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  • 特開-衝撃試験機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053190
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】衝撃試験機
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/08 20060101AFI20240408BHJP
   G01N 3/34 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G01M7/08 A
G01N3/34 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159285
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤井 裕崇
【テーマコード(参考)】
2G061
【Fターム(参考)】
2G061AA13
2G061AB05
2G061BA15
2G061CB13
2G061DA01
(57)【要約】
【課題】 比較的コンパクトな構成にも関わらず、衝突速度の繰り返し精度を高めた衝撃試験機を提供すること。
【解決手段】 衝撃試験対象物にかかる衝撃を評価する衝撃試験機であって、
衝撃試験対象物に衝撃を加える試験片と、
試験片を所定の衝突速度に駆動する試験片駆動部とを備え、
試験片駆動部は、
重力の作用により落下移動するウエイトと、
ウエイトの落下移動による位置エネルギーを、試験片を駆動する運動エネルギーに変換し伝達する、駆動力伝達部とを備え、
駆動力伝達部に生じたエネルギー伝達のロスにより生じた衝突速度の減少を補うように、試験片の駆動を補助する補助駆動部とを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衝撃試験対象物にかかる衝撃を評価する衝撃試験機であって、
前記衝撃試験対象物に衝撃を加える試験片と、
前記試験片を所定の衝突速度に駆動する試験片駆動部とを備え、
前記試験片駆動部は、
重力の作用により落下移動するウエイトと、
前記ウエイトの落下移動による位置エネルギーを、前記試験片を駆動する運動エネルギーに変換し伝達する、駆動力伝達部とを備え、
前記駆動力伝達部に生じたエネルギー伝達のロスにより生じた前記衝突速度の減少を補うように、前記試験片の駆動を補助する補助駆動部とを備えた
ことを特徴とする、衝撃試験機。
【請求項2】
前記ウエイトは、前記試験片の重量よりも重く、
前記駆動力伝達部は、前記試験片の前記駆動速度を前記ウエイトの落下移動する速度よりも速い速度に変換することを特徴とする、請求項1に記載の衝撃試験機。
【請求項3】
前記駆動力伝達部は、
前記ウエイトが落下移動する力を回転しながら入力する一次側回転体と、
前記試験片に伝達する力を回転しながら出力する二次側回転体と、
前記一次側回転体が回転する周速よりも速い周速で前記二次側回転体が回転するように外周比率が設定された周速変換部を備え、
前記補助駆動部は、
前記駆動力伝達部に備えられた回転体に回転駆動力を付与するサーボモータを備え、
当該サーボモータの回転速度及び/又は回転トルクを制御して前記試験片の駆動を補助することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の衝撃試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃試験対象物にかかる衝撃を評価する衝撃試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、落錘と呼ばれる重量物を所定の高さから落下させて、自動車本体や構造部材、部品等(衝撃試験対象物)にかかる衝撃等を評価する試験機がある(例えば、特許文献1)。
一方、自動車本体や構造部材、部品等(衝撃試験対象物)の乗せた試験片と呼ばれる台車を、所定の高さから落下させた落錘により引っ張り、所定の衝突速度に加速させて衝撃試験を行う方式もある(例えば、特許文献2,3)。
一方、アキュムレータに蓄積・蓄圧された作動油により、油圧アクチュエータのピストンを打ち出し、衝撃試験対象物にかかる衝撃等を評価する試験機が提案されている(例えば、特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-322161号公報
