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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053196
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】光加熱装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/26 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
H01L21/26 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159296
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 和雅
(72)【発明者】
【氏名】上嶋 由紀夫
(57)【要約】
【課題】従来の光加熱装置を改善した光加熱装置を提供する。
【解決手段】光加熱装置は、被処理基板を光加熱する、複数の加熱源と、前記加熱源が挿入され、前記加熱源からの光を透過する、複数の光透過容器と、前記被処理基板を内部に配置可能な筐体を有し、前記筐体は前記内部に配置される前記被処理基板に対向する位置に、前記複数の光透過容器を挿入する孔を有する、真空チャンバと、を備え、前記複数の加熱源を構成する加熱源は、それぞれ、少なくとも一つの発光素子を有し、前記複数の加熱源から、前記孔に挿入され、前記筐体から前記内部に向かって突出する前記複数の光透過容器を介して、前記真空チャンバ内に配置される前記被処理基板に向けて光を照射する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理基板を光加熱する、複数の加熱源と、
前記加熱源が挿入され、前記加熱源からの光を透過する、複数の光透過容器と、
前記被処理基板を内部に配置可能な筐体を有し、前記筐体は前記内部に配置される前記被処理基板に対向する位置に、前記複数の光透過容器を挿入する孔を有する、真空チャンバと、を備え、
前記複数の加熱源を構成する加熱源は、それぞれ、少なくとも一つの発光素子を有し、
前記複数の加熱源から、前記孔に挿入され、前記筐体から前記内部に向かって突出する前記複数の光透過容器を介して、前記真空チャンバ内に配置される前記被処理基板に向けて光を照射することを特徴とする、光加熱装置。
【請求項2】
前記光透過容器は、前記筐体の外面と接するフランジを有し、
前記フランジは、前記外面と前記フランジを気密封止するためのシールを有することを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項3】
前記複数の加熱源は、それぞれ、異なる前記光透過容器に挿入されることを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項4】
少なくとも一つの前記加熱源の前記発光素子は、前記筐体より内側に位置することを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項5】
前記発光素子は、フィラメントであることを特徴とする、請求項1に記載の光加熱装置。
【請求項6】
前記加熱源が有する前記発光素子と前記被処理基板との間隔を調整する間隔調整器を備えていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光加熱装置。
【請求項7】
前記間隔調整器は、前記発光素子を変位させる駆動部及び前記駆動部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記発光素子に対向する前記被処理基板上の位置が前記被処理基板の中心から離間する距離に応じて、前記発光素子を変位させることを特徴とする、請求項6に記載の光加熱装置。
【請求項8】
前記光透過容器は、他の前記光透過容器に進行する光を反射する反射体、又は、前記光を遮光する遮光体が設けられることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光加熱装置。
【請求項9】
前記反射体、又は、前記遮光体は、前記光透過容器の内面に形成されていることを特徴とする、請求項8に記載の光加熱装置。
【請求項10】
