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特開2024-53188光電式分離型感知器及び光電式分離型感知器の光軸調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053188
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】光電式分離型感知器及び光電式分離型感知器の光軸調整方法
(51)【国際特許分類】
   G08B 17/103 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
G08B17/103 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159282
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】横田 博之
(72)【発明者】
【氏名】臼井 清人
【テーマコード(参考)】
5C085
【Fターム(参考)】
5C085AA03
5C085AB03
5C085BA32
5C085CA30
5C085FA40
(57)【要約】
【課題】防水仕様を適用する場合に好適で、かつ、高精度の光軸調整を実現できる光電式分離型感知器及び光電式分離型感知器の光軸調整方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る光電式分離型感知器は、発光素子3を有する送光器1と、受光素子を有する受光器とを監視空間内に対向配置してなるものであって、送光器1又は受光器の少なくともいずれか一方に光軸調整手段7を備え、光軸調整手段7は、レンズ中心が発光素子3又は受光素子の光軸からずれた位置に配置された凸レンズを含む複数枚のレンズと、前記凸レンズを含む少なくとも2枚のレンズをそれぞれ異なる回転速度で、それぞれのレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させるレンズ回転手段11と、を有することを特徴とするものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子を有する送光器と、受光素子を有する受光器とを監視空間内に対向配置してなる光電式分離型感知器であって、
前記送光器又は前記受光器の少なくともいずれか一方に光軸調整手段を備え、
該光軸調整手段は、レンズ中心が前記発光素子又は前記受光素子の光軸からずれた位置に配置された凸レンズを含む複数枚のレンズと、
前記凸レンズを含む少なくとも2枚のレンズをそれぞれ異なる回転速度で、それぞれのレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させるレンズ回転手段と、を有することを特徴とする光電式分離型感知器。
【請求項2】
前記レンズ回転手段は、
前記複数枚のレンズを、前記光軸を回転軸として回転させることを特徴とする請求項1に記載の光電式分離型感知器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光電式分離型感知器の光軸調整方法であって、
前記複数枚のレンズを回転させると共に、前記受光器の受光量に基づいて前記複数枚のレンズの最適な位置を特定することを特徴とする光電式分離型感知器の光軸調整方法。
【請求項4】
前記複数枚のレンズの回転前の位置を初期位置とし、該初期位置に戻るまで前記回転を行った後、前記受光量が最も大きくなったときの前記複数枚のレンズの位置を前記複数枚のレンズの最適位置と特定し、該最適位置に前記複数枚のレンズを配置することを特徴とする請求項3に記載の光電式分離型感知器の光軸調整方法。
【請求項5】
発光素子を有する送光器と、受光素子を有する受光器とを監視空間内に対向配置してなる光電式分離型感知器の光軸調整方法であって、
前記送光器及び/又は前記受光器に設けられて、レンズ中心が前記発光素子又は前記受光素子の光軸からずれた位置に配置された凸レンズを含む少なくとも2枚のレンズを、それぞれ異なる回転速度で、それぞれのレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させると共に、前記受光器の受光量に基づいて前記レンズの最適な位置を特定することを特徴とする光電式分離型感知器の光軸調整方法。