【特許文献2】特開2015-10864号公報
【特許文献3】特開2016-114384号公報
【特許文献4】特開2002-162313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1のように落錘を自由落下させる方式では、重力加速度(1G)以上の加速度を得ることができないため、衝突速度を上げるにはより高い位置から落錘を落下させる必要がある。また、特許文献2のように落錘により試験片を引っ張り加速させる方式では、重力加速度(1G)以上の加速度を得ることができず、所定の衝突速度までの加速に必要な距離(いわゆる、助走距離)が長くなる。また、特許文献3のように動滑車を用いて1G以上の加速度が得ようとする構成もあるが、動滑車の揺動やワイヤーの伸縮等によるエネルギー伝達のロスが大きいため、所望の加速度を得ることや衝突速度の繰り返し精度を高めることが困難であった。
【0005】
一方、特許文献4のような油圧アクチュエータ方式では、重力加速度以上の加速度を得ることができるが、アキュムレータやカタパルトと呼ばれる大がかりな設備の建設が必要となる。また、電動アクチュエータ方式で重力加速度以上の加速度を得ようとすると、瞬間的に大きな電力が必要となるため、受電設備等の増強が必要であり、装置導入の妨げとなっていった。
【0006】
そこで、本発明は、比較的コンパクトな構成にも関わらず、衝突速度の繰り返し精度を高めた衝撃試験機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、本発明に係る一態様は、
衝撃試験対象物にかかる衝撃を評価する衝撃試験機であって、
衝撃試験対象物に衝撃を加える試験片と、
試験片を所定の衝突速度に駆動する試験片駆動部とを備え、
試験片駆動部は、
重力の作用により落下移動するウエイトと、
ウエイトの落下移動による位置エネルギーを、試験片を駆動する運動エネルギーに変換し伝達する、駆動力伝達部とを備え、
駆動力伝達部に生じたエネルギー伝達のロスにより生じた衝突速度の減少を補うように、試験片の駆動を補助する補助駆動部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
比較的コンパクトな構成で、衝突速度の繰り返し精度を高めた衝撃試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。
図2】本発明を具現化する形態の一例の要部を示す概略図である。
図3】本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態について、図を用いながら説明する。
なお、以下の説明では、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、水平方向をX方向、Y方向と表現し、XY平面に垂直な方向(つまり、重力方向)をZ方向と表現する。また、Z方向は、重力に逆らう方向を上、重力がはたらく方向を下と表現する。また、Y方向を中心軸として回転する方向をθ方向と呼ぶ。また、X方向またはY方向を横と表現することがある。
【0011】
図1は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。図1には、本発明に係る衝撃試験機1の概略図が示されている。
【0012】
衝撃試験機1は、衝撃試験対象物Wにかかる衝撃を評価するものである。
衝撃試験機1の具体例として、自動車等の本体や構造部材、ドアやバンパー等の部品、座席等の衝撃試験対象物Wを台座1wに固定しておき、試験片2を落下させて衝撃試験対象物Wに衝突させ、衝撃試験対象物Wにかかる衝撃等を評価する構成を以下に示す。
より具体的には、衝撃試験機1は、試験片2、試験片駆動部3、ウエイト4、補助駆動部5等を備えている。
【0013】
試験片2は、衝撃試験対象物Wに衝撃を加えるものである。
具体的には、試験片2は、衝撃試験対象物Wの上方に落下高さH1の位置に配置されている。
より具体的には、試験片2は、ガイド機構21により落下方向が案内されており、天井部1tから吊り下げられたロック機構22により仮固定されている。
【0014】
ガイド機構21は、試験片2の側面に平行に配置された二本のシャフトとガイドプレートを備えている。ガイドプレートには軸受けが設けられており、これら軸受けを貫通するように二本のシャフトが配置されている。そして、ガイドプレートの下面に試験片2が固定されている。そのため、試験片2は、XY方向に位置ずれせず、上下方向にスムーズに移動できる。
