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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053207
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ヘッドユニット
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
B41J2/14 611
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159308
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 秀
(72)【発明者】
【氏名】宮岸 暁良
【テーマコード(参考)】
2C057
【Fターム(参考)】
2C057AF31
2C057AM17
2C057AN01
2C057AN05
2C057AR03
2C057AR14
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】印刷された画像にスジ状の濃淡むらが発生することを抑制する。
【解決手段】ヘッドユニット3は、ラッチ信号LATを受けて動作する4個の吐出ブロックBLを備え、4個の吐出ブロックBLの各々は、ラッチ信号LATを遅延させた遅延ラッチ信号LATd1を出力する遅延回路DL1と、遅延ラッチ信号LATd1を遅延させた遅延ラッチ信号LATd2を出力する遅延回路DL2と、ラッチ信号LATに応じたタイミングで吐出部D[1]に駆動信号COMを供給するか否かを切り替える選択回路SL[1]と、遅延回路DL1から出力された遅延タイミング信号LATd1に応じたタイミングで吐出部D[26]に駆動信号COMを供給するか否かを切り替える選択回路SL[26]と、を含み、互いに隣接する2個の吐出ブロックBLは、端部ED1及びED2のうち、互いに異なる端部EDから配線Ltを介してラッチ信号LATを受ける。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイミング信号を伝達する信号配線と、
第1方向に沿って順番に配置され前記タイミング信号を受けて動作する第1吐出ブロック、第2吐出ブロック、第3吐出ブロック及び第4吐出ブロックを含む複数の吐出ブロックと、
を備え、
前記吐出ブロックは、
前記第1方向に沿って配置され駆動信号に応じて液体を吐出する複数の吐出部と、
前記タイミング信号を遅延させた第1遅延タイミング信号を出力する第1遅延回路、及び、前記第1遅延タイミング信号を遅延させた第2遅延タイミング信号を出力する第2遅延回路を含む複数の遅延回路と、
前記信号配線に伝達された前記タイミング信号に応じたタイミングで、前記複数の吐出部のうちの第1吐出部に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える第1選択回路、前記第1遅延回路から出力された前記第1遅延タイミング信号に応じたタイミングで、前記複数の吐出部のうちの第2吐出部に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える第2選択回路、及び、前記第2遅延回路から出力された前記第2遅延タイミング信号に応じたタイミングで、前記複数の吐出部のうちの第3吐出部に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える第3選択回路を含む複数の選択回路と、
を含み、
前記複数の吐出ブロックのうちの互いに隣接する前記吐出ブロックは、
互いに異なる端部から前記信号配線を介して前記タイミング信号を受ける、
ことを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
ラインプリンターに搭載して用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項3】
24インチ以上のシリアルプリンターに搭載して用いられる、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項4】
前記吐出ブロックに含まれる前記複数の吐出部は、100個以上の吐出部である、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項5】
異なる吐出ブロックに含まれた、隣接する2個の吐出部における前記液体の吐出タイミングは等しい、
ことを特徴とする請求項1に記載のヘッドユニット。
【請求項6】
前記第1吐出ブロック及び前記第2吐出ブロックに含まれる全ての吐出部のうち、互いに異なる吐出ブロックに含まれ、かつ互いに隣接する2個の吐出部における前記液体の吐出タイミングは、互いに等しく、
前記第2吐出ブロック及び前記第3吐出ブロックに含まれる全ての吐出部のうち、互いに異なる吐出ブロックに含まれ、かつ互いに隣接する2個の吐出部における前記液体の吐出タイミングは、互いに等しく、
前記第3吐出ブロック及び前記第4吐出ブロックに含まれる全ての吐出部のうち、互いに異なる吐出ブロックに含まれ、かつ互いに隣接する2個の吐出部における前記液体の吐出タイミングは、互いに等しい、
ことを特徴とする請求項5に記載のヘッドユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルからインク等の液体を吐出して媒体に画像を形成するインクジェットプリンター等の液体吐出装置が知られている。例えば、特許文献1には、インクジェット式のラインプリンターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-71502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インクジェットプリンターでは、高速化及び大判化等に対応するために、所定方向に沿って列状に配置された複数のノズルを含む複数のノズルブロックが所定方向に配置されるヘッドユニットが用いられる場合がある。この場合、印刷された画像において、ノズルブロックの境界に対応する位置にスジ状の濃淡むらが発生するおそれがある。このため、液体吐出装置では、高速化及び大判化等に対応した場合においても、印刷された画像にスジ状の濃淡むらが発生することを抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、本発明に係るヘッドユニットは、タイミング信号を伝達する信号配線と、第1方向に沿って順番に配置され前記タイミング信号を受けて動作する第1吐出ブロック、第2吐出ブロック、第3吐出ブロック及び第4吐出ブロックを含む複数の吐出ブロックと、を備え、前記吐出ブロックは、前記第1方向に沿って配置され駆動信号に応じて液体を吐出する複数の吐出部と、前記タイミング信号を遅延させた第1遅延タイミング信号を出力する第1遅延回路、及び、前記第1遅延タイミング信号を遅延させた第2遅延タイミング信号を出力する第2遅延回路を含む複数の遅延回路と、前記信号配線に伝達された前記タイミング信号に応じたタイミングで、前記複数の吐出部のうちの第1吐出部に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える第1選択回路、前記第1遅延回路から出力された前記第1遅延タイミング信号に応じたタイミングで、前記複数の吐出部のうちの第2吐出部に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える第2選択回路、及び、前記第2遅延回路から出力された前記第2遅延タイミング信号に応じたタイミングで、前記複数の吐出部のうちの第3吐出部に前記駆動信号を供給するか否かを切り替える第3選択回路を含む複数の選択回路と、を含み、前記複数の吐出ブロックのうちの互いに隣接する前記吐出ブロックは、互いに異なる端部から前記信号配線を介して前記タイミング信号を受ける。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの構成の一例を示すブロック図である。
図2】インクジェットプリンターの内部構成の概略を例示する一部断面図である。
図3】吐出部の構造の一例を説明するための断面図である。
図4】ヘッドユニットにおけるノズルの配置の一例を示す平面図である。
図5】ヘッドユニットに含まれる吐出ブロックの構成の一例を示すブロック図である。
図6】ヘッドユニットに供給される信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図7】4個の吐出ブロックの配置の一例を説明するための説明図である。
図8】対比例のヘッドユニットにおける4個の吐出ブロックの配置の一例を説明するための説明図である。
図9】ノズルの位置とインクの吐出速度との関係を説明するための説明図である。
図10】対比例のヘッドユニットを用いて印刷された画像の一例を説明するための説明図である。
図11図7に示したヘッドユニットを用いて印刷された画像の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0008】
[1.実施形態]
本実施形態では、記録用紙にインクを吐出して画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。なお、本実施形態において、インクは「液体」の例である。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成の一例を示すブロック図である。
