(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053177
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】商品の発注数を決定する方法、システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/087 20230101AFI20240408BHJP
G06Q 30/0202 20230101ALI20240408BHJP
【FI】
G06Q10/08 330
G06Q30/02 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159259
(22)【出願日】2022-10-03
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】500114069
【氏名又は名称】株式会社シノプス
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南谷 洋志
【テーマコード(参考)】
5L010
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA16
5L030BB01
5L049AA16
5L049BB01
(57)【要約】
【課題】物流センター及び店舗を合わせた適切な商品の発注数を決定する技術を提供する。
【解決手段】第2時点(7月8日)までの過去データによる需要予測に基づき、第1時点(7月15日)で発注される全店舗の予測発注合計数を算出し、複数の店舗それぞれにおいて第1時点で発注すべき商品の第2発注数を、第1時点までの過去データによる需要予測に基づき算出し、第2発注数の全店舗分の合計値と全店舗の予測発注合計数とに基づいて、発注数調整が必要か否かを判定し、発注数調整が必要であると判定した場合に、複数の店舗それぞれの商品の売れやすさを表す指標を取得し、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数以下となるように、指標が表す売れやすさに応じて複数の店舗から少なくとも1つの店舗を選択し、選択した店舗の第2発注数を増減させて調整する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、
複数の店舗それぞれにおいて第1時点で発注すべき商品の第1発注数を、前記第1時点よりも数日前の第2時点までの過去データによる需要予測に基づき算出することと、
前記第1発注数の全店舗分の合計値に基づき前記第1時点で発注される全店舗の予測発注合計数を算出することと、
前記複数の店舗それぞれにおいて前記第1時点で発注すべき商品の第2発注数を、前記第1時点までの過去データによる需要予測に基づき算出することと、
前記第2発注数の全店舗分の合計値と前記全店舗の予測発注合計数とに基づいて、発注数調整が必要か否かを判定することと、
前記発注数調整が必要であると判定した場合に、前記複数の店舗それぞれの前記商品の売れやすさを表す指標を取得することと、
調整後の前記第2発注数の合計値が前記全店舗の予測発注合計数以下となるように、前記指標が表す売れやすさに応じて前記複数の店舗から少なくとも1つの店舗を選択し、選択した店舗の前記第2発注数を増減させて調整することと、
を含む、商品の発注数を決定する方法。
【請求項2】
前記第2発注数の全店舗分の合計値が、前記全店舗の予測発注合計数を超える場合に、発注数調整が必要であると判定し、
調整後の前記第2発注数の合計値が前記全店舗の予測発注合計数以下となるように、前記指標が表す売れにくい店舗の前記第2発注数を減少させて調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第2発注数の全店舗分の合計値が、前記全店舗の予測発注合計数よりも低い所定閾値以下である場合に、発注数調整が必要であると判定し、
調整後の前記第2発注数の合計値が前記全店舗の予測発注合計数以下となるように、前記指標が表す売れやすい店舗の前記第2発注数を増加させて調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記指標は、在庫日数、または、売上ランクである、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
複数の店舗それぞれにおいて第1時点で発注すべき商品の第1発注数を、前記第1時点よりも数日前の第2時点までの過去データによる需要予測に基づき算出する第1発注数算出部と、
前記第1発注数の全店舗分の合計値に基づき前記第1時点で発注される全店舗の予測発注合計数を算出する予測発注合計数算出部と、
