(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053258
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】連結具、連結構造及び連結方法
(51)【国際特許分類】
F16B 21/04 20060101AFI20240408BHJP
F16B 35/06 20060101ALI20240408BHJP
F16B 35/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
F16B21/04 H
F16B35/06 Z
F16B35/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159388
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】522389737
【氏名又は名称】前川 義一
(74)【代理人】
【識別番号】100174805
【弁理士】
【氏名又は名称】亀山 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】前川 義一
【テーマコード(参考)】
3J037
【Fターム(参考)】
3J037AA01
3J037CA06
(57)【要約】
【課題】 安価な連結具、連結構造及び連結方法を提供する。
【解決手段】 連結具2は、棒部材10と、棒部材10の先端側に設けられた係合ヘッド部20と、棒部材10の基端面10Bに設けられた操作用係合溝30と、ナット60と、を備える。棒部材10は、円柱状に形成されるものであり、軸線AX方向に直線状に延びる。棒部材10の周面は、螺旋溝10Mが形成される。螺旋溝10Mは、棒部材10の軸線AXにおいて螺旋状に形成される。係合ヘッド部20は、棒部材10の径方向に向かって延びる第1ヘッド部21と、棒部材10の径方向に向かって延びる第2ヘッド部22と、を備える。操作用係合溝30は、棒部材10の基端部の端面10Bに形成される。操作用係合溝30は、軸線AX方向に対して直交するように伸びる。操作用係合溝30は、係合ヘッド部20と平行となっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔が形成された孔部に対して連結する連結具であって、
円柱状の棒部材と、
前記棒部材の周面に設けられた螺旋溝と、
前記棒部材の先端部に設けられた係合ヘッド部と、
前記棒部材の基端側端面に設けられた操作用係合部と、
前記螺旋溝に螺合可能なナットと、を備え、
前記操作用係合部は、前記棒部材の径方向に延び、
前記係合ヘッド部は、前記棒部材の径方向に延び、
前記棒部材の軸線回りにおいて、前記操作用係合部は、第1方向に向く第1状態と前記係合ヘッド部が前記第1方向とは異なる向き向く第2状態との間で切り替え自在であり、
前記係合ヘッド部は、前記棒部材の軸線回りにおいて、前記第1状態と前記第2状態との間で異なる方向を向くことを特徴とする連結具。
【請求項2】
前記係合ヘッド部は、
前記棒部材の径方向に延びる第1係合部と、
前記棒部材の径方向に延びる第2係合部と、を備え、
前記第1係合部と第2係合部とは直線状であることを特徴とする請求項1記載の連結具。
【請求項3】
前記操作用係合部は、前記棒部材の一端部に設けられた保持用係合溝である
ことを特徴とする請求項1または2記載の連結具。
【請求項4】
請求項1ないし3記載のいずれか1つ記載の連結具に対して連結可能な連結構造であり、
前記孔部を備えた連結構造本体を備え、
前記孔部は、
連結構造本体の表面に開口する孔開口部と、
前記孔開口部の奥に延びる孔奥部と、を備え、
前記孔奥部は、前記第1状態と前記第2状態との間で切り替え自在な状態で前記係合ヘッド部を収容し、
前記孔部開口部は、前記第1状態の前記係合ヘッド部に対し挿通を許容する一方、
前記第2状態の前記係合ヘッド部に対し挿通を規制することを特徴とする連結構造。
【請求項5】
請求項1ないし3記載のいずれか1つ記載の連結具を用いた連結方法であって、
前記第1状態の前記係合ヘッド部を前記孔部に対して挿入する挿入ステップと、
前記螺旋溝に対して螺合した前記ナットと前記係合ヘッド部とにより、前記孔部が形成された連結構造本体を挟む挟みステップと、
前記孔奥部において、前記係合ヘッド部を前記第1状態から前記第2状態に切り替える固定ステップと、
を備えることを特徴とする連結方法。
【請求項6】
前記固定ステップは、前記操作用係合部に係合した工具を用いて、前記係合ヘッド部を前記第1状態から前記第2状態に切り替えることを特徴とする請求項5記載の連結方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結具、連結構造及び連結方法に関する。
【背景技術】
【0002】
