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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053252
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】抗ウイルス反射防止ハードコートフィルム
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20240408BHJP
   G02B 1/111 20150101ALI20240408BHJP
【FI】
G02B1/14
G02B1/111
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159370
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】畑 和幸
【テーマコード(参考)】
2K009
【Fターム(参考)】
2K009AA15
2K009CC03
2K009CC09
2K009CC21
2K009CC24
2K009CC26
2K009CC42
2K009DD02
(57)【要約】
【課題】外部光源の反射が少なく視認性が良好であると共に、繰り返しの拭き取りに対して傷が付きにくい耐摩耗性に優れ、更には抗ウイルス性を有する反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】 光透過性を有する基材フィルムにハードコート層、低屈折率層がこの順番で積層されており、前記低屈折率層はバインダー樹脂と、平均粒子径5~100nmの中空シリカ微粒子と、平均粒子径1~100nmのアルミナ微粒子と、平均粒子径5~150nmの抗ウイルス剤と、表面調整剤と、を含み、前記アルミナ微粒子の配合量が低屈折率層の固形物全量に対し3.0~18.0重量%であることを特徴とする反射防止ハードコートフィルムである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性を有する基材フィルムにハードコート層、低屈折率層がこの順番で積層されており、前記低屈折率層はバインダー樹脂(A)と、平均粒子径5~100nmの中空シリカ微粒子(B)と、平均粒子径1~100nmのアルミナ微粒子(C)と、平均粒子径5~150nmの抗ウイルス剤(D)と、表面調整剤(E)と、を含み、前記(C)の配合量が低屈折率層の固形物全量に対し3.0~18.0重量%であることを特徴とする反射防止ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記(D)の配合量が低屈折率層の固形物全量に対し5~20重量%であることを特徴とする請求項1記載の反射防止ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記(E)が反応性官能基を有するフッ素系シリコーン化合物であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記(E)の配合量が低屈折率層の固形物全量に対し5~15重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部光源の反射が少なく視認性が良好であると共に、抗ウイルス性及び耐摩耗性に優れる反射防止ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止ハードコートフィルムは、蛍光灯などの外部光源の反射が少なく視認性が良好であるという特徴から、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどに代表される画像表示装置で広く使用されている。特に、タッチパネルなどのような画像表示面を指で触る場合は、油分や汚れなどの付着で視認性が低下するという問題があり、外部光源の反射率を低くすると共に防汚性が求められており、更にタッチペンで入力するデバイスの場合は、より高い耐摩耗性や耐擦傷性が要求されるようになってきている。
【0003】
反射防止ハードコートフィルムとしては、フィルム基材の表面にハードコート層を設け、その上層に低屈折率の反射防止層を配置する構成が良く知られているが、例えば拭き取り性に優れる防汚性の反射防止膜として、エチレン性不飽和基含有フッ素重合体とシロキサン骨格を有するシリコーン化合物と(メタ)アクリレート化合物を含有する組成物が提案されている(特許文献1)。しかしながら、この防止膜では、繰り返しの拭き取りや硬い綿布等での拭き取りに対しても傷が付きにくいという点では十分ではなかった。
【0004】
加えて最近では、強い感染力を有するウイルス、例えばCOVID-19に代表される新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなどによる感染症の流行拡大により、ハードコートフィルムに対しても抗ウイルス機能を要求されるようになってきている。この抗ウイルス機能は抗ウイルス剤の添加により実現可能であるが、最適な抗ウイルス剤の選択や、配合条件、製造プロセスの組合せにより抗ウイルス性の発現には大きな差があった。また反射防止フィルムに抗ウイルス機能を付与させる場合は、光学特性を十分に考慮する必要があり、反射防止性を有すると共に、耐擦傷性と抗ウイルス性を併せ持つハードコートフィルムとするには改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-19402