前記複数の店舗それぞれにおいて前記第1時点で発注すべき商品の第2発注数を、前記第1時点までの過去データによる需要予測に基づき算出する第2発注数算出部と、
前記第2発注数の全店舗分の合計値と前記全店舗の予測発注合計数とに基づいて、発注数調整が必要か否かを判定する判定部と、
前記発注数調整が必要であると判定された場合に、前記複数の店舗それぞれの前記商品の売れやすさを表す指標を取得する指標取得部と、
調整後の前記第2発注数の合計値が前記全店舗の予測発注合計数以下となるように、前記指標が表す売れやすさに応じて複数の店舗から少なくとも1つの店舗を選択し、選択した店舗の前記第2発注数を増減させて調整する調整部と、
を備える、商品の発注数を決定するシステム。
【請求項6】
前記判定部は、前記第2発注数の全店舗分の合計値が、前記全店舗の予測発注合計数を超える場合に、発注数調整が必要であると判定し、
前記調整部は、調整後の前記第2発注数の合計値が前記全店舗の予測発注合計数以下となるように、前記指標が表す売れにくい店舗の前記第2発注数を減少させて調整する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記判定部は、前記第2発注数の全店舗分の合計値が、前記全店舗の予測発注合計数よりも低い所定閾値以下である場合に、発注数調整が必要であると判定し、
前記調整部は、調整後の前記第2発注数の合計値が前記全店舗の予測発注合計数以下となるように、前記指標が表す売れやすい店舗の前記第2発注数を増加させて調整する、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記指標は、在庫日数、または、売上ランクである、請求項5~7のいずれかに記載のシステム。
【請求項9】
請求項1~3のいずれかに記載の方法を1又は複数のプロセッサに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、商品の発注数を決定する方法、システム及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、スーパーマーケットやコンビニエンスストア等、多くの小売業者の店舗においてPOS(Point of Sales)システムが普及しており、収集された商品の売上データは様々に活用されている。その中で、売上データに基づき商品の需要を予測し、発注に活用するシステムがある。例えば、特許文献1に記載のシステムが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
商品は、メーカから卸売業者などの物流センターに入荷され、その後、物流センターから各店舗に入荷される。物流センターは、各店舗の総合計の注文に対応するために、過剰在庫を抱える傾向にある。これは、物流センターは、各店舗の発注数に対して100%納品できなければ欠品となり問題があるという従来の考え方に基づくと考えられる。しかしながら、本来、物流センターから店舗への欠品の発生は重要ではなく、店舗における欠品の発生を問題とすべきであると考える。よって、ここに、物流センターと店舗とを合わせた発注の改善点があると考える。
【0005】
本開示は、物流センター及び店舗を合わせた適切な商品の発注数を決定する方法、システム、及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の商品の発注数を決定する方法は、1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、複数の店舗それぞれにおいて第1時点で発注すべき商品の第1発注数を、前記第1時点よりも数日前の第2時点までの過去データによる需要予測に基づき算出することと、前記第1発注数の全店舗分の合計値に基づき前記第1時点で発注される全店舗の予測発注合計数を算出することと、前記複数の店舗それぞれにおいて前記第1時点で発注すべき商品の第2発注数を、前記第1時点までの過去データによる需要予測に基づき算出することと、前記第2発注数の全店舗分の合計値と前記全店舗の予測発注合計数とに基づいて、発注数調整が必要か否かを判定することと、前記発注数調整が必要であると判定した場合に、前記複数の店舗それぞれの前記商品の売れやすさを表す指標を取得することと、調整後の前記第2発注数の合計値が前記全店舗の予測発注合計数以下となるように、前記指標が表す売れやすさに応じて前記複数の店舗から少なくとも1つの店舗を選択し、選択した店舗の前記第2発注数を増減させて調整することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】第1実施形態の第2時点における第1発注数に関する説明図。
【
図3】第1実施形態の第1時点における第2発注数及び第2発注数の調整に関する説明図。