前記発光素子の光を前記被処理基板に配向する、放物形状又は楕円形状の反射体を備えていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光加熱装置。
【請求項11】
前記光透過容器と前記加熱源との間に冷却流体を供給するノズルを備えていることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の光加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空チャンバ内に配置した被処理基板の表面に、真空チャンバの外に配置した複数の発光素子から光を照射して、被処理基板に熱処理を行う光加熱装置が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の光加熱装置は、このような光加熱装置の一つである。特許文献1に記載の光加熱装置は、真空チャンバと、真空チャンバの外に配置した複数の発光素子を備えるランプヘッドとの間に、真空チャンバの真空領域と非真空領域とを区画する、単一でサイズの大きな石英窓が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7509035号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光加熱装置のさらなる改善が市場から要求されている。本発明が解決しようとする課題は、従来の光加熱装置を改善した光加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
光加熱装置の主要な改善項目の一つが高照度化である。照度が高いと加熱温度を高くすることができ、加熱時間を短くできる。本発明者は、鋭意研究の結果、特許文献1に記載の光加熱装置では、高照度化に限界があることに気付いた。その理由は、特許文献1に見られる、真空領域と非真空領域とを区画する、単一でサイズの大きな石英窓にある。この石英窓は、大面積にわたって真空領域と非真空領域とを区画することを要する。そのため、石英窓が受ける、真空領域と非真空領域との差圧による押圧力は大きな値となる。大きな押圧力により歪んだり、破壊されたりしないように、石英窓には高い耐圧強度が求められる。その結果、単一でサイズの大きな石英窓は、高い耐圧強度を確保するために、厚くなる。厚い石英窓は、発光素子と被処理基板とを遠ざけるため、照度の低下を招く。さらに、厚い石英窓の光透過損失は大きいため、照度の低下を招く。
【0007】
そこで、本発明者は、以下に示す光加熱装置を案出した。
光加熱装置は、被処理基板を光加熱する、複数の加熱源と、
前記加熱源が挿入され、前記加熱源からの光を透過する、複数の光透過容器と、
前記被処理基板を内部に配置可能な筐体を有し、前記筐体は前記内部に配置される前記被処理基板に対向する位置に、前記複数の光透過容器を挿入する孔を有する、真空チャンバと、を備え、
前記複数の加熱源を構成する加熱源は、それぞれ、少なくとも一つの発光素子を有し、
前記複数の加熱源から、前記孔に挿入され、前記筐体から前記内部に向かって突出する前記複数の光透過容器を介して、前記真空チャンバ内に配置される前記被処理基板に向けて光を照射する。
【0008】
前記光加熱装置は、一つ又は複数の加熱源を挿入するための光透過容器が複数存在する。これにより、光加熱装置の複数の加熱源が、複数の光透過容器に分散して配置される。詳細は後述するが、これにより、個々の光透過容器のサイズが小さくなる。その結果、個々の光透過容器に要求される耐圧強度が小さくなる。よって、個々の光透過容器の厚みを薄くできる。光透過容器の厚みを薄くできると、照度が向上する。
【0009】
前記光透過容器は、前記筐体の外面と接するフランジを有し、
前記フランジは、前記外面と前記フランジを気密封止するためのシールを有しても構わない。
【0010】
前記複数の加熱源は、それぞれ、異なる前記光透過容器に挿入されても構わない。つまり、一つの光透過容器に挿入される加熱源の数は一つとなる。このような光加熱装置の形態は、複数の加熱源の光透過容器への分散配置が進展した形態である。これにより、光透過容器に要求される耐圧強度が低下して、光透過容器の厚みを薄くできる。
【0011】
少なくとも一つの前記加熱源の前記発光素子は、前記筐体より内側に位置しても構わない。前記発光素子が、前記筐体より内側に位置すると、前記発光素子の光が前記筐体に遮られることが少なくなる。
【0012】
