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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053191
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
H01R13/42 E
H01R13/42 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159288
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【弁理士】
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【弁理士】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】宮村 哲矢
(72)【発明者】
【氏名】松井 元
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087EE14
5E087FF13
5E087GG26
5E087GG32
5E087MM05
5E087RR04
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】コネクタをさらに小型化することを目的とする。
【解決手段】コネクタ20は、端子10を保持するコネクタであって、端子を収容可能なキャビティ44が形成されたハウジング30と、ハウジング30に対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能なリテーナ80と、を備え、リテーナ80が、キャビティ内に収容される端子に係止可能な係止凸部83を含み、リテーナは、仮装着位置に位置する状態で、係止凸部がキャビティから退避しているとともに、仮装着位置から本装着位置に向って回動することで、係止凸部がキャビティ内に突出してキャビティ内の端子に係止する、コネクタである。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子を保持するコネクタであって、
前記端子を収容可能なキャビティが形成されたハウジングと、
前記ハウジングに対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能なリテーナと、
を備え、
前記リテーナは、前記キャビティ内に収容される前記端子に係止可能な係止凸部を含み、
前記リテーナは、前記仮装着位置に位置する状態で、前記係止凸部が前記キャビティから退避しているとともに、前記仮装着位置から前記本装着位置に向って回動することで、前記係止凸部が前記キャビティ内に突出して前記キャビティ内の前記端子に係止する、コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタであって、
前記キャビティに対する前記端子の挿入方向の奥側を前側、反対方向を後側とし、
前記リテーナは、前記仮装着位置において、前記キャビティの延在方向に沿って後側に向うに連れて前記キャビティから遠ざかる傾斜方向に沿って移動可能に支持されている、コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコネクタであって、
前記キャビティに対する前記端子の挿入方向の奥側を前側、反対方向を後側とし、
前記ハウジングは、前記リテーナが装着される装着用開口を有し、
前記リテーナは、前記装着用開口に装着されるリテーナ本体と、前記リテーナ本体の両側から前記ハウジングの両側に沿って延びる一対の係止壁部と、前記一対の係止壁部の内面から突出する一対の抜止め凸部とを含み、
前記ハウジングは、その両側外面から突出する一対の仮係止用凸部と一対の本係止用凸部とを含み、前記一対の仮係止用凸部が前記一対の本係止用凸部よりも前記装着用開口の近くに位置しており、
前記仮係止用凸部と前記本係止用凸部との間に、前記キャビティの延在方向に沿って後側に向うに連れて前記キャビティから遠ざかる傾斜方向に延び、前記抜止め凸部を前記傾斜方向に沿った姿勢で支持する傾斜仮支持溝が形成されており、
前記本係止用凸部のうち前記装着用開口とは反対側の面は、前記抜止め凸部と係止して前記リテーナを前記本装着位置に保つ本係止面である、コネクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のコネクタであって、
前記本係止用凸部のうち前記傾斜仮支持溝の一方の溝側面を形成する奥側溝形成面が、前記本係止用凸部の前寄りに位置しており、
前記仮係止用凸部は、前記キャビティの延在方向において前記奥側溝形成面の後縁よりも前側に位置する、コネクタ。
【請求項5】
請求項4に記載のコネクタであって、
前記本係止用凸部のうち前記奥側溝形成面よりも後側の部分は、前記装着用開口から遠ざかるにつれて前記ハウジングの外側面からの突出長が大きくなるリテーナ広げ面に形成され、
前記奥側溝形成面と、前記仮係止用凸部のうち前記傾斜仮支持溝の他方の溝側面を形成する手前側溝形成面とは、前記リテーナ広げ面よりも前記ハウジングの側面に対して垂直に近い姿勢である、コネクタ。
【請求項6】
請求項2に記載のコネクタであって、
前記係止凸部のうち前記リテーナが前記仮装着位置に位置する状態で前記キャビティ内に入り込む部分が、後側に向うに連れて前記キャビティから遠ざかる退避案内面に形成されている、コネクタ。
【請求項7】
請求項6に記載のコネクタであって、
前記退避案内面は、前記リテーナが前記本装着位置に位置する状態で前記端子を前記キャビティ内に押込む方向から前記端子に対向する面であり、
前記退避案内面に対して前側に、前記リテーナが前記本装着位置に位置する状態で前記端子を抜止めする抜止め面が連なっている、コネクタ。