【
図4】第2実施形態の第1時点における第2発注数及び第2発注数の調整に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
第1実施形態の商品の発注数を決定するシステム3について、図面を参照して説明する。まず、前提となる発注システム1及びPOSシステム2について説明する。
【0009】
<発注システム1及びPOSシステム2>
図1に示すように、発注システム1は、店舗に設けられる店舗端末10と、本部に設けられる発注サーバ11と、を有する。店舗端末10は、本部に設置されるPOSサーバ20と共に、POSシステム2を構成している。店舗の商品には、店舗端末10が読取可能なPOS用情報(バーコード、RFID等)が付されている。POS用情報が販売時に店舗端末10に読み取られると、その商品の売上に関する売上データが本店のPOSサーバ20に送信され、POSサーバ20に設けられるPOSデータベース21に、売上実績データとして記憶される。POSデータベース21には、売上実績データの他に、商品に関する商品マスタ、発注履歴データなどのデータが記憶されている。POSシステム2については、一般的であるので詳細な説明を省略する。
【0010】
なお、本明細書において、店舗端末10は、店舗に設けられる情報処理装置を意味し、本部に設けられるサーバ(情報処理装置)と通信可能であれば、EOB(Electric Order Book)等のモバイル端末、レジに設置されるレジスタ、店舗に設置されるオフィスコンピュータ、汎用タブレットにいずれであるかは限定されない。
【0011】
発注サーバ11は、店舗端末10から受けた発注データを所定の発注実行タイミングで発注先の物流センター4へEDI(Electronic Data Interchange)等を用いて送信する。発注を受けた発注先の物流センター4は、店舗端末10が読取可能なPOS用情報を付した商品を店舗に納入する。POS用情報には、例えばその商品を識別する情報である商品コードが含まれる。商品コードは、本店に設けられる商品マスタ、発注履歴データ、在庫データなどのデータベースを照合することによって、どの発注に基づき店舗に納入された商品であるかを特定可能な発注特定情報であるともいえ、また、商品名、価格、販売期限等の販売時に必要な販売用情報を特定可能な情報であるともいえる。
【0012】
商品の発注数は、本実施形態のように、後述するシステム3が決定した値をデフォルトで表示するようにし、スタッフ(オーナーなど)が承認した数であることが好ましい。スタッフが変更可能にする場合には、システム3が決定した値から減らす方向の修正のみを許容することが好ましい。
【0013】
<発注数を決定するシステム3>
図1に示すように、商品の発注数を決定するシステム3は、1又は複数のプロセッサ3aを有し、商品の発注数を決定する。決定した発注数は店舗端末10で推奨値として表示される。店舗から物流センター4への発注実行タイミング及び店舗への納品タイミングは、種々のパターンがある。例えば、1日3回の発注があり、発注後の数時間後に店舗に納品されるパターンや、1日1回の発注で翌日又は翌々日に店舗に納品されるパターンなどが挙げられる。本実施形態では、理解を容易にするために、1日1回の発注で翌日に物流センター4から店舗に納品されるとする。物流センター4は、店舗から受けた発注に従って商品の在庫を店舗に納品する。ここで、物流センター4は、商品のメーカなどの発注先に発注して商品の納入を受けるが、店舗が発注から納品を受けるまでの時間に対して、物流センター4が発注から納品を受けるまでの時間が長い。例えば、本実施形態では、説明のために、物流センター4は、店舗の発注日よりも7日までに発注しなければならないとする。物流センター4は、過剰在庫にならないように前倒しで発注する必要がある。
【0014】
具体的には、システム3は、予測データ取得部31と、第1発注数算出部32と、予測発注合計数算出部33と、第2発注数算出部34と、判定部35と、調整部36と、を有する。
【0015】
予測データ取得部31は、予測データを取得する。予測データは、過去販売実績に基づく過去データであり、商品単位での一日当たりの需要数を算出するためのデータを含む。予測データの一例としては、例えば、
図2に示すように、予測客数及び商品単位での購買指数(PI)が挙げられる。なお、購買指数は、PI(Purchase Index)値とも呼ばれ、所定の来店人数当たりの購入数であり、来店客の何%に支持されているかを表す人気度の指標ともいえる。本実施形態では、PIが一日の来店客1000人あたりの購入数を示しているが、一日の来店客100人あたりの購入数であってもよい。
【0016】
