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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053259
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】歯ブラシ
(51)【国際特許分類】
   A46B 5/00 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
A46B5/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159389
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】香嶋 郁美
(72)【発明者】
【氏名】和田 行紀
【テーマコード(参考)】
3B202
【Fターム(参考)】
3B202AA06
3B202AB15
3B202BA02
3B202BA29
3B202DB01
3B202EA01
3B202EA06
3B202HA01
(57)【要約】
【課題】薄いヘッド部及び細いネック部を備え、口腔内の狭い隙間の奥までヘッドを届かせ、且つ口腔内全体を細かに清掃可能でありつつ、清掃時のヘッド部の反りや捻じれを抑え、清掃性や操作感(磨き心地)を高めることができ、成形性も高められる歯ブラシを提供せんとする。
【解決手段】ヘッド部3の背面における基端側であるネック部6側の部位に、ネック部6側から植毛台4に向けて次第に厚みが小さくなる第1の傾斜部71と、該第1の傾斜部71の先端側に連続して形成され、植毛台4の左右両縁部(外縁部42)に向けて次第に厚みが小さくなる左右一対の第2の傾斜部72、73とを備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛束が突設される植毛台からなる先端側のヘッド部と、基端側のハンドル部と、前記ヘッド部とハンドル部とを連結する左右幅の比較的小さいネック部とを備える歯ブラシであって、
前記ヘッド部が、厚み4mm以下の植毛台からなる薄型ヘッドであり、
前記ヘッド部の背面における基端側であるネック部側の部位に、ネック部側から植毛台に向けて次第に厚みが小さくなる第1の傾斜部と、
該第1の傾斜部の先端側に連続して形成され、植毛台の左右両縁部の一方又は双方に向けて次第に厚みが小さくなる第2の傾斜部とを備えることを特徴とする歯ブラシ。
【請求項2】
前記第2の傾斜部が、前記植毛台の左右両縁部の双方に向けて次第に厚みが小さくなる左右一対の傾斜部からなり、ヘッド部の中央位置で互いに繋がって平面視略U字状の一つの傾斜面を構成している、請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項3】
前記ネック部の前記ヘッド部に接続する先端位置の左右幅が3mm以上5mm以下である、請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項4】
前記植毛台のうち毛束が突設されている内側領域の外側に、該内側領域の厚みよりも薄い外側領域が設けられている、請求項1記載の歯ブラシ。
【請求項5】
前記植毛台の背面に、前記内側領域の途中部から前記外側領域の外縁部にわたって、該外縁部に向けて次第に植毛台の厚みが小さくなる第3の傾斜部が形成されている、請求項4記載の歯ブラシ。
【請求項6】
前記第3の傾斜部より内側がフラットな平面とされている、請求項5記載の歯ブラシ。
【請求項7】
前記植毛台の外縁部に沿った厚みが、2mm以上3mm以下である、請求項1~4の何れか1項に記載の歯ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄いヘッド部及び細いネック部を備える歯ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、4mm以下の薄型の植毛台からなるヘッド部を備える歯ブラシが提供されている(例えば、特許文献1参照。)。このような薄型のヘッド部に加え、該ヘッド部を基端側のハンドル部に連結するネック部について、左右幅を小さく構成することにより、口腔内の狭い隙間を通じて奥歯までヘッドを届かせる挿入性を高めることができ、口腔内全体を細かに清掃することが可能となる。
【0003】