【請求項8】
請求項2に記載のコネクタであって、
前記ハウジングは、前記仮装着位置に位置する前記リテーナの後側に位置し、後方から前記リテーナに接触するリテーナ抜止め受面を含む、コネクタ。
【請求項9】
請求項8に記載のコネクタであって、
前記リテーナは、前記本装着位置に位置する状態で前記キャビティの延在方向に対して傾斜し、前記仮装着位置に位置する状態で、前記リテーナ抜止め受面に対向するように後側を向く傾斜抜止め面を有し、
前記傾斜抜止め面が前記リテーナ抜止め受面に接触して、前記リテーナが抜止めされる、コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、端子金具を挿抜可能なキャビティが形成されたハウジング本体部と、リテーナとを備えるコネクタを開示している。リテーナには、端子金具に二次係止する係止突部が形成されている。リテーナは、ハウジング本体部に対して仮係止位置と本係止位置との間で移動可能とされている。仮係止位置では、雌端子金具の挿抜が許容され、本係止位置では、係止突部が雌端子金具に二次係止する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-305473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここにおいて、コネクタをさらに小型化することが望まれている。
【0005】
そこで、本開示は、コネクタをさらに小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、端子を保持するコネクタであって、前記端子を収容可能なキャビティが形成されたハウジングと、前記ハウジングに対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能なリテーナと、を備え、前記リテーナは、前記キャビティ内に収容される前記端子に係止可能な係止凸部を含み、前記リテーナは、前記仮装着位置に位置する状態で、前記係止凸部が前記キャビティから退避しているとともに、前記仮装着位置から前記本装着位置に向って回動することで、前記係止凸部が前記キャビティ内に突出して前記キャビティ内の前記端子に係止する、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コネクタがさらに小型化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施形態1に係るコネクタを示す斜視図である。
図2図2はコネクタを示す分解斜視図である。
図3図3はコネクタを示す分解斜視図である。
図4図4図1のIV-IV線部分断面図である。
図5図5は仮装着状態におけるコネクタを示す側面図である。
図6図6は仮装着状態におけるコネクタを示す断面図である。
図7図7図5のVII-VII線断面図である。
図8図8図5のVIII-VIII線断面図である。
図9図9はリテーナが後退した状態を示すコネクタの側面図である。
図10図10はリテーナが後退した状態におけるコネクタを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示のコネクタは、次の通りである。
【0011】
(1)端子を保持するコネクタであって、前記端子を収容可能なキャビティが形成されたハウジングと、前記ハウジングに対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能なリテーナと、を備え、前記リテーナは、前記キャビティ内に収容される前記端子に係止可能な係止凸部を含み、前記リテーナは、前記仮装着位置に位置する状態で、前記係止凸部が前記キャビティから退避しているとともに、前記仮装着位置から前記本装着位置に向って回動することで、前記係止凸部が前記キャビティ内に突出して前記キャビティ内の前記端子に係止する、コネクタである。
【0012】
このコネクタによると、リテーナが仮装着位置から本装着位置に向って回動することで、係止凸部がキャビティ内の端子に係止して当該端子を保持できる。このため、リテーナが端子の長手方向に対して直交する方向に移動して端子を位置決めする構成と比較して、リテーナを移動可能に支持する構成を小型化できる。これにより、コネクタの小型化が可能となる。
【0013】
(2)(1)のコネクタであって、前記キャビティに対する前記端子の挿入方向の奥側を前側、反対方向を後側とし、前記リテーナは、前記仮装着位置において、前記キャビティの延在方向に沿って後側に向うに連れて前記キャビティから遠ざかる傾斜方向に沿って移動可能に支持されていてもよい。
【0014】
この場合、リテーナが、仮装着位置において、傾斜方向に移動可能に支持されているため、キャビティに対する端子の挿入途中で端子が係止凸部に接触すると、当該係止凸部がキャビティから離れる方向に移動できる。
【0015】
(3)(1)又は(2)のコネクタであって、前記キャビティに対する前記端子の挿入方向の奥側を前側、反対方向を後側とし、前記ハウジングは、前記リテーナが装着される装着用開口を有し、前記リテーナは、前記装着用開口に装着されるリテーナ本体と、前記リテーナ本体の両側から前記ハウジングの両側に沿って延びる一対の係止壁部と、前記一対の係止壁部の内面から突出する一対の抜止め凸部とを含み、前記ハウジングは、その両側外面から突出する一対の仮係止用凸部と一対の本係止用凸部とを含み、前記一対の仮係止用凸部が前記一対の本係止用凸部よりも前記装着用開口の近くに位置しており、前記仮係止用凸部と前記本係止用凸部との間に、前記キャビティの延在方向に沿って後側に向うに連れて前記キャビティから遠ざかる傾斜方向に延び、前記抜止め凸部を前記傾斜方向に沿った姿勢で支持する傾斜仮支持溝が形成されており、前記本係止用凸部のうち前記装着用開口とは反対側の面は、前記抜止め凸部と係止して前記リテーナを前記本装着位置に保つ本係止面であってもよい。