第1発注数算出部32は、複数の店舗それぞれにおいて第1時点で発注すべき商品の第1発注数を、第1時点よりも数日前の第2時点までの過去データによる需要予測に基づき算出する。第1発注数算出部32が算出した発注数を、第2発注数算出部34が算出した発注数と区別する意味で本明細書において第1発注数と呼ぶ。第1時点は、店舗が発注するタイミングである。第2時点は、店舗が発注する第1時点の商品を確保するために、物流センター4がメーカなどに発注するためのタイミングである。本実施形態では、第2時点が第1時点の7日前としているが、これに限定されない。第2時点が第1時点の2日以上前であれば、第1時点と第2時点の間の日数は適宜変更可能である。ここで納品日を2022年7月16日として、第1時点を同年7月15日、第2時点を同年7月8日として説明する。第1発注数算出部32は、
図2に示すように、第2時点である2022年7月8日において、商品Aについて、複数の店舗(店舗コード:101~110)それぞれの第1発注数を需要予測に基づき算出する。
図2の例では、購買指数(PI)と予測客数とに基づいて需要予測数を算出し、需要予測数に基づいて第1発注数を算出しているが、これに限定されない。需要予測数に基づく第1発注数の算出は、過去の需要予測数と実際の発注数の誤差に基づいて算出しているが、これに限定されない。第1発注数が予測できれば、種々の手法が採用可能である。
【0017】
予測発注合計数算出部33は、第1発注数の全店舗分の合計値に基づき第1時点で発注される全店舗の予測発注合計数を算出する。
図2に示すように、全ての店舗の第1発注数の合計値は414.3である。ここで、商品Aの発注単位数が10であるので、丸め処理を実行し、全店舗の予測発注合計数が420であると決定する。予測発注合計数算出部33が算出した全店舗の予測発注合計数(420)は、物流センター4のサーバに送信され、物流センター4のサーバにおいて商品Aの発注の根拠に用いられる。すなわち、全店舗の予測発注合計数(420)が、第1時点(7月15日)に発注される商品Aの全店舗分の発注数の合計値の上限値であると、第2時点(7月8日)に決定する。
【0018】
第2発注数算出部34は、複数の店舗それぞれにおいて第1時点で発注すべき商品の第2発注数を、第1時点までの過去データによる需要予測に基づき算出する。第2発注数算出部34が算出した発注数を、第1発注数算出部32が算出した発注数と区別する意味で第2発注数と呼ぶ。第2発注数算出部34は、
図3に示すように、第1時点である2022年7月15日において、商品Aについて、複数の店舗(店舗コード:101~110)それぞれの第2発注数を需要予測に基づき算出する。
図3の例では、購買指数(PI)と予測客数とに基づいて7月16日の需要予測数を算出し、需要予測数と現在庫と当日販売予測数(7/15販売予測数)に基づいて第2発注数を算出しているが、これに限定されない。第2発注数が予測できれば、種々の手法が採用可能である。
【0019】
判定部35は、第2発注数の全店舗分の合計値と全店舗の予測発注合計数とに基づいて、発注数調整が必要か否かを判定する。第1実施形態では、第2発注数の全店舗分の合計値が全店舗の予測発注合計数を超える場合に、発注数調整が必要であると判定する。
図2及び
図3の例では、第2発注数の全店舗分の合計値が450であり(
図3参照、7月15日算出)、全店舗の予測発注合計数(
図2参照;7月8日算出)が420であり、発注数の調整が必要と判断できる。これは、物流センター4が、第2時点(7月8日)の予測数(420)を上限として発注しているためである。
【0020】
指標取得部37は、判定部35により発注数調整が必要であると判定された場合に、複数の店舗それぞれの商品の売れやすさを表す指標を取得する。
図3の示す例では、指標として在庫日数を取得している。在庫日数は、在庫数が何日分の販売数に相当するかを表し、数値が大きければ、売れにくいことを表す。本実施形態では、7月16日の需要予測数と7/16閉店時在庫数とに基づいて7/16閉店時在庫日数を算出している。7/16閉店時在庫日数は、7/16の需要予測数と現在庫と第2発注数と7/15販売予測数とに基づいて算出可能であるが、一例であり、これに限定されない。
【0021】
調整部36は、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数以下となるように、指標が表す売れやすさに応じて複数の店舗から少なくとも1つの店舗を選択し、選択した店舗の第2発注数を増減させて調整する。第1実施形態では、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数以下となるように、指標が示す売れにくい店舗の第2発注数を減少させて調整する。
図3の例で説明する。
