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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053208
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】プリントヘッド、及び、液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/175 20060101AFI20240408BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B41J2/175 175
B41J2/01 451
B41J2/175 167
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159309
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】河西 駿介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA20
2C056EB20
2C056EB29
2C056EB45
2C056EB59
2C056FA04
2C056FA10
(57)【要約】
【課題】プリントヘッドを継続して使用可能か否かを正確に判定する。
【解決手段】ヘッドユニット3は、インクを吐出する吐出部D、及び、吐出部Dにインクを供給する流路を含む記録ヘッド32と、記録ヘッド32の物性に関する物性情報PINFを記憶する記憶領域SA0、流路を流れる第1インクに関するインク情報IINF1を記憶する記憶領域SA1、及び、第1インクと異なる種類の第2インクに関するインク情報IINF2を記憶する記憶領域SA2を含む記憶ユニット34と、記憶領域SA0、SA1及びSA2にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する判定部38と、を有し、第2インクは、吐出部Dから吐出されるインクとして第1インクが使用される前に、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されたインクである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出する吐出部、及び、前記吐出部にインクを供給する流路を含むヘッドと、
前記ヘッドの物性に関する物性情報を記憶する第1記憶領域、前記流路を流れる第1インクに関する第1インク情報を記憶する第2記憶領域、及び、前記第1インクと異なる種類の第2インクに関する第2インク情報を記憶する第3記憶領域を含むメモリーと、
前記第1記憶領域、前記第2記憶領域及び前記第3記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、前記ヘッドを継続して使用可能か否かを判定する判定部と、
を備え、
前記第2インクは、
前記吐出部から吐出されるインクとして前記第1インクが使用される前に、前記吐出部から吐出されるインクとして使用されたインクである、
ことを特徴とするプリントヘッド。
【請求項2】
前記メモリーは、
前記第1インク及び前記第2インクと異なる種類の第3インクに関する第3インク情報を含む複数のインク情報をそれぞれ記憶する複数の第4記憶領域をさらに含み、
前記第3インクは、
前記吐出部から吐出されるインクとして前記第2インクが使用される前に、前記吐出部から吐出されるインクとして使用されたインクであり、
前記参照情報は、
前記第1記憶領域、前記第2記憶領域、前記第3記憶領域及び前記複数の第4記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む、
ことを特徴とする請求項1記載のプリントヘッド。
【請求項3】
インクを吐出する吐出部、及び、前記吐出部にインクを供給する流路を含むヘッドと、
前記ヘッドの物性に関する物性情報を記憶する第1記憶領域、前記流路を流れる第1インクに関する第1インク情報を記憶する第2記憶領域、及び、前記吐出部から吐出されるインクとして前記第1インクが使用される前までに前記ヘッドが受けたダメージの程度を示すダメージ情報を記憶する第3記憶領域を含むメモリーと、
前記第1記憶領域、前記第2記憶領域及び前記第3記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、前記ヘッドを継続して使用可能か否かを判定する判定部と、
を備えている、
ことを特徴とするプリントヘッド。
【請求項4】
前記物性情報は、
前記ヘッドで使用されるインクとして推奨されるインクの種類に関する情報である、
ことを特徴とする請求項1又は3に記載のプリントヘッド。
【請求項5】
前記第1インク情報は、
ソルベントインク及び水性インクを含む複数の種類のインクの中から各インクの種類を識別するためのインク物性に関する情報である、
ことを特徴とする請求項1又は3に記載のプリントヘッド。
【請求項6】
プリントヘッド及び判定部を備え、
前記プリントヘッドは、
インクを吐出する吐出部、及び、前記吐出部にインクを供給する流路を含むヘッドと、
前記ヘッドの物性に関する物性情報を記憶する第1記憶領域、前記流路を流れる第1インクに関する第1インク情報を記憶する第2記憶領域、及び、前記第1インクと異なる種類の第2インクに関する第2インク情報を記憶する第3記憶領域を含むメモリーと、
を有し、
前記第2インクは、
前記吐出部から吐出されるインクとして前記第1インクが使用される前に、前記吐出部から吐出されるインクとして使用されたインクであり、
前記判定部は、
前記第1記憶領域、前記第2記憶領域及び前記第3記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、前記ヘッドを継続して使用可能か否かを判定する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項7】
前記メモリーは、
前記第1インク及び前記第2インクと異なる種類の第3インクに関する第3インク情報を含む複数のインク情報をそれぞれ記憶する複数の第4記憶領域をさらに含み、
前記第3インクは、
前記吐出部から吐出されるインクとして前記第2インクが使用される前に、前記吐出部から吐出されるインクとして使用されたインクであり、
前記参照情報は、
前記第1記憶領域、前記第2記憶領域、前記第3記憶領域及び前記複数の第4記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む、
ことを特徴とする請求項6記載の液体吐出装置。
【請求項8】
プリントヘッド及び判定部を備え、
前記プリントヘッドは、
インクを吐出する吐出部、及び、前記吐出部にインクを供給する流路を含むヘッドと、
前記ヘッドの物性に関する物性情報を記憶する第1記憶領域、前記流路を流れる第1インクに関する第1インク情報を記憶する第2記憶領域、及び、前記吐出部から吐出されるインクとして前記第1インクが使用される前までに前記ヘッドが受けたダメージの程度を示すダメージ情報を記憶する第3記憶領域を含むメモリーと、
を有し、
前記判定部は、
前記第1記憶領域、前記第2記憶領域及び前記第3記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、前記ヘッドを継続して使用可能か否かを判定する、
ことを特徴とする液体吐出装置。
【請求項9】
前記物性情報は、
前記ヘッドで使用されるインクとして推奨されるインクの種類に関する情報である、
ことを特徴とする請求項6又は8に記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記第1インク情報は、
ソルベントインク及び水性インクを含む複数の種類のインクの中から各インクの種類を識別するためのインク物性に関する情報である、
ことを特徴とする請求項6又は8に記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリントヘッド、及び、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のノズルからインク等の液体を吐出して媒体に画像を形成するインクジェットプリンター等の液体吐出装置が知られている。近年、例えば、使用済みのプリントヘッド等を再整備し、再整備したプリントヘッド等を再生品として再び市場に流通させる取り組みが注目されている。例えば、特許文献1には、画像が形成された媒体の面数の累積を示す累積印刷面数に関する情報等が記憶される不揮発性メモリーを有するプリントヘッドが開示されている。これにより、例えば、製造者は、プリントヘッドに記憶された情報に基づく再整備を行うことが可能となる。また、プリントヘッドに記憶された情報を用いることにより、例えば、再生又は再利用されるプリントヘッドの各部の残存寿命を推測することが可能となる。
【0003】
また、インクカートリッジを交換することにより、ノズルから吐出されるインクの色を変更可能なインクチェンジに対応した液体吐出装置が知られている。例えば、特許文献2には、ダークイエローのカートリッジ、ライトシアンのカートリッジ及びライトマゼンタのカートリッジを、イエローのカートリッジ、シアンのカートリッジ及びマゼンタのカートリッジにそれぞれ交換可能な印刷装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-53864号公報
【特許文献2】特開2005-1130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクを切り替えて使用するインクチェンジに対応した液体吐出装置では、インクカートリッジを交換した場合に、交換前後でインクの種類が異なる場合がある。インクの種類によって、プリントヘッドに与えるダメージが異なる。この場合、累積印刷面数に関する情報だけでは、プリントヘッドの状態を正確に把握することが困難になる。このため、不揮発性メモリーを有する従来のプリントヘッドでは、プリントヘッドの残存寿命を正確に予測することは困難である。このように、プリントヘッドの残存寿命の予測には改善すべき余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の課題を解決するために、本発明に係るプリントヘッドは、インクを吐出する吐出部、及び、前記吐出部にインクを供給する流路を含むヘッドと、前記ヘッドの物性に関する物性情報を記憶する第1記憶領域、前記流路を流れる第1インクに関する第1インク情報を記憶する第2記憶領域、及び、前記第1インクと異なる種類の第2インクに関する第2インク情報を記憶する第3記憶領域を含むメモリーと、前記第1記憶領域、前記第2記憶領域及び前記第3記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、前記ヘッドを継続して使用可能か否かを判定する判定部と、を備え、前記第2インクは、前記吐出部から吐出されるインクとして前記第1インクが使用される前に、前記吐出部から吐出されるインクとして使用されたインクである。
【0007】
また、本発明に係る他のプリントヘッドは、インクを吐出する吐出部、及び、前記吐出部にインクを供給する流路を含むヘッドと、前記ヘッドの物性に関する物性情報を記憶する第1記憶領域、前記流路を流れる第1インクに関する第1インク情報を記憶する第2記憶領域、及び、前記吐出部から吐出されるインクとして前記第1インクが使用される前までに前記ヘッドが受けたダメージの程度を示すダメージ情報を記憶する第3記憶領域を含むメモリーと、前記第1記憶領域、前記第2記憶領域及び前記第3記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、前記ヘッドを継続して使用可能か否かを判定する判定部と、を備えている。
【0008】
