(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053261
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240408BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20240408BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20240408BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
H01L21/304 642A
H01L21/304 648D
H01L21/306 K
H01L21/68 A
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159393
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】前川 直嗣
【テーマコード(参考)】
5F043
5F131
5F157
【Fターム(参考)】
5F043EE02
5F043EE07
5F043EE28
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5F043EE36
5F131AA02
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5F157AB74
5F157BB04
5F157BB09
5F157BB22
5F157CF93
5F157DB02
(57)【要約】
【課題】基板の傾倒を防止しつつ、基板の表面処理の均一性を維持することができる基板処理装置および基板処理方法を提供する。
【解決手段】処理槽10に貯留された処理液中に基板Wが浸漬されて表面処理が行われる。処理時には、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持される第1状態から、基板Wが基板保持部50によって低処理位置に保持される第2状態に切り替えられる。保持状態を切り替えることにより、接触により処理効率が低下する特異点を無くして基板Wの全面を均一に処理することができる。また、基板Wが高処理位置に保持されているときには、第1ガイド61によって基板Wの傾倒が防止され、基板Wが低処理位置に保持されているときには、第2ガイド62によって基板Wの傾倒が防止される。基板Wの傾倒を防止しつつ、基板Wの表面処理の均一性を維持することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理液中に浸漬して表面処理を行う基板処理装置であって、
処理液を貯留する処理槽と、
前記処理槽内に処理液を供給する処理液供給部と、
起立姿勢の基板を下方から保持するリフターと、
前記処理槽の上方の引き上げ位置、前記基板が処理液中に浸漬する第1処理位置に前記基板を保持する上部浸漬位置、および、前記上部浸漬位置よりも下方の下部浸漬位置の間で前記リフターを昇降させる昇降部と、
前記リフターが前記下部浸漬位置に下降したときに前記リフターから前記基板を受け取って、前記第1処理位置よりも下方の第2処理位置に前記基板を保持する保持部と、
前記第1処理位置および前記第2処理位置に保持されている前記基板の傾倒を防止するガイド部と、
を備え、
前記リフターが前記基板を保持する接触箇所と前記保持部が前記基板を保持する接触箇所とは異なることを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記リフターを前記上部浸漬位置と前記下部浸漬位置との間で移動させ、前記基板が前記リフターによって前記第1処理位置に保持される第1状態と前記基板が前記保持部によって前記第2処理位置に保持される第2状態とを切り替えるように前記昇降部を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする基板処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の基板処理装置において、
前記制御部は、前記第1状態と前記第2状態との切り替えを複数回繰り返すように前記昇降部を制御することを特徴とする基板処理装置。
【請求項4】
請求項2記載の基板処理装置において、
前記ガイド部は、
前記第1処理位置に保持されている前記基板の傾倒を防止する第1ガイド要素と、
前記第2処理位置に保持されている前記基板の傾倒を防止する第2ガイド要素と、
を含み、
前記第1ガイド要素は前記第2ガイド要素よりも高位置に設けられることを特徴とする基板処理装置。
【請求項5】
請求項4記載の基板処理装置において、
前記第1ガイド要素と前記第2ガイド要素とは一体化されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項6】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記保持部と前記ガイド部とは一体化されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項7】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記保持部および前記ガイド部は前記処理槽の内壁面に固設されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項8】
請求項1記載の基板処理装置において、
前記処理槽の上部開口を覆う蓋部をさらに備え、
前記ガイド部は前記蓋部に固設されることを特徴とする基板処理装置。
【請求項9】
基板を処理液中に浸漬して表面処理を行う基板処理方法であって、
処理槽内に処理液を供給して前記処理槽に処理液を貯留する貯留工程と、
起立姿勢の基板を下方から保持するリフターを、前記処理槽の上方の引き上げ位置、前記基板が処理液中に浸漬する第1処理位置に前記基板を保持する上部浸漬位置、および、前記上部浸漬位置よりも下方の下部浸漬位置の間で昇降させる昇降工程と、
を備え、
前記リフターが前記下部浸漬位置に下降したときに、前記処理槽に固設された保持部が前記リフターから前記基板を受け取って、前記第1処理位置よりも下方の第2処理位置に前記基板を保持し、
前記第1処理位置および前記第2処理位置に保持されている前記基板の傾倒をガイド部が防止し、
前記リフターが前記基板を保持する接触箇所と前記保持部が前記基板を保持する接触箇所とは異なることを特徴とする基板処理方法。
【請求項10】
請求項9記載の基板処理方法において、
前記リフターが前記上部浸漬位置と前記下部浸漬位置との間で移動し、前記基板が前記リフターによって前記第1処理位置に保持される第1状態と前記基板が前記保持部によって前記第2処理位置に保持される第2状態とを切り替えることを特徴とする基板処理方法。
【請求項11】
請求項10記載の基板処理方法において、