図3の例では、調整した部分に星印を付して見やすいようにしている。調整前の第2発注数の合計値が450であり、全店舗の予測発注合計数が420であるため、第2発注数を30以上減少させる必要がある。全店舗のうち第2発注数があり(第2発注数>0)且つ在庫日数が最も大きい店舗は、店舗コードが103と110の2店舗である。そこで、この2店舗の第2発注数をそれぞれ10ずつ(発注単位)減少させる。第2発注数を更に10以上減少させる必要がある。全店舗のうち第2発注数があり(第2発注数>0)且つ次に在庫日数が大きい店舗は、店舗コードが107の1店舗である。そこで、この1店舗の第2発注数を10減少させる。これで、第2発注数を合計で30減少させたので、調整処理を終了する。なお、第2発注数を減少させたとしても、その店舗は他の店舗に比べて商品Aが売れにくいため、即座に欠品になるリスクを低く抑えることができる。第1実施形態の第2発注数の調整は、減算のみを実行する。
【0022】
このように、第2時点(7月8日)において第1時点(7月15日)に発注すべき第1発注数を算出し、全店舗の予測発注合計値を決定しておき実際の第1時点における発注すべき第2発注数を、全店舗の予測発注合計値を超えないように調整するので、物流センター4から各店舗へ欠品となる事態を防止又は抑制可能となる。それでいて、各店舗の第2発注数を、指標が表す売れにくい店舗を優先して減少させるので、第2発注数を減少させた店舗で即座に欠品となるリスクを抑制可能となる。第1発注数よりも第2発注数が直近のデータを用いることになるので、予測精度が高いが、全店舗を集計することで、スケールメリットにより第1発注数の合計値の予測精度が向上することになる。これを利用して、予測誤差を指標を用いて調整することで、物流センター4の適正在庫化と、店舗での欠品の抑制とを両立可能となる。
【0023】
[第2実施形態]
第2実施形態について説明する。第1実施形態では、第2発注数の全店舗分の合計値が、全店舗の予測発注合計数を超える場合に、発注数調整が必要であると判定し、指標が表す売れにくい店舗の第2発注数を減少させて調整する。一方、第2実施形態では、第2発注数の全店舗分の合計値が、全店舗の予測発注合計数よりも低い所定閾値以下である場合に、発注数調整が必要であると判定し、指標が表す売れやすい店舗の第2発注数を増加させて調整する。第2実施形態は、
図2に示す全店舗の予測発注合計数が第1実施形態と同じとする。
【0024】
具体的には、第2実施形態の判定部35は、第2発注数の全店舗分の合計値が、全店舗の予測発注合計数よりも低い所定閾値以下の場合に、発注数調整が必要であると判定する。
図4の例では、第2発注数の全店舗分の合計値が400であり、全店舗の予測発注合計数(
図2参照;7月8日算出)が420である。ここで、所定閾値が、全店舗の予測発注数合計値から所定数(10)減算した値(410)であると設定している。この場合、判定部35は発注数調整が必要であると判定する。これは、物流センター4が、第2時点(7月8日)の予測数(420)を上限として発注しているためであるが、上限値が第2発注数の合計値に対して余裕を持っているため、調整の余地があると判断できるからである。なお、所定閾値は、全店舗の予測発注数合計値よりも低い値であれば、任意に設定可能である。
【0025】
第2実施形態の調整部36は、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数以下となるように、指標が表す売れやすい店舗の第2発注数を増加させて調整する。
図4の例で説明する。
図4の例では、調整した部分に星印を付して見やすいようにしている。調整前の第2発注数の合計値が400であり、全店舗の予測発注合計数が420であるため、第2発注数を20までであれば増加可能となる。全店舗のうち第2発注数があり(第2発注数>0)且つ在庫日数が最も小さい店舗(売れやすい店舗)は、店舗コードが105の1店舗である。そこで、この店舗(店舗コード105)の第2発注数を10(発注単位)増加させる。第2発注数を更に10増加させると好ましい。全店舗のうち第2発注数があり(第2発注数>0)且つ次に在庫日数が小さい店舗(次に売れやすい店舗)は、店舗コードが106の1店舗である。そこで、この1店舗の第2発注数を10増加させる。これで、第2発注数を合計で20増加させたので、調整処理を終了する。なお、第2発注数を増加させたとしても、その店舗は他の店舗に比べて商品Aが売れやすいため、在庫過多になるリスクを低く抑えることができる。第2実施形態では、調整後の第2発注数の合計値と全店舗の予測発注合計数とが一致するように調整しているが、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数以下であれば、調整数は発注単位に従う限り任意に変更可能である。第2実施形態の第2発注数の調整は、加算のみを実行する。
【0026】
<変形例>