また、本発明に係る液体吐出装置は、プリントヘッド及び判定部を備え、前記プリントヘッドは、インクを吐出する吐出部、及び、前記吐出部にインクを供給する流路を含むヘッドと、前記ヘッドの物性に関する物性情報を記憶する第1記憶領域、前記流路を流れる第1インクに関する第1インク情報を記憶する第2記憶領域、及び、前記第1インクと異なる種類の第2インクに関する第2インク情報を記憶する第3記憶領域を含むメモリーと、を有し、前記第2インクは、前記吐出部から吐出されるインクとして前記第1インクが使用される前に、前記吐出部から吐出されるインクとして使用されたインクであり、前記判定部は、前記第1記憶領域、前記第2記憶領域及び前記第3記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、前記ヘッドを継続して使用可能か否かを判定する。
【0009】
また、本発明に係る他の液体吐出装置は、プリントヘッド及び判定部を備え、前記プリントヘッドは、インクを吐出する吐出部、及び、前記吐出部にインクを供給する流路を含むヘッドと、前記ヘッドの物性に関する物性情報を記憶する第1記憶領域、前記流路を流れる第1インクに関する第1インク情報を記憶する第2記憶領域、及び、前記吐出部から吐出されるインクとして前記第1インクが使用される前までに前記ヘッドが受けたダメージの程度を示すダメージ情報を記憶する第3記憶領域を含むメモリーと、を有し、前記判定部は、前記第1記憶領域、前記第2記憶領域及び前記第3記憶領域にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、前記ヘッドを継続して使用可能か否かを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの構成の一例を示すブロック図である。
図2】インクジェットプリンターの概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
図3】吐出部の構造の一例を説明するための断面図である。
図4】ヘッドユニットにおけるノズルの配置の一例を示す平面図である。
図5】ヘッドユニットの構成の一例を示すブロック図である。
図6】ヘッドユニットに供給される信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。
図7】ヘッドユニットに含まれる記憶ユニットに記憶される情報の概要を説明するための説明図である。
図8】記録ヘッドの物性とインクの種類との組み合わせに応じて決められる重み値の一例を説明するための説明図である。
図9】ヘッドユニットに含まれる記憶ユニットに記憶される情報の別の例を説明するための説明図である。
図10】インクジェットプリンターの動作の一例を示すシーケンスチャートである。
図11】インクジェットプリンターの動作の別の例を示すシーケンスチャートである。
図12】ヘッドユニットに含まれる記憶ユニットに記憶される情報の変形例を説明するための説明図である。
図13】第2変形例におけるインクジェットプリンターの構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。ただし、各図において、各部の寸法及び縮尺は、実際のものと適宜に異ならせてある。また、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0012】
[1.実施形態]
本実施形態では、記録用紙にインクを吐出して画像を形成するインクジェットプリンターを例示して、液体吐出装置を説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンター1の構成の一例を示すブロック図である。
【0014】
インクジェットプリンター1には、例えば、パーソナルコンピューター又はデジタルカメラ等のホストコンピューターから、インクジェットプリンター1が形成すべき画像を示す印刷データIMGが供給される。インクジェットプリンター1は、ホストコンピューターから供給される印刷データIMGの示す画像を媒体に形成する印刷処理を実行する。本実施形態では、媒体として、後述する図2に示す記録用紙Pを想定する。
【0015】
インクジェットプリンター1は、インクジェットプリンター1の各部を制御する制御ユニット2と、インクを吐出する吐出部Dが設けられたヘッドユニット3と、吐出部Dを駆動するための駆動信号COMを生成する駆動信号生成ユニット4とを有する。ヘッドユニット3は、「プリントヘッド」の例である。また、インクジェットプリンター1は、印刷データIMG、及び、インクジェットプリンター1の制御プログラム等の各種情報を記憶する記憶ユニット5を有する。
【0016】
また、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット3に供給されるインクを貯留するインクタンク6と、インクタンク6からヘッドユニット3にインクを供給する流路64と、ヘッドユニット3にインクを供給するか否かを切り替える弁VALとを有する。流路64は、例えば、チューブである。また、例えば、弁VALは、インクタンク6と流路64との間に位置する。また、インクジェットプリンター1は、インクタンク6から流路64にインクを圧送する図示しないポンプを有する。なお、当該ポンプにより、ヘッドユニット3にインクを供給するか否かの切り替えが実行されてもよい。例えば、ポンプを駆動することにより、ヘッドユニット3にインクが供給され、ポンプの駆動を停止することにより、ヘッドユニット3へのインクの供給が停止されてもよい。この場合、弁VALは、インクジェットプリンター1から省かれてもよい。
【0017】
さらに、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるための搬送ユニット7と、ヘッドユニット3に設けられた吐出部Dをメンテナンスするメンテナンス処理を実行するメンテナンスユニット8とを有する。
【0018】
なお、本実施形態では、ヘッドユニット3とインクタンク6とが互いに対応する場合を想定する。例えば、インクジェットプリンター1は、複数のヘッドユニット3と、複数のヘッドユニット3と1対1に対応する複数のインクタンク6とを有してもよい。あるいは、インクジェットプリンター1は、1個のヘッドユニット3と、1個のヘッドユニット3に対応する1個のインクタンク6とを有してもよい。本実施形態では、インクジェットプリンター1が、4個のヘッドユニット3と、4個のヘッドユニット3と1対1に対応する4個のインクタンク6とを有する場合を想定する。また、本実施形態では、ヘッドユニット3と駆動信号生成ユニット4とが互いに対応する場合を想定する。すなわち、本実施形態では、インクジェットプリンター1が、4個のヘッドユニット3と1対1に対応する4個の駆動信号生成ユニット4とを有する場合を想定する。
【0019】
但し、以下では、説明の便宜上、図1に例示するように、4個のヘッドユニット3のうちの一のヘッドユニット3に着目して説明する場合がある。例えば、4個のヘッドユニット3のうちの一のヘッドユニット3と、4個のインクタンク6のうちの一のヘッドユニット3に対応するインクタンク6と、に着目して説明する場合がある。あるいは、4個のヘッドユニット3のうちの一のヘッドユニット3と、4個の駆動信号生成ユニット4のうちの一のヘッドユニット3に対応して設けられた一の駆動信号生成ユニット4と、に着目して説明する場合がある。
【0020】
また、本実施形態では、インクジェットプリンター1が、インクタンク6を交換することにより、吐出部Dから吐出されるインクの種類を変更可能なインクチェンジに対応する場合を想定する。さらに、本実施形態では、インクジェットプリンター1が、ヘッドユニット3を交換可能な構成である場合を想定する。但し、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット3及びインクタンク6の一方が交換できない構成であってもよい。
【0021】
制御ユニット2は、1又は複数のCPU(Central Processing Unit)を含んで構成される。なお、制御ユニット2は、CPUの代わりに、又は、CPUに加えて、FPGA(field-programmable gate array)等のプログラマブルロジックデバイスを含んで構成されてもよい。また、制御ユニット2は、記憶ユニット5に記憶されている制御プログラムを実行することによって、ヘッド制御部22として機能する。なお、制御ユニット2の機能の一部又は全部を、FPGA等のハードウェアによって実現してもよい。
【0022】
詳細は後述するが、ヘッド制御部22は、印刷信号SI、及び、波形指定信号dCOM等の、インクジェットプリンター1の各部の動作を制御するための信号を生成する。ここで、波形指定信号dCOMは、駆動信号COMの波形を規定するデジタルの信号である。また、駆動信号COMは、吐出部Dを駆動するためのアナログの信号である。また、印刷信号SIは、吐出部Dの動作の種類を指定するためのデジタルの信号である。具体的には、印刷信号SIは、吐出部Dに対して駆動信号COMを供給するか否かを指定することで、吐出部Dの動作の種類を指定する信号である。
【0023】
駆動信号生成ユニット4は、例えば、DAC(Digital Analog Converter)を含み、制御ユニット2から供給される波形指定信号dCOMに基づいて駆動信号COMを生成する。例えば、駆動信号生成ユニット4は、波形指定信号dCOMにより規定される波形を含む駆動信号COMを生成する。駆動信号生成ユニット4は、波形指定信号dCOMに基づいて生成した駆動信号COMを、ヘッドユニット3に含まれる供給回路31に出力する。
【0024】
記憶ユニット5は、RAM(Random Access Memory)等の揮発性のメモリーと、ROM(Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、又は、PROM(Programmable ROM)等の不揮発性メモリーと、の一方又は両方を含んで構成される。なお、記憶ユニット5は、制御ユニット2に含まれてもよい。
【0025】
ヘッドユニット3は、供給回路31、記録ヘッド32、記憶ユニット34、及び、制御ユニット36を有する。記録ヘッド32は、「ヘッド」の例である。
【0026】
記録ヘッド32は、M個の吐出部Dを有する。なお、値Mは、1以上の自然数である。以下では、記録ヘッド32に設けられたM個の吐出部Dのうち、m番目の吐出部Dを、吐出部D[m]と称する場合がある。ここで、変数mは、「1≦m≦M」を満たす自然数である。また、以下では、インクジェットプリンター1の構成要素又は信号等が、M個の吐出部Dのうち、吐出部D[m]に対応する場合は、当該構成要素又は信号等を表わすための符号に、添え字[m]を付すことがある。
【0027】
供給回路31は、印刷信号SIに基づいて、駆動信号COMを吐出部D[m]に供給するか否かを切り替える。なお、以下では、後述する図5等に示すように、吐出部D[m]に供給される駆動信号COMを、個別駆動信号Vin[m]と称する場合がある。
【0028】
記憶ユニット34は、例えば、記憶ユニット5と同様に構成される。例えば、記憶ユニット34は、ヘッドユニット3の制御プログラム等を含む複数の情報をそれぞれ記憶する複数の記憶領域SAを含む。図1に示す例では、記録ヘッド32の物性に関する物性情報PINFが記憶領域SA0に記憶され、n個のインク情報IINF1、IINF2、IINF3、・・・、IINFnがn個の記憶領域SA1、SA2、SA3、・・・、SAnにそれぞれ記憶される。値nは、1以上の自然数である。
【0029】
以下では、n個のインク情報IINF1、IINF2、IINF3、・・・、IINFnを、インク情報IINFと総称する場合がある。インク情報IINFは、インクに関する情報であり、n個のインク情報IINFは、n種類のインクと1対1に対応している。インクに関する情報は、例えば、インクの属性を示す情報である。インクの属性は、例えば、ソルベントインク及び水性インク等のインクの物性に基づくインクの種類であってもよいし、インクの種類及び色の両方を含んでもよい。本実施形態では、インク情報IINFがインクの種類を示す情報である場合を想定する。なお、物性情報PINF及びインク情報IINFは、例えば、後述する判定部38が記録ヘッド32の寿命を推測する際に、判定部38によって参照される。
【0030】
