(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053253
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】光学センサユニット、および、レーザ誘導方式の搬送車
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240408BHJP
G01S 17/931 20200101ALI20240408BHJP
G01S 7/481 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B66F9/24 P
B66F9/24 L
G01S17/931
G01S7/481 Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159373
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】中山 健次
(72)【発明者】
【氏名】大西 哲郎
【テーマコード(参考)】
3F333
5J084
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AE02
3F333DB05
3F333FD11
3F333FD14
3F333FD15
3F333FE04
3F333FE05
5J084AA04
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA20
5J084BA48
5J084BA49
5J084BA56
5J084EA40
(57)【要約】
【課題】冷凍倉庫用のレーザ誘導方式の搬送車に搭載される光学センサユニットの透光ケースを温める新規な構成を提供する。
【解決手段】光学センサユニット3は、冷凍倉庫用のレーザ誘導方式の搬送車に搭載される。当該ユニット3は、レーザ光を投光する投光部41と、反射されたレーザ光を受光する受光部42とを備える。当該ユニット3は、投光部41および受光部42を水平に回転させる回転駆動部と、投光部41および受光部42の周囲を覆う筒状の透光ケース44とを備える。当該ユニット3は、透光ケース44の外面を温めるために熱を輻射する少なくとも1つのヒータ5[5(a),5(b),5(c)]を備える。ヒータ5は、環状かつ板状である。ヒータ5は、透光ケース44を囲み、透光ケース44に接触せず、かつ、投光部41および受光部42とは異なる高さに水平に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送車を冷凍倉庫内においてレーザ誘導方式で自動走行させるために当該搬送車に搭載される光学センサユニットであって、
水平を向くように設けられ、レーザ光を投光する投光部、および、水平を向くように設けられ、反射された前記レーザ光を受光する受光部を含む投受光部と、
前記投受光部を水平に回転させる回転駆動部と、
前記レーザ光に対して透過性を有し、前記投受光部の周囲を覆う筒状の透光ケースと、
前記透光ケースの外面を温めるために熱を輻射する少なくとも1つのヒータと、を備え、
前記ヒータは、環状かつ板状であり、
前記ヒータは、前記透光ケースを囲み、前記投光部および前記受光部とは異なる高さに水平に配置されている、
光学センサユニット。
【請求項2】
前記ヒータは、前記投光部より下方に位置する、
請求項1に記載の光学センサユニット。
【請求項3】
前記ヒータは、前記受光部より上方に位置する、
請求項2に記載の光学センサユニット。
【請求項4】
前記ヒータとして、第1ヒータと第2ヒータとが設けられ、
前記第1ヒータは、前記投光部より下方にかつ前記受光部より上方に位置し、
前記第2ヒータは、前記受光部より下方に位置する、
請求項1に記載の光学センサユニット。
【請求項5】
前記第1ヒータの下側で上下に延在し、前記第1ヒータを支持する棒状のヒータブラケットをさらに備え、
前記ヒータブラケットは、前記受光部の受光面の幅よりも狭い幅を有している、
請求項4に記載の光学センサユニット。
【請求項6】
前記ヒータとして、第3ヒータがさらに設けられており、
前記第3ヒータは、前記投光部より上方に位置する、
請求項4または請求項5に記載の光学センサユニット。
【請求項7】
