(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053155
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】制御装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/16 20090101AFI20240408BHJP
H04W 16/28 20090101ALI20240408BHJP
H04W 72/20 20230101ALI20240408BHJP
H04W 88/12 20090101ALI20240408BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20240408BHJP
H04B 7/0413 20170101ALI20240408BHJP
【FI】
H04W48/16 130
H04W16/28 130
H04W72/04 136
H04W88/12
H04L27/26 113
H04L27/26 114
H04B7/0413
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159226
(22)【出願日】2022-10-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、「革新的情報通信技術研究開発委託研究/Beyond 5Gに向けたテラヘルツ帯を活用した端末拡張型無線通信システム実現のための研究開発 研究開発項目3 端末拡張型無線通信システム構築・制御技術 副題:Beyond5Gに向けたテラヘルツ帯を活用するユーザセントリックアーキテクチャ実現に関する研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092772
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 清孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119688
【弁理士】
【氏名又は名称】田邉 壽二
(72)【発明者】
【氏名】伊神 皓生
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067DD11
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE16
5K067EE24
(57)【要約】
【課題】参照信号の干渉を避けてAPクラスタを選択することができる制御装置を提供する。
【解決手段】複数の信号処理装置CPUの各々から、ユーザ端末UEとアクセスポイントAPとの間で上り及び/又は下りで送信される参照信号の受信電力の情報を受信する第1処理S12と、複数の信号処理装置CPUの各々から、当該信号処理装置CPUが受け持つユーザ端末UEからの参照信号に割り当てているリソースエレメントの情報を受信する第2処理S13と、第1処理で受信した受信電力の情報と第2処理で受信したリソースエレメントの情報とに基づいて、ユーザ端末UEごとに当該ユーザ端末UEを受け持つアクセスポイントAPを選択する第3処理S14と、を実行する
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ端末と、ユーザ端末との間で無線信号を送受信するアクセスポイントと、アクセスポイントについての信号処理を行う信号処理装置と、制御装置と、を備えるO-RAN(オープン無線アクセスネットワーク)仕様の無線アクセスネットワークにおける制御装置であって、
複数の前記信号処理装置の各々から、ユーザ端末とアクセスポイントとの間で上り及び/又は下りで送信される参照信号の受信電力の情報を受信する第1処理と、
複数の前記信号処理装置の各々から、当該信号処理装置が受け持つユーザ端末からの参照信号に割り当てているリソースエレメントの情報を受信する第2処理と、
前記第1処理で受信した受信電力の情報と前記第2処理で受信したリソースエレメントの情報とに基づいて、ユーザ端末ごとに当該ユーザ端末を受け持つアクセスポイントを選択する第3処理と、を実行することを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御装置は「NearRT RIC(Near-Real Time RAN Intelligent Controller)」を用いて実現され、前記信号処理装置はO-DU(O-RAN Distributed Unit)を用いて実現され、
前記第2処理の受信を、「NearRT RIC」とO-DUとの間のインタフェースを用いて実施することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第3処理では、受信電力が大きくなるように、且つ、複数の信号処理装置におけるリソースエレメントの重複を避けるように、前記選択することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第3処理では、第1ユーザ端末及び第1アクセスポイントの間のリソースエレメントに対してリソースエレメントが同一である1つ以上の第2ユーザ端末について、第1ユーザ端末及び第1アクセスポイントの間の受信電力を、当該1つ以上の第2ユーザ端末において同一のリソースエレメントに対応する受信電力の和で除算することで信号電力対干渉電力比を求め、当該信号電力対干渉電力比が小さいと判定される第1アクセスポイントを、第1ユーザについて選択されるアクセスポイントから除外することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