複数の記憶領域SAのうちの2個以上の記憶領域SAは、同一のメモリー内の記憶領域であってもよいし、互いに異なるメモリー内の記憶領域でもよい。但し、物性情報PINF、及び、n個のインク情報IINFがそれぞれ記憶される複数の記憶領域SAは、不揮発性メモリー内の記憶領域であることが好ましい。
【0031】
なお、記憶ユニット34は、「メモリー」の例である。また、記憶領域SA0は、「第1記憶領域」の例であり、記憶領域SA1は、「第2記憶領域」の例であり、記憶領域SA2は、「第3記憶領域」の例であり、“n-2”個の記憶領域SA3、・・・、SAnは、「複数の第4記憶領域」の例である。また、インク情報IINF1は、「第1インク情報」の例であり、インク情報IINF2は、「第2インク情報」の例であり、インク情報IINF3は、「第3インク情報」の例である。そして、“n-2”個のインク情報IINF3、・・・、IINFnは、「複数のインク情報」の例である。
【0032】
制御ユニット36は、例えば、制御ユニット2と同様に構成される。例えば、制御ユニット36は、記憶ユニット34に記憶されている制御プログラムを実行することによって、判定部38として機能する。なお、判定部38は、FPGA等のハードウェアによって実現されてもよい。
【0033】
判定部38は、例えば、複数の記憶領域SAにそれぞれ記憶されている物性情報PINF及びインク情報IINF1等を含む参照情報に基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する。記録ヘッド32を継続して使用可能か否かが判定されることにより、ヘッドユニット3を継続して使用可能か否かが判定される。判定部38の動作の詳細については、図10において後述する。
【0034】
本実施形態では、上述のとおり、インクジェットプリンター1は、印刷処理を実行する。印刷処理が実行される場合、ヘッド制御部22は、印刷データIMGに基づいて、印刷信号SI等のヘッドユニット3を制御するための信号を生成する。また、ヘッド制御部22は、印刷処理が実行される場合、波形指定信号dCOM等の駆動信号生成ユニット4を制御するための信号を生成する。また、ヘッド制御部22は、印刷処理が実行される場合、搬送ユニット7を制御するための信号を生成する。これにより、ヘッド制御部22は、印刷処理において、ヘッドユニット3に対する記録用紙Pの相対位置を変化させるように搬送ユニット7を制御しつつ、吐出部D[m]からのインクの吐出の有無、インクの吐出量、及び、インクの吐出タイミング等を調整する。このように、ヘッド制御部22は、印刷データIMGに対応する画像が記録用紙Pに形成されるように、インクジェットプリンター1の各部を制御する。
【0035】
また、本実施形態では、上述のとおり、インクジェットプリンター1は、メンテナンス処理を実行する。例えば、メンテナンス処理は、吐出部Dからインクを排出するフラッシング処理と、吐出部DのノズルN近傍に付着したインク等の異物をワイパーにより拭き取るワイピング処理と、吐出部D内のインクをチューブポンプ等により吸引するポンピング処理とを含む。ノズルNについては、図3において後述する。
【0036】
メンテナンスユニット8は、フラッシング処理において吐出部D内のインクが排出される場合に当該排出されたインクを受けるための排出インク受領部82と、吐出部DのノズルN近傍に付着したインク等の異物を拭き取るためのワイパーと、吐出部D内のインクや気泡等を吸引するためのチューブポンプとを有する。なお、排出インク受領部82については、図2に示されている。また、ワイパー及びチューブポンプについては、図示を省略する。次に、図2を参照しつつ、インクジェットプリンター1の概略的な内部構造について説明する。
【0037】
図2は、インクジェットプリンター1の概略的な内部構造の一例を示す斜視図である。
【0038】
図2に示すように、本実施形態では、インクジェットプリンター1がシリアルプリンターである場合を想定する。具体的には、インクジェットプリンター1は、印刷処理を実行する場合、副走査方向に記録用紙Pを搬送しつつ、副走査方向に交差する主走査方向にヘッドユニット3を往復動させながら、吐出部D[m]からインクを吐出させることで、記録用紙P上に、印刷データIMGに応じたドットを形成する。
【0039】
以下では、説明の便宜上、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸を有する3軸の直交座標系を適宜導入する。また、以下では、X軸の矢印の指す方向は+X方向と称され、+X方向の反対方向は-X方向と称される。Y軸の矢印の指す方向は+Y方向と称され、+Y方向の反対方向は-Y方向と称される。そして、Z軸の矢印の指す方向は+Z方向と称され、+Z方向の反対方向は-Z方向と称される。また、以下では、+X方向及び-X方向を、特に区別することなく、X方向と称し、+Y方向及び-Y方向を特に区別することなく、Y方向と称する場合がある。また、+Z方向及び-Z方向を、特に区別することなく、Z方向と称する場合がある。また、本実施形態では、+X方向を副走査方向とし、+Y方向及び-Y方向を主走査方向とする。また、本実施形態では、図2に例示するように、-Z方向を、吐出部D[m]からのインクの吐出方向とする。
【0040】
本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、4個のインクタンク6を装着可能な装着部62と、インクジェットプリンター1の図示しない筐体内をY方向に往復動可能であり、4個のヘッドユニット3を搭載するキャリッジ110とを有する。また、インクジェットプリンター1は、4個のインクタンク6と1対1に対応する4個の流路64と、4個のインクタンク6と1対1に対応する4個の弁VALとを有する。
【0041】
本実施形態では、シアン、マゼンタ、イエロー、及び、ブラックの4色のインクと1対1に対応する4個のインクタンク6が装着部62に装着されている場合を想定する。また、本実施形態では、上述のとおり、インクジェットプリンター1が、4個のインクタンク6と1対1に対応する4個のヘッドユニット3を有する場合を想定する。例えば、各インクタンク6に貯留されているインクは、当該インクタンク6に対応する弁VALが開放状態である場合、当該インクタンク6に対応する流路64を経由して、当該インクタンク6に対応するヘッドユニット3に供給される。すなわち、各吐出部D[m]は、当該吐出部D[m]が設けられたヘッドユニット3に対応するインクタンク6からインクの供給を受ける。これにより、各吐出部D[m]は、供給されたインクを内部に充填し、充填したインクをノズルNから吐出することができる。なお、各インクタンク6に貯留されているインクは、当該インクタンク6に対応する弁VALが閉鎖状態である場合、当該インクタンク6に対応するヘッドユニット3に供給されない。
【0042】
また、本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、図1において説明したように、搬送ユニット7を有する。搬送ユニット7は、キャリッジ110をY方向に往復動させるためのキャリッジ搬送機構71と、キャリッジ110をY方向に往復自在に支持するキャリッジガイド軸76とを有する。さらに、搬送ユニット7は、記録用紙Pを搬送するための媒体搬送機構73と、キャリッジ110に対して-Z方向に設けられたプラテン75とを有する。例えば、印刷処理において、キャリッジ搬送機構71は、ヘッドユニット3をキャリッジ110とともにキャリッジガイド軸76に沿ってY方向に往復動させ、媒体搬送機構73は、プラテン75上の記録用紙Pを+X方向に搬送する。従って、搬送ユニット7は、印刷処理において、キャリッジ搬送機構71及び媒体搬送機構73に上述の動作を実行させることにより、記録用紙Pのヘッドユニット3に対する相対位置を変化させ、記録用紙Pの全体に対するインクの着弾を可能とする。
【0043】
なお、インクジェットプリンター1の構成は、図1及び図2に示した例に限定されない。例えば、インクジェットプリンター1は、インクタンク6に対応して設けられ、インクタンク6とヘッドユニット3との間に配置されるサブタンクを有してもよい。この場合、インクタンク6に貯留されているインクは、サブタンクに一旦貯留される。そして、サブタンクに貯留されているインクが、ヘッドユニット3に供給される。
【0044】
また、インクタンク6の形状等は、特に限定されない。例えば、インクタンク6は、箱状の容器として把握されるインクカートリッジであってもよいし、袋状の容器として把握されるインクパックタイプのカートリッジであってもよい。また、図1及び図2では、タンクユニット10がキャリッジ110の外部に設けられる場合を例示したが、タンクユニット10は、インクカートリッジとして、キャリッジ110に格納されてもよい。
【0045】
また、例えば、インクジェットプリンター1は、ヘッドユニット3において、複数のノズルNが、記録用紙Pの幅よりも広く延在するように設けられた、所謂ラインプリンターであってもよい。
【0046】
次に、図3を参照しつつ、記録ヘッド32の概略的な構造について説明する。
【0047】
図3は、吐出部Dの構造の一例を説明するための断面図である。なお、図3では、吐出部D[m]を含むように記録ヘッド32を切断した場合の記録ヘッド32の一部の断面が模式的に示されている。
【0048】
吐出部D[m]は、圧電素子PZ[m]と、内部にインクが充填されたキャビティーCVと、キャビティーCVに連通するノズルNと、振動板321とを有する。吐出部D[m]は、圧電素子PZ[m]が個別駆動信号Vin[m]により駆動されることにより、キャビティーCV内のインクをノズルNから吐出させる。
【0049】
キャビティーCVは、キャビティープレート324と、ノズルNが形成されたノズルプレート323と、振動板321と、により区画される空間である。キャビティーCVは、インク供給口326を介してリザーバ325と連通している。リザーバ325は、インク取入口327を介して、吐出部D[m]に対応するインクタンク6と連通している。これにより、インクタンク6に貯留されているインクは、インク取入口327、リザーバ325及びインク供給口326を含む流路を経由して、キャビティーCVに供給される。すなわち、インク取入口327、リザーバ325及びインク供給口326を含む流路は、インクタンク6に貯留されているインクを吐出部D[m]に供給する流路であり、「流路」の例である。以下では、インク取入口327、リザーバ325及びインク供給口326を含む流路を流れるインクは、記録ヘッド32に充填されているインク、又は、キャビティーCVに充填されているインクとも称される。記録ヘッド32又はキャビティーCVに充填されているインクは、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されるインクに該当する。
【0050】
圧電素子PZ[m]は、上部電極Zu[m]と、下部電極Zd[m]と、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に設けられた圧電体Zb[m]とを有する。圧電体Zb[m]は、例えば、強誘電性の圧電材料により形成される。
【0051】
上部電極Zu[m]は、個別駆動信号Vin[m]が供給される配線Liと電気的に接続される。下部電極Zd[m]は、ベース電位信号VBSが供給される配線Ldと電気的に接続される。そして、上部電極Zu[m]に個別駆動信号Vin[m]が供給されることにより、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に電圧が印加される。圧電素子PZ[m]は、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に印加された電圧に応じて、+Z方向又は-Z方向に変位する。
【0052】
このように、圧電素子PZ[m]は、上部電極Zu[m]及び下部電極Zd[m]の間に印加された電圧に応じて振動する。振動板321には、下部電極Zd[m]が接合されている。このため、圧電素子PZ[m]が個別駆動信号Vin[m]により駆動されて振動することにより、振動板321も振動する。そして、振動板321の振動によりキャビティーCVの容積及びキャビティーCV内の圧力が変化し、キャビティーCV内に充填されたインクがノズルNより吐出される。