【0010】
インクジェットプリンター1には、例えば、図示されていないホストコンピューターから、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データIMGが供給される。インクジェットプリンター1は、ホストコンピューターから供給される印刷データIMGの示す画像を媒体に形成する印刷処理を実行する。本実施形態では、媒体として、後述する図2に示す記録用紙Pを想定する。
【0011】
インクジェットプリンター1は、インクジェットプリンター1の各部を制御する制御ユニット2と、インクを吐出する吐出部Dが設けられたヘッドユニット3と、吐出部Dを駆動するための駆動信号COMを生成する駆動信号生成ユニット4とを有する。さらに、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるための搬送ユニット7と、ヘッドユニット3に設けられた吐出部Dをメンテナンスするメンテナンス処理を実行するメンテナンスユニット8とを有する。
【0012】
なお、本実施形態では、ヘッドユニット3と駆動信号生成ユニット4とが互いに対応する場合を想定する。例えば、インクジェットプリンター1は、複数のヘッドユニット3と、複数のヘッドユニット3と1対1に対応する複数の駆動信号生成ユニット4とを有してもよい。あるいは、インクジェットプリンター1は、1個のヘッドユニット3と、1個のヘッドユニット3に対応する1個の駆動信号生成ユニット4とを有してもよい。本実施形態では、インクジェットプリンター1が、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの4色のインクと1対1に対応する4個のヘッドユニット3と、4個のヘッドユニット3と1対1に対応する4個の駆動信号生成ユニット4とを有する場合を想定する。但し、以下では、説明の便宜上、図1に例示するように、4個のヘッドユニット3のうち一のヘッドユニット3と、4個の駆動信号生成ユニット4のうち一のヘッドユニット3に対応して設けられた一の駆動信号生成ユニット4と、に着目して説明する場合がある。
【0013】
制御ユニット2は、1又は複数のCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。なお、制御ユニット2は、CPUの代わりに、又は、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んで構成されてもよい。また、制御ユニット2は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーと、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、又は、PROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーと、の一方又は両方を含んで構成される。
【0014】
詳細は後述するが、制御ユニット2は、印刷信号SI、波形指定信号dCOM、及び、ラッチ信号LAT等の、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御するための信号を生成する。ここで、波形指定信号dCOMは、駆動信号COMの波形を規定するデジタルの信号である。また、駆動信号COMは、吐出部Dを駆動するためのアナログの信号である。また、印刷信号SIは、吐出部Dの動作の種類を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、印刷信号SIは、吐出部Dに対して駆動信号COMを供給するか否かを指定することで、吐出部Dの動作の種類を指定する信号である。また、ラッチ信号LATは、吐出部Dからインクが吐出されるタイミングを規定する信号である。ラッチ信号LATは、「タイミング信号」の例である。
【0015】
駆動信号生成ユニット4は、例えば、DAC(Digital Analog Converter)を含み、制御ユニット2から供給される波形指定信号dCOMに基づいて駆動信号COMを生成する。例えば、駆動信号生成ユニット4は、波形指定信号dCOMにより規定される波形を含む駆動信号COMを生成する。駆動信号生成ユニット4は、波形指定信号dCOMに基づいて生成した駆動信号COMを、ヘッドユニット3に含まれる供給回路31に出力する。なお、本実施形態では、駆動信号COMが、後述する図5に示す駆動信号COMa、COMb及びCOMcを含む場合を想定する。
【0016】
ヘッドユニット3は、4個の吐出ブロックBL、及び、4個の吐出ブロックBLにラッチ信号LATを伝達する配線Lt等を有する。以下では、4個の吐出ブロックBLのうちの吐出ブロックBL1について説明するが、当該説明は、他の吐出ブロックBLについても同様に該当する。例えば、吐出ブロックBL1は、図1に示すように、供給回路31及び記録ヘッド32を有する。他の吐出ブロックBLの機能ブロックについては図示を省略しているが、吐出ブロックBL2、BL3及びBL4の各々も、吐出ブロックBL1と同様に、供給回路31及び記録ヘッド32を有する。なお、吐出ブロックBL1は、「第1吐出ブロック」の例であり、吐出ブロックBL2は、「第2吐出ブロック」の例である。また、吐出ブロックBL3は、「第3吐出ブロック」の例であり、吐出ブロックBL4は、「第4吐出ブロック」の例である。
【0017】
記録ヘッド32は、M個の吐出部Dを有する。なお、値Mは、1以上の自然数である。より好ましくは、値Mは、100以上の自然数である。本実施形態では、値Mが123である場合を想定する。また、以下では、各吐出ブロックBLにおいて、記録ヘッド32に設けられたM個の吐出部Dのうち、m番目の吐出部Dを、吐出部D[m]と称する場合がある。ここで、変数mは、「1≦m≦M」を満たす自然数である。また、以下では、インクジェットプリンター1の構成要素又は信号等が、M個の吐出部Dのうち、吐出部D[m]に対応する場合は、当該構成要素又は信号等を表わすための符号に、添え字[m]を付すことがある。
【0018】
供給回路31は、印刷信号SIに基づいて、駆動信号COMを吐出部D[m]に供給するか否かを切り替える。なお、以下では、後述する図5等に示すように、吐出部D[m]に供給される駆動信号COMを、個別駆動信号Vin[m]と称する場合がある。
【0019】
このように、4個のヘッドユニット3の各々は、4×M個の吐出部Dを有する。すなわち、4個のヘッドユニット3には、合計16×M個の吐出部Dが設けられる。なお、以下では、「4×M」を、単に、「4M」と称し、「16×M」を「16M」と称する場合がある。
【0020】
上述のとおり、本実施形態において、インクジェットプリンター1は、印刷処理を実行する。印刷処理が実行される場合、制御ユニット2は、印刷データIMGに基づいて、印刷信号SI等のヘッドユニット3を制御するための信号を生成する。また、制御ユニット2は、印刷処理が実行される場合、波形指定信号dCOM等の駆動信号生成ユニット4を制御するための信号を生成する。また、制御ユニット2は、印刷処理が実行される場合、搬送ユニット7を制御するための信号を生成する。これにより、制御ユニット2は、印刷処理において、ヘッドユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるように搬送ユニット7を制御しつつ、吐出部D[m]からのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整する。このように、制御ユニット2は、印刷データIMGに対応する画像が記録用紙Pに形成されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御する。
【0021】
また、上述のとおり、本実施形態において、インクジェットプリンター1は、メンテナンス処理を実行する。例えば、メンテナンス処理は、吐出部Dからインクを排出するフラッシング処理と、吐出部DのノズルN近傍に付着したインク等の異物をワイパーにより拭き取るワイピング処理と、吐出部D内のインクをチューブポンプ等により吸引するポンピング処理とを含む。ノズルNについては、図3において後述する。
【0022】
次に、図2を参照しつつ、インクジェットプリンター1の内部構成の概略について説明する。
【0023】
図2は、インクジェットプリンター1の内部構成の概略を例示する一部断面図である。図2に示すように、本実施形態では、インクジェットプリンター1がラインプリンターである場合を一例として想定する。
【0024】
以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を有する3軸の直交座標系を適宜導入する。また、以下では、X軸の矢印の指す方向は+X方向と称され、+X方向の反対方向は-X方向と称される。Y軸の矢印の指す方向は+Y方向と称され、+Y方向の反対方向は-Y方向と称される。そして、Z軸の矢印の指す方向は+Z方向と称され、+Z方向の反対方向は-Z方向と称される。また、以下では、+X方向及び-X方向を、特に区別することなく、X方向と称し、+Y方向及び-Y方向を特に区別することなく、Y方向と称する場合がある。また、+Z方向及び-Z方向を、特に区別することなく、Z方向と称する場合がある。
【0025】
