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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053158
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】木目調塗装用刷毛
(51)【国際特許分類】
   B05C 17/12 20060101AFI20240408BHJP
   A46B 11/02 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B05C17/12
A46B11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159233
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】598149312
【氏名又は名称】株式会社オンテックス
(74)【代理人】
【識別番号】100086346
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 武信
(72)【発明者】
【氏名】小笹 公也
(72)【発明者】
【氏名】小笹 竜太朗
【テーマコード(参考)】
3B202
4F042
【Fターム(参考)】
3B202AA32
3B202AB01
3B202CA02
3B202CA07
3B202EA01
3B202EA06
3B202EC06
3B202EE01
3B202FA04
4F042AA02
4F042AA17
4F042AB00
4F042FA22
4F042FA24
4F042FA30
4F042FA35
4F042FA59
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、木目調のグラデーションを呈する塗装を容易に行うことができる塗装用刷毛を提供する。
【解決手段】本発明に係る塗装用刷毛は、先端に毛束2を有する柄1を備え、柄1は液状の塗料を収容することができる2つ以上の押圧容器3を備え、塗料を収容した押圧容器3の夫々へ押圧を加えても、柄1は変形せずに押圧容器3の夫々を支持でき、柄1を掴んだ手の指先で押圧容器3を直接押圧し押圧容器3を縮小させることにより毛束2へ塗料を吐出させることができ、押圧容器3以外から毛束2への塗料の供給を受けずに塗装を可能とし、押圧容器3同士は互いに異なる色の塗料を収容するものであり、押圧容器3を選んで押圧を行うことにより或いは押圧する力の加減を押圧容器3毎に変えることにより、毛束2へ着ける塗料の色合いを変化させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄と、前記柄の先端に設けられた毛束とを備えた木目調塗装用刷毛であって、前記柄へ2つ以上の押圧容器が設けられ、
前記押圧容器の夫々には、液状の塗装剤を収容することができ、且つ、指先で前記押圧容器を押圧することにより、少なくとも前記押圧をしている間前記押圧容器の容積を縮小させることができ、
前記塗装剤を収容した前記押圧容器の夫々へ前記押圧を加えても、前記柄は変形せずに前記押圧容器の夫々を支持でき、
前記柄を掴んだ手の指先で前記押圧容器を直接押圧し前記押圧容器を縮小させることにより前記毛束へ向け収容した前記塗装剤を吐出させることで、前記毛束へ前記塗装剤を供給することができ、前記塗装用刷毛以外の他から、即ち前記押圧容器以外から前記毛束への塗装剤の供給を受けずに塗装を可能とするものであり、
前記押圧容器の少なくとも1つは、他の前記押圧容器に収容された塗装剤と異なる色の塗装剤を収容するものであり、
前記押圧容器を選んで前記押圧を行うことにより或いは前記押圧する力の加減を前記押圧容器毎に変えることにより、前記毛束へ着ける塗装剤の色合いを変化させることができる木目調塗装用刷毛。
【請求項2】
前記押圧容器は、前記塗装剤を収容する収容部と、前記収容部へ収容した前記塗装剤を吐出する口とを備え、
前記柄は、前記押圧容器を固定する固定部材を備え、
前記押圧容器の夫々は、前記固定部材にて、前記口を毛束に向け前記柄へ着脱自在に取り付けられたものであり、前記柄から前記押圧容器を取り外して、前記塗装剤を充填するか或いは前記塗装剤を充填されている他の押圧容器と交換することができる請求項1記載の木目調塗装用刷毛。
【請求項3】
個々の前記押圧容器は、スポイト、ピペット、チューブ、注射器の、少なくとも何れかであり、
前記毛束を設けられた前記柄の先端部は、前記毛束の毛幅に合わせて前記柄の後部側よりも幅を広く形成されて前記柄の頭部を構成し、前記柄の前記後部側を把手として掴むことができ、
前記頭部において前記毛幅に対応する幅を備えた一側面には、夫々前記柄の長手方向に伸び前記押圧容器の少なくとも一部を受容する凹部が、前記押圧容器の受容部として少なくとも2本互いに略平行に設けられ、
前記柄には、前記受容部の夫々を横断する帯状又は板状の部材が前記固定部材として取り付けられ、