しかしながら、薄型の植毛台からなるヘッド部は、清掃時に歯に押し付けられることで背面側への反りが発生しやすい。このような反りが大きくなると、特に歯間部の清掃性が低下するとともに、清掃時の操作感(磨き心地)も悪化する。また、大きく反ることで当該反りの部分の植毛穴が広がり、毛立ちが悪くなったり、抜毛強度が低下する不具合も生じやすくなる。このようなヘッド部の反りは、断面積が小さくなるネック部寄りにおいて、より大きくなる傾向にある。
【0004】
また、上記のようにネック部を細くして狭い隙間への挿入性を高めたものでは、上記ヘッドの反りがより顕著となる傾向にある。反りの方向も一方向に収まらず、軸回りの捻じれ方向にも発生しやすく、このようなヘッドの捻じれは、清掃性や操作感がさらに悪化してしまう原因になる。その他、成形の際にネック部側から樹脂を射出する場合、ヘッド部が薄いと流動性が低下し、成形性が悪化するという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-16495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、薄いヘッド部及び細いネック部を備え、口腔内の狭い隙間の奥までヘッドを届かせ、且つ口腔内全体を細かに清掃可能でありつつ、清掃時のヘッド部の反りや捻じれを抑え、清掃性や操作感(磨き心地)を高めることができ、成形性も高められる歯ブラシを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 毛束が突設される植毛台からなる先端側のヘッド部と、基端側のハンドル部と、前記ヘッド部とハンドル部とを連結する左右幅の比較的小さいネック部とを備える歯ブラシであって、前記ヘッド部が、厚み4mm以下の植毛台からなる薄型ヘッドであり、前記ヘッド部の背面における基端側であるネック部側の部位に、ネック部側から植毛台に向けて次第に厚みが小さくなる第1の傾斜部と、該第1の傾斜部の先端側に連続して形成され、植毛台の左右両縁部の一方又は双方に向けて次第に厚みが小さくなる第2の傾斜部とを備えることを特徴とする歯ブラシ。
【0008】
(2) 前記第2の傾斜部が、前記植毛台の左右両縁部の双方に向けて次第に厚みが小さくなる左右一対の傾斜部からなり、ヘッド部の中央位置で互いに繋がって平面視略U字状の一つの傾斜面を構成している、(1)記載の歯ブラシ。
【0009】
(3) 前記ネック部の前記ヘッド部に接続する先端位置の左右幅が3mm以上5mm以下である、(1)記載の歯ブラシ。
【0010】
(4) 前記植毛台のうち毛束が突設されている内側領域の外側に、該内側領域の厚みよりも薄い外側領域が設けられている、(1)記載の歯ブラシ。
ここで内側領域とは、植毛面からみた平面視で、外側に配置される植毛穴の外縁同士を最短距離で結んだ仮想線に囲まれた内側の領域であり、これを厚み方向にわたって背面側まで延ばした仮想面で囲まれる植毛台中央側の領域をいう。
【0011】
(5) 前記植毛台の背面に、前記内側領域の途中部から前記外側領域の外縁部にわたって、該外縁部に向けて次第に植毛台の厚みが小さくなる第3の傾斜部が形成されている、(4)記載の歯ブラシ。
【0012】
(6) 前記第3の傾斜部より内側がフラットな平面とされている、(5)記載の歯ブラシ。
【0013】
(7) 前記植毛台の外縁部に沿った厚みが、2mm以上3mm以下である、(1)~(4)の何れかに記載の歯ブラシ。
【発明の効果】
【0014】
以上にしてなる本願発明の歯ブラシによれば、ネック部側から植毛台に向けて次第に厚みが小さくなる第1の傾斜部により、薄型ヘッドが細いネック部寄りの位置で大きく反ってしまうことを防止でき、また、第1の傾斜部の先端側に連続して形成され、植毛台の左右両縁部の一方又は双方に向けて次第に厚みが小さくなる第2の傾斜部により、ヘッド部のねじれも防止できるとともに、且つヘッド部が全体で適度に撓むことで、清掃時に歯から受ける反作用の力を吸収することができる。
【0015】
したがって、清掃性や操作感(磨き心地)が悪化せず、毛立ちも良好に維持され、抜毛強度も低下することなく、薄いヘッド部及び細いネック部によって、口腔内の狭い隙間の奥までヘッドを届かせ、口腔内全体を細かに清掃することが可能な歯ブラシを提供できる。また、とくに第1の傾斜部によりヘッド部を成形する空間に大きな段差がなくなるうえ、第2の傾斜部によりヘッド部のネック部側の成形空間が広くなるため、ネック部側から樹脂を射出する際の樹脂の流動性が高まり、成形性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の代表的実施形態にかかる歯ブラシの毛束が突設されている腹側からみた斜視図。