前記発光素子は、フィラメントであっても構わない。
【0013】
前記加熱源が有する前記発光素子と前記被処理基板との間隔を調整する間隔調整器を備えても構わない。間隔を調整することにより、面内照度ばらつきを縮小しつつ、全体的な照度向上を図ることができる。
【0014】
前記間隔調整器は、前記発光素子を変位させる駆動部及び前記駆動部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記発光素子に対向する前記被処理基板上の位置が前記被処理基板の中心から離間する距離に応じて、前記発光素子を変位させても構わない。
【0015】
前記光透過容器は、他の前記光透過容器に進行する光を反射する反射体、又は、遮光する遮光体が設けられても構わない。
【0016】
前記反射体、又は、前記遮光体は、前記光透過容器の内面に形成されても構わない。
【0017】
前記発光素子の光を前記被処理基板に配向する、放物形状又は楕円形状の反射体を備えていても構わない。これにより、光の利用効率が向上する。
【0018】
前記光透過容器と前記加熱源との間に冷却流体を供給するノズルを備えていても構わない。
【発明の効果】
【0019】
従来の光加熱装置を改善した光加熱装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】光加熱装置の第一実施形態を示す図である。
図2】一つの光透過容器とその周辺領域を拡大して示す図である。
図3図2で示された領域の分解図である。
図4】光加熱装置が備える複数の加熱源と被処理基板の配置関係を示した図である。
図5】被処理基板の中心位置からの距離と照度との関係を示すグラフである。
図6】面内照度ばらつきを抑えた場合の、被処理基板の中心位置からの距離と照度との関係を示すグラフである。
図7】光加熱装置の間隔d1をゾーンごとに設定した様子を示す図である。
図8】光加熱装置の第二実施形態の要部を説明する図である。
図9】光加熱装置の第三実施形態の要部を説明する図である。
図10】光加熱装置の第四実施形態の要部を説明する図である。
図11】光加熱装置の第五実施形態を示す図である。
図12】光加熱装置の第六実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面を参照しながら実施形態を説明する。なお、本明細書に開示された、グラフを除く各図面は、あくまで模式的に図示されたものである。すなわち、図面上の寸法比と実際の寸法比とは必ずしも一致しておらず、また、各図面間においても寸法比は必ずしも一致していない。
【0022】
以下において、各図面は、XYZ座標系を参照しながら説明される。本明細書において、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+X方向」、「-X方向」のように、正負の符号を付して記載される。正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「X方向」と記載される。すなわち、本明細書において、単に「X方向」と記載されている場合には、「+X方向」と「-X方向」の双方が含まれる。Y方向及びZ方向についても同様である。以下に述べる実施形態では、重力方向が-Z方向である。
【0023】
<第一実施形態>
[光加熱装置の概要]
図1とともに、光加熱装置の第一実施形態を示す。光加熱装置100は、複数の加熱源1と、それぞれの加熱源1が挿入され、加熱源1からの光を透過する、複数の光透過容器2と、真空チャンバ5と、を有する。加熱源1は、主に-Z方向に光を出射し、加熱源1から+Z方向に給電線9が延びる、シングルエンド型の光発生器である。各加熱源1は、それぞれ、光透過容器2の内部に配置される。各加熱源1は、被処理基板W1を光加熱するための発光素子3を備える。被処理基板W1は特に限定されないが、被処理基板W1は、例えば、シリコンウェハであってもよい。
【0024】
本実施例では被処理基板W1の+Z側に加熱源1が配置されているが、被処理基板W1と加熱源1の配置関係は任意である。例えば、被処理基板W1の-Z側に加熱源1を配置してもよい。この場合、加熱源1は、+Z方向に光を出射してもよい。さらに、被処理基板W1が水平方向に配置されるとは限らない。例えば、被処理基板W1をXZ平面に沿うように立てて配置してもよい。この場合、加熱源は、被処理基板W1の+Y方向又は-Y方向に光を出射してもよい。
【0025】
