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  • 特開-採血管センサユニット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005321
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】採血管センサユニット
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20240110BHJP
【FI】
G01N1/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105454
(22)【出願日】2022-06-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000137476
【氏名又は名称】株式会社マルコム
(71)【出願人】
【識別番号】591083336
【氏名又は名称】株式会社ビー・エム・エル
(74)【代理人】
【識別番号】100153497
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 信男
(72)【発明者】
【氏名】西島 光利
(72)【発明者】
【氏名】長峰 正治
(72)【発明者】
【氏名】戸塚 和宏
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA30
2G052DA02
2G052DA27
2G052HA17
2G052HA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型、省電力の電子機器類を採用して、採血管の状態を個別にモニタリング可能とし、検査結果の信頼性を向上させる採血管センサユニットを提供すること。
【解決手段】採血管Tに取り付けられて採血管Tの状態をモニタリングする採血管センサユニットであって、採血管Tの底部に取り付けられるアタッチメント部材120と、アタッチメント部材120に着脱可能に固定されるユニット本体110とを有し、ユニット本体110の内部には、中央処理部と、温度センサを含む複数のセンサと、各センサの検出値を記憶する記憶部と、外部とデータを送受信する通信部と、電源部とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採血管に取り付けられて採血管の状態をモニタリングする採血管センサユニットであって、
採血管の底部に取り付けられるアタッチメント部材と、前記アタッチメント部材に着脱可能に固定されるユニット本体とを有し、
前記ユニット本体の内部には、中央処理部と、温度センサを含む複数のセンサと、各センサの検出値を記憶する記憶部と、外部とデータを送受信する通信部と、電源部とを有することを特徴とする採血管センサユニット。
【請求項2】
前記電源部が、前記ユニット本体から取り出し可能な電池を有することを特徴とする請求項1に記載の採血管センサユニット。
【請求項3】
前記通信部が、外部と無線通信可能に構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採血管センサユニット。
【請求項4】
前記複数のセンサが、照度センサを含み、
前記電源部は、前記照度センサの検出値が所定値を上回った場合、前記中央処理部に対し起動指令を出力する起動処理指令部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採血管センサユニット。
【請求項5】
前記複数のセンサが、温度センサを含み、
前記中央処理部は、前記温度センサの検出値が所定値を下回った場合に機能を停止させる低温停止指令部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採血管センサユニット。
【請求項6】
前記複数のセンサが、加速度センサを含み、
前記中央処理部は、前記加速度センサの検出値が所定値を上回った場合、前記加速度センサの監視以外の機能を停止させる高加速度休止指令部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採血管センサユニット。
【請求項7】