図2に示すように、本実施形態では、インクジェットプリンター1が、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの4色と1対1に対応して設けられる4個のインクカートリッジ100を有する場合を想定する。例えば、各インクカートリッジ100には、当該インクカートリッジ100に対応する色のインクが充填されている。なお、図2では、4個のインクカートリッジ100が、4個のヘッドユニット3が設けられたラインヘッド101に収納されている場合を例示しているが、インクカートリッジ100は、ラインヘッド101の外部に設けられてもよい。
【0026】
搬送ユニット7は、記録用紙Pを搬送するための駆動源となる搬送モーター71と、搬送モーター71の作動により回転する搬送ローラー72と、ヘッドユニット3の-Z方向に設けられるプラテン73と、Y軸回りに回転自在に設けられたガイドローラー74と、記録用紙Pをロール状に巻き取った状態で収納するための収納部75と、を有する。例えば、搬送ユニット7は、インクジェットプリンター1が印刷処理を実行する場合に、記録用紙Pを、収納部75から繰り出して、ガイドローラー74、プラテン73、及び、搬送ローラー72により規定される搬送経路に沿って、+X方向に搬送する。なお、+X方向は、-Z方向に交差する方向であり、記録用紙Pの搬送における上流側から下流側に向かう方向である。以下では、+X方向を、搬送方向Mvと称する場合がある。
【0027】
4個のヘッドユニットのうちの一のヘッドユニット3に設けられた4M個の吐出部Dの各々は、4個のインクカートリッジ100のうち、一のヘッドユニット3に対応する一のインクカートリッジ100から、インクの供給を受ける。各吐出部Dは、インクカートリッジ100から供給されたインクを内部に充填し、充填したインクを当該吐出部Dが具備するノズルNから吐出することができる。具体的には、各吐出部Dは、搬送ユニット7が記録用紙Pをプラテン73上に搬送するタイミングで、記録用紙Pに対してインクを吐出することで、画像を構成するためのドットを記録用紙Pに形成する。そして、4個のヘッドユニット3に設けられている16M個の吐出部Dから全体として4色のインクを吐出することで、フルカラー印刷が実現される。
【0028】
次に、図3を参照しつつ、記録ヘッド32の概略的な構造について説明する。
【0029】
図3は、吐出部Dの構造の一例を説明するための断面図である。なお、図3では、吐出部D[m]を含むように記録ヘッド32を切断した場合の記録ヘッド32の一部の断面が模式的に示されている。
【0030】
吐出部D[m]は、圧電素子PZ[m]と、内部にインクが充填されたキャビティーCVと、キャビティーCVに連通するノズルNと、振動板321とを有する。吐出部D[m]は、圧電素子PZ[m]が個別駆動信号Vin[m]により駆動されることにより、キャビティーCV内のインクをノズルNから吐出させる。
【0031】
キャビティーCVは、キャビティープレート324と、ノズルNが形成されたノズルプレート323と、振動板321と、により区画される空間である。キャビティーCVは、インク供給口326を介してリザーバ325と連通している。リザーバ325は、インク取入口327を介して、吐出部D[m]に対応するインクカートリッジ100と連通している。圧電素子PZ[m]は、上部電極Zu[m]と、下部電極Zd[m]と、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に設けられた圧電体Zb[m]とを有する。上部電極Zu[m]は、個別駆動信号Vin[m]が供給される配線Liと電気的に接続される。下部電極Zd[m]は、バイアス電圧信号VBSが供給される配線Ldと電気的に接続される。そして、上部電極Zu[m]に個別駆動信号Vin[m]が供給されることにより、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に電圧が印加される。圧電素子PZ[m]は、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に印加された電圧に応じて、+Z方向又は-Z方向に変位する。
【0032】
このように、圧電素子PZ[m]は、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に印加された電圧に応じて振動する。振動板321には、下部電極Zd[m]が接合されている。このため、圧電素子PZ[m]が個別駆動信号Vin[m]により駆動されて振動することにより、振動板321も振動する。そして、振動板321の振動によりキャビティーCVの容積及びキャビティーCV内の圧力が変化し、キャビティーCV内に充填されたインクがノズルNより吐出される。
【0033】
本実施形態では、一例として、吐出部D[m]に供給される個別駆動信号Vin[m]の電位が低電位から高電位に変化することにより、圧電素子PZが-Z方向に変位する場合を想定する。すなわち、本実施形態では、吐出部D[m]に供給される個別駆動信号Vin[m]の電位が高電位の場合に、低電位の場合と比較して、吐出部D[m]の備えるキャビティーCVの容積が小さくなる場合を想定する。
【0034】
次に、図4を参照しつつ、ノズルNの配置の一例について説明する。
【0035】
図4は、ヘッドユニット3におけるノズルNの配置の一例を示す平面図である。なお、図4では、+Z方向からインクジェットプリンター1を平面視した場合の、ラインヘッド101が具備する4個のヘッドユニット3と、当該4個のヘッドユニット3に設けられた合計16M個の吐出部D及びノズルNの配置の一例が示されている。
【0036】
図4に示すように、各ヘッドユニット3において、4個の吐出ブロックBL1、BL2、BL3及びBL4は、吐出ブロックBL1、吐出ブロックBL2、吐出ブロックBL3及び吐出ブロックBL4の順にY方向に沿って配置されている。なお、Y方向は、搬送方向Mvに交差する方向であり、「第1方向」の例である。
【0037】
また、ラインヘッド101に設けられた各ヘッドユニット3には、ノズル列NLが設けられる。ここで、ノズル列NLとは、列状に延在するように設けられた複数のノズルNである。本実施形態では、一例として、各ヘッドユニット3において、1列のノズル列NLが設けられている場合を示している。具体的には、本実施形態では、一例として、ラインヘッド101に、ノズル列NL-BK、ノズル列NL-CY、ノズル列NL-MG、及び、ノズル列NL-YLが設けられている場合を想定する。なお、ノズル列NL-BKは、ブラックのインクを吐出する複数の吐出部Dに対応する複数のノズルNからなるノズル列NLであり、ノズル列NL-CYは、シアンのインクを吐出する複数の吐出部Dに対応する複数のノズルNからなるノズル列NLである。また、ノズル列NL-MGは、マゼンタのインクを吐出する複数の吐出部Dに対応する複数のノズルNからなるノズル列NLであり、ノズル列NL-YLは、イエローのインクを吐出する複数の吐出部Dに対応する複数のノズルNからなるノズル列NLである。
【0038】
なお、本実施形態では、各ノズル列NLが、印刷処理において画像GZが形成される記録用紙PのY方向の範囲を包含する範囲にY方向に沿って延在するように設けられる場合を想定する。また、以下では、各ノズル列NLを構成する4M個のノズルNを互いに区別するために、ノズルNの符号の末尾に、数字を付す場合がある。例えば、本実施形態では、値Mが123である場合を想定しているため、図4に示すように、1から492のいずれかの数字がノズルNの符号の末尾に付される。図4に示す例では、各ノズル列NLにおいて、492個のノズルNを-Y方向から数えた順番に対応する数字が、各ノズルNの符号の末尾に付されている。
【0039】
また、本実施形態では、吐出ブロックBL1の吐出部D[M]と吐出ブロックBL2の吐出部D[M]とが互いに隣接し、吐出ブロックBL2の吐出部D[1]と吐出ブロックBL3の吐出部D[1]とが互いに隣接し、吐出ブロックBL3の吐出部D[M]と吐出ブロックBL4の吐出部D[M]とが互いに隣接する場合を想定する。なお、各吐出ブロックBLにおいて、Y方向に沿って配置されたM個の吐出部D[1]~D[M]のうちの吐出部D[m]は、吐出ブロックBLのY方向に互いに離れた端部のうち、ラッチ信号LATが入力される端部から数えてm番目の吐出部Dである。なお、吐出ブロックBL1、BL2、BL3及びBL4の配置、及び、ラッチ信号LATを各吐出ブロックBLに伝達する配線Ltの配置については、図7において後述される。
【0040】
次に、図5及び図6を参照しつつ、ヘッドユニット3の概要について説明する。
【0041】
図5は、ヘッドユニット3に含まれる吐出ブロックBLの構成の一例を示すブロック図である。なお、図5では、ヘッドユニット3に含まれる4個の吐出ブロックBLのうちの一の吐出ブロックBLが示されている。
【0042】
吐出ブロックBLは、図1において説明したように、供給回路31及び記録ヘッド32を有する。また、吐出ブロックBLは、駆動信号生成ユニット4から駆動信号COMaが供給される配線Lcaと、駆動信号生成ユニット4から駆動信号COMbが供給される配線Lcbと、駆動信号生成ユニット4から駆動信号COMcが供給される配線Lccとを有する。また、ヘッドユニット3は、バイアス電圧信号VBSが供給される配線Ldと、個別駆動信号Vin[m]を吐出部D[m]に供給する配線Li[m]とを有する。さらに、吐出ブロックBLは、制御ユニット2からクロック信号CLが供給される配線Lclと、制御ユニット2から印刷信号SIが供給される配線Lsiと、制御ユニット2からラッチ信号LATが供給される配線Ltとを有する。なお、配線Ltは「信号配線」の例である。
