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特開2024-53205シート製造装置、及び、シート製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053205
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】シート製造装置、及び、シート製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/732 20120101AFI20240408BHJP
【FI】
D04H1/732
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159306
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮内 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 聡
【テーマコード(参考)】
4L047
【Fターム(参考)】
4L047AA08
4L047AB06
4L047EA01
(57)【要約】
【課題】繊維等が水を貯蔵する部位に混入してカビ等が発生する。
【解決手段】シート製造装置は、繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成する堆積部と、ウェブを第1方向へ搬送する搬送部と、ウェブを加湿する加湿部と、加湿部により加湿されたウェブを加圧し、ウェブをシート状に圧縮する加圧部と、を備え、加湿部は、空気を取り入れる吸気口と、水を貯留するタンクと、水からミストを生成するミスト生成部と、ミスト及び空気をウェブへ向かって排気する排気口と、を有し、排気口の位置は、タンクの位置に対して第1方向、又は、第1方向の反対方向である第2方向へずれている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成する堆積部と、
前記ウェブを第1方向へ搬送する搬送部と、
前記ウェブを加湿する加湿部と、
前記加湿部により加湿された前記ウェブを加圧し、前記ウェブをシート状に圧縮する加圧部と、を備え、
前記加湿部は、
空気を取り入れる吸気口と、
水を貯留するタンクと、
前記水からミストを生成するミスト生成部と、
前記ミスト及び前記空気を前記ウェブへ向かって排気する排気口と、を有し、
前記排気口の位置は、前記タンクの位置に対して前記第1方向、又は、前記第1方向の反対方向である第2方向へずれている、シート製造装置。
【請求項2】
前記加湿部は、
前記タンクと前記排気口との間に設けられ、前記ミスト及び前記空気が通過するダクトを有する、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項3】
前記ダクトは、
前記タンクの上方に設けられ、前記第1方向又は前記第2方向へ延在する第1ダクトと、
前記第1ダクトと前記排気口との間に設けられ、前記第1方向又は前記第2方向と交わる第3方向へ延在する第2ダクトと、を有する、請求項2に記載のシート製造装置。
【請求項4】
前記第2ダクトの下部に位置するトレイを有する、請求項3に記載のシート製造装置。
【請求項5】
前記第1方向及び前記第2方向は水平方向であり、前記第3方向は鉛直方向である、請求項3に記載のシート製造装置。
【請求項6】
前記加湿部は、前記搬送部の下方に位置し、
前記排気口は、下方から前記搬送部に対向する位置に設けられている、請求項1に記載のシート製造装置。
【請求項7】
繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成し、
前記ウェブを第1方向へ搬送し、
前記ウェブを加湿し、
加湿された前記ウェブを加圧し、前記ウェブをシート状に圧縮するシート製造方法であって、
前記ウェブを加湿する際、
空気を取り入れ、
タンクに貯留された水からミストを生成し、
前記ミスト及び前記空気を、前記第1方向又は前記第1方向の反対方向である第2方向へ流した後、前記第1方向又は前記第2方向と交わる第3方向へ流して前記ウェブを加湿する、シート製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート製造装置、及び、シート製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、繊維を含む材料を堆積させてウェブを形成する堆積部と、ウェブを加湿する加湿部と、ウェブを搬送する搬送部と、ウェブを加圧する加圧部と、を含むシート製造装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-44284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のシート製造装置では、ウェブに含まれる繊維などが、加湿部の水を貯蔵する部位に混入してしまうおそれがあり、カビや雑菌などが発生する原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シート製造装置は、繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成する堆積部と、前記ウェブを第1方向へ搬送する搬送部と、前記ウェブを加湿する加湿部と、前記加湿部により加湿された前記ウェブを加圧し、前記ウェブをシート状に圧縮する加圧部と、を備え、前記加湿部は、空気を取り入れる吸気口と、水を貯留するタンクと、前記水からミストを生成するミスト生成部と、前記ミスト及び前記空気を前記ウェブへ向かって排気する排気口と、を有し、前記排気口の位置は、前記タンクの位置に対して前記第1方向、又は、前記第1方向の反対方向である第2方向へずれている。
【0006】
繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブを形成し、前記ウェブを第1方向へ搬送し、前記ウェブを加湿し、加湿された前記ウェブを加圧し、前記ウェブをシート状に圧縮するシート製造方法であって、前記ウェブを加湿する際、空気を取り入れ、タンクに貯留された水からミストを生成し、前記ミスト及び前記空気を、前記第1方向又は前記第1方向の反対方向である第2方向へ流した後、前記第1方向又は前記第2方向と交わる第3方向へ流して前記ウェブを加湿する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】シート製造装置の構成を示す模式図。
図2】加湿部の周辺の構成を示す一部拡大図。
図3】加湿部を示す斜視図。
図4】シート製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.シート製造装置の構成
本実施形態に係るシート製造装置1の構成について、図1図3を参照しながら説明していく。
なお、各図における方向を、三次元座標系を用いて説明する。説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向又は単に上と称し負方向を下方向又は単に下と称し、X軸の正方向を右方向又は単に右と称し負方向を左方向又は単に左と称し、Y軸の正方向を前方向又は単に前と称し負方向を後方向又は単に後と称して説明する。
【0009】
図1に示すように、シート製造装置1は、例えば、供給部10と、粗砕部11と、解繊部20と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、回転体49と、混合部50と、堆積部60と、ウェブ搬送部80と、加湿部90と、空気噴射部100と、シート形成部110と、切断部120と、を含んで構成される。シート製造装置1は、単票のシートSを製造する装置である。
さらに、シート製造装置1は、上記各部を統括的に制御する制御部(図示省略)を備える。制御部は、プロセッサー及びメモリーを含む。プロセッサーは、メモリーに記憶されているファームウェアを読み出して実行し、シート製造装置1の各部を制御する。
【0010】
供給部10は、粗砕部11に原料を供給する。供給部10は、例えば、粗砕部11に原料を連続的に投入するための自動投入部である。供給部10によって供給される原料は、各種繊維を含む材料である。
【0011】
繊維としては、特に限定されず、広範な繊維材料を用いることができる。繊維としては、天然繊維(動物繊維、植物繊維)、化学繊維(有機繊維、無機繊維、有機無機複合繊維)などを例示できる。繊維は、更に詳しくは、セルロース、絹、羊毛、綿、大麻、ケナフ、亜麻、ラミー、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、針葉樹、広葉樹等からなる繊維等が挙げられ、これらを単独で用いてもよいし、適宜混合して用いてもよいし、精製などを行った再生繊維として用いてもよい。
【0012】
繊維の原料としては、例えば、パルプ、古紙、古布等が挙げられる。また、繊維は、各種の表面処理がされていてもよい。また、繊維の材質は、純物質であってもよいし、不純物及びその他の成分など、複数の成分を含む材質であってもよい。また、繊維として、古紙やパルプシートなどを乾式で解繊した解繊物を用いてもよい。
【0013】
繊維の長さは、特に限定されないが、独立した1本の繊維で、その繊維の長手方向に沿った長さは、1μm以上5mm以下、好ましくは、2μm以上3mm以下、より好ましくは3μm以上2mm以下である。
【0014】
シート製造装置1では、後述のように、加湿部90においてウェブWに水分を付与するので、水素結合を形成する能力のある繊維を用いると、形成されるシートSの機械的強度を高めることができる。そのような繊維としては、セルロースが挙げられる。なお、以下では、加湿部90がウェブWに水分を付与することを加湿とも称する。
【0015】
シートSにおける繊維の含有量は、例えば、50質量%以上99.9質量%以下、好ましくは、60質量%以上99質量%以下、より好ましくは70質量%以上99質量%以下である。混合物を形成する際に配合を行うことで、このような含有量とすることができる。
【0016】
粗砕部11は、供給部10によって供給された原料を、大気中等の気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。粗砕部11は、粗砕刃12を有し、粗砕刃12によって、投入された原料を裁断することができる。粗砕部11としては、例えば、シュレッダーを用いる。粗砕部11によって裁断された原料は、ホッパー14で受けてから管15を介して、解繊部20に移送される。
【0017】
解繊部20は、粗砕部11によって裁断された原料を解繊する。ここで、「解繊する」とは、複数の繊維が結着されてなる原料を、繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、にじみ防止剤等の物質を、繊維から分離させる機能をも有する。
【0018】
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」には、解きほぐされた繊維の他に、繊維を解きほぐす際に繊維から分離した樹脂粒や、インク、トナーなどの色剤や、にじみ防止材、紙力増強剤等の添加剤を含んでいる場合もある。解きほぐされた解繊物の形状は、ひも状となっている。解きほぐされた解繊物は、他の解きほぐされた繊維と絡み合っていない状態、すなわち独立した状態で存在してもよいし、他の解きほぐされた解繊物と絡み合って塊状となった状態、いわゆるダマを形成している状態で存在してもよい。
【0019】