T字状のシャフトを介して機器のセキュリティスロットに対して施錠する連結具が開示されている。この連結具は、ケンジントンロックとも呼ばれ、本体ユニットと表示ユニットとを有するノート形のパーソナルコンピュータを固定するのに用いられる。この連結具には、機器に対する係止及びその解除を行うロック機構が備わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の連結具において、ロック機構が複雑なため、製造コストが高くなる。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、安価な連結具、連結構造及び連結方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、孔が形成された孔部に対して連結する連結具であって、円柱状の棒部材と、前記棒部材の周面に設けられた螺旋溝と、前記棒部材の先端部に設けられた係合ヘッド部と、前記棒部材の基端側端面に設けられた操作用係合部と、前記螺旋溝に螺合可能なナットと、を備え、前記操作用係合部は、前記棒部材の径方向に延び、前記係合ヘッド部は、前記棒部材の径方向に延び、前記棒部材の軸線回りにおいて、前記操作用係合部は、第1方向に向く第1状態と前記係合ヘッド部が前記第1方向とは異なる向き向く第2状態との間で切り替え自在であり、前記係合ヘッド部は、前記棒部材の軸線回りにおいて、前記第1状態と前記第2状態との間で異なる方向を向くことを特徴とする。
【0007】
前記係合ヘッド部は、前記棒部材の径方向に延びる第1係合部と、前記棒部材の径方向に延びる第2係合部と、を備え、前記第1係合部と第2係合部とは直線状であることが好ましい。また、前記操作用係合部は、前記棒部材の一端部に設けられた保持用係合溝であることが好ましい。
【0008】
本発明は、上記の連結具に対して連結可能な連結構造であり、前記孔部を備えた連結構造本体を備え、前記孔部は、連結構造本体の表面に開口する孔開口部と、前記孔開口部の奥に延びる孔奥部と、を備え、前記孔奥部は、前記第1状態と前記第2状態との間で切り替え自在な状態で前記係合ヘッド部を収容し、前記孔部開口部は、前記第1状態の前記係合ヘッド部に対し挿通を許容する一方、前記第2状態の前記係合ヘッド部に対し挿通を規制することを特徴とする。
【0009】
本発明は、上記の連結具を用いた連結方法であって、前記第1状態の前記係合ヘッド部を前記孔部に対して挿入する挿入ステップと、前記螺旋溝に対して螺合した前記ナットと前記係合ヘッド部とにより、前記孔部が形成された連結構造本体を挟む挟みステップと、前記孔奥部において、前記係合ヘッド部を前記第1状態から前記第2状態に切り替える固定ステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
前記固定ステップは、前記操作用係合部に係合した工具を用いて、前記係合ヘッド部を前記第1状態から前記第2状態に切り替えることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、安価な連結具、連結構造及び連結方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(A)は、連結具の概要を示す左側面図である。(B)は、連結具の概要を示す正面図である。(C)は、連結具の概要を示す右側面図である。
【
図5】(A1)(B1)は、孔部に挿入された連結具の概要を示すIV-IV’線断面図である。(A2)(B2)は、孔部に挿入された連結具の概要を示す正面図である。
【
図6】(A1)(B1)は、孔部に挿入された連結具の概要を示すIV-IV’線断面図である。(A2)(B2)は、孔部に挿入された連結具の概要を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1~2に示すように、連結具2は、棒部材10と、棒部材10の先端側に設けられた係合ヘッド部20と、棒部材10の基端面10Bに設けられた操作用係合溝30(
図2(C))と、係合リング50と、ナット60と、を備える。
【0014】
棒部材10は、円柱状に形成されるものであり、軸線AX方向に直線状に延びる。棒部材10の周面は、螺旋溝10Mが形成される。螺旋溝10Mは、棒部材10の軸線AXにおいて螺旋状に形成される。
【0015】
係合ヘッド部20は、棒部材10の径方向に向かって延びる第1ヘッド部21と、棒部材10の径方向に向かって延びる第2ヘッド部22と、を備える。第1ヘッド部21と第2ヘッド部22とがなす角θは、180°である(
図2(C))。すなわち、第1ヘッド部21と第2ヘッド部22とは同一直線上に配される。このように、棒部材10と係合ヘッド部20とは、T字状となるように連結している(
図2(B))。
【0016】
図2(C)に示すように、操作用係合溝30は、棒部材10の基端部の端面10Bに形成される。操作用係合溝30は、軸線AX方向に対して直交するように伸びる。操作用係合溝30は、係合ヘッド部20と平行となっている。
【0017】
図1,3に示すように、係合リング50は、金属製の線条体から形成されるものであり、第1リング部51と第2リング部52と連結部53とを備える。第1リング部51は、いわゆる二重リングの構造を有し、螺旋状の線条体からなる。第1リング部51は、棒部材10が挿通可能な孔を有する。第1リング部51のサイズは、孔部K(後述する)とナット60とにより挟まれる程度の大きさであればよい。第2リング部52も、いわゆる二重リングの構造を有し、螺旋状の線条体からなる。第2リング部52は別の物品を係合することができる。連結部53は、第1リング部51の先端部と、第2リング部52の基端部とを連結する。