(A)上記実施形態において、指標が在庫日数であるが、商品の売れにくさを表すものであれば、これに限定されない。例えば、指標として売上ランクを用いてもよい。売上ランクは、商品Aについて、過去の数日から数十日間の売上に基づいて店舗ごとに評価し、Aランク店、Bランク店などの複数のランクのうちのいずれかのランクを店舗に紐づけてランクデータとして記憶しておく。指標取得部37は、ランクデータと店舗コードを参照して各店舗のランクを取得する。調整部36が低ランク(売上が低い)を優先して第2発注数を減少させることが挙げられる。
【0027】
(B)上記実施形態において発注単位数が10としているが、これに限定されず、種々の数値を採用可能である。また、上記実施形態では、閉店後の在庫日数を指標にしているが、任意の時点の在庫日数を指標にしてもよい。例えば、納品後在庫日数を指標にしてもよい。
【0028】
(C)上記実施形態において、第2発注数の調整方法は、減少対象の1つの店舗ごとに1つの発注単位(発注単位10)を減らしているが、これに限定されない。在庫日数の統計値(例えば平均値)からの差に応じた量の発注数を減らしてもよい。具体的には、1店舗目の発注数を20減らし、2店舗目の発注数を10減らすことが挙げられる。
【0029】
(D)上記実施形態において、発注サーバ11が本部に設けられているが、これに限定されない。各種サーバは、クラウドサーバとすることができ、その設置位置はネットワーク上にあれば、どこに設置されていてもよい。1つの機能を実現するサーバが複数のリソースに分散されていたり、時間の経過に伴って動的に変化してもよい。
【0030】
[1]
以上、第1実施形態及び第2実施形態のように、商品の発注数を決定する方法は、1又は複数のプロセッサが実行する方法であって、複数の店舗それぞれにおいて第1時点(7月15日)で発注すべき商品の第1発注数を、第1時点(7月15日)よりも数日前の第2時点(7月8日)までの過去データによる需要予測に基づき算出することと、第1発注数の全店舗分の合計値(414.3)に基づき第1時点(7月15日)で発注される全店舗の予測発注合計数(420)を算出することと、複数の店舗それぞれにおいて第1時点(7月15日)で発注すべき商品の第2発注数を、第1時点(7月15日)までの過去データによる需要予測に基づき算出することと、第2発注数の全店舗分の合計値と全店舗の予測発注合計数(420)とに基づいて、発注数調整が必要か否かを判定することと、発注数調整が必要であると判定した場合に、複数の店舗それぞれの前記商品の売れやすさを表す指標を取得することと、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数(420)以下となるように、指標が表す売れやすさに応じて複数の店舗から少なくとも1つの店舗を選択し、選択した店舗の第2発注数を増減させて調整することと、を含む、としてもよい。
【0031】
この構成によれば、物流センター4から各店舗へ欠品となる事態を防止又は抑制可能となる。それでいて、第2発注数を調整した店舗で即座に欠品となるリスクを抑制可能となる。
【0032】
[2]
第1実施形態のように、上記[1]に記載の商品の発注数を決定する方法において、第2発注数の全店舗分の合計値(450)が、全店舗の予測発注合計数(420)を超える場合に、発注数調整が必要であると判定し、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数(420)以下となるように、指標が表す売れにくい店舗の第2発注数を減少させて調整する、としてもよい。
この構成によれば、物流センター4から各店舗へ欠品となる事態を防止又は抑制可能となる。それでいて、第2発注数を調整した店舗で即座に欠品となるリスクを抑制可能となる。
【0033】
[3]
第2実施形態のように、上記[1]に記載の商品の発注数を決定する方法において、第2発注数の全店舗分の合計値(400)が、全店舗の予測発注合計数(420)よりも低い所定閾値(410)以下である場合に、発注数調整が必要であると判定し、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数(420)以下となるように、指標が表す売れやすい店舗の第2発注数を増加させて調整する、としてもよい。
この構成によれば、物流センター4から各店舗へ欠品となる事態を防止又は抑制可能となる。それでいて、第2発注数を調整した店舗で即座に欠品となるリスクを抑制可能となる。また、売れやすい店舗の第2発注数を増加するので、在庫過多のリスクを低減可能となる。
【0034】
[4]
上記[1]~[3]のいずれかに記載の商品の発注数を決定する方法において、指標は、在庫日数、または、売上ランクである、としてもよい。指標の好ましい例示である。