前記第1状態と前記第2状態との切り替えを複数回繰り返すことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理液中に浸漬して洗浄処理等の表面処理を行う基板処理装置および基板処理方法に関する。処理対象となる基板には、例えば、半導体基板、液晶表示装置用基板、flat panel display(FPD)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、または、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置の製造工程では、半導体基板等の基板に対して種々の処理を行う基板処理装置が用いられている。そのような基板処理装置の1つに、処理槽内に処理液を貯留し、その処理液中に複数の基板を一括して浸漬してエッチング処理等を行うバッチ式の基板処理装置が知られている。典型的なバッチ式の基板処理装置は、薬液を貯留した薬液槽および純水を貯留した水洗槽を備え、薬液槽にて基板にエッチング処理等を行った後、水洗槽にてその基板のリンス処理を行う。
【0003】
バッチ式基板処理装置の水洗槽においては、純水の使用量の削減と処理時間を短くする観点から基板に付着している薬液を迅速に純水に置換することが望まれる。このためには、水洗槽に供給する純水の流量を多くして槽内における流速を速くする必要がある。
【0004】
ところが、純水の流速を速くすると、水洗槽内に基板を保持しているリフター上で基板が揺れ動き、リフター上の正しい位置に正しい姿勢で基板が留まることができなくなる。このため、特許文献1には、リフターに保持された基板を上方からも保持する保持部を設けて基板の回転を抑制することが開示されている。また、特許文献2には、傾倒防止部材を設けてリフターに保持された基板が倒れるのを防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-72272号公報
【特許文献2】特開平11-186375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、水洗槽にてリンス処理を行う際に、基板に付着した薬液の純水への置換効率が最も低いのはリフターが基板を保持する接触箇所である。リフターと基板との接触箇所には純水の水流が届きにくいため、当該接触箇所の洗浄効率が低下するのである。このような洗浄効率の低い箇所が存在すると、基板の表面処理の均一性が損なわれることとなる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、基板の傾倒を防止しつつ、基板の表面処理の均一性を維持することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板を処理液中に浸漬して表面処理を行う基板処理装置において、処理液を貯留する処理槽と、前記処理槽内に処理液を供給する処理液供給部と、起立姿勢の基板を下方から保持するリフターと、前記処理槽の上方の引き上げ位置、前記基板が処理液中に浸漬する第1処理位置に前記基板を保持する上部浸漬位置、および、前記上部浸漬位置よりも下方の下部浸漬位置の間で前記リフターを昇降させる昇降部と、前記リフターが前記下部浸漬位置に下降したときに前記リフターから前記基板を受け取って、前記第1処理位置よりも下方の第2処理位置に前記基板を保持する保持部と、前記第1処理位置および前記第2処理位置に保持されている前記基板の傾倒を防止するガイド部と、を備え、前記リフターが前記基板を保持する接触箇所と前記保持部が前記基板を保持する接触箇所とは異なることを特徴とする。
【0009】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置において、前記リフターを前記上部浸漬位置と前記下部浸漬位置との間で移動させ、前記基板が前記リフターによって前記第1処理位置に保持される第1状態と前記基板が前記保持部によって前記第2処理位置に保持される第2状態とを切り替えるように前記昇降部を制御する制御部をさらに備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3の発明は、請求項2の発明に係る基板処理装置において、前記制御部は、前記第1状態と前記第2状態との切り替えを複数回繰り返すように前記昇降部を制御することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4の発明は、請求項2または請求項3の発明に係る基板処理装置において、前記ガイド部は、前記第1処理位置に保持されている前記基板の傾倒を防止する第1ガイド要素と、前記第2処理位置に保持されている前記基板の傾倒を防止する第2ガイド要素と、を含み、前記第1ガイド要素は前記第2ガイド要素よりも高位置に設けられることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る基板処理装置において、前記第1ガイド要素と前記第2ガイド要素とは一体化されることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記保持部と前記ガイド部とは一体化されることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7の発明は、請求項1から請求項6のいずれかの発明に係る基板処理装置において、前記保持部および前記ガイド部は前記処理槽の内壁面に固設されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項8の発明は、請求項1の発明に係る基板処理装置において、前記処理槽の上部開口を覆う蓋部をさらに備え、前記ガイド部は前記蓋部に固設されることを特徴とする。
【0016】
また、請求項9の発明は、基板を処理液中に浸漬して表面処理を行う基板処理方法において、処理槽内に処理液を供給して前記処理槽に処理液を貯留する貯留工程と、起立姿勢の基板を下方から保持するリフターを、前記処理槽の上方の引き上げ位置、前記基板が処理液中に浸漬する第1処理位置に前記基板を保持する上部浸漬位置、および、前記上部浸漬位置よりも下方の下部浸漬位置の間で昇降させる昇降工程と、を備え、前記リフターが前記下部浸漬位置に下降したときに、前記処理槽に固設された保持部が前記リフターから前記基板を受け取って、前記第1処理位置よりも下方の第2処理位置に前記基板を保持し、前記第1処理位置および前記第2処理位置に保持されている前記基板の傾倒をガイド部が防止し、前記リフターが前記基板を保持する接触箇所と前記保持部が前記基板を保持する接触箇所とは異なることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10の発明は、請求項9の発明に係る基板処理方法において、前記リフターが前記上部浸漬位置と前記下部浸漬位置との間で移動し、前記基板が前記リフターによって前記第1処理位置に保持される第1状態と前記基板が前記保持部によって前記第2処理位置に保持される第2状態とを切り替えることを特徴とする。
【0018】
また、請求項11の発明は、請求項10の発明に係る基板処理方法において、前記第1状態と前記第2状態との切り替えを複数回繰り返すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1から請求項8の発明によれば、第1処理位置および第2処理位置に保持されている基板の傾倒を防止するガイド部を備え、リフターが基板を保持する接触箇所と保持部が基板を保持する接触箇所とが異なるため、接触により処理効率が低下する特異点を無くし、基板の傾倒を防止しつつ、基板の表面処理の均一性を維持することができる。