前記透光ケースの上に設けられた上部カバーに取り付けられて、前記第3ヒータを上方から保持する追加のヒータブラケットをさらに備える、
請求項6に記載の光学センサユニット。
【請求項8】
前記ヒータからの輻射熱を反射する熱反射板をさらに備え、
前記熱反射板は、前記投光部、前記受光部および前記ヒータよりも上方で、前記ヒータの真上に位置している、
請求項1に記載の光学センサユニット。
【請求項9】
前記ヒータは、前記投光部より下方にかつ前記受光部より上方に位置している、
請求項8に記載の光学センサユニット。
【請求項10】
前記ヒータとして、2つのヒータが設けられており、
1つの前記ヒータは、前記投光部より下方にかつ前記受光部より上方に位置し、
別の1つの前記ヒータは、前記投光部より上方に位置している、
請求項8に記載の光学センサユニット。
【請求項11】
前記熱反射板は、前記透光ケースの上に設けられた上部カバーに取り付けられて、庇状に配置されている、
請求項8から請求項10のいずれか1項に記載の光学センサユニット。
【請求項12】
前記ヒータは前記透光ケースに接触せず、前記ヒータと前記透光ケースとの間に隙間が形成されている、
請求項1に記載の光学センサユニット。
【請求項13】
搬送車を冷凍倉庫内においてレーザ誘導方式で自動走行させるために当該搬送車に搭載される光学センサユニットであって、
水平を向くように設けられ、レーザ光を投光する投光部、および、水平を向くように設けられ、反射された前記レーザ光を受光する受光部を含む投受光部と、
前記投受光部を水平に回転させる回転駆動部と、
前記レーザ光に対して透過性を有し、前記投受光部の周囲を覆う筒状の透光ケースと、を備え、
前記光学センサユニットは、さらに、
前記透光ケースの外面を当該外面の全周に渡って温めるために、前記投光部および前記受光部とは異なる高さに配置されたヒータグループを少なくとも1つ備え、
前記ヒータグループは、前記透光ケースの前記外面を温めるために熱を輻射する複数のヒータからなり、
前記複数のヒータは、前記透光ケースの周りを囲むように並べられており、それぞれ、板状であり、水平に配置されている、
光学センサユニット。
【請求項14】
請求項1または請求項13に記載の光学センサユニットを備え、当該光学センサユニットを用いてレーザ誘導方式で冷凍倉庫内を自動走行する冷凍倉庫用の搬送車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送車を冷凍倉庫内においてレーザ誘導方式で自動走行させるために当該搬送車に搭載される光学センサユニット、および、当該光学センサユニットを備える冷凍倉庫用のレーザ誘導方式の搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
AGV、AGFといった自動走行可能な搬送車には、例えば、LiDARなどの光学センサが搭載されている。搬送車は、当該光学センサを用いて倉庫内を自動で走行する。
【0003】
この種の光学センサは、例えば、
図10A-Cの通り、レーザ光を投光する投光部41およびレーザ光を受光する受光部42を備える。さらに、光学センサは、投光部41および受光部42を、中心軸線AX(
図10A参照)の周りに水平に360度回転させる回転駆動部(図示略)をさらに備える。なお、投光部41および受光部42は、レーザ光に対して透過性を有する筒状の透光ケース44内に配置されている。
【0004】
光学センサは、上記構成により、レーザ光を搬送車の周囲360°に渡って投光することができる。レーザ光は、倉庫内に設置された複数の光反射板によって反射され、その反射されたレーザ光が受光部42によって受光される。光学センサは、受光部42の受光結果および三角測量の原理に基づいて、倉庫内における搬送車の位置をリアルタイムベースで演算する。搬送車は、演算された位置に基づいて、所定の経路に沿って自動走行する。このような自動走行は、レーザ誘導方式と呼ばれている(特許文献4参照)。
【0005】
レーザ誘導方式の搬送車を冷凍倉庫内で走行させる搬送システムがある。冷凍倉庫は、一般的には、温度が0°以下の冷凍室と、温度が0℃~10℃程度の前室とを備える。搬送車は、冷凍室と前室との間を頻繁に往来する。
【0006】