【0016】
この場合、一対の抜止め凸部が傾斜仮支持溝に配置されることで、リテーナが仮装着用位置に保たれる。この状態で、端子がキャビティ内に容易に挿入される。そして、リテーナが押されて回動すると、前記一対の抜止め凸部が一対の本係止用凸部を越えて本係止面に係止する。これにより、リテーナが本装着位置に保たれ、端子の抜止めが図られる。
【0017】
(4)(3)のコネクタであって、前記本係止用凸部のうち前記傾斜仮支持溝の一方の溝側面を形成する奥側溝形成面が、前記本係止用凸部の前寄りに位置しており、前記仮係止用凸部は、前記キャビティの延在方向において前記奥側溝形成面の後縁よりも前側に位置してもよい。
【0018】
この場合、上下方向において、仮係止用凸部と本係止用凸部との配置スペースを小さくでき、コネクタの小型化に貢献する。
【0019】
(5)(4)のコネクタであって、前記本係止用凸部のうち前記奥側溝形成面よりも後側の部分は、前記装着用開口から遠ざかるにつれて前記ハウジングの外側面からの突出長が大きくなるリテーナ広げ面に形成され、前記奥側溝形成面と、前記仮係止用凸部のうち前記傾斜仮支持溝の他方の溝側面を形成する手前側溝形成面とは、前記リテーナ広げ面よりも前記ハウジングの側面に対して垂直に近い姿勢であってもよい。
【0020】
この場合、リテーナが仮装着位置に位置する状態では、抜止め凸部が垂直に近い奥側溝形成面と手前側溝形成面との間で傾斜姿勢に保持される。このため、リテーナが傾斜姿勢に保持され易い。リテーナを回動させると、抜止め凸部がリテーナ広げ面に接触して一対の係止壁部が押広げられる。これにより、抜止め凸部が本係止用凸部を越えて当該本係止用凸部に容易に抜止め係止することができる。
【0021】
(6)(2)から(5)のいずれか1つに記載のコネクタであって、前記係止凸部のうち前記リテーナが前記仮装着位置に位置する状態で前記キャビティ内に入り込む部分が、後側に向うに連れて前記キャビティから遠ざかる退避案内面に形成されていてもよい。
【0022】
この場合、端子をキャビティ内に挿入する際に、端子が係止凸部の退避案内面に接触すると、係止凸部がキャビティ内から退避する方向に案内される。これにより、端子がキャビティ内に円滑に挿入される。
【0023】
(7)(6)のコネクタであって、前記退避案内面は、前記リテーナが前記本装着位置に位置する状態で前記端子を前記キャビティ内に押込む方向から前記端子に対向する面であり、前記退避案内面に対して前側に、前記リテーナが前記本装着位置に位置する状態で前記端子を抜止めする抜止め面が連なっていてもよい。
【0024】
本コネクタによると、リテーナが回動する構成であるため、リテーナが仮装着位置に位置する状態で、抜止め面がキャビティ内に入り込む位置関係となり易い。このような場合において、端子をキャビティ内に挿入する際に、端子が係止凸部の退避案内面に接触すると、係止凸部がキャビティ内から退避する方向に案内され、抜止め面もキャビティから退避する方向に案内され易い。これにより、端子がキャビティ内に円滑に挿入される。
【0025】
(8)(2)から(7)のいずれか1つに記載のコネクタであって、前記ハウジングは、前記仮装着位置に位置する前記リテーナの後側に位置し、後方から前記リテーナに接触するリテーナ抜止め受面を含んでもよい。
【0026】
これにより、リテーナが仮装着位置に位置する状態から後方に抜けることが抑制される。
【0027】
(9)(8)のコネクタであって、前記リテーナは、前記本装着位置に位置する状態で前記キャビティの延在方向に対して傾斜し、前記仮装着位置に位置する状態で、前記リテーナ抜止め受面に対向するように後側を向く傾斜抜止め面を有し、前記傾斜抜止め面が前記リテーナ抜止め受面に接触して、前記リテーナが抜止めされてもよい。
【0028】
これにより、リテーナが抜け方向に移動した状態で、傾斜抜止め面がリテーナ抜止め受面に接するため、抜止め状態におけるリテーナの傾斜姿勢が安定する。これにより、後のリテーナの復帰移動が円滑になされる。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0030】
[実施形態]
以下、実施形態に係るコネクタについて説明する。図1はコネクタ20を示す斜視図である。図2及び図3はコネクタ20を示す分解斜視図である。図4図1のIV-IV線部分断面図である。図4において電線18が2点鎖線で示されている。図5は仮装着状態におけるコネクタ20を示す側面図である。図6は仮装着状態におけるコネクタ20を示す断面図である。図6はIV-IV線と同じ箇所の断面図である。図7図5のVII-VII線断面図であり、図8図5のVIII-VIII線断面図である。なお、仮装着位置状態とは、リテーナ80が仮装着位置に位置する状態であり、本装着状態とは、リテーナ80が本装着位置に位置する状態である。
【0031】
<コネクタの全体構造>
コネクタ20の全体構造について説明する。コネクタ20は、端子10を保持する。
【0032】
端子10は、金属板がプレス加工等されることによって形成される。端子10は、被覆圧着部11と、芯線圧着部12と、端子接続部13とを備える。被覆圧着部11は、電線18の端部の被覆部に圧着される部分である。芯線圧着部12は、電線18の端部に露出する芯線部に圧着される部分である。端子接続部13は、相手側の端子に接続される部分であり、例えば、筒状に形成されている。被覆圧着部11と芯線圧着部12と端子接続部13とは、この順で直線状に並んでいる。被覆圧着部11及び端子接続部13の厚みは、芯線圧着部12の厚みよりも大きい。このため、端子10を側方から観察すると、芯線圧着部12上であって被覆圧着部11と端子接続部13との間に、端子10の延在方向の一部で凹む凹部14が形成される。