【0020】
特に、請求項5の発明によれば、第1ガイド要素と第2ガイド要素とは一体化されるため、処理槽内における処理液が滞留しやすくなる箇所を少なくすることができる。
【0021】
特に、請求項6の発明によれば、保持部とガイド部とは一体化されるため、処理槽内における処理液が滞留しやすくなる箇所を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の全体構成を示す図解的な平面図である。
【
図2】
図1の基板処理装置の処理部の要部構成を示す図である。
【
図3】基板が高処理位置に保持された状態を示す図である。
【
図4】基板が低処理位置に保持された状態を示す図である。
【
図5】高処理位置に保持される複数の基板および第1ガイドを上方から見た平面図である。
【
図6】第2実施形態の処理部の要部構成を示す図である。
【
図7】第3実施形態の処理部の要部構成を示す図である。
【
図8】第4実施形態の処理部の要部構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下において、相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば、「一方向に」、「一方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」、「同軸」、など)は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。また、等しい状態であることを示す表現(例えば、「同一」、「等しい」、「均質」、など)は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。また、形状を示す表現(例えば、「円形状」、「四角形状」、「円筒形状」、など)は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲の形状を表すものとし、例えば凹凸または面取りなどを有していてもよい。また、構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、「有する」、といった各表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。また、「A、BおよびCのうちの少なくとも一つ」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「A、BおよびCのうち任意の2つ」、「A、BおよびCの全て」が含まれる。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本発明に係る基板処理装置100の全体構成を示す図解的な平面図である。基板処理装置100は、複数枚の基板Wに対して一括して処理液による表面処理を行うバッチ式の基板処理装置である。処理対象となる基板は、シリコンの円形の半導体基板である。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また、
図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にするためZ軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系を適宜付している。
【0025】
基板処理装置100は、主として、ロードポート110と、搬出入ロボット140と、姿勢変換機構150と、プッシャ160と、主搬送ロボット180と、基板処理部群120と、受け渡しカセット170と、制御部70と、を備える。
【0026】
ロードポート110は、平面視でほぼ長方形に形成された基板処理装置100の端部に設けられている。ロードポート110には、基板処理装置100で処理される複数枚の基板(以下、単に「基板」とも称する)Wを収容するキャリアCが載置される。未処理の基板Wを収容したキャリアCは無人搬送車(AGV、OHT)等によって搬送されてロードポート110に載置される。また、処理済みの基板Wを収容したキャリアCも無人搬送車によってロードポート110から持ち去られる。
【0027】
キャリアCは、典型的には、基板Wを密閉空間に収納するFOUP(front opening unified pod)である。キャリアCは、その内部に形設された複数の保持棚によって複数の基板Wを水平姿勢(法線が鉛直方向に沿う姿勢)で鉛直方向(Z方向)に一定間隔で積層配列した状態で保持する。キャリアCの最大収容枚数は、25枚または50枚である。なお、キャリアCの形態としては、FOUPの他に、SMIF(Standard Mechanical Inter Face)ポッドや収納した基板Wを外気に曝すOC(open cassette)であっても良い。
【0028】
基板処理装置100の本体部とロードポート110との境界部分には、ポッドオープナー(図示省略)等が設けられている。ポッドオープナーは、ロードポート110に載置されたキャリアCの前面の蓋を開閉する。
【0029】
搬出入ロボット140は、ロードポート110に載置されたキャリアCの蓋が開放された状態で、当該キャリアCから基板処理装置100の本体部に未処理の基板Wを搬入するとともに、基板処理装置100の本体部からキャリアCに処理済みの基板Wを搬出する。より具体的には、搬出入ロボット140は、キャリアCと姿勢変換機構150との間で複数枚の基板Wの搬送を行う。搬出入ロボット140は、水平面内で旋回可能に構成されるとともに、それぞれが1枚の基板Wを保持可能なハンド要素を多段に積層してなるバッチハンド(図示省略)を進退移動可能に備える。
【0030】
姿勢変換機構150は、搬出入ロボット140から受け取った複数枚の基板WをX軸周りに90°回動させて、当該基板Wの姿勢を水平姿勢から起立姿勢(法線が水平方向に沿う姿勢)に変換する。また、姿勢変換機構150は、搬出入ロボット140に基板Wを渡す前に、当該基板Wの姿勢を起立姿勢から水平姿勢に変換する。
【0031】
プッシャ160は、姿勢変換機構150と受け渡しカセット170との間に配置される。プッシャ160は、姿勢変換機構150と受け渡しカセット170に設けられた昇降ステージ(図示省略)との間で起立姿勢の基板Wの受け渡しを行う。
【0032】
受け渡しカセット170と基板処理部群120とはX方向に沿って一列に配置されている。基板処理部群120は、5つの処理部121,122,123,124,125を備える。処理部121~125は、基板Wに対して種々の表面処理を行う基板処理装置100の主要部である。
図1に示すように、基板処理装置100内において、処理部121,122,123,124,125の順に(+X)側から配置される。処理部121,122,123,124のそれぞれは処理液を貯留する処理槽10を備える。
【0033】
本明細書において、「処理液」とは各種の薬液、有機溶剤および純水を含む概念の用語である。薬液としては、例えば、エッチング処理を行うための液、または、パーティクルを除去するための液などが含まれ、具体的には、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)、SC-1液(水酸化アンモニウムと過酸化水素水と純水との混合溶液)、SC-2液(塩酸と過酸化水素水と純水との混合溶液)、または、リン酸などが用いられる。薬液は、純水によって希釈されたものも含む。