【0053】
本実施形態では、一例として、吐出部D[m]に供給される個別駆動信号Vin[m]の電位が低電位から高電位に変化することにより、圧電素子PZが-Z方向に変位する場合を想定する。すなわち、本実施形態では、吐出部D[m]に供給される個別駆動信号Vin[m]の電位が高電位の場合に、低電位の場合と比較して、吐出部D[m]の備えるキャビティーCVの容積が小さくなる場合を想定する。
【0054】
ここで、インクと接触するノズルプレート323等の部材は、例えば、記録ヘッド32で使用されるインクとして推奨されるインクの種類に適した材料で形成される。従って、記録ヘッド32で使用されるインクの種類によって、記録ヘッド32が受けるダメージの程度が異なる場合がある。以下では、記録ヘッド32で使用されるインクとして推奨されるインクは、推奨インクとも称される。例えば、推奨インクと異なるインクが記録ヘッド32に与えるダメージは、推奨インクが記録ヘッド32に与えるダメージよりも大きくなる傾向がある。このため、本実施形態では、例えば、判定部38は、記録ヘッド32で実際に使用されるインクの種類と推奨インクの種類との組み合わせに応じた重み値を用いて、記録ヘッド32の寿命を推測する。具体的には、判定部38は、記録ヘッド32で使用可能な複数種のインクの各々に対して予め決められた重み値を用いて、記録ヘッド32の寿命を推測する。重み値は、例えば、後述する図7に示すように、記憶ユニット34に記憶されている物性情報PINF及びインク情報IINFに基づいて、特定される。以下では、記録ヘッド32の物性として、推奨インクの種類が用いられる場合がある。
【0055】
次に、図4を参照しつつ、ノズルNの配置の一例について説明する。
【0056】
図4は、ヘッドユニット3におけるノズルNの配置の一例を示す平面図である。なお、図4では、-Z方向からインクジェットプリンター1を平面視した場合の、キャリッジ110に搭載された4個のヘッドユニット3と、当該4個のヘッドユニット3に設けられた合計4M個のノズルNの配置の一例が示されている。
【0057】
キャリッジ110に設けられた各ヘッドユニット3には、ノズル列NLが設けられる。ここで、ノズル列NLとは、所定方向に列状に延在するように設けられた複数のノズルNである。本実施形態では、各ノズル列NLが、X方向に延在するように配置されたM個のノズルNから構成される場合を、一例として想定する。
【0058】
次に、図5及び図6を参照しつつ、ヘッドユニット3の概要について説明する。
【0059】
図5は、ヘッドユニット3の構成の一例を示すブロック図である。
【0060】
ヘッドユニット3は、図1において説明したように、供給回路31及び記録ヘッド32を有する。また、ヘッドユニット3は、駆動信号生成ユニット4から駆動信号COMが供給される配線Laと、個別駆動信号Vin[m]を吐出部D[m]に供給する配線Li[m]とを有する。
【0061】
供給回路31は、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個のスイッチWa[1]~Wa[M]と、接続状態指定回路310とを有する。接続状態指定回路310は、M個のスイッチWaの各々の接続状態を指定する。例えば、接続状態指定回路310は、制御ユニット2から供給される印刷信号SI、及び、ラッチ信号LATの少なくとも一部の信号に基づいて、スイッチWa[m]のオンオフを指定する接続状態指定信号Qa[m]を生成する。
【0062】
スイッチWa[m]は、接続状態指定信号Qa[m]に基づいて、配線Laと、吐出部D[m]に設けられた圧電素子PZ[m]の上部電極Zu[m]との、導通及び非導通を切り替える。すなわち、スイッチWa[m]は、接続状態指定信号Qa[m]に基づいて、配線Laと、上部電極Zu[m]に接続された配線Li[m]との、導通及び非導通を切り替える。本実施形態において、スイッチWa[m]は、接続状態指定信号Qa[m]がハイレベルの場合にオンし、ローレベルの場合にオフする。スイッチWa[m]がオンする場合、配線Laに供給される駆動信号COMが、個別駆動信号Vin[m]として、吐出部D[m]の上部電極Zu[m]に配線Li[m]を介して供給される。
【0063】
次に、図6を参照しつつ、ヘッドユニット3の動作について説明する。
【0064】
本実施形態において、インクジェットプリンター1が、印刷処理又はフラッシング処理を実行する場合、インクジェットプリンター1の動作期間として、1又は複数の単位期間TPが設定される。本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、各単位期間TPにおいて、印刷処理又はフラッシング処理のために各吐出部D[m]を駆動することができる。
【0065】
図6は、ヘッドユニット3に供給される信号の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【0066】
制御ユニット2は、パルスPLLを有するラッチ信号LATを出力する。これにより、制御ユニット2は、パルスPLLの立ち上がりから次のパルスPLLの立ち上がりまでの期間として、単位期間TPを規定する。単位期間TPは、例えば、M個の吐出部Dの駆動周期である。また、本実施形態では、駆動信号COMの一周期が単位期間TPである場合を想定する。
【0067】
本実施形態に係る印刷信号SIは、M個の吐出部D[1]~D[M]と1対1に対応するM個の個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む。個別指定信号Sd[m]は、インクジェットプリンター1が印刷処理又はフラッシング処理を実行する場合に、各単位期間TPにおける吐出部D[m]の駆動の態様を指定する。例えば、制御ユニット2は、各単位期間TPに先立って、M個の個別指定信号Sd[1]~Sd[M]を含む印刷信号SIを、クロック信号CLに同期させて接続状態指定回路310に供給する。そして、接続状態指定回路310は、当該単位期間TPにおいて、個別指定信号Sd[m]に基づいて、接続状態指定信号Qa[m]を生成する。
【0068】
例えば、吐出部D[m]は、印刷処理が実行される単位期間TPにおいて、個別指定信号Sd[m]により、ドットを形成する吐出部D、及び、ドットを形成しない吐出部Dのいずれかに指定される。
【0069】
駆動信号COMは、例えば、電位が、基準電位V0から、電位VLa1及び電位VHa1を経て、基準電位V0に戻る波形PAを有する。電位VLa1は、基準電位V0よりも低い電位であり、電位VHa1は、基準電位V0よりも高い電位である。例えば、波形PAを有する個別駆動信号Vin[m]により吐出部D[m]が駆動される場合、個別駆動信号Vin[m]の電位が電位VLa1から電位VHa1に変化することにより、吐出部D[m]内のインクがノズルNから吐出される。なお、基準電位V0、電位VLa1及び電位VHa1の各々は、例えば、吐出部Dによるインクの吐出特性等に基づいて定められる。
【0070】
次に、図7を参照しつつ、記憶ユニット34に記憶される情報の概要について説明する。
【0071】
図7は、ヘッドユニット3に含まれる記憶ユニット34に記憶される情報の概要を説明するための説明図である。図7では、記録ヘッド32で使用可能なインクが6種類のインクである場合を想定する。すなわち、図7では、図1において説明した値nが6である場合を想定する。また、図7では、記録ヘッド32の推奨インクの種類が水性染料のインクである場合を想定する。
【0072】
図7に示す例では、記憶領域SA0に記憶されている物性情報PINFは、記録ヘッド32で使用可能なインクを示す対応インク情報、各インクの重み値を示す情報、及び、推奨インクを示す情報を含む。図7に示す例では、推奨インクが丸印で示されている。また、図7では、水性染料、水性顔料、ソルベント、エコソルベント、UV及びホットメルトの6種類のインクが、記録ヘッド32で使用可能なインクである場合を想定する。
【0073】
例えば、“001”の対応インク情報は、インクが水性染料のインクであることを示し、“010”の対応インク情報は、インクが水性顔料のインクであることを示し、“011”の対応インク情報は、インクがソルベントインクであることを示す。また、例えば、“100”の対応インク情報は、インクがエコソルベントインクであることを示し、“101”の対応インク情報は、インクがUVインクであることを示し、“110”の対応インク情報は、インクがホットメルトインクであることを示す。なお、ソルベントインクは、例えば、有機溶剤を含むインクである。エコソルベントインクは、例えば、有機溶剤として低有機溶剤を含むインクである。UVインクは、例えば、紫外線が照射されることにより、硬化して記録用紙Pに定着するインクである。また、ホットメルトインクは、例えば、常温では固体であり、加熱して使用されるインクである。
【0074】
また、各インクの重み値は、例えば、対応インク情報により示されるインクが使用された場合に、記録ヘッド32が受けるダメージとして算出されるベースダメージに付ける重みである。ベースダメージは、例えば、インクの種類を考慮せずに算出される記録ヘッド32が受けるダメージである。例えば、ベースダメージは、インクの吐出回数に応じて算出されてもよいし、インクの使用期間に応じて算出されてもよいし、画像が形成された記録用紙Pの面数の累積を示す累積印刷面数に応じて算出されてもよい。なお、ベースダメージの算出方法は、上述の例に限定されない、例えば、ベースダメージは、記録ヘッド32が受けるダメージの既知の算出方法を用いて算出されてもよい。
【0075】
図7に示す例では、推奨インクの種類が水性染料のインクである場合を想定しているため、水性染料のインクの重み値は、1に設定されている。また、水性顔料のインクの重み値は、1.1に設定され、ソルベントインクの重み値は、2に設定され、エコソルベントインクの重み値は、1.8に設定され、UVインクの重み値は、1.8に設定され、ホットメルトインクの重み値は、5に設定されている。なお、図7に示す例では、物性情報PINFが、推奨インクを示すフラグ等の情報を含む場合を例示したが、推奨インクは重み値により特定されてもよい。具体的には、例えば、判定部38は、重み値が1に設定されたインクを、記録ヘッド32の推奨インクであると特定してもよい。
【0076】
また、記憶領域SA1には、現時点において使用されているインク、すなわち、記録ヘッド32に充填されているインクに関するインク情報IINF1が、当該インクの使用履歴等を示す管理情報HINF1に対応付けて記憶されている。例えば、インクの使用履歴は、当該インクの吐出回数であってもよいし、当該インクの使用期間であってもよいし、当該インクの累積印刷面数であってもよい。あるいは、インクの使用履歴は、当該インクの吐出回数、使用期間及び累積印刷面数のうちの2個以上を含んでもよい。また、インクの使用履歴は、当該インクの吐出回数、使用期間及び累積印刷面数に代えて又は加えて、当該インクの吐出回数、使用期間及び累積印刷面数以外の情報を含んでもよい。
【0077】
また、記憶領域SA2には、吐出部Dから吐出されるインクとして、インク情報IINF1により示されるインクが使用される前に使用されたインクに関するインク情報IINF2が、当該インクの管理情報HINF2に対応付けて記憶されている。また、記憶領域SA3には、吐出部Dから吐出されるインクとして、インク情報IINF2により示されるインクが使用される前に使用されたインクに関するインク情報IINF3が、当該インクの管理情報HINF3に対応付けて記憶されている。
【0078】
また、記憶領域SA4には、吐出部Dから吐出されるインクとして、インク情報IINF3により示されるインクが使用される前に使用されたインクに関するインク情報IINF4が、当該インクの管理情報HINF4に対応付けて記憶されている。また、記憶領域SA5には、吐出部Dから吐出されるインクとして、インク情報IINF4により示されるインクが使用される前に使用されたインクに関するインク情報IINF5が、当該インクの管理情報HINF5に対応付けて記憶されている。
【0079】