【0033】
本実施形態では、コネクタ20は複数の端子10を保持する。より具体的には、複数(例えば2つ)の端子10が複数段(例えば2段)に分れて保持される。各段において、複数の端子10が並列状態で一列に並んでいる。なお、複数の端子10はサイズ及び素材等が同じ端子であってもよいし、サイズ又は素材が異なる端子であってもよい。なお、コネクタ20が保持する端子10の数は任意である。
【0034】
コネクタ20は、ハウジング30と、リテーナ80とを備える。リテーナ80によって、少なくとも1つの段における複数の端子10がハウジング30から脱しないように保持される。本実施形態では、コネクタ20は、さらにカバー60を備える。カバー60は、ハウジング30に対してリテーナ80とは反対側に装着される。カバー60によって、他の段における複数の端子10がハウジング30から脱しないように保持される。
【0035】
以下の説明において、端子10の延在方向において端子接続部13側を前側、被覆圧着部11側を後側ということがある。また、カバー60側を下側、リテーナ80側を上側という場合がある。さらに、カバー60に立って前側を向いた状態を想定して左右方向を参照する場合がある。
【0036】
ハウジング30は、樹脂等によって形成されており、端子収容部32、42を備える。本実施形態では、ハウジング30は、下側の端子収容部32と、上側の端子収容部42とを備える。下側の端子収容部32は、端子10を収容するキャビティ34を有している。本実施形態では、下側の端子収容部32は、並列状態で並ぶ複数(ここでは2つ)のキャビティ34を有する。上側の端子収容部42は、端子10を収容するキャビティ44を有している。本実施形態では、上側の端子収容部42は、並列状態で並ぶ複数(ここでは2つ)のキャビティ44を有する。
【0037】
リテーナ80は上側の端子収容部42と合体して上側のキャビティ44内に端子10を保持する。つまり、リテーナ80が本装着される前の状態で、端子10がキャビティ44に挿入される。端子10がキャビティ44に挿入された状態で、リテーナ80が上側の端子収容部42に本装着される。すると、端子10が上側のキャビティ44から抜出ないようになる。なお、キャビティ44に対する端子10の挿入方向の奥側が前側であり、反対方向が後側である。
【0038】
カバー60は下側の端子収容部32と合体して下側のキャビティ34内に端子10を保持する。つまり、カバー60が下側の端子収容部32に装着される前の状態で、端子10が下側のキャビティ34にセットされる。この状態で、カバー60が下側の端子収容部32に装着される。すると、端子10が下側のキャビティ34から抜出ないようになる。
【0039】
本コネクタが上記カバー60を備えること、及び、当該カバー60によって保持される端子10を備えることは必須ではない。
【0040】
リテーナ80によって端子10が保持される構成がより具体的に説明される。
【0041】
<リテーナによる保持構造について>
リテーナ80は、ハウジング30に対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能に構成されている。本装着とは、コネクタ20の使用状態で端子10の抜けを防止するように、リテーナ80が端子10に係止している装着状態である。リテーナ80が本装着位置でハウジング30に装着された状態では、コネクタ20を持運んだり、相手側コネクタと抜差ししたりしても、端子10がハウジング30から脱しないでキャビティ44内に保持される。仮装着とは、本装着状態となる前の状態において、リテーナ80がハウジング30と合体して一体的に取扱可能な形態となっており、かつ、キャビティ44に端子10を挿入可能な状態である。つまり、仮装着状態においては、ハウジング30とリテーナ80とを1つの部品として、保管、運搬でき、かつ、端子10の挿入作業者に提供することができる。
【0042】
より具体的には、ハウジング30は、上側の段のキャビティ44を下側から仕切る仕切板部31を有している。本実施形態では、仕切板部31は、下側の端子収容部と下側の端子収容部との間に位置し、下側のキャビティ34と上側のキャビティ44とを仕切る。仕切板部31は、上側の段のキャビティ44の底に位置する底板であるとも把握され得る。ハウジング30は、ハウジング30の両側に位置する一対の外壁43、43を含む。一対の外壁43、43は、仕切板部31の両側部から上側に向かうように延びている。一対の外壁43、43は、仕切板部31に直交しかつキャビティ44の延在方向に沿って延びる板状部分である。一対の外壁43、43は、後述する係止壁部84の突出方向にも沿っている。一対の外壁43、43は、ハウジング30の左又は右の外側に露出している。
【0043】
また、ハウジング30は、一対の外壁43、43の間において、複数のキャビティ44間を仕切る中間壁42Mを含む。つまり、一対の外壁43、43と中間壁42Mとは、ハウジング30の幅方向において間隔をあけて並列状態に並んでいる。
【0044】
ハウジング30の前縁には、前後方向に対して直交する方向に延在する前板部31Fが設けられている。前板部31Fは、キャビティ44の前端に位置している。キャビティ44内に配置された端子10は、前板部31Fに接することで、前方への移動が規制される。前板部31Fには、相手側端子(例えば、細長い板部又はピン状部分を有するオス端子)を挿入可能な接続孔31Faが形成されている。相手側端子は、当該接続孔31Faを通ってキャビティ44内の端子10に接続され得る。
【0045】
一対の外壁43、43及び中間壁42Mのうち仕切板部31とは反対側の開口の少なくとも一部が天井板部43cによって閉じられている。上側の端子収容部42は、仕切板部31のうち上側部分と一対の外壁43、43と中間壁42Mと天井板部43cと前板部31Fとを備える構成であり、一対の外壁43、43と中間壁42Mとの各隙間に複数のキャビティ44が形成される。キャビティ44は後方開口を有しており、端子10は当該後方開口を通ってキャビティ内に挿入される。