【0034】
処理部121および処理部123は、それぞれ、同種または異種の薬液を貯留し、その薬液中に複数の基板Wを一括して浸漬させてエッチング処理等の薬液処理を行う。また、処理部122および処理部124は、それぞれ、リンス液(典型的には純水)を貯留し、そのリンス液中に複数の基板Wを一括して浸漬させてリンス処理を行う。
【0035】
基板処理部群120において、処理部121と処理部122とが対になっており、処理部123と処理部124とが対になっている。そして、処理部121と処理部122との対に専用の搬送機構である1つのリフター20が設けられている。リフター20は、処理部121と処理部122との間でX方向に沿って移動可能とされている。また、リフター20は、昇降駆動機構24によって処理部121および処理部122のそれぞれにおいて昇降可能とされている。同様に、処理部123と処理部124との対に専用の搬送機構である1つのリフター20が設けられている。
【0036】
リフター20は、主搬送ロボット180から受け取った複数の基板Wを保持し、その基板Wを処理部121の処理槽10に貯留された薬液中に浸漬させる。薬液処理の終了後、リフター20は、処理部121から基板Wを引き上げて処理部122に移送し、処理部122の処理槽10に貯留されたリンス液中に基板Wを浸漬させる。リンス処理終了後、リフター20は、処理部122から基板Wを引き上げて主搬送ロボット180に渡す。処理部123および処理部124においても、同様のリフター20の動作が行われる。
【0037】
処理部125は、密閉された乾燥チャンバー内を大気圧未満に減圧する機構と、当該乾燥チャンバー内に有機溶剤(例えば、イソプロピルアルコール(IPA))を供給する機構と、リフター20と、を備える。処理部125は、リフター20によって主搬送ロボット180から受け取った基板Wを乾燥チャンバー内に収容し、その乾燥チャンバー内を減圧雰囲気としつつ、基板Wに有機溶剤を供給して基板Wを乾燥させる。乾燥処理後の基板Wはリフター20を介して主搬送ロボット180に受け渡される。
【0038】
受け渡しカセット170は、待機位置(
図1の主搬送ロボット180の位置)にある主搬送ロボット180の下方に配置される。受け渡しカセット170は、図示省略の昇降ステージを備える。当該昇降ステージは、プッシャ160から受け取った基板Wを起立姿勢のまま上昇させて主搬送ロボット180に渡す。また、昇降ステージは、主搬送ロボット180から受け取った基板Wを下降させてプッシャ160に渡す。
【0039】
主搬送ロボット180は、
図1の矢印AR1に示すように、X方向に沿ってスライド移動に構成されている。主搬送ロボット180は、受け渡しカセット170の上方の待機位置と処理部121,122,123,124,125のいずれかの上方の処理位置との間で基板Wを搬送する。
【0040】
主搬送ロボット180は、複数の基板Wを一括して把持する一対の基板チャック181を備えている。主搬送ロボット180は、一対の基板チャック181の間隔を狭めることにより複数の基板Wを一括して把持することができ、基板チャック181の間隔を拡げることにより把持状態を解除することができる。このような構成により、主搬送ロボット180は、受け渡しカセット170の昇降ステージに対して基板Wの受け渡しを行うことができるとともに、基板処理部群120に設けられた各リフター20とも基板Wの受け渡しを行うことができる。
【0041】
次に、基板処理装置100に設けられた処理部122の構成について説明する。ここでは、処理部122について説明するが、処理部124も同様の構成を備える。
図2は、処理部122の要部構成を示す図である。処理部122は、処理部121にて薬液処理が行われた基板Wから薬液を洗い流すリンス処理を行う水洗槽である。
図2に示すように、処理部122は、主として、処理液を貯留する処理槽10と、複数枚の基板Wを保持して上下に昇降するリフター20と、処理槽10内に処理液を供給する処理液供給部30と、を備える。
【0042】
処理槽10は、石英等の耐薬性の材料により構成された貯留容器である。処理槽10は、処理液を貯留してその内部に基板Wを浸漬させる内槽11と、内槽11の上端外周部に形成された外槽12とを含む二重槽構造を有する。内槽11および外槽12はそれぞれ上向きに開いた上部開口を有する。外槽12の上縁の高さは、内槽11の上縁の高さよりも僅かに高い。内槽11の上端まで処理液が貯留されている状態で処理液供給部30から処理液がさらに供給されると、内槽11の上部から処理液が溢れて外槽12へとオーバーフローする。本実施形態の処理部122は、リンス処理を行う水洗槽であるため、処理槽10には処理液として純水が供給されて貯留される。
【0043】
リフター20は、複数の基板Wを一括して保持し、それら複数の基板Wを上下に搬送するための機構である。リフター20は、鉛直方向(Z方向)に延びる背板22と、背板22の下端から水平方向(Y方向)に延びる3本の保持棒21とを有する。背板22の下端はV字型に形成されている。背板22の下端から延びる3本の保持棒21のそれぞれには複数(例えば、50個)の保持溝が所定のピッチで刻設されている。複数の基板Wは、それぞれの周縁部を上記保持溝に嵌合させた状態で3本の保持棒21上に互いに所定間隔を隔てて平行に起立姿勢で保持される。すなわち、リフター20は、起立姿勢の基板Wを下方から保持する。
【0044】
また、リフター20は、
図2において概念的に示した昇降駆動機構24と接続されて昇降移動される。昇降駆動機構24は、
図2の矢印AR2にて示すように、リフター20を鉛直方向(Z方向)に沿って上下に昇降移動させる。昇降駆動機構24は、処理槽10の上方の引き上げ位置と、処理槽10の内部の浸漬位置との間でリフター20を昇降移動させる。なお、浸漬位置には、上部浸漬位置と下部浸漬位置とが含まれるのであるが、これについてはさらに後述する。
【0045】
処理液供給部30は、一対のノズル管31,31およびそれらに処理液を送給する配管系を備える。一対のノズル管31,31(以下、これらを特に区別する必要の無いときは単にノズル管31と総称する)は、処理槽10の内槽11の底部に配置される。ノズル管31は、Y方向に沿って延びる長尺円筒形状の管状部材である。ノズル管31には、長手方向に沿って等間隔で複数の吐出口(図示省略)が形設されている。ノズル管31に供給された処理液は、それら複数の吐出口から内槽11内に吐出されて内槽11の内部に貯留される。ノズル管31は、処理槽10内に保持される基板Wに向けて、つまり斜め上方に向けて処理液を吐出する。内槽11の内部に処理液が貯留されている状態でノズル管31から処理液が吐出されると、内槽11内に上方へと向かう処理液の流れ(アップフロー)が形成される。また、内槽11の上端まで処理液が貯留されている状態でノズル管31から処理液が吐出されると、内槽11の上部から処理液が溢れて外槽12へとオーバーフローする。
【0046】