【請求項6】
前記凸レンズを含む少なくとも2枚のレンズの回転前の位置を初期位置とし、該初期位置に戻るまで前記回転を行った後、前記受光量が最も大きくなったときの前記レンズの位置を前記レンズの最適位置と特定し、該最適位置に前記レンズを配置することを特徴とする請求項5に記載の光電式分離型感知器の光軸調整方法。
【請求項7】
発光素子を有する送光器と、受光素子を有する受光器とを監視空間内に対向配置してなる光電式分離型感知器であって、
前記送光器又は前記受光器の少なくともいずれか一方に光軸調整手段を備え、
該光軸調整手段は、レンズ中心が前記発光素子又は前記受光素子の光軸からずれた位置に配置された凸レンズと、光の進行方向を偏向するウェッジプリズムと、
前記凸レンズをレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させると共に、前記ウェッジプリズムを前記凸レンズの回転速度と異なる回転速度で回転させるレンズ・ウェッジプリズム回転手段と、を有することを特徴とする光電式分離型感知器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を有する送光器と、受光素子を有する受光器とを監視空間内に対向配置してなる光電式分離型感知器及び光電式分離型感知器の光軸調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電式分離型感知器は、発光素子を収容した送光器と、受光素子を収容した受光器とを高所(通常、地上10~15m)において通常5~100mの監視距離を隔てて対向配置して送光器と受光器の間に、煙が存在することによる光の減衰を感知することで、火災を検知するものである。
送光器と受光器を長距離離して設置するため、送光器と受光器の光軸を一致させるための調整が必要である。
【0003】
そのため光電式分離型感知器は、光軸を調整するための光軸調整手段を備えている。
例えば特許文献1に開示される光電式分離型感知器は、光軸調整手段として、発光素子(受光素子)を収容する光学台の角度を調整するための角度調整用ネジと、反射鏡を利用して対向器の位置を視認するための視準孔を有している。
【0004】
特許文献1における光軸調整は、作業者が角度調整用ネジを回転させて反射鏡に映る視準孔の中に対向器が見えるように光学台の角度を粗調整をした後、受光器側で所定の出力が得られているかを確認しながらさらに微調整を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-59784号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の光軸調整は、設置現場において光学台を覆うカバーを取り外して行う必要があり、光電式分離型感知器を防水仕様にすることが難しかった。
また、受光器側の受光量ができるだけ大きくなるように光学台の角度調整を行うのが好ましいが、作業者が受光量を確認しながら角度調整をするため、当該角度が最大受光量の角度かどうかを調整中に知ることができず、一通り調整作業を行った後で最大受光量であった角度に合わせ直すという作業が必要となる。したがって、作業が煩雑となり、精度よく調整するのが難しいという問題もある。
【0007】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、防水仕様を適用する場合に好適で、かつ、高精度の光軸調整を実現できる光電式分離型感知器及び光電式分離型感知器の光軸調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る光電式分離型感知器は、発光素子を有する送光器と、受光素子を有する受光器とを監視空間内に対向配置してなるものであって、前記送光器又は前記受光器の少なくともいずれか一方に光軸調整手段を備え、該光軸調整手段は、レンズ中心が前記発光素子又は前記受光素子の光軸からずれた位置に配置された凸レンズを含む複数枚のレンズと、前記凸レンズを含む少なくとも2枚のレンズをそれぞれ異なる回転速度で、それぞれのレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させるレンズ回転手段と、を有することを特徴とするものである。