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、外部光源の反射が少なく視認性が良好であると共に、繰り返しの拭き取りに対して傷が付きにくい耐摩耗性に優れ、更には抗ウイルス性を有する反射防止ハードコートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、光透過性を有する基材フィルムにハードコート層、低屈折率層がこの順番で積層されており、前記低屈折率層はバインダー樹脂(A)と、平均粒子径5~100nmの中空シリカ微粒子(B)と、平均粒子径1~100nmのアルミナ微粒子(C)と、平均粒子径5~150nmの抗ウイルス剤(D)と、表面調整剤(E)と、を含み、前記(C)の配合量が低屈折率層の固形物全量に対し3.0~18.0重量%であることを特徴とする反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0008】
請求項2の発明は、前記(D)の配合量が低屈折率層の固形物全量に対し5~20重量%であることを特徴とする請求項1記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0009】
請求項3の発明は、前記(E)が反応性官能基を有するフッ素系シリコーン化合物であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【0010】
請求項4の発明は、前記(E)の配合量が低屈折率層の固形物全量に対し5~15重量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか記載の反射防止ハードコートフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のハードコートフィルムは、外部光源の反射が少なく視認性が良好であると共に、繰り返しの拭き取りや硬い綿布等での拭き取りに対して傷が付きにくい耐摩耗性に優れ、更には抗ウイルス性を有しているため、タッチパネル等の画像表示装置に用いる反射防止フィルムとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の反射防止ハードコートフィルムは、ハードコート(以下HC)層を形成するためのHC樹脂組成物と、低屈折率層(以下低屈層という)を形成するための低屈折率樹脂組成物(以下低屈組成物という)の2種類を用いて製造される。低屈組成物はバインダー樹脂(A)と、中空シリカ微粒子(B)と、アルミナ微粒子(C)と、抗ウイルス剤(D)と、表面調整剤(E)を含む組成物である。なお、本明細書において(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートとの双方を包含する。
【0013】
本発明で使用する低屈組成物のバインダー樹脂(A)は、前記(B)、(C)及び(D)を分散させ低屈層を形成する主要樹脂であり、オリゴマーでは、例えばウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリカーボネート(メタ)アクリレート、アクリル系(メタ)アクリレート、ジエン系(メタ)アクリレート等が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0014】
前記(A)としては、オリゴマー以外の成分として低分子量のバインダーを用いても良い。例えば脂肪族、脂環族、ポリエーテル骨格、水酸基及びアミノ基等の官能基を有する(メタ)アクリレートや、アクリルアミド化合物を挙げることができ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。官能基数としては反応性の点で3官能以上が好ましく、4官能以上が更に好ましい。例えばペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(以下DPHAという)等が挙げられる。
【0015】
前記(A)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し10~40重量%が好ましく、15~30重量%が更に好ましく、20~25重量%が特に好ましい。10重量%以上とすることで十分な皮膜硬化性が確保でき、40重量%以下とすることで屈折率を十分低下させ、反射率を低くすることができる。
【0016】
本発明で使用する中空シリカ微粒子(B)は、低屈層の屈折率を低下させる目的で配合する。(B)は低屈層の塗膜強度を保持しつつ、その屈折率を下げる機能を有し、内部に屈折率1の空気を含む空洞を有するシリカ粒子である。中実シリカ粒子の屈折率が1.45程度に対し、(B)の屈折率は内部の空洞の占有率が高くなるにつれて低下し、1.15~1.40程度である。
【0017】
前記(B)の一次平均粒子径は5~100nmであり、20~80nmが好ましく、40~70nmが更に好ましい。この範囲とすることで、低屈層の透明性を損なうことなく、良好な分散性を得られる。特に40~70nmであれば、強度不足とならない外殻の厚みを確保しつつ、空洞の占有率を上げて屈折率を下げることができる。なお平均粒子径は、JISZ8825-1に準拠したレーザー回折・散乱法により測定したメジアン径(d=50)とする。
【0018】
