(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053160
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ケーブル終端接続構造、リングユニット、およびケーブル終端接続構造の製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 15/072 20060101AFI20240408BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H02G15/072
H02G1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159235
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000213884
【氏名又は名称】住電機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100187643
【弁理士】
【氏名又は名称】白鳥 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】風間 達也
【テーマコード(参考)】
5G355
5G375
【Fターム(参考)】
5G355AA03
5G355BA02
5G355BA09
5G355BA18
5G375AA02
5G375BA23
5G375BB02
5G375CB36
5G375CB41
5G375DA32
5G375EA17
(57)【要約】
【課題】ケーブル終端接続構造を容易に製造しつつ、碍管の外径を小さくする。
【解決手段】ケーブル終端接続構造は、電力ケーブルと、電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、電力ケーブルの外側の電界を緩和するコンデンサコーンと、鉛直方向に立設され、コンデンサコーンが取り付けられた状態の電力ケーブルが挿入された碍管と、を備え、コンデンサコーンは、円筒状であり絶縁性のゴムを含む絶縁層と、絶縁層の内周または外周に設けられた導電層と、を有する複数のリングユニットを有し、複数のリングユニットは、電力ケーブルの軸方向に互いに異なる位置に配置され、電力ケーブルの中心軸に直交する同一の断面内で3つ以上のリングユニットが重ならないように積層されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブルと、
前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記電力ケーブルの外側の電界を緩和するコンデンサコーンと、
鉛直方向に立設され、前記コンデンサコーンが取り付けられた状態の前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
を備え、
前記コンデンサコーンは、円筒状であり絶縁性のゴムを含む絶縁層と、前記絶縁層の内周または外周に設けられた導電層と、を有する複数のリングユニットを有し、
前記複数のリングユニットは、前記電力ケーブルの軸方向に互いに異なる位置に配置され、前記電力ケーブルの中心軸に直交する同一の断面内で3つ以上のリングユニットが重ならないように積層されている
ケーブル終端接続構造。
【請求項2】
前記複数のリングユニットのそれぞれにおける内周面の少なくとも一部は、他のリングユニットと重なった位置以外の位置で、前記電力ケーブルの外周に接している
請求項1に記載のケーブル終端接続構造。
【請求項3】
前記複数のリングユニットにより形成される複数のコンデンサは、前記電力ケーブルの軸方向に見たときに、少なくとも部分的に互いに重なっている
請求項1または請求項2に記載のケーブル終端接続構造。
【請求項4】
前記複数のリングユニットのうち、隣り合う2つのリングユニットにおいて、鉛直下側に位置する前記リングユニットの上部は、鉛直上側に位置する前記リングユニットの下部上に重なっている
請求項1または請求項2に記載のケーブル終端接続構造。
【請求項5】
前記複数のリングユニットは、互いに同一の構成を有する
請求項1または請求項2に記載のケーブル終端接続構造。
【請求項6】
前記電力ケーブルは、導体、ケーブル内部半導電層、ケーブル絶縁層、ケーブル外部半導電層およびケーブルシースを有し、
前記導体、前記ケーブル内部半導電層、前記ケーブル絶縁層、前記ケーブル外部半導電層、および前記ケーブルシースは、前記導体の先端から反対に向けてこの順で露出しており、
前記コンデンサコーンにおいて、絶縁層を挟んで隣り合う2つの導電層が重なった前記電力ケーブルの軸方向の長さは、前記電力ケーブルの先端から前記ケーブル外部半導電層の先端に向けて徐々に長くなっている
請求項1または請求項2に記載のケーブル終端接続構造。
【請求項7】
前記電力ケーブルは、導体、ケーブル内部半導電層、ケーブル絶縁層、ケーブル外部半導電層およびケーブルシースを有し、
前記導体、前記ケーブル内部半導電層、前記ケーブル絶縁層、前記ケーブル外部半導電層、および前記ケーブルシースは、前記導体の先端から反対に向けてこの順で露出しており、
前記コンデンサコーンにおいて、隣り合う2つの導電層に挟まれた絶縁層の厚さは、前記電力ケーブルの先端から前記ケーブル外部半導電層の先端に向けて徐々に薄くなっている
請求項1または請求項2に記載のケーブル終端接続構造。
【請求項8】
前記コンデンサコーンよりも鉛直下の位置で前記電力ケーブルの外周に設けられ、前記電力ケーブルの外側の電界を緩和する絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周を覆い、前記絶縁筒の外側における電界を緩和するように、前記コンデンサコーンの鉛直下端に位置するリングユニットと、前記電力ケーブルにおいて露出したケーブル外部半導電層と、を電気的に繋ぐ補助導電部と、
を有する
請求項1または請求項2に記載のケーブル終端接続構造。
【請求項9】
請求項1または請求項2に記載のケーブル終端接続構造の前記コンデンサコーンに用いられる
リングユニット。
【請求項10】
電力ケーブルを準備する工程と、
前記電力ケーブルの外側の電界を緩和するコンデンサコーンを、前記電力ケーブルの外周を囲むように設ける工程と、
鉛直方向に立設された碍管内に、前記コンデンサコーンが取り付けられた状態の前記電力ケーブルを挿入する工程と、
を備え、
前記コンデンサコーンを設ける工程は、
円筒状であり絶縁性のゴムを含む絶縁層と、前記絶縁層の内周または外周に設けられた導電層と、を有する複数のリングユニットを準備する工程と、
前記複数のリングユニットを、前記電力ケーブルの軸方向に互いに異なる位置に配置し、前記電力ケーブルの中心軸に直交する同一の断面内で3つ以上のリングユニットが重ならないように積層する工程と、
を有する