解繊部20は、乾式で解繊を行う。ここで、液体中ではなく、大気中等の気中において、解繊等の処理を行うことを乾式と称する。解繊部20としては、例えば、インペラーミルを用いる。解繊部20は、原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有する。これにより、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口22から原料を気流と共に吸引し、解繊処理して、解繊物を排出口24へと搬送することができる。解繊部20を通過した解繊物は、管16を介して、選別部40に移送される。なお、解繊部20から選別部40に解繊物を搬送させるための気流は、解繊部20が発生させる気流を利用してもよいし、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
【0020】
選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物を導入口42から導入し、繊維の長さによって選別する。選別部40は、例えば、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43と、を有する。ドラム部41としては、例えば、篩を用いる。ドラム部41は、網を有し、網の目開きの大きさより小さい繊維又は粒子、すなわち網を通過する第1選別物と、網の目開きの大きさより大きい繊維や未解繊片やダマ、すなわち網を通過しない第2選別物と、を分けることができる。例えば、第1選別物は、管17を介して、堆積部60に移送される。第2選別物は、排出口44から管18を介して、解繊部20に戻される。具体的には、ドラム部41は、モーター(図示省略)によって回転駆動される円筒の篩である。ドラム部41の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルを用いる。
【0021】
第1ウェブ形成部45は、選別部40を通過した第1選別物を、管17に搬送する。第1ウェブ形成部45は、例えば、メッシュベルト46と、張架ローラー47と、サクション機構48と、を有する。
【0022】
サクション機構48は、選別部40の開口を通過して空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積し、ウェブVを形成する。なお、ウェブVは、後述の結着剤が混合される前の状態となっている。
【0023】
メッシュベルト46には、選別部40の開口を通過した第1選別物が堆積される。メッシュベルト46は、張架ローラー47によって張架され、第1選別物を通し難く空気を通す構成である。メッシュベルト46は、張架ローラー47が自転することによって移動する。メッシュベルト46が連続的に移動しながら、選別部40を通過した第1選別物が連続的に降り積もることにより、メッシュベルト46上にウェブVが形成される。
【0024】
サクション機構48は、メッシュベルト46の下方に設けられている。サクション機構48は、下方に向く気流を発生させることができる。サクション機構48によって、選別部40により空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引することができる。これにより、選別部40からの排出速度を大きくすることができる。
【0025】
ウェブVは、選別部40及び第1ウェブ形成部45を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。メッシュベルト46に堆積されたウェブVは、管17へ投入され、堆積部60へと搬送される。
【0026】
回転体49は、ウェブVを切断する。図1の例では、回転体49は、基部49aと、基部49aから突出している突部49bと、を有する。突部49bは、例えば、板状の形状を有する。突部49bは4つ設けられ、4つの突部49bが等間隔に設けられる。基部49aが方向Rに回転することにより、突部49bは、基部49aを軸として回転することができる。回転体49によってウェブVを切断することにより、例えば、堆積部60に供給される単位時間当たりの繊維量の変動を小さくすることができる。
【0027】
回転体49は、第1ウェブ形成部45の近傍に設けられる。図1の例では、回転体49は、ウェブVの経路において下流側に位置する張架ローラー47aの近傍に設けられる。回転体49は、突部49bがウェブVと接触可能な位置であって、ウェブVが堆積されるメッシュベルト46と接触しない位置に設けられる。これにより、メッシュベルト46が突部49bによって摩耗することを抑制することができる。突部49bとメッシュベルト46との間の最短距離は、例えば、0.05mm以上0.5mm以下である。これは、メッシュベルト46が損傷を受けずにウェブVを切断することが可能な距離である。
【0028】
混合部50は、例えば、選別部40を通過した第1選別物と、結着剤と、を混合する。混合部50は、例えば、結着剤を供給する結着剤供給部52と、第1選別物と結着剤とを搬送する管54と、ブロアー56と、を有する。結着剤は、結着剤供給部52からホッパー19を介して管54に供給される。管54は、管17に接続される。
【0029】
混合部50では、ブロアー56によって気流を発生させ、管54中において、第1選別物と結着剤とを混合させながら、搬送することができる。なお、第1選別物と結着剤とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、V型ミキサーのように容器の回転を利用するものであってもよい。
【0030】
結着剤供給部52としては、スクリューフィーダーや、ディスクフィーダーなどを用いる。
【0031】
結着剤供給部52から供給される結着剤は、例えば、澱粉またはデキストリンである。澱粉は、複数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子である。澱粉は、直鎖状であってもよいし、分岐を含んでもよい。
【0032】