前記中央処理部は、各センサのいずれかの検出値、または、複数のセンサの検出値に基づいてサンプリング周期を変化させる周期指令部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採血管センサユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血管に取り付けられて採血管の状態をモニタリングする採血管センサユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液を採取して検査する場合、まず注射器等で血管内から血液を吸引して専用の採血管に入れ、遠心分離器にて血液の各成分を分離した後に各種検査を行っている。
一般的に、採血作業、遠心分離作業、各種検査作業は別の設備で行うことから、採血を始めてから分離、検査が終了するまで移送、保管等を繰り返し、多大の時間と手間を要する。
これらの、移送時、保管時、検査時等の各工程で、血液を各工程における最適な状態に維持する必要があるため、採血管を熱源や冷却源を装備したケースや保管庫に収容し、容器や保管庫の温度を制御することで、血液の状態を最適に制御するものが公知である(例えば特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2014-504268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
公知の技術では、採血管をケースや保管庫に収容することで血液の状態を最適に制御する事が可能ではあるが、各工程での作業、各工程間の受け渡し作業において、採血管をケース、保管庫の外でハンドリングしたり、一時保管することも多い。
採血管のハンドリングは手作業で行うことも多く、また、各工程での作業の速度、手間等の関係で、ケース、保管庫の外に置かれる時間や、作業時の取り扱いは各採血管で異なる。
【0005】
その結果、採血管によっては、処理、輸送、保管、その間のハンドリング等で、不適切な状態が生じた場合、正確な検査結果が得られない虞があり、検査結果の信頼性は一定のレベル以上に向上しないという問題があった。
ケースや保管庫外の作業スペースや、一時保管スペース全体の環境を一定に保つことで、ある程度の信頼性を向上は可能であるが、個々の採血管の状態を全て最適に保つことは困難であり、人手による作業やハンドリングには認識されないミスもあり得ることから、どの採血管が不適切な状態であったのか特定することも困難であり、信頼性の向上には限界があった。
【0006】
本発明は、前述のような課題を解決するものであり、昨今の小型、省電力の電子機器類を採用して、採血管の状態を個別にモニタリング可能とし、検査結果の信頼性を向上させる採血管センサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る採血管センサユニットは、採血管に取り付けられて採血管の状態をモニタリングする採血管センサユニットであって、採血管の底部に取り付けられるアタッチメント部材と、前記アタッチメント部材に着脱可能に固定されるユニット本体とを有し、前記ユニット本体の内部には、中央処理部と、温度センサを含む複数のセンサと、各センサの検出値を記憶する記憶部と、外部とデータを送受信する通信部と、電源部とを有することにより、前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0008】
本請求項1に係る採血管センサユニットによれば、ユニット本体の内部には、中央処理部と、温度センサを含む複数のセンサと、各センサの検出値を記憶する記憶部と、外部とデータを送受信する通信部と、電源部とを有することにより、昨今の小型、省電力の電子機器類を採用して、採血管の状態を個別にモニタリング可能とし、検査結果の信頼性を向上させることが可能となる。
また、採血管の底部に取り付けられるアタッチメント部材と、アタッチメント部材に着脱可能に固定されるユニット本体とを有することにより、アタッチメント部材のみ異なる形状とすることで同一形状のユニット本体を大きさや形状が異なる採血管で使用可能となるとともに、ユニット本体を回収して再利用することが容易となる。
【0009】
本請求項2に記載の構成によれば、電源部が、ユニット本体から取り出し可能な電池を有することにより、電池を交換することでユニット本体を再利用することが可能となる。
本請求項3に記載の構成によれば、通信部が、外部と無線通信可能に構成されていることで、モニタリングしたデータを読み出す場所やタイミングの自由度が向上し、個々の採血管の状態のモニタリングを容易に行うことが可能となる。
本請求項4に記載の構成によれば、電源部が、照度センサの検出値が所定値を上回った場合、中央処理部に対し起動指令を出力する起動処理指令部を有することにより、採血する直前まで光を遮断する収容袋等を開封することで、採血時にモニタリングを自動的に開始できるとともに、採血前の電力の消費が抑制され長期間のモニタリングが可能となる。