ノズル管31に処理液を送給する配管系は、配管32に純水供給源33、ポンプ34、流量調整バルブ35および供給バルブ36を備えて構成される。配管32の基端側は純水供給源33に接続されるとともに、配管32の先端側は二叉に分岐されてそれぞれノズル管31に接続される。配管32の経路途中に、ポンプ34、流量調整バルブ35および供給バルブ36が設けられる。ポンプ34、流量調整バルブ35および供給バルブ36は、この順番で配管32の上流から下流に向かって(ノズル管31に向かって)配置される。
【0047】
ポンプ34は、純水供給源33からノズル管31に向けて純水を送り出す。流量調整バルブ35は、配管32を流れる純水の流量を調整する。供給バルブ36は、配管32の流路を開閉する。ポンプ34を作動させつつ供給バルブ36を開放することにより、純水供給源33から送給された純水が配管32を流れてノズル管31に送り出され、その流量は流量調整バルブ35によって規定される。
【0048】
ノズル管31に供給された純水は、ノズル管31から吐出されて処理槽10内に純水のアップフローを形成する。流量調整バルブ35によってノズル管31に供給される純水の流量が増減したときには、ノズル管31から処理槽10内に吐出される純水の流速が加速または減速される。すなわち、処理槽10内における純水の流速は流量調整バルブ35によって調整される。
【0049】
処理槽10の外槽12には排液管43が接続され、その排液管43には排液バルブ44が設けられている。排液バルブ44が開くことにより、内槽11から外槽12へとオーバーフローした純水は排液管43から排出される。
【0050】
また、処理槽10の内槽11の底壁には排液管48が接続され、その排液管48には排液バルブ49が設けられている。排液バルブ49が開くことにより、内槽11に貯留されていた純水が内槽11の底部から急速排出される。
【0051】
制御部70は、基板処理装置100に設けられた種々の動作機構を制御する。制御部70は、処理部122の動作も制御する。制御部70のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部70は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく記憶部(例えば、磁気ディスクまたはSSD)を備えている。制御部70は、処理液供給部30の供給バルブ36や昇降駆動機構24等と電気的に接続されており、これらの動作を制御する。
【0052】
また、制御部70の記憶部には、基板Wを処理する手順および条件を定めたレシピ(以下「処理レシピ」という)が記憶されている。処理レシピは、例えば、装置のオペレータが、GUIを介して入力して記憶部に記憶させることによって、基板処理装置100に取得される。或いは、複数の基板処理装置100を管理するホストコンピュータから基板処理装置100に処理レシピが通信により引き渡されて記憶部に記憶されても良い。制御部70は、記憶部に格納されている処理レシピの記述に基づいて、昇降駆動機構24等の動作を制御することにより、処理レシピに記述された通りに基板Wの表面処理を進行させる。
【0053】
第1実施形態においては、処理槽10に基板保持部50、第1ガイド61および第2ガイド62を設けている。第1実施形態では、基板保持部50、第1ガイド61および第2ガイド62がそれぞれ独立した個別の要素として設けられる。基板保持部50、第1ガイド61および第2ガイド62は、処理槽10の内槽11の側壁内側面にボルトによって固設されている。ボルトによって締結された箇所はシール部材によってシールされる。第1ガイド61は第2ガイド62よりも高位置に取り付けられる。基板保持部50は、第1ガイド61および第2ガイド62よりも低位置に取り付けられる。
【0054】
基板保持部50は、Y方向に沿って延びる棒状部材である。リフター20によって処理槽10内を昇降される基板Wの両側を挟み込むように2本の基板保持部50が内槽11の内壁面に固設される。リフター20の3本の保持棒21は2本の基板保持部50の間を通過可能である。それぞれの基板保持部50には、複数(例えば、50個)の保持溝が所定のピッチでY方向に沿って刻設されている。基板保持部50に刻設される保持溝のピッチはリフター20の保持棒21に刻まれる保持溝のピッチと同じである。従って、リフター20に保持された複数の基板Wのそれぞれの周縁部を基板保持部50の保持溝に嵌合させることにより、2本の基板保持部50はリフター20に保持された複数の基板Wをそのまま受け取って保持することが可能である。
【0055】
第1ガイド61および第2ガイド62もY方向に沿って延びる棒状部材である。リフター20によって処理槽10内を昇降される基板Wの両側を挟み込むように2本の第1ガイド61が内槽11の内壁面に固設される。同様に、リフター20によって処理槽10内を昇降される基板Wの両側を挟み込むように2本の第2ガイド62が内槽11の内壁面に固設される。第1ガイド61は第2ガイド62よりも上方に設けられる。リフター20の3本の保持棒21は2本の第1ガイド61および2本の第2ガイド62の間を通過可能である。
【0056】
第1ガイド61および第2ガイド62のそれぞれには、Y方向に沿って凹凸が繰り返し形設されている。リフター20によって保持される複数の基板Wが処理槽10内を昇降するときには、それら複数の基板Wのそれぞれの周縁部が第1ガイド61および第2ガイド62に形設された凹部の内側を通過する。換言すれば、複数の基板Wのそれぞれの周縁部は第1ガイド61および第2ガイド62に形設された凸部によって表裏から挟み込まれる。
【0057】
第1実施形態においては、リフター20と基板保持部50とによって基板Wが異なる高さ位置で持ち替えられる。
図3は、基板Wが高処理位置(第1処理位置)に保持された状態を示す図である。基板Wを保持するリフター20が処理槽10内の上部浸漬位置(
図3のリフター20の位置)に停止しているときには、その基板Wはリフター20によって高処理位置に保持されることとなる。基板Wが高処理位置に保持されている状態においても、基板Wの全体が処理槽10に貯留された処理液中に浸漬する。逆に言えば、基板Wが処理槽10に貯留された処理液中に浸漬する高処理位置に基板Wを保持するリフター20の高さ位置が上部浸漬位置である。なお、基板Wが高処理位置に保持されているときには、基板保持部50と基板Wとは離間している。
【0058】
リフター20によって高処理位置に保持される基板WのX方向に沿った径(以下、基板WのX方向に沿った径を「赤道」とも称する)と同じ高さ位置に第1ガイド61が設けられる。よって、リフター20によって高処理位置に保持される基板Wの赤道両端が第1ガイド61に形設された凹部の内側に入り込む。
【0059】
図5は、高処理位置に保持される複数の基板Wおよび第1ガイド61を上方から見た平面図である。同図に示すように、高処理位置に保持される基板Wの赤道両端は、第1ガイド61に形設された凹部の内側に入り込んでいる。但し、リフター20の3本の保持棒21によって複数の基板Wが正確に起立姿勢で保持されているときには、それぞれの基板Wの周縁部は第1ガイド61の凹部に非接触である。すなわち、基板Wは第1ガイド61によって拘束されておらず、基板Wと第1ガイド61との接触箇所も存在しない。
【0060】