また、記憶領域SA6には、吐出部Dから吐出されるインクとして、インク情報IINF5により示されるインクが使用される前に使用されたインクに関するインク情報IINF6が、当該インクの管理情報HINF6に対応付けて記憶されている。以下では、管理情報HINF1、HINF2、HINF3、HINF4、HINF5及びHINF6を、管理情報HINFと総称する場合がある。
【0080】
図7に示す例では、インク情報IINF1により示されるインクは、水性染料のインクであり、「第1インク」の例である。また、インク情報IINF2により示されるインクは、エコソルベントインクであり、「第2インク」の例である。インク情報IINF3により示されるインクは、水性顔料のインクであり、「第3インク」の例である。インク情報IINF4により示されるインクは、ソルベントインクであり、インク情報IINF5により示されるインクは、UVインクであり、インク情報IINF6により示されるインクは、ホットメルトインクである。このように、「第1インク」及び「第2インク」は、互いに異なる種類のインクであり、「第3インク」は、「第1インク」及び「第2インク」と異なる種類のインクである。
【0081】
ここで、図7に示す例において、吐出部Dから吐出されるインクとして、UVインク及びホットメルトインクが現時点までに使用されていない場合、記憶領域SA5及びSA6に、インク情報IINF及び管理情報HINFが記憶されなくてもよい。また、例えば、水性染料のインク、水性顔料のインク及び水性染料のインクの順に2種類のインクのみが使用された場合、最初に使用された水性染料のインクの管理情報HINFは、記憶領域SA1に記憶されている管理情報HINF1に含まれてもよい。
【0082】
なお、記憶領域SA1、SA2、SA3、SA4、SA5及びSA6に記憶される情報は、図7に示す例に限定されない。例えば、複数の記憶領域SAの各々には、複数のインクのうち、予め決められたインクのインク情報IINFと、当該インクが使用された順番を示す順番情報を含む管理情報HINFとが記憶されてもよい。具体的には、例えば、記憶領域SA1には、水性染料のインクのインク情報IINF及び管理情報HINFが記憶され、記憶領域SA2には、水性顔料のインクのインク情報IINF及び管理情報HINFが記憶される。記憶領域SA3には、ソルベントインクのインク情報IINF及び管理情報HINFが記憶され、記憶領域SA4には、エコソルベントインクのインク情報IINF及び管理情報HINFが記憶される。そして、記憶領域SA5には、UVインクのインク情報IINF及び管理情報HINFが記憶され、記憶領域SA6には、ホットメルトインクのインク情報IINF及び管理情報HINFが記憶される。この場合、現時点で使用されているインクである第1インクを示す順番情報を含む管理情報HINFが記憶された記憶領域SAが「第2記憶領域」の例である。また、第1インクの前に使用されたインクである第2インクを示す順番情報を含む管理情報HINFが記憶された記憶領域SAが「第3記憶領域」の例である。そして、第2インクの前に使用されたインクである第3インクを示す順番情報を含む管理情報HINFが記憶された記憶領域SAが、「第4記憶領域」の例である。なお、第3インクよりも前に使用されたインクを示す順番情報を含む管理情報HINFが記憶された記憶領域SAも、「第4記憶領域」の例である。
【0083】
次に、記憶ユニット34に複数のインク情報IINFが記憶されている場合の判定部38の動作の一例を簡単に説明する。例えば、判定部38は、記憶ユニット34に記憶されているインク情報IINF毎に、当該インク情報IINFに対応付けられた管理情報HINFに基づいて、当該インク情報IINFにより示されるインクの使用期間における記録ヘッド32のベースダメージを算出する。そして、判定部38は、例えば、各インクの使用期間における記録ヘッド32のベースダメージと当該インクの重み値との積を、当該インクの使用期間における記録ヘッド32のダメージとして算出する。これにより、記録ヘッド32で使用されたインク毎に、インクの種類を考慮した記録ヘッド32のダメージが算出される。そして、判定部38は、記憶ユニット34に記憶されている複数のインク情報IINFに対応する複数のインクのそれぞれの使用期間における記録ヘッド32のダメージの総和を、記録ヘッド32の現時点までのダメージとして算出する。
【0084】
例えば、判定部38は、予め決められた上限値と記録ヘッド32の現時点までのダメージとの差が、閾値以上である場合、記録ヘッド32を継続して使用可能であると判定する。すなわち、判定部38は、上限値と記録ヘッド32の現時点までのダメージとの差が、閾値未満である場合、記録ヘッド32を継続して使用することができないと判定する。なお、閾値又は上限値は、インクタンク6に貯留されているインクの重み値に応じて変化してもよい。例えば、インクタンク6に貯留されているインクの重み値が大きい場合、重み値が小さい場合に比べて、記録ヘッド32が今後受けるダメージが大きくなる。このため、インクタンク6に貯留されているインクの重み値が大きい場合、重み値が小さい場合に比べて、大きな閾値又は小さな上限値が、用いられてもよい。
【0085】
なお、例えば、記憶ユニット34に記憶されているインク情報IINFが1個の場合、当該インク情報IINFにより示されるインクの使用期間における記録ヘッド32のダメージが、記録ヘッド32の現時点までのダメージに該当する。
【0086】
ここで、例えば、ホットメルトインク等の温度により固化するインクは、当該インクの仕様に適さない記録ヘッド32で使用された場合、記録ヘッド32におけるインクの流路内で固化するおそれがある。また、ソルベント系のインクと水性インクとでは、記録ヘッド32に用いられる接着剤等が異なるため、記録ヘッド32に適したインクが使用されない場合、接着剤が溶解してしまう等のダメージの蓄積量が異なる。このため、本実施形態では、判定部38は、記録ヘッド32で使用されたインクの種類と推奨インクの種類との組み合わせに応じた重み値を用いて算出した記録ヘッド32のダメージに基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する。これにより、本実施形態では、重み値が用いられない場合に比べて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを正確に判定することができる。
【0087】
例えば、本実施形態では、インクの種類、すなわち、インクの物性が、推奨インクの種類、すなわち、記録ヘッド32の物性と揃っている場合、ベースダメージと乗算される重み値は1である。また、インクの物性が記録ヘッド32の物性と異なる場合、ベースダメージと乗算される重み値は1より大きな値となる。特に、インクの物性と記録ヘッド32の物性との対応関係が悪い組み合わせでは、重み値は、1.8、2又は5のように、インクの物性と記録ヘッド32の物性との対応関係が適切な場合に比べて大きな値となる。これにより、本実施形態では、インクの物性と記録ヘッド32の物性との組み合わせに応じた記録ヘッド32のダメージを正確に把握することができる。この結果、本実施形態では、記録ヘッド32の残りの寿命の予測精度を向上することができ、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを正確に判定することができる。
【0088】
次に、図8を参照しつつ、記録ヘッド32の物性と記録ヘッド32で使用可能なインクの種類との組み合わせに応じて決められる重み値の例について説明する。
【0089】
図8は、記録ヘッド32の物性とインクの種類との組み合わせに応じて決められる重み値の一例を説明するための説明図である。図8では、記録ヘッド32の物性が記録ヘッド32の推奨インクの種類によって分類される場合を想定する。推奨インクの種類によって分類される記録ヘッド32毎に、使用可能な複数種のインクの各々に対して重み値が設定されている。
【0090】
推奨インクが水性染料のインクである記録ヘッド32の各インクの重み値については、図7において説明した重み値と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
推奨インクが水性顔料のインクである記録ヘッド32では、水性染料のインクの重み値は、1.1に設定され、水性顔料のインクの重み値は、1に設定され、ソルベントインクの重み値は、2.5に設定されている。そして、エコソルベントインクの重み値は、2.4に設定され、UVインクの重み値は、2.4に設定され、ホットメルトインクの重み値は、5に設定されている。
【0092】
また、推奨インクがソルベントインクである記録ヘッド32では、水性染料のインクの重み値は、2に設定され、水性顔料のインクの重み値は、1.8に設定されている。そして、ソルベントインクの重み値及びエコソルベントインクの重み値は、1に設定され、UVインクの重み値は、1.4に設定され、ホットメルトインクの重み値は、6に設定されている。
【0093】
また、推奨インクがエコソルベントインクである記録ヘッド32では、水性染料のインクの重み値は、2.5に設定され、水性顔料のインクの重み値は、2.4に設定されている。そして、ソルベントインクの重み値及びエコソルベントインクの重み値は、1に設定され、UVインクの重み値は、1.4に設定され、ホットメルトインクの重み値は、6に設定されている。
【0094】
また、推奨インクがUVインクである記録ヘッド32では、水性染料のインクの重み値は、1.8に設定され、水性顔料のインクの重み値は、2.4に設定され、ソルベントインクの重み値は、1.2に設定されている。そして、エコソルベントインクの重み値は、1.4に設定され、UVインクの重み値は、1に設定され、ホットメルトインクの重み値は、6に設定されている。
【0095】
また、推奨インクがホットメルトインクである記録ヘッド32では、水性染料のインクの重み値及び水性顔料のインクの重み値は、5に設定されている。そして、ソルベントインクの重み値、エコソルベントインクの重み値、及び、UVインクの重み値は、6に設定され、ホットメルトインクの重み値は、1に設定されている。
【0096】
なお、重み値の数値は、図8に示す例に限定されない。また、記録ヘッド32で使用可能なインクの種類、及び、記録ヘッド32の推奨インクの種類は、図8に示す例に限定されない。例えば、水性染料のインク及び水性顔料のインクは、特に区別せずに、水性インクとして扱われてもよい。また、例えば、ソルベントインク及びエコソルベントインクは、特に区別せずに、ソルベントインクとして扱われてもよい。また、一の記録ヘッド32の推奨インクの種類が2種類以上であってもよい。
【0097】
また、図8に示すテーブルが、図9に示すように、重みテーブルTBLとして記憶ユニット34に記憶されてもよい。
【0098】
図9は、ヘッドユニット3に含まれる記憶ユニット34に記憶される情報の別の例を説明するための説明図である。図9では、ソルベントインク、水性顔料のインク、エコソルベントインク及び水性染料のインクの順に4種類のインクのみが使用された場合を想定する。すなわち、図9に示す例では、吐出部Dから吐出されるインクとして、UVインク及びホットメルトインクが現時点までに使用されていない。このため、記憶領域SA5及びSA6には、インク情報IINF及び管理情報HINFは記憶されていない。図9の“NULL”は、インク情報IINF及び管理情報HINFのいずれも記憶されていないことを示す。なお、記憶領域SA1、SA2、SA3及びSA4に記憶される情報については、図7に示した記憶領域SA1、SA2、SA3及びSA4に記憶される情報と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
図9に示す例では、記憶ユニット34は、重みテーブルTBLを記憶する記憶領域SAtblをさらに含む。重みテーブルTBLは、例えば、記録ヘッド32の物性とインクの種類との組み合わせに応じて決められる重み値が記憶されている図8に示したテーブルである。
【0100】
また、記憶領域SA0には、記録ヘッド32の推奨インクを示す物性情報PINFが記憶されている。例えば、判定部38は、記憶領域SA0に記憶されている物性情報PINFと記憶領域SAtblに記憶されている重みテーブルTBLとに基づいて、記憶領域SA1等に記憶されているインク情報IINFにより示されるインクの重み値を特定する。
