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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053268
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ボックスカルバートの構築方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20240408BHJP
   E02D 29/05 20060101ALI20240408BHJP
   E04B 1/21 20060101ALI20240408BHJP
   E04B 1/61 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
E21D11/08
E02D29/05 F
E04B1/21 A
E04B1/61 502H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159402
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】藤原 慎八
(72)【発明者】
【氏名】多賀 達央
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
【テーマコード(参考)】
2D147
2D155
2E125
【Fターム(参考)】
2D147CA02
2D147DB03
2D147JC02
2D155AA02
2D155BB03
2D155GC02
2E125AA53
2E125AA68
2E125AE02
2E125BA44
2E125CA82
(57)【要約】
【課題】ボックスカルバートの構築において、プレキャスト部材を用いた際の施工性の向上を実現させる。
【解決手段】ボックスカルバートの構築方法であって、第1の側壁部材に頂版部材及び底版部材を連結させる第1側壁連結工程と、前記第1側壁連結工程の後、第2の側壁部材を前記頂版部材及び前記底版部材に連結させる第2側壁連結工程と、を含み、前記第2側壁連結工程においては、前記第2の側壁部材を水平方向にスライドさせると共に、向かい合う連結面同士のうち一方の連結面に埋設したスリーブに他方の部材の連結面から突出した鉄筋を挿入した後、前記スリーブの間隙部を経時性硬化材で充填する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボックスカルバートの構築方法であって、
第1の側壁部材に頂版部材及び底版部材を連結させる第1側壁連結工程と、
前記第1側壁連結工程の後、第2の側壁部材を前記頂版部材及び前記底版部材に連結させる第2側壁連結工程と、を含み、
前記第2側壁連結工程においては、前記第2の側壁部材を水平方向にスライドさせると共に、向かい合う連結面同士のうち一方の連結面に埋設したスリーブに他方の部材の連結面から突出した鉄筋を挿入した後、前記スリーブの間隙部を経時性硬化材で充填することを特徴とする、ボックスカルバートの構築方法。
【請求項2】
前記第1の側壁部材及び前記第2の側壁部材は、それぞれ隅角部を介して水平方向に延びる張出部を上部及び下部に備え、
前記第1側壁連結工程においては、前記第1の側壁部材の下部に設けられた張出部を延長するようにスラブ状の第1底版部材を連結させ、且つ、前記第1の側壁部材の上部に設けられた張出部を延長するようにスラブ状の第1頂版部材を連結させ、
前記第2側壁連結工程においては、前記第2の側壁部材の上部に設けられた張出部を前記第1頂版部材に連結させ、同時に、前記第2の側壁部材の下部に設けられた張出部を前記第1底版部材に連結させることを特徴とする、請求項1に記載のボックスカルバートの構築方法。
【請求項3】
第3の側壁部材を前記頂版部材及び前記底版部材に連結させる第3側壁連結工程を更に含み、
前記第1の側壁部材はボックスカルバートの中間壁であり、前記張出部は前記第1の側壁部材から左右両方向に張出しており、
前記第1側壁連結工程においては、前記第1の側壁部材の下部に設けられた張出部を延長するように、スラブ状の第1底版部材と第2底版部材を、当該張出部を挟んで両側に連結させ、且つ、前記第1の側壁部材の上部に設けられた張出部を延長するように、スラブ状の第1頂版部材と第2頂版部材を、当該張出部を挟んで両側に連結させ、
前記第3側壁連結工程においては、前記第3の側壁部材の上部に設けられた張出部を前記第2頂版部材に連結させ、同時に、前記第3の側壁部材の下部に設けられた張出部を前記第2底版部材に連結させ、
前記第3側壁連結工程における部材同士の連結は、前記第3の側壁部材を水平方向にスライドさせると共に、向かい合う連結面同士のうち一方の連結面に埋設したスリーブに他方の部材の連結面から突出した鉄筋を挿入した後、前記スリーブの間隙部を経時性硬化材で充填することにより行われることを特徴とする、請求項2に記載のボックスカルバートの構築方法。