【0046】
ハウジング30は、リテーナ80が装着される装着用開口45を有している。
【0047】
本実施形態では、ハウジング30の天井板部43cのうちキャビティ44の延在方向中間部に、部分的に開口する装着用開口45が形成されている。キャビティ44内に配置された端子10の前端が前板部31Fに接触した状態で、端子10のうちの凹部14の少なくとも一部が装着用開口45を通じてハウジング30の外に露出することができる。リテーナ80が当該装着用開口45に嵌ることで、リテーナ80が前後方向に位置決めされた状態で、当該装着用開口45を閉じる。
【0048】
ハウジング30は、その両側外面から突出する一対の仮係止用凸部46と、一対の本係止用凸部48とを含む。一対の仮係止用凸部46は、一対の本係止用凸部48よりも装着用開口45の近くに位置している。このため、装着用開口45側からハウジング30に装着されるリテーナ80は、一対の仮係止用凸部46に仮係止した後、一対の本係止用凸部48に本係止することができる。
【0049】
より具体的には、一対の外壁43、43のうち装着用開口45に対応する部分が他の部分よりも凹んでいる。外壁43、43のうち凹んだ部分の底面は、外壁43の外面の一部であり、当該底面に仮係止用凸部46及び本係止用凸部48が形成される。
【0050】
本係止用凸部48は、前後方向に沿って長い凸形状に形成されている。本係止用凸部48の長さは、外壁43、43の凹み部分内でなるべく大きいことが好ましく、例えば、装着用開口45の前後長の半分以上の大きさである。
【0051】
仮係止用凸部46は、本係止用凸部48に対して上側に間隔をあけて位置する凸形状に形成されている。仮係止用凸部46の前後長は、本係止用凸部48の前後長よりも小さくてもよい。本実施形態では、仮係止用凸部46は、本係止用凸部48の前端の上側に位置している。また、仮係止用凸部46の前後長は、本係止用凸部48の前後長の半分以下である。
【0052】
リテーナ80は、ハウジング30に対して仮装着位置と本装着位置とで装着可能である。リテーナ80は、キャビティ44内に収容される端子10に対して係止可能な係止凸部83を含む。
【0053】
リテーナ80が仮装着位置に装着された状態で、係止凸部83がキャビティ34から退避している。ここで、係止凸部83がキャビティ44から退避しているとは、仮装着状態における係止凸部83の位置が、本装着状態における係止凸部83の位置と比較して、キャビティ44の中心から離れて位置することをいう。このため、リテーナ80が仮装着位置に装着された状態で、係止凸部83の一部がキャビティ44内に入り込んでいてもよい。つまり、仮装着状態における係止凸部83は、本装着状態における係止凸部83よりも、キャビティ44に対する端子10の挿入を妨げ難い状態となっていればよい。
【0054】
リテーナ80は、仮装着位置から本装着位置に向って回動することができる。リテーナ80の回動は、キャビティ44の延在方向に直交する軸周り(ここでは左右方向の軸周り)において所定範囲内で回転することによって行われる。リテーナ80が回動して本装着位置に位置することで、係止凸部83が装着用開口45を通ってキャビティ44内に突出し、キャビティ44内の端子10に係止することができる。
【0055】
より具体的には、リテーナ80は、リテーナ本体82と、一対の係止壁部84と、一対の抜止め凸部85を備える。
【0056】
リテーナ本体82は、複数のキャビティ44に対応する装着用開口45を一括して塞ぐことができる大きさに広がる板状、ここでは、方形板状に形成されている。リテーナ本体82は、複数のキャビティ44の上方開口を塞ぐように、装着用開口45に装着される。
【0057】
リテーナ本体82に係止凸部83が形成されている。ここでは、複数のキャビティ44に対応して複数の係止凸部83が並列状態で形成されている。係止凸部83は、キャビティ44の延在方向中間部、より具体的には、キャビティ44の延在方向において芯線圧着部12が位置する領域に形成されている。そして、リテーナ本体82が装着用開口45に装着された状態で、係止凸部83がキャビティ44内に突出することができる。この状態で、係止凸部83が、キャビティ44内の端子10のうち被覆圧着部11と端子接続部13との間の凹部14に嵌り込むことができる。これにより、端子10がその延在方向において位置決めされ、後方への抜けが抑制される。
【0058】
一対の係止壁部84は、リテーナ本体82の両側からハウジング30の両側、ここでは、一対の外壁43、43の外面に沿って延びる。一対の係止壁部84の内面のうち先端寄りの位置に一対の抜止め凸部85が形成されている。抜止め凸部85は、係止壁部84の内面から突出する細長い凸部である。本装着状態において、抜止め凸部85はキャビティ44の延在方向に沿っている。本実施形態では、係止壁部84の先端縁は、本装着状態において、キャビティ44の延在方向に沿っており、抜止め凸部85は、当該係止壁部84の先端縁に沿っている。抜止め凸部85は、係止壁部84の先端側に向って徐々に突出寸法が小さくなるガイド面85fを含む形状に形成されている(図3図8参照)。一対の係止壁部84は、一対の仮係止用凸部46又は一対の本係止用凸部48に係止することができる。
【0059】
また、リテーナ80は、仮装着位置において、キャビティ44の延在方向に対して傾斜する傾斜方向に沿って移動可能に支持されている。傾斜方向は、キャビティ44の延在方向に沿って後側に向うに連れてキャビティ44から遠ざかる方向である。リテーナ80が上記傾斜方向に沿って移動可能に支持されているため、キャビティ44内に端子10を挿入する際に、端子10が係止凸部83に干渉すると、リテーナ80を後方に移動させて、端子10と係止凸部83との干渉を解消することができる。