【0009】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記レンズ回転手段は、前記複数枚のレンズを、前記光軸を回転軸として回転させることを特徴とするものである。
【0010】
(3)また、本発明に係る光電式分離型感知器の光軸調整方法は、上記(1)又は(2)に記載の光電式分離型感知器の光軸調整方法であって、前記複数枚のレンズを回転させると共に、前記受光器の受光量に基づいて前記複数枚のレンズの最適な位置を特定することを特徴とするものである。
【0011】
(4)また、上記(3)に記載のものにおいて、前記複数枚のレンズの回転前の位置を初期位置とし、該初期位置に戻るまで前記回転を行った後、前記受光量が最も大きくなったときの前記複数枚のレンズの位置を前記複数枚のレンズの最適位置と特定し、該最適位置に前記複数枚のレンズを配置することを特徴とするものである。
【0012】
(5)また、本発明に係る光電式分離型感知器の光軸調整方法は、発光素子を有する送光器と、受光素子を有する受光器とを監視空間内に対向配置してなる光電式分離型感知器の光軸調整方法であって、前記送光器及び/又は前記受光器に設けられて、レンズ中心が前記発光素子又は前記受光素子の光軸からずれた位置に配置された凸レンズを含む少なくとも2枚のレンズを、それぞれ異なる回転速度で、それぞれのレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させると共に、前記受光器の受光量に基づいて前記レンズの最適な位置を特定することを特徴とするものである。
【0013】
(6)また、上記(5)に記載のものにおいて、前記凸レンズを含む少なくとも2枚のレンズの回転前の位置を初期位置とし、該初期位置に戻るまで前記回転を行った後、前記受光量が最も大きくなったときの前記レンズの位置を前記レンズの最適位置と特定し、該最適位置に前記レンズを配置することを特徴とするものである。
【0014】
(7)本発明に係る光電式分離型感知器は、発光素子を有する送光器と、受光素子を有する受光器とを監視空間内に対向配置してなる光電式分離型感知器であって、前記送光器又は前記受光器の少なくともいずれか一方に光軸調整手段を備え、該光軸調整手段は、レンズ中心が前記発光素子又は前記受光素子の光軸からずれた位置に配置された凸レンズと、光の進行方向を偏向するウェッジプリズムと、前記凸レンズをレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させると共に、前記ウェッジプリズムを前記凸レンズの回転速度と異なる回転速度で回転させるレンズ・ウェッジプリズム回転手段と、を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、レンズ中心が発光素子又は受光素子の光軸からずれた位置に配置された凸レンズを含む複数枚のレンズと、該凸レンズを含む少なくとも2枚のレンズをそれぞれ異なる回転速度で、それぞれのレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させるレンズ回転手段とを有する光軸調整手段を備えたことにより、高精度な光軸調整を行うことができる。
また、光軸調整を遠隔で行うことができるので、設置現場において光軸調整手段を覆うカバーを取り外す必要がなく、光電式分離型感知器を防水仕様とする場合にも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施の形態にかかる光電式分離型感知器の送光器の断面図である(その1)。
図2図1のA-A矢視図である。
図3】本発明の実施の形態にかかる光電式分離型感知器の送光器の断面図である(その2)。
図4図3のB-B矢視図である。
図5】2枚の凸レンズのオフセット方向に応じて偏向する光軸の説明図である(その1)。
図6】2枚の凸レンズのオフセット方向に応じて偏向する光軸の説明図である(その2)。
図7】2枚の凸レンズのオフセット方向に応じて偏向する光軸の説明図である(その3)。
図8図1の送光器の光軸調整手段の動作に伴う光軸の偏向方向の変化を説明する図である(その1)。
図9図1の送光器の光軸調整手段の動作に伴う光軸の偏向方向の変化を説明する図である(その2)。
図10図1の送光器の光軸調整手段の動作に伴う光軸の偏向方向の変化を説明する図である(その3)。
図11図1の送光器の光軸調整手段の動作に伴う光軸の偏向方向の変化を説明する図である(その4)。