ユーザ端末と、ユーザ端末との間で無線信号を送受信するアクセスポイントと、アクセスポイントについての信号処理を行う信号処理装置と、制御装置と、を備えるO-RAN(オープン無線アクセスネットワーク)仕様の無線アクセスネットワークにおける制御装置が実行する方法であって、
複数の前記信号処理装置の各々から、ユーザ端末とアクセスポイントとの間で上り及び/又は下りで送信される参照信号の受信電力の情報を受信する第1手順と、
複数の前記信号処理装置の各々から、当該信号処理装置が受け持つユーザ端末からの参照信号に割り当てているリソースエレメントの情報を受信する第2手順と、
前記第1手順で受信した受信電力の情報と前記第2手順で受信したリソースエレメントの情報とに基づいて、ユーザ端末ごとに当該ユーザ端末を受け持つアクセスポイントを選択する第3手順と、を実行することを特徴とする方法。
【請求項6】
ユーザ端末と、ユーザ端末との間で無線信号を送受信するアクセスポイントと、アクセスポイントについての信号処理を行う信号処理装置と、制御装置と、を備えるO-RAN(オープン無線アクセスネットワーク)仕様の無線アクセスネットワークにおける制御装置としてコンピュータを機能させるプログラムであって、
複数の前記信号処理装置の各々から、ユーザ端末とアクセスポイントとの間で上り及び/又は下りで送信される参照信号の受信電力の情報を受信する第1処理と、
複数の前記信号処理装置の各々から、当該信号処理装置が受け持つユーザ端末からの参照信号に割り当てているリソースエレメントの情報を受信する第2処理と、
前記第1処理で受信した受信電力の情報と前記第2処理で受信したリソースエレメントの情報とに基づいて、ユーザ端末ごとに当該ユーザ端末を受け持つアクセスポイントを選択する第3処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オープン無線アクセスネットワークにおいてユーザ端末ごとのアクセスポイントクラスタを決定する制御装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のセルラーシステムでは、セル間で無線信号の干渉が生じることから、セル端において通信品質が劣化する課題があった。そこで、Beyond 5G(5G、第5世代移動通信システム)では、セル間の干渉を解消し、ユーザのスループットの均一化が可能な通信方式として、CF-mMIMO (Cell-free massive MIMO、セルフリーマッシブマイモ)が注目されている。分散配置されたAP(Access point、アクセスポイント)が送受信する信号をCPU(Central processing unit、中央処理ユニット)にて一括処理を行うことで、AP間で連携して各端末に対して空間多重する無線信号を最適化することができる。
【0003】
CPUにおける信号処理量を削減するため、ユーザ毎にデータを送受信するAP群(APクラスタ)を選択するAPクラスタ化技術が提案されている[非特許文献1]。ユーザ毎にAPクラスタの送受信信号のみを連携処理することで、CPUの信号処理量を削減することができる。
【0004】
図1は、既存手法である当該APクラスタ化技術を模式的に示す図であり、例EX1に示す通り、各UE(ユーザ端末)#1,#2について、UE#1はAP群としてAP#2~AP#4が選択されてサイト#1のCPUでその信号が一括処理され、UE#2はAP群としてAP#5~AP#7が選択されてサイト#2のCPUでその信号が一括処理される。
【0005】
具体的なAPクラスタの決定に関しては、ユーザの移動に応じて適切なAPクラスタを選択するため、O-RAN(オープン無線アクセスネットワーク)[非特許文献2]で規定されているRIC(RAN Intelligent Controller)を用いて、APクラスタを制御することができる[特許文献1]。また、CF-mMIMOではAPクラスタ選択手法として、既存IF(インタフェース)であるSS-RSRP(SS(同期信号)-基準信号受信電力)をもとにAPを選択する手法が提案[非特許文献1]されており、RSRPの最も高いAPをマスターAPとし、マスターAPのRSRPから閾値以内のAPを当該UEのAPクラスタとする。
【0006】
ここで、SS-RSRPは同期信号を用いた品質測定値として定められており[非特許文献3]、AP(RU)単位での受信電力をDU(CPUである分散ユニット)が把握できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】E. Bjornson and L. Sanguinetti, "Scalable Cell-Free Massive MIMO Systems," in IEEE Transactions on Communications, vol. 68, no. 7, pp. 4247-4261, July 2020.