真空チャンバ5は、筐体11に取り囲まれている。そして、真空チャンバ5は真空ポンプ6に接続されており、真空チャンバ5の内部5iを減圧できる。本明細書において、「真空領域」とは、「非真空領域」から減圧された領域を指す。「非真空領域」の気圧は、光加熱装置100の配置される環境の気圧である。詳細は後述するが、光透過容器2は、筐体11とともに、真空チャンバ5の内部5iの真空領域と、真空チャンバ5の外部5oの非真空領域とを区画する。
【0026】
真空チャンバ5は、その内部5iに被処理基板W1を載置可能なテーブル23を有する。テーブル23はリフトピン24を有する。被処理基板W1は、不図示の搬送アーム(不図示)を使用して真空チャンバ5に搬入され、及び真空チャンバ5から搬出される。搬送アームは、真空チャンバ5内に搬入した被処理基板W1を、リフトピン24の上に載置したり、リフトピン24の上にある被処理基板W1を真空チャンバ5の外部5oに搬出したりできる。図1では、リフトピン24上にある被処理基板W1を示しているが、リフトピン24を降下させて被処理基板W1をテーブル23上に載置できる。
【0027】
筐体11は、被処理基板W1を真空チャンバ5に搬入及び真空チャンバ5から搬出するための扉12を有する。扉12は、ヒンジ16を軸にして回転する。図1では扉12は、X軸に沿ってA2方向に回転するが、Z軸に沿って回転してもよい。また、扉12の外側の外部5oは大気圧空間であってもよいし、大気圧から減圧された空間(例えば、ロードロックチャンバ内の空間)であってもよい。
【0028】
詳細は後述するが、筐体11の天井11sは、複数の光透過容器2を挿入するための孔を有する。この孔は、テーブル23に配置された被処理基板W1に対向する位置にある。本実施形態では、被処理基板W1は、真空チャンバ5の下方(-Z方向)にあるテーブル23に載置される。孔は、筐体11の上方(+Z方向)、すなわち、筐体11の天井にあたる領域にある。つまり、本実施形態では、孔と被処理基板がZ方向に対向する。
【0029】
複数の光透過容器2は、それぞれ、筐体11に設けられた孔に挿入され、かつ、筐体11から真空チャンバ5の内部5iに向かって突出するように配置される。これにより、光透過容器2内の加熱源1を被処理基板W1に近接して配置できる。加熱源1が被処理基板W1に近いと、より多くの光エネルギーを被処理基板W1に伝達できる。
【0030】
本実施形態の筐体11の天井11sは、ヒンジ15を軸に、図1のA1方向に回転移動させることができる。これにより、真空チャンバ5を開閉できる。光透過容器2と加熱源1は、開閉可能な筐体11の天井11sに設けられているため、加熱源1及び光透過容器2の保守点検の作業性に優れている。
【0031】
本実施形態の光加熱装置100において、複数の加熱源1は、それぞれ、異なる光透過容器2に挿入される。言い換えると、一つの光透過容器2に挿入される加熱源1の数は一つである。これは、光加熱装置100の複数の加熱源を、複数の光透過容器2に分散して配置する形態の一つである。加熱源1を複数の光透過容器2に分散させる形態により、光透過容器2のサイズを小さくできる。光透過容器2は、真空チャンバの外側の非真空領域から、真空領域と非真空領域との差圧に応じた押圧力を受ける。光透過容器2のサイズが小さい場合、光透過容器2が受ける押圧力は小さくなる。押圧力が小さいと光透過容器2に要求される耐圧強度が小さくなるため、光透過容器2の厚みが薄くても構わない。光透過容器2の厚みが薄くなると、加熱源1と、被処理基板W1との距離を近づけられるという利点と、光透過容器2による光透過損失を低減できるという利点とが得られる。
【0032】
光透過容器2の厚みt2(図2参照)は、光透過容器2に要求される耐圧強度に応じて設定される。厚みt2は、1mm以上であるとよく、2mm以上であるとさらに好ましい。ただし、上述したように、厚みt2が大きすぎると、発光素子と被処理基板の離間距離が大きくなったり、又は、光透過損失が増加したりして、照度が低下するおそれがある。厚みt2は、5mm以下であるとよく、3mm以下であるとさらに好ましい。
【0033】
発光素子3は給電線9より給電される。給電線9は、制御部(不図示)に電気的に接続され、発光素子3の点灯は、制御部に制御される。加熱源1内の発光素子3は、筐体11より内側に位置する。発光素子3が、筐体11より内側に位置するため、発光素子3の光が筐体11に遮られることが少ない。
【0034】