ケーブル終端接続構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ケーブル終端接続構造、リングユニット、およびケーブル終端接続構造の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルと架空送電線等とを接続するために、ケーブル終端接続構造(気中終端接続部、気中終端接続箱)が設けられる。高圧用のケーブル終端接続構造では、段階的に剥がされた電力ケーブルの外側の電界を緩和するため、いわゆるコンデンサコーンを形成することがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、ケーブル終端接続構造を容易に製造しつつ、碍管の外径を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
電力ケーブルと、
前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記電力ケーブルの外側の電界を緩和するコンデンサコーンと、
鉛直方向に立設され、前記コンデンサコーンが取り付けられた状態の前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
を備え、
前記コンデンサコーンは、円筒状であり絶縁性のゴムを含む絶縁層と、前記絶縁層の内周または外周に設けられた導電層と、を有する複数のリングユニットを有し、
前記複数のリングユニットは、前記電力ケーブルの軸方向に互いに異なる位置に配置され、前記電力ケーブルの中心軸に直交する同一の断面内で3つ以上のリングユニットが重ならないように積層されている
ケーブル終端接続構造が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、ケーブル終端接続構造を容易に製造しつつ、碍管の外径を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るケーブル終端接続構造を示す概略側面図および概略断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の一実施形態の変形例1に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した概略断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態の変形例2に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した概略断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の一実施形態の変形例3に係るケーブル終端接続構造の一部を拡大した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示の実施形態の説明]
<発明者等の得た知見>
まず、発明者等の得た知見について説明する。
【0009】
従来のコンデンサコーンを有するケーブル終端接続構造では、以下の課題が生じていた。
【0010】
(i)油浸絶縁紙を用いたコンデンサコーン(特許文献1に記載の従来構造)
従来のコンデンサコーンは、以下の工程で形成されていた。絶縁油を含浸させた油浸絶縁紙を、隙間ができないように電力ケーブルの外周に巻き付ける。当該工程を行いながら、所定の外径に到達したときに金属箔からなる電極を挿入する。当該工程を所定回数繰り返す。このとき、電極を電力ケーブルの軸方向にずらしながら挿入する。以上のような工程により、絶縁紙に挟まれた一対の電極によって形成されるコンデンサを、電力ケーブルの軸方向に沿って所定の分布で配置していた。
【0011】
しかしながら、従来の油浸絶縁紙を用いた構造では、上述のコンデンサコーンの形成のため、高度な技術とその熟練とを必要としていた。このため、現場での作業が困難となっていた。
【0012】
また、従来の油浸絶縁紙を用いた構造では、絶縁紙の巻き付け回数に応じて、コンデンサコーンの外径が大きくなる傾向にあった。そのため、碍管の外径が大きくなっていた。
【0013】
(ii)特許文献1のコンデンサコーン
特許文献1のコンデンサコーンでは、円筒状の電極および絶縁材からなる複数の素子を、電力ケーブルの軸方向にずらしつつ互いに弾性的に嵌合させることで、複数の素子を積層させていた。これにより、コンデンサコーンの組み立て作業を容易とし、且つ、作業時間を短縮することができるとされていた。
【0014】
しかしながら、特許文献1のコンデンサコーンでは、電力ケーブルの径方向に隣り合う2つの素子の周面を、全周にわたって互いに弾性的に当接させていた。このため、電力ケーブルの中心軸に直交する同一の断面内で、3つ以上の素子が重なっていた。このような構成のため、素子数に応じて、コンデンサコーンの外径が大きくなる傾向にあった。その結果、碍管の外径が大きくなっていた。
【0015】
また、特許文献1のコンデンサコーンでは、電力ケーブルの適用電圧に応じて碍管が長くなった場合に、碍管の長さに応じて、各素子の長さを長くしなければならなかった。そのため、製造コストが増加していた。
【0016】
本発明者は、上述の(i)および(ii)の構造における課題を解決するため、鋭意検討した結果、ケーブル終端接続構造を容易に製造しつつ、碍管の外径を小さくすることができる新規構造を見出した。
【0017】
以下の本発明は、本発明者等が見出した上記知見に基づくものである。
【0018】
<本開示の実施態様>
次に、本開示の実施態様を列記して説明する。
【0019】
[1]本開示の一態様に係るケーブル終端接続構造は、
電力ケーブルと、
前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記電力ケーブルの外側の電界を緩和するコンデンサコーンと、
鉛直方向に立設され、前記コンデンサコーンが取り付けられた状態の前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
を備え、
前記コンデンサコーンは、円筒状であり絶縁性のゴムを含む絶縁層と、前記絶縁層の内周または外周に設けられた導電層と、を有する複数のリングユニットを有し、
前記複数のリングユニットは、前記電力ケーブルの軸方向に互いに異なる位置に配置され、前記電力ケーブルの中心軸に直交する同一の断面内で3つ以上のリングユニットが重ならないように積層されている。
この構成によれば、ケーブル終端接続構造を容易に製造しつつ、碍管の外径を小さくすることができる。
【0020】
[2]上記[1]に記載のケーブル終端接続構造において、
前記複数のリングユニットのそれぞれにおける内周面の少なくとも一部は、他のリングユニットと重なった位置以外の位置で、前記電力ケーブルの外周に接している。
この構成によれば、コンデンサを形成しない位置で、コンデンサコーンの外径が不要に大きくなることを抑制することができる。
【0021】
[3]上記[1]または[2]に記載のケーブル終端接続構造において、
前記複数のリングユニットにより形成される複数のコンデンサは、前記電力ケーブルの軸方向に見たときに、少なくとも部分的に互いに重なっている。
この構成によれば、電力ケーブルの外側の電界を緩和させつつ、碍管の外径を安定的に小さくすることが可能となる。
【0022】
[4]上記[1]から[3]のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造において、
前記複数のリングユニットのうち、隣り合う2つのリングユニットにおいて、鉛直下側に位置する前記リングユニットの上部は、鉛直上側に位置する前記リングユニットの下部上に重なっている。