図12図1の送光器の光軸調整手段の動作に伴う光軸の偏向方向の変化を説明する図である(その5)。
図13図12に光の照射範囲を対応させて示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施の形態に係る光電式分離型感知器は、発光素子を有する送光器と、受光素子を有する受光器とを監視空間内に対向配置してなる。光電式分離型感知器の全体構成については従来(特許文献1の図2(a)参照)と同様であるため図示を省略する。
本発明は送光器又は受光器の少なくともいずれか一方に後述する光軸調整手段を備えるものであるが、送光器と受光器は、発光素子と受光素子およびその関連回路を除き、ほとんど同一の構成であるので、本実施の形態では送光器側に光軸調整手段を備えた場合を例に挙げて説明する。送光器の要部の構成を図1図2に示す。
【0018】
送光器1は、図1図2に示すように、LED等の発光素子3と、発光素子3を収容する有底枠体の発光素子収容部5と、発光素子3が発する光の光軸Lを調整する光軸調整手段7とを備えている。
本発明の特徴である光軸調整手段7について、以下、詳細に説明する。
【0019】
<光軸調整手段>
光軸調整手段7は、図1図2に示すように、レンズ中心9a´、9b´が発光素子3の光軸からずれた位置に配置された2枚の凸レンズ9a、9bと、2枚の凸レンズ9a、9bをそれぞれ異なる回転速度で、それぞれのレンズ中心9a´、9b´からずれた回転軸回りに回転させるレンズ回転手段11とを備えている。
なお、図1図2に示すように、2枚の凸レンズのうち、対向器(受光器)側に配置される凸レンズを凸レンズ9a、発光素子側に配置される凸レンズを凸レンズ9bとしている。
【0020】
レンズ回転手段11は、回転中心が発光素子3の光軸と一致するように発光素子3の前方に配置され、凸レンズ9a、9bを保持する大歯車13a、13bと、大歯車13a、13bと噛合する小歯車15a、15bと、小歯車15a、15bを回転させるモーター17によって構成されている。
【0021】
レンズ回転手段11の駆動源であるモーター17が駆動することで、モーター17に接続された小歯車15a、15bが共に回転する。また、小歯車15a、15bの回転に連動して、小歯車15aに噛合する大歯車13aと小歯車15bに噛合する大歯車13bがそれぞれ回転する。
【0022】
大歯車13a、13bには、中心からずれた位置に円形の開口部が形成されており、当該開口部に凸レンズ9a、9bがはめ込まれている。
したがって、図1図2に示すように、凸レンズ9aは、レンズ中心9a´が大歯車13aの回転軸Oからずれた位置で(オフセットして)大歯車13aに保持されている。同様に、凸レンズ9bは、レンズ中心9b´が大歯車13bの回転軸Oからずれた位置で(オフセットして)大歯車13bに保持されている。
【0023】
本例では、回転軸Oと凸レンズ9aのレンズ中心9a´とのずれ量(凸レンズ9aのオフセット量)と、回転軸Oと凸レンズ9bのレンズ中心9b´とのずれ量(凸レンズ9bのオフセット量)は同じになっている。なお、凸レンズ9aのオフセット量と凸レンズ9bのオフセット量は必ずしも同じである必要はなく、異なっていても構わない。
【0024】
大歯車13a、13bが回転すると、大歯車13a、13bに保持された凸レンズ9a、9bが回転軸O回りに回転する。
即ち、モーター17が駆動することで、小歯車15a、15bが回転し、小歯車15a、15bに連動して大歯車13a、13bが回転し、大歯車13a、13bに保持された凸レンズ9a、9bが回転軸Oの回りを回転する。
【0025】
凸レンズ9aが回転軸Oの回りに回転すると、凸レンズ9aのオフセット方向、即ちレンズ中心9a´の回転軸Oからのずれ方向が変化する。
同様に、凸レンズ9bが回転軸Oの回りに回転すると、凸レンズ9bのオフセット方向、即ちレンズ中心9b´の回転軸Oからのずれ方向が変化する。
【0026】
また、前述したように本実施の形態のレンズ回転手段11は、凸レンズ9aと凸レンズ9bを異なる回転速度で回転させるように構成されている。この点について以下に説明する。
本実施の形態では、例えば図2に示すように、大歯車13aの歯数を24、小歯車15aの歯数を12、大歯車13bの歯数を26、小歯車15bの歯数を10としている。