本実施形態の発光素子3は、フィラメントである。発光素子3が給電されると光を発する。発光素子3が発する光は、被処理基板W1に熱エネルギーを伝達する。光は、例えば、赤外光、可視光又は紫外光の少なくとも一つを発する。フィラメントの材質は特に限定されないが、例えば、タングステンが好適に使用される。発光素子3は、フィラメントに限らない。発光素子3は、例えば、LEDやLD等の固体光源であっても構わない。一つの加熱源1は、単一の発光素子3を有していてもよいし、複数の発光素子3を有していてもよい。
【0035】
[加熱源と光透過容器の詳細]
図2は、一つの光透過容器2とその周辺領域を拡大して示す図である。図3は、図2で示された領域の分解図である。本実施形態の光透過容器2は、半球状の底を有する円筒形を呈する。しかしながら、光透過容器2は角筒形であってもよく、その底は平坦であってもよい。光透過容器2の材質は、発光素子から取り出す光に対して高透過率を呈する材料であるとよい。発光素子から紫外光を取り出す場合、光透過容器2の材質は、紫外光を透過し易い石英であると好ましい。
【0036】
光透過容器2は、底から離れた端部に、円筒から突出するフランジ2fを有している。フランジ2fは、XY平面に沿い、円筒の周囲360度に亘って、円筒から突出するように形成される。フランジ2fの幅w2(図2参照)は、5mm以上であるとよく、10mm以下であるとよい。各フランジ2fの幅w2は、互いに異なっていてもよい。フランジ2fの厚みt3(図2参照)は、2mm以上であるとよく、10mm以下であるとよい。フランジ2fの厚みt3は、光透過容器2の厚みt2と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0037】
フランジ2fは、筐体11の外面とフランジ2fを気密封止するための、シール17を有する。光透過容器2が筐体11(の天井11s)の孔13(図3参照)に挿入されるとき、筐体11の天井11sの外面とフランジ2fとの間を気密封止する。これにより、真空チャンバ5の外部5oの気体が、真空チャンバ5の内部5iに流入しないようにできる。本実施形態では、筐体11の外面に、シール17を挿入するための溝14(図3参照)が設けられている。フランジ2fに、シール17を挿入するための溝が設けられてもよい。シール17は特に限定されないが、例えば、ガスケットOリングを使用できる。なお、フランジ2fは、筐体11と光透過容器2との間の気密封止を容易にするための一手段であって、光透過容器2にとって、フランジ2fは必須の構成でない。
【0038】
光加熱装置100は、光透過容器2と加熱源1との間に冷却流体CFを供給する複数のノズル31を有する(図1又は図2参照)。本実施形態の光加熱装置100は、一つの光透過容器2につき一つのノズル31を有する。ノズル31の先端は、光透過容器2の内部に挿入される。冷却流体CFの配管30が分岐されて、ノズル31に接続される(図1参照)。ノズル31から噴出した冷却流体CFが加熱源1を取り囲み、加熱源1を冷却する(図2参照)。冷却流体CFには、空気、又は不活性ガス(例えば、窒素)が好適に用いられる。
【0039】
図2を参照して、加熱源1は、発光素子3を封入する封体7を有する。加熱源1は、封体7の内側の一部分に反射体8を有する。また、光透過容器2は、その内面に反射体8を有する。反射体8は、加熱源1(発光素子3)からの光を被処理基板W1に配向するという目的と、加熱源1からの光が、他の加熱源1、及び他の加熱源1が挿入される他の光透過容器2に向かわないようにするという目的の、少なくとも一方の目的のために設けられる。前者の目的により、光の利用効率を高める。後者の目的により、他の加熱源1及び光透過容器2の加熱を抑える。
【0040】
反射体8は、例えば、Al,Au,Ag、又は、セラミックス等の反射膜である。反射体8に用いるセラミックとして、アルミナ(Al)、チタニア(TiO)が用いられる。反射膜は、蒸着、塗布、又は、化学的手法による成膜技術により形成されてもよい。本実施形態では封体7の内側の一部分に反射体8を有するが、封体7の外側の一部分に反射体8を有していてもよい。なお、光透過容器2の外面に反射体8を有していてもよい。
【0041】
加熱源1からの光が、他の加熱源1、及び他の加熱源1が挿入される他の光透過容器2に向かわないようにするという目的を考慮すれば、加熱源1は、封体7の内側の一部分に、反射体8ではなく、光を吸収又は散乱させる遮光体を有していてもよい。光透過容器2は、その内面に、反射体8ではなく、遮光体を有していてもよい。遮光体は、遮光膜でもよく、遮光板でもよい。なお、光透過容器2の外面に遮光体を有していてもよい。