【0035】
[5]
第1実施形態及び第2実施形態のように、商品の発注数を決定するシステムは、複数の店舗それぞれにおいて第1時点(7月15日)で発注すべき商品の第1発注数を、第1時点(7月15日)よりも数日前の第2時点(7月8日)までの過去データによる需要予測に基づき算出する第1発注数算出部32と、第1発注数の全店舗分の合計値(414.3)に基づき第1時点(7月15日)で発注される全店舗の予測発注合計数(420)を算出する予測発注合計数算出部33と、複数の店舗それぞれにおいて第1時点(7月15日)で発注すべき商品の第2発注数を、第1時点(7月15日)までの過去データによる需要予測に基づき算出する第2発注数算出部34と、第2発注数の全店舗分の合計値(450)と全店舗の予測発注合計数とに基づいて、発注数調整が必要か否かを判定する判定部35と、発注数調整が必要であると判定した場合に、複数の店舗それぞれの前記商品の売れやすさを表す指標を取得する指標取得部37と、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数(420)以下となるように、指標が表す売れやすさに応じて複数の店舗から少なくとも1つの店舗を選択し、選択した店舗の前記第2発注数を増減させて調整する調整部36と、を備える、としてもよい。
【0036】
[6]
第1実施形態のように、上記[5]に記載の商品の発注数を決定するシステムにおいて、判定部35は、第2発注数の全店舗分の合計値(450)が、全店舗の予測発注合計数(420)を超える場合に、発注数調整が必要であると判定し、調整部36は、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数(420)以下となるように、指標が表す売れにくい店舗の第2発注数を減少させて調整する、としてもよい。
【0037】
[7]
第2実施形態のように、上記[5]に記載の商品の発注数を決定するシステムにおいて、判定部35は、第2発注数の全店舗分の合計値(400)が、全店舗の予測発注合計数(420)よりも低い所定閾値(410)以下である場合に、発注数調整が必要であると判定し、調整部36は、調整後の第2発注数の合計値が全店舗の予測発注合計数(420)以下となるように、指標が表す売れやすい店舗の第2発注数を増加させて調整する、としてもよい。
【0038】
[8]
上記[5]~[7]のいずれかに記載の商品の発注数を決定するシステムにおいて、指標は、在庫日数、または、売上ランクである、としてもよい。
【0039】
[9]
第1実施形態及び第2実施形態のように、プログラムは、上記[1]~[4]のいずれかに記載の方法を1又は複数のプロセッサに実行させる、としてもよい。
【0040】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0041】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0042】
例えば、特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現できる。特許請求の範囲、明細書、および図面中のフローに関して、便宜上「まず」、「次に」等を用いて説明したとしても、この順で実行することが必須であることを意味するものではない。
【0043】
図1に示す各部は、所定プログラムを1又は複数のプロセッサで実行することで実現しているが、各部を専用メモリや専用回路で構成してもよい。上記実施形態のシステムは、一つのコンピュータのプロセッサにおいて各部が実装されているが、各部を分散させて、複数のコンピュータやクラウドで実装してもよい。すなわち、上記方法を1又は複数のプロセッサで実行してもよい。
【0044】
システムは、プロセッサを含む。例えば、プロセッサは、中央処理ユニット(CPU)、マイクロプロセッサ、またはコンピュータ実行可能命令の実行が可能なその他の処理ユニットとすることができる。また、システムは、システムのデータを格納するためのメモリを含む。一例では、メモリは、コンピュータ記憶媒体を含み、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリまたはその他のメモリ技術、CD-ROM、DVDまたはその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージまたはその他の磁気記憶デバイス、あるいは所望のデータを格納するために用いることができ、そしてシステムがアクセスすることができる任意の他の媒体を含む。
【符号の説明】
【0045】
3 :システム
32 :第1発注数算出部
33 :予測発注合計数算出部
34 :第2発注数算出部
35 :判定部
36 :調整部
37 :指標取得部
A :商品