【請求項4】
前記各側壁部材は、前記ボックスカルバートの上下方向において2以上の側壁分割部材に分割され、
前記各側壁部材と前記各頂版部材及び前記各底版部材との連結の前段階において、一方の前記側壁分割部材の端部に埋設したスリーブに他方の前記側壁分割部材から突出した鉄筋を挿入した後、前記スリーブの間隙部を経時性硬化材で充填することにより前記各側壁部材を構築する工程を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のボックスカルバートの構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスカルバートの構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、幹線道路の新設は平野部から山岳部に移行してきており、急峻な山岳部を通過する道路の新設が増加している。山岳部での道路建設では、トンネルや橋梁の比率増加に伴い、高盛土が多くなり、これを横断するカルバート構造物(単にカルバートとも呼称される)の施工が増加する。カルバート構造物の一例として、断面がほぼ長方形枠型のボックスカルバートが知られている。カルバート構造物は、種々の構築方法によって構築され、例えば、プレキャストコンクリート部材と現場打ちコンクリートを組み合わせて構築される。
【0003】
例えば、特許文献1には、プレキャスト部材の接合方法が開示されている。特許文献1に記載の技術では、ボックスカルバートの大型化とプレキャスト化を進めるに際し、複数のプレキャスト部材に分割して製造を行い、それらを接合して組み立てている。これにより、施工性の向上や、地震時に接合部の目開きの回避などを図っている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、プレキャスト箱形品を分割構成とし、プレキャストコンクリートからなる複数のブロックを組み合わせて構築する技術が開示されている。これにより、各ブロックを容易に運搬することで、例えば大型のプレキャスト箱形品の製形が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-94391号公報
【特許文献2】特開平8-151626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、カルバート構造物の大型化が進み、例えば外幅が12mを超えるボックスカルバートの製造が望まれている。大型のボックスカルバートを構築する際には、運搬や施工の制約により、ボックスカルバートを構成する部材を分割する必要がある。上記特許文献1、2に代表されるように、部材を分割し、それらを組み合わせてボックスカルバートを構築する場合には、組み立て架台上で繋ぎ合わせて一体化させた頂版部材を吊り下げて設置するといったように、事前に複数の部材を架台上で組み立て、一体化させたものを設置するといった方法が一般的であった。
【0007】
しかしながら、事前に複数の部材を架台上で組み立て、一体化させたものを設置するといった方法では、組立架台構築に伴うヤード確保や、コスト増、吊り上げのためのクレーンの大型化などが課題となる。即ち、プレキャスト部材を用いて分割された部材を組み合わせてボックスカルバートを構築する場合の更なる施工性の向上が求められている。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、ボックスカルバートの構築において、プレキャスト部材を用いた際の施工性の向上を実現させるようなボックスカルバートの構築方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、ボックスカルバートの構築方法であって、第1の側壁部材に頂版部材及び底版部材を連結させる第1側壁連結工程と、前記第1側壁連結工程の後、第2の側壁部材を前記頂版部材及び前記底版部材に連結させる第2側壁連結工程と、を含み、前記第2側壁連結工程においては、前記第2の側壁部材を水平方向にスライドさせると共に、向かい合う連結面同士のうち一方の連結面に埋設したスリーブに他方の部材の連結面から突出した鉄筋を挿入した後、前記スリーブの間隙部を経時性硬化材で充填することを特徴とする、ボックスカルバートの構築方法が提供される。
【0010】
前記第1の側壁部材及び前記第2の側壁部材は、それぞれ隅角部を介して水平方向に延びる張出部を上部及び下部に備え、前記第1側壁連結工程においては、前記第1の側壁部材の下部に設けられた張出部を延長するようにスラブ状の第1底版部材を連結させ、且つ、前記第1の側壁部材の上部に設けられた張出部を延長するようにスラブ状の第1頂版部材を連結させ、前記第2側壁連結工程においては、前記第2の側壁部材の上部に設けられた張出部を前記第1頂版部材に連結させ、同時に、前記第2の側壁部材の下部に設けられた張出部を前記第1底版部材に連結させても良い。
