状態で、遠方からタグの記録情報の読取りを試みながら距離を縮めていき、タグの記録情報の読取りに成功した位置を、当該測定条件での交信可能距離とした。
【0052】
評価試験2の結果を
図8に示す。
図8において、係合孔6の下方及び右方に表示される1.4~2.5の数値は各試験品の交信可能距離(m)を示し、各数値の表示位置は、当該試験品に貼付されたRFIDラベル3のアンテナ12の上縁位置を示している。
図8に示すように、試験品の交信可能距離は、RFIDラベル3のアンテナ12の上縁が、係合孔6の上縁中央部から5cm未満の場合に比較的短くなる傾向が認められ、また、アンテナ12が、係合孔6を左右に二分する中心線と重なる場合にも比較的短くなる傾向が認められた。この結果は、タグ1は、アンテナ12が係合孔6の中心線と重ならず、かつ、係合孔6の上縁から5cm以上離れる位置にRFIDラベル3を貼付した場合に、交信可能距離が比較的長くなることを示唆している。また、かかる結果は、RFIDラベル3を、係合孔6の一側に貼付することで、当該一側方向からの交信可能距離を長くできることを示唆している。
【0053】
以上に、本発明の実施例について説明したが、本発明の実施形態は、上記実施例の構成に限定されるものでなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能である。
【0054】
例えば、上記実施例のシート状基材2は無地であるが、シート状基材2の表側に自動車の識別情報等を印刷して、フロントガラスSの外側から印刷情報を目視で確認できるようにしてもよい。
【0055】
また、本発明に係るフック形状は、上記実施例の係合フック5の形状に限られず、自動車のバックミラーの支軸に脱着可能に係合し得るものであれば足りる。
【0056】
また、上記実施例では、ラベル貼付部14の四辺に沿って貫通孔16及び打抜きバリ17が形成されるが、本発明に係る貫通孔及び打抜きバリは、ラベル貼付部の少なくとも一辺に沿って形成されていれば足りる。
【符号の説明】
【0057】
1,1a 自動車用RFIDタグ
2,2a シート状基材
3 RFIDラベル
4 粘着剤層
5 係合フック(フック形状)
6 係合孔
7 挿通口
9 突部
10 ラベル基材
11 ICチップ
12 アンテナ
14 ラベル貼付部
16 貫通孔
17 打抜きバリ
P バックミラー
Q,Q1,Q2 シャフト
S フロントガラス