前記(B)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し35~60重量%が好ましく、40~55重量%が更に好ましく、42~50重量%が特に好ましい。35重量%以上とすることで屈折率を十分低くすることができ、60重量%以下とすることで十分な耐摩耗性を確保することができる。市販品としてはスルーリア4320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径60nm)が挙げられる。
【0019】
本発明で使用するアルミナ微粒子(C)は、低屈層の硬度を上げて耐摩耗性を向上させる目的で配合する。(C)の一次平均粒子径は1~100nmであり、5~50nmが好ましく、10~30nmが更に好ましい。1nm未満では十分な耐摩耗性の向上が期待できず、100nm超ではヘイズを上昇させ十分な全光線透過率を確保できない場合がある。
【0020】
前記(C)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し3.0~18.0重量%であり、3.2~16.0重量%が好ましく、3.5~10.0重量%が特に好ましい。3.0重量%未満では十分な耐摩耗性を確保することができない場合があり、18.0重量%超では反射率を低く保つことができない場合がある。市販品としてはALMIBK-M47(商品名:CIKナノテック社製、固形分15%、平均粒子径20nm)が挙げられる。
【0021】
本発明で使用する抗ウイルス剤(D)は、低屈層に抗ウイルス性を付与する目的で配合する。反射防止フィルムの光学特性に悪影響を与えない観点から、平均粒子径は5~150nmであり、10~120nmが好ましく、20~100nmが更に好ましい。平均粒子径が5nm未満では十分な抗ウイルス特性を発現できない場合があり、150nm超の場合はヘイズを上昇させ十分な全光線透過率を確保できない場合がある。
【0022】
前記(D)としては、例えば銅、銀、チタン、スズ、鉄、ニッケル、亜鉛などを含む化合物が挙げられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの中では、入手性及び抗ウイルス性が良好な点で、銀系及び銅系の抗ウイルス剤が好ましい。
【0023】
前記(D)で抗ウイルス性を生じさせるメカニズムとしては、例えば銀系の抗ウイルス剤の場合は、水分により溶出したプラスに帯電した銀イオンが、マイナスに帯電しているウイルスや細菌の表面に引き寄せられ、これらの電気的なバランスを崩すことで死滅させることができると考えられている。また銅化合物の場合は、一価の銅化合物がウイルスや細菌と接触した際に一価の銅イオンが発生し、そのイオンが酸素と反応して活性酸素が発生し、その活性酸素と銅イオンの2つでウイルスや細菌を死滅させると考えられている。抗ウイルス性を有する一価の銅化合物としては、例えばヨウ化物を挙げることができる。
【0024】
前記(D)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し5~20重量%が好ましく、6~18重量%が更に好ましく、7~16重量%が特に好ましい。5重量%以上とすることで十分な抗ウイルス性を確保することができ、20重量%以下とすることで十分な耐SW性と共に高い透明性を確保することができる。
【0025】
本発明で使用する表面調整剤(E)は、低屈折率層のスリップ性を向上させて耐摩耗性を向上させると共に、撥水撥由性を上げて防汚性を向上させる目的で配合する。例えばシリコーン系、フッ素系、アクリル系等が挙げられるが、硬化後の皮膜からブリード等により経時的に欠落することが無く効果を長期的に持続できる点で、バインダー樹脂と重合して硬化塗膜を形成できる反応性官能基を有することが好ましい。特にフッ素系シリコーン化合物が、低い表面自由エネルギーにより、塗工~乾燥後に塗膜表面に偏析しやすく、耐摩耗性及び防汚性を長期にわたり安定化させることができる点で好ましい。
【0026】
前記(E)の配合量は、樹脂組成物の固形分全量に対し1~25重量%が好ましく、5~15重量%が更に好ましく、8~12重量%が特に好ましい。1重量%以上とすることで耐摩耗性と防汚性を向上させることが期待でき、25重量%以下とすることで十分な硬化性を確保することができる。市販品としてはX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基を有するフッ素系シリコーン化合物)が挙げられる。
【0027】
本発明の低屈折率層の下層に位置するHC層を形成するためのHC樹脂組成物としては、バインダーとして多官能ウレタン(メタ)アクリレート(以下多官能ウレアク)を含むことが好ましい。
【0028】
前記HC樹脂組成物に含むことが好ましい多官能ウレアクは、ウレタン結合に由来する水素結合の凝集力により優れた耐擦傷性を有する。例えばポリイソシアネートと水酸基を有する(メタ)アクリレートとの反応で得ることができる。使用するポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート(以下HDIという)、イソホロンジイソシアネート(以下IPDIという)、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、HDIイソシアヌレート体、IPDIイソシアヌレート体などがあり、これらを単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記多官能ウレアクにおいて使用する水酸基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば2官能ではトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジグリセリンジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなどが、3官能以上ではジグリセリントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートがある。