この構成によれば、電力ケーブルの外周から放射状に広がる等電位線を形成することができる。
【0023】
[5]上記[1]から[4]のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造において、
前記複数のリングユニットは、互いに同一の構成を有する。
この構成によれば、コンデンサコーンをシンプルな構造とし、ケーブル終端接続構造を容易に製造することができる。
【0024】
[6]上記[1]から[4]のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造において、
前記電力ケーブルは、導体、ケーブル内部半導電層、ケーブル絶縁層、ケーブル外部半導電層およびケーブルシースを有し、
前記導体、前記ケーブル内部半導電層、前記ケーブル絶縁層、前記ケーブル外部半導電層、および前記ケーブルシースは、前記導体の先端から反対に向けてこの順で露出しており、
前記コンデンサコーンにおいて、絶縁層を挟んで隣り合う2つの導電層が重なった前記電力ケーブルの軸方向の長さは、前記電力ケーブルの先端から前記ケーブル外部半導電層の先端に向けて徐々に長くなっている。
この構成によれば、高電界が生じやすいケーブル外部半導電層の先端に向けて、コンデンサの静電容量を徐々に増加させることができる。
【0025】
[7]上記[1]から[4]のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造において、
前記電力ケーブルは、導体、ケーブル内部半導電層、ケーブル絶縁層、ケーブル外部半導電層およびケーブルシースを有し、
前記導体、前記ケーブル内部半導電層、前記ケーブル絶縁層、前記ケーブル外部半導電層、および前記ケーブルシースは、前記導体の先端から反対に向けてこの順で露出しており、
前記コンデンサコーンにおいて、隣り合う2つの導電層に挟まれた絶縁層の厚さは、前記電力ケーブルの先端から前記ケーブル外部半導電層の先端に向けて徐々に薄くなっている。
この構成によれば、高電界が生じやすいケーブル外部半導電層の先端に向けて、コンデンサの静電容量を徐々に増加させることができる。
【0026】
[8]上記[1]から[7]のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造において、
前記コンデンサコーンよりも鉛直下の位置で前記電力ケーブルの外周に設けられ、前記電力ケーブルの外側の電界を緩和する絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周を覆い、前記絶縁筒の外側における電界を緩和するように、前記コンデンサコーンの鉛直下端に位置するリングユニットと、前記電力ケーブルにおいて露出したケーブル外部半導電層と、を電気的に繋ぐ補助導電部と、
を有する。
この構成によれば、絶縁筒の外側における高電界のストレスを緩和することができる。
【0027】
[9]本開示の他の態様に係るリングユニットは、
上記[1]から[8]のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造の前記コンデンサコーンに用いられる。
この構成によれば、ケーブル終端接続構造を容易に製造しつつ、碍管の外径を小さくすることができる。
【0028】
[10]本開示の他の態様に係るケーブル終端接続構造の製造方法は、
電力ケーブルを準備する工程と、
前記電力ケーブルの外側の電界を緩和するコンデンサコーンを、前記電力ケーブルの外周を囲むように設ける工程と、
鉛直方向に立設された碍管内に、前記コンデンサコーンが取り付けられた状態の前記電力ケーブルを挿入する工程と、
を備え、
前記コンデンサコーンを設ける工程は、
円筒状であり絶縁性のゴムを含む絶縁層と、前記絶縁層の内周または外周に設けられた導電層と、を有する複数のリングユニットを準備する工程と、
前記複数のリングユニットを、前記電力ケーブルの軸方向に互いに異なる位置に配置し、前記電力ケーブルの中心軸に直交する同一の断面内で3つ以上のリングユニットが重ならないように積層する工程と、
を有する。
この構成によれば、ケーブル終端接続構造を容易に製造しつつ、碍管の外径を小さくすることができる。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
<本開示の一実施形態>
(1)ケーブル終端接続構造
本実施形態に係るケーブル終端接続構造10について、
図1および
図2を参照して説明する。
【0031】
なお、
図1および
図2は、実際の縦横比よりも横方向比率が大きくなっている。
図1の左側が側面図であり、
図1の右側が断面図である。
図1の右側および
図2において、電力ケーブル100は、断面ではなく側面が示されている。また、
図1および
図2において、断面の一部のハッチングを省略している。
図1では、碍管200の鍔部210の一部を破線により略している。
【0032】
以下の説明において、電力ケーブル100の「軸方向」とは、電力ケーブル100の中心軸の方向のことをいう。また、電力ケーブル100の「径方向」とは、電力ケーブル100の中心軸から外周に向かう方向のことをいう。
【0033】
なお、筒状の碍管200などについても、電力ケーブル100と同様の用語を用いることができる。
【0034】
図1および
図2に示すように、本実施形態のケーブル終端接続構造(気中終端接続部、気中終端接続箱、EB-A)10は、電力ケーブル100と架空送電線(不図示)等とを接続するよう構成されている。具体的には、ケーブル終端接続構造10は、例えば、電力ケーブル100と、碍管200と、上側金具620と、下側金具640と、上側シールドリング820と、下側シールドリング840と、を備えている。
【0035】
[電力ケーブル]
図1および
図2に示すように、電力ケーブル100は、高電圧の送電ケーブルである固体絶縁ケーブルとして構成されている。電力ケーブル100としては、例えば、CVケーブル(Crosslinked polyethylene insulated PVC sheathed cable、XLPEケーブルともいう)などが挙げられる。なお、電力ケーブル100は、交流用であっても、直流用であってもよい。
【0036】
電力ケーブル100は、例えば、導体(ケーブル導体)110、ケーブル内部半導電層(不図示)、ケーブル絶縁層130、ケーブル外部半導電層140、ケーブル遮蔽層(ケーブル金属層、不図示)、およびケーブルシース160を、導体110の中心軸から外周に向けてこの順で有している。
【0037】
電力ケーブル100は、導体110の軸方向の先端から反対に向けて段階的に剥がされている(いわゆる“段剥ぎ”されている)。すなわち、導体110、ケーブル内部半導電層、ケーブル絶縁層130、ケーブル外部半導電層140、ケーブル遮蔽層、およびケーブルシース160は、導体110の先端から反対に向けてこの順で露出している。
【0038】
[電力ケーブル付属部材]
段階的に剥がされた電力ケーブル100には、例えば、導体引出棒610と、コンデンサコーン30と、絶縁筒(ゴムユニット、ストレスリリーフコーン、プレモールド絶縁体、絶縁ゴムブロック)400と、補助導電部500と、遮蔽層580と、金属管590と、が取り付けられている。
【0039】