モーター17の回転軸が1回転すると、モーター17に接続された小歯車15aも1回転(360°回転)するので、大歯車13aは小歯車15aの歯数分回転が進む。したがって、モーター17が1回転する毎に、大歯車13aは約180°(12/24=1/2回転)回転する。
【0027】
一方、モーター17の回転軸が1回転したとき、小歯車15bも1回転(360°回転)するので、大歯車13bも小歯車15bの歯数分回転が進む。したがって、モーター17が1回転する毎に、大歯車13bは約138°(10/26=5/13回転)回転する。
【0028】
上記のように、レンズ回転手段11は、2枚の凸レンズ9a、9bをそれぞれ異なる回転速度で、それぞれのレンズ中心9a´、9b´からずれた回転軸O回りに回転させることができる。凸レンズ9a、9bをそれぞれ異なる回転速度で回転させることで、凸レンズ9a、9bの位置関係及びそれぞれのオフセット方向は刻々と変化する。
【0029】
なお、上述したレンズ回転手段11は、一つの駆動源(モーター17)で2枚の凸レンズ9a、9bを異なる回転速度で回転させるように構成したものであるが、本発明のレンズ回転手段はこの限りではない。例えば小歯車15aを回転させるモーターと小歯車15bを回転させるモーターを別に設けて、小歯車15a、15bの回転速度を異ならせるようにしてもよい。
【0030】
また、大歯車13aには、図2に示すように、大歯車13aの基準位置を示す基準位置マーカー19が設けられている。大歯車13aの基準位置マーカー19は、大歯車13aの回転軸Oと凸レンズ9aのレンズ中心9a´を結ぶ線の延長線上、即ち凸レンズ9aのオフセット方向に設けられている。同様に、大歯車13bにも大歯車13bの基準位置を示す基準位置マーカー19が凸レンズ9bのオフセット方向に設けられている(図示なし)。
【0031】
本実施の形態では、大歯車13aの基準位置マーカー19と大歯車13bの基準位置マーカー19が所定の位置で揃った状態をモーター駆動前の初期状態とする。そして、初期状態からモーター17の駆動を開始し、再度同じ位置で二つの基準位置マーカー19が揃うまでの間を一周期と定義する。
【0032】
上述した光軸調整手段7が発光素子3から発せられた光の進行方向を変化させる(偏向させる)点について以下具体的に説明する。
図1に示すように、発光素子3から発せられた光(図中には光の軸(光軸L)のみ図示)は、凸レンズ9bに入射する。
前述したように、凸レンズ9bはレンズ中心9b´が回転軸Oからずれた位置に保持されている(オフセットされている)。そして回転軸Oは、発光素子3の光軸と一致しているので、凸レンズ9bのレンズ中心9b´は常に発光素子3の光軸からずれた状態になっている。したがって、発光素子3が発した光は、光軸が凸レンズ9bのレンズ中心9b´からずれた状態で凸レンズ9bに入射し、凸レンズ9bのオフセット方向に偏向して凸レンズ9bから出射する。
【0033】
凸レンズ9bによって偏向した光は凸レンズ9aに入射する。
凸レンズ9aもレンズ中心9a´が発光素子3の光軸からずれた位置に保持されている(オフセットされている)ので、凸レンズ9aに入射した光は凸レンズ9aのオフセット方向にさらに偏向して凸レンズ9aから出射する。
このように発光素子3から発せられた光は2枚の凸レンズ9a、9bによって2段階で偏向して送光器1から出射される。
【0034】
図1図2では、凸レンズ9aと凸レンズ9bのオフセット方向が共に6時の方向で揃っている状態を示している。この場合、発光素子3が発した光は、図1に示すように凸レンズ9a、9bのオフセット方向(6時の方向)に偏向して送光器から出射される。
【0035】
これに対し、例えば図3図4に示すように、凸レンズ9aと凸レンズ9bのオフセット方向が互いに真逆の場合には、凸レンズ9bによって偏向した光は凸レンズ9aによって逆方向に偏向される。したがって、図3図4の例のように2枚の凸レンズ9a、9bのオフセット量が同じでオフセット方向が互いに真逆の場合には、発光素子3が発した光はほとんど偏向せずに送光器1から出射される。
【0036】
凸レンズ9a、9bのオフセット方向と光の偏向方向との関係について、図5図7を用いてさらに具体的に説明する。
図5(a)は対向器側から見たときの凸レンズ9a、9bを模式的に示した図であり、凸レンズ9aを実線、凸レンズ9aの奥にある凸レンズ9bを破線で示している。図5(b)は図5(a)の側面視図である。
【0037】