澱粉は、各種植物由来のものを用いることができる。澱粉の原料としては、トウモロコシ、小麦、米等の穀類、ソラマメ、緑豆、小豆等の豆類、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ等のイモ類、カタクリ、ワラビ、葛等の野草類、サゴヤシ等のヤシ類が挙げられる。
【0033】
また、澱粉として加工澱粉、変性澱粉を用いてもよい。加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸物エステル化リン酸架橋澱粉、尿素リン酸化エステル化澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、高アミロースコーンスターチ等が挙げられる。また、変性澱粉としてのデキストリンは、澱粉を加工又は変性して得られるものを好適に用いることができる。
【0034】
シート製造装置1において、結着剤として澱粉またはデキストリンを用いることにより、水分が付与された後に加圧加熱されることで、結着剤の糊化、及び、繊維間の水素結合の少なくとも一方が生じ、シートSに十分な強度を持たせることができる。一方、繊維間の水素結合のみでシートSに十分な強度を持たせることができる場合は、結着剤を用いずにシートSを製造することもできる。なお、結着剤を用いずにシートSを製造する場合、シート製造装置1は結着剤供給部52を備えていなくてもよい。
【0035】
シートSにおける澱粉またはデキストリンの含有量は、例えば、0.1質量%以上50質量%以下、好ましくは、1質量%以上40質量%以下、より好ましくは1質量%以上30質量%以下である。混合物を形成する際に配合を行うことで、このような含有量とすることができる。
【0036】
なお、結着剤供給部52では、結着剤に加え、製造されるシートSの種類に応じて、繊維を着色するための着色剤や、繊維の凝集や結着剤の凝集を抑制するための凝集抑制剤、繊維等を燃え難くするための難燃剤が含まれていてもよい。混合部50を通過した混合物は、管54を介して、堆積部60に移送される。
【0037】
堆積部60は、混合部50を通過した混合物を導入口62から導入し、絡み合った繊維をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
【0038】
堆積部60は、例えば、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63と、を有する。ドラム部61としては、回転する円筒の篩を用いる。ドラム部61は、網を有し、混合部50を通過した混合物に含まれる、網の目開きの大きさより小さい繊維又は粒子を降らせる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部41の構成と同じである。
【0039】
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。すなわち、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らしてもよい。
【0040】
堆積部60は、第2ウェブ形成部70を備える。第2ウェブ形成部70は、ドラム部61を通過した混合物を堆積して、ウェブWを形成する。第2ウェブ形成部70は、例えば、第1メッシュベルト72と、張架ローラー74と、サクション機構76と、を有する。
【0041】
第1メッシュベルト72には、堆積部60の開口を通過した混合物が堆積される。第1メッシュベルト72は、張架ローラー74によって張架され、混合物を通し難く空気を通す構成である。第1メッシュベルト72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。第1メッシュベルト72が連続的に移動しながら、堆積部60を通過した混合物が連続的に降り積もることにより、第1メッシュベルト72上にウェブWが形成される。
【0042】
サクション機構76は、第1メッシュベルト72の下方に設けられる。サクション機構76は、下方に向く気流を発生させることができる。サクション機構76によって、ドラム部61により空気中に分散された混合物を第1メッシュベルト72上に吸引することができる。これにより、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に繊維や結着剤が絡み合うことを防ぐことができる。
【0043】
以上のように、堆積部60は、繊維を含む材料を気流によって堆積させてウェブWを形成することができる。堆積部60を経ることにより、繊維等に結着剤が混合され、空気を多く含み柔らかく膨らんだ状態のウェブWが形成される。
【0044】
第1メッシュベルト72上におけるウェブWの下流側には、搬送部であるウェブ搬送部80が配置される。ウェブ搬送部80は、第1メッシュベルト72上のウェブWを、第1方向である搬送方向Tへ向かって搬送する。具体的には、ウェブ搬送部80は、ウェブWを第1メッシュベルト72から剥がしてシート形成部110に向けて搬送する。なお、図1において、搬送方向は前方向であり、搬送方向の反対方向は後方向である。
図2に示すように、ウェブ搬送部80は、搬送ベルトとしての第2メッシュベルト81と、複数のローラー82と、吸引部としてのサクション機構83と、を有する。第2メッシュベルト81は、複数のローラー82によって張架され、後述のミスト及び空気を通すことができる構成となっている。第2メッシュベルト81は、ローラー82の自転により回転駆動可能に構成される。
【0045】
サクション機構83は、第2メッシュベルト81を挟んでウェブWに対して上方から対向する位置に配置される。サクション機構83は、複数の吸気ファン86を備え、吸気ファン86の吸引力によって、ウェブWに接触する第2メッシュベルト81に上向きの気流を発生させる。この気流によってウェブWを上方から吸引する。
さらに詳細には、サクション機構83は、後述のミスト及び空気を吸引するための複数の吸引口84を有する。また、サクション機構83は、複数の吸引口84にそれぞれ接続された吸引ダクト85を有する。