導体引出棒610は、先端に架空送電線等が接続されるよう構成されている。導体引出棒610の先端と反対の基端には、露出した導体110の先端が圧縮により接続されている。導体引出棒610と導体110の先端との接続部の周囲には、シール部(符号不図示)が設けられている。
【0040】
コンデンサコーン30、絶縁筒400および補助導電部500については詳細を後述する。
【0041】
遮蔽層580は、露出したケーブル外部半導電層140の外周を囲むように設けられ、ケーブル外部半導電層140とケーブル遮蔽層(不図示)とに電気的に接続されている。遮蔽層580は、例えば、金属製の編組線または銅メッシュテープにより構成されている。これにより、露出したケーブル外部半導電層140の外側の領域を電気的に遮蔽することができる。
【0042】
金属管590は、遮蔽層580よりも鉛直下の位置において、電力ケーブル100の外周を囲むように設けられている。
【0043】
上述の付属部材が取り付けられた状態の電力ケーブル100は、鉛直方向に沿って立ち上げられ、後述の碍管200の上部に固定される。
【0044】
[碍管]
碍管200は、電力ケーブル100の外周を囲むように設けられ、段階的に剥がされた電力ケーブル100の周辺の絶縁性を確保するよう筒状に構成されている。碍管200は、例えば、磁器またはポリマにより構成されている。
【0045】
碍管200は、鉛直方向に沿って立設され、架台(不図示)等に固定されている。碍管200は、例えば、中空部と、上部開口と、下部開口と、を有している(各符号不図示)。
【0046】
碍管200の中空部内には、コンデンサコーン30などが取り付けられた状態の電力ケーブル100が挿入されている。電力ケーブル100は、碍管200の中空部の中心軸に沿って直線状に配置されている。
【0047】
碍管200の上部開口は、中空部の軸方向の上端に開けられている。一方で、碍管200の下部開口は、中空部の上端と反対の下端に開けられている。
【0048】
碍管200は、当該碍管200の外側に拡径した複数の鍔部(ひだ部)210を有している。複数の鍔部210は、碍管200の軸方向に所定の間隔で配置されている。これにより、導体引出棒610とアースとの間の絶縁距離(沿面距離)が確保されている。
【0049】
電力ケーブル100を除く碍管200の中空部内には、絶縁媒体(絶縁混和物)が充填されている。本実施形態では、油浸絶縁紙を用いないため、絶縁媒体としては、絶縁油だけでなく、絶縁ガスも用いることが可能である。絶縁ガスを用いることにより、給油装置を不要とすることができる。
【0050】
[上側金具]
上側金具620は、例えば、円盤状に構成され、碍管200の軸方向の上端における上部開口を塞ぐよう構成されている。上側金具620は、例えば、Oリングを介在させた状態で、碍管200の軸方向の上端に接している。当該Oリングにより、上側金具620と碍管200の上端との間の間隙が封止されている。
【0051】
上側金具620は、導体110を固定するよう構成されている。具体的には、上側金具620は、例えば、中心に挿通孔(符号不図示)を有し、当該挿通孔内には、導体引出棒610が挿通されている。導体引出棒610は、所定の治具により、上側金具620に固定されている。このような構成により、上側金具620には、導体引出棒610により導体110が固定されている。
【0052】
[上側シールドリング]
上側金具620の周囲には、必要に応じて、例えば、上側シールドリング820が設けられていてもよい。これにより、上側金具620の周辺の電界を緩和することができる。
【0053】
[下側金具]
下側金具640は、例えば、円盤状に構成され、碍管200の軸方向の下端における下部開口を塞ぐよう構成されている。下側金具640は、上側金具620と同様に、例えば、Oリング(不図示)を介在させた状態で、碍管200の軸方向の下端に接している。当該Oリングにより、下側金具640と碍管200の下端との間の間隙が封止されている。
【0054】
下側金具640は、例えば、電力ケーブル100の外周を囲むように設けられている。具体的には、下側金具640は、例えば、中心に挿通孔(符号不図示)を有し、当該挿通孔内には、電力ケーブル100の外周に金属管590が嵌められた電力ケーブル100が挿通されている。下側金具640の挿通孔の内周面には、Oリング(不図示)が設けられている。当該Oリングにより、下側金具640と金属管590との間の間隙が封止されている。
【0055】
このような構成により、電力ケーブル100と下側金具640との間の間隙が封止された状態を維持しながら、電力ケーブル100の軸方向の伸縮を許容することができる。
【0056】
[下側シールドリング]
下側金具640の周囲には、必要に応じて、例えば、下側シールドリング840が設けられていてもよい。これにより、下側金具640の周辺の電界を緩和することができる。
【0057】
(2)コンデンサコーンおよびその周辺構造
図1および
図2を参照し、本実施形態のコンデンサコーン30およびその周辺構造について説明する。
【0058】
[コンデンサコーン]
図2に示すように、コンデンサコーン30は、例えば、電力ケーブル100(露出したケーブル絶縁層130)の外周を囲むように設けられている。コンデンサコーン30は、例えば、電力ケーブル100の外側の電界を緩和するよう構成されている。
【0059】
コンデンサコーン30は、例えば、複数のリングユニット(チューブユニット、ゴムリング、ゴムチューブ)300を有している。
【0060】
それぞれのリングユニット300は、例えば、円筒状(リング状)に構成され、電力ケーブル100の外周に弾性的に嵌められている。リングユニット300は、例えば、絶縁層320と、導電層340と、を有している。
【0061】
絶縁層320は、例えば、円筒状であり、かつ、絶縁性のゴムを含んでいる。絶縁層320を構成するゴムとしては、例えば、シリコーンゴムまたはエチレンプロピレンゴム(EPゴム)である。本実施形態の絶縁層320には、絶縁油の含浸は不要である。
【0062】
導電層340は、例えば、導電性または半導電性を有し、絶縁層320の内周または外周に設けられている。本実施形態では、導電層340は、絶縁層320の外周に設けられている。これにより、隣り合う導電層340の間に絶縁層320を必然的に介在させることができる。その結果、隣り合う導電層340の短絡を抑制することができる。
【0063】
導電層340は、リングユニット300の軸方向の上端および下端のそれぞれから所定の間隔をあけて設けられている。これにより、隣り合う導電層340の間においてリングユニット300の外面に沿った絶縁距離(沿面距離、界面長)を確保することができる。これにより、リングユニット300の沿面方向の絶縁強度が、リングユニット300の厚さ方向の絶縁強度よりも過剰に低くなってしまうことを抑制することができる。その結果、コンデンサコーン30を安定的に機能させることが可能となる。
【0064】
導電層340は、例えば、導電性または半導電性のゴムを含み、絶縁層320とともに一体としてモールド成型されている。導電層340を構成するベースのゴムとしては、絶縁層320のゴムと同じである。
【0065】
導電層340は、例えば、導電性または半導電性の塗料を含み、絶縁層320の内周または外周に塗布されていてもよい。導電層340が塗料を含む場合には、絶縁層320の外周に導電層340を塗布することにより、リングユニット300を容易に製造することができる。