前記固定部材は、前記受容部に受容された前記押圧容器の夫々が前記受容部から脱落しないよう、前記押圧容器を拘束するものであり、
前記固定部材の少なくとも一端を前記柄から取り外すことにより、前記押圧容器を前記受容部から取り出すことが可能な請求項2記載の木目調塗装用刷毛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木目調塗装用刷毛に関する。
【背景技術】
【0002】
インテリアに木材を使用する場合、例えば10mを超える一枚物の板材は、その大きさ故、建物に搬入したり、購入先へ納品したり、室内へ設置するのは、困難な場合が多々ある。また森林資源の枯渇や環境への配慮、材料費や流通コスト抑制の面から、木材の使用を回避しようとする社会の趨勢もある。
【0003】
上記を鑑み、本願の発明者は、壁に貼る壁紙へ木目調の塗装を施し、木材の使用に代えることを検討した。
例えば、インテリアに用いられる木材として、高価なマホガニー(ホンジェラス・マホガニー)と共に、木肌が当該マホガニーにも劣らない高級感のある、アフリカ原産のサペリ(アフリカン・マホガニー)のニーズが高い。このことから、本願の発明者はサペリ調の塗装を壁紙に施すことを考えた。サペリはセンダン科の広葉樹であり、美しい木目を備える木材である。
【0004】
上記検討中、サペリを模した木目調の塗装を施すには、単に異なる複数色の塗料の夫々を用いて塗装を行うのみでは、見た目に自然なサペリ柄を壁紙へ再現するのは困難と思われた。
サペリ柄に限らずインテリアへのニーズの高い多くの木材について、その木肌を模すには、異なる色での単なる塗り分けでは足りず、異なる色間におけるグラデーションを表現する必要が多々あるからである。
【0005】
しかし、上記のグラデーションによる木肌の表現は、絵心のある熟練者を必要とし、塗装の出来栄えは塗装を行う作業者の腕に大きく左右されるものである。
また、従来の手法では、異なる色の塗料を収めた複数の塗料缶を用意し、各塗料缶へ順次刷毛を浸けて色を混合し、塗装を行うことになるが、熟練者にとっても一塗りで木目(木肌)に模した上記グラデーションを描けるように二種の塗料の適切に刷毛に付着させるのは極めて難しい作業である。
【0006】
一方、最近では木材の現物を使用するのに代えて、塗料の塗布により金属板表面へ木目模様を形成する方法も提案されてはいる(特許文献1)。
特許文献1は、異なる2種の塗料を用いることで木目模様を形成することを提案するものであり、刷毛を使用して上記各塗料を塗布することで木目模様を被塗装部材である金属板表面へ形成するものである。
【0007】
即ち、特許文献1に示されたものは、被塗布部材の表面に木目模様の基調となる色の第1の塗料を塗布し、この第1の塗料が塗布された上記被塗布部材の表面に、上記第1の塗料とは異なる色であり且つこの第1の塗料よりも100倍以上2000倍以下に溶剤で希釈された第2の塗料を、毛先がばらけて粗密ができた刷毛で塗布して、上記第1の塗料が塗布された上記被塗布部材の表面に木目模様を形成する塗布方法である。
【0008】
壁紙へ塗装を行う場合焼き付け塗装はできないが、特許文献1の塗布方法を上記壁紙の塗装に利用し、壁紙へ通常の刷毛にて第1の塗料を塗付した後、第2の塗料を希釈し毛先の散らけた粗密のできた刷毛で熟練者が塗布することにより、上記グラデーションに近いものが得られるかも知れない。
しかし、特許文献1の塗布方法において、色の異なる2種以上の塗料を順次塗り重ねる必要があり、一塗りでグラデーョンを得ようとするものではない。
【0009】
また、一塗りでグラデーションを得るという以前に、上述の通り、塗料缶や塗料を希釈した容器へ刷毛を浸けて塗料を刷毛へ付着させる旧来の手法では、塗料の毛束への付着量の制御が難しく、色の異なる塗料間の付着比率も作業者によって或いは同じ作業者でもその時々によって異なるものとなり、確実に所望のグラデーションを得られるものでは無いのである。
【0010】
他方において、塗料缶へ刷毛を浸けて塗料を刷毛の毛束へ付着させる上記旧来の手法を見直し、効率よく塗装を行うために、刷毛とは別にタンクなど塗料の収納手段を用意し、刷毛と当該収納手段とを管で繋いで、当該収納手段から刷毛へ塗料を供給する方法も提案され利用されている(特許文献2及び3)。
【0011】
しかし、刷毛と別体の上記タンクを刷毛と管で接続するのでは、管に繋がれた刷毛の取り回しも面倒であり、また、上記タンクから塗料を刷毛へ圧送するコンプレッサなどの圧送手段が必要となる。
このように特許文献2や3へ示された装置では、刷毛周辺の構成が肥大化し重量も増大し、旧来の軽やかな刷毛捌きを阻害する、大掛かりな装置となってしまう。
【0012】
尚、特許文献2及び3と異なり、塗料を吸排する圧縮半球を刷毛に形成しコンプレッサなどの圧送手段を設けず塗料を毛束へ供給する提案もあるが(特許文献4)、圧縮半球の構成が不明であり、更に、別途、塗料缶と、当該塗料缶と刷毛との間を連絡する補給管の夫々を必要とし、取り回しが面倒である点は、特許文献2及び3と大きく異なるものではない。