図5は2つの凸レンズ9a、9bのオフセット方向が共に12時の方向で揃っている状態を示している。図1図2で説明したように、2つの凸レンズ9a、9bのオフセット方向が同じ方向に揃っている場合、発光素子3が発した光21は、2つの凸レンズ9a、9bのオフセット方向(この場合は12時の方向)に偏向して凸レンズ9aから出射する。
【0038】
次に、2つの凸レンズ9a、9bのオフセット方向が互いに真逆の方向であるときの状態を図6に示す。図6(a)は、図5(a)と同様に凸レンズ9a、9bを対向器側からみたときの模式図であり、図6(b)は、図6(a)の側面視図である。
図6では凸レンズ9aのオフセット方向が6時の方向、凸レンズ9bのオフセット方向が12時の方向であり、2つの凸レンズ9a、9bのオフセット方向が互いに真逆の方向となっている。
このとき発光素子3が発した光21は、図3図4と同様に、ほとんど偏向せずに凸レンズ9aから出射する。
【0039】
2つの凸レンズ9a、9bのオフセット方向が同じ方向でも真逆の方向でもない場合の例を図7に示す。図7(a)は、図5(a)、図6(a)と同様に凸レンズ9a、9bを対向器側からみたときの模式図であり、図7(b)は、図7(a)の側面視図である。また、図7(c)は、図7(a)を下面から見たときの模式図である。
図7では凸レンズ9aのオフセット方向が対向器側からみて3時の方向、凸レンズ9bのオフセット方向が12時の方向となっている。
このとき発光素子3が発した光21は、図7(b)、図7(c)に示すように凸レンズ9aのオフセット方向及び凸レンズ9bのオフセット方向にそれぞれ偏向して凸レンズ9aから出射する。
【0040】
上述したように、発光素子3から発せられた光21は、発光素子3の光軸からオフセットされた2枚の凸レンズ9a、9bを通過することによって2段階で偏向して送光器1から出射される。そして、その偏向方向は、凸レンズ9aのオフセット方向と凸レンズ9bのオフセット方向に対応した方向となる。
【0041】
前述したように、2枚の凸レンズ9a、9bは、レンズ回転手段11によって異なる回転速度で光軸周りを回転移動するので、2枚の凸レンズ9a、9bのオフセット方向は異なる速度で刻々と変化する。そして、凸レンズ9a、9bのオフセット方向が変化するのに伴って、送光器1から出射される光の偏向方向も多様に変化する。この点について、図8図12を用いて具体的に説明する。
【0042】
図8図12は、発光素子3が発する光21を図1図4で説明した光軸調整手段7を用いて偏向させたときの偏向方向を、水平方向の偏向角度x[°]及び垂直方向の偏向角度y[°]で示したものである(図7参照)。水平方向の偏向角度xが+(プラス)のときは、光軸Lが水平方向右側に偏向することを示し、-(マイナス)のときは、光軸Lが水平方向左側に偏向することを示す。また、垂直方向の偏向角度yが+(プラス)のときは、光軸Lが垂直方向上側に偏向することを示し、-(マイナス)のときは、光軸Lが垂直方向下側に偏向することを示す。
【0043】
図8には、モーター17を駆動させる前の初期状態からモーター17が1回転するまでの間の光軸Lの偏向方向の変化軌跡を示した。なお、本実施の形態では、大歯車13aの基準位置マーカー19と大歯車13bの基準位置マーカー19が12時の方向で揃っている状態を初期状態とした。
モーター駆動前の初期状態では、凸レンズ9a、9bのオフセット方向が共に12時の方向で揃っているので、図8の「スタート」の点に示すように、送光器1から出射する光は垂直方向上側に偏向する。
モーター17を駆動させると、大歯車13a、13bの回転に伴って凸レンズ9a、9bが異なる回転速度で発光素子3の光軸(大歯車13a、13bの回転軸O)の回りを回転移動し、凸レンズ9a、9bのオフセット方向が変化する。凸レンズ9a、9bのオフセット方向が変化するのに伴い、光軸Lの偏向方向も図8に示すように変化する。
【0044】
以降も、凸レンズ9a、9bのオフセット方向は刻々と変化し、図9図11に示すように、光軸Lの偏向方向が変化していく。なお、図中では大歯車13aを「歯車A」、大歯車13bを「歯車B」と表記している。
【0045】
凸レンズ9a、9bが初期状態の位置に揃うまで、即ち、凸レンズ9a、9bの回転を一周期続けたときの光軸Lの偏向方向の変化軌跡を図12に示す。
図12に示すように、凸レンズ9a、9bを一周期回転させる間に、光の偏向方向が多様に変化する。