吸引ダクト85は、吸引口84を形成する壁部によって区画される。複数の吸引口84にそれぞれ接続された吸引ダクト85により、ウェブWに対する吸引量を安定させることができる。
【0046】
ウェブ搬送部80により、ウェブWを第1メッシュベルト72から剥がし、第1メッシュベルト72から剥がされたウェブWの上面である一方面Waを、第2メッシュベルト81に接触させて、搬送方向Tへ搬送することができる。そして、ウェブWは、一方面Waが第2メッシュベルト81に接触して保持された状態で、搬送方向Tへ搬送される。このとき、サクション機構83は、第2メッシュベルト81を介して、一方面Waから安定的にウェブWを吸引することができる。
【0047】
ところで、シート製造装置1の構成は同じではあるが、説明の便宜上、図1に対して図2は、Y軸の正方向を逆にして示している。すなわち、図1はシート製造装置1を左から見た図であるのに対し、図2はシート製造装置1の加湿部90を右から見た図となっている。例えば、図1ではウェブWの搬送方向Tが図に向かって右を示しているのに対し、図2では搬送方向Tが図に向かって左を示すように表示される。図3も、図2と同方向に加湿部90を示している。
【0048】
図2に示すように、加湿部90は、下部がケース99で覆われ、上部はダクト91で覆われている。加湿部90は、吸気口である空気吸気口95a、タンク96、ミスト生成部である圧電振動子97、ダクト91を含んで構成される。ダクト91は、排気口93aを有する。
図2を参照しながら、流路Fの上流から下流に従って、加湿部90の構成について説明していく。なお、加湿部90における流路Fに沿った空気A等の流れは、加湿部90の上方向に位置するサクション機構83による吸引力に基づき発生する。また、流路Fは、上流から下流へ向かって、空気流路F1、第1流路F2、第2流路F3を含んでいる。
【0049】
空気ダクト95は、空気Aを空気吸気口95aから取り入れ、ウェブWの搬送方向Tの反対方向へ向かう空気流路F1に沿って流し、空気排気口95bから排気する。空気吸気口95aは、空気Aを搬送方向Tの反対方向へスムーズに流せるように、ケース99の前の面に開口されている。なお、ウェブWの搬送方向Tの反対方向が第2方向である。すなわち、第2方向は第1方向の反対方向である。
タンク96は、水Lを貯留可能である。空気排気口95bから排気された空気Aは、タンク96に貯留された水Lの水面へ向かって流れる。空気排気口95bは、空気Aを、タンク96の水Lの水面へ向かってスムーズに流せるように、空気ダクト95の後下に開口されている。
【0050】
タンク96の底部には、水LからミストMを生成する圧電振動子97が配置される。圧電振動子97が駆動されて振動し、水L中に超音波が発生して水LからミストMが生成される。生成されたミストMは、タンク96の水Lの水面から立ち昇る。なお、ミストMを生成する具体的な構成は、圧電振動子97のような超音波方式でなくてもよく、例えば、スチーム式、気化式、温風気化式などでもよい。
タンク96の水Lの水面から立ち昇るミストMは、空気排気口95bから水Lの水面へ向かって流される空気Aに乗り、空気A及びミストMが含まれた状態となる。以下では、空気A及びミストMが含まれたものを、加湿空気MAと称する。
【0051】
タンク96及び排気口93aとの間に、加湿空気MAが通過するダクト91が設けられる。ダクト91は、第1流路F2を形成する第1ダクト92、及び、第2流路F3を形成する第2ダクト93を含んで構成される。
第1ダクト92は、タンク96の上方に設けられ、ウェブWの搬送方向Tへ延在する。第2ダクト93は、第1ダクト92と排気口93aとの間に設けられ、ウェブWの搬送方向Tと交わる方向へ延在する。なお、ウェブWの搬送方向T又は搬送方向Tの反対方向と交わる方向が第3方向である。すなわち、第3方向は、第1方向又は第2方向と交わる方向である。また、ウェブWの搬送方向T、及び、搬送方向Tの反対方向は、例えば、水平方向である。ウェブWの搬送方向Tと交わる方向は、例えば、鉛直方向である。
【0052】
第1ダクト92は、第1流路F2の上流では、タンク96の上方において膨らむような形状をし、第1流路F2の下流では、ウェブWの搬送方向Tである第2ダクト93へ向かう形状をしている。そして、第1ダクト92は、第2ダクト93へ向かって、高さが低くなるような形状をしている。このような形状により、第1ダクト92は、タンク96の上方にチャンバーCを形成する。
加湿空気MAは、タンク96の水Lの水面から第1ダクト92の壁に沿って上方へ向かった後、第1ダクト92のチャンバーCで渦状に巻きながら屈曲し、搬送方向Tへ向かう第1流路F2に沿って、流される。加湿空気MAは、チャンバーCで渦状に巻かれるとき、特に流速が速くなる。
このように、少なくとも第1ダクト92の第1流路F2の一部の方向は、搬送方向Tであって、空気流路F1の方向に対して反対方向となる。
【0053】
次に、加湿空気MAは、第1ダクト92に接続された第2ダクト93により、搬送方向Tへ向かう第1流路F2から、搬送方向Tと交わる方向である上方へ向かう第2流路F3に沿って、方向を変えながら流される。
加湿空気MAは、第2ダクト93の上方に形成された排気口93aから、上方のウェブWへ向かって排気される。
【0054】
加湿部90は、ウェブ搬送部80の下方に位置する。加湿部90の排気口93aは、下方からウェブ搬送部80に対向する位置に設けられている。具体的には、排気口93aは、ウェブWを介して、ウェブ搬送部80の第2メッシュベルト81と対向するように配置される。
この結果、加湿部90は、排気口93aからウェブWの他方面Wbへ向かって加湿空気MAを排気することができる。排気口93aから排気された加湿空気MAは、第2メッシュベルト81に一方面Waが接触しているウェブWの他方面Wbから加湿することができる。
【0055】