【0013】
結局特許文献2~4へ示された塗付具を改良して、二色の塗料で塗装を行うことを可能にしようとすれば、上記タンク(塗料缶)や管を夫々2つづつ用意しなくてはならず、当初より大掛かりな塗付用具の更なる肥大化に拍車を掛け、当該塗付用具の取り回しも更に面倒なものとなってしまう。
勿論二色間のグラデーションを得るためには上記改良に加え刷毛への両塗料の供給比率を適切に変化させる手段も必要となるが、多色による塗装を前提としない特許文献2~4の何れにあっても、上記供給比率を変化させる即ち一塗りで所望のグラデーションを得るための具体的手段は示されてはいない。
【0014】
この他、刷毛とタンク等の塗料の上記収納手段とを管で接続して塗料を刷毛へ供給する構成を排除した塗付具も提案されてはいる(特許文献5)。
特許文献5へ示された塗料の塗布具は、塗料容器の口へ刷毛先端の毛束を取り付けて、容器自体を握ることで容器自体を把手とすると共に容器を絞って上記毛束へ塗料を供給するという、他から塗料の供給を必要としない自己完結した塗付具であり、他に用意された上記の塗料の収納手段と刷毛とを管で繋ぎ上記コンプレッサにて上記収納手段から刷毛へ塗料を供給するという上記構成は排除されている。
【0015】
しかし、特許文献5に示されたものは、上記の通り塗料を収容する容器自身を把手として掴み圧縮変形させて塗料を毛束へ送る必要があり、変形しない即ち形状の安定した柄を握って塗装を行う通常の刷毛捌きを行うのは難しい。例えば使用により容器中の塗料が減少すれば徐々に容器は剛性を失い握った感触も変化し、違和感を感じさせるものとなり従来の刷毛のように扱うのは難くなる。
【0016】
またこの特許文献5に示された塗付具も、色の異なる二種類の塗料を用いるものではなく、当然一塗りで両塗料間のグラデーションを得るための毛束へ供給する両塗料の比率を変化させる手段など期すべくもない。従って、特許文献5へ示された塗付具も、上記特許文献2~4に示され塗付具と同様、二種類の塗料による塗装を可能にしようとすれば、塗付具へ容器を2つ備えるものとし更に両容器から供給される塗料間の比率を変化させる手段を必要とする。とりわけ、塗料の容器が把手を兼ねる特許文献5の容器を2つ備えるものとすれば容器を圧縮変形させるどころか、握ることもままならなくなってしまい、毛束へ供給する二種の塗料間の比率を適切に変化させるどころではない。
【0017】
上述した通り、特許文献2~5の何れの塗布具も、従来の一般的な刷毛の使用感を損なわずに、多色の塗装を行おうとするものではなく、また特許文献1~5から、一塗りで簡単に多色間の所望のグラデーションを描くことができる刷毛を創作するのは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許第4264491号公報
【特許文献2】特開2002-143753号公報
【特許文献3】実開昭48-109237号公報
【特許文献4】実開昭56-98030号公報
【特許文献5】実開昭54-148664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
結局、一般的な刷毛を塗料缶へ逐次浸けて塗装を行う旧来の塗装方法では経験の浅い作業者が一度に多色により木肌を模した塗装を行うのは簡単ではなく、特許文献1に見られるように色毎に複数回塗装対象面を塗り重ねるなどの工夫が求められるし、色を変えて複数塗り重ねるとしても仕上がりを予想して先に塗った塗料が乾く前に塗装対象面上へ色を塗り重ねる必要があり、必ずしも所望の自然なグラデーションを簡単に得られるというものではない。改造なしに敢えて特許文献2~5の塗料の塗付具を用いて複数の色による塗装対象面への塗料の塗布を行おうとすれば、収容する色毎に異なる容器を付け替える作業を強いられたり、複数の塗布具を交互に用いて塗装を行う必要に迫られるし、木肌を模したグラデーションについては、上記の通り特許文献2~5の塗料の塗付具ではそもそも一筆(ひとふで)即ち一塗りで得る術はなく色毎に塗り重ねる工夫を必要とする点は、経験の浅い作業者にとっての上記旧来の塗装方法での塗装と変わらない。
【0020】
本発明は、発明者の奇抜な発想によってなされたものであり、従来の刷毛の使用感を損なうことなく、木肌を模した多色間のグラデーションを一塗りで簡便に壁紙へ再現することが可能な木目調塗装用刷毛を提供せんとする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、柄と、前記柄の先端に設けられた毛束とを備えた木目調塗装用刷毛であって、前記柄へ2つ以上の押圧容器が設けられ、前記押圧容器の夫々には、液状の塗装剤を収容することができ、且つ、指先で前記押圧容器を押圧することにより、少なくとも前記押圧をしている間前記押圧容器の容積を縮小させることができ、前記塗装剤を収容した前記押圧容器の夫々へ前記押圧を加えても、前記柄は変形せずに前記押圧容器の夫々を支持でき、前記柄を掴んだ手の指先で前記押圧容器を直接押圧し前記押圧容器を縮小させることにより前記毛束へ向け収容した前記塗装剤を吐出させることで、前記毛束へ前記塗装剤を供給することができ、前記塗装用刷毛以外の他から、即ち前記押圧容器以外から前記毛束への塗装剤の供給を受けずに塗装を可能とするものであり、前記押圧容器の少なくとも1つは、他の前記押圧容器に収容された塗装剤と異なる色の塗装剤を収容するものであり、前記押圧容器を選んで前記押圧を行うことにより或いは前記押圧する力の加減を前記押圧容器毎に変えることにより、前記毛束へ着ける塗装剤の色合いを変化させることができる木目調塗装用刷毛を提供する。