【0015】
試験片駆動部3は、試験片2を所定の衝突速度Vに駆動するものである。
具体的には、試験片駆動部3は、試験片2を落下高さH1から自由落下させたときの重力加速度Gを超えた加速度aで駆動し、所定の衝突速度Vで衝撃試験対象物Wに所定の衝撃が加えられる様、試験片2を加速させるものである。
より具体的には、試験片駆動部3は、ウエイト4、駆動力伝達部5、補助駆動部6を備えている。
【0016】
ウエイト4は、重力の作用により落下移動するものである。
具体的には、ウエイト4は、落錘、駆動用ウエイトとも呼ばれ、高い位置から下方に落下させ、駆動力伝達部5を介して試験片2を所定の衝突速度Vで駆動するためのエネルギー源とするものである。
より具体的には、ウエイト4は、試験片2の重量よりも重い鋼鉄のブロックで構成されている。
なお、ウエイト4を落下させる高さH2(つまり、落下高さ)の下方には、ストッパ1sが備えられている。
ストッパ1sは、ウエイト4の落下移動を止めるものであり、試験片2が衝撃試験対象物Wに対して必要以上の衝撃や荷重を加えるのを防ぐものである。
具体的には、ストッパ1sは、ダンパーやショックアブソーバ、砂などの所定の静定距離で運動エネルギーを吸収して静止させる機構で構成されており、装置フレーム(不図示)と縁切りされた構造物や基礎部材等に、或いは衝撃を吸収する機構や部材等を介して装置フレーム等に取り付けられている。
【0017】
駆動力伝達部5は、ウエイト4の落下移動による位置エネルギーUを、試験片2を駆動する運動エネルギーKに変換し伝達するものである。
具体的には、駆動力伝達部5は、ウエイト4の落下移動に伴い位置エネルギーUが重力方向の運動エネルギーKに変換されるので、その運動エネルギーKを試験片2に伝達し、試験片2を下向きに駆動して所定の衝突速度Vに到達するように加速させるものである。
より具体的には、駆動力伝達部5は、一次側回転体51、二次側回転体52、周速変換部53、ワイヤー50,54、ガイドローラ55等を備えている。
【0018】
ワイヤー50は、ウエイト4の落下移動による位置エネルギーを伝達するものである。
具体的には、ワイヤー50は、一次側駆動力伝達部としてはたらき、ウエイト4の落下による駆動力を、一次側回転体51を回転させる力として伝達するものである。
より具体的には、ワイヤー50は、衝撃試験機1のフレームまたは建屋等の天井部分から吊り下げられたガイドローラ55に掛け渡されている。
【0019】
ワイヤー54は、二次側回転体52の回転により生じた力を、試験片2を下方に駆動させる力(試験片2を駆動する運動エネルギーK)として伝達するものであり、二次側駆動力伝達部としてはたらく。
【0020】
ガイドローラ55は、張力伝達方向変換部とも呼ばれ、ウエイト4の落下する際、ウエイト4に固定された端部50aが下向きに引っ張られる力を、反対側の端部50b側を引っ張り上げる力に変換して伝達するものである。
具体的には、ガイドローラ55は、θ方向に回転する円筒状の胴部を備え、胴部にはワイヤー50が掛け渡されている。この胴部は、Y方向に所定の長さを有しており、回転軸55aを中心として回転する構造をしている。
【0021】
図2は、本発明を具現化する形態の一例の要部を示す平面図である。図2には、本発明に係る試験片駆動部3、駆動力伝達部5の要部に着目して、図1において矢視A-Aで示した断面を上から見下ろした様子が示されている。
【0022】
一次側回転体51は、ウエイト4が落下移動する力を回転しながら入力するものである。
具体的には、一次側回転体51は、θ方向に回転する円筒状の胴部を備え、胴部にはワイヤー50が巻き付けられている。この胴部は、Y方向に所定の長さを有しており、両端にフランジを備え、回転軸53cを中心に回転する構造をしている。
より具体的には、一次側回転体51は、ウエイト4の落下によりワイヤー50が引っ張られると、胴部に巻き付けられていたワイヤー50が巻き出され、θ方向に回転する。
なお、ワイヤー50は、回転半径がR1の位置(つまり、回転軸53cの中心からR1離れた位置)から巻き出される。
【0023】
二次側回転体52は、試験片2に伝達する力を回転しながら出力するものである。
具体的には、二次側回転体52は、円筒状の胴部を備え、胴部にはワイヤー54の端部54aが取り付けられている。この胴部は、Y方向に所定の長さを有しており、両端にフランジを備え、回転軸53cを中心に回転する構造をしている。