【0060】
より具体的に説明すると、上記仮係止用凸部46と本係止用凸部48との間に、上記傾斜方向に沿って延びる傾斜仮支持溝90が形成されている。傾斜仮支持溝90の溝幅は、抜止め凸部85を上記傾斜方向に沿って支持できる範囲で、当該抜止め凸部85の幅と同程度か当該幅よりも大きい。抜止め凸部85が傾斜仮支持溝90内に配置されることで、抜止め凸部85が傾斜方向に沿った姿勢で支持される。抜止め凸部85は、傾斜仮支持溝90内において斜め方向に移動することができるとよい。
【0061】
傾斜仮支持溝90の一方の溝側面が手前側溝形成面46f1であり、他方の溝側面が奥側溝形成面48f1である。手前側溝形成面46f1は、仮係止用凸部46のうち装着用開口45から遠い下側の側面である。奥側溝形成面48f1は、本係止用凸部48のうち装着用開口45に近い上側の側面である。
【0062】
上記奥側溝形成面48f1は、本係止用凸部48の前寄りに位置している。例えば、奥側溝形成面48f1が、本係止用凸部48の前縁から後方に向って1/2~3/4の領域に広がるように形成される。奥側溝形成面48f1は、本係止用凸部48のうち当該奥側溝形成面48f1の後方に連なる部分に対して、前方に向って徐々に下方に傾斜するように延びている。
【0063】
本係止用凸部48のうち奥側溝形成面48f1よりも後側の部分は、リテーナ広げ面48f2に形成されている。リテーナ広げ面48f2は、装着用開口45から遠ざかるにつれて、ハウジング30の外側面からの突出長が大きくなる斜面に形成されている(図8参照)。本係止用凸部48のうち装着用開口45とは反対側の下向き面は、抜止め凸部85と係止してリテーナ80を本装着位置に保つ本係止面48f3に形成されている(図7及び図8参照)。
【0064】
本実施形態では、側面視において、リテーナ広げ面48f2及び本係止面48f3は、キャビティ44の延在方向に沿って延びる形状に形成されている。このため、本係止用凸部48を側面視すると、リテーナ広げ面48f2が形成された部分は同一幅が連続する部分であり、奥側溝形成面48f1が形成された前方部分の上部は前側に向って斜めに下がる形状を示す。
【0065】
奥側溝形成面48f1に抜止め凸部85が配置された状態で、リテーナ80が押されると、抜止め凸部85が当該リテーナ広げ面48f2に接する。すると、リテーナ80が押されることによって、抜止め凸部85がリテーナ広げ面48f2に乗上げられ、係止壁部84が弾性変形して外側に広げられる。抜止め凸部85が本係止用凸部48を下側に乗越えると、係止壁部84が元の形状に弾性復帰して、抜止め凸部85が本係止用凸部48の本係止面48f3に下側から本係止することができる。
【0066】
仮係止用凸部46は、キャビティ44の延在方向において、奥側溝形成面48f1の後縁よりも前側に位置する。つまり、本係止用凸部48を側面視した場合において、前側に向って斜め下方に延びる部分の上方に、仮係止用凸部46が位置している。つまり、本係止用凸部48のうち斜め下方に下がるスペースを有効利用して仮係止のための抜止め凸部85の配置スペースを設けることができる。
【0067】
仮係止用凸部46の前縁は、本係止用凸部48の前縁よりも後側に位置していてもよいし、前側に位置していてもよい。本実施形態では、仮係止用凸部46の前縁は、本係止用凸部48の前縁よりも前側に位置している。
【0068】
仮係止用凸部46は、キャビティ44の延在方向において、奥側溝形成面48f1の後縁よりも後側に延びていてもよい。この場合、強度上の観点から仮係止用凸部46の上下方向寸法を大きくしつつ後方に延すことが好ましい。より小型化を図るという観点からは、仮係止用凸部46は、奥側溝形成面48f1の後縁よりも前側に位置することが好ましい。
【0069】
上記奥側溝形成面48f1と、手前側溝形成面46f1とは、リテーナ広げ面48f2よりもハウジング30の側面である外壁43の外面に対して垂直に近い姿勢であることが好ましい。本実施形態では、奥側溝形成面48f1と手前側溝形成面46f1とは、外壁43の外面に対して垂直であるが(図7参照)、当該外面に対して傾斜していてもよい。
【0070】
奥側溝形成面48f1と手前側溝形成面46f1とが外壁43の外面に対して垂直に近い姿勢であれば、抜止め凸部85が傾斜仮支持溝90に沿って支持される状態が維持され易い。
【0071】
また、リテーナ80の後端を押せば、抜止め凸部85の前端が手前側溝形成面46f1によって抜止めされた状態で、抜止め凸部85の後ろ寄りの部分がリテーナ広げ面48f2を容易に乗越えることができ、リテーナ80が抜止め凸部85の前端を中心として回動し易い。
【0072】
また、本係止用凸部48の前端に、リテーナ80を広げるための傾斜形状を形成せずにすむため、本係止用凸部48の前端が薄くなりすぎることを抑制できる。
【0073】
リテーナ80が仮装着された状態で、リテーナ80の係止壁部84が、外壁43に形成された凹部の前壁に当って、リテーナ80の前方への移動が規制される。この状態で、係止凸部83の一部が装着用開口45を通ってキャビティ44内に突出していてもよい(図6参照)。この場合、挿入された端子10が、係止凸部83に接触してリテーナ80を後退させるとよい。
【0074】
係止凸部83のうちリテーナ80が仮装着位置に位置する状態でキャビティ44内に入り込む部分が、後側に向うにつれてキャビティ44から遠ざかる退避案内面83f1を有していてもよい。本実施形態では、係止凸部83の先端面のうち前寄りの部分が退避案内面83f1である。退避案内面83f1は、リテーナ80が本装着位置に位置する状態で、端子10をキャビティ44内に押込む方向(上)から端子10に対向する面である。退避案内面83f1は、抜止め凸部85の延在方向に沿う面に形成されている。本装着状態では、退避案内面83f1は、キャビティ44の延在方向に沿っている。仮装着状態では、退避案内面83f1が抜止め凸部85の延在方向である傾斜方向に沿った状態で、退避案内面83f1の先端部が後方を向きつつキャビティ44内に入り込んでいる。