冷凍室と前室との間にかなりの温度差がある。搬送車が冷凍室から前室へ移動する際、搬送車の周囲の温度が上昇し、冷凍室で冷やされた透光ケース44の外面が結露したり、霜がついたりすることがある。この結露や霜が邪魔になって、レーザ光が適切に周囲に投光されない、及び/又は、レーザ光が適切に受光されない事態が生じ、結果的に、搬送車が自動走行できなくなる恐れがある。
【0007】
冷凍倉庫における搬送の分野では、搬送車に搭載されている光学センサやレーザマーカーなどに対する様々な結露対策が講じられている(特許文献1-3等参照)。
【0008】
例えば、
図10Aでは、温風が、ハーフケース30内に導入され、ハーフケース30と光学センサとによって形成される環状の隙間を通って、透光ケース44の外面に吹き付けられる。この温風の吹付けによって、透光ケース44の外面を、常に0℃程度に(前室での露点温度より高く)なるように温めている。これは、常に多量の空気を温めるので、電力消費が大きくなる。また、透光ケース44の外面が外気の露点温度より高くなるまでは結露が生じる。
【0009】
図10Bでは、ヒータ線90が透光ケース44に巻き付けられて、透光ケース44の外面を、常に0℃程度に(前室での露点温度より高く)なるように温めている。これは、透光ケース44の外面を効率的に温めることができる。ただし、ヒータ線90が受光部42の受光面を横切るので、受光部42によるレーザ光の受光量が若干減り、光反射板検出最大距離の低下をもたらし得る。
【0010】
図10Cでは、光学センサ内に内蔵のヒータ91が、透光ケース44を温めている。これは、透光ケース44の外面を効率的に温めることはできない。ヒータ91の発熱温度を上げすぎると、光学センサの構成部品が故障し得る。
【0011】
このように、透光ケースを温める(加熱する)様々な方法が考えられている。近年では、-30℃といった非常に低温の冷凍室と前室との間で搬送車を往来させることもある。透光ケースを効率的に温めて結露をしっかりと防止する構成が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平03-23200号公報
【特許文献2】実開平06-53917号公報
【特許文献3】特開2001-063992号公報
【特許文献4】特開2020-134180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、冷凍倉庫用のレーザ誘導方式の搬送車に搭載される光学センサの透光ケースを効率的に温める新規な構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、搬送車を冷凍倉庫内においてレーザ誘導方式で自動走行させるために当該搬送車に搭載される光学センサユニットが提供され、
当該光学センサユニットは、
水平を向くように設けられ、レーザ光を投光する投光部、および、水平を向くように設けられ、反射された前記レーザ光を受光する受光部を含む投受光部と、
前記投受光部を水平に回転させる回転駆動部と、
前記レーザ光に対して透過性を有し、前記投受光部の周囲を覆う筒状の透光ケースと、
前記透光ケースの外面を温めるために熱を輻射する少なくとも1つのヒータと、を備え、
前記ヒータは、環状かつ板状であり、
前記ヒータは、前記透光ケースを囲み、前記投光部および前記受光部とは異なる高さに水平に配置されている。
【0015】
前記ヒータは、前記投光部より下方に位置してよい。さらに、前記ヒータは、前記受光部より上方に位置してよい。
【0016】
前記ヒータとして、第1ヒータと第2ヒータとが設けられてよい。前記第1ヒータは、前記投光部より下方にかつ前記受光部より上方に位置してよい。前記第2ヒータは、前記受光部より下方に位置してよい。前記光学センサユニットは、前記第1ヒータの下側で上下に延在し、前記第1ヒータを支持する棒状のヒータブラケットをさらに備えてよい。前記ヒータブラケットは、前記受光部の受光面の幅よりも狭い幅を有する。
【0017】
前記ヒータとして、第3ヒータがさらに設けられてよい。前記第3ヒータは、前記投光部より上方に位置してよい。前記光学センサユニットは、前記透光ケースの上に設けられた上部カバーに取り付けられて、前記第3ヒータを上方から保持する追加のヒータブラケットをさらに備えてよい。
【0018】