尚、上記の塗装剤には、広義の塗料を含む他、塗料の溶剤も含む。また、色とは、有彩色は勿論、無彩色や透明も含む。例えば、本発明には、各押圧容器へ互いに異なる有彩色の塗料を収容する場合を含む他、一方の押圧容器へ有彩色の塗料を収容し他の一方の押圧容器へ透明な希釈剤を収容して、希釈剤による塗料の希釈の調整でグラデーションを得るものも含む。また上記広義の塗料には狭義の塗料の他ペンキも含む。
また本発明では、前記押圧容器は、前記塗装剤を収容する収容部と、前記収容部へ収容した前記塗装剤を吐出する口とを備え、前記柄は、前記押圧容器を固定する固定部材を備え、前記押圧容器の夫々は、前記固定部材にて、前記口を毛束に向け前記柄へ着脱自在に取り付けられたものであり、前記柄から前記押圧容器を取り外して、前記塗装剤を充填するか或いは前記塗装剤を充填されている他の押圧容器と交換することができる木目調塗装用刷毛を提供できた。
更に本発明では、個々の前記押圧容器は、スポイト、ピペット、チューブ、注射器の、少なくとも何れかであり、前記毛束を設けられた前記柄の先端部は、前記毛束の毛幅に合わせて前記柄の後部側よりも幅を広く形成されて前記柄の頭部を構成し、前記柄の前記後部側を把手として掴むことができ、前記頭部において前記毛幅に対応する幅を備えた一側面には、夫々前記柄の長手方向に伸び前記押圧容器の少なくとも一部を受容する凹部が、前記押圧容器の受容部として少なくとも2本互いに略平行に設けられ、前記柄には、前記受容部の夫々を横断する帯状又は板状の部材が前記固定部材として取り付けられ、前記固定部材は、前記受容部に受容された前記押圧容器の夫々が前記受容部から脱落しないよう、前記押圧容器を拘束するものであり、前記固定部材の少なくとも一端を前記柄から取り外すことにより、前記押圧容器を前記受容部から取り出すことが可能な木目調塗装用刷毛を提供できた。
【発明の効果】
【0022】
本発明の木目調塗装用器具では、着脱自在に柄へ取り付けられた少なくとも2つの押圧容器に対し柄を掴んだ手の指先で力を加えることで、塗装剤を毛束へ着けることができ、柄の操作にて壁紙など塗装対象面へ当該毛束を当接させて、塗装剤を塗装対象面へ塗布することができる。
特に両押圧容器の夫々へ互いに異なる色の塗装剤を充填しておき、当該塗装用刷毛にて塗装対象面を塗装中、上記の押圧容器を選んで押圧をすることにより或いは押圧する力の強弱を上記押圧容器毎に変えることにより、毛束へ着ける塗装剤の色合いを変化させて、比較的簡単に塗装対象面へ所望のグラデーションを表現することができる。
例えば、一方の押圧容器へ焦げ茶色の塗料を収容し、他の一方の押圧容器へ黄土色の塗料を充填し、押圧する押圧容器を選択し或いは両押圧容器を異なる強さで押圧することにより、塗装する色合いを徐々に変化させて、塗装対象面へ木目を模したグラデーションを持った塗装を行うことを容易とした。
また、本発明では、柄へ着脱自在に設けた押圧容器にて毛束へ塗装剤を供給するものとすることにより、簡単な構成で毛束へ塗装剤を供給ことができる刷毛を提供できた。
上記の通り、本発明では、刷毛に取付けた複数の押圧容器を指先の力の調整によって、二色以上の混合比率を毛束上で自在に行え、極めて簡単に木目を模するに適したグラデーションを塗装対象面へ簡単に描くことができるものであるため、特にサペリ調の(サペリ材を模した)塗装を施すのに適する。
また、本発明では、刷毛単体で、塗装剤の供給を可能として刷毛を取り扱い易いものとし、大がかりな周辺機材を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(A)は本発明の一実施の形態に係る塗装用刷毛を立てた全体正面図、(B)は(A)へ示す塗装用刷毛の全体側面図。
図2】(A)は図1のX-X位置における柄の横断面図、(B)は(A)の塗装用刷毛について柄を縦断面で示す全体側面図、(C)は(A)及び(B)の押圧容器の変更例を示す正面図、(D)は(A)及び(B)の押圧容器の更なる変更例を示す正面図。
図3図1の塗装用刷毛について、固定部材(バンド)を開いて押圧容器(スポイト)を取り外した状態を示す全体正面図。
図4】(A)は図3のY-Y位置における柄の横断面図、(B)及び(C)は図1の塗装用刷毛の使用状態を示す一部切欠側面図。
図5図1へ示す塗装用刷毛について、塗装剤を充填した押圧容器を指で押圧する状態を示す全体正面図。
図6図5の塗装用刷毛を用いて壁紙へ塗装を施す状態を示す一部切欠説明図。