高処理位置に保持されている基板Wが処理槽10内に形成されている処理液の液流等の影響によって起立姿勢から少し傾いたときには、基板Wの赤道両端が第1ガイド61に形設された凹部に接触し、基板Wの傾倒が第1ガイド61によって防がれる。第1ガイド61は高処理位置に保持される基板Wの赤道と同じ高さ位置に設けられているため、基板Wが傾いたときには第1ガイド61が基板Wの赤道近傍に当接することとなり、基板Wの傾倒を効果的に防止することができる。
【0061】
一方、
図4は、基板Wが低処理位置(第2処理位置)に保持された状態を示す図である。基板Wを保持するリフター20が処理槽10内の上部浸漬位置から下部浸漬位置(
図4のリフター20の位置)にまで下降すると、基板Wはリフター20から基板保持部50に渡され、基板Wは基板保持部50によって低処理位置に保持されることとなる。すなわち、基板保持部50は、リフター20が下部浸漬位置に下降したときにリフター20から基板Wを受け取って低処理位置に基板Wを保持する。基板Wが低処理位置に保持されているときには、リフター20の3本の保持棒21と基板Wとは離間している。リフター20の下部浸漬位置は上部浸漬位置よりも下方である。また、基板Wの低処理位置も高処理位置より下方である。なお、
図2の実線で示す基板Wの高さ位置が高処理位置であり、二点鎖線で示す基板Wの高さ位置が低処理位置である。
【0062】
図4に示すように、基板保持部50によって低処理位置に保持される基板Wの赤道と同じ高さ位置に第2ガイド62が設けられる。よって、基板保持部50によって低処理位置に保持される基板Wの赤道両端が第2ガイド62に形設された凹部の内側に入り込む。上述と同じく、基板保持部50によって複数の基板Wが正確に起立姿勢で保持されているときには、それぞれの基板Wの周縁部は第2ガイド62の凹部に非接触である。しかし、低処理位置に保持されている基板Wが処理槽10内に形成されている処理液の液流等の影響によって起立姿勢から少し傾いたときには、基板Wの赤道両端が第2ガイド62に形設された凹部に接触し、基板Wの傾倒が第2ガイド62によって防がれる。第2ガイド62も低処理位置に保持される基板Wの赤道と同じ高さ位置に設けられているため、基板Wが傾いたときには第2ガイド62が基板Wの赤道近傍に当接することとなり、基板Wの傾倒を効果的に防止することができる。
【0063】
リフター20が上部浸漬位置と下部浸漬位置との間で昇降移動することにより、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持される第1状態と、基板Wが基板保持部50によって低処理位置に保持される第2状態とが切り替えられることとなる。
図3および
図4に示すように、リフター20が高処理位置で基板Wを保持しているときに3本の保持棒21が基板Wに接触する接触箇所と、基板保持部50が低処理位置で基板Wを保持しているときに基板Wに接触する接触箇所とは異なる。
【0064】
次に、上記の構成を有する処理部122における処理動作について説明する。処理部122では、処理部121にて薬液処理が行われた基板Wから薬液を洗い流すリンス処理を行う。ノズル管31から処理槽10内に処理液としての純水が供給され、内槽11には純水が貯留されている。内槽11に純水が貯留されている状態でノズル管31から純水をさらに供給し続けると、内槽11の上端から外槽12へと純水がオーバーフローする。また、ノズル管31から純水を吐出することによって、処理部10内には純水のアップフローが形成されている。
【0065】
処理槽10内に純水のアップフローが形成されている状態で薬液処理後の基板Wが純水中に浸漬される。具体的には、薬液処理後の基板Wを保持するリフター20が処理槽10の上方の引き上げ位置にまで移動し、そのリフター20が昇降駆動機構24によって引き上げ位置から浸漬位置にまで下降する。第1実施形態では、リフター20はまず上部浸漬位置にまで下降する。
【0066】
基板Wを保持するリフター20が処理槽10内の上部浸漬位置にまで下降すると、
図3に示すように、基板Wは高処理位置に到達し、基板Wの全体が処理槽10に貯留された純水中に浸漬する。処理槽10内に純水のアップフローが形成されている状態で基板Wが高処理位置に保持されると、基板Wの表面に沿って純水の水流が流れ、基板Wの表面に付着していた薬液が洗い流される。
【0067】
また、基板Wを迅速に洗浄してリンス処理時間を短くするため、処理槽10内における純水の流速を速くしている。具体的には、流量調整バルブ35が比較的大きな流量(例えば、30リットル/分)にてノズル管31に純水を供給することにより、ノズル管31から処理槽10内に吐出される純水の流速を速くしている。処理槽10内における純水の流速が速くなると、基板Wの洗浄効率が高まる一方でリフター20の3本の保持棒21上で基板Wが水流の影響によって大きく揺れ動くおそれも高まる。
【0068】
基板Wの揺動を抑制するために、高処理位置に保持される基板Wの赤道と同じ高さ位置に第1ガイド61が設けられている。高処理位置に保持される基板Wの赤道両端は、第1ガイド61に形設された凹部の内側に入り込む(
図5)。高処理位置に保持されている基板Wが水流の影響によって揺れ動いたとしても、基板Wの赤道両端が第1ガイド61によって位置規制されているため、基板Wが大きく傾いて傾倒することは防止される。すなわち、リフター20によって高処理位置に基板Wを保持しているときは、第1ガイド61によって基板Wの傾倒を防止しつつ、比較的速い流速の純水の水流によって基板Wを効率良く洗浄している。但し、基板Wの周縁部のうちリフター20の3本の保持棒21が接触する接触箇所の近傍では処理液の滞留が生じるため、その接触箇所の洗浄効率は顕著に低い。
【0069】
高処理位置に基板Wを保持してのリンス処理を開始してから所定時間が経過した時点にて、制御部70の制御により昇降駆動機構24がリフター20を上部浸漬位置から下部浸漬位置に下降させる。リフター20が上部浸漬位置から下部浸漬位置に下降する過程で基板Wはリフター20から基板保持部50に渡され、
図4に示すように、基板Wは基板保持部50によって低処理位置に保持される。低処理位置は高処理位置よりも低位置であるため、低処理位置に保持される基板Wの全体も処理槽10に貯留された純水中に浸漬する。処理槽10内に純水のアップフローが形成されている状態で基板Wが低処理位置に保持されると、基板Wの表面に沿って純水の水流が流れ、基板Wの表面が洗浄される。
【0070】
また、比較的速い水流の影響による基板Wの揺動を抑制するために、低処理位置に保持される基板Wの赤道と同じ高さ位置に第2ガイド62が設けられている。低処理位置に保持される基板Wの赤道両端は、第2ガイド62に形設された凹部の内側に入り込む。低処理位置に保持されている基板Wが水流の影響によって揺れ動いたとしても、基板Wの赤道両端が第2ガイド62によって位置規制されているため、基板Wが大きく傾いて傾倒することは防止される。すなわち、基板保持部50によって低処理位置に基板Wを保持しているときは、第2ガイド62によって基板Wの傾倒を防止しつつ、比較的速い流速の純水の水流によって基板Wを効率良く洗浄しているのである。但し、基板Wの周縁部のうち基板保持部50が接触する接触箇所の近傍では処理液の滞留が生じるため、その接触箇所の洗浄効率は低くなる。
【0071】