【0066】
本実施形態では、複数のリングユニット300は、例えば、電力ケーブル100の軸方向に互いに異なる位置に配置されている。複数のリングユニット300は、例えば、電力ケーブル100の軸方向に沿って順に積層されている。
【0067】
具体的には、例えば、電力ケーブル100の先端に近い領域から離れる方向に向けて所定のピッチで、第1リングユニット300a、第2リングユニット300bおよび第3リングユニット300cがこの順で配置されている。第2リングユニット300bの内周面の一部は、第1リングユニット300aの外周面の一部に重なりつつ、当該外周面に対して弾性的に当接している。第3リングユニット300cの内周面の一部は、第2リングユニット300bの外周面の一部に重なりつつ、当該外周面に対して弾性的に当接している。
【0068】
第1リングユニット300aおよび第2リングユニット300bでは、第1リングユニット300aの導電層340aと、第2リングユニット300bの導電層340bとが、第2リングユニット300bの絶縁層320bを挟んで配置されている。このように配置された第1リングユニット300aおよび第2リングユニット300bにより、1つのコンデンサが形成されている。
【0069】
第2リングユニット300bおよび第3リングユニット300cにおいても、上述と同様にコンデンサが形成されている。
【0070】
このようにして、コンデンサコーン30において、電力ケーブル100の軸方向に沿って所定の間隔で、複数のコンデンサを形成することができる。これにより、電力ケーブル100の外側における等電位線を均等に分布させることができる。
【0071】
本実施形態では、複数のリングユニット300は、例えば、電力ケーブル100の中心軸に直交する同一の断面内で、3つ以上のリングユニット300が重ならないように積層されている。例えば、電力ケーブル100の中心軸に直交する同一の断面内で、第1リングユニット300aおよび第2リングユニット300bのみが積層され、第3リングユニット300cなどは積層されていない。
【0072】
本実施形態では、複数のリングユニット300のそれぞれにおける内周面の少なくとも一部は、他のリングユニット300と重なった位置以外の位置で、電力ケーブル100の外周に接している。例えば、第2リングユニット300bの内周面は、第1リングユニット300aと重なった位置以外の位置で、他のリングユニット300に重なることなく、電力ケーブル100の外周に接している。
【0073】
本実施形態では、複数のリングユニット300により形成される複数のコンデンサは、電力ケーブル100の軸方向に見たときに、少なくとも部分的に互いに重なっている。言い換えれば、複数のコンデンサのそれぞれの少なくとも一部は、電力ケーブル100の中心軸に対して同一の直径に位置している。例えば、第1リングユニット300aおよび第2リングユニット300bのコンデンサと、第2リングユニット300bおよび第3リングユニット300cのコンデンサとは、電力ケーブル100の軸方向に見たときに重なっている。なお、第1リングユニット300aおよび第2リングユニット300bの積層面と、第2リングユニット300bおよび第3リングユニット300cの積層面とは、同一の円筒面を形成していてもよい。
【0074】
上述のような構成により、コンデンサコーン30の外径を小さくすることができる。
【0075】
本実施形態では、複数のリングユニット300のうち、隣り合う2つのリングユニット300において、鉛直下側に位置するリングユニット300の上部は、鉛直上側に位置するリングユニット300の下部上に重なっている。例えば、第2リングユニット300bの上部は、第1リングユニット300aの下部上に重なっている。これにより、電力ケーブル100の外周から放射状に広がる等電位線を形成することができる。
【0076】
本実施形態では、複数のリングユニット300は、互いに同一の構成を有している。例えば、複数のリングユニット300は、互いに同一の材料を含み、互いに同一の形状およびサイズを有し、互いに同一の絶縁層320および導電層340を有している。これにより、製造コストを低減することができる。
【0077】
本実施形態では、複数のリングユニット300は、電力ケーブル100の軸方向に沿って均等に配置されている(等しいピッチで配置されている)。なお、最上段のリングユニット300の導電層340は、導体引出棒610と電気的に接続されている。このような構成により、導電層340に沿って形成される等電位線を、電力ケーブル100の軸方向に均等に分布(離間)させることができる。
【0078】
[絶縁筒]
図2に示すように、絶縁筒400は、碍管200の中空部内で電力ケーブル100の外周を囲むように筒状に設けられている。絶縁筒400は、段階的に剥がされた電力ケーブル100の周囲(特にケーブル外部半導電層140の先端付近の周囲)の電界を緩和するよう構成されている。
【0079】
具体的には、絶縁筒400は、例えば、絶縁部420と、半導電部440と、を有している。これらは、一体として筒状にモールド成形されている。絶縁部420は、例えば、絶縁性ゴムを含んでいる。一方、半導電部440は、例えば、半導電性ゴムを含んでいる。また、半導電部440は、コーン状を有しており、絶縁筒400の軸方向の下端から上端に向けて徐々に広がる内径を有している。すなわち、半導電部440は、いわゆるストレスコーンを形成している。
【0080】
ケーブル終端接続構造10では、絶縁部420は、露出したケーブル絶縁層130の外周面と接するように配置される。半導電部440は、露出したケーブル外部半導電層140の外周面と接するよう配置される。このような構成により、比較的高い電界が生じる露出したケーブル外部半導電層140の周辺において、コーン状の半導電部440により等電位線を均等に分布させ、電界集中を抑制することができる。
【0081】
[補助導電部]
補助導電部500は、例えば、絶縁筒400の外周を覆うように設けられている。補助導電部500は、例えば、絶縁筒400の外側における電界を緩和するように、コンデンサコーン30の鉛直下端に位置するリングユニット300と、電力ケーブル100において露出したケーブル外部半導電層140と、を電気的に繋いでいる。
【0082】
本実施形態では、補助導電部500は、例えば、複数の補助リングユニット510を有している。補助リングユニット510は、例えば、コンデンサコーン30のリングユニット300と同様の構成を有している。すなわち、補助リングユニット510は、絶縁層520と、導電層540と、を有している。
【0083】
コンデンサコーン30の鉛直下端に位置するリングユニット300の下部上に、補助リングユニット510の上部が重なっている。隣り合う2つの補助リングユニット510において、鉛直上側に位置する補助リングユニット510の下部上に、鉛直下側に位置する補助リングユニット510の上部が重なっている。補助導電部500の鉛直下端に位置する補助リングユニット510の導電層540には、上述した遮蔽層580が接続されている。
【0084】
このような構成により、絶縁筒400の外側における高電界のストレスを緩和することができる。
【0085】
(3)ケーブル終端接続構造の製造方法(ケーブル終端接続方法)