【0042】
[各加熱源と被処理基板の間隔調整]
図1に戻り、光加熱装置100は、複数の加熱源1を支持する支持部21を有する。支持部21は、複数の支持棒22を支持する。各支持棒22は、各加熱源1を支持する。光加熱装置100は、各発光素子3と被処理基板W1との間隔d1(詳細は後述する)を変更する間隔調整器20を有する。本実施形態の間隔調整器20は、支持棒22に設けられたねじ部分20sと、支持棒22の延在方向を軸にして支持棒22を回転させるツマミ20kを含む。ねじ部分20sは、各支持棒22を雄ねじ形状にねじ切り加工されることにより形成される。そして、ねじ部分20sが支持部21の孔に挿入され、孔内の雌ねじ部分と嵌め合わされている。ツマミ20kは、支持棒22の、加熱源1に接続された端部とは別の端部に設けられる。作業者がツマミ20kを回転させると、支持棒22が回転し、支持棒22と加熱源1がZ方向に変位する。その結果、各加熱源1(各発光素子3)と被処理基板W1との間隔が調整される。なお、全ての加熱源1をZ方向に変位させるには、支持部21をZ方向に変位させてもよい。
【0043】
図4は、光加熱装置100が備える複数の加熱源1と被処理基板W1の配置関係を示した図である。加熱源1と被処理基板W1と後述する仮想線のみが、光加熱装置100の上方(+Z側)から、下方(-Z側)に向かって示されている。計61個の加熱源1は、それぞれ、白抜きの小さな丸で示される。図4に示されるように、各々の加熱源1は、ハニカム構造型配置を採る。「ハニカム構造型」とは、各々の加熱源1が、互いに大きさの異なる正六角形の頂点位置、又は正六角形の各辺上の位置に配置される形態である。
【0044】
本実施形態のハニカム構造型配置の形態を詳細に示す。図4における破線は、各加熱源1を分別するための仮想線である。仮想線は、互いに大きさの異なる複数の正六角形(s1~s4)を描く。最も小さな正六角形s1上と、被処理基板W1の中心とに配置される、合計7個の加熱源1は、ゾーンZ1に属する。正六角形s1の外側にある正六角形s2上に配置される12個の加熱源1は、ゾーンZ2に属する。正六角形s2の外側にある正六角形s3上に配置される18個の加熱源1は、ゾーンZ3に属する。なお、正六角形s3の頂点は、直径300mmの被処理基板W1のエッジと重なる。正六角形s3の外側にある正六角形s4上に配置される24個の加熱源1は、ゾーンZ4に属する。正六角形s4上に配置される24個の加熱源1は、全て被処理基板W1の外側に位置する。図4における、線分E1-E1における断面図が、図1に対応する。図1には、各加熱源1が、どのゾーン(Z1~Z4)に属するか、分かるように示している。
【0045】
[間隔調整による効果]
図5は、被処理基板W1の中心位置からの距離と照度との関係を示すグラフである。このグラフは、光学シミュレーションにより得られた。シミュレーション条件は、以下のように設定されている。
加熱源1の配置:図4に示す配置
加熱源1の個数:61個
各加熱源1の出力(消費電力):すべて1W
被処理基板W1の大きさ:直径300mm
【0046】
曲線C1は、全ての発光素子3の重心位置と被処理基板W1の表面までの間隔d1(図1参照)が、43.75mmある場合の曲線である。曲線C2は、間隔d1が63.75mmある場合の曲線である。曲線C3は、間隔d1が113.75mmある場合の曲線である。
【0047】
図5より、間隔d1が小さくなると照度が高くなることが分かる。また、被処理基板W1の中心から離れるほど照度が低下し、被処理基板W1の面内照度ばらつきが大きくなることが分かる。面内照度ばらつきが大きくなると、被処理基板W1の全体を均等に加熱処理できない。
【0048】
面内照度ばらつきを抑えるには、大きく二つの方法が考えられる。第一の方法は、間隔d1(発光素子3の重心位置と被処理基板W1との離間距離)を変化させる方法、つまり、被処理基板W1の中心に近い発光素子3の間隔d1を、被処理基板W1の中心から遠い発光素子3の間隔d1より大きくする方法である。第二の方法は、発光素子3の出力を変化させる方法、つまり、被処理基板W1の中心に近い発光素子3の出力を、被処理基板W1の中心から遠い発光素子3の出力より低下させる方法である。
【0049】