【0046】
なお、図12は送光器1から出射される光21の光軸Lの偏向方向(水平方向の偏向角度x及び垂直方向の偏向角度y)の変化を示したものであるので、これに光21の照射範囲を対応させて図13に示す。
図13は、図12の軌跡の中で156点をサンプリングし、各点における照射角1.4°の場合の光21の照射範囲を円で示したものである。図13をみると、凸レンズ9a、9bを一周期回転させることで、発光素子3の光軸から水平方向に±4°、垂直方向に±4°の範囲にもれなく光21が照射されることがわかる。したがって、対向器である受光器の受光素子の光軸が上記範囲内に配置されていれば、発光素子3の光21を受光素子に到達させることができる。
【0047】
<光軸調整方法>
以上のように構成された光電式分離型感知器の光軸調整方法の一例について説明する。
光軸調整は、送光器1と受光器を監視空間内に対向配置した後に行う。その際、送光器1の光軸調整手段7における調整範囲内に受光器を設置する。本例の場合、光軸調整手段7の調整可能範囲は発光素子3の光軸から水平方向に±4°、垂直方向に±4°であるので、該範囲内に受光素子が配置されるように送光器1と受光器を設置する。
【0048】
光軸調整は、送光器1に設けた光軸調整手段7の2枚の凸レンズ9a、9bを回転させると共に、受光器の受光量に基づいて2枚の凸レンズ9a、9bの最適な位置を特定することによって行う。
【0049】
以下には光軸調整手段7の調整範囲内を走査して受光量情報を取得し(走査工程)、該受光量情報に基づいて2枚の凸レンズ9a、9bの最適な位置を特定し(調整位置特定工程)、該特定した位置に2枚の凸レンズ9a、9bを配置して光軸調整する(調整工程)方法について説明する。
【0050】
なお、下記に説明する方法は、図示しない制御手段を用いて遠隔で行うことができる。
制御手段には、例えば、レンズ回転手段11のモーター17を制御するモーター制御手段、大歯車13a、13bの基準位置マーカーを検知する基準位置マーカー検知手段、受光器の受光量を検知する受光量検知手段、検知した受光量を検知時のモーター17の駆動時間に対応させて記憶する受光量記憶手段等が含まれる。
【0051】
≪走査工程≫
走査工程では、送光器1の凸レンズ9a、9bを一周期回転させ、その間の受光量及びこれに対応するモーター17の駆動時間を取得し記憶する。
回転前の初期状態では、大歯車13a、13bの基準位置マーカー19は所定位置に揃えて配置されている。当該位置は基準位置マーカー検知手段によって監視されており、当該位置における二つの基準位置マーカー19の有無を検出できるようになっている。
【0052】
モーター17を駆動させると大歯車13a、13bが回転し、凸レンズ9a、9bがそれぞれ異なる速度で回転移動する。
前述したように、凸レンズ9a、9bが回転移動することで凸レンズ9a、9bのオフセット方向がそれぞれ変化するので、図8図12で説明したように、送光器1から出射される光の偏向方向が刻々と変化する。光の偏向方向の変化に伴って、受光器の受光素子に到達する光の量(受光量)も変わるので、変化する受光量を常時検知し、検知時のモーター17の駆動時間と共に記録する。
一定時間回転を続けると二つの基準位置マーカー19が初期状態の所定位置に再度揃うので、これを基準位置マーカー検知手段によって検知したらモーター17を停止する。
【0053】
≪調整位置特定工程≫
調整位置特定工程では、上記走査工程で記録した受光量の情報に基づいて、2枚の凸レンズ9a、9bの最適位置を特定する。
例えば、一周期の中で受光量が最も大きくなったときの2枚の凸レンズ9a、9bの位置を最適位置とするとよい。即ち、モーター17が駆動を開始してからα秒後に受光量が最大になった場合には、モーター17が駆動を開始してからα秒後の凸レンズ9a、9bの位置が凸レンズ9a、9bの最適位置となる。
【0054】
≪調整工程≫
調整工程では、上記調整位置特定工程で特定した凸レンズ9a、9bの最適位置に凸レンズ9a、9bを配置する。上記のようにα秒後の凸レンズ9a、9bの位置を最適位置と特定した場合には、走査工程時と同じ速度でα秒間モーター17を駆動させるとよい。α秒間大歯車13a、13bを回転させて2枚の凸レンズ9a、9bを上記最適位置に配置したら光軸調整は終了する。
【0055】