【0043】
供給回路31は、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個の選択回路SL[1]~SL[M]と、シフトレジスターSRとを有する。さらに、供給回路31は、ラッチ信号LATを遅延させた遅延ラッチ信号LATdを生成するために、縦続接続された複数の遅延回路DLを有する。図5では、遅延回路DLの符号の末尾に、縦続接続における接続順に対応する数字が付されている。なお、本実施形態では、縦続接続された遅延回路DLの数が4個である場合を想定するが、縦続接続された遅延回路DLの数は4個に限定されない。また、図5では、図を見やすくするために、遅延回路DL1の次段の遅延回路DL2、及び、遅延回路DL2の次段の遅延回路DL3の図示が省略されている。遅延回路DL1は、「第1遅延回路」の例であり、遅延回路DL1の次段の遅延回路DL2は、「第2遅延回路」の例である。
【0044】
また、図5では、遅延回路DLから出力される信号である遅延ラッチ信号LATdの符号の末尾にも、遅延回路DLの符号の末尾に付された数字と同じ数字が付されている。なお、図5では、遅延回路DL2及びDL3の図示が省略されているため、遅延回路DL2から遅延回路DL3に出力される信号である遅延ラッチ信号LATd2の図示が省略されている。
【0045】
遅延回路DL1には、ラッチ信号LATが入力される。そして、遅延回路DL1は、ラッチ信号LATを遅延させた遅延ラッチ信号LATd1を、図5には図示されていない遅延回路DL2に出力する。遅延回路DL2は、遅延ラッチ信号LATd1を遅延させた遅延ラッチ信号LATd2を、図5には図示されていない遅延回路DL3に出力する。遅延回路DL3は、遅延ラッチ信号LATd2を遅延させた遅延ラッチ信号LATd3を、遅延回路DL4に出力する。遅延回路DL4は、遅延ラッチ信号LATd3を遅延させた遅延ラッチ信号LATd4を出力する。
【0046】
シフトレジスターSRは、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個の転送回路FF1[1]~FF1[M]と、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個の転送回路FF2[1]~FF2[M]とを有する。
【0047】
シフトレジスターSRには、例えば、クロック信号CL及び印刷信号SIが制御ユニット2から供給される。印刷信号SIは、図1において説明したように、吐出部D[1]~D[M]の各々の動作の種類を指定するデジタルの信号である。本実施形態では、印刷信号SIが印刷信号SI1[1]~SI1[M]及び印刷信号SI2[1]~SI2[M]を含む場合を想定する。この場合、例えば、吐出部D[m]からのインクの吐出の有無、及び、吐出部D[m]が吐出すべきインク量が、印刷信号SI2[m]及びSI1[m]の2ビットで指定される。
【0048】
例えば、印刷信号SI2[m]及びSI1[m]が(1,1)である場合、大ドットに相当する量のインクを吐出させる駆動信号COMaが吐出部D[m]に供給される。また、印刷信号SI2[m]及びSI1[m]が(1,0)である場合、大ドットよりも小さい中ドットに相当する量のインクを吐出させる駆動信号COMbが吐出部D[m]に供給される。また、印刷信号SI2[m]及びSI1[m]が(0,1)である場合、中ドットよりも小さい小ドットに相当する量のインクを吐出させる駆動信号COMcが吐出部D[m]に供給される。また、印刷信号SI2[m]及びSI1[m]が(0,0)である場合、駆動信号COMa、COMb及びCOMcのいずれも吐出部D[m]に供給されない。
【0049】
例えば、印刷信号SIは、印刷信号SI1[M]~SI1[1]及び印刷信号SI2[M]~SI2[1]の順に、クロック信号CLに同期して、制御ユニット2から転送回路FF2[1]にシリアルに供給される。そして、転送回路FF2[1]は、印刷信号SIを一旦保持し、保持した印刷信号SIをクロック信号CLに従って順次後段に転送する。同様に、転送回路FF2[2]~FF2[M-1]の各々は、前段から転送された印刷信号SIを一旦保持し、保持した印刷信号SIをクロック信号CLに従って順次後段に転送する。そして、転送回路FF2[M]は、前段の転送回路FF2[M-1]から転送された印刷信号SIを一旦保持し、保持した印刷信号SIをクロック信号CLに従って転送回路FF1[1]に順次転送する。
【0050】
また、転送回路FF1[2]~FF1[M-1]の各々は、転送回路FF2[m]と同様に、前段から転送された印刷信号SIを一旦保持し、保持した印刷信号SIをクロック信号CLに従って順次後段に転送する。そして、最終段の転送回路FF1[M]まで印刷信号SIが転送されることにより、印刷信号SIのうちの印刷信号SI1[m]が転送回路FF1[m]に一時的に保持され、印刷信号SIのうちの印刷信号SI2[m]が転送回路FF2[m]に一時的に保持される。転送回路FF1[m]に保持された印刷信号SI1[m]及び転送回路FF2[m]に保持された印刷信号SI2[m]は、選択回路SL[m]に供給される。
【0051】
選択回路SL[m]は、ラッチ信号LAT又は遅延ラッチ信号LATdに応じたタイミングで、吐出部D[m]に駆動信号COMを供給するか否かを切り替える。例えば、選択回路SL[m]は、ラッチ回路LL1[m]及びLL2[m]と、デコーダーDC[m]と、スイッチWa[m]、Wb[m]及びWc[m]とを有する。以下では、ラッチ回路LL1及びLL2を、ラッチ回路LLと総称する場合がある。同様に、スイッチWa、Wb及びWcを、スイッチWと総称する場合がある。
【0052】
ラッチ回路LL1[m]は、ラッチ信号LAT及び遅延ラッチ信号LATdのうちの選択回路SL[m]に供給された信号がハイレベルに立ち上がるタイミングで、転送回路FF1[m]に保持されている印刷信号SI1[m]をラッチする。同様に、ラッチ回路LL2[m]は、ラッチ信号LAT及び遅延ラッチ信号LATdのうちの選択回路SL[m]に供給された信号がハイレベルに立ち上がるタイミングで、転送回路FF2[m]に保持されている印刷信号SI2[m]をラッチする。
【0053】
なお、本実施形態では、以下に示すように、ラッチ信号LAT又は遅延ラッチ信号LATdが選択回路SL[m]に供給される場合を想定する。例えば、選択回路SL[1]~SL[25]の25個の選択回路SLには、配線Ltに伝達されたラッチ信号LATが供給される。選択回路SL[26]~SL[50]の25個の選択回路SLには、遅延回路DL1から出力された遅延ラッチ信号LATd1が供給される。選択回路SL[51]~SL[75]の25個の選択回路SLには、遅延回路DL2から出力された遅延ラッチ信号LATd2が供給される。選択回路SL[76]~SL[100]の25個の選択回路SLには、遅延回路DL3から出力された遅延ラッチ信号LATd3が供給される。そして、選択回路SL[101]~SL[123]の23個の選択回路SLには、遅延回路DL4から出力された遅延ラッチ信号LATd4が供給される。なお、ラッチ信号LAT及び複数の遅延ラッチ信号LATdの各々が供給される選択回路SLの数は、上述の例に限定されない。
【0054】
なお、遅延ラッチ信号LATd1は、「第1遅延タイミング信号」の例であり、遅延ラッチ信号LATd2は、「第2遅延タイミング信号」の例である。また、選択回路SL[1]~SL[25]の各々は、「第1選択回路」の例であり、選択回路SL[26]~SL[50]の各々は、「第2選択回路」の例であり、選択回路SL[51]~SL[75]の各々は、「第3選択回路」の例である。また、吐出部D[1]~D[25]の各々は、「第1吐出部」の例であり、吐出部D[26]~D[50]の各々は、「第2吐出部」の例であり、吐出部D[51]~D[75]の各々は、「第3吐出部」の例である。
【0055】
デコーダーDC[m]は、ラッチ回路LL1[m]及びLL2[m]によってラッチされている印刷信号SI1[m]及びSI2[m]をデコードし、接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]を生成する。例えば、デコーダーDC[m]は、印刷信号SI2[m]及びSI1[m]が(1,1)である場合、スイッチWa[m]、Wb[m]及びWc[m]のうちのスイッチWa[m]のみをオンにする接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]を生成する。また、デコーダーDC[m]は、印刷信号SI2[m]及びSI1[m]が(1,0)である場合、スイッチWa[m]、Wb[m]及びWc[m]のうちのスイッチWb[m]のみをオンにする接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]を生成する。また、デコーダーDC[m]は、印刷信号SI2[m]及びSI1[m]が(0,1)である場合、スイッチWa[m]、Wb[m]及びWc[m]のうちのスイッチWc[m]のみをオンにする接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]を生成する。また、デコーダーDC[m]は、印刷信号SI2[m]及びSI1[m]が(0,0)である場合、スイッチWa[m]、Wb[m]及びWc[m]の全てをオフに維持する接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]を生成する。