【0011】
第3の側壁部材を前記頂版部材及び前記底版部材に連結させる第3側壁連結工程を更に含み、前記第1の側壁部材はボックスカルバートの中間壁であり、前記張出部は前記第1の側壁部材から左右両方向に張出しており、前記第1側壁連結工程においては、前記第1の側壁部材の下部に設けられた張出部を延長するように、スラブ状の第1底版部材と第2底版部材を、当該張出部を挟んで両側に連結させ、且つ、前記第1の側壁部材の上部に設けられた張出部を延長するように、スラブ状の第1頂版部材と第2頂版部材を、当該張出部を挟んで両側に連結させ、前記第3側壁連結工程においては、前記第3の側壁部材の上部に設けられた張出部を前記第2頂版部材に連結させ、同時に、前記第3の側壁部材の下部に設けられた張出部を前記第2底版部材に連結させ、前記第3側壁連結工程における部材同士の連結は、前記第3の側壁部材を水平方向にスライドさせると共に、向かい合う連結面同士のうち一方の連結面に埋設したスリーブに他方の部材の連結面から突出した鉄筋を挿入した後、前記スリーブの間隙部を経時性硬化材で充填することにより行われても良い。
【0012】
前記各側壁部材は、前記ボックスカルバートの上下方向において2以上の側壁分割部材に分割され、前記各側壁部材と前記各頂版部材及び前記各底版部材との連結の前段階において、一方の前記側壁分割部材の端部に埋設したスリーブに他方の前記側壁分割部材から突出した鉄筋を挿入した後、前記スリーブの間隙部を経時性硬化材で充填することにより前記各側壁部材を構築する工程を含んでも良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボックスカルバートの構築において、プレキャスト部材を用いた際の施工性の向上を実現させることができる。
【0014】
なお、上記の効果は必ずしも限定的なものではなく、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書に示されたいずれかの効果、又は、本明細書から把握され得る他の効果が奏されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るボックスカルバートの概略説明図である。
図2】ボックスカルバートの構築方法に関する概略説明図である。
図3】ボックスカルバートの構築方法に関する概略説明図である。
図4】ボックスカルバートの構築方法に関する概略説明図である。
図5】ボックスカルバートの構築方法に関する概略説明図である。
図6】ボックスカルバートの構築方法に関する概略説明図である。
図7】ボックスカルバートの構築方法に関する概略説明図である。
図8】引寄せ治具の概略拡大図である。
図9】ボックスカルバートの従来工法の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。なお、本実施形態では、説明のために鉄筋構造や配筋構成について、一部図示を省略する場合や、あるいは、部材内部の鉄筋等を図示する場合がある。
【0017】
<ボックスカルバートの構成>
図1は本発明の実施の形態に係るボックスカルバート1の概略説明図である。図1に示したボックスカルバート1は、例えば幹線道路や鉄道(図示せず)用に設けられるトンネル等の坑口に設置される矩形カルバート状の中空構造物であり、その内部には、例えば自動車や鉄道車両等が通過するための経路が敷設される。本発明が適用されるボックスカルバートの構成は任意であるが、本実施形態では、一例としてボックスカルバート1の内部空間が中間壁によって2分割され、2つの経路が敷設されるような構成について図示し説明する。
【0018】
なお、以下の説明では、ボックスカルバート1の内部空間が延伸する方向を長さ方向とし、ボックスカルバート1の敷設面に平行且つ上記長さ方向に直交する方向を幅方向とし、ボックスカルバート1が敷設された状態の鉛直方向を高さ方向(上下方向)として説明する。
【0019】
図1に示すように、ボックスカルバート1は、地盤に敷設される底版部3と、地盤に対し鉛直方向に構築される側壁部5と、側壁部5の上部において地盤に略平行に構築される頂版部10と、を含む。頂版部10は、側壁部5の上部に載置され、ボックスカルバート1の天井面を構成するように設けられる。また、頂版部10と平行であり、ボックスカルバート1の下部に位置する底面の少なくとも一部をなす底版部3が設けられる。
【0020】
本実施形態に係る構成において、側壁部5にはプレキャスト製の第1の側壁部材20、第2の側壁部材30、第3の側壁部材40が含まれる。各側壁部材20、30、40はそれぞれボックスカルバート1の幅方向において所定の間隔で平行に配置される。第1の側壁部材20がボックスカルバート1の幅方向略中央に位置するいわゆる中間壁として構成され、第2の側壁部材30と第3の側壁部材40がボックスカルバート1の幅方向両側に左右一対の壁体として位置するいわゆる外側壁として構成される。