【非特許文献2】O-RAN WG1、"Use Cases Detailed Specification"、v06.00.02
【非特許文献3】3GPP(登録商標) TS28.552、"5G performance measurements"、v16.1.0
【非特許文献4】3GPP(登録商標) TS38.211、 "Physical channels and modulation"
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術のAPクラスタ化技術では、参照信号の干渉が発生してしまうことがあった。
【0010】
すなわち、CF-mMIMOでは、参照信号から算出した推定チャネルを用いて、APクラスタで送受信した信号から干渉を取り除く処理を行う。参照信号として、上りポストコーディング用にDMRS(Demodulation Reference Signal、復調用参照信号)が、下りプリコーディング用にSRS(Sounding Reference Signal、サウンディング信号)が用いられる。
【0011】
DMRS/SRSで用いるRE(Resource Element、リソースエレメント)は、3GPP(登録商標)標準[非特許文献4]では、DU(CPUである分散ユニット)が接続するUE毎に割り当てる。DMRS/SRSで利用できるRE領域は、3GPP(登録商標)標準で規定されており、上限があるため、混雑状況によっては、同一のREを用いるUE間で参照信号の干渉が発生し、チャネル推定精度の劣化を招くことがある。チャネル推定精度が低い場合、MMSE(Minimum Mean Square Error、2乗誤差最小推定)等を用いた干渉除去処理が十分機能せず、無線品質が低下する恐れがある。
【0012】
図1の例EX2は、例EX1の状況に対して参照信号の干渉が発生した例であり、CPU#1において干渉除去を行ったものの、UE#1,#2間で参照信号のREが重複してしまっており、例えばAP#4において干渉が発生する。
【0013】
上記従来技術の課題に鑑み、本発明は、参照信号の干渉を避けてAPクラスタを選択することができる制御装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明は、ユーザ端末と、ユーザ端末との間で無線信号を送受信するアクセスポイントと、アクセスポイントについての信号処理を行う信号処理装置と、制御装置と、を備えるO-RAN(オープン無線アクセスネットワーク)仕様の無線アクセスネットワークにおける制御装置であって、複数の前記信号処理装置の各々から、ユーザ端末とアクセスポイントとの間で上り及び/又は下りで送信される参照信号の受信電力の情報を受信する第1処理と、複数の前記信号処理装置の各々から、当該信号処理装置が受け持つユーザ端末からの参照信号に割り当てているリソースエレメントの情報を受信する第2処理と、前記第1処理で受信した受信電力の情報と前記第2処理で受信したリソースエレメントの情報とに基づいて、ユーザ端末ごとに当該ユーザ端末を受け持つアクセスポイントを選択する第3処理と、を実行することを特徴とする。また、当該制御装置に対応する方法及びプログラムであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、リソースエレメントの情報を用いることで、参照信号の干渉を避けてAPクラスタを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】既存手法とその課題を模式的に示す図である。
【
図2】一実施形態に係る無線アクセスネットワークの構成例を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る通信制御システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図2は、一実施形態に係る無線アクセスネットワークの構成例を示すブロック図である。
図2に示される無線アクセスネットワーク(RAN)1は、O-RAN仕様が適用される。
【0018】
RAN1において、複数のアクセスポイント(AP)2(AP#1,AP#2,…)が分散配置される。RAN1において分散配置された複数のAP2の中から、ユーザ端末(UE)毎に無線信号を送受信するAPクラスタ(アクセスポイント群)が形成される。
図2の例では、例えばUE#1に対して、2台のAP2(AP#1,AP#2)からAPクラスタが形成される。UE#2等のその他のUEについても同様に、各UEに応じたAPクラスタが形成される。