前記光学センサユニットは、前記ヒータからの輻射熱を反射する熱反射板をさらに備えてよい。前記熱反射板は、前記投光部、前記受光部および前記ヒータよりも上方で、前記ヒータの真上に位置してよい。この実施形態において、前記ヒータが、前記投光部より下方にかつ前記受光部より上方に位置してよい。前記ヒータとして、2つのヒータが設けられてよく、1つの前記ヒータは、前記投光部より下方にかつ前記受光部より上方に位置し、別の1つの前記ヒータは、前記投光部より上方に位置してよい。前記熱反射板は、前記透光ケースの上に設けられた上部カバーに取り付けられて、庇状に配置されてよい。
【0019】
前記ヒータは前記透光ケースに接触せず、前記ヒータと前記透光ケースとの間に隙間が形成されてよい。
【0020】
また、本発明の別の態様の光学センサユニットは、搬送車を冷凍倉庫内においてレーザ誘導方式で自動走行させるために当該搬送車に搭載される光学センサユニットであって、
水平を向くように設けられ、レーザ光を投光する投光部、および、水平を向くように設けられ、反射された前記レーザ光を受光する受光部を含む投受光部と、
前記投受光部を水平に回転させる回転駆動部と、
前記レーザ光に対して透過性を有し、前記投受光部の周囲を覆う筒状の透光ケースと、を備え、
前記光学センサユニットは、さらに、
前記透光ケースの外面を当該外面の全周に渡って温めるために、前記投光部および前記受光部とは異なる高さに配置されたヒータグループを少なくとも1つ備え、
前記ヒータグループは、前記透光ケースの前記外面を温めるために熱を輻射する複数のヒータからなり、
前記複数のヒータは、前記透光ケースの周りを囲むように並べられており、それぞれ、板状であり、水平に配置されている。
【0021】
本発明の別の態様によれば、冷凍倉庫用のレーザ誘導方式の搬送車が提供される。当該搬送車は、上記の光学センサユニットを備え、当該光学センサユニットを用いてレーザ誘導方式で冷凍倉庫内を自動走行する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、例示の搬送システムの概略平面図である。
【
図2】
図2は、例示のレーザ誘導方式の搬送車の概略側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態の光学センサユニットを概略的に示す。
【
図5】
図5Aは、ヒータと透光ケースの位置関係を例示する概略横断面図であり、
図5Bは、ヒータと透光ケースの位置関係を例示する概略部分縦断面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の光学センサユニットを概略的に示す。
【
図7】
図7は、第3実施形態の光学センサユニットを概略的に示す。
【
図8】
図8A,
図8Bは、ヒータグループと透光ケースの位置関係を例示する概略横断面図である。
【
図9】
図9は、ヒータグループと透光ケースの位置関係を例示する概略横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の例示的な実施形態が説明される。なお、図面に示される構成要素は、必ずしも正確な寸法や比率ではなく、その機能または動作を表すにすぎない。
【0024】
図1は、搬送システムを概略的に示す。冷凍倉庫1と、冷凍倉庫1内を自動走行するレーザ誘導方式の搬送車2が設けられている。
【0025】
冷凍倉庫1は、0℃以下の(例えば、-30℃)の冷凍室10と、0℃より高い(例えば、0℃~10℃)の前室11とを備える。冷凍室10と前室11とは、通過口を有する壁12によって仕切られている。シートシャッター13が通過口に設けられている。シートシャッター13は、冷気が冷凍室10から前室11へ流れるのを防ぐ。搬送車2が通過口を通って冷凍室10と前室11との間を移動する際に、シートシャッター13が開く。なお、シートシャッター13が開いているときに、冷凍室10内の温度上昇を抑制するために、不図示のエアカーテン装置が設けられている。
【0026】
搬送車2が冷凍倉庫1内においてレーザ誘導方式で自動走行できるようにするために、レーザ光を反射する多数の光反射板14が冷凍倉庫1内に設けられている。
【0027】
図2は、自動走行可能な搬送車2を例示する。搬送車2は、実施形態では、無人フォークリフト(AGF)である。これに代えて、搬送車2は、フォークリフトタイプ以外の他の無人搬送車(AGV)でもよく、また有人無人運転切替可能な搬送車でもよい。
【0028】