【0101】
なお、記憶領域SAtblに記憶されている重みテーブルTBLは、図8に示したテーブルのうち、物性情報PINFにより示される推奨インクに対応するレコードのみを有してもよい。図9に示す例では、重みテーブルTBLは、図8に示したテーブルのうち、推奨インクが水性染料のインクである記録ヘッド32の各インクの重み値を含むレコードのみを有してもよい。
【0102】
次に、図10及び図11を参照しつつ、インクタンク6が交換された場合のインクジェットプリンター1の動作について説明する。
【0103】
図10は、インクジェットプリンター1の動作の一例を示すシーケンスチャートである。なお、図10では、交換後のインクタンク6に貯留されているインクの種類が記録ヘッド32に充填されているインクの種類と異なる場合のインクジェットプリンター1の動作が示されている。また、図10では、記録ヘッド32を継続して使用することが可能である場合を想定する。図10に示す動作では、制御ユニット2は、ヘッド制御部22として機能し、制御ユニット36は、判定部38として機能する。なお、図10及び後述する図11では、ヘッド制御部22として機能する制御ユニット2、記憶ユニット5及び弁VALを含む要素を、ヘッドユニット3と区別して、本体部と記載している。
【0104】
先ず、ステップS100において、ヘッド制御部22は、例えば、弁VALを閉鎖状態に設定するための制御信号CTLcを弁VALに出力する。これにより、弁VALは、ステップS102において、インクタンク6が装着部62から取り外される前に閉鎖状態になる。
【0105】
次に、ステップS110において、判定部38は、交換後のインクタンク6に貯留されているインクのインク情報IINF0をヘッド制御部22から取得する。例えば、ヘッド制御部22は、交換後のインクタンク6に貯留されているインクのインク情報IINF0を取得し、取得したインク情報IINF0を判定部38に出力する。なお、ヘッド制御部22によるインク情報IINF0の取得は、例えば、インクタンク6を交換したユーザーが図示しない操作部を操作して、インク情報IINF0をヘッド制御部22に入力することにより、実現されてもよい。あるいは、インクタンク6に、インク情報IINF0が記憶されたIC(Integrated Circuit)チップが装着されている場合、ヘッド制御部22は、インクタンク6に装着されたICチップからインク情報IINF0を読み出してもよい。あるいは、インクタンク6に、インク情報IINF0を示すバーコード等のコード情報が印刷されている場合、ヘッド制御部22は、インクタンク6に印刷されたコード情報を読み取ることにより、インク情報IINF0を取得してもよい。ステップS110の処理により、判定部38は、インクタンク6に貯留されているインクの種類を把握できる。
【0106】
次に、ステップS120において、判定部38は、記憶ユニット34に記憶されている物性情報PINF、インク情報IINF及び管理情報HINFを、記憶ユニット34から読み出す。これにより、判定部38は、記録ヘッド32の推奨インク、現時点までに記録ヘッド32で使用されたインクの種類及び使用履歴等を把握できる。
【0107】
次に、ステップS130において、判定部38は、後述する第1判定、第2判定、及び、第3判定のうちの少なくとも1つを含む判定処理を実行する。例えば、判定部38は、第1判定を実行し、第1判定の結果が肯定である場合に第2判定を実行し、第2判定の結果が肯定である場合に第3判定を実行する。
【0108】
第1判定では、判定部38は、交換後のインクタンク6に貯留されているインクが記録ヘッド32で使用可能なインクであるか否かを判定する。例えば、判定部38は、ヘッド制御部22から取得したインク情報IINF0により示されるインクが記録ヘッド32で使用可能なインクであるか否かを、物性情報PINF等に基づいて判定する。記録ヘッド32で使用可能なインクは、例えば、図7に示した物性情報PINFが記憶ユニット34に記憶されている場合、記憶ユニット34から読み出された物性情報PINFに含まれる対応インク情報により特定される。なお、図9に示した物性情報PINFが記憶ユニット34に記憶されている場合、判定部38は、ステップS120において、物性情報PINF、インク情報IINF及び管理情報HINFに加えて、重みテーブルTBLを記憶ユニット34から読み出す。この場合、記録ヘッド32で使用可能なインクは、重みテーブルTBLに記憶されている情報により特定される。
【0109】
図10に示す例では、交換後のインクタンク6に貯留されているインクが記録ヘッド32で使用可能なインクである場合を想定しているため、第2判定が実行される。
【0110】
第2判定では、判定部38は、記憶ユニット34から読み出した物性情報PINF、インク情報IINF及び管理情報HINF等に基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する。記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する場合の判定部38の動作については、図7において説明したため、説明を省略する。
【0111】
なお、図10では、上述したように、記録ヘッド32を継続して使用することが可能である場合を想定しているため、第3判定が実行される。
【0112】
第3判定では、判定部38は、交換後のインクタンク6に貯留されているインクの種類が現時点において記録ヘッド32に充填されているインクの種類と等しいか否かを判定する。例えば、判定部38は、インク情報IINF0により示されるインクの種類がインク情報IINF1により示されるインクの種類と等しいか否かを判定する。図10では、上述したように、交換後のインクタンク6に貯留されているインクの種類が記録ヘッド32に充填されているインクの種類と異なる場合を想定している。このため、判定部38は、交換後のインクタンク6に貯留されているインクの種類が現時点において記録ヘッド32に充填されているインクの種類と異なると判定する。判定部38は、ステップS130の判定処理を実行した後、処理をステップS132に進める。
【0113】
ステップS132において、判定部38は、ステップS130の判定処理の結果を示す情報RINTをヘッド制御部22に出力する。これにより、ヘッド制御部22は、交換後のインクタンク6に貯留されているインクが記録ヘッド32で使用可能なインクであること、記録ヘッド32を継続して使用可能であること、及び、交換後のインクタンク6に貯留されているインクの種類が記録ヘッド32に充填されているインクの種類と異なることを把握できる。
【0114】
ステップS140において、ヘッド制御部22は、情報RINTにより示される内容、すなわち、ステップS130の判定処理の結果の内容を、図示しない表示部に表示する。これにより、ユーザーは、交換後のインクタンク6に貯留されているインクの種類と記録ヘッド32に充填されているインクの種類とが異なること等を把握できる。なお、図10では、インクタンク6の交換が継続される場合を想定しているため、ヘッド制御部22は、処理をステップS150に進める。
【0115】
ステップS150において、ヘッド制御部22は、流路64及び記録ヘッド32に充填されているインクを排出するためのインク排出処理を実行する。例えば、ヘッド制御部22は、メンテナンスユニット8に含まれるチューブポンプを駆動することにより、流路64、インク取入口327、リザーバ325、インク供給口326及び吐出部D等に充填されているインクを吸引する。これにより、流路64及び記録ヘッド32に充填されているインクが排出される。
【0116】
次に、ステップS152において、ヘッド制御部22は、記録ヘッド32にインクを再充填するためのインク再充填処理を実行する。例えば、ヘッド制御部22は、弁VALを開放状態に設定するための制御信号CTLoを弁VALに出力する。これにより、弁VALがステップS154において開放状態になり、交換後のインクタンク6に貯留されているインクが記録ヘッド32に充填される。
【0117】
また、ステップS160において、判定部38は、記憶ユニット34に記憶されているインク情報IINF等を更新する。例えば、判定部38は、インク情報IINF0をインク情報IINF1として記憶ユニット34の記憶領域SA1に記憶し、さらに、インク情報IINF1の管理情報HINF1を記憶領域SA1に記憶する。なお、インク情報IINF0が記憶領域SA1に記憶される前に、記憶領域SAiに記憶されていたインク情報IINFi及び管理情報HINFiは、インク情報IINFj及び管理情報HINFjとして、記憶領域SAjに記憶される。値iは、1以上5以下の自然数であり、値jは、値iに1を加算した値である。
【0118】
これにより、記憶ユニット34に記憶されているインク情報IINF及び管理情報HINFは、ステップS162において、更新される。
【0119】
なお、ステップS140の処理は、省かれてもよい。また、インクタンク6に貯留されているインクの種類と記録ヘッド32に充填されているインクの種類とが等しい場合、ステップS150及びS152の一連の処理との一方又は両方は、実行されなくてもよい。
【0120】
また、図10では、インクタンク6に貯留されているインクの種類と記録ヘッド32に充填されているインクの種類とが異なる状態でも、インクタンク6の交換が継続される場合を想定したが、インクタンク6の交換は、ユーザー操作等に応じて中止されてもよい。例えば、ステップS140により表示部に表示された内容を確認したユーザーは、図示しない操作部を操作して、インクタンク6の交換を中止することを示す情報をヘッド制御部22に入力してもよい。この場合、ヘッド制御部22は、ステップS150及びS152の一連の処理を実行せずに、インクタンク6の交換を中止することを示す中止情報を判定部38に出力してもよい。中止情報を受信した判定部38は、ステップS160の処理を実行しない。このため、記憶ユニット34は、更新されない。また、弁VALは、閉鎖状態に維持される。
【0121】
次に、図11を参照しつつ、記録ヘッド32を継続して使用することができない場合のインクジェットプリンター1の動作について説明する。
【0122】
図11は、インクジェットプリンター1の動作の別の例を示すシーケンスチャートである。図11では、記録ヘッド32を継続して使用することができない場合のインクジェットプリンター1の動作が示されている。図10において説明した動作と同様な動作については、詳細な説明を省略する。図10に示す動作は、ステップS150、S152及びS154の一連の処理、及び、ステップS160及びS162の一連の処理が実行されないことを除いて、図10に示した動作と同様である。但し、ステップS130の判定処理の結果は、図10に示した動作と相違する。図11では、交換後のインクタンク6に貯留されているインクが記録ヘッド32で使用可能なインクであるか否かを判定する第1判定の結果は肯定であるが、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する第2判定の結果が否定である場合を想定する。
【0123】
また、図11では、第2判定において、上限値と記録ヘッド32の現時点までのダメージとの差と比較される閾値が、インクタンク6に貯留されているインクの重み値に応じて変化する場合を想定する。具体的には、交換後のインクタンク6に貯留されているインクに対応する閾値が、交換前のインクタンク6に貯留されているインクに対応する閾値よりも大きい場合を想定する。より具体的には、上限値と記録ヘッド32の現時点までのダメージとの差が、交換前のインクタンク6に貯留されているインクに対応する閾値以上であるが、交換後のインクタンク6に貯留されているインクに対応する閾値未満である場合を想定する。
【0124】
このため、ステップS130において、判定部38は、記録ヘッド32を継続して使用することができないと判定する。第2判定の結果が否定であるため、交換後のインクタンク6に貯留されているインクの種類が現時点において記録ヘッド32に充填されているインクの種類と等しいか否かを判定する第3判定は、実行されなくてもよい。判定部38は、ステップS130の判定処理を実行した後、処理をステップS132に進める。