【0019】
なお、
図2の例は、ある特定の1時刻(瞬間)についてUEごとに形成される特定のAPクラスタの例であり、時間進行に伴いUE等が移動することで、本実施形態のRAN1によって構成されるAPクラスタ群も時々刻々と動的に変化することとなる。
【0020】
あるUEのAPクラスタの各AP2は、自己のアンテナ3により、当該UEとの間で無線信号を送受信する。例えばUE#1のアクセスポイント群の2台のAP2(AP#1,AP#2)が、それぞれのアンテナ3によりUE#1との間で無線信号を送受信する。
【0021】
各APクラスタは、自己を受け持つO-DU(分散ユニット)6に通信接続される。O-DU6は、自己が受け持つAPクラスタに関する信号処理を実行する。
図2の例では、例えばO-DU#1は、UE#3のAPクラスタ(AP#4,AP#5,AP#6)に関する信号処理を実行する。その他のO-DU#2等も同様に、各自が受け持つAPクラスタに関する信号処理を実行する。
【0022】
O-DU6が実行するアクセスポイント群に関する信号処理は、例えばSU-MIMO(Single User MIMO、シングルユーザMIMO)やMU-MIMO(Multi-User MIMO、マルチユーザMIMO)等の信号処理である。
【0023】
O-DU#1は、セントラルサイト(Central site)4に設けられており、コアネットワークCNWに接続される。O-DU#2は、エッジサイト(Edge site)#1_5(ここで、識別番号#1と参照符号5とを区別するための区切りとしてアンダーバーを用いており、以下同様とする。)に設けられており、セントラルサイト4を介してコアネットワークCNWに接続される。エッジサイト#1_5には、MEC(Multi-access Edge Computing、マルチアクセスエッジコンピューティング)サーバ7が設けられる。O-DU#3は、エッジサイト#2_5に設けられている。エッジサイト#2_5には、MECサーバ7が設けられる。
【0024】
通信制御システム10は、各サイト4,5に通信接続する。通信制御システム10は、各O-DU6に対する制御を行う。通信制御システム10は、UEに対応するAPクラスタを形成するための情報をO-DU6へ提供する。O-DU6は、通信制御システム10から提供された情報に基づいて、自己が受け持つUEに対応するAPクラスタを形成する。
【0025】
図3は、一実施形態に係る通信制御システム10の構成例を示すブロック図である。通信制御システム10は、「Non-RT RIC(非リアルタイムRANインテリジェントコントローラー)」11と、「Near-RT RIC(ニアリアルタイムRANインテリジェントコントローラー)」12とを備える。「Non-RT RIC」11は、SMO(Service and Management Orchestration)フレームワークを用いて実現される。
【0026】
「Non-RT RIC」11及び「Near-RT RIC」12は、O1インタフェースを介して、O-DU6から、例えばKPI(主要性能指標)等の情報を収集する。O1インタフェースは、O-RAN(前掲の非特許文献2)仕様で規定される。O1インタフェースによって収集可能なパラメータは、前掲の非特許文献3に規定されるパラメータに対応する。例えば、「DL PRB usage」、「UL PRB usage」、「Average DL UE throughput」、「Average UL UE throughput」、「Number of PDU Sessions requested」等のパラメータである。
【0027】
「Non-RT RIC」11は、O-DU6から収集した情報を解析し、解析結果に基づいて「Near-RT RIC」12に対する設定変更を行う。ここで、「Non-RT RIC」11は、A1インタフェースを介して、「Near-RT RIC」12へ設定変更情報を提供する。A1インタフェースは、O-RAN仕様で規定される。
【0028】
「Near-RT RIC」12は、O-DU6から収集した情報を解析し、解析結果に基づいてO-DU6に対する設定変更を行う。ここで、「Near-RT RIC」12は、E2インタフェースを介して、O-DU6へ設定変更情報を提供する。E2インタフェースは、O-RAN仕様で規定される。
【0029】
なお、
図3内にも示される通り、機能的な構成として、「Non-RT RIC」11は第1制御装置を構成し、「Near-RT RIC」12は第2制御装置を構成し、また、O-DU6は信号処理装置を構成する。