図2】同じく歯ブラシを示す腹側からみた平面図。
図3】同じく歯ブラシの側面図。
図4】同じく歯ブラシを示す背側からみた平面図。
図5】同じく背側からみた斜視図。
図6】同じく歯ブラシのヘッド部を示す腹側からみた平面図。
図7】同じくヘッド部を示す背側からみた背面図。
図8】同じく背側からみた斜視図。
図9】(a)は植毛前の植毛台の横断面図、(b)は縦断面図。
図10】ヘッド部の基端側を示す要部の側面図。
図11】左右の第2の傾斜部を独立に設けた変形例を示す斜視図。
図12】植毛台を均一厚の平板状に構成した変形例を示す斜視図。
図13】第2の傾斜部を左右一方にのみ設けた変形例を示す斜視図。
図14】FEM解析の条件に関する説明図。
図15】(a)~(c)は、実施例1、実施例2、比較例1の各部の応力値、及び選択エリアを示すコンター図。
図16】(a)~(c)は、実施例1、実施例2、比較例1の各部の応力値、及び選択エリアを示すコンター図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明の歯ブラシ1は、図1図5に示すように、腹側の面(植毛面)に毛束50が突設される略平板状の植毛台4からなる薄いヘッド部3と、ハンドル部2と、ヘッド部3とハンドル部2とを連結する左右幅が比較的小さく細いネック部6とを備えた手動の歯ブラシである。ただし、本発明はこのような手動の歯ブラシに限定されるものではなく、駆動機構を内蔵する把持部としての本体部の先端側に、ヘッド部及びネック部からなる歯ブラシ清掃体が接続される電動歯ブラシでも勿論よく、その他の形態でも勿論よい。
【0019】
本発明の歯ブラシ1は、特に、ヘッド部3の背面における基端側であるネック部側の部位には、ネック部6から植毛台4に向けて次第に厚みが小さくなる第1の傾斜部71と、該第1の傾斜部71の先端側に連続して形成され、植毛台4の左右両縁部の一方又は双方(本例では双方)に向けて次第に厚みが小さくなる左右一対の第2の傾斜部72、73とを備えている。
【0020】
ヘッド部3の第1の傾斜部71は、薄型のヘッド部3が細いネック部6寄りの位置で大きく反ってしまうことを防止する。また、第2の傾斜部72、73は、ヘッド部3の反りとともにねじれも防止し、清掃時に歯から受ける反作用の力をネック部寄りの位置に集中させずに、ヘッド部3全体を適度に撓ませて吸収するようにする効果を奏する。これにより、清掃性や操作感(磨き心地)が悪化せず、毛立ちも良好に維持され、抜毛強度も低下することなく、口腔内の狭い隙間の奥までヘッドを届かせ、口腔内全体を細かに清掃できるものである。
【0021】
ヘッド部3は、略平板状で植毛面や背面側からみた平面視で略楕円形状の先端側の植毛台4と、上記した傾斜部71~73を有し、同じく平面視で略逆Aの字形状でネック部6と植毛台4とを連結する基端側の連結部7とより構成されている。ヘッド部3は、ネック部6およびハンドル部2とともに、ポリアセタール樹脂(POM),ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリアンミド樹脂などの曲げ弾性率2300MPa以上の硬質合成樹脂によって一体成形されている。ハンドル部2やネック部6は、同一樹脂で一体成形するもの以外に、第2の合成樹脂やエラストマーで被覆部を二色成形したもの等でもよい。
【0022】
植毛台4の毛束50が突設される腹側の植毛面40には、断面視略円形の有底の植毛穴45が複数形成されている。植毛穴45の開口径、深さ、個数、配列形態などは本例に何ら限定されない。毛束50は、植毛台4の植毛穴45に対し、平線とともに打ち込んで植毛するものや、平線を使用せずに融着式やインモールド式などで毛束50を立設したものでも勿論よい。毛束50を構成する各フィラメントの材質も特に限定されず、ナイロン、ポリエステル、ポリオレフィンなどの樹脂材料からなる人工毛でもよく、豚毛などの天然毛でもよい。その他、断面形状や断面の大きさなども、公知の形態を広く採用できる。
【0023】