【0125】
ステップS132において、判定部38は、ステップS130の判定処理の結果を示す情報RINTをヘッド制御部22に出力する。これにより、ヘッド制御部22は、交換後のインクタンク6に貯留されているインクが記録ヘッド32で使用可能なインクであること、及び、記録ヘッド32を継続して使用することができないことを把握できる。
【0126】
ステップS140において、ヘッド制御部22は、情報RINTにより示される内容、すなわち、ステップS130の判定処理の結果の内容を、表示部に表示する。これにより、ユーザーは、記録ヘッド32を継続して使用することができないこと等を把握できる。この場合、例えば、ユーザーは、ヘッドユニット3を交換する作業を実行してもよい。なお、情報RINTにより示される内容のユーザーへの通知、例えば、記録ヘッド32を継続して使用することができない等の警告は、スピーカーから警告音を発生させること、又は、ランプを点灯させること等により、実現されてもよい。
【0127】
このように、本実施形態では、記録ヘッド32で使用されるインクの種類がインクタンク6の交換により変更された場合においても、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを正確に判定することができる。なお、ステップS130において、第1判定の結果が否定である場合においても、インクジェットプリンター1の動作は、図11に示す動作と同様の動作となる。
【0128】
ここで、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する第2判定の実行タイミングは、インクタンク6が交換された場合に限定されない。例えば、第2判定は、ヘッドユニット3が交換された場合に実行されてもよいし、インクジェットプリンター1が起動された場合に実行されてもよい。あるいは、第2判定は、周期的に実行されてもよい。例えば、第2判定は、第2判定が実行されてからのインクの吐出回数が所定回数に達する度に実行されてもよい。また、例えば、第2判定は、第2判定が実行されてからの累積印刷面数が所定面数に達する度に実行されてもよい。また、例えば、判定部38は、第2判定により推測した記録ヘッド32の寿命に基づいて、第2判定の次の実行タイミングを決定してもよい。また、第2判定の実行タイミングは、上述の例の組み合わせにより決定されてもよい。
【0129】
以上、本実施形態では、ヘッドユニット3は、インクを吐出する吐出部D、及び、吐出部Dにインクを供給する流路を含む記録ヘッド32と、記録ヘッド32の物性に関する物性情報PINFを記憶する記憶領域SA0、流路を流れる第1インクに関するインク情報IINF1を記憶する記憶領域SA1、及び、第1インクと異なる種類の第2インクに関するインク情報IINF2を記憶する記憶領域SA2を含む記憶ユニット34と、記憶領域SA0、SA1及びSA2にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する判定部38と、を有する。第2インクは、吐出部Dから吐出されるインクとして第1インクが使用される前に、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されたインクである。なお、吐出部Dにインクを供給する流路は、例えば、インク取入口327、リザーバ325及びインク供給口326を含む流路である。
【0130】
このように、本実施形態では、記録ヘッド32で使用されるインクの種類、及び、記録ヘッド32の物性等も考慮して、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かが判定される。例えば、判定部38は、記録ヘッド32内の流路を流れる第1インク、吐出部Dから吐出されるインクとして第1インクよりも前に使用された第2インク、及び、記録ヘッド32の物性等に基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する。ここで、例えば、インクの物性と記録ヘッド32の物性との対応関係が悪い組み合わせである場合、インクの物性と記録ヘッド32の物性との対応関係が適切な組み合わせである場合に比べて、記録ヘッド32が受けるダメージが大きくなる。このため、記録ヘッド32のダメージの推測においてインクの種類及び記録ヘッド32の物性等が考慮されない場合、インクの種類及び記録ヘッド32の物性等が考慮される場合に比べて、推測の精度が低下する。本実施形態では、上述したように、記録ヘッド32で使用されるインクの種類、及び、記録ヘッド32の物性等に基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かが判定される。このため、本実施形態では、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを正確に判定することができる。
【0131】
また、本実施形態では、記憶ユニット34は、第1インク及び第2インクと異なる種類の第3インクに関するインク情報IINF3を含む複数のインク情報IINFをそれぞれ記憶する複数の記憶領域SAをさらに含む。第3インクは、吐出部Dから吐出されるインクとして第2インクが使用される前に、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されたインクである。参照情報は、記憶領域SA0、記憶領域SA1、記憶領域SA2及び複数の記憶領域SAにそれぞれ記憶されている情報を含む。この場合においても、現時点までに記録ヘッド32で使用されるインクの種類等が記録ヘッド32を継続して使用可能か否かの判定に用いられるため、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを正確に判定することができる。
【0132】
また、本実施形態では、物性情報PINFは、記録ヘッド32で使用されるインクとして推奨されるインクの種類に関する情報である。これにより、本実施形態では、記録ヘッド32で使用されるインクが、記録ヘッド32の推奨インクであるか否かを容易に判定することができる。
【0133】
また、本実施形態では、インク情報IINF1は、ソルベントインク及び水性インクを含む複数の種類のインクの中から各インクの種類を識別するためのインク物性に関する情報である。これにより、本実施形態では、記録ヘッド32で使用されるインクの種類と記録ヘッド32の推奨インクの種類との対応関係に応じて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを正確に判定することができる。
【0134】
[2.変形例]
以上の各形態は多様に変形され得る。具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲内で適宜に併合され得る。なお、以下に例示する変形例において作用や機能が実施形態と同等である要素については、以上の説明で参照した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
【0135】
[第1変形例]
上述した実施形態では、吐出部Dから吐出されるインクとして第1インクよりも前に使用された第2インクに関するインク情報IINF2等が記憶ユニット34に記憶される場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、記憶ユニット34は、図12に示すように、吐出部Dから吐出されるインクとして第1インクが使用される前までに記録ヘッド32が受けたダメージの程度を示すダメージ情報DINFを、インク情報IINF2-IINFnの代わりに記憶してもよい。以下では、ダメージの程度は、ダメージ量とも称される。
【0136】
図12は、ヘッドユニット3に含まれる記憶ユニット34に記憶される情報の変形例を説明するための説明図である。
【0137】
記憶ユニット34は、インク情報IINF2、IINF3、IINF4、IINF5及びIINF6と、管理情報HINF2、HINF3、HINF4、HINF5及びHINF6との代わりに、ダメージ情報DINFを記憶する。記憶ユニット34に記憶されるその他の情報は、図7に示した情報と同様である。例えば、記憶ユニット34は、物性情報PINFが記憶される記憶領域SA0と、インク情報IINF1及び管理情報HINF1が記憶される記憶領域SA1と、ダメージ情報DINFが記憶される記憶領域SA2とを含む。
【0138】
ダメージ情報DINFは、例えば、インク情報IINF1により示されるインクが吐出部Dから吐出されるインクとして使用される前までに記録ヘッド32が受けたダメージの程度を示す。例えば、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されるインクの交換が行われていない場合、すなわち、インクの交換が0回の場合、ダメージ情報DINFにより示されるダメージ量は、0である。この場合、判定部38は、インク情報IINF1及び管理情報HINF1に基づいて算出されるベースダメージと、インク情報IINF1及び物性情報PINFに基づいて特定される重み値との積を、記録ヘッド32の現時点までのダメージとして算出する。
【0139】
また、例えば、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されるインクの交換が1回の場合、インクの交換時に、物性情報PINF、インク情報IINF1及び管理情報HINF1に基づいて、記録ヘッド32の現時点までのダメージが算出される。そして、物性情報PINF、インク情報IINF1及び管理情報HINF1に基づいて算出された記録ヘッド32の現時点までのダメージの程度を示す情報が、ダメージ情報DINFとして、記憶領域SA2に記憶される。
【0140】
また、例えば、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されるインクの交換がk回の場合、k回目のインクの交換時までに記録ヘッド32が受けたダメージの算出に、k-1回目のインク交換時に記憶領域SA2に記憶されたダメージ情報DINFが用いられる。なお、値kは、2以上の自然数である。例えば、判定部38は、インク情報IINF1により示されるインクの使用期間における記録ヘッド32のダメージを、物性情報PINF、インク情報IINF1及び管理情報HINF1に基づいて算出する。そして、判定部38は、インク情報IINF1により示されるインクの使用期間における記録ヘッド32のダメージ量と、ダメージ情報DINFにより示されるダメージ量との和を、k回目のインクの交換時までに記録ヘッド32が受けたダメージとして算出する。インクの交換がk回の場合、k回目のインクの交換時までに記録ヘッド32が受けたダメージは、記録ヘッド32の現時点までのダメージに該当する。また、判定部38は、k回目のインクの交換時までに記録ヘッド32が受けたダメージの程度を示す情報を、ダメージ情報DINFとして、記憶領域SA2に記憶する。これにより、ダメージ情報DINFが更新される。
【0141】
なお、ダメージ情報DINFの更新タイミングは、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されるインクの交換が行われる場合に限定されない。例えば、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する第2判定が実行される度に、ダメージ情報DINFが更新されてもよい。この場合、例えば、インクが交換されたか否かにかかわらず、ダメージ情報DINFが更新される度に、管理情報HINF1が初期値にリセットされる。
【0142】
また、図9に示す例において、インク情報IINF2及び管理情報HINF2の代わりにダメージ情報DINFが記憶領域SA2に記憶され、記憶領域SA3、SA4、SA5及びSA6が省かれてもよい。
【0143】