【0075】
そして、端子10がキャビティ44内に挿入されると、端子10の先端部が退避案内面83f1に接触する。すると、端子10の先端部が退避案内面83f1をキャビティ44の外側に押出す。これにより、リテーナ80が後方に斜め後方に移動し、係止凸部83がキャビティ44から退避する。これにより、端子10は、係止凸部83と干渉せずに、キャビティ44の奥に挿入されることができる。
【0076】
係止凸部83は、退避案内面83f1に連続する抜止め面83f2を有する。抜止め面83f2は、退避案内面83f1に対して前側に連なっており、リテーナ80が本装着位置に位置する状態で端子10を抜止めする面である。抜止め面83f2は、キャビティ44の延在方向に対して直交する面であることが好ましいが、これは必須ではない。
【0077】
上記のように、リテーナ80は、前端部を中心にして回動する構成であるため、仮装着状態において、抜止め面83f2がキャビティ44に入り込む位置関係となり易い。このような場合において、抜止め面83f2に面なる上記退避案内面83f1は、端子10の挿入によって係止凸部83をキャビティ44から退避する方向に円滑に案内することができる。
【0078】
ハウジング30は、仮装着位置に位置するリテーナ80の後側に位置し、後方からリテーナ80に接触し得るリテーナ抜止め受面43fを含む。本実施形態では、リテーナ抜止め受面43fは、外壁43の凹部の後側の面であり、前側を向く面である。リテーナ抜止め受面43fは、キャビティ44の延在方向に対して直交する面である。リテーナ抜止め受面43fが、リテーナ80の係止壁部84の後部に接触して、リテーナ80の後方への抜けを規制することができる。
【0079】
リテーナ80は、本装着位置に位置する状態でキャビティ44の延在方向に対して傾斜し、仮装着位置に位置する状態で、リテーナ抜止め受面43fに対向するように後側を向く傾斜抜止め面84fを有する。本実施形態では、傾斜抜止め面84fは、本装着状態において、下に向うに連れて前側に向う傾斜面に形成されている。傾斜抜止め面84fは、仮装着状態において、リテーナ抜止め受面43fに対してなるべく平行であることが好ましいが、これは必須ではない。
【0080】
リテーナ80が後方へ下がると、傾斜抜止め面84fがリテーナ抜止め受面43fに接して後方への移動が規制される。この際、リテーナ80は、傾斜仮支持溝90による案内下、許容される傾斜姿勢において、傾斜抜止め面84fがリテーナ抜止め受面43fに面接触することができる。これにより、リテーナ80が後方に移動した状態においても、リテーナ80が安定して斜め姿勢となることができる。このため、端子10の挿入後、リテーナ80は、安定して前方に復帰移動することができる。
【0081】
<端子の保持作業>
端子10の保持作業例について説明する。
【0082】
リテーナ80がハウジング30に仮装着されたものが準備される(図5から図8参照)。この状態では、リテーナ80の抜止め凸部85は、傾斜仮支持溝90に嵌っており、ハウジング30に対して傾斜姿勢で支持される。抜止め凸部85は、本係止用凸部48を前方に越えている。抜止め凸部85は、傾斜仮支持溝90内を当該傾斜仮支持溝90の傾斜方向に沿って移動可能である。このため、リテーナ80は、傾斜抜止め面84fがリテーナ抜止め受面43fに接するまで、傾斜姿勢で、後方に移動できる。また、係止凸部83の前側先端部は、キャビティ44内に突出しており(図6参照)、退避案内面83f1の前端部は、キャビティ44内において斜め後方を向いている。
【0083】
端子10がキャビティ44の後方開口からキャビティ44内に挿入される。すると、端子10の先端が係止凸部83の退避案内面83f1に接する。端子10がさらに奥に移動すると、端子10の先端が退避案内面83f1をキャビティ44の外側後方に押退ける(図9及び図10参照)。これにより、リテーナ80が傾斜仮支持溝90の傾斜方向に沿ってキャビティ44から離れる方向に移動する。すると、端子10は、キャビティ44内をさらに奥に進むことができる。端子10が前板部31Fの内面に当るまでキャビティ44内に挿入されると、端子10の凹部14が装着用開口45の内側に配置される。これにより、リテーナ80は元の位置に戻ることができる。リテーナ80は、自重によって元の位置に戻ってもよいし、作業者の手作業によって元の位置に戻されてもよい。リテーナ80が元の位置に戻れば、係止凸部83の前端部がキャビティ44内に入り込む。このため、係止凸部83の抜止め面83f2が端子接続部13の後端に引っ掛ることができ、リテーナ80が本装着位置に回動する際に、端子10が抜けないようにすることができる。
【0084】
次に、リテーナ80が装着用開口45に向けて押される。なお、リテーナ80の後端部が装着用開口45に押されることが好ましい。リテーナ80が押されると、抜止め凸部85のガイド面85fが本係止用凸部48のリテーナ広げ面48f2に押し当てられるので、当該リテーナ広げ面48f2の傾斜に沿って係止壁部84が外側に広げられる。抜止め凸部85の前端部は、手前側溝形成面46f1に係止しているので、上方に移動し難い。このため、リテーナ80は、抜止め凸部85の前端部を中心として回動することができる。
【0085】
特に、手前側溝形成面46f1は、リテーナ広げ面48f2よりも外壁43の外面に対して垂直に近い姿勢である。このため、抜止め凸部85の後端部は、リテーナ広げ面48f2に当って本係止用凸部48を容易に乗越えることができる一方、抜止め凸部85の後端部は手前側溝形成面46f1を乗越え難い。このため、リテーナ80は、抜止め凸部85の前端部を中心としてより確実に回動できる。