【0056】
そして、デコーダーDC[m]は、印刷信号SI1[m]及びSI2[m]に基づいて生成した接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]を、スイッチWa[m]、Wb[m]及びWc[m]にそれぞれ出力する。これにより、例えば、接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]は、ラッチ信号LAT及び遅延ラッチ信号LATdのうちの選択回路SL[m]に供給された信号に応じたタイミングで、スイッチWa[m]、Wb[m]及びWc[m]にそれぞれ出力される。
【0057】
本実施形態において、スイッチWa[m]は、接続状態指定信号Qa[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。同様に、スイッチWb[m]は、接続状態指定信号Qb[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。また、スイッチWc[m]は、接続状態指定信号Qc[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。
【0058】
スイッチWa[m]は、接続状態指定信号Qa[m]に基づいて、配線Lcaと配線Li[m]との導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチWa[m]がオンする場合、配線Lcaに供給される駆動信号COMaが、個別駆動信号Vin[m]として、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]に配線Li[m]を介して供給される。
【0059】
スイッチWb[m]は、接続状態指定信号Qb[m]に基づいて、配線Lcbと配線Li[m]との導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチWb[m]がオンする場合、配線Lcbに供給される駆動信号COMbが、個別駆動信号Vin[m]として、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]に配線Li[m]を介して供給される。
【0060】
スイッチWc[m]は、接続状態指定信号Qc[m]に基づいて、配線Lccと配線Li[m]との導通及び非導通を切り替える。例えば、スイッチWb[m]がオンする場合、配線Lccに供給される駆動信号COMcが、個別駆動信号Vin[m]として、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]に配線Li[m]を介して供給される。
【0061】
このように、本実施形態では、吐出ブロックBLに含まれる2M個のラッチ回路LLの各々が信号をラッチするラッチ動作に、ラッチ信号LAT、及び、ラッチ信号LATを遅延させた複数の遅延ラッチ信号LATdのいずれかが用いられる。これにより、本実施形態では、ラッチ動作を同じタイミングで実行するラッチ回路LLの数を低減することができるため、オンオフの切り替えを同じタイミングで実行するスイッチWの数を低減することができる。この結果、本実施形態では、スイッチWのオンオフの切り替えにより発生するピーク電流を低減することができる。例えば、オンオフの切り替えを同じタイミングで実行するスイッチWの数は、スイッチWのオンオフの切り替えにより発生するピーク電流が許容範囲内となるように、決められる。
【0062】
なお、吐出ブロックBLの構成は、図5に示す例に限定されない。例えば、選択回路SL[m]は、デコーダーDC[m]から出力される接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]のレベルを調整するレベルシフト回路を有してもよい。この場合、レベルシフト回路により信号のレベルが調整された接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]がスイッチWa[m]、Wb[m]及びWc[m]にそれぞれ供給される。また、例えば、ラッチ信号LAT又は遅延ラッチ信号LATdは、デコーダーDCに入力されなくてもよい。
【0063】
次に、図6を参照しつつ、ヘッドユニット3の動作について説明する。
【0064】
図6は、ヘッドユニット3に供給される信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。なお、図6では、図を見やすくするために、駆動信号COMb及びCOMcの図示が省略されている。また、図6では、説明を分かりやすくするために、ラッチ回路LLが印刷信号SIをラッチしてから、デコーダーDCが接続状態指定信号Qa等を出力するまでの遅延時間を0として、ヘッドユニット3の動作について説明する。また、図6では、吐出部D[1]、D[26]、D[51]、D[76]及びD[101]に駆動信号COMaが供給される場合を想定する。
【0065】
制御ユニット2は、パルスPLLを有するラッチ信号LATを出力する。これにより、制御ユニット2は、パルスPLLの立ち上がりから次のパルスPLLの立ち上がりまでの期間として、単位期間TPを規定する。単位期間TPは、例えば、各ノズルNに対応する1つのドットを記録用紙Pに形成するための期間である。
【0066】
また、制御ユニット2は、各単位期間TPに先立って、吐出ブロックBL毎に生成した印刷信号SIを、クロック信号CLに同期させて、各吐出ブロックBLのシフトレジスターSRに供給する。
【0067】
また、各吐出ブロックBLは、図5において説明したように、複数の遅延回路DLにより、ラッチ信号LATに対する遅延量が互いに異なる遅延ラッチ信号LATd1、LATd2、LATd3及びLATd4を生成する。例えば、遅延ラッチ信号LATd1は、ラッチ信号LATを遅延させた信号であり、遅延ラッチ信号LATd2は、遅延ラッチ信号LATd1を遅延させた信号であり、遅延ラッチ信号LATd3は、遅延ラッチ信号LATd2を遅延させた信号であり、遅延ラッチ信号LATd4は、遅延ラッチ信号LATd3を遅延させた信号である。
【0068】
これにより、例えば、遅延ラッチ信号LATd1のパルスPLLは、ラッチ信号LATのパルスPLLが立ち上がるタイミングから遅延時間dT1だけ遅れて立ち上がる。遅延ラッチ信号LATd2のパルスPLLは、ラッチ信号LATのパルスPLLが立ち上がるタイミングから、遅延時間dT1よりも大きい遅延時間dT2だけ遅れて立ち上がる。遅延ラッチ信号LATd3のパルスPLLは、ラッチ信号LATのパルスPLLが立ち上がるタイミングから、遅延時間dT2よりも大きい遅延時間dT3だけ遅れて立ち上がる。遅延ラッチ信号LATd4のパルスPLLは、ラッチ信号LATのパルスPLLが立ち上がるタイミングから、遅延時間dT3よりも大きい遅延時間dT4だけ遅れて立ち上がる。
【0069】
また、各吐出ブロックBLの選択回路SL[m]は、当該単位期間TPにおいて、図5において説明したように、印刷信号SIに含まれる印刷信号SI1[m]及びSI2[m]に基づいて、接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]を生成する。なお、図6では、接続状態指定信号Qb[m]及びQc[m]の図示が省略されている。
【0070】
接続状態指定信号Qa[1]は、ラッチ信号LATのパルスPLLの立ち上がりに応じてハイレベルに立ち上がり、次のパルスPLLの立ち上がりでローレベルに立ち下がる。図6に図示されていない接続状態指定信号Qa[2]~Qa[25]、接続状態指定信号Qb[1]~Qb[25]、及び、接続状態指定信号Qc[1]~Qc[25]の各々も、対応するスイッチWをオンさせる場合、接続状態指定信号Qa[1]と同様の波形となる。
【0071】
接続状態指定信号Qa[26]は、遅延ラッチ信号LATd1のパルスPLLの立ち上がりに応じてハイレベルに立ち上がり、次のパルスPLLの立ち上がりでローレベルに立ち下がる。図6に図示されていない接続状態指定信号Qa[27]~Qa[50]、接続状態指定信号Qb[26]~Qb[50]、及び、接続状態指定信号Qc[25]~Qc[50]の各々も、対応するスイッチWをオンさせる場合、接続状態指定信号Qa[26]と同様の波形となる。
【0072】
接続状態指定信号Qa[51]は、遅延ラッチ信号LATd2のパルスPLLの立ち上がりに応じてハイレベルに立ち上がり、次のパルスPLLの立ち上がりでローレベルに立ち下がる。図6に図示されていない接続状態指定信号Qa[52]~Qa[75]、接続状態指定信号Qb[51]~Qb[75]、及び、接続状態指定信号Qc[51]~Qc[75]の各々も、対応するスイッチWをオンさせる場合、接続状態指定信号Qa[51]と同様の波形となる。
【0073】
接続状態指定信号Qa[76]は、遅延ラッチ信号LATd3のパルスPLLの立ち上がりに応じてハイレベルに立ち上がり、次のパルスPLLの立ち上がりでローレベルに立ち下がる。図6に図示されていない接続状態指定信号Qa[77]~Qa[100]、接続状態指定信号Qb[76]~Qb[100]、及び、接続状態指定信号Qc[76]~Qc[100]の各々も、対応するスイッチWをオンさせる場合、接続状態指定信号Qa[76]と同様の波形となる。
【0074】