リフター20が高処理位置で基板Wを保持しているときに3本の保持棒21が基板Wに接触する接触箇所と、基板保持部50が低処理位置で基板Wを保持しているときに基板Wに接触する接触箇所とは異なる。従って、高処理位置に保持される基板Wの周縁部のうち3本の保持棒21が接触する接触箇所は、基板Wが低処理位置に保持されるときには開放されている。このため、基板Wが高処理位置に保持されている間は洗浄効率が低かった3本の保持棒21による基板Wへの接触箇所は、基板Wが低処理位置に保持されているときには効率良く洗浄される。その一方、基板Wが低処理位置に保持されているときは、基板Wの周縁部のうち基板保持部50が接触する接触箇所の近傍で処理液の滞留が生じるため、その基板保持部50による接触箇所の洗浄効率が低下する。もっとも、基板保持部50による基板Wへの接触箇所は、基板Wが高処理位置に保持されているときに既に洗浄されている。
【0072】
低処理位置に基板Wを保持してのリンス処理を開始してから所定時間が経過した時点にて、制御部70の制御により昇降駆動機構24がリフター20を下部浸漬位置から処理槽10の上方の引き上げ位置に上昇させ、処理槽10の処理液から基板Wを引き上げる。続いて、主搬送ロボット180がリフター20から処理後の基板Wを受け取る。以上のようにして処理部122における一連の処理が完了する。
【0073】
第1実施形態においては、処理部122にて基板Wのリンス処理を行う際に、リフター20によって基板Wを高処理位置に保持した後に、基板保持部50によって基板Wを低処理位置に保持している。すなわち、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持される第1状態から、基板Wが基板保持部50によって低処理位置に保持される第2状態に切り替えられる。基板Wが高処理位置および低処理位置のいずれに保持されているときにも、基板Wの全体が処理槽10に貯留された純水中に浸漬するため、比較的速い純水の水流によって基板Wが効率良く洗浄される。
【0074】
また、基板Wが高処理位置に保持されているときには、第1ガイド61によって基板Wの傾倒が防止される。基板Wが低処理位置に保持されているときには、第2ガイド62によって基板Wの傾倒が防止される。すなわち、基板Wが高処理位置および低処理位置のいずれに保持されているときにも、基板Wの傾倒を防止することができる。
【0075】
さらに、基板Wが高処理位置に保持されているときに洗浄効率が低下する3本の保持棒21による基板Wへの接触箇所は、基板Wが低処理位置に保持されているときには開放されて効率良く洗浄される。逆に、基板Wが低処理位置に保持されているときに洗浄効率が低下する基板保持部50による基板Wへの接触箇所は、基板Wが高処理位置に保持されているときには開放されて効率良く洗浄される。すなわち、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持される第1状態と、基板Wが基板保持部50によって低処理位置に保持される第2状態とを切り替えることにより、洗浄効率が低下する特異点を無くして基板Wの全面を均一に洗浄することができるのである。よって、第1実施形態のようにすれば、基板Wの洗浄処理を行うときに、基板Wの傾倒を防止しつつ、基板Wの表面処理の均一性を維持することができる。
【0076】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
図6は、第2実施形態の処理部の要部構成を示す図である。同図において、第1実施形態(
図2等)と同一の要素については同一の符号を付している。第2実施形態が第1実施形態と相違するのは、第1ガイド61と第2ガイド62とを一体化した統合ガイド81を設けている点である。
【0077】
統合ガイド81は、第1実施形態の第1ガイド61および第2ガイド62に比較して縦方向(Z方向)の長さが長い。統合ガイド81にも、第1ガイド61および第2ガイド62と同様に、Y方向に沿って凹凸が繰り返し形設されている。統合ガイド81は、処理槽10の内槽11の側壁内側面にボルトによって固設される。
【0078】
統合ガイド81は、第1実施形態にて高処理位置に保持される基板Wの赤道と同じ高さ位置に設けられた第1ガイド61および低処理位置に保持される基板Wの赤道と同じ高さ位置に設けられた第2ガイド62を一体化したものである。このため、高処理位置および低処理位置のいずれに保持される基板Wの赤道両端も統合ガイド81に形設された凹部の内側に入り込む。従って、リフター20によって基板Wが高処理位置に保持されているとき、および、基板保持部50によって基板Wが低処理位置に保持されているときの双方において、統合ガイド81によって基板Wの傾倒が防止される。
【0079】
また、第1実施形態と同様に、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持される第1状態と、基板Wが基板保持部50によって低処理位置に保持される第2状態とを切り替えることにより、洗浄効率が低下する特異点を無くして基板Wの全面を均一に洗浄することができる。よって、第2実施形態のようにしても、基板Wの傾倒を防止しつつ、基板Wの表面処理の均一性を維持することができる。
【0080】
さらに、第2実施形態においては、第1ガイド61と第2ガイド62とを一体化した統合ガイド81を設けているため、第1ガイド61および第2ガイド62を個別に製作するのに比較して製作コストを低くすることができる。第1ガイド61および第2ガイド62を個別に処理槽10に取り付ける場合にはそれぞれの位置合わせが必要であるのに対して、一体化した統合ガイド81を処理槽10に取り付けるのであれば位置合わせも一回で足り、取り付けに要する工数も削減することができる。それに加えて、第1ガイド61および第2ガイド62のそれぞれを個別にボルトで処理槽10に取り付けた場合には、処理槽10内に処理液が滞留しやすくなる箇所が増えるのに比べて、一体化した統合ガイド81を処理槽10に取り付けるのであれば必要なボルト数も最小限とすることができ、処理槽10内における処理液が滞留しやすくなる箇所を少なくすることができる。その結果、処理槽10内にて処理液の滞留を生じにくくすることができる。なお、2つのガイドを一体化した統合ガイド81を設ける点以外の第2実施形態の残余の構成については第1実施形態と同じである。
【0081】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
図7は、第3実施形態の処理部の要部構成を示す図である。同図において、第1実施形態(
図2等)と同一の要素については同一の符号を付している。第3実施形態が第1実施形態と相違するのは、第2ガイド62と基板保持部50とを一体化した拡張保持部91を設けている点である。
【0082】
拡張保持部91は、第1実施形態の基板保持部50と同等の機能を有する保持要素91aおよび第2ガイド62と同様の機能を有するガイド要素91bを一体化して構成されている。換言すれば、拡張保持部91は、第1実施形態の基板保持部50と第2ガイド62とを一体化したものであると言える。拡張保持部91は、処理槽10の内槽11の側壁内側面にボルトによって固設される。拡張保持部91の保持要素91aは、リフター20が下部浸漬位置に下降したときにリフター20から基板Wを受け取って低処理位置に基板Wを保持する。拡張保持部91のガイド要素91bは、保持要素91aによって低処理位置に保持される基板Wの赤道と同じ高さ位置に設けられる。なお、第1ガイド61は、第1実施形態と同一の要素である。