このように、ウェブ搬送部80の下方に位置する加湿部90は、第2ダクト93の上端に形成された排気口93aにより、ウェブWの下方から加湿空気MAを排気して加湿することができる。このため、加湿部90やその付近に結露が発生した場合でも、水滴がウェブWに落下することがない。
この結果、ウェブWに対する加湿が不均一となることを抑制することができ、シートSの品質に影響を及ぼすことを抑制することができる。
加湿部90において加湿されるウェブWの含水率は、好ましくは12質量%以上40質量%以下である。加湿部90は、規定のウェブWの含水率にすることにより、繊維間の水素結合を効果的に形成でき、シートSの強度を増加させることができる。
【0056】
ところで、ウェブWは、後述のシート形成部110により加圧又は加熱されるなどの圧着される前の状態であり、空気を多く含み柔らかく膨らんだ状態である。繊維を含む材料などがウェブWから分離し、落下や浮遊することがある。
加湿部90により加湿されるウェブWは、サクション機構83により上方から吸引され、第2メッシュベルト81に接触しながら、ウェブ搬送部80により搬送される。このとき、ウェブWは、下方から支持するものがない状態となっている。従って、繊維等がウェブWから分離し、落下や浮遊することがある。
落下や浮遊する繊維等は、排気口93aを介して加湿部90内へ進入することがある。繊維等が加湿部90内へ進入し、タンク96に至って水Lに混入すると、カビや雑菌などが発生する原因となる。
【0057】
上述のように、本実施形態では、タンク96及び排気口93aとの間に、第1ダクト92及び第2ダクト93を含むダクト91が設けられる。第1ダクト92は、タンク96の上方に設けられ、ウェブWの搬送方向Tへ延在する。第2ダクト93は、第1ダクト92と排気口93aとの間に設けられ、ウェブWの搬送方向Tと交わる方向へ延在する。
この結果、図2に示すように、排気口93aの位置は、タンク96の位置に対して搬送方向Tへずれている。排気口93aから加湿部90内に進入してくる繊維等は、第2流路F3の加湿空気MAの上方向への流れに逆らいながら、第2ダクト93の下部へ落下することになる。
【0058】
排気口93aの位置はタンク96の位置に対して搬送方向Tへずれているため、排気口93aから進入する繊維等は、タンク96へ直接落下するおそれはない。また、繊維等は、加湿空気MAの第2流路F3の流れに逆らいながら落下する際、加湿空気MAにより加湿される。落下した繊維等は、水分を含み、重くなる上、第2ダクト93の下部に貼り付くなどして、さらに搬送方向Tの反対方向にあるタンク96へ移動することが抑制される。
その上、第1ダクト92には、加湿空気MAが搬送方向Tへ向かう第1流路F2の流れがある。第1流路F2の流れは、第2ダクト93の下部へ落下した繊維等がタンク96へ向かう方向とは逆方向となる。第1流路F2の流れにより、繊維等がタンク96へ向かうことを抑制することができる。
この結果、加湿部90は、繊維等がタンク96に至って水Lに混入することを抑制することができ、タンク96内にカビや雑菌などが発生することを抑制することができる。
【0059】
図2に示すように、加湿部90は、第2ダクト93の下部に位置するトレイ98を有するようにしてもよい。具体的には、トレイ98は、第2ダクト93を介して、排気口93a及びウェブ搬送部80に対向するように、加湿部90内に配置される。
排気口93aから落下して加湿部90内に進入してくる繊維等は、第2ダクト93を通過してトレイ98で受け取られ、捕捉される。繊維等は、トレイ98により捕捉され、タンク96へ至ることが抑制される。
トレイ98は、シート製造装置1から取り出すことができ、トレイ98に溜まった繊維等を除去することができる。
【0060】
図3に示すように、加湿部90の排気口93aは、矩形形状をしている。排気口93aにはアルミニウムなどの金網で構成されたメッシュ面93bで覆われる。メッシュ面93bにより、排気口93aへの繊維等の進入を抑制することができる。
【0061】
ここで、サクション機構83について、より詳しく説明する。サクション機構83は、第2メッシュベルト81を挟んで加湿部90と対向する位置に配置される。そして、サクション機構83の吸引口84と加湿部90の排気口93aとが互いに対面するように配置される。そして、加湿部90の排気口93aから排気された加湿空気MAを、吸引ダクト85が吸引する。このようにして、排気口93aから排気された加湿空気MAは、排気口93aに対面して配置された吸引口84から吸引ダクト85を通じて吸引される。加湿空気MAはウェブWを介して吸引口84に吸引されるので、ウェブWの厚み方向における水分量を均一化できる。
【0062】
また、複数の吸引口84は、それぞれ対応する吸引ダクト85に接続されており、それぞれ独立して機能することができる。サクション機構83は、排気口93aの直上のウェブWを通過する加湿空気MAの風量を一定とすることができる。これにより、ウェブWの厚み方向における水分量が均一化され、シートSの強度のばらつきを抑え、シートSの品質を確保することができる。
また、吸引ダクト85は、吸気によってウェブWを第2メッシュベルト81に密着させることができる。従って、サクション機構83は、ウェブWを第1メッシュベルト72から剥がして第2メッシュベルト81に吸着させる機能を備える。
【0063】
なお、図1図3に示す加湿部90は、前後方向に対して、対称となるように構成されてもよい。すなわち、タンク96が排気口93aよりも前方向に配置されるように構成されてもよい。
この場合、空気吸気口95aは、ケース99の後の面に開口される。空気ダクト95は、空気Aを空気吸気口95aから取り入れ、ウェブWの搬送方向Tへ向かう空気流路F1に沿って流し、空気排気口95bから、ケース99内の前に位置するタンク96へ排気する。ケース99内の前に位置する圧電振動子97により、タンク96に貯留された水LからミストMが生成される。
【0064】