植毛台4は、毛束50が突設されている内側領域R1と、その外側に設けられる内側領域R1の厚みよりも薄い外側領域R2とから構成され、内側領域R1の厚みが4mm以下の薄型の植毛台とされている。より具体的には、植毛台4の背面に、内側領域R1の途中部から外側領域R2の外縁部42にわたって、該外縁部42に向けて次第に植毛台4の厚みが小さくなる第3の傾斜部43が形成されている。
【0024】
すなわち、背面41側に傾斜部43及び平面部44からなる盛り上がった盛り部46が形成されている。この盛り部46が内側領域の強度向上に寄与し、反りを防止するとともに、外側領域R2に向けて傾斜部43が形成されることで、領域境界での応力集中をなくして強度アップを図るとともに、奥歯に挿入した際の口当たりもなめらかとなり、見た目のスリムさも感じられる構造とされている。
【0025】
内側領域R1は、図6図7に示すように、植毛台4の腹側からみた平面視で、複数配列された植毛穴45のうち最も外側に環状に配置される複数の植毛穴45の開口外縁同士を最短距離で結んだ仮想線L1に囲まれた内側の領域であり、これを厚み方向にわたって背面側まで延ばした仮想面F1で囲まれる植毛台中央側の立体的な領域をいう。外側領域R2は、本例では、内側領域R1の全周にわたって設けられているが、外側であればこれに限定されず、たとえば、先端側のみの領域や、基端側を除いた先端側から左右側方までの略U字状の領域の場合など種々の形態を含む。
【0026】
背面41の傾斜部43より内側の中央部分には、図2図4及び図5に示すように、フラットな平面部44が形成され、これにより台地上の盛り部46を形成している。平面部44のフラット面は植毛台4の腹面40と平行な面とされている。このような平面部44を形成することで、内側領域R1を必要最小な厚みとなるように構成されている。
【0027】
毛束50が植毛される領域である内側領域R1の厚みs1は、4.0mm以下の薄型ヘッドに構成されている。好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.5mm以下に構成される。下限値は2.2mm以上であることが好ましく、2.5mm以上であることがさらに好ましい。2.2mmよりも薄いと、外側領域R2もさらに薄くなるので、強度を維持できない。
【0028】
外側領域R2の外縁部42に沿った厚みs2は、良好な口当たりと見た目のスリムさが得られる点から、内側領域R1の最大厚みs1よりも0.2mm以上薄くなる(厚みの差が0.2mm以上となる)ように設定されることが好ましく、より好ましくは、0.3mm以上0.7mm以下、薄くなる(厚みの差が0.3mm以上0.7mm以下となる)ように設定される。厚みs2の具体的な寸法は3mm以下、好ましくは2.5mm以下、より好ましくは2.3mm以下であることが好ましい。ただし、強度を維持する点から2mm以上あることが好ましい。
【0029】
植毛台4の左右横方向の寸法w1は、15mm以下、より好ましくは12mm以下として、腹側又は背側からみた台平面形状もスリムに設定することが好ましい。なお、外側領域R2の外縁部42に沿った厚みs2は、図6に示すように、内側領域R1における最も近くに存在する毛束50、ここでは複数配列された毛束のうち最も外側に配置されている各毛束50の植毛深さh1の寸法よりも小さく設定されていることが好ましい。これにより、植毛深さh1の深さを維持して毛束50の脱毛強度を十分に保ちしつつ、外側領域R2の外縁部42の厚みを薄くして、口あたりや見た目のスリムさの効果が得られる。
【0030】
連結部7は、左右幅が3mm以上5mm以下である縦長略四角形の断面形状のネック部6の先端に接続する同じく縦長略四角形の断面形状の基端部70から、植毛台4のある先端側に向けて、左右の側壁が平面視で次第に鳩尾状に広がり、且つ背面側が徐々に厚みがなくなり植毛台4背面の平面部44と略同じ位置まで薄くなる第1傾斜部71が設けられ、さらにその先端側に、植毛台4の基端位置に沿って左右の外縁部42に向けて延び、該外縁部42と同じ厚みとなって該外縁部42に接続される一対の第2の傾斜部72、73が設けられている。
【0031】
第1傾斜部71の背面側の略台形状の傾斜面は、軸方向に沿って同じ角度で傾斜する平らなテーパー面とされている。また、第2の傾斜部72、73の傾斜面も、第1傾斜面と略面一のテーパー面とされている。ただし、略面一でなく異なる角度で傾斜する面であってもよい。これら傾斜面は、平らなテーパー面以外に、凸曲面や凹曲面で構成することも勿論できる。本例では、第2の傾斜部72、73が、中央位置で互いに繋がって平面視略U字状の一つの傾斜面を構成しているが、このように繋がった構造ではなく、図11に示すように、それぞれ第1の傾斜部71の先端の左右独立した位置に連設されたものでもよい。