【0083】
このように、第3実施形態では第1実施形態の第1ガイド61、第2ガイド62および基板保持部50と同等の要素が設けられていることとなる。そして、第3実施形態においても、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持される第1状態から、基板Wが拡張保持部91によって低処理位置に保持される第2状態に切り替えられる。これにより、洗浄効率が低下する特異点を無くして基板Wの全面を均一に洗浄することができる。
【0084】
また、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持されているときには、第1ガイド61によって基板Wの傾倒が防止される。基板Wが拡張保持部91によって低処理位置に保持されているときには、拡張保持部91によって基板Wの傾倒が防止される。すなわち、基板Wが高処理位置および低処理位置のいずれに保持されているときにも、基板Wの傾倒を防止することができる。従って、第3実施形態のようにしても、基板Wの傾倒を防止しつつ、基板Wの表面処理の均一性を維持することができるのである。
【0085】
さらに、第3実施形態においては、第2ガイド62と基板保持部50とを一体化した拡張保持部91を設けているため、第2ガイド62および基板保持部50を個別に製作するのに比較して製作コストを低くすることができる。一体化した拡張保持部91を処理槽10に取り付けるのであれば位置合わせも一回で足り、取り付けに要する工数も削減することができる。加えて、一体化した拡張保持部91を処理槽10に取り付けるのであれば必要なボルト数も最小限とすることができ、処理槽10内における処理液が滞留しやすくなる箇所を少なくして処理液の滞留を生じにくくすることができる。なお、一体化した拡張保持部91を設ける点以外の第3実施形態の残余の構成については第1実施形態と同じである。
【0086】
<第4実施形態>
次に、本発明の第4実施形態について説明する。
図8は、第4実施形態の処理部の要部構成を示す図である。同図において、第1実施形態(
図2等)と同一の要素については同一の符号を付している。
【0087】
第4実施形態では、第2ガイド62および基板保持部50を処理槽10に設けているものの、第1ガイド61を内槽11に取り付けていない。処理槽10の上部開口を覆うように蓋部(オートカバー)95が設けられている。蓋部95は、図示省略の駆動機構によって矢印AR8に示すような開閉動作を行い、処理槽10の上部開口を開閉する。蓋部95が閉じた状態では蓋部95は処理槽10の上部開口を覆う。蓋部95が開いた状態では処理槽10の上部開口が開放され、リフター20によって基板Wを浸漬位置と引き上げ位置との間で昇降させることができる。
【0088】
蓋部95の下面には上部ガイド96が設けられている。上部ガイド96には、第1ガイド61および第2ガイド62と同様に、Y方向に沿って凹凸が繰り返し形設されている。リフター20によって基板Wが高処理位置に保持されている状態で蓋部95が閉じると、基板Wの周縁部上部が上部ガイド96に形設された凹部の内側に入り込む。すなわち、第4実施形態においては、第1実施形態の第1ガイド61に代えて蓋部95に上部ガイド96を設けているのである。
【0089】
第4実施形態においても、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持される第1状態から、基板Wが基板保持部50によって低処理位置に保持される第2状態に切り替えられる。これにより、洗浄効率が低下する特異点を無くして基板Wの全面を均一に洗浄することができる。
【0090】
また、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持されているときには、上部ガイド96によって基板Wの傾倒が防止される。基板Wが基板保持部50によって低処理位置に保持されているときには、第2ガイド62によって基板Wの傾倒が防止される。すなわち、基板Wが高処理位置および低処理位置のいずれに保持されているときにも、基板Wの傾倒を防止することができる。従って、第4実施形態のようにしても、基板Wの傾倒を防止しつつ、基板Wの表面処理の均一性を維持することができる。
【0091】
さらに、第4実施形態においては、高処理位置に保持されている基板Wは、リフター20の保持棒21によって下方から保持されるとともに、上部ガイド96によって上方から位置規制される。このため、処理槽10内の水流の影響によって基板Wが揺れ動いたとしても、基板Wが傾倒するのをより確実に防ぐことができる。
【0092】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、第1実施形態では、リフター20によって基板Wを高処理位置に保持した後に、基板保持部50によって基板Wを低処理位置に保持していたが、この順番は逆であっても良い。すなわち、先にリフター20が下部浸漬位置にまで下降して基板保持部50によって基板Wを低処理位置に保持した後に、リフター20が上部浸漬位置に上昇してリフター20によって基板Wを高処理位置に保持するようにしても良い。
【0093】
また、基板Wがリフター20によって高処理位置に保持される第1状態と、基板Wが基板保持部50によって低処理位置に保持される第2状態との切り替えを複数回繰り返すように制御部70が昇降駆動機構24を制御するようにしても良い。すなわち、リフター20が上部浸漬位置と下部浸漬位置とに繰り返し往復昇降移動することによって、基板Wが高処理位置に保持される第1状態と基板Wが低処理位置に保持される第2状態とを複数回繰り返すようにしても良い。このようにすれば、基板Wの全面をより均一に洗浄することができる。
【0094】
また、第2実施形態では第1ガイド61と第2ガイド62とを一体化し、第3実施形態では第2ガイド62と基板保持部50とを一体化していたが、第1ガイド61、第2ガイド62および基板保持部50の全てを一体化するようにしても良い。このようにすれば、処理槽10内にて処理液の滞留が生じやすくなる箇所をさらに低減することが可能となる。
【0095】
また、上記各実施形態においては、薬液処理が行われた基板Wにリンス処理を行う水洗槽である処理部122に基板保持部およびガイド部を設けていたが、これに限定されるものではない。基板Wに薬液処理を行う薬液槽である処理部121に上記各実施形態と同様の基板保持部およびガイド部を設けるようにしても良い。或いは、1つの処理槽内にて薬液と純水とを順次に入れ替え、その処理槽にて薬液処理とリンス処理との双方を行う処理部に上記各実施形態と同様の基板保持部およびガイド部を設けるようにしても良い。このようにしても、基板Wの傾倒を防止しつつ、基板Wの表面処理の均一性を維持することができる。
【符号の説明】
【0096】
10 処理槽
11 内槽
12 外槽
20 リフター
21 保持棒
24 昇降駆動機構
30 処理液供給部
31 ノズル管
50 基板保持部
61 第1ガイド
62 第2ガイド
70 制御部
81 統合ガイド
91 拡張保持部
95 蓋部
96 上部ガイド
100 基板処理装置
121,122,123,124,125 処理部
180 主搬送ロボット
W 基板