搬送車2は、走行輪20を有する車両本体21と、車両本体21に対して水平方向に移動可能に設けられたマスト22と、マスト22に対して昇降可能に設けられたフォーク23とを備えている。フォーク23は、マスト22の水平移動によって、符号23’で示した位置をとることができる。また、フォーク23は、マスト22に沿って上昇することにより、符号23”で示した位置をとることもできる。
【0029】
さらに、搬送車2は、光学センサユニット3を備える。光学センサユニット3は、搬送車2をレーザ誘導方式で自動走行させるために搬送車2に搭載されるものである。光学センサユニット3は、特許文献4の通り、レーザスキャナ装置とも呼ばれることがある。光学センサユニット3は、車両本体21の最上部に配置されている。
【0030】
光学センサユニット3は、LiDAR(light detection and ranging)などの光学センサ4を備える(
図3)。
図3では、光学センサ4のみが示され、後述のヒータなどの他の構成要素の図示は省略されている。光学センサ4は、投受光部40を備える。投受光部40は、レーザ光を投光する投光部41(投光素子)と、光反射板14によって反射されたレーザ光を受光する受光部42(受光素子)と、投光部41および受光部42が水平を向くようにこれらを支持する支持部材などを含む。投光部41は、受光部42よりも上方に位置している。投受光部40と光反射板14とは、同じ高さにある。
【0031】
さらに、光学センサ4は、投受光部40(したがって、投光部41および受光部42)を、上下方向にのびる中心軸線AXの周りに水平に360度回転させる回転駆動部43を備える。回転駆動部43は、投受光部40よりも下方に位置している。回転駆動部43は、特許文献4と同様に、投受光部40を所定の回転数(rpm)で高速回転させるモータや、投受光部40の回転角度を検出するエンコーダなどを含む。
【0032】
光学センサ4は、さらに、投受光部40の周囲を覆う筒状の透光ケース44を備える。すなわち、投受光部40は、筒状の透光ケース44の中空部分に位置している。透光ケース44は、具体的には円筒状である。
図3のように、透光ケース44は、上向きに少し窄まったような形など略円筒状でもよい。透光ケース44は、例えばポリカーボネート等のプラスチックで構成されてよく、投光部41のレーザ光に対して透過性を有する。したがって、投光部41はレーザ光を透光ケース44の外に投光でき、受光部42は透光ケース44を通過したレーザ光(反射光)を受光することができる。
【0033】
光学センサ4は、透光ケース44の下方に設けられ、上述の回転駆動部43、搬送車2の位置を特定するための位置特定部(演算回路)、光学センサ4の構成要素へ電力を供給する電源等を収容する下部ハウジング45を備える。また、光学センサ4は、透光ケース44の上に設けられて透光ケース44の上部をカバーする上部カバー46をさらに備える。透光ケース44は下部ハウジング45に取り付けられており、透光ケース44の内部と下部ハウジング45の内部とは互いに連通している。
【0034】
光学センサ4は、投光部41にレーザ光を投光させながら、回転駆動部43に投受光部40を水平に360度回転させ続けることにより、レーザ光を搬送車2の周囲に渡って投光する。レーザ光は、冷凍倉庫1内のいくつかの光反射板14によって反射される。受光部42は、その反射されたレーザ光を受光する。
【0035】
搬送車2が走行経路上のどの位置にあっても、受光部42が少なくとも3つの光反射板14によって反射されたレーザ光を検出できるように、光反射板14の数および配置が決められている。そして、光学センサ4の位置特定部が、反射されたレーザ光の検出および三角測量の原理に基づいて、冷凍倉庫1内における搬送車2の位置を、リアルタイムベースで演算する。これによって、搬送車2は、冷凍倉庫1内をレーザ誘導方式で自動走行することができる。この技術自体は、例えば特許文献4などの通り周知である。
【0036】
図4は、第1実施形態に係る光学センサユニット3を示し、光学センサ4とヒータとがユニット化された状態を示す。なお、ハーフケース30が、光学センサ4の下半分(下部ハウジング45)を収容している。透光ケース44はハーフケース30から出ている。
【0037】