【0021】
第1の側壁部材20、第2の側壁部材30、第3の側壁部材40は、複数のプレキャスト製の分割部材を組み合わせて構成されても良く、例えば図示のように、上下方向に2つの側壁分割部材に分割され、それらを組み合わせて構成されても良い。本実施形態に係る構成では、第1の側壁部材20は上下2つの側壁分割部材20a、20bでもって構成される。また、第2の側壁部材30は上下2つの側壁分割部材30a、30bでもって構成される。また、第3の側壁部材40は上下2つの側壁分割部材40a、40bでもって構成される。
【0022】
第1の側壁部材20、第2の側壁部材30、第3の側壁部材40には、ボックスカルバート1の内部空間の隅角部を介して水平方向に延びる張出部が備えられる。第1の側壁部材20には、その上部に張出部22が備えられ、その下部に張出部24が備えられる。第2の側壁部材30には、その上部に張出部32が備えられ、その下部に張出部34が備えられる。第3の側壁部材40には、その上部に張出部42が備えられ、その下部に張出部44が備えられる。
【0023】
本実施形態に係る構成では、第1の側壁部材20に備えられる張出部22、24は、ボックスカルバート1の幅方向において左右両方向に向かって伸びるように構成される。また、第2の側壁部材30に備えられる張出部32、34は、ボックスカルバート1の内側方向に向かって伸びるように構成される。また、第3の側壁部材40に備えられる張出部42、44は、ボックスカルバート1の内側方向に向かって伸びるように構成される。
【0024】
第1の側壁部材20の張出部22と、第2の側壁部材30の張出部32との間には、これら張出部22、32を延長する方向に延びるプレキャスト製の第1の頂版部材50が配置される。また、第1の側壁部材20の張出部22と、第3の側壁部材40の張出部42との間には、これら張出部22、42を延長する方向に延びるプレキャスト製の第2の頂版部材52が配置される。これら第1の頂版部材50と第2の頂版部材52を含むようにボックスカルバート1の天井面としての頂版部10が構成される。
【0025】
第1の側壁部材20の張出部24と、第2の側壁部材30の張出部34との間には、これら張出部24、34を延長する方向に延びるプレキャスト製の第1の底版部材60が配置される。また、第1の側壁部材20の張出部24と、第3の側壁部材40の張出部44との間には、これら張出部24、44を延長する方向に延びるプレキャスト製の第2の底版部材62が配置される。これら第1の底版部材60と第2の底版部材62を含むようにボックスカルバート1の底面としての底版部3が構成される。
【0026】
<ボックスカルバートの構築方法>
ここで、本実施形態に係るボックスカルバート1の構築方法について説明する。図2図7は、ボックスカルバート1の構築方法に関する概略説明図であり、図2図7の順で構築過程を示している。なお、図2図7ではボックスカルバート1を経路正面から正面視で図示し、各図面において図示した鉄筋の構成は一例であり、これらの配置や本数等は任意に設計される。
【0027】
図2に示すように、例えば地盤である敷設対象面Gに敷設された第1の側壁部材20の下側の側壁分割部材20bに対し、その上方から上側の側壁分割部材20aが図示しないクレーン等によって吊り下げられ設置される。下側の側壁分割部材20bには、その上端から上方に向かって突出する複数の鉄筋26が備えられる。また、上側の側壁分割部材20aには、その下端において複数のスリーブ27が埋設される。図2図3に示すように、側壁分割部材20aの設置時には、スリーブ27に鉄筋26が挿入され、その状態でスリーブ27の間隙部を経時性硬化材で充填することで側壁分割部材20aと側壁分割部材20bが一体化され、第1の側壁部材20が構築される。
【0028】
続いて、第1の側壁部材20に対し第1の底版部材60及び第2の底版部材62を連結させる工程が行われる。図3に示すように、第1の側壁部材20の下部には張出部24が備えられる。張出部24は、ボックスカルバート1の幅方向において左右両方向に向かって伸びるように構成される。張出部24の幅方向両側端部は連結面として構成され、複数のスリーブ28が埋設される。張出部24の両側から、第1の底版部材60と第2の底版部材62がそれぞれ水平方向(幅方向)にスライドさせられ、各底版部材60、62の連結面と、張出部24の連結面とが連結される。第1の底版部材60と第2の底版部材62の連結面には、それぞれの連結面から水平方向に向かって突出する複数の鉄筋29が備えられる。図3に示すように、第1の底版部材60及び第2の底版部材62を連結させる工程においては、スリーブ28に鉄筋29が挿入され、その状態でスリーブ28の間隙部を経時性硬化材で充填することで連結が行われる。