なお、上記は送光器1側にのみ光軸調整手段7を備えた場合の光軸調整方法であるが、受光器側にも光軸調整手段7を備える場合には、送光器1の光軸調整が完了したあとに受光器側の光軸調整を行うとよい。
受光器側でも同様の光軸調整を行うことで、受光量をさらに大きくすることができて、より高精度な光軸調整を行うことができる。
【0056】
また、光軸調整手段は、受光器側にのみ設けられていても良い。その場合、送光器と受光器を対向配置する際に、送光器の光が受光器の光軸調整手段の凸レンズに入射するように位置調整を行ってから、受光器側で光軸調整を行う。なお、発光素子にランプを用いるなどして拡散光が送光可能なように送光器を構成すれば、受光器の凸レンズに光が入射しやすくなり、送光器と受光器の位置調整の作業が軽減されて好ましい。
【0057】
以上のように、本実施の形態においては、光軸調整手段7の調整範囲内で最も受光量が大きくなるように光軸を調整することができる。従来のように手動で光軸調整を行う場合には、調整範囲内で受光量が最大となるように光軸調整を行うことは難しかったが、本実施の形態の光電式分離型感知器を用いることで従来よりも高精度な光軸調整が可能となる。
【0058】
また、図示しない制御手段を用いれば光軸調整を遠隔操作で行うことができるので、調整作業時に本体カバー等を設置現場で取り外す必要がない。したがって、光電式分離型感知器を防水仕様とする場合にも好適である。
【0059】
なお、上述した実施の形態の光軸調整方法は、調整範囲内で受光量が最大となるように光軸調整できる例であったが本発明における光軸調整方法はこれに限らない。
例えば、予め目標とする受光量を定めておき、走査工程で走査する中で目標受光量を超える受光量を検出したら、その時点で2枚の凸レンズの回転を止めて光軸調整を終了してもよい。
【0060】
また、本実施の形態の光電式分離型感知器における光軸調整手段は、2枚のレンズをどちらも凸レンズとしたものであったが、本発明はこれに限らず、凸レンズ9a、9bのうちどちらか一方を凹レンズなどの他のレンズとしてもよい。また、レンズの枚数は2枚に限らず、3枚以上でも良い。いずれの場合も、複数枚のレンズうち少なくとも1枚は凸レンズを含むものとし、光を集束可能に構成されているものとする。
【0061】
そして、本発明のレンズ回転手段は、上記複数枚のレンズのうち、凸レンズを含む少なくとも2枚のレンズがそれぞれ異なる回転速度で、それぞれのレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させるように構成されていればよい。
即ち、凸レンズと少なくとも1枚の他のレンズ(他の凸レンズでもよいし、凹レンズなどでもよい)が異なる回転速度で回転すればよいので、レンズを3枚以上有する場合に全てのレンズの回転速度が異なっている必要はない。したがって、図1の例の凸レンズ9aが嵌め込まれた大歯車13aの開口部に、3枚目のレンズが凸レンズ9aと共に嵌め込まれているような態様も本発明に含まれる。
【0062】
また、上記他のレンズに代えて、ウェッジプリズムを備えるようにしてもよい。ウェッジプリズムもレンズのように光の進行方向を偏向することができるので、例えば1枚の凸レンズと1枚のウェッジプリズムを用いても2段階で光を偏向することができる。さらに、ウェッジプリズムが複数枚あってもよいし、ウェッジプリズムに凹レンズなどを組み合わせてもよい。
【0063】
なお、レンズの場合は光を偏向させるためにレンズ中心を光軸からオフセットさせて配置する必要があるが、ウェッジプリズムの場合は例えば形状の中心に入射した光であっても偏向するので、光が入射するような配置であれば、光軸との位置関係は問わない。
したがって、凸レンズとウェッジプリズムを用いて光を偏向させる場合には、前述したレンズ回転手段に代えて、凸レンズをレンズ中心からずれた回転軸回りに回転させると共に、ウェッジプリズムを凸レンズの回転速度と異なる回転速度で回転させるレンズ・ウェッジプリズム回転手段を備えるとよい。
【符号の説明】
【0064】
1 送光器
3 発光素子
5 発光素子収容部
7 光軸調整手段
9a 凸レンズ
9a´ レンズ中心
9b 凸レンズ
9b´ レンズ中心
11 レンズ回転手段
13a 大歯車
13b 大歯車
15a 小歯車
15b 小歯車
17 モーター
19 基準位置マーカー
21 光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13