次に、本実施形態に係るケーブル終端接続構造の製造方法について説明する。
【0086】
本実施形態のケーブル終端接続構造10の製造方法は、例えば、準備工程S10と、下側金具配置工程S20と、絶縁筒配置工程S30と、コンデンサコーン形成工程S40と、補助導電部形成工程S50と、導体引出棒接続工程S60と、碍管内挿入工程S70と、上側金具配置工程S80と、絶縁媒体充填工程S90と、を有している。
【0087】
(S10:準備工程)
まず、本実施形態のケーブル終端接続構造10を取り付けるための架台を設置する。
【0088】
次に、終端接続する電力ケーブル100を準備する。該電力ケーブル100を架台から鉛直方向に沿って立設させる。具体的には、架台の周りを囲むように足場を組む。足場を組んだら、電力ケーブル100を鉛直方向に沿って立ち上げる。このとき、足場の支柱間に単管パイプ等で渡りを作り、該渡りに対して電力ケーブル100を固定し、この状態を維持させる。
【0089】
次に、電力ケーブル100を導体110の先端から軸方向に段階的に剥がし、導体110、ケーブル絶縁層130およびケーブル外部半導電層140をこの順で露出させる。
【0090】
電力ケーブル100を段階的に剥がしたら、露出したケーブル外部半導電層140の外周を囲むように、遮蔽層580および金属管590を配置する。
【0091】
(S20:下側金具配置工程)
次に、電力ケーブル100の外周を囲むように、下側金具640を配置する。具体的には、下側金具640の挿通孔の内周面にOリングを配置し、当該下側金具640の挿通孔内に、金属管590が嵌められた電力ケーブル100を挿通させる。
【0092】
(S30:絶縁筒配置工程)
電力ケーブル100に遮蔽層580および下側金具640を装着したら、電力ケーブル100の外周に絶縁筒400を外嵌させ、絶縁筒400をケーブル外部半導電層140の先端付近に配置する。
【0093】
(S40:コンデンサコーン形成工程)
絶縁筒400を配置したら、電力ケーブル100の外側の電界を緩和するコンデンサコーン30を、電力ケーブル100の外周を囲むように設ける。
【0094】
本実施形態のコンデンサコーン形成工程S4は、例えば、リングユニット準備工程S42と、積層工程S44と、を有している。
【0095】
(S42:リングユニット準備工程)
円筒状の絶縁層320と、絶縁層320の内周または外周に設けられた導電層340と、を有する複数のリングユニット300を予め準備する。
【0096】
(S44:積層工程)
リングユニット300を準備したら、複数のリングユニット300を、電力ケーブル100の軸方向に互いに異なる位置に配置する。このとき、複数のリングユニット300を、電力ケーブル100の中心軸に直交する同一の断面内で、3つ以上のリングユニット300が重ならないように積層する。
【0097】
(S50:補助導電部形成工程)
コンデンサコーン30を形成したら、補助導電部500により、絶縁筒400の外周を覆う。このとき、絶縁筒400の外側における電界を緩和するように、コンデンサコーン30の鉛直下端に位置するリングユニット300と、電力ケーブル100において露出したケーブル外部半導電層140とを、補助導電部500により電気的に繋ぐ。
【0098】
(S60:導体引出棒接続工程)
さらに、導体110の軸方向の先端を導体引出棒610の基端に圧縮により接続する。導体引出棒610と最上段のリングユニット300の導電層340を電気的に繋ぐ。
【0099】
(S70:碍管内挿入工程)
次に、碍管200の中空部内に、コンデンサコーン30などが取り付けられた状態の電力ケーブル100を挿入し、碍管200を鉛直方向に沿って立設させる。
【0100】
碍管200を立設したら、碍管200の下部開口を下側金具640により塞ぎ、碍管200を架台に固定する。
【0101】
(S80:上側金具配置工程)
碍管内挿入工程S70が完了したら、導体110を上側金具620に固定し、碍管200の上部開口を上側金具620により塞ぐ。
【0102】
(S90:絶縁媒体充填工程)
次に、電力ケーブル100を除く碍管200の中空部内に、絶縁媒体を充填する。
【0103】
以上により、本実施形態のケーブル終端接続構造10が製造される。
【0104】
(4)本実施形態のまとめ
本実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果を奏する。
【0105】
(a)本実施形態では、円筒状であり絶縁性のゴムを含む絶縁層320と、絶縁層320の内周または外周に設けられた導電層340と、を有する複数のリングユニット300により、コンデンサコーン30が構成されている。これにより、複数のリングユニット300を電力ケーブル100の軸方向に沿って重ね合わせることで、コンデンサコーン30を容易に形成することができる。つまり、高度な技術とその熟練とを必要とせず、現場での作業を容易に行うことができる。
【0106】
このように、本実施形態では、コンデンサコーン30を有するケーブル終端接続構造10を容易かつ安定的に製造することが可能となる。
【0107】
(b)本実施形態では、複数のリングユニット300は、電力ケーブル100の軸方向に互いに異なる位置に配置されている。複数のリングユニット300は、電力ケーブル100の中心軸に直交する同一の断面内で、3つ以上のリングユニット300が重ならないように積層されている。これにより、コンデンサコーン30の径方向の厚さを、2つのリングユニット300のみの厚さとすることができる。すなわち、コンデンサコーン30の外径を小さくすることができる。その結果、ケーブル終端接続構造10を容易に製造しつつ、碍管200の外径を小さくすることが可能となる。
【0108】
(c)本実施形態では、リングユニット300の数を調整することで、コンデンサコーン30の軸方向の全長を調整し、コンデンサコーン30のコンデンサ数を任意に調整することができる。これにより、電圧階級が高く碍管200全長が長いケーブル終端接続構造10に対しても、本実施形態の構成を容易かつ安定的に適用することができる。
【0109】
(d)本実施形態では、複数のリングユニット300のそれぞれにおける内周面の少なくとも一部は、他のリングユニット300と重なった位置以外の位置で、電力ケーブル100の外周に接している。これにより、コンデンサを形成しない位置で、コンデンサコーン30の外径が不要に大きくなることを抑制することができる。その結果、碍管200の外径を安定的に小さくすることが可能となる。
【0110】
(e)本実施形態では、複数のリングユニット300により形成される複数のコンデンサは、電力ケーブル100の軸方向に見たときに、少なくとも部分的に互いに重なっている。これにより、複数のコンデンサを電力ケーブル100の軸方向に沿って所定の間隔で分布させつつ、電力ケーブル100の径方向におけるコンデンサ分布の過剰な広がりを抑制することができる。その結果、電力ケーブル100の外側の電界を緩和させつつ、碍管200の外径を安定的に小さくすることが可能となる。
【0111】