【0030】
本発明のHC樹脂組成物及び低屈組成物には、紫外線照射による硬化性向上のため光重合開始剤を配合することが好ましい。光重合開始剤は、紫外線や電子線などの照射でラジカルを生じ、そのラジカルが重合反応のきっかけとなるもので、ベンジルケタール系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系等汎用の光重合開始剤が使用できる。重合開始剤の光吸収波長を任意に選択することによって、紫外線領域から可視光領域にいたる広い波長範囲にわたって硬化性を付与することができる。具体的にはベンジルケタール系として2.2-ジメトキシ-1.2-ジフェニルエタン-1-オンが、α-ヒドロキシアセトフェノン系として1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オンが、α-アミノアセトフェノン系として2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オンが、アシルフォスフィンオキサイド系として2.4.6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド及びビス(2.4.6‐トリメチルベンゾイル)‐フェニルフォスフィンオキサイド等があり、単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
HC樹脂組成物の場合、光重合開始剤は黄変しにくいα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、市販品としてはOmnirad127、Omnirad184、Omnirad2959(商品名:IGM Resins社製)などが挙げられる。これらの中では、特に黄変が少なく耐擦傷性に優れるOmnirad2959が好ましい。光重合開始剤のHC樹脂組成物におけるラジカル重合性分100重量部に対する配合は1~15重量部が好ましく、2~10重量部が更に好ましい。
【0032】
低屈組成物の場合、光重合開始剤はHC樹脂組成物の場合と同様にα-ヒドロキシアセトフェノン系を含むことが好ましく、特に酸素による重合阻害を受けにくい点でOmnirad127(2‐ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]-フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン)が好ましい。光重合開始剤の低屈折率樹脂組成物におけるラジカル重合性分100重量部に対する配合は5~15重量部が好ましく、8~12重量部が更に好ましい。
【0033】
本発明の組成物には、性能を損なわない範囲で必要に応じて反応性希釈剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、密着促進剤、ブルーイング剤、消泡剤、増粘剤、沈澱防止剤、帯電防止剤、防曇剤、抗菌剤、有機微粒子等を添加してもよい。
【0034】
HC樹脂組成物及び低屈組成物を塗工する際には、塗工特性を向上させるため溶剤にて希釈してもよい。希釈溶剤としては、例えばエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール(以下IPA)、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン(以下MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、PGM,ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテ等のエーテル系溶媒等があげられ、単独あるいは2種類以上を組み合わせて使用できる。希釈する場合の固形分としては1~70%が例示されるが、特に指定は無く、塗工しやすい粘度となるように適宜設定可能である。
【0035】
HC樹脂組成物が塗布される基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリスルフォンフィルム、ナイロンフィルム、シクロオレフィンフィルム、アクリルフィルム、ポリイミドフィルム、ABSフィルム、ポリオレフィンフィルム、PVCフィルム、PVAフィルム等を挙げることができる。なかでも耐候性、加工性、寸法安定性などの点から二軸延伸処理されたポリエステルフィルムが好ましく用いられる。フィルムの厚みは概ね25μm~500μmであればよい。
【0036】
前記基材フィルムは、HC樹脂組成物との密着性を向上させる目的で、プライマー処理やサンドブラスト法、溶剤処理法などによる表面の凹凸化処理、あるいはコロナ放電処理、クロム酸処理、オゾン・紫外線照射処理などの表面の酸化処理などの表面処理を施すことができる。
【0037】
HC樹脂組成物及び低屈組成物を塗布する方法は、特に制限はなく、公知のスプレーコート、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート、ワイヤーバーなどの塗工法またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成できる。
【0038】