図7】(A)は上記塗装用刷毛の変更例を示す図1のX-X位置における柄の横断面図、(B)は(A)の固定部材を開いた状態を示す図1のX-X位置における柄の横断面図、(C)は上記塗装用刷毛の更に他の変更例を示す図1のX-X位置における柄の横断面図、(D)は(C)のスポイトを外した状態を示す図1のX-X位置における柄の横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。説明の便宜上、図中Uを上方、Sを下方、Fを前方、Bを後方、Lを左方、Rを右方として説明する(特に刷毛各部の寸法の説明において参照されたい)。
【0025】
(基本構成)
この塗装用刷毛は、使用者(塗装作業者)に握られる柄1と、玉又は毛玉と呼ばれ根本を柄1の先端へ固定された毛束2と、互いに異なる色の塗装剤を収容する2つの押圧容器3と、柄1へ着脱自在に押圧容器3の夫々を固定する固定部材4とを備える(図1図2(A)(B)、図3)。
以下、各構成について順に説明する。
【0026】
(柄1及び毛束2)
柄1は、上記使用者に握られる把手11(ハンドル)と、頭部12(頭)とを備える。
柄1の素材については、既成の刷毛とほぼ同様の寸法の木又は樹脂、アルミニウムなどの軽量の金属とすることができる。
柄1の長手方向(刷毛を縦にして示す図1(A)(B)の上下方向)について、把手11は柄1の後部側(図1(A)(B)へ示す柄1の上部側)を構成し、頭部12は柄1の先端部(図1へ示す柄1の下端部)を構成する。
【0027】
頭部12先端の顎13(あご)へ毛束2が取り付けられ(顎13間に挟まれ)、金属板や樹木の皮などの帯状の巻締部材14を巻いて締め付けることにより毛束2が頭部12へ固定されている。毛束2の上記固定には、樹皮として桜の皮なども巻締部材14として用いることができる。この例では巻締部材14として金属板を用いた。
【0028】
把手11は握るのに適した長さw1と太さ(横幅w2と厚みw3)を有する。
柄1の長手方向を上下方向として、頭部12は把手11の径とほぼ同じ大きさか若干大きな(前後F,Bの)厚みと把手11の径よりも大きな(左右L,R)横幅を備える。
頭部12の上記厚みは、上記顎13と、押圧容器3を受容する受容部15とを形成できる大きさとし、頭部12の上記横幅は、上記把手11の上記横幅w2よりも大きなものとする。
【0029】
また頭部12の上記横幅w4は、毛束2(特に根元21)の横幅wa(最大幅)即ち毛幅と同じか若干大きいものとする。また頭部12の厚みについては、頭部12の先端側において、顎13と顎13間へ毛束2(特に根本21)を含む厚みとなる。従って、毛束2(の根本21)の厚みwbよりも頭部12の先端側の厚みは大きい。
上記の受容部15は、頭部12において上記の毛幅に対応する幅を備えた一側面即ち正面へ、2本並んだ状態に形成された、夫々刷毛の長手方向について伸びる凹部である(図3及び図4(A))。
【0030】
受容部15の夫々は、押圧容器3の一部を受容することができる(図1及び図2(A)(B))。受容部15は、受容された押圧容器3の少なくとも押圧を受ける部分を露出させる。この例では、押圧容器3の背面側の一部が受容部15へ受容され、押圧容器3の正面側は露出している。後に詳述する固定部材4は、当該正面側の一部を覆い、押圧容器3が受容部15から脱落するのを防止する。
また受容部15同士を互いにほぼ平行となるよう形成することで、長尺の押圧容器3を略平行に配置することができる。
【0031】
毛束2の上記横幅waは、当然両押圧容器3の口31間の間隔よりも大きい。両押圧容器3の口31間の間隔の下限は、押圧容器3の当該口31以外の部位の径にて規制されるが、当該間隔の上限については、両口31から吐出される異なる色の塗装剤が適切なグラデーションを塗付できるように毛束2へ塗装剤を吐出する間隔とする(図1(A)、図5及び図6)。
【0032】
両口31同士が離れすぎていると、毛束2へ吐出された塗装剤同士が毛束2内で交じり合わず或いは交じり合うのに時間を要するものとなってしまうからである。塗装剤の粘度や吐出量、毛束2の素材によって異なるが、毛束2の塗装剤の吸収力(毛束2内での塗材の広がり)に応じて両口31の間隔を設定すればよく、当該間隔を確保できる寸法の押圧容器3を採用すればよい。
【0033】
勿論押圧容器3の押圧により吐出する塗装剤の量(上記の吐出量)が少なければ、毛束2へ塗装に十分な塗装剤を付着させることができないが、少なくとも塗装剤で満杯の両押圧容器3を指で可能な限り強く押圧して吐出させた際、両塗装剤が毛束内にて交じり合うよう、両口31間の間隔を設定しておく。
【0034】
毛束2は、公知の素材にて形成すればよい。
具体的には、毛束2の毛材には、馬毛、豚毛、山羊毛、イタチ毛、人毛などの動物由来のもの、植物繊維など植物由来のもの、化学繊維といった一般的な素材を採用することができる。特に毛材には、使用する塗装剤によって最適なものを採用すればよい。毛束2の毛足も塗装に用いられる一般的な長さとすればよい。但し、毛束2の毛足は、押圧容器3から供給される塗装剤を受け塗装対象面へ適切に塗付できる長さとする。