光学センサユニット3は、少なくとも1つのヒータ5をさらに備える。第1実施形態では、3つのヒータ5(a),5(b),5(c)が設けられている。以下では、各ヒータに共通の構成を説明するときには、符号「5」が使用され、個々のヒータの構成を説明するときには、「5(a)」,「5(b)」,「5(c)」が使用されて区別される。
【0038】
ヒータ5は、透光ケース44の外面を温める(加熱する)ために熱を輻射する発熱体である。ヒータ5は、
図4,
図5A,
図5Bの通り、板状(面状)である。さらに、ヒータ5は、環状、より具体的には円環状である。このような環状かつ板状のヒータ5は、実施形態では、遠赤外線を放射するシリコンラバーヒータでよい。ヒータ5は、シリコンラバーヒータ以外のヒータでも当然よい。環状のヒータ5は、実施形態のように円環状に限らず、例えば四角環状といった多角環状でもよく、中空部分を有するものであればその輪郭形状は問わない。
【0039】
この環状かつ板状のヒータ5は、筒状の透光ケース44を囲むように水平に配置されている。言い換えると、透光ケース44は、ヒータ5の環状の内側に位置する。なお、環状のヒータ5及び筒状の透光ケース44は、同芯状に配置されている。
【0040】
図5A,
図5Bの通り、ヒータ5は、その環状の内側にある透光ケース44と接触しないように水平に配置されている。したがって、
図5Aの通り、ヒータ5と透光ケース44との間に環状、具体的には円環状の隙間Gが形成される。環状のヒータ5の内径は、このような所定の大きさの隙間Gが形成されるように、筒状の透光ケース44の外径よりも大きく設定されている。隙間Gの大きさは、ヒータ5の性能や、透光ケース44の材質などに応じて適宜決定されるものである。
【0041】
ヒータ5は、投光部41および受光部42とは異なる高さに水平に配置されており、したがって、投光部41によるレーザ光の投光および受光部42によるレーザ光の受光を遮らない。具体的には、ヒータ5(a)は、投光部41より下方にあり、かつ、受光部42より上方に位置している。ヒータ5(b)は、透光ケース44の最下部に、したがって、受光部42より下方に位置している。ヒータ5(c)は、透光ケース44の最上部に、したがって、投光部41より上方に位置している。
【0042】
投光部41の直下で受光部42の直上のヒータ5(a)は、上面および下面の双方から熱を輻射するように構成されている。受光部42の直下のヒータ5(b)は、少なくとも上面から熱を輻射するように構成されている。投光部41の直上のヒータ5(c)は、少なくとも下面から熱を輻射するように構成されている。光学センサ4のレーザ光は、遠赤外線とは異なる波長である。すなわち、ヒータ5の輻射熱は遠赤外線であり、光学センサ4のレーザ光は例えば近赤外線であり、両者の電磁波としての波長は互いに異なる。したがって、ヒータ5の輻射熱が、光学センサ4の機能に、したがってレーザ誘導方式の自動走行に干渉しない。
【0043】
図4の通り、棒状のヒータブラケット31が、ヒータ5(a)の下に設けられ、ヒータ5(a)とヒータ5(b)との間で上下に延在して、ヒータ5(a)を下方から支持して位置決めしている。ヒータブラケット31は、実施形態では2つ設けられている。
図4の通り、ヒータブラケット31は、受光部42の受光面の幅よりも十分に小さい幅を有している。したがって、ヒータブラケット31が、受光部42によるレーザ光(反射光)の受光に影響を及ぼさない。ヒータ5(b)は、ハーフケース30上に配置されている。別のヒータブラケット32が、上部カバー46に取り付けられて、ヒータ5(c)を、上方から保持して位置決めしている。したがって、ヒータブラケット31,32は、投光部41とは同じ高さに存在せず、レーザ光の投光を遮らない。
【0044】
なお、ヒータ5は、搬送車2のバッテリから給電されてよい。ヒータ5(a)への給電線(図示略)は、ヒータブラケット31の1つを伝ってヒータ5(a)に接続される。また、ヒータ5(c)への給電線は、ヒータブラケット31の1つを伝い、そこからさらに上方に引かれて、ヒータ5(c)に接続される。
【0045】
これらの給電線は、受光部42の高さに存在するものの、受光部42の受光面よりも十分に小さい幅を有しているので、受光部42によるレーザ光の受光に影響を及ぼさない。ヒータ5(c)への給電線は、投光部41の高さにも存在する。搬送車2は、