より具体的には、二次側回転体52は、θ方向に回転すると、ワイヤー54を胴部に巻き付け、ワイヤー54の端部54bを下方に引っ張り、この端部54bに繋がった試験片2を下方に駆動させる。
なお、ワイヤー54は、回転半径がR2の位置に(つまり、回転軸53cの中心からR2離れた位置)に取り付けられている。
【0024】
周速変換部53は、一次側回転体51が回転する周速よりも速い周速で二次側回転体52が回転するように外周比率Rtが設定されたものである。
具体的には、周速変換部53は、回転軸50を回転中心として一次側回転体51と二次側回転体52が一体的に回転(つまり、θ方向に同じ角度速度で回転)する構成をしている。
なお本例の構成では、ウエイト4の落下移動により、半径R1の一次側回転体51と半径R2の二次側回転体52が一体的に回転するので、外周比率Rtは、
Rt=R2/R1 で定義できる。
【0025】
この様な構成をしているため、駆動力伝達部5は、ウエイト4の落下移動による位置エネルギーUを、試験片2を駆動する運動エネルギーKに変換し伝達することができる。
【0026】
[エネルギー変換および伝達について]
図3は、本発明を具現化する形態の一例の全体構成を示す概略図である。図3には、本発明に係る衝撃試験機1において、ロック機構22による試験片2の仮固定が解除された後、ウエイト4の落下により試験片2が駆動され、試験片2が衝撃試験対象物Wに衝突する寸前の様子が示されている。
駆動力伝達部5は、周速変換部53の外周比率Rtが1より大きければ、ウエイト4によりワイヤー50にかかる張力Tを、ワイヤー54にかる張力T’(=T/Rt)として試験片2に伝達し、自由落下による重力加速度Gよりも大きな加速度a’で試験片2が駆動される。
ここで、試験片2(上述のガイドプレートを含めむ)の重量をm1とし、ウエイト4の重量をm2とする。このとき、試験片2の重量m1に対するウエイトの重量m2の比率を、重量比Mとする。つまり、m2は、m1のM倍の重量で、式: m2=M・m1 で表される。
そして、ウエイト4を加速度aで落下させ、試験片2を加速度a’=Rt・aで加速させるとき、試験片2にはたらく力は、数式(1)、ウエイト4にはたらく力は、数式(2)のように定義できる。
【0027】
【数1】
【0028】
【数2】
【0029】
そのため、数式(3)(4)より、ウエイト4の加速度aは、数式(5)の様に表すことが出来る。
【0030】
【数3】
【0031】
【数4】
【0032】
【数5】
【0033】
例えば、重量比M=4、外周比率Rt=4 に設定すれば、a=0.4G 、a’=1.6G となる。つまり、ウエイト4の落下時の空気抵抗や、試験片駆動部3の各部に摩擦や抵抗によるエネルギー伝達のロスが生じなければ、ウエイト4は0.4Gで落下し、試験片2は1.6Gで加速する。
【0034】
そして、試験片2が所望の衝突速度Vに到達するように、試験片2の落下高さH1およびウエイト4の落下高さH2を設定する。
なお、ここまでの説明は、駆動力伝達部5にエネルギー伝達のロスが生じない場合の計算式を当てはめたものである。実際には、駆動力伝達部5には、エネルギー伝達のロスが生じるため、補助駆動部6にて試験片2の駆動を補助する。
【0035】
補助駆動部6は、駆動力伝達部5に生じたエネルギー伝達のロスにより生じた衝突速度の減少を補うように、試験片2の駆動を補助するものである。
具体的には、補助駆動部6は、プーリーとベルトとの摩擦、軸受けの摺動抵抗、ウエイト4が落下する際の空気抵抗、ガイドレールの摺動抵抗などにより、エネルギー伝達のロスが生じ、試験片2の衝突速度Vが減少するので、試験片2の衝突速度Vを補うように、試験片2の駆動を補助する。
より具体的には、補助駆動部6は、駆動力伝達部5に備えられた回転体に回転駆動力を付与するサーボモータ61を備え、サーボモータ61の回転速度及び/又は回転トルクを制御して試験片2の駆動を補助する構成をしている。
【0036】
サーボモータ61は、カップリング62を介して、第3回転部5Cの回転軸50cと連結されており、瞬間的に回転速度が増減できるよう、制御部63(サーボコントローラとも呼ばれる)により回転速度及び/又は回転トルクが制御される。
制御部63は、サーボモータ61の回転速度及び/又は回転トルクを制御するものである。具体的には、制御部63は、予め設定された運転レシピに基づいて、ウエイト4の落下(つまり、試験片2の駆動)が始まってから、所定時間が経過するまで或いは所定回転数に達するまで(つまり、試験片2が助走距離S1を移動するまで)に、回転軸50cが所定の回転速度で回転(つまり、試験片2が所定の衝突速度Vで移動)するように、サーボモータ61の回転速度及び/又は回転トルクを制御する。