【0035】
また、毛束2は、使用する塗装剤の種類や塗装剤の粘度に応じた太さや吸水率の毛にて構成すればよい。例えば水性塗料を使用するのであれば、吸水率の低いPBT、PET又はPPといった合成繊維が適する。合成繊維は獣毛に比較して耐摩耗性が優れており、獣毛は弾力性及び柔軟性に優れており、使用する塗装剤や描く木目模様に応じて、上記毛の素材を選択すればよい。
【0036】
柄1の各部の寸法については、頭部12の厚みを除いて、市販されている一般的な刷毛と同じとすることで、違和感なく掴んで塗装を行うことができる(図1(A)(B))。市販されている一般的な刷毛とは、柄を持ち塗料を入れた塗料缶や塗料バットへ毛束を付けて塗装対象面へ毛束に含んだ塗料を塗布する刷毛である。
柄1の各部の寸法に関し、具体的には何れも最大値として、把手11の上記長さw1を5cm以上30cm以下とし、上記横幅w2を1cm以上3cm以下とし、上記厚みw3を0.5cm以上3cm以下とするのが好ましく、頭部12について、長手方向の長さw6を4cm以上12cm以下とし横幅w4を4cm以上15cm以下とし、厚みw5を0.5cm以上3cm以下とするのが好ましい。
【0037】
使用する塗装剤について異なるが概して、毛束2の上記毛足については2~15cmとし、毛幅については少なくとも毛束2の根本において上記頭部12の横幅を超えないことを前提に4cm以上15cm以下とするのが好ましい。
【0038】
把手11について特に、上記長さw1を8cm以上15cm以下とし、上記横幅w2は1.5cm以上2.5cm以下とし、上記厚みw3は0.5cm以上2cm以下とするのが好ましく、頭部12について、長手方向の長さw6を5cm以上10cm以下とし横幅w4を5cm以上10cm以下とし、厚みw5を15cm以上2.5cm以下とするのが好ましい。
【0039】
また、毛束2の上記毛足については、特に4~12cmとし、毛幅については少なくとも毛束2の根本21において上記頭部12の横幅を超えないことを前提に4cm以上12cm以下とするのが好ましい。特に水性の塗料を塗材として使用する場合や粘度の比較的低い塗材については、毛幅を上記範囲とするのが好ましい。
但し、適切に塗装剤の塗布が行え所望のグラデーションを描くことができる限りにおいて、刷毛1の各部は上記数値範囲を逸脱するものであってもよい。
【0040】
(押圧容器3)
押圧容器3の夫々は、押圧により圧縮し少なくとも押圧中容積を減少させて収容した塗装剤を吐出する長尺の容器である(図1図2(A)(B)、図3及び図4(A))。各押圧容器3は、柄1への取付けにより、柄1の長手方向に沿って配置される。即ち、上記頭部12の受容部15への受容により、押圧容器3は、柄1の長手方向に沿って配置され、上記口31を毛束2へ向ける。
押圧容器3の夫々には、液状の上記塗装剤が収容される。
【0041】
前述の通り押圧容器3は互いに異なる色の塗装剤を収容するものである。例えば一方の押圧容器3へ茶色や焦げ茶色、赤色といった濃色の塗料を塗装剤として収容し、他の一方の押圧容器3へオレンジ色や橙色、黄色、肌色、黄土色といった淡色の塗料を塗装剤として収容する。
但し、透明の希釈液を淡色とし、上記にて淡色としたオレンジ色や橙色、黄色、肌色、黄土色も濃色として、各押圧容器3へ濃淡別々に塗装剤を収容するものとしてもよい。
また、上記の異なる色について、上記の濃色と淡色に限定するものではなく、上記以外の他の色を採用することも可能である。
【0042】
この例では、押圧容器3は、全体を柔軟な樹脂にて形成されたスポイトである。当押圧容器3は、塗装剤を収容する筒状の収容部33と、収容部33の後端側に延設された摘みとなる押圧部34と、収容部33の先端側へ延設された管状部32とを備える。管状部32の先端の開口が、収容部33へ収容した塗装剤を吐出する口31である。
当該スポイトを不透明な樹脂にて形成してもよいが、透明や半透明な樹脂にて形成することにより収容する塗装剤の残量や色の確認が容易であり便利である。
押圧容器3として、市販のスポイトを用いて実施すればよい。
【0043】
柄1の上記受容部15へ押圧容器3即ち上記スポイトの収容部33を配置することで、上記管状部32は、上記口31を毛束2へ近接させることができる長さを有するものとする。
この例では、スポイトの上記収容部33が受容部15へ受容され、押圧部34の少なくとも後部は受容部34より食み出る(図1及び図5)。
【0044】
塗装作業者は、手hの薬指f4と小指f5と親指f1で把手11を掴み、人差指f2で一方の押圧容器3の押圧部34を押圧し、中指f3で他の一方の押圧容器3の押圧部34を押圧する。人差指f2と中指f3は、夫々頭部12の正面へ押圧部34を押し付けるように押圧することができる。但し、把手11と頭部12との間の肩16即ち頭部12後端から、後方へ食み出す押圧部34夫々の後端部を、把手11へ回した親指f1の指先と人差指f2又は中指f3とで摘まんで押圧するものとしてもよい。
【0045】