接続状態指定信号Qa[101]は、遅延ラッチ信号LATd4のパルスPLLの立ち上がりに応じてハイレベルに立ち上がり、次のパルスPLLの立ち上がりでローレベルに立ち下がる。図6に図示されていない接続状態指定信号Qa[102]~Qa[123]、接続状態指定信号Qb[101]~Qb[123]、及び、接続状態指定信号Qc[101]~Qc[123]の各々も、対応するスイッチWをオンさせる場合、接続状態指定信号Qa[101]と同様の波形となる。
【0075】
なお、接続状態指定信号Qa[m]、Qb[m]及びQc[m]の各々は、対応するスイッチWをオンさせない場合、すなわち、スイッチWをオフに維持する場合、当該単位期間TPにおいて、ローレベルに維持される。
【0076】
駆動信号COMaは、単位期間TPに対応して設けられた波形PAを有する。波形PAは、例えば、圧電体Zbを変形させてキャビティーCVの容積を変化させるパルスである。波形PAは、駆動信号COMaの電位が、基準電位V0から、基準電位V0よりも低い電位VAを経て、基準電位V0に戻る波形である。なお、本実施形態では、図3において説明したように、個別駆動信号Vin[m]の電位が高電位の場合に、低電位の場合と比較して、吐出部D[m]の備えるキャビティーCVの容積が小さくなる場合を想定している。このため、波形PAを有する個別駆動信号Vin[m]により吐出部D[m]が駆動される場合、個別駆動信号Vin[m]の電位が電位VAから基準電位V0に変化することにより、吐出部D[m]内のインクがノズルNから吐出される。波形PAは、吐出部Dによるインクの吐出特性等に基づいて定められる。例えば、本実施形態では、駆動信号COMaの波形PAは、波形PAを有する個別駆動信号Vin[m]が吐出部D[m]に供給される場合に、吐出部D[m]から、大ドットに相当する量のインクが吐出されるように定められる。
【0077】
なお、図6には図示されていない駆動信号COMb及びCOMcは、例えば、電位VAの大きさを除いて、駆動信号COMaと同様である。例えば、駆動信号COMbの基準電位V0と電位VAとの差は、駆動信号COMaの基準電位V0と電位VAとの差よりも小さく、駆動信号COMcの基準電位V0と電位VAとの差よりも大きい。
【0078】
ここで、例えば、吐出部D[m]に供給される個別駆動信号Vin[m]の波形は、駆動信号COMaの波形のうち、接続状態指定信号Qa[m]がハイレベルの期間の波形である。また、駆動信号COMaは、駆動信号生成ユニット4から配線Lcaを介してスイッチWaに供給される。配線Lcaは、例えば、FFC(Flexible Flat Cable)等の可撓性の配線基板に設けられる。駆動信号生成ユニット4からスイッチWaまでの配線Lcaが長い場合、配線Lcaが短い場合に比べて、駆動信号COMaの伝達経路の影響が大きくなる。このため、駆動信号生成ユニット4からスイッチWaまでの配線Lcaが長い場合、駆動信号生成ユニット4から出力された駆動信号COMaとスイッチWaに供給される駆動信号COMaとは、異なる波形になる。
【0079】
例えば、FFC等の配線は抵抗成分とインダクタンス成分とを含む。また、駆動信号COMaは、アナログ信号であるため、複数の周波数成分を含む。例えば、駆動信号COMaは、フーリエ級数展開を行った場合、複数の周波数の三角関数により表される。駆動信号COMaの波形のち、波形PAの角の部分に、高周波成分が最も多く含まれる。このため、スイッチWaに供給される駆動信号COMaでは、波形PAの角の部分に含まれる高周波成分がFFCのインダクタンス成分の影響を受けて、図の点線で示したように、波形PAの角の部分にオーバーシュートが発生する。
【0080】
このため、例えば、駆動信号COMaのオーバーシュートが収束する前にスイッチWaがオフした場合と、駆動信号COMaのオーバーシュートが収束した後にスイッチWaがオフした場合とでは、圧電素子PZに印加される実質的な電圧が異なる。圧電素子PZに印加される電圧の差により、圧電素子PZの動作に差が発生する。圧電素子PZの動作に差が発生することにより、インクの吐出速度に差が発生する。インクの吐出速度が速い場合、インクの吐出速度が遅い場合に比べて、記録用紙Pに着弾するインクの量が増加する。このため、インクの吐出速度の差は、記録用紙Pに着弾するインクの量の差として、印刷結果に作用する。すなわち、圧電素子PZに印加される電圧の差は、記録用紙Pに着弾するインクの量の差として、印刷結果に作用する。
【0081】
高速印字においては、単位期間TPが短くなるため、スイッチWa[1]~スイッチWa[123]の全てを駆動信号COMaのオーバーシュートが収束した後にオフさせることが困難になる。例えば、駆動信号COMaのオーバーシュートが収束した後にスイッチWa[1]をオフさせた場合、駆動信号COMaのオーバーシュートが収束する前にスイッチWaをオフする場合に比べて、単位期間TPが長くなる。このため、駆動信号COMaのオーバーシュートが収束した後にスイッチWa[1]をオフさせる制御では、単位期間TPを、高速印字において要求される時間以下にすることが困難である。また、スイッチWa[1]~スイッチWa[123]のオンオフの切り替えを一斉に行う制御は、スイッチWのオンオフの切り替えにより発生するピーク電流が増加するため、好ましくない。
【0082】
このため、図6の破線の丸で示したように、高速印字においては、駆動信号COMaのオーバーシュートが収束する前にスイッチWaがオフする場合と、駆動信号COMaのオーバーシュートが収束した後にスイッチWaがオフする場合とが混在する。図6に示す例では、スイッチWa[1]は、駆動信号COMaの電位が電位VAから基準電位V0に変化した後で、駆動信号COMaのオーバーシュートのピークが発生する前のタイミングOFF1で、オフする。また、スイッチWa[26]は、駆動信号COMaのオーバーシュートのピークが発生した後で、オーバーシュートが収束する前のタイミングOFF2で、オフする。また、スイッチWa[51]は、駆動信号COMaのオーバーシュートのピークが発生した後で、オーバーシュートが収束する前のタイミングOFF3で、オフする。また、スイッチWa[76]は、駆動信号COMaのオーバーシュートがほぼ収束したタイミングOFF4で、オフする。また、スイッチWa[101]は、駆動信号COMaのオーバーシュートが収束した後のタイミングOFF5で、オフする。
【0083】
このため、高速印字においては、例えば、大ドットに相当する量のインクを全てのノズルNから吐出する場合でも、圧電素子PZに印加される電圧が、ノズルNの位置によって、異なる。
【0084】
本実施形態では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接するノズルNにおいて、圧電素子PZに印加される電圧の差が小さくなるように、吐出ブロックBL1、BL2、BL3及びBL4が配置される。
【0085】
次に、図7を参照しつつ、吐出ブロックBL1、BL2、BL3及びBL4の配置、及び、ラッチ信号LATを各吐出ブロックBLに伝達する配線Ltの配置について説明する。
【0086】
図7は、4個の吐出ブロックBLの配置の一例を説明するための説明図である。
【0087】
吐出ブロックBL1、BL2、BL3及びBL4は、例えば、吐出ブロックBL1、BL2、BL3及びBL4の順に、Y方向に沿って配置される。そして、各吐出ブロックBLは、Y方向に互いに離れた端部ED1及びED2の一方から配線Ltを介してラッチ信号LATを受ける。以下では、端部ED1及びED2を、端部EDと総称する場合がある。例えば、各吐出ブロックBLにおいて、端部ED1は、端部ED2よりも-Y方向に位置する端部EDである。すなわち、各吐出ブロックBLにおいて、端部ED2は、端部ED1よりも+Y方向に位置する端部EDである。なお、端部ED1は、「第1端部」の例であり、端部ED2は、「第2端部」の例である。
【0088】
本実施形態では、互いに隣接する2個の吐出ブロックBLにおいて、端部ED1及びED2のうちの互いに異なる端部EDから配線Ltを介してラッチ信号LATが入力されるように、4個の吐出ブロックBLが配置される。図7に示す例では、吐出ブロックBL1及びBL3は、端部ED1から配線Ltを介してラッチ信号LATを受け、吐出ブロックBL2及びBL4は、端部ED2から配線Ltを介してラッチ信号LATを受ける。
【0089】
なお、吐出ブロックBLが端部EDから配線Ltを介してラッチ信号LATを受けるとは、例えば、当該端部EDに配置された選択回路SLのラッチ回路LLが配線Ltを介してラッチ信号LATを受けることであってもよい。例えば、吐出ブロックBL1及びBL3では、端部ED1に配置された選択回路SL[1]のラッチ回路LL[1]が配線Ltを介してラッチ信号LATを受ける。そして、吐出ブロックBL2及びBL4では、端部ED2に配置された選択回路SL[1]のラッチ回路LL[1]が配線Ltを介してラッチ信号LATを受ける。なお、吐出ブロックBL1及びBL3では、端部ED2に配置された選択回路SL[123]のラッチ回路LL[123]は、遅延ラッチ信号LATd4を受け、吐出ブロックBL2及びBL4では、端部ED1に配置された選択回路SL[123]のラッチ回路LL[123]は、遅延ラッチ信号LATd4を受ける。
【0090】
これにより、本実施形態では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接する選択回路SL[m]のスイッチWのオンオフの切り替えタイミングを、互いに等しくすることができる。なお、「等しい」は、厳密に等しいことだけではなく、誤差範囲内で等しいこと等の実質的に等しいことも含む。