【0032】
このように、第2の傾斜部72、73が植毛台4の基端に沿って外縁部42まで左右に弓形に回り込んで延びる構造であるため、植毛台4の基端部が補強され、ヘッド部3に生じる応力が最も集中しやすい植毛台4基端の曲げ強度を高めて、ヘッド部3全体に応力を分散し、ヘッド部3の反りや捻じれを防止する構造とされている。とくに本例の植毛台4のように中央の平面部44から外縁部42に向かって傾斜面43を有して外縁部が薄く形成されているものでは、左右の第2の傾斜部72、73がそれぞれ植毛台4の傾斜面43と段差なく連続し、応力をより効果的に植毛台4全体に分散させる効果を奏している。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施の例に何ら限定されるものではない。例えば、図12に示すように、植毛台4の背面側41の盛り部46を省略し、全体を均一厚みの板状体に構成したものでもよい。また、図13(a),(b)に示すように、第2の傾斜面72、73のうち一方のみを残し、他方を省略したものでもよい(図の例では傾斜面7s3を省略)。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【実施例0034】
以下、実施例1、2、比較例1の歯ブラシのモデル(植毛台からネック部先端部までのモデル)について、図14に示すように、植毛台の背面側の平面部を固定し、植毛台の植毛面全体に均等に、左右横方向に45度傾斜した方向に荷重(1N)をかけたときの各部に作用する応力値をFEM解析した結果について説明する。
【0035】
実施例1、2は、基本的に図1図5に示した構造であり、植毛台の横方向の幅寸法w1を10.5mm、外縁部の厚みs2の値を2.5mm、内側領域の最大厚みs1の寸法を3mmに設定したものである。実施例1は第2、第3の傾斜面を凸曲面としたものであり、実施例2は同傾斜面を平らなテーパ面としたものである。比較例1は、植毛台を、2.5mm厚のフラットな板としたものである。
【0036】
FEM解析には、ダッソー・システムズ社製「Solidworks simulations」を用いた。各部の応力値のうち、ヘッド部からネック部に至る境界近くのエッジの領域(エリア)を選択し(図15(a)~(c)に示す選択エリア)、該選択エリア内の各部の応力値の最大値(応力最大値)を出力した結果を表1に示す。尚、通常、応力を作用する板状体が反りやすい(撓みやすい)と、応力最大値は大きくなる。図15(a)は実施例1の、図15(b)は実施例2の、図15(c)は比較例1の、それぞれ各部の応力値、及び上記選択エリア(本例ではエッジに沿った4つの連続したエリアを選択した。)を示すコンター図である。
【0037】
【表1】
【0038】
表1や図15(c)から分かるよう、比較例1はヘッド部が薄すぎて上記エッジに応力が集中しており、反りや捩れが大きくなることがわかる。これに対し、表1や図15(a),(b)に示すように実施例1、2は、応力が若干集中するも、エッジには集中せず、中央寄りである。また、その応力最大値も小さく抑えられ、分散できていることがわかる。つまり反りや捻じれを抑える効果が確認できる。
【0039】
また、実施例1、2について、略U字状の第2の傾斜部のエリアを選択し(図16(a)、(b)に示す選択エリア)、該選択エリア内の各部の応力値の最大値(応力最大値)を出力した結果を表2に示す。図16(a)は実施例1の、図16(b)は実施例2の各部の応力値、及び上記選択エリア(第2の傾斜部にあたるU字形状のエリアを選択した。)を示すコンター図である。
【0040】
【表2】
【0041】
表2から分かるよう、実施例1の応力最大値は実施例2よりも小さくなった。したがって、第2の傾斜部の傾斜面は凸曲面である方が応力分散できている点で好ましいことがわかる。
【符号の説明】
【0042】
1 歯ブラシ
2 ハンドル部
3 ヘッド部
4 植毛台
6 ネック部
7 連結部
40 植毛面
41 背面
42 外縁部
43 第3の傾斜部
44 平面部
45 植毛穴
46 盛り部
50 毛束
70 基端部
71 第1の傾斜部
72、73 第2の傾斜部
R1 内側領域
R2 外側領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16