(f)本実施形態では、複数のリングユニット300のうち、隣り合う2つのリングユニット300において、鉛直下側に位置するリングユニット300の上部は、鉛直上側に位置するリングユニット300の下部上に重なっている。これにより、それぞれのリングユニット300の導電層340を、電力ケーブル100の先端に近づくにつれて、電力ケーブル100の外周面に近い位置から徐々に離れるように配置することができる。その結果、電力ケーブル100の外周から放射状に広がる等電位線を形成することができる。
【0112】
(g)本実施形態では、複数のリングユニット300は、互いに同一の構成を有している。これにより、コンデンサコーン30をシンプルな構造とし、ケーブル終端接続構造10を容易に製造することができる。
【0113】
さらに、同じ金型により、多数のリングユニット300を形成することができる。これにより、ケーブル終端接続構造10の製造コストを低減することができる。
【0114】
(h)本実施形態では、補助導電部500は、絶縁筒400の外周を覆うように設けられている。補助導電部500は、絶縁筒400の外側における電界を緩和するように、コンデンサコーン30の鉛直下端に位置するリングユニット300と、電力ケーブル100において露出したケーブル外部半導電層140と、を電気的に繋いでいる。
【0115】
ここで、ケーブル外部半導電層140の先端には、高い電界が生じやすい。このため、ケーブル外部半導電層140の先端を囲むように設けられる絶縁筒400の外側にも、高い電界が生じやすくなっている。
【0116】
そこで、本実施形態では、上述のように絶縁筒400の外周を覆うように補助導電部500を設けることで、絶縁筒400の外側における高電界のストレスを緩和することができる。これにより、ケーブル終端接続構造10の安全性を向上させることができる。
【0117】
(i)本実施形態では、補助導電部500は、複数の補助リングユニット510を有している。補助リングユニット510は、コンデンサコーン30のリングユニット300と同様の構成を有している。
【0118】
ここで、補助導電部500として、絶縁筒400の外周面全体を半導電層または導電層が覆っていると、絶縁筒400の外側における電界緩和が阻害される。そのため、絶縁筒400の先端に近い領域における電界が高くなってしまう可能性がある。
【0119】
これに対し、本実施形態では、補助導電部500がリングユニット300と同様の補助リングユニット510を有していることで、絶縁筒400の外側における高電界のストレスを緩和することができる。
【0120】
(5)一実施形態の変形例
上述の実施形態は、必要に応じて、以下に示す変形例のように変更することができる。以下、上述の実施形態と異なる要素についてのみ説明し、上述の実施形態で説明した要素と実質的に同一の要素には、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0121】
<変形例1>
図3に示すように、変形例1では、導電層340は、例えば、絶縁層320の内周に設けられている。
【0122】
変形例1では、導電層340は、例えば、導電性または半導電性のゴムを含んでいる。これにより、導電層340を金型の中芯にセットし易くなる。その結果、導電層340が絶縁層320の内周に形成されたリングユニット300を容易に製造することができる。
【0123】
第1リングユニット300aおよび第2リングユニット300bでは、第1リングユニット300aの導電層340aと、第2リングユニット300bの導電層340bとが、第1リングユニット300aの絶縁層320aを挟んで配置されている。このような配置により、1つのコンデンサが形成されている。
【0124】
変形例1では、導電層340は、例えば、リングユニット300の軸方向の上端および下端のそれぞれから所定の間隔をあけて設けられている。これにより、導電層340が、重なり合う他のリングユニット300の導電層340と接触することを抑制することができる。また、上述したように、隣り合う導電層340の間においてリングユニット300の外面に沿った絶縁距離(沿面距離、界面長)を確保することができる。その結果、隣り合う2つのリングユニット300において、確実にコンデンサを形成することができる。
【0125】
変形例1によれば、導電層340が絶縁層320の内周に設けられている構成においても、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0126】
<変形例2>
図4を参照し、変形例2のケーブル終端接続構造10について説明する。
図4では、コンデンサコーン30以外の部分が省略されており、
図4の上側が電力ケーブル100の先端に近い領域となっている。後述の
図5も、
図4と同様である。
【0127】
図4に示すように、変形例2では、コンデンサコーン30において、絶縁層320を挟んで隣り合う2つの導電層340が重なった電力ケーブル100の軸方向の長さ(導電層340のラップ長ともいう)は、電力ケーブル100の先端からケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に長くなっている。
【0128】
本変形例では、例えば、各リングユニット300の長さが、電力ケーブル100の先端からケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に長くなっている。これにより、導電層340のラップ長をケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に長くすることができる。
【0129】
なお、リングユニット300自体は全て同一の構成を有している場合であっても、隣り合う2つのリングユニット300の重なり合う長さを変えることで、導電層340のラップ長をケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に長くしてもよい。
【0130】
変形例2によれば、導電層340のラップ長をケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に長くすることで、高電界が生じやすい(等電位線が密になりやすい)ケーブル外部半導電層140の先端に向けて、コンデンサの面積を徐々に大きくし、コンデンサの静電容量を徐々に増加させることができる。これにより、電力ケーブル100の軸方向の位置に依存して変化する電界の強度に応じて、電界を緩和することができる。
【0131】
<変形例3>
図5を参照し、変形例3のケーブル終端接続構造10について説明する。
【0132】
図5に示すように、変形例3では、コンデンサコーン30において、隣り合う2つの導電層340に挟まれた絶縁層320の厚さ(以下、単に絶縁厚ともいう)は、電力ケーブル100の先端からケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に薄くなっている。
【0133】
本変形例では、例えば、各リングユニット300自体の厚さが、電力ケーブル100の先端からケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に薄くなっている。これにより、絶縁厚をケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に薄くすることができる。
【0134】