【0091】
このように、本実施形態では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接する選択回路SL[m]は、互いに等しいタイミングで、吐出部D[m]に駆動信号COMを供給するか否かを切り替える。これにより、本実施形態では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接するノズルNにおいて、圧電素子PZに印加される電圧の差が大きくなることを抑制することができる。この結果、本実施形態では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接するノズルNから吐出されるインクの吐出速度の差、及び、記録用紙Pに着弾するインクの量の差が大きくなることを抑制することができる。
【0092】
ここで、インクの吐出タイミングに着目した場合、本実施形態では、4個の吐出ブロックBLのうちの互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接するノズルNは、互いに等しいタイミングで、インクを吐出する。
【0093】
図7に示す例では、吐出ブロックBL1及びBL2に含まれる全てのノズルN1~N246のうち、互いに異なる吐出ブロックBLに含まれ、かつ互いに隣接する2個のノズルN123及びN124におけるインクの吐出タイミングは、互いに等しい。また、吐出ブロックBL2及びBL3に含まれる全てのノズルN124~N369のうち、互いに異なる吐出ブロックBLに含まれ、かつ互いに隣接する2個のノズルN246及びN247におけるインクの吐出タイミングは、互いに等しい。また、吐出ブロックBL3及びBL4に含まれる全てのノズルN247~N492のうち、互いに異なる吐出ブロックBLに含まれ、かつ互いに隣接する2個のノズルN369及びN370におけるインクの吐出タイミングは、互いに等しい。
【0094】
このように、4個の吐出ブロックBLのうちの互いに隣接する2個の吐出ブロックBLに含まれる全てのノズルNのうち、互いに異なる吐出ブロックBLに含まれ、かつ互いに隣接する2個のノズルNにおけるインクの吐出タイミングは、互いに等しい。なお、ノズルNにおけるインクの吐出タイミングは、吐出部Dにおけるインクの吐出タイミングに該当する。
【0095】
4個の吐出ブロックBLの配置は、図7に示す例に限定されない。例えば、吐出ブロックBL1及びBL3が端部ED2から配線Ltを介してラッチ信号LATを受け、吐出ブロックBL2及びBL4が端部ED1から配線Ltを介してラッチ信号LATを受けるように、4個の吐出ブロックBLが配置されてもよい。
【0096】
次に、図8を参照しつつ、ヘッドユニット3と対比される対比例として、全ての吐出ブロックBLが端部ED1から配線Ltを介してラッチ信号LATを受けるヘッドユニット3Zについて説明する。
【0097】
図8は、対比例のヘッドユニット3Zにおける4個の吐出ブロックBLの配置の一例を説明するための説明図である。
【0098】
対比例のヘッドユニット3Zでは、全ての吐出ブロックBLにおいて、端部ED1から配線Ltを介してラッチ信号LATが入力されるように、4個の吐出ブロックBLが配置される。すなわち、全ての吐出ブロックBLにおいて、端部ED1に配置された選択回路SL[1]のラッチ回路LL[1]が配線Ltを介してラッチ信号LATを受ける。従って、全ての吐出ブロックBLにおいて、端部ED2に配置された選択回路SL[123]のラッチ回路LL[123]は、遅延ラッチ信号LATd4を受ける。
【0099】
このため、対比例では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接する選択回路SL[m]のスイッチWのオンオフの切り替えタイミングの差が、本実施形態に比べて、大きくなる。この結果、対比例では、本実施形態に比べて、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接するノズルNにおいて、圧電素子PZに印加される電圧の差が大きくなる。従って、対比例では、本実施形態に比べて、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接するノズルNから吐出されるインクの吐出速度の差、及び、記録用紙Pに着弾するインクの量の差が大きくなる。
【0100】
次に、図9を参照しつつ、ノズルNの位置とインクの吐出速度との関係について説明する。
【0101】
図9は、ノズルNの位置とインクの吐出速度との関係を説明するための説明図である。図の横軸は、ヘッドユニット3に含まれるノズルNの位置を示し、図の縦軸は、ノズルNから吐出されるインクの吐出速度を示す。図の黒丸は、図7に示したヘッドユニット3のノズルNの位置とインクの吐出速度との関係を示し、図の白丸は、図8に示した対比例のヘッドユニット3ZのノズルNの位置とインクの吐出速度との関係を示す。なお、図の黒丸及び白丸は、各吐出ブロックBLにおいて互いに等しいタイミングでインクを吐出する複数のノズルNの代表的な吐出速度を示す。複数のノズルNの代表的な吐出速度は、例えば、複数のノズルNの吐出速度の平均であってもよい。
【0102】
対比例のヘッドユニット3Zでは、全ての吐出ブロックBLが端部ED1から配線Ltを介してラッチ信号LATを受ける。このため、吐出ブロックBL2及びBL4のノズルNから吐出されるインクの吐出速度が、図7に示したヘッドユニット3と相違する。なお、吐出ブロックBL2及びBL4のノズルN[m]と、ヘッドユニット3Zの各ノズル列NLに含まれる492個のノズルNに付される通し番号との関係は、図9に示す関係と相違する。例えば、ヘッドユニット3ZのノズルN124及びN246は、図8に示したように、ヘッドユニット3Zの吐出ブロックBL2のノズルN[1]及びN[123]にそれぞれ対応する。また、ヘッドユニット3ZのノズルN370及びN492は、図8に示したように、ヘッドユニット3Zの吐出ブロックBL4のノズルN[1]及びN[123]にそれぞれ対応する。
【0103】
ヘッドユニット3では、ノズルN1、N246、N247及びN492等の、ラッチ信号LATに応じたタイミングでインクを吐出するノズルNで、吐出速度が最も遅くなる傾向がある。また、ヘッドユニット3では、ノズルN123、N124、N369及びN370等の、遅延ラッチ信号LATd4に応じたタイミングでインクを吐出するノズルNで、吐出速度が最も速くなる傾向がある。
【0104】
また、遅延ラッチ信号LATd1に応じたタイミングでインクを吐出するノズルNでは、ラッチ信号LATに応じたタイミングでインクを吐出するノズルNよりも吐出速度が速くなる傾向がある。遅延ラッチ信号LATd2に応じたタイミングでインクを吐出するノズルNでは、遅延ラッチ信号LATd1に応じたタイミングでインクを吐出するノズルNよりも吐出速度が速くなる傾向がある。遅延ラッチ信号LATd3に応じたタイミングでインクを吐出するノズルNでは、遅延ラッチ信号LATd2に応じたタイミングでインクを吐出するノズルNよりも吐出速度が速くなる傾向がある。
【0105】
本実施形態では、図9に示すように、互いに隣接するノズルNから吐出されるインクの吐出速度の差が大きくなることが抑制されている。特に、本実施形態では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接するノズルNから吐出されるインクの吐出速度の差が大きくなることを抑制することができる。例えば、ノズルN123及びN124から吐出されるインクの吐出速度の差、ノズルN246及びN247から吐出されるインクの吐出速度の差、及び、ノズルN369及びN370から吐出されるインクの吐出速度の差は、0又はほぼ0である。このため、本実施形態では、図11に示すように、印刷された画像にスジ状の濃淡むらが発生することを抑制することができる。
【0106】
これに対し、対比例では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接するノズルNから吐出されるインクの吐出速度の差は、ヘッドユニット3Zにおけるインクの吐出速度の最大と最小との差に等しくなる。例えば、対比例では、ノズルN123及びN124から吐出されるインクの吐出速度の差が、ヘッドユニット3Zにおけるインクの吐出速度の最大と最小との差に等しくなる。同様に、ノズルN246及びN247から吐出されるインクの吐出速度の差、及び、ノズルN369及びN370から吐出されるインクの吐出速度の差が、ヘッドユニット3Zにおけるインクの吐出速度の最大と最小との差に等しくなる。このため、対比例では、図10に示すように、印刷された画像にスジ状の濃淡むらが発生する。
【0107】
次に、図10を参照しつつ、対比例のヘッドユニット3Zを用いて印刷された画像について説明する。
【0108】
図10は、対比例のヘッドユニット3Zを用いて印刷された画像の一例を説明するための説明図である。
【0109】
対比例では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界で、互いに隣接ずるノズルNから吐出されるインクの吐出速度の差が大きくなる。このため、対比例では、印刷された画像において、吐出ブロックBLの境界に対応する位置にスジ状の濃淡むらが発生する。これに対し、本実施形態では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界で、互いに隣接ずるノズルNから吐出されるインクの吐出速度の差が大きくなることが抑制されるため、図11に示すように、スジ状の濃淡むらが発生することを抑制することができる。