そして、第1ダクト92は、ウェブWの搬送方向Tの反対方向へ延在する構成となる。少なくとも第1ダクト92が形成する第1流路F2の一部の方向は、搬送方向Tの反対方向となる。
第1ダクト92に接続された第2ダクト93は、ウェブWの搬送方向Tの反対方向と交わる方向へ延在する。第2ダクト93により、搬送方向Tとの反対方向と交わる方向である上方へ向かう第2流路F3に沿って、加湿空気MAは方向を変えて流される。
【0065】
なお、加湿部90が前後方向に対称となるように構成されても、加湿空気MAは、第2ダクト93の上方に形成された排気口93aから上方へ向かって排気され、ウェブWを加湿することができる。
また、排気口93aの位置は、タンク96の位置に対して搬送方向Tの反対方向へずれることとなる。この結果、加湿部90は、繊維等がタンク96に至って水Lに混入することを抑制することができ、タンク96内にカビや雑菌などが発生することを抑制することができる。
【0066】
次に、図1に示すように、ウェブ搬送部80及び加湿部90の搬送方向Tの下流には、シート形成部110が配置される。加湿されたウェブWは、シート形成部110へと搬送される。
【0067】
ウェブ搬送部80におけるシート形成部110側に位置する端部に、空気噴射部100が設けられる。空気噴射部100は、ウェブWに対して圧縮空気を噴射する。
図2に示すように、空気噴射部100は、ウェブ搬送部80における複数のローラー82の中でシート形成部110に最も近い位置に設けられた出口側ローラー82aに隣接する位置に設けられる。さらに詳細には、空気噴射部100は、サクション機構83の搬送方向Tの下流端部と出口側ローラー82aとの間に配置される。これにより、第2メッシュベルト81からウェブWを効率よく剥がすことができる。
【0068】
空気噴射部100は、空気を圧縮する圧縮部(図示省略)と、圧縮された空気を排気するノズル101とを有する。ノズル101は、出口側ローラー82aに隣接する位置であり、かつ第2メッシュベルト81と対面する位置に設けられる。これにより、第2メッシュベルト81から剥がれたウェブWをシート形成部110に搬送させることができる。
ノズル101は、細長の開口を有する。そして、ノズル101は、ウェブWの第2メッシュベルト81に接触している一方面Waに対して圧縮空気を噴射する。
【0069】
ウェブ搬送部80の第2メッシュベルト81に接触しながら搬送されるウェブWは、加湿部90によって水分を付与されるので、第2メッシュベルト81に対する粘着力が高まり、第2メッシュベルト81にウェブWが張り付いてしまう。そして、第2メッシュベルト81から重力のみでウェブWが剥がれない場合、ウェブWがシート形成部110に円滑に搬送されず、ウェブWの搬送不良やウェブWに損傷が発生してしまう。
本実施形態によれば、シート形成部110の搬送方向Tの手前でウェブWに向けて圧縮空気を噴射することで、第2メッシュベルト81は下方に向けて押し圧される。これにより、ウェブWが第2メッシュベルト81から剥離され、ウェブWを円滑にシート形成部110に引き渡すことができる。従って、ウェブWの搬送不良やウェブの損傷を抑制できる。
【0070】
加圧部であるシート形成部110は、加湿され、第2メッシュベルト81から剥がされたウェブWに対して、加圧の処理を行うことによりシート状に圧縮したシートSを形成することができる。
シート形成部110は、加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理を行うように構成してもよい。シート形成部110は、加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理を行うことにより、シートSを形成することができる。
シート形成部110は、加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理を行うことにより、結着剤を介して複数の繊維同士を結着させ、シート状に圧縮したシートSを形成することができる。
【0071】
例えば、本実施形態のシート形成部110は、加湿されたウェブWを加圧すると同時に加熱するように構成される。これにより、ウェブWに含まれる水分が温度上昇した後に蒸発するとともに、ウェブWの厚さが薄くなって繊維密度が高められる。
熱により水分と結着剤とが温度上昇し、圧力により繊維密度が高まることにより、結着剤が糊化し、その後水分が蒸発することにより糊化した結着剤を介して複数の繊維同士が結着する。さらに、熱により水分が蒸発し、圧力により繊維密度が高まることにより、水素結合によって複数の繊維が結着する。これにより、機械的強度がより良好なシート状のシートSを形成することができる。なお、シート形成部110により形成されたシートSは、連続したシート状となっている。
【0072】
本実施形態のシート形成部110は、具体的には、ウェブWを加圧加熱する加圧加熱部114を有する。加圧加熱部114は、例えば、加熱ローラー、熱プレス成形機を用いて構成できる。加圧加熱部114は、加熱ローラー対116で構成される。
加熱ローラー対116では、ウェブWの温度が、60℃以上100℃以下となるように加熱する。また、加熱ローラー対116によって、ウェブWに対して圧力を加え、ウェブWを薄くし、ウェブWにおける繊維密度が高まる。ウェブWに加えられる圧力は、好ましくは0.1Mpa以上15MPa以下、より好ましくは0.2Mpa以上10MPa以下、さらに好ましくは0.4Mpa以上8MPa以下である。
このような圧力の範囲であれば、繊維の劣化が抑制でき、製造したシートSを解繊した解繊物を原料にして再び強度の良好なシートSを製造することができる。
なお、加熱ローラー対116の数は、特に限定されない。加熱ローラー対116により、ウェブWに対して加圧及び加熱を同時に行うことができる。また、シート製造装置1の構成を簡素化できる。
また、シート形成部110は、加圧ローラーや搬送ベルト(例えば、メッシュベルト)を含む構成であってもよい。
【0073】