図2の通り、マスト22や昇降されたフォーク23”などレーザ光を遮断する要素があり、周囲360°のうち、レーザ誘導方式の自動走行で使用されない角度範囲がある。したがって、ヒータ5(c)への給電線は、マスト22が存在するこの角度範囲内に位置していれば、レーザ誘導方式の自動走行に干渉することはない。
【0046】
このようなヒータ5は、搬送車2が冷凍倉庫1内で走行し荷役作業をしている間、常時ONにされて発熱し(例えば80℃で発熱し)、透光ケース44の外面を、輻射熱および温められた周囲の空気によって温めて、常に0℃程度(前室11での露点温度より大きい温度)にする。これにより、搬送車2が冷凍室10から前室11へ移動する際に透光ケース44の外面に結露や霜が生じるのを防止する。
【0047】
環状かつ板状のヒータ5が投光部41および受光部42とは異なる高さに水平に配置されているので、ヒータ5がレーザ光の投受光を遮らない。したがって、ヒータ5がレーザ誘導方式の自動走行の精度を低下させない。
【0048】
しかも、ヒータ5が、透光ケース44を囲い、透光ケース44の近くで、輻射熱および周囲の加熱された空気の双方で透光ケース44の外面をその全周に渡って温めているので、非常に効率的である。実施形態では、特に、投光部41の直上のヒータ5(a)が透光ケース44の投光部41の高さ部分の温めに大きく寄与し、受光部42の直下のヒータ5(b)が透光ケース44の受光部42の高さ部分の温めに大きく寄与している。
【0049】
ヒータ5は透光ケース44に接触せず、隙間Gが設けられているので、ヒータ5自体の発熱温度を透光ケース44の耐熱温度以上にすることが可能である。
【0050】
なお、レーザ誘導方式の自動走行において、透光ケース44が投光部41の高さで結露することは、投射されたレーザ光の拡散をもたらすので許容できるものではない。一方、透光ケース44が受光部42の高さで結露することはある程度許容できる。周囲の空気が温められると、
図5Bの通り、ヒータ5(a)と透光ケース44との間の隙間Gを通過する温められた上昇気流が発生して、結露を特に嫌う透光ケース44の投光部41の高さ部分をその全周に渡って温めてくれることも利点である。
【0051】
ヒータ5(a)に加えて投光部41の直上のヒータ5(c)も、結露を特に嫌う透光ケース44の投光部41の高さ部分を温めていることも利点である。上記の通り、搬送車2が冷凍室10と前室11との間を移動する際にエアカーテン装置がエアカーテン(下降気流)を形成するが、これが搬送車2に上方から当てられる。ヒータ5(c)は、このエアカーテンを遮る役割もあり、透光ケース44が当該エアカーテンによって温度低下するのを抑制する。
【0052】
輻射熱(遠赤外線)、ヒータ5(a),(c)への給電線、および、ヒータブラケット31,32が、レーザ誘導方式の自動走行に影響を与えないことも上述の通りである。
【0053】
以上のように、実施形態の光学センサユニット3は、透光ケース44を効率的に前室11の露点より高い温度に温めて、透光ケース44に結露や霜が発生することを防止しつつ、レーザ光の受光量の減少も抑制している。したがって、搬送車2のレーザ誘導方式による自動走行が結露によって停止されることはなく、冷凍倉庫1内での安定した自動走行が保障される。
【0054】
次に、第2実施形態が説明される。第1実施形態と同一の構成には同一の符号が付され、同一の構成および効果の説明は省略される。
【0055】
図6の通り、第2実施形態では、ヒータ5からの輻射熱を反射するための熱反射板33が、投光部41より上方に、第1実施形態のヒータ5(c)の代わりに設けられている。熱反射板33は、上部カバー46に取り付けられて、上部カバー46から水平に張り出して、庇状に配置されており、ヒータ5の真上に位置している。熱反射板33は、ヒータ5の外径より大きい外径を有する。熱反射板33は、例えば、少なくともその下面がアルミ箔で構成され、それによって、その下方に配置されたヒータ5からの輻射熱を反射する。
【0056】
第2実施形態では、熱反射板33が、ヒータ5からの輻射熱を下方に反射するので、輻射熱の拡散を抑制し、輻射熱のロスを抑制できる。さらに、ヒータ5(a)と熱反射板33との間に、熱が篭り、上記の上昇気流がたまるので、透光ケース44の投光部41の高さ部分をさらに効率的に温めることができる。つまり、第2実施形態は、第1実施形態よりも電力(バッテリ)消費を低減しつつも、透光ケース44を第1実施形態と同程度に効率的に温めることができる。また、庇状に配置された熱反射板33は、上記のエアカーテン(下降気流)を遮り、ヒータ5および透光ケース44がエアカーテンによって温度低下するのを防止する。