より具体的には、補助駆動部6は、ウエイト4の位置エネルギーUが、落下高さH2で運動エネルギーKにすべて変換されるものとして、衝突速度Vと、衝突速度Vで試験片2を駆動するための二次側回転体52の回転速度を算出し、試験片2が落下高さH1移動した時に二次側回転体52が所定の回転速度で回転するよう、サーボモータ61で補助する。そうすることで、試験片2を所望の衝突速度Vで衝撃試験対象物Wに衝突させることができる。
【0037】
この様な構成をしているため、本発明に係る衝撃試験機1は、ウエイト4の落下移動によって、試験片2を自由落下による加速度以上の加速度で駆動できる。そのため、試験片2を所定の衝突速度Vまで加速させるのに必要な落下高さH1が長くならず、比較的コンパクトな構成で、衝突速度Vの繰り返し精度を高めることができる。また、試験片2の駆動は、ウエイト4の落下移動を主なエネルギー源としているため、受電設備等を増強することなく装置導入することができる。
【0038】
なお上述の構成において、試験片2を落下高さH1の位置に仮固定する際、手動により持ち上げても良いし、機械式または電動式のウインチ、エアや油圧等のシリンダーで持ち上げても良い。
また、ウエイト4を落下高さH2の位置に持ち上げるのは、試験片2を落下高さH1の位置に持ち上げる際にワイヤー5Wで引っ張り上げても良いし、手動、機械式または電動式のウインチ、エアや油圧等のシリンダーで持ち上げても良い。
【0039】
[変形例]
本発明は、上述した衝撃試験機1の構成に限定されず、種々変形した構成で具現化できる。
【0040】
[ウエイト4について]
なお上述では、ウエイト4の重量m2が、試験片2の重量m1よりも重い構成を例示した。外周比率Rtを大きくして、試験片2の駆動速度をウエイト4の落下移動する速度よりも速い速度に変換するので、ウエイト4の重量m2が重いほど、試験片2の加速度aをより高めることができるので好ましい。
しかし、外周比率Rtを大きくして、試験片2の駆動速度をウエイト4の落下移動する速度よりも速い速度に変換すれば、ウエイト4の重量m2が試験片2の重量m1より軽くても、試験片2の加速度aは重力加速度Gよりも高くなるため、本発明を具現化できる。
【0041】
[周速変換部53について]
なお上述では、周速変換部53として、外周比率Rtの異なる一次側回転体51と二次側回転体52が一体的に回転する構成を例示した。
しかし、直径の異なる一次側回転体51と二次側回転体52とを離隔して配置し、チェーンやベルト等により駆動(回転)させる構成であっても良い。
【0042】
[駆動力伝達部5、補助駆動部6について]
なお上述では、駆動力伝達部5の具体例として、ワイヤーの巻き出しと巻きりにより試験片2を駆動する構成を例示した。
しかし、駆動力伝達部5は、回転体にベルトを掛け渡した構成であっても良い。具体的には、回転体とベルトとして、平プーリーと平ベルト、VプーリーとVベルト、歯付プーリーと歯付ベルトが例示できる。また、回転体にベルトを掛け渡す構成に代えて、スプロケットにローラチェーンを掛け渡す構成でも良いし、複数の歯車を噛み合わせた構成でも良い。
【0043】
なお上述では、補助駆動部6として、一次側回転体51と二次側回転体52の回転軸50にカップリング62を介して連結されたサーボモータ61を例示した。
この様な構成であれば、試験片2を引っ張るワイヤーを直接巻き取る二次側回転体52の直近で補助駆動するため、好ましい。
【0044】
なお駆動力伝達部5が多段階で構成されている場合、二次側回転体52を補助駆動する構成が好ましいが、ウエイト4に近い一次側回転体51を補助駆動する構成であっても良い。
【0045】
[衝撃試験対象物W/発明の適用分野について]
なお、本発明に係る衝撃試験機1は、上述した自動車等の本体や構造部材・部品等に限らず、航空機や建築資材、家具、電気製品やその内部部品等の衝撃試験対象物Wにかかる衝撃を評価することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 衝撃試験機
2 試験片
3 試験片駆動部
4 ウエイト
5 駆動力伝達部
6 補助駆動部
W 衝撃試験対象物
H1 落下高さ
H2 落下高さ
Rt 外周比率
M 重量比
G 重力加速度
V 衝突速度
U 位置エネルギー
K 運動エネルギー
図1
図2
図3