【0086】
抜止め凸部85が本係止用凸部48を乗越えると、抜止め凸部85が本係止用凸部48の本係止面48f3に係止する。これにより、リテーナ80が本装着位置に位置する状態でハウジング30に本装着される。
【0087】
この状態では、リテーナ80の係止凸部83の先端部がキャビティ44内に入り込んで、端子10の凹部14に係止する。このため、端子10がキャビティ44の後方に抜けないように保持される。
【0088】
<効果等>
以上のように構成されたコネクタ20によると、リテーナ80が仮装着位置から本装着位置に向って回動することで、係止凸部83がキャビティ44内の端子10に係止して当該端子10を保持できる。このため、リテーナが端子の長手方向に対して直交する方向に移動して端子を位置決めする構成と比較して、リテーナ80を移動可能に支持する構成を小型化できる。例えば、リテーナが端子の長手方向に対して直交する方向に移動して端子を位置決めする構成では、ハウジングの側面に抜止め凸部が平行移動し得るスペースを確保することとなる。本実施形態では、ハウジング30の側面に抜止め凸部85が回動し得るスペースを設ければよい。このため、ハウジング30の小型化が可能となり、コネクタ20全体の小型化も可能となる。
【0089】
また、リテーナ80が、仮装着位置において傾斜方向に沿って移動可能に支持されている。このため、端子10の挿入途中で、端子10が係止凸部83に接触すると、係止凸部83がキャビティ44から離れる方向に移動でき、端子10を円滑に挿入できる。
【0090】
また、一対の抜止め凸部85が傾斜仮支持溝90に配置されることで、リテーナ80が仮装着位置に保たれる。この状態で、端子10がキャビティ44内に容易に挿入され得る。そして、リテーナ80が押されて回動すると、一対の抜止め凸部85が一対の本係止用凸部48を越えて本係止面48f3に係止する。これにより、リテーナ80が本装着位置に保たれ、端子10の抜止めが図られる構成が容易に実現される。
【0091】
また、奥側溝形成面48f1は、本係止用凸部48の前寄りに位置しており、仮係止用凸部46は、奥側溝形成面48f1の後縁よりも前側に位置する。このため、上下方向において仮係止用凸部46と本係止用凸部48との配置スペースを小さくでき、コネクタ20の小型化に貢献する。
【0092】
また、リテーナ80が仮装着位置に位置する状態では、垂直に近い奥側溝形成面48f1と手前側溝形成面46f1との間に抜止め凸部85が嵌る。このため、リテーナ80がより確実に傾斜姿勢に保持され易い。リテーナ80が回動すると、抜止め凸部85がリテーナ広げ面48f2に接触して一対の係止壁部84が押広げられる。これにより、抜止め凸部85が本係止用凸部48を越えて当該本係止用凸部48に容易に抜止め係止することができる。
【0093】
また、係止凸部83に退避案内面83f1が形成されている。このため、端子10をキャビティ44内に挿入する際に、端子10が係止凸部83の退避案内面83f1に接触すると、係止凸部83がキャビティ44内から退避する方向に案内される。これにより、端子10がキャビティ44内に円滑に挿入される。
【0094】
また、退避案内面83f1に対して前側に抜止め面83f2が連なっている。リテーナ80が回動する構成であるため、リテーナ80が仮装着位置に位置する状態で、抜止め面83f2がキャビティ44内に入り込む位置関係となり易い。このような場合において、端子10をキャビティ44内に挿入する際に、端子10が係止凸部83の退避案内面83f1に接触すると、係止凸部83がキャビティ44内から退避する方向に案内され、抜止め面83f2もキャビティ44から退避する方向に案内され易い。これにより、端子10がキャビティ44内に円滑に挿入される。
【0095】
また、抜止め面83f2は、リテーナ80の回動作業中に、端子10の後方への抜けを抑制するのにも役立つ。
【0096】
また、ハウジング30は、傾斜抜止め面84fを含むため、リテーナ80が仮装着位置に位置する状態から後方に抜けることが抑制される。
【0097】
また、リテーナ80は、傾斜抜止め面84fを有している。リテーナ80が抜け方向に移動した状態で、傾斜抜止め面84fがリテーナ抜止め受面43fに接するため、抜止め状態におけるリテーナ80が安定して斜め姿勢に保たれる。よって、抜止め凸部85が傾斜仮支持溝90に沿う状態が維持され易い。これにより、後のリテーナ80の復帰移動が円滑になされる。
【0098】
[変形例]
なお、リテーナ80を回動可能に支持する構成は上記例に限られない。例えば、リテーナの一対の係止壁部とハウジングの一対の外面との一方に凸部、他方に当該凸部が嵌る凹部を形成し、凸部が凹部に回転可能に嵌る構成によって、リテーナがハウジングに回動する構成であってもよい。
【0099】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0100】
10 端子
11 被覆圧着部
12 芯線圧着部
13 端子接続部
14 凹部
18 電線
20 コネクタ
30 ハウジング
31 仕切板部
31F 前板部
31Fa 接続孔
32、42 端子収容部
34、44 キャビティ
42M 中間壁
43 外壁
43c 天井板部
43f リテーナ抜止め受面
45 装着用開口
46 仮係止用凸部
46f1 手前側溝形成面
48 本係止用凸部
48f1 奥側溝形成面
48f2 リテーナ広げ面
48f3 本係止面
60 カバー
80 リテーナ
82 リテーナ本体
83 係止凸部
83f1 退避案内面
83f2 抜止め面
84 係止壁部
84f 傾斜抜止め面
85 抜止め凸部
85f ガイド面
90 傾斜仮支持溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10