第一の方法と第二の方法を比較した結果を図6に示す。図6は、それぞれの方法で面内照度ばらつきを抑えた場合の、被処理基板W1の中心位置からの距離と照度との関係を示すグラフである。
【0050】
曲線C4は、各加熱源1について個別に間隔d1を変化させる方法で、面内照度ばらつきを抑えたグラフである。曲線C4の条件は、以下のように設定されている。図7は、下記のように間隔d1を設定したときの光加熱装置100を示している。
加熱源1の配置:図4に示す配置
加熱源1の個数:61個
被処理基板W1の大きさ:直径300mm
各加熱源の出力:全て100%(最大出力)
発光素子3と被処理基板W1の間隔d1に関し、
ゾーンZ1の間隔d1:63.75mm(ゾーンZ3,Z4より20mm高い)
ゾーンZ2の間隔d1:63.75mm(ゾーンZ3,Z4より20mm高い)
ゾーンZ3の間隔d1:43.75mm
ゾーンZ4の間隔d1:43.75mm
【0051】
曲線C5は、各加熱源1について、個別に発光素子3の出力を変化させる方法で、面内照度ばらつきを抑えたグラフである。曲線C5の条件は、以下のように設定されている。
加熱源1の配置:図4に示す配置
加熱源1の個数:61個
被処理基板W1の大きさ:直径300mm
発光素子3と被処理基板W1の間隔d1:全て43.75mm
各加熱源1の出力に関し、
ゾーンZ1の出力:定格最大出力の75%
ゾーンZ2の出力:定格最大出力の65%
ゾーンZ3の出力:100%(発光素子3の定格最大出力)
ゾーンZ4の出力:100%(発光素子3の定格最大出力)
【0052】
曲線C4と曲線C5を見ると、第一の方法及び第二の方法ともに、面内照度ばらつきが抑えられることが分かる。しかしながら、全体的に、曲線C4の照度は、曲線C5の照度より高い。つまり、面内照度ばらつきを抑えるためには、各加熱源1をゾーンごとに出力調整することよりも、各加熱源1の間隔d1のゾーンごとに調整することの方が、全体的に照度が向上してより好ましいことが分かる。
【0053】
上述の手法は、複数の加熱源1を複数のゾーンに分割し、ゾーンに属する加熱源1ごとに間隔d1又は加熱源1の出力を調整するものである。しかしながら、上述の手法は、各加熱源1の間隔d1又は出力を個別に調整するものであっても、同様の傾向が得られることが推測される。つまり、面内照度ばらつきを抑えるためには、各加熱源1を個別に出力調整することよりも、各加熱源1の間隔d1を個別に調整することの方が、全体的に照度が向上してより好ましい。
【0054】
よって、光加熱装置100が、各発光素子3と被処理基板W1との間隔d1を変更する間隔調整器20を備えることにより、各加熱源1の間隔d1を個別に調整し、面内照度ばらつきを縮小しつつ、全体的な照度向上を図ることができる。
【0055】
<第二実施形態>
光加熱装置の第二実施形態を、第一実施形態と異なる部分を中心に説明する。第一実施形態と共通する部分については説明を省略する。また、第三実施形態以降も同様である。図8は、第二実施形態の光加熱装置の要部を説明する図である。本実施形態の光加熱装置の加熱源1は、封体7の外側に、封体7とは接触しない反射体8を備える。本実施形態の反射体8は、中央に孔を有する略円錐形状であり、封体7を取り囲むように構成される。反射体8は、発光素子3の光を被処理基板W1に配向する。これにより、光の利用効率が向上する。図8では、反射体8の反射面は直線状(平坦)に描かれているが、反射体8の反射面は、放物形状又は楕円形状であってもよい。
【0056】
<第三実施形態>
図9は、第三実施形態の光加熱装置の要部を説明する図である。本実施形態の発光素子3のフィラメントは、垂直方向であるZ方向に延びる軸の回りを螺旋状に巻かれている(図9参照)。なお、第一実施形態において、発光素子3を構成するフィラメントは、水平方向に沿うY方向に延びる軸の回りを螺旋状に巻かれている(図2参照)。巻かれたフィラメントの延びる方向は、水平方向でも、水平方向に直交する方向でも、どちらでも構わない。図9に示されるように巻かれたフィラメントは、水平方向(XY方向)への光の出射が強く形成される傾向にあり、図2に示されるように巻かれたフィラメントは、上下方向(Z方向)への光の出射が強く形成される傾向にある。そのため、光の効率的な使用の点からは、水平方向に沿って螺旋状に巻く図2の方が好ましい。
【0057】
<第四実施形態>