なお、リングユニット300自体の厚さは全て同一の厚さを有している場合であっても、重なり合う2つのリングユニット300の間に挿入する絶縁性のゴムを含むスペーサの厚さを変えることで、絶縁厚をケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に薄くしてもよい。
【0135】
変形例3によれば、絶縁厚をケーブル外部半導電層140の先端に向けて徐々に薄くすることで、高電界が生じやすいケーブル外部半導電層140の先端に向けて、コンデンサの絶縁厚を徐々に薄くし(電極間距離を短くし)、コンデンサの静電容量を徐々に増加させることができる。これにより、電力ケーブル100の軸方向の位置に依存して変化する電界の強度に応じて、電界を緩和することができる。
【0136】
<本開示の他の実施形態>
以上、本開示の実施形態について具体的に説明したが、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0137】
上述の実施形態では、鉛直下側に位置するリングユニット300の上部が、鉛直上側に位置するリングユニット300の下部上に重なっている場合について説明したが、本開示はこの場合に限られない。鉛直上側に位置するリングユニット300の下部が、鉛直下側に位置するリングユニット300の上部上に重なっていてもよい。ただし、上述の実施形態のほうが、等電位線を滑らかに形成することができる。
【0138】
<付記>
以下、本開示の態様を付記する。
【0139】
(付記1)
電力ケーブルと、
前記電力ケーブルの外周を囲むように設けられ、前記電力ケーブルの外側の電界を緩和するコンデンサコーンと、
鉛直方向に立設され、前記コンデンサコーンが取り付けられた状態の前記電力ケーブルが挿入された碍管と、
を備え、
前記コンデンサコーンは、円筒状であり絶縁性のゴムを含む絶縁層と、前記絶縁層の内周または外周に設けられた導電層と、を有する複数のリングユニットを有し、
前記複数のリングユニットは、前記電力ケーブルの軸方向に互いに異なる位置に配置され、前記電力ケーブルの中心軸に直交する同一の断面内で3つ以上のリングユニットが重ならないように積層されている
ケーブル終端接続構造。
【0140】
(付記2)
前記複数のリングユニットのそれぞれにおける内周面の少なくとも一部は、他のリングユニットと重なった位置以外の位置で、前記電力ケーブルの外周に接している
付記1に記載のケーブル終端接続構造。
【0141】
(付記3)
前記複数のリングユニットにより形成される複数のコンデンサは、前記電力ケーブルの軸方向に見たときに、少なくとも部分的に互いに重なっている
付記1または付記2に記載のケーブル終端接続構造。
【0142】
(付記4)
前記複数のリングユニットのうち、隣り合う2つのリングユニットにおいて、鉛直下側に位置する前記リングユニットの上部は、鉛直上側に位置する前記リングユニットの下部上に重なっている
付記1から付記3のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造。
【0143】
(付記5)
前記複数のリングユニットは、互いに同一の構成を有する
付記1から付記4のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造。
【0144】
(付記6)
前記複数のリングユニットは、前記電力ケーブルの軸方向に沿って均等に配置されている
付記1または付記5のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造。
【0145】
(付記7)
前記電力ケーブルは、導体、ケーブル内部半導電層、ケーブル絶縁層、ケーブル外部半導電層およびケーブルシースを有し、
前記導体、前記ケーブル内部半導電層、前記ケーブル絶縁層、前記ケーブル外部半導電層、および前記ケーブルシースは、前記導体の先端から反対に向けてこの順で露出しており、
前記コンデンサコーンにおいて、絶縁層を挟んで隣り合う2つの導電層が重なった前記電力ケーブルの軸方向の長さは、前記電力ケーブルの先端から前記ケーブル外部半導電層の先端に向けて徐々に長くなっている
付記1から付記4のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造。
【0146】
(付記8)
前記電力ケーブルは、導体、ケーブル内部半導電層、ケーブル絶縁層、ケーブル外部半導電層およびケーブルシースを有し、
前記導体、前記ケーブル内部半導電層、前記ケーブル絶縁層、前記ケーブル外部半導電層、および前記ケーブルシースは、前記導体の先端から反対に向けてこの順で露出しており、
前記コンデンサコーンにおいて、隣り合う2つの導電層に挟まれた絶縁層の厚さは、前記電力ケーブルの先端から前記ケーブル外部半導電層の先端に向けて徐々に薄くなっている
付記1から付記4のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造。
【0147】
(付記9)
前記コンデンサコーンよりも鉛直下の位置で前記電力ケーブルの外周に設けられ、前記電力ケーブルの外側の電界を緩和する絶縁筒と、
前記絶縁筒の外周を覆い、前記絶縁筒の外側における電界を緩和するように、前記コンデンサコーンの鉛直下端に位置するリングユニットと、前記電力ケーブルにおいて露出したケーブル外部半導電層と、を電気的に繋ぐ補助導電部と、
を有する
付記1または付記8のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造。
【0148】
(付記10)
前記補助導電部は、前記リングユニットと同様の構成を有する補助リングユニットを有している
付記9に記載のケーブル終端接続構造。
【0149】
(付記11)
付記1または付記8のいずれか1つに記載のケーブル終端接続構造の前記コンデンサコーンに用いられる
リングユニット。
【0150】
(付記12)
電力ケーブルを準備する工程と、
前記電力ケーブルの外側の電界を緩和するコンデンサコーンを、前記電力ケーブルの外周を囲むように設ける工程と、
鉛直方向に立設された碍管内に、前記コンデンサコーンが取り付けられた状態の前記電力ケーブルを挿入する工程と、
を備え、
前記コンデンサコーンを設ける工程は、
円筒状であり絶縁性のゴムを含む絶縁層と、前記絶縁層の内周または外周に設けられた導電層と、を有する複数のリングユニットを準備する工程と、
前記複数のリングユニットを、前記電力ケーブルの軸方向に互いに異なる位置に配置し、前記電力ケーブルの中心軸に直交する同一の断面内で3つ以上のリングユニットが重ならないように積層する工程と、
を有する
ケーブル終端接続構造の製造方法。
【符号の説明】
【0151】
10 ケーブル終端接続構造
30 コンデンサコーン
100 電力ケーブル
110 導体
130 ケーブル絶縁層
140 ケーブル外部半導電層
160 ケーブルシース
200 碍管
210 鍔部
300 リングユニット
300a 第1リングユニット
300b 第2リングユニット
300c 第3リングユニット
320、320a~320c 絶縁層
340、340a~340c 導電層
400 絶縁筒
420 絶縁部
440 半導電部
500 補助導電部
510 補助リングユニット
520 絶縁層
540 導電層
580 遮蔽層
590 金属管
610 導体引出棒
620 上側金具
640 下側金具
820 上側シールドリング
840 下側シールドリング