HC樹脂組成物の膜厚は乾燥時で1μm~10μmが例示できるが、これに限定されるものではない。HC層上に塗布される低屈層の膜厚は乾燥時で50~200nmであることが好ましく、80~150nmであることが更に好ましい。低屈層の厚さがこの範囲であれば、反射率を十分低くすることが可能となる。
【0039】
HC樹脂組成物及び低屈組成物を硬化させる際に用いる紫外線照射の光源としては、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、カーボンアーク灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LEDランプ、無電極紫外線ランプなどがあり、また照射する雰囲気は空気中でもよいし、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中でもよい。また紫外線照射時にバックロールの加温や、IRヒーターなどにより塗膜を加熱することで、より硬化性を上げることができる。照射条件としては照射強度500mW/cm~3000mW/cm、露光量50~400mJ/cmが例示されるが、これに限定されるものではない。紫外線照射はフィルム成型後に行うが、成形前に低露光量(例えば15~30mJ/cm)によるセミキュアをしても良い。
【0040】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げて詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。なお表記が無い場合は、室温25℃、相対湿度65%の条件下で測定を行った。また配合量は固形分換算の重量部を示す。
【0041】
HC樹脂組成物
多官能ウレアクと(メタ)アクリレートモノマーと光重合開始剤を含むHC剤Z‐876-21L(商品名:アイカ工業社製、固形分40%)を用いた。
【0042】
低屈樹脂組成物
前記(A)としてDPHA(商品名:日本化薬社製、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)を、(B)としてスルーリア4320(商品名:日揮触媒化成社製、固形分20.5%、一次平均粒子径60nm、屈折率1.3)を、(C)としてM47(商品名:CIKナノテック社製、固形分15%、平均粒子径20nm、MIBK希釈)を、(D)としてヨウ化銅(平均粒子径100nm)及び銀系のATOMY BALL(商品名:日揮触媒化成社製、平均粒子径25nm)を、1μmの銀系抗ウイルス剤としてBM103CI-Z(商品名:富士ケミカル社製、平均粒子径1μm)を、(E)としてX-71-1203M(商品名:信越化学工業社製、固形分20%、反応性官能基含有フッ素系シリコーン化合物)を、光重合開始剤としてOmnirad127(商品名:IGM Resins社製)を表1及び2記載の配合で用い、固形分が3%になるようIPAとPGMを用いて希釈(IPA:PGM=1:1)し、均一に溶解・分散するまで撹拌して低屈折率樹脂組成物を得た。
【0043】
表1
【0044】
表2
【0045】
評価方法は以下の通りとした。
【0046】
HC層の調製
HC樹脂組成物を用い、PETフィルムU403(商品名:東レ社製、厚み100μm、易接着層有)に乾燥膜厚で3μmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥した。その後、アイグラフィックス社製の紫外線露光装置ECS-151Uを用い、100mW/cm,800mJ/cmの条件で硬化してHCフィルムを作成した。
【0047】
反射防止フィルムの作成
上記で作成したハードコート層上に、低屈折率樹脂組成物を乾燥膜厚で120nmとなるように塗布し、80℃で1分乾燥した。その後、アイグラフィックス社製の紫外線露光装置ECS-151Uを用い、100mW/cm,800mJ/cm, 窒素雰囲気下の条件で硬化させ反射防止フィルムを形成した。
【0048】
抗ウイルス活性値:JIS R 1756:2013の光触媒材料の抗ウイルス性試験測定法に準じ、試験ウイルスとしてはバクテリオファージQβを用いて、6時間後のウイルス感染価を測定した。ブランクフィルムとのウイルス感染価の差を抗ウイルス活性値とし2.0超を○、2.0未満を×とした。
【0049】
透明性(ヘーズ):上記反射防止フィルムを、東洋精機製作所社製のHaze-GARD2を用いJIS K7361-1に準拠して測定し、1.0%以下を〇、1.0%超を×とした。
【0050】
耐SW性:スチールウール#0000の上に200g/cm2の荷重を載せて10往復させ、目視による観察で傷が10本以下の場合を○、10本超の場合を×とした。
【0051】
最小反射率:上記反射防止フィルムを用い、塗工面とは反対面を紙やすりで擦り傷を付け、黒色顔料マーカーで塗りつぶし、更に黒色PETを貼り合せ反対面側の反射率を0%とする。その後HC面側を分光光度計にて300nm~780nmの範囲で1nm毎に反射率をプロットして最低の反射率を測定し、1.5%以下を〇、1.5%超を×とした。
【0052】
評価結果
表3
【0053】
評価結果
表4
【0054】
実施例は、抗ウイルス活性値、透明性、耐SW性、最小反射率、の全ての面で問題はなく良好であった。
【0055】
一方、(C)が下限未満の比較例1及び上限を超える比較例2はいずれも耐SW性が劣り、(D)を含まない比較例3は抗ウイルス活性値が低く、粒子径が大きい抗ウイルス剤を用いた比較例4は抗ウイルス活性値及び透明性が低く、(B)を含まない比較例5は最小反射率が大きく、いずれも本願発明に適さないものであった。