【0010】
本請求項5に記載の構成によれば、中央処理部は、温度センサの検出値が所定値を下回った場合に機能を停止させる低温停止指令部を有することにより、低温保管庫等の安定した低温状態が持続した際の電力の消費が抑制されるとともに、動作可能温度を下回った際の動作エラーを防止することが可能となる。
本請求項6に記載の構成によれば、中央処理部は、加速度センサの検出値が所定値を上回った場合、加速度センサの監視以外の機能を停止させる高加速度休止指令部を有することにより、遠心分離機上で加速度センサの検出範囲外となった際の電力の消費が抑制される。
本請求項7に記載の構成によれば、中央処理部は、各センサのいずれかの検出値、または、複数のセンサの検出値に基づいてサンプリング周期を変化させる周期指令部を有することにより、必要なデータを収集しつつ記憶容量を節約するとともに、電力の消費が抑制され長期間のモニタリングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る採血管センサユニットの説明図。
図2】本発明の一実施形態に係る採血管センサユニットのユニット本体の三面図。
図3】本発明の一実施形態に係る採血管センサユニットの全体写真。
図4】本発明の一実施形態に係る採血管センサユニットの分解写真。
図5】本発明の一実施形態に係る採血管センサユニットの機能構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態である採血管センサユニット100は、図1乃至図4に示すように、採血管Tの底部に取り付けられるアタッチメント部材120と、アタッチメント部材120に着脱可能に固定されるユニット本体110とを有している。
ユニット本体110の内部には、電子基板112が収容されており、電子基板112上には、図5の機能構成図に示す中央処理部140、温度センサ151、照度センサ152、加速度センサ153、各センサの検出値を記憶する記憶部170、外部とデータを送受信する通信部180、アンテナ181、電源部160等を構成する電子部品類が配置されている。
電源部160は、ユニット本体110から取り出し可能な電池161を有しており、電池161は、裏蓋111によってユニット本体110の内部に固定される。
【0013】
本実施形態では、アタッチメント部材120とユニット本体110、ユニット本体110と裏蓋111は、それぞれネジ嵌合で着脱可能に固定されるように構成されている。
アタッチメント部材120は、採血管Tに接着剤等で固定されて、使用後は採血管Tとともに廃棄されるが、ユニット本体110はアタッチメント部材120とネジ固定されているため、使用後にユニット本体110を回収し、必要があれば電池を交換あるいは充電した後に再利用することが可能となっている。
また、採血管Tの大きさや形状が異なる場合でも、アタッチメント部材120を採血管Tの大きさや形状に対応した複数種のものを準備することで、同一形状のユニット本体110を大きさや形状が異なる採血管Tに対して使用することができる。
なお、アタッチメント部材120は採血管Tと一体成形されたものであってもよい。
また、電池161を二次電池とし外部から無接点充電可能として内部に固定してもよく、その際は裏蓋111を省略してもよい。
【0014】
中央処理部140は、温度センサ151の検出値が所定値を下回った場合に機能を停止させる低温停止指令部141と、加速度センサ153の検出値が所定値を上回った場合に加速度センサ153の監視以外の機能を停止させる高加速度休止指令部142と、各センサのいずれかの検出値、または、複数のセンサの検出値に基づいてサンプリング周期を変化させる周期指令部143を有している。
電源部160は、照度センサ152の検出値が所定値を上回った場合、中央処理部140に対し起動指令を出力する起動処理指令部162を有している。
なお、図5の機能構成図では、各構成を機能別に分けて表現しているが、物理的にはセンサ内蔵の電子部品等を用いてもよく、また、各機能をソフトウェアのみで実現してもよい。
【0015】
以上のように構成された本発明の一実施形態である採血管センサユニット100の使用例について説明する。
採血前の採血管Tは、底部に採血管センサユニット100が取り付けられた状態で、光を透過しないパッケージに収容される。
この時、採血管センサユニット100は、電池161は十分な電力残量があり、記憶部170は全記憶容量が初期化されたものが使用される。
採血管Tが採血の直前にパッケージから取り出されると、照度センサ152が光を検出し、起動処理指令部162が照度センサ152の検出出力を受けて中央処理部140に対し起動指令を出力する。