図1に示すように、切断部120は、連続したシート状のシートSを切断する。切断部120は、シートSの搬送方向Tと交差する方向にシートSを切断する第1切断部122と、搬送方向Tに平行な方向にシートSを切断する第2切断部124と、を有する。第2切断部124は、第1切断部122を通過したシートSを切断する。
以上により、所定のサイズの単票のシートSが製造される。切断された単票のシートSは、排出受け部130に排出される。
【0074】
2.シート製造方法
次に、本実施形態に係るシート製造装置1によるシート製造方法について、図4のフローチャートに示す工程を参照しながら説明する。なお、当該シート製造方法を実施するシート製造装置1の構成については、図1図3を用いて説明した、上述の通りである。また、制御部が各部を制御することにより各工程が実行される。
【0075】
シート製造装置1において、供給部10により繊維等の材料を供給する(S110)。シート製造装置1は、供給された材料を、粗砕部11により裁断し、解繊部20により解繊し、選別部40により選別し、混合部50により結着剤と混合し、堆積部60のサクション機構76の気流により堆積して、ウェブWを形成する(S120)。
シート製造装置1のウェブ搬送部80は、第2メッシュベルト81を介してサクション機構83により上方からウェブWを吸引しつつ、複数のローラー82により搬送方向Tへ搬送する(S130)。
【0076】
シート製造装置1の加湿部90によりウェブWを加湿する工程(S140)は、具体的には以下の工程を含む。
加湿部90の空気ダクト95は、空気Aを空気吸気口95aから取り入れ(S141)、ウェブWの搬送方向Tの反対方向へ向かう空気流路F1に沿って、タンク96に貯留された水Lの水面へ向かって流す。タンク96の底部に配置された圧電振動子97により、水LからミストMを生成する(S142)。
【0077】
タンク96の上方に設けられた第1ダクト92により、空気A及びミストMを含む加湿空気MAを搬送方向Tへ向かう第1流路F2に沿って流す(S143)。
その後、第1ダクト92に接続された第2ダクト93により、加湿空気MAを搬送方向Tと交わる方向である上方へ向かう第2流路F3に沿って流して(S144)、排気口93aからウェブWへ排気し、加湿する。
【0078】
次に、シート形成部110により、加湿部90で加湿されたウェブWに対して加圧の処理を行い(S150)、シートSを形成する。なお、シート形成部110は、ウェブWに対して加熱及び加圧のうち少なくとも一方の処理を行うことでシートSを形成するようにしてもよい。このとき、シートSは連続したシート状となっている。
切断部120により、連続したシート状のシートSを切断し、所定のサイズの単票のシートSが製造される(S160)。
【0079】
このように、加湿する工程において、加湿空気MAを搬送方向Tへ流した後、搬送方向Tと交わる方向へ流してウェブWを加湿する。搬送方向T、及び、搬送方向Tと交わる方向は、互いに屈曲する方向である。加湿する工程により、加湿部90内へ落下した繊維等が、これらの屈曲する加湿空気MAの流れに逆らって、タンク96に至ることを抑制することができる。
特に、搬送方向Tへの加湿空気MAの流れに逆らって、搬送方向Tの反対方向へ、繊維等が移動することを抑制できる。搬送方向Tの反対方向は、タンク96へ向かう方向であり、水平方向である。繊維等が搬送方向Tの反対方向へ移動するように作用する外力が存在していない状態となっている。
この結果、繊維等がタンク96に至って水Lに混入することを抑制することができ、カビや雑菌などが発生することを抑制することができる。
【0080】
なお、シート製造装置1によるシート製造方法の場合も、上述のシート製造装置1の場合と同様に、図1図3に示す加湿部90は、前後方向に対して対称となるように構成されてもよい。すなわち、この構成の場合、排気口93aの位置は、タンク96の位置に対して搬送方向Tの反対方向へずれることとなる。
また、この構成の場合、空気ダクト95は、後の面に位置する空気吸気口95aから空気Aを取り入れ、ウェブWの搬送方向Tへ向かう空気流路F1に沿って流す。第1ダクト92は、搬送方向Tと反対方向へ向かう第1流路F2に沿って加湿空気MAを流す。その後、第2ダクト93は、搬送方向Tの反対方向と交わる方向である上方へ向かう第2流路F3に沿って加湿空気MAを流す。空気ダクト95の空気流路F1、及び、第1ダクト92の第1流路F2の方向は、図2図3に対して逆方向となる。
この構成の場合も、図1図3に示す加湿部90の場合と同様に、繊維等がタンク96に至って水Lに混入することを抑制することができ、カビや雑菌などが発生することを抑制することができる。
【0081】
以上の実施形態によれば、シート製造装置1において、排気口93aの位置は、タンク96の位置に対して搬送方向T又は搬送方向Tの反対方向へずれている。圧電振動子97によりタンク96で発生した加湿空気MAは、搬送方向T又は搬送方向Tの反対方向へ流れた後、搬送方向T又は搬送方向Tの反対方向と交わる方向へ流れて、排気口93aから排気され、ウェブWを加湿する。
この結果、繊維等がタンク96に至って水Lに混入することを抑制することができ、カビや雑菌などが発生することを抑制することができる。
【符号の説明】
【0082】
1…シート製造装置、10…供給部、60…堆積部、80…ウェブ搬送部、81…第2メッシュベルト、82…ローラー、83…サクション機構、84…吸引口、85…吸引ダクト、90…加湿部、91…ダクト、92…第1ダクト、93…第2ダクト、93a…排気口、93b…メッシュ面、95…空気ダクト、95a…空気吸気口、96…タンク、97…圧電振動子、98…トレイ、110…シート形成部、114…加圧加熱部、120…切断部、A…空気、F…流路、F1…空気流路、F2…第1流路、F3…第2流路、L…水、M…ミスト、MA…加湿空気、T…搬送方向、W…ウェブ、Wa…一方面、Wb…他方面、S…シート。
図1
図2
図3
図4