【0110】
次に、図11を参照しつつ、図7に示したヘッドユニット3を用いて印刷された画像について説明する。
【0111】
図11は、図7に示したヘッドユニット3を用いて印刷された画像の一例を説明するための説明図である。
【0112】
本実施形態では、互いに隣接するノズルNから吐出されるインクの吐出速度の差が大きくなることが抑制されている。例えば、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界では、互いに隣接ずるノズルNから吐出されるインクの吐出速度の差が0又はほぼ0となる。このため、本実施形態では、印刷された画像において、濃淡が急激に変化する部分をなくすことができる。
【0113】
このように、本実施形態では、印刷された画像全体では濃淡むらは発生しているが、濃淡が急激に変化する部分をなくすことにより、印刷された画像にスジ状の濃淡むらが発生することを抑制することができる。具体的には、本実施形態では、印刷された画像において、吐出ブロックBLの境界に対応する位置にスジ状の濃淡むらが発生することを抑制することができる。また、例えば、連続する画素の情報を用いたスムージング等の画像処理により濃淡むらを消す処理が行われる場合においても、本実施形態では、濃淡が急激に変化する部分がないため、濃淡むらを消す処理を効果的に行うことができる。
【0114】
以上、本実施形態では、ヘッドユニット3は、ラッチ信号LATを伝達する配線Ltと、吐出ブロックBL1、BL2、BL3及びBL4の順にY方向に沿って配置され、ラッチ信号LATを受けて動作する4個の吐出ブロックBLとを有する。4個の吐出ブロックBLの各々は、Y方向に沿って配置され、駆動信号COMに応じてインクを吐出する複数の吐出部Dと、ラッチ信号LATを遅延させた遅延ラッチ信号LATd1を出力する遅延回路DL1、及び、遅延ラッチ信号LATd1を遅延させた遅延ラッチ信号LATd2を出力する遅延回路DL2を含む複数の遅延回路DLと、配線Ltに伝達されたラッチ信号LATに応じたタイミングで、複数の吐出部Dのうちの吐出部D[1]に駆動信号COMを供給するか否かを切り替える選択回路SL[1]、遅延回路DL1から出力された遅延ラッチ信号LATd1に応じたタイミングで、複数の吐出部Dのうちの吐出部D[26]に駆動信号COMを供給するか否かを切り替える選択回路SL[26]、及び、遅延回路DL2から出力された遅延ラッチ信号LATd2に応じたタイミングで、複数の吐出部Dのうちの吐出部D[51]に駆動信号COMを供給するか否かを切り替える選択回路SL[51]を含む複数の選択回路SLと、を含む。4個の吐出ブロックBLのうちの互いに隣接する2個の吐出ブロックBLは、当該吐出ブロックBLにおいてY方向に互いに離れた端部ED1及びED2のうち、互いに異なる端部EDから配線Ltを介してラッチ信号LATを受ける。
【0115】
このように、本実施形態では、互いに隣接する2個の吐出ブロックBLにおいて、端部ED1及びED2のうちの互いに異なる端部EDから配線Ltを介してラッチ信号LATが入力されるように、4個の吐出ブロックBLが配置される。これにより、本実施形態では、互いに隣接する2個の吐出ブロックBLにおいて、端部ED1及びED2のうちの互いに異なる端部EDに配置された選択回路SLが配線Ltを介してラッチ信号LATを受ける。この結果、本実施形態では、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界を挟んで互いに隣接する選択回路SLは、互いに等しいタイミングで、吐出部Dに駆動信号COMを供給するか否かを切り替えることができる。この結果、本実施形態では、印刷された画像において、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界に対応する位置にスジ状の濃淡むらが発生することを抑制することができる。
【0116】
また、本実施形態では、ヘッドユニット3は、ラインプリンターに搭載して用いられる。これにより、本実施形態では、帯状のスジ等を目立ち難くさせるマイクロウィーブ技術等の適用が困難なラインプリンターにおいても、印刷された画像にスジ状の濃淡むらが発生することを容易に抑制することができる。
【0117】
また、本実施形態では、4個の吐出ブロックBLの各々に含まれる複数の吐出部Dは、100個以上の吐出部Dである。これにより、本実施形態では、大判印刷に対応した業務用のプリンター等においても、印刷された画像にスジ状の濃淡むらが発生することを抑制することができる。
【0118】
また、本実施形態では、4個の吐出ブロックBLのうちの互いに隣接する2個の吐出ブロックBLに含まれる全ての吐出部Dのうち、互いに異なる吐出ブロックBLに含まれ、かつ互いに隣接する2個の吐出部Dにおけるインクの吐出タイミングは、互いに等しい。例えば、吐出ブロックBL1及びBL2に含まれる全ての吐出部Dのうち、互いに異なる吐出ブロックBLに含まれ、かつ互いに隣接する2個の吐出部Dにおけるインクの吐出タイミングは、互いに等しい。吐出ブロックBL2及びBL3に含まれる全ての吐出部Dのうち、互いに異なる吐出ブロックBLに含まれ、かつ互いに隣接する2個の吐出部Dにおけるインクの吐出タイミングは、互いに等しい。吐出ブロックBL及びBL4に含まれる全ての吐出部Dのうち、互いに異なる吐出ブロックBLに含まれ、かつ互いに隣接する2個の吐出部Dにおけるインクの吐出タイミングは、互いに等しい。これにより、本実施形態では、印刷された画像において、互いに隣接する吐出ブロックBLの境界に対応する位置に濃淡むらが発生することを抑制することができる。
【0119】
[2.変形例]
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0120】
[第1変形例]
上述した実施形態では、インクジェットプリンター1が、ラインプリンターである場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、インクジェットプリンター1は、大判印刷に対応した業務用のシリアルプリンターであってもよい。具体的には、ヘッドユニット3は、24インチ以上のシリアルプリンターに搭載して用いられるヘッドユニットであってもよい。本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0121】
[第2変形例]
上述した実施形態では、個別駆動信号Vin[m]の電位が低電位から高電位に変化することにより、圧電素子PZが-Z方向に変位する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、個別駆動信号Vin[m]の電位が高電位から低電位に変化することにより、-Z方向に変位する圧電素子PZが用いられてもよい。本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0122】
[第3変形例]
上述した実施形態では、各ヘッドユニット3が1本のノズル列NLを有する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、各ヘッドユニット3は、複数のノズル列NLを有してもよい。本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0123】
[第4変形例]
上述した実施形態では、ヘッドユニット3が4個の吐出ブロックBLを有する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、ヘッドユニット3は、5個以上の吐出ブロックBLを有してもよい。本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0124】
[第5変形例]
上述した実施形態では、駆動信号COMが駆動信号COMa、COMb及びCOMcを含む場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、駆動信号COMは、1個でもよいし、2個でもよい。本変形例においても、上述した実施形態及と同様の効果を得ることができる。
【0125】
[第6変形例]
上述した実施形態では、駆動信号COMが、単位期間TPに対応して設けられた波形PAを含む場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、単位期間TPが複数の駆動期間に区分され、駆動信号COMは、複数の駆動期間に対応して設けられた複数の波形を含んでもよい。この場合、各駆動期間において駆動信号COMを吐出部Dに供給するか否かを選択することにより、大ドット、中ドット及び小ドットを選択してもよい。
【符号の説明】
【0126】
1…インクジェットプリンター、2…制御ユニット、3、3Z…ヘッドユニット、4…駆動信号生成ユニット、7…搬送ユニット、8…メンテナンスユニット、31…供給回路、32…記録ヘッド、BL1、BL2、BL3、BL4…吐出ブロック、D…吐出部、DC…デコーダー、DL1、DL2、DL3、DL4…遅延回路、Lca、Lcb、Lcc、Lcl、Ld、Li、Lsi、Lt…配線、LL1、LL2…ラッチ回路、N…ノズル、SL…選択回路、Wa、Wb、Wc…スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11