【0018】
第2リング部52に係合される別の物品の例としては、紐、ストラップや鎖といった線条体や、第2リング部52に対して係合可能な別の連結具(二重リング、ナスカン、カラビナ等)を用いてもよい。線条体や別の連結具を介して、あらゆる物品が連結具2に対して着脱自在となる。
【0019】
図4に示すように、ノートパソコンPCは、キーボードを備える筐体C(連結構造本体)と、ディスプレイ部Dと、筐体C及びディスプレイ部Dを連結するヒンジ部Hと、を備える。筐体Cの側面には、孔部Kが形成される。
【0020】
孔部Kは、筐体Cの表面に開口する孔開口部K1と、孔開口部K1の奥に延びる孔奥部K2と、を備える。
【0021】
孔開口部K1は、長方形状に形成されるものであり、係合ヘッド部20の外形より一回り大きな寸法となっている。一方、孔奥部K2は、孔開口部K1に連通するものであり、円柱状に形成される。孔奥部K2の軸は水平であり、孔開口部K1を通過する。孔奥部K2の直径は孔開口部K1の長辺よりも長いため、係合ヘッド部20を回動自在な状態で収容可能である。
【0022】
このため、孔奥部K2は、係合ヘッド部20の向きと孔開口部K1との向きが平行となる平行状態(
図5(A1)及び
図5(A2))と、両者が垂直になる垂直状態(
図5(B1)及び
図5(B2))との間で切り替え自在な状態で係合ヘッド部を収容可能となっている。孔開口部K1は、平行状態(
図5(A1)及び
図5(A2))の係合ヘッド部20に対し挿通を許容する一方、垂直状態(
図5(B1)及び
図5(B2))の係合ヘッド部20に対し挿通を規制する。
【0023】
次に、連結具2を用いた連結方法について説明する。
【0024】
連結方法は、挿入ステップと、仮止めステップと、挟みステップと、固定ステップと、を備える。
【0025】
(挿入ステップ)
棒部材10の軸線AX方向周りの回動により、係合ヘッド部20の向きを孔開口部K1に挿通可能な平行状態にする。平行状態の係合ヘッド部20を孔部Kに対して挿入すると、平行状態の係合ヘッド部20は、孔開口部K1を通過して、孔奥部K2に挿通される(
図5(A1)及び
図5(A2))。
【0026】
(仮止めステップ)
次に、棒部材10の軸線AX方向周りにおいて90°回動することにより、係合ヘッド部20は、平行状態から垂直状態となる。これにより、係合ヘッド部20は、孔部Kから脱落しなくなる(
図5(B1)及び
図5(B2))。
【0027】
(挟みステップ)
次に、棒部材10に対して係合リング50を挿入した後、螺旋溝10Mに対してナット60を螺合する。棒部材10の基端部からみて時計回りにナット60を回すと、軸線AX方向におけるナット60と係合ヘッド部20の間隔が小さくなる。これにより、ナット60と係合ヘッド部20によって、係合リング50及び孔部Kを挟む(
図6(A1)及び
図6(A2))。
【0028】
(固定ステップ)
次に、操作用係合溝30にマイナスドライバDBの先端を係合して、反時計周りに所定量だけ回動する。これにより、ナット60と係合ヘッド部20による孔部Kを挟み込みが増す(
図6(B1)及び
図6(B2)))。そして、この回動は、係合ヘッド部20が垂直状態となったところで止める。
【0029】
このように、連結具2は、ボルト及びナットといった基本的な部材の組み合わせによって構成されるため、製造コストが安く済む。
【0030】
上記実施形態では第1ヘッド部21と第2ヘッド部22とがなす角θ(
図2)を180°としたが、本発明はこれに限られず、180°未満としてもよい。
【0031】
上記実施形態では、係合ヘッド部20は、2つのヘッド部(第1ヘッド部21と第2ヘッド部22)を設けたが、本発明はこれに限られず、1つまたは3つ以上のヘッド部を有していてもよい。この場合には、孔開口部K1は、第1状態の係合ヘッド部20に対し挿通を許容する一方、第1状態とは異なる向きの第2状態の係合ヘッド部20に対し挿通を規制するように形成すればよい。
【0032】
上記実施形態では、操作用係合溝30の形状は、マイナスドライバが係合可能な直線状なものとしたが、本発明はこれに限られず、プラスドライバが係合可能な十字状や六角レンチ等が係合可能な六角形状や多角形状等でもよい。
【0033】
上記実施形態では、ノートパソコンPCに設けられた孔部Kに対して着脱可能な連結具2を説明したが、本発明はこれに限られない。乗り物(自動車、オートバイ、自転車、飛行機や電車等)の内装、住居の内装などに孔部Kを設け、当該孔部Kに対して着脱可能な連結具2として用いてもよい。
【0034】
尚、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
2 連結具
10 棒部材
10B 基端面
10M 螺旋溝
20 係合ヘッド部
21 ヘッド部
30 操作用係合溝
60 ナット