【0057】
第2実施形態の変形例として、第1実施形態のヒータ5(c)が、追加されて、熱反射板33の下方で投光部41の上方に位置するように、熱反射板33に保持されてよい。
【0058】
第3実施形態は、上述の光学センサユニット3において、5[5(a),5(b),5(c)]に代えて、ヒータグループ6[6(a),6(b),6(c)]が用いられている。第3実施形態において、第1および第2実施形態と同一の構成には同一の符号が付され、同一の構成および効果の説明は省略される。
【0059】
図7は、第3実施形態を例示しており、第1実施形態の光学センサユニット3において、3つのヒータ5[5(a),5(b),5(c)]に代えて、3つのヒータグループ6[6(a),6(b),6(c)]が、透光ケース44の結露防止のために用いられている。
【0060】
ヒータグループ6も、ヒータ5と同様に、レーザ光の投受光を遮らないように投光部41および受光部42と異なる高さに配置されている。ヒータグループ6は、透光ケース44を温めるために熱を輻射する複数(2以上)のヒータ60からなる。ヒータ60は、それぞれ、板状であり、水平に配置されている。ヒータ60は、ヒータ5と同様に、シリコンヒータなどの発熱体である。
【0061】
図8A,
図8B,
図9は、ヒータグループ6を例示する。
図8Aのヒータグループ6は、180°の円弧状の2つのヒータ60からなる。この2つの円弧状のヒータ60が、透光ケース44の周りを囲むように円環状に並べられており、協働して透光ケース44の外面をその全周に渡って温める。
図8Bのヒータグループ60は、90°の円弧状の4つのヒータ60からなる。この4つの円弧状のヒータ60が、透光ケース44の周りを囲むように円環状に並べられており、協働して透光ケース44の外面をその全周に渡って温める。円弧状のヒータ60の数は、2つ、4つに限らず、3つ、または、5つ以上の円弧状のヒータが用いられて円環状に並べられてもよい。
【0062】
図9のヒータグループ6は、矩形状の4つのヒータ60からなる。この4つの矩形状のヒータ60が透光ケース44の周りを囲むように四角環状に並べられて、協働して透光ケース44の外面をその全周に渡って温める。1つのヒータグループ6を構成するヒータ60の数は、
図8A,
図8B,
図9の例示に限定されない。当然ながら、透光ケース44の周りを囲むヒータ60の数、形状、および配列は、上記の態様に限定されるものではない。
【0063】
図6の第2実施形態の光学センサユニット3において、ヒータ5に代えて、ヒータグループ6が用いられてもよい。
【0064】
上記実施形態では、2つ以上のヒータ5/ヒータグループ6が設けられている。しかしながら、ヒータの性能(発熱量)や、透光ケース44のサイズや耐熱温度によっては、1つのヒータ5/ヒータグループ6だけでも、透光ケース44の結露を防止することは可能である。この場合、1つのヒータ/ヒータグループは、好ましくは、例えばヒータ5(a)/ヒータグループ6(a)のように、投光部41の直下で受光部42の直上に位置するとよい。
【0065】
上記実施形態では、ヒータ5,60が、透光ケース44と接触しておらず、これらの間に隙間Gが形成されている。ヒータ5,60の発熱温度が透光ケース44の耐熱温度より低い場合には、ヒータ5,60を透光ケース44に接触させてもよい。また、ヒータ5,60の発熱により透光ケース44が熱変形するのを防止するために、断熱材(図示略)がヒータ5/ヒータグループ6と透光ケース44との間で挟まれるように設けられてよい。この断熱材も、当然ながら、レーザ光の投受光を遮らない厚さを有する。
【符号の説明】
【0066】
1 冷凍倉庫
10 冷凍室
11 前室
2 搬送車
3 光学センサユニット
31,32 ヒータブラケット
32 上部カバー
33 熱反射板
4 光学センサ
40 投受光部
41 投光部
42 受光部
43 回転駆動部
44 透光ケース
46 上部カバー
5[5(a),5(b),5(c)] ヒータ
6[6(a),6(b),6(c)] ヒータグループ
60 ヒータグループを構成するヒータ