刷毛を使用する際、押圧容器3が取り付けられた刷毛の正面側(前面側)即ち押圧容器3を取り付けられた面を上にして刷毛を斜めにすることで、塗装対象面kへ毛束2の先端を当接させる(図4)。押圧容器3は、毛束2の毛足の伸びる方向について、毛束2の根本21と毛先22の間へ管状部32の口を配置させる。
刷毛を斜めにした当該状態において、上記管状部32の先は毛束2の上側(図1における正面側)へ当接するものとして、上記口31から毛束2へ塗装剤を滲入させることができる(図4(B)(C))。
【0046】
但し、刷毛を図4(B)(C)へ示す通り斜めにし上記管状部32を毛束2の上に配置する限り、上記口31を毛束22から離れたものとしても、口31から塗装剤を毛束へ滴下させて塗装剤を毛束へ付着させることができればよいのである。
また、管状部32の先は毛束22の中へ入り込むものとしてもよい。例えば、受容部15は、下方から上方(刷毛の先端側から後端端側)へ向けて漸次浅くなるよう形成することで、刷毛を側面視した際刷毛に対し押圧容器3を斜めになるよう配ることで、管状部32の先端を毛束2へ差し込むことができる(図示しない)。
【0047】
また受容部15を下方から上方へ向けて漸次浅くなるよう形成するのに代えて、受容部15の後部側と押圧容器3との間に適当なスペーサを介することで押圧容器3の後部側を持ち刷毛に上記の通り斜めにするものであってもよいし、押圧容器3の管状部34が毛束2側へ向け湾曲する形態を持つものとしてもよい(図示しない)。
【0048】
但し、管状部34の先端を毛束2へ差し込まない場合も上記の通り当初より毛束2へ差し込む場合も、何れの場合も、刷毛の使用中、毛束2側が塗装対象面kに沿うように曲がることで、管状部32の先が毛束2を突き抜けて塗装対象面へ突き当たらないよう、管状部34を配置する必要がある。特に使用当初管状部34の先が塗装対象面へ突き当たらないものであっても、使用している間に毛先22がばらけたり毛束2の腰が抜けたりして管状部34の先が塗装対象面へ突き当たるということがないよう、管状部32を配置するのが望ましい。
【0049】
(固定部材4)
固定部材4は、上記受容部15を横断するように上記頭部12へ設けられた、帯状体即ちバンドである(図1図2(A)(B)、図3図6)。当該バンドは、軟質の樹脂や皮革、布で形成することができる。
バンドである上記固定部材4の一端は、固定部41としてネジや釘などの固定具にて上記頭部12へ固定されている。受容部15を横断した固定部材4の他の一端は、着脱自在に頭部12へ固定される。
受容部15へ上記スポイトを受容させ上記バンドの上記他の一端を頭部12へ固定した状態において、上記バンドは、受容部13へ配置された各スポイトの収容部33を横断するが押圧部34を(覆うものではなく)露出させる。
【0050】
この例では、固定部材4の他の一端には被係止部42が設けられ、頭部12には、被係止部42を係脱自在に係止することができる係止部43が固定されている。
具体的には、被係止部42をスナップの雌雄何れか一方とし、係止部43を当該スナップの雌雄何れか他の一方とすればよい。
図示した例では、頭部12の左右の側面の一方へ固定部41が設けられ、頭部12の左右の側面の他の一方へ係止部43が設けられている。
但し、固定部材4は、スナップ機構を採用する以外に周知のバックルを採用して上記帯状体を閉じるものとしてもよい。
【0051】
上記固定部材4の一端即ち被係止部42側を開いて、上記スポイト即ち押圧容器4を受容部15へ配置し或いは受容部15から取り出すことができる(図3及び図4(A))。柄11から上記スポイトを取り外して上記スポイトへ塗装剤を充填したり、或いは塗装剤が充填された他のスポイトと交換することができる。
【0052】
(使用例)
使用者即ち塗装作業者は、塗装剤を充填した押圧容器3の夫々を刷毛へ取付け、持ち手として把手11を握り、毛束2を上記の塗装対象面kへ当接させて、塗料の上記塗布を行う(図4(B)(C)、図5及び図6)。
把手11を掴んだ手hの指先で、押圧容器3を選んで押圧することにより或いは押圧する力の加減を押圧容器3毎に変えることによって、毛束2へ着ける塗装剤の色合いを変化させることができる(図6)。
【0053】
この例においてグラデーションを濃色側へ変化させる際には、上記濃色の塗料を収容した押圧容器3の押圧部34を中指f3にて頭部12へ向けて強く押圧して濃色の塗料を多量に口31から毛束2へ吐出させると共に、上記淡色の塗料を収容した押圧容器3の押圧部34を人差指f3にて頭部12へ向けて上記中指の押圧よりも弱い力で押圧して淡色の塗料を少な目に口31から毛束2へ吐出させればよい(図5及び図6)。グラデーションを淡色寄りに変化させる際には、上記濃色の塗料を収容した押圧容器3の押圧部34を中指f3にて頭部12へ向けて弱く押圧して濃色の塗料を少量に口31から毛束2へ吐出させると共に、上記淡色の塗料を収容した押圧容器3の押圧部34を人差指f3にて頭部12へ向けて上記中指の押圧よりも強い力で押圧して淡色の塗料を多量に口31から毛束2へ吐出させればよい。
グラデーションを掛けない場合、一方の押圧容器3のみ押圧すればよい。