図10は、第四実施形態の光加熱装置の要部を説明する図である。本実施形態の光加熱装置では、一つの光透過容器2に二つの加熱源1が入る。そして、本実施形態の光加熱装置は、二つの加熱源1が入る光透過容器2を、複数備える。このような光加熱装置は、一つの光透過容器2に一つの加熱源1が入る場合に比べて、構造が単純化されるという利点が得られる。また、本実施形態では、全ての加熱源1が入る単一の光透過容器に比べて、光透過容器2のサイズが小さくなる。そのため、本実施形態の光透過容器2の厚みを、全ての加熱源1が入る単一の光透過容器に比べて薄くできる。また、本実施形態では、光透過容器2の底が平坦である。
【0058】
<第五実施形態>
図11は、光加熱装置の第五実施形態を示す図である。光加熱装置400は、各光透過容器2のZ方向の長さが一律でない。そのため、光透過容器2の最下端と被処理基板W1の表面とのZ方向の間隔d3が、一律でない。間隔d3は、ゾーン(Z1~Z4)毎によって設定されている。光透過容器2の長さが長いと、加熱源1の変位幅が大きくなる。本実施形態では、外側のゾーンに向かうほど、長い光透過容器2を使用し、間隔d3を小さくしている。これにより、外側のゾーンに向かうほど、加熱源1の変位幅が大きくなる。
【0059】
本実施形態では、間隔調整器20の変形例を示す。支持棒22は、支持部21の貫通孔に挿入される。支持棒22はねじ20tを有する。支持部21は、ねじ20tがスライド可能な孔20hを有する。作業者がねじ20tを締めると、支持棒22が支持部21に押し付けられて、両者の摩擦力により支持棒22が支持部21に対して固定される。これにより、発光素子3と被処理基板W1の表面との間隔を所望の間隔にした状態で、発光素子3を固定できる。
【0060】
<第六実施形態>
図12は、光加熱装置の第六実施形態を示す図である。光加熱装置500の間隔調整器20は、発光素子3(加熱源1)をZ方向に変位させる駆動部20mと、駆動部20mを制御する制御部20cと、を有する。制御部20cは、発光素子3(加熱源1)に対向する被処理基板W1上の位置が被処理基板W1の中心から離間する距離に応じて、発光素子3を変位させる。
【0061】
制御部20cは、照度測定結果に基づいて、各加熱源1の間隔d1を調整する。駆動部20mは、エアシリンダや電磁アクチュエータにより構成されていてもよい。照度測定結果は、例えば、不図示の照度センサを使用して、被処理基板W1面内の各位置における照度を測定して得られる。
【0062】
以上で各実施形態及びその変形例を説明した。本発明は、上述の実施形態及びその変形例に限られず、上述の実施形態又は変形例を適宜組み合わせたり、さらなる変形を施したりできる。
【0063】
間隔調整器20は、上述した形態に限らない。さらなる変形例として、間隔調整器20は、全ての各加熱源1と被処理基板W1との間隔d1を変更するのではなく、一部の各加熱源1と被処理基板W1との間隔d1を変更するものであってよい。
【0064】
さらなる変形例として、光透過容器2の内部又は外部に、光を拡散、又は、配光するための光学要素(例えば、レンズ)を配置しても構わない。
【0065】
上記実施形態では、各々の加熱源1が、正六角形の頂点位置に配置されるハニカム構造型配置を開示したが、この配置は一例であって、他の配置態様であっても構わない。
【0066】
上記実施形態の光加熱装置は、搬送アームによる被処理基板の搬入及び搬出を前提とした真空チャンバを示しているが、上記実施形態の光加熱装置を、多数のローラ上を被処理基板が移動して搬入及び搬出を行う真空チャンバに適用しても構わない。
【符号の説明】
【0067】
1 :加熱源
2 :光透過容器
2f :フランジ
3 :発光素子
5 :真空チャンバ
5i :(真空チャンバの)内部
5o :(真空チャンバの)外部
6 :真空ポンプ
7 :封体
8 :反射体
9 :給電線
11 :筐体
11s :(筐体の)天井
12 :扉
13 :孔
14 :溝
15,16 :ヒンジ
17 :シール
20 :間隔調整器
20c :(駆動部を制御する)制御部
20k :ツマミ
20m :駆動部
20s :(支持棒の)ねじ部分
20t :ねじ
21 :支持部
22 :支持棒
23 :テーブル
24 :リフトピン
30 :(冷却流体の)配管
31 :(冷却流体を供給する)ノズル
100,400,500:光加熱装置
CF :冷却流体
W1 :被処理基板
Z1~Z4 :ゾーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12