【0030】
以下、本実施形態による干渉除去を実現するクラスタ選択手法を説明する。本実施形態は概要的には次の通りであり、既存手法の枠組みにおいて収集する情報を追加するものである。
【0031】
すなわち、非特許文献1や3の既存手法によるクラスタ選択には次の問題があった。具体的に、DUからRICへとクラスタ選択のために収集される情報にSS-RSRP等の電力情報が含まれているものの、上下リンク各々で用いる参照信号であるDMRS/SRSリソースのUE毎への割り当て情報が含まれていなかったため、RICにおいて当該情報を把握できていなかった。(すなわち、既存手法において、E2/O1インタフェースでは、3GPP(登録商標) 28.552[非特許文献3]で規定されているPerformance Measurements(性能測定)情報を収集することができる。3GPP(登録商標) 28.552ではMU-MIMO関連のPerformance Measurementsとして「Scheduled PUSCH/PDSCH RBs per layer of MU-MIMO」等のスケジューリングの統計情報やSS-RSRP等の電力情報が規定されているが、DMRS/SRS関連の情報は規定されていなかった。)
【0032】
このため、既存手法ではRICがDMRS/SRSのリソースがUE間で重複することにより発生する干渉が高いAPを特定できず、SS-RSRPは高いがDMRS/SRSの干渉によりチャネルの推定精度が低いAPを、RICがAPクラスタとして選択してしまう場合があった。結果として、チャネルの推定精度が低く、実チャネルと推定チャネルの誤差が大きいAPでは、MIMOによる干渉分離が十分に機能せず、高い無線品質を確保できない恐れがあった。
【0033】
上記問題を踏まえ、本実施形態では、上下リンク別に以下の2つの参照信号のリソース割り当て情報をDUからRICへのデータ収集IF(O-RANのE2/O1インタフェース)に追加して、これらの情報に基づき、APクラスタを形成する制御を行う。なお、結果として形成されるAPクラスタは、上りと下りで同じになることが多いと考えられるが、上りと下りで形成されるAPクラスタが違うものとなる場合もありうる。
(1)上りに関して、DMRSのリソース割り当て情報
(2)下りに関して、SRSのリソース割り当て情報
【0034】
図4は、上記(1)上りに関する本実施形態の手順図であり、
図5は、上記(2)下りに関する本実施形態の手順図である。なお、
図4及び
図5では、動作主体としてUE、AP、CPU、Near-RT RICが現れる。これらはそれぞれ、前述の
図2及び
図3におけるUE#1,#2,…等の各々、AP2の各々、O-DU6のうちの任意の1台、「Near-RT RIC」12に対応するものであるが、区別が明らかであるため符号を付すことは省略して、
図4,5内に示されるようにUE、AP、CPU、Near-RT RICと称する。
【0035】
さらに、以下の説明において、Near-RT RICに関しては、RICと略称するものとする。
【0036】
なお、
図4及び
図5の手順が開始される前には、予めAPクラスタが形成されており、
図4及び
図5の手順により、APクラスタを再形成することができる。予めAPクラスタを形成する手法としては例えば前掲の特許文献1の手法に従い、以下の(a)、(b)のようにしてよい。
(a)分散配置された複数のAPの中からUE毎に無線信号を送受信するAP群の構成を示すアクセスポイント群情報(UE毎のAPクラスタの情報)をRICからCPUへ送信する。
(b)CPUは、RICから当該送信されたアクセスポイント群情報を受信し、受信した前記アクセスポイント群情報に基づいて、アクセスポイトに関する信号処理(干渉除去によるチャネル推定等)を実行し、UE毎のAPクラスタを形成する。
【0037】
あるいは、本実施形態の手法でAPクラスタを再形成することを、継続的に実施するようにしてもよい。
【0038】
以下、
図4の上りに関する実施形態の各ステップを説明する。
【0039】
ステップS10では、各UEが、SS-RSRPの計測用参照信号を対応するAP(当該UEに既に決定されているAPクラスタのUE)に送信し、APにおいてSS-RSPRの受信電力を計測する。ステップS11では、各APが、UEごとに計測したSS-RSPRの情報をCPUに送信する。
【0040】