起動処理指令部162からの起動指令を受け中央処理部140が動作を開始する。
【0016】
中央処理部140は、周期指令部143から出力される所定のサンプリング周期に従って、温度センサ151、照度センサ152、加速度センサ153の検出値から得られたデータを記憶部170に記録する。
採血後すぐに人手による転倒混和が行われる際には、加速度センサ153のデータを元に転倒混和を検知し、その強さや回数を算出し転倒混和データとして記憶部170に記録する。
遠心分離が行われる際には、加速度センサ153のデータを元に遠心分離を検知し、遠心分離を継続した時間を算出し遠心分離データとして記憶部170に記録する。
輸送の際には、加速度センサ153のデータを元に輸送を検知し、輸送時に受けた振動や輸送時間を算出し輸送履歴データとして記憶部170に記録するとともに、輸送中の温度管理状況を把握するため、温度センサ151の検出データを輸送履歴データと関連付けて記憶部170に記録する。
【0017】
中央処理部140は、加速度センサ153の検出値が検出上限を超えた際には、遠心分離中と判断される。
この時、高加速度休止指令部142からの出力で、中央処理部140における加速度センサ153の監視以外の機能を停止させ、遠心分離中の電力の消費を低減するとともに、記憶部170の記憶容量を節約する。
また、中央処理部140は、温度センサ151の検出値が低温保管温度以下であることを検出した際は、低温保管庫に格納中と判断される。
この時、低温停止指令部141からの出力で中央処理部140の機能を停止させ、低温保管中の電力の消費を低減するとともに、低温下での動作不良による異常値に基づくデータの記録を防止する。
【0018】
周期指令部143は、温度センサ151、照度センサ152、加速度センサ153の検出値に応じて、必要最低限のデータを収集するようにサンプリング周期を変化させることで、必要なデータを収集しつつ記憶部170の記憶容量を節約するとともに、電力の消費が抑制され長期間のモニタリングを可能としている。
例えば、加速度センサ153と照度センサ152の検出値がともにゼロを示した場合、ケース等の暗所に静止状態で格納されたと判断して、サンプリング周期を長くすることが可能である。
また、各センサの値の変動が激しい場合には、サンプリング周期を短くしてより詳細なデータを蓄積することが可能となる。
【0019】
採血管T内の血液を検査する際には、図示しない読取機器に近接させることで、通信部180を介して記憶部170に記録されたデータを読み取り、採血から検査までの間に異常がなかったかを調べることで、検査結果の信頼性を向上させることが可能となる。
通信部180は、BLE(Bluetooth Low Energy)等の消費電力の少ない無線通信を採用することで、採血管Tと同径程度の小さな電池でも長期間のモニタリングと随時の無線通信を両立することができる。
【0020】
検査が完了すると、ユニット本体110をアタッチメント部材120と分離し、採血管Tとともにアタッチメント部材120は廃棄され、ユニット本体110のみが回収、再利用される。
ユニット本体110を再利用する際は、適宜の方法で記憶部170の情報をリセットし、必要に応じて裏蓋111を外して電池161を交換し、新たな採血管Tに固定された別のアタッチメント部材120に固定される。
【0021】
なお、記憶部170に、サンプリング周期ごとに各センサで検出された検出値の全てを時刻情報とともに記憶してもよく、上述した転倒混和データ、遠心分離データ、輸送履歴データ等を、外部に読み取った後で処理判断してもよい。
さらに、LED等のインジケータを設け、異常な値やデータの存在の有無を表示できるようにしてもよい。
また、ユニット本体110、アタッチメント部材120は、図示のように、円筒の採血管Tとほぼ同等の形状とするのが望ましく、長手方向もできる限り短いのが望ましいが、各採血管に固定可能であればいかなる形状、寸法であってもよい。
【符号の説明】
【0022】
100 ・・・ 採血管センサユニット
110 ・・・ ユニット本体
111 ・・・ 裏蓋
112 ・・・ 電子基板
120 ・・・ アタッチメント部材
140 ・・・ 中央処理部
141 ・・・ 低温停止指令部
142 ・・・ 高加速度休止指令部
143 ・・・ 周期指令部
151 ・・・ 温度センサ
152 ・・・ 照度センサ
153 ・・・ 加速度センサ
160 ・・・ 電源部
161 ・・・ 電池
162 ・・・ 起動処理指令部
170 ・・・ 記憶部
180 ・・・ 通信部
181 ・・・ アンテナ
T ・・・ 採血管
図1
図2
図3
図4
図5