以上、本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、本変形例では、ヘッドユニット3は、インクを吐出する吐出部D、及び、吐出部Dにインクを供給する流路を含む記録ヘッド32と、記録ヘッド32の物性に関する物性情報PINFを記憶する記憶領域SA0、流路を流れるインクに関するインク情報IINF1を記憶する記憶領域SA1、及び、吐出部Dから吐出されるインクとして第1インクが使用される前までに記録ヘッド32が受けたダメージの程度を示すダメージ情報DINFを記憶する記憶領域SA2を含む記憶ユニット34と、記憶領域SA0、SA1及びSA2にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する判定部38と、を有する。本変形例では、吐出部Dから吐出されるインクとして第1インクが使用される前までに記録ヘッド32が受けたダメージの程度を示すダメージ情報DINFが記憶領域SA2に記憶されるため、記録ヘッド32の記憶領域SAが増加することを抑制することができる。
【0144】
[第2変形例]
上述した実施形態及び変形例では、ヘッドユニット3に含まれる制御ユニット36が判定部38として機能する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、制御ユニット2が、判定部38として機能してもよい。
【0145】
図13は、第2変形例におけるインクジェットプリンター1Aの構成の一例を示すブロック図である。図1から図12において説明した要素と同様の要素については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0146】
インクジェットプリンター1Aは、図1に示したヘッドユニット3の代わりにヘッドユニット3Aを有することを除いて、図1に示したインクジェットプリンター1と同様である。但し、制御ユニット2は、記憶ユニット5に記憶されている制御プログラムを実行することによって、ヘッド制御部22に加えて、判定部28としても機能する。なお、制御ユニット2の機能の一部又は全部を、FPGA等のハードウェアによって実現してもよい。判定部28は、図1等に示した判定部38と同様である。
【0147】
ヘッドユニット3Aは、図1に示した制御ユニット36が省かれることを除いて、図1に示したヘッドユニット3と同様である。ヘッドユニット3Aは、「プリントヘッド」の例である。なお、制御ユニット36は、ヘッドユニット3Aから省かれなくてもよい。
【0148】
インクジェットプリンター1Aの動作は、図10及び図11に示した判定部38の処理を判定部28が実行することを除いて、図10及び図11に示した動作と同様である。
【0149】
例えば、図10又は図11に示したステップS110において、制御ユニット2は、判定部28として機能し、交換後のインクタンク6に貯留されているインクのインク情報IINF0をヘッド制御部22から取得する。なお、図10において説明したヘッド制御部22によるインク情報IINF0の取得は、判定部28により実現されてもよい。例えば、インクタンク6を交換したユーザーが図示しない操作部を操作することにより、インク情報IINF0が判定部28に入力されてもよい。あるいは、インク情報IINF0が記憶されたICチップがインクタンク6に装着されている場合、判定部28は、インクタンク6に装着されたICチップからインク情報IINF0を読み出してもよい。あるいは、インク情報IINF0を示すバーコード等のコード情報がインクタンク6に印刷されている場合、判定部28は、インクタンク6に印刷されたコード情報を読み取ることにより、インク情報IINF0を取得してもよい。
【0150】
また、例えば、図10又は図11に示したステップS120において、制御ユニット2は、判定部28として機能し、物性情報PINF、インク情報IINF及び管理情報HINFを、記憶ユニット34から読み出す。これにより、判定部28は、記録ヘッド32の推奨インク、現時点までに記録ヘッド32で使用されたインクの種類及び使用履歴等を把握できる。
【0151】
また、例えば、図10又は図11に示したステップS120において、制御ユニット2は、判定部28として機能し、図10において説明した第1判定、第2判定、及び、第3判定のうちの少なくとも1つを含む判定処理を実行する。そして、図10又は図11に示したステップS132において、制御ユニット2は、判定部28として機能し、ステップS130の判定処理の結果を示す情報RINTをヘッド制御部22に通知する。例えば、判定部28は、ステップS132において、情報RINTを記憶ユニット5に記憶してもよい。
【0152】
なお、インクジェットプリンター1Aの構成は、図13に示す例に限定されない。例えば、記憶ユニット34に記憶される情報は、図9に示した情報であってもよい。
【0153】
以上、本変形例においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、本変形例では、インクジェットプリンター1Aは、ヘッドユニット3A及び判定部28を有する。ヘッドユニット3Aは、インクを吐出する吐出部D、及び、吐出部Dにインクを供給する流路を含む記録ヘッド32と、記録ヘッド32の物性に関する物性情報PINFを記憶する記憶領域SA0、流路を流れる第1インクに関するインク情報IINF1を記憶する記憶領域SA1、及び、第1インクと異なる種類の第2インクに関するインク情報IINF2を記憶する記憶領域SA2を含む記憶ユニット34と、を有する。第2インクは、吐出部Dから吐出されるインクとして第1インクが使用される前に、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されたインクである。判定部28は、記憶領域SA0、SA1及びSA2にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する。
【0154】
また、本変形例においても、記憶ユニット34は、第1インク及び第2インクと異なる種類の第3インクに関するインク情報IINF3を含む複数のインク情報をそれぞれ記憶する複数の記憶領域SA3をさらに含んでもよい。第3インクは、吐出部Dから吐出されるインクとして第2インクが使用される前に、吐出部Dから吐出されるインクとして使用されたインクである。参照情報は、記憶領域SA0、記憶領域SA1、記憶領域SA2及び複数の記憶領域SAにそれぞれ記憶されている情報を含む。この場合においても、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0155】
また、本変形例においても、記憶ユニット34は、記録ヘッド32の物性に関する物性情報PINFを記憶する記憶領域SA0、流路を流れる第1インクに関するインク情報IINF1を記憶する記憶領域SA1、及び、吐出部Dから吐出されるインクとして第1インクが使用される前までに記録ヘッド32が受けたダメージの程度を示すダメージ情報を記憶する記憶領域SA2を含んでもよい。判定部28は、記憶領域SA0、SA1及びSA2にそれぞれ記憶されている情報を含む参照情報に基づいて、記録ヘッド32を継続して使用可能か否かを判定する。この場合においても、上述した変形例と同様の効果を得ることができる。
【0156】
また、本変形例においても、物性情報PINFは、記録ヘッド32で使用されるインクとして推奨されるインクの種類に関する情報であってもよい。また、インク情報IINF1は、ソルベントインク及び水性インクを含む複数の種類のインクの中から各インクの種類を識別するためのインク物性に関する情報であってもよい。この場合においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0157】
[第3変形例]
上述した実施形態及び変形例では、ヘッドユニット3又は3Aにインクを供給するか否かを切り替える弁VALが、インクタンク6と流路64との間に位置する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、ヘッドユニット3又は3Aにインクを供給するか否かの切り替えは、インクタンク6から流路64にインクを圧送するポンプにより実行されてもよい。具体的には、当該ポンプを駆動することにより、ヘッドユニット3又は3Aにインクが供給され、ポンプの駆動を停止することにより、ヘッドユニット3又は3Aへのインクの供給が停止されてもよい。ヘッドユニット3又は3Aにインクを供給するか否かの切り替えがポンプにより実行される場合、弁VALは省かれてもよい。本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0158】
[第4変形例]
上述した実施形態及び変形例では、駆動信号COMが1つの場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、駆動信号COMは、図6に示した駆動信号COMの他に、駆動信号COMの波形PAとは異なる波形を有する駆動信号を含んでもよい。この場合、図5に示した供給回路31に、駆動信号COMの波形PAとは異なる波形を有する駆動信号を吐出部D[m]に供給するか否かを切り替えるスイッチが追加される。本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0159】
[第5変形例]
上述した実施形態及び変形例では、個別駆動信号Vin[m]の電位が低電位から高電位に変化することにより、圧電素子PZが-Z方向に変位する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、個別駆動信号Vin[m]の電位が高電位から低電位に変化することにより、-Z方向に変位する圧電素子PZが用いられてもよい。本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0160】
[第6変形例]
上述した実施形態及び変形例では、各ヘッドユニット3が1本のノズル列NLを有する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、各ヘッドユニット3は、複数のノズル列NLを有してもよい。同様に、各ヘッドユニット3Aは、複数のノズル列NLを有してもよい。本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0161】
[第7変形例]
上述した実施形態及び変形例では、インクジェットプリンター1が4個のヘッドユニット3を有する場合を例示したが、本発明はこのような態様に限定されるものではない。例えば、インクジェットプリンター1は、1個以上3個以下のヘッドユニット3を有してもよいし、5個以上のヘッドユニット3を有してもよい。同様に、インクジェットプリンター1Aは、1個以上3個以下のヘッドユニット3Aを有してもよいし、5個以上のヘッドユニット3Aを有してもよい。本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【0162】
[第8変形例]
上述した実施形態及び変形例において、記憶ユニット34に記憶されている物性情報PINF、インク情報IINF及び管理情報HINF等は、インクジェットプリンター1又は1Aと通信可能に接続されたサーバーに、定期的に送信されてもよい。すなわち、インクジェットプリンター1又は1Aと通信可能に接続されたサーバーが、物性情報PINF、インク情報IINF及び管理情報HINF等を、ヘッドユニット3又は3Aに対応付けて管理してもよい。この場合、サーバーに含まれる制御ユニットが、物性情報PINF、インク情報IINF及び管理情報HINF等に基づいて、記録ヘッド32の寿命、すなわち、ヘッドユニット3又は3Aの寿命を推測してもよい。本変形例においても、上述した実施形態及び変形例と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0163】
1、1A…インクジェットプリンター、2…制御ユニット、3、3A…ヘッドユニット、4…駆動信号生成ユニット、5…記憶ユニット、6…インクタンク、7…搬送ユニット、8…メンテナンスユニット、22…ヘッド制御部、28…判定部、31…供給回路、32…記録ヘッド、34…記憶ユニット、36…制御ユニット、38…判定部、D…吐出部、N…ノズル。
図1
図2
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