ステップS12では、CPUがSS-RSPRの情報(当該CPUが担当する全AP及び全UEのSS-RSPRの情報)を、E2インタフェースを介してRICに送信する。
【0041】
ステップS13では、概要で前述した通りの本実施形態での追加収集情報として、CPUがDMRSのリソース割り当て情報を、E2インタフェースを介してRICに送信する。すなわち、CPUが担当して管理している全UEについて、DMRS参照信号のリソース(RB(リソースブロック)での周波数帯域)割り当て情報を、RICへと送信する。(なお、
図4のフローの開始前に既に形成されているクラスタについて、CPUがこのDMRS参照信号のリソース割り当て情報を把握しているので、この情報を再形成のためにRICへ送信することができる。)
【0042】
ステップS14では、CPUが、ステップS12,S13にて受信した各情報を用いることにより、UEごとに形成するAPクラスタを選択する。ステップS15では、当該選択したAPクラスタの情報を、CPUがE2インタフェースを介してCPUへ送信する。ステップS16では、当該選択され送信されたAPクラスタによりCPUにおいてAPクラスタを更新して、当該更新されたAPクラスタを形成させるよう、各APおよび各UEに指示を送信する。
【0043】
ステップS14のクラスタ選択は、ステップS12で受信したSS-RSPRの情報を用いることで選択してよく、例えば、前述の非特許文献1の既存手法のように、RSRPの最も高いAPをマスターAPとし、マスターAPのRSRPから閾値以内のAPを当該UEのAPクラスタとするようにしてよい。
【0044】
一方で、本実施形態ではさらに、上記の通りSS-RSPRの情報に基づくクラスタ選択において、ステップS13で受信したDMRSのリソース割り当て情報を用いた制約を課すようにすることで、干渉が発生しうるAPが選択されないようにすることができる。具体的に、以下の処理1,2により、干渉が発生しうるAPを除外することができる。
【0045】
(処理1) 参照信号の干渉状態を把握するため、同一のリソースが割り当てられたUE間のUE-APの組毎のSIR(信号電力対干渉電力比)を以下の通り算出する。
参照信号SIR=S/I
【0046】
ここで、SはUE_k(kはUEの識別子でk=1,2,…等)とAP_i(iはAPの識別子でi=1,2,…等)との間のRSRPとしてステップS12で受信している値であり、Iは当該UE_k自身以外の他のUE_k'(k'≠k)で、UE_kと同一リソース(同一周波数帯でのDMRS信号が同一リソースに該当し、対象APを問わない)を利用する全てのUE_k'からのRSRPの合算値である。
【0047】
(処理2) 上記算出したSIRが閾値以下となるAP_iは、UE_kのAPクラスタに含めないように、クラスタ選択の制約を課す。(SIRが閾値より大きければこの制約は課さない。)
【0048】
ステップS14では以上のようにして、チャネル推定精度が低いAPを避けたAPクラスタを再形成し、ステップS16においてAPクラスタを当該再形成されたものに更新することで、続くステップS17以降でのチャネル推定精度が低くなることを防ぎ、無線品質を向上させることができる。
【0049】
ステップS17では当該再形成されたAPクラスタのもとで、各UEから対応するAPへとRBごとにDMRS及びデータを格納した信号を送信し、ステップS18では各APが当該DMRS信号及びデータを復調した結果をCPUへと送信し、ステップS19では、当該結果を用いてチャネル推定し、ステップS20では当該チャネル推定結果のウェイト(送信側のUEから受信側のAPへの伝送路の特性を推定したチャネルマトリクス)を生成し、ステップS21ではポストコーディング処理を行い、
図4のフローを終了する。
【0050】
以下、
図5の下りに関する実施形態の各ステップを説明する。
【0051】
ステップS30では、各APが、SS-RSRPの計測用参照信号を対応するUE(当該APに既に決定されているAPクラスタに属するUE)に送信し、UEにおいてSS-RSPRの受信電力を計測し、計測結果をAPに返信する。ステップS31では、各APが、UEごとに計測したSS-RSPRの情報をCPUに送信する。
【0052】
ステップS32では、CPUがSS-RSPRの情報(当該CPUが担当する全AP及び全UEのSS-RSPRの情報)を、E2インタフェースを介してRICに送信する。
【0053】