【0054】
(変更例)
上記の固定部材4には柔軟な帯状のもの(帯状体)を例示したが、刷毛1に対し開閉可能な板状のもの(板状体)を採用して実施することもできるし、例えば、内側即ち押圧容器3を臨む面へ、押圧容器3の外周面のうち上記受容部15から露出する部分を受容する副受容部44となる凹部が賦形された、変形可能な合成樹脂の成形品を固定部材4として採用してもよい(図7(A)(B))。
【0055】
また、各受容部15を横断し一端を刷毛1へ固定され且つ半円形に湾曲する板バネを、固定部材4として採用することも可能である(図7(C)(D))。当該板バネと受容部15との間へ押圧容器3を挿入することで、押圧容器3の柄1へ押圧容器3を取付けることができる。上記挿入時及び上記挿入後に押圧容器3に塗装剤を吐出させないよう、上記板バネは押圧容器3を強く押圧しないものとする。
【0056】
図示は省略するが、柄1へ上記の開閉する固定部材4や上記受容部15を設けるのに代え、頭部12へ柄11側から頭部12へ向け押圧容器3を差し込むことができるポケット即ち上下方向U,Sを深さ方向とする穴を固定部材4として頭部12へ設けるものとしてもよい。当該ポケットの先端側(図1(A)(B)の下方側)には差し込まれた押圧容器3の管状部32を毛束22側へ露出させることができるポケットより内径の小さな貫通孔を備えるものとし、差し込まれた押圧容器3の押圧部34は押圧できるよう当該ポケットから露出するものとすればよい。
上記ポケットは、押圧容器3の数に応じた数設けるものとしてもよいが、両押圧容器3を収容することがてきる寸法のポケットを1つ頭部12へ設けるものとしても良い。
【0057】
押圧容器3には、上記のスポイトの他、スポイトに類するものとして、押圧部34を乳首と呼ばれるゴム袋とし他の部分をガラス管とするピペットを採用してもよい(図示しない)。
【0058】
更に、押圧容器3には、歯磨きや絵の具、化粧品の容器として一般的なチューブを採用し、塗装剤が事前に充填された当該チューブを使用するものとしてもよい(図2(C))。当該チューブには、柔軟なプラスチックなどの樹脂でできたラミネートチューブや、アルミニウムなどの金属製のチューブを採用することができる。上記チューブでは、収容部33が前述の押圧部34を兼ねるものであり、収容部33を押圧して塗装剤を吐出させることができる。
【0059】
また、押圧容器3には、管状部32から注射針を外した注射器を採用して実施することが可能である。例えば、収容部33であるシリンジ(外筒)と、押圧部34であるプランジャ(押子)とからなる、注射器類似の押圧容器3を用いて実施することもできる(図2(D))。
【0060】
上述してきた各例において、柄1には押圧容器3が2つ取り付けられるものとしたが、塗装中適切に押圧できる限りにおいて、柄1に3つ以上の押圧容器3を取り付けるものとしても実施できる。押圧容器3を柄1へ3つ以上取り付ける場合、当該取り付ける数に応じて上記受容部15も3つ以上設けておけぱよいのである。
【0061】
但し、押圧容器3の押圧部34を露出できる範囲において、左右横方向へ伸びる固定部材4の長手方向と、交差する方向の幅(バンドの幅)を大きくすることで押圧容器3の安定した保持を図り、柄1へ上記受容部15を設けないものとしてもよいし、受容部15を設けるものであっても、隣り合う押圧容器3間を隔てる間仕切りを備えない全押圧容器3を受容することができる横幅を備えた受容部15を1つ設けるものとしても実施できる。また、受容部15に代え、上記頭部12へ、押圧容器3の左右にて隆起する隆起部或いは押圧容器3左右にて突出する突起部を設けるものとしてもよい。
上記突起部は、刷毛に賦形したり刷毛を削って形成するものとしてもよいが、刷毛と別体の釘やピンを刷毛に打ち込み上記突起部としてもよい。
本発明に係る木目調塗装用刷毛は、サペリ柄の塗装に適するが、サペリ以外のグラデーションを備えた木目柄の塗装に使用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 柄
2 毛束
3 押圧容器
4 固定部材
11 (柄1の)把手
12 (柄1の)頭部
13 (柄1の)顎
14 (柄1の)巻締部材
15 (柄1の)受容部
16 (柄1の)肩
21 (毛束2の)根本
22 (毛束2の)毛先
31 (押圧容器3の)口
32 (押圧容器3の)管状部
33 (押圧容器3の)収容部
34 (押圧容器3の)押圧部
41 (固定部材4の)固定部
42 (固定部材4の)被係止部
43 (固定部材4の)係止部
B 後方
F 前方
L 左方
R 右方
S 下方
T 上方
w1 (柄1の)把手11の長さ
w2 (柄1の)把手11の横幅
w3 (柄1の)把手11の厚み
w4 (柄1の)頭部12の横幅
w5 (柄1の)頭部12の厚み
w6 (柄1の)頭部12の長さ
wa 毛束2(の根元21)の横幅
wb 毛束2(の根元21)の厚み
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7