ステップS33では、概要で前述した通りの本実施形態での追加収集情報として、CPUがSRSのリソース割り当て情報を、E2インタフェースを介してRICに送信する。すなわち、CPUが担当して管理している全UEについて、SRS参照信号のリソース(RB(リソースブロック)での周波数帯域)割り当て情報を、RICへと送信する。(なお、
図5のフローの開始前に既に形成されているクラスタについて、CPUがこのDMRS参照信号のリソース割り当て情報を把握しているので、この情報を再形成のためにRICへ送信することができる。)
【0054】
ステップS34では、CPUが、ステップS32,S33にて受信した各情報を用いることにより、UEごとに形成するAPクラスタを選択する。ステップS35では、当該選択したAPクラスタの情報を、CPUがE2インタフェースを介してCPUへ送信する。ステップS36では、当該選択され送信されたAPクラスタによりCPUにおいてAPクラスタを更新して、当該更新されたAPクラスタを形成させるよう、各APおよび各UEに指示を送信する。
【0055】
ステップS34のクラスタ選択は、ステップS32で受信したSS-RSPRの情報を用いることで選択してよく、例えば、前述の非特許文献1の既存手法のように、RSRPの最も高いAPをマスターAPとし、マスターAPのRSRPから閾値以内のAPを当該UEのAPクラスタとするようにしてよい。
【0056】
一方で、本実施形態ではさらに、上記の通りSS-RSPRの情報に基づくクラスタ選択において、ステップS33で受信したSRSのリソース割り当て情報を用いた制約を課すようにすることで、干渉が発生しうるAPが選択されないようにすることができる。具体的には、
図4のステップS14と同様であるが、ステップS14では上りリンクの場合の情報としてDMRSの情報を用いていたのに対し、当該ステップS34では、下りリンクの場合の情報としてSRSの情報を用いて、前記処理1,2による前記参照信号SIR=S/Iの算出及び閾値判定を行えばよい。
【0057】
ステップS34では以上のようにして、チャネル推定精度が低いAPを避けたAPクラスタを再形成し、ステップS36においてAPクラスタを当該再形成されたものに更新することで、続くステップS37以降でのチャネル推定精度が低くなることを防ぎ、無線品質を向上させることができる。
【0058】
ステップS37では当該再形成されたAPクラスタのもとで、各UEから対応するAPへとSRS信号を送信し、ステップS38では各APが当該SRS信号の受信電力をCPUへと送信し、ステップS39では、CPUが当該結果を用いてチャネル推定し、ステップS40では当該チャネル推定結果のウェイト(送信側のUEから受信側のAPへの伝送路の特性を推定したチャネルマトリクス)を生成し、ステップS41ではCPUがプリコーディング処理を行い、ステップS42ではCPUがDLデータ(プリコーディング処理で得た重み)をAPへ送信し、ステップS43ではAPが当該受信したDLデータをさらにUEへと送信し、
図5のフローを終了する。
【0059】
以上、本発明の実施形態によれば、参照信号の干渉を避けてAPクラスタを選択することができる。以下、種々の補足例、代替例、追加例などについて説明する。
【0060】
<ハードウェア構成や本実施形態をプログラムとして提供することについて>
通信制御システム10の各機能は、通信制御システム10がCPU及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、通信制御システム10として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、通信制御システム10は、通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、通信制御システム10の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、通信制御システム10は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又は通信制御システム10の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。
【0061】
本実施形態の通信制御システム10によれば、情報通信技術のインフラ整備に寄与することができる。これにより、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0062】
10…通信制御システム、11…Non-RT RIC(第1制御装置)、12…Near-RT RIC(第2制御装置)、6…O-DU(信号処理装置)