【0029】
次いで、第1の側壁部材20に対し第1の頂版部材50及び第2の頂版部材52を連結させる工程が行われる。図4に示すように、第1の側壁部材20の上部には張出部22が備えられる。張出部22は、ボックスカルバート1の幅方向において左右両方向に向かって伸びるように構成される。張出部22の幅方向両側端部は連結面として構成され、複数のスリーブ55が埋設される。
【0030】
図示のように、底版部材60、62上に支保工70、70が設置され、これら支保工70、70上において第1の頂版部材50と第2の頂版部材52がそれぞれ水平方向(幅方向)にスライドさせられ、各頂版部材50、52の連結面と、張出部22の連結面とが連結される。その際には、第1の頂版部材50と第2の頂版部材52を第1の側壁部材20に向かって引き寄せるための引寄せ治具80が用いられても良い。また、支保工70には、支保工上に載置された対象物(ここでは底版部材60、62)の高さ方向位置の調整を行うためのジャッキ72が設けられても良い。
【0031】
第1の頂版部材50と第2の頂版部材52の連結面には、それぞれの連結面から水平方向に向かって突出する複数の鉄筋56が備えられる。図4に示すように、第1の頂版部材50及び第2の頂版部材52を連結させる工程においては、スリーブ55に鉄筋56が挿入され、その状態でスリーブ55の間隙部を経時性硬化材で充填することで連結が行われる。
【0032】
なお、本明細書において図3図4を参照して上述した、第1の側壁部材20に対し第1の底版部材60及び第2の底版部材62を連結させる工程、及び第1の側壁部材20に対し第1の頂版部材50及び第2の頂版部材52を連結させる工程を「第1側壁連結工程」と呼称する場合がある。
【0033】
続いて、図5図6のように、上下2つの側壁分割部材30a、30bを連結させて第2の側壁部材30を構築する工程と、上下2つの側壁分割部材40a、40bを連結させて第3の側壁部材40を構築する工程が行われる。
【0034】
本実施形態に係る構成では、下側の側壁分割部材30bには、その上端から上方に向かって突出する複数の鉄筋36が備えられる。また、上側の側壁分割部材30aには、その下端において複数のスリーブ37が埋設される。第2の側壁部材30を構築する際には、下側の側壁分割部材30bに対し、その上方から上側の側壁分割部材30aが図示しないクレーン等によって吊り下げられ設置される。その際に、スリーブ37に鉄筋36が挿入され、その状態でスリーブ37の間隙部を経時性硬化材で充填することで側壁分割部材30aと側壁分割部材30bが一体化され、第2の側壁部材30が構築される。
【0035】
本実施形態に係る構成では、下側の側壁分割部材40bには、その上端から上方に向かって突出する複数の鉄筋46が備えられる。また、上側の側壁分割部材40aには、その下端において複数のスリーブ47が埋設される。第3の側壁部材40を構築する際には、下側の側壁分割部材40bに対し、その上方から上側の側壁分割部材40aが図示しないクレーン等によって吊り下げられ設置される。その際に、スリーブ47に鉄筋46が挿入され、その状態でスリーブ47の間隙部を経時性硬化材で充填することで側壁分割部材40aと側壁分割部材40bが一体化され、第3の側壁部材40が構築される。
【0036】
そして、第2の側壁部材30を第1の頂版部材50及び第1の底版部材60に連結させる工程と、第3の側壁部材40を第2の頂版部材52及び第2の底版部材62に連結させる工程が行われる。
【0037】
図5図6に示すように、第2の側壁部材30の上部には張出部32が備えられ、下部には張出部34が備えられる。張出部32、34は、ボックスカルバート1の内側に向かって伸びるように構成される。張出部32の内側端部は連結面として構成され、当該連結面から水平方向に向かって突出する複数の鉄筋82が備えられる。また、第1の頂版部材50の外側端部(張出部32に対向する位置の端部)は連結面として構成され、当該連結面には複数のスリーブ84が埋設される。同様に、張出部34の内側端部は連結面として構成され、当該連結面から水平方向に向かって突出する複数の鉄筋86が備えられる。また、第1の底版部材60の外側端部(張出部34に対向する位置の端部)は連結面として構成され、当該連結面には複数のスリーブ88が埋設される。
【0038】
また、第3の側壁部材40の上部には張出部42が備えられ、下部には張出部44が備えられる。張出部42、44は、ボックスカルバート1の内側に向かって伸びるように構成される。張出部42の内側端部は連結面として構成され、当該連結面から水平方向に向かって突出する複数の鉄筋92が備えられる。また、第2の頂版部材52の外側端部(張出部42に対向する位置の端部)は連結面として構成され、当該連結面には複数のスリーブ94が埋設される。同様に、張出部44の内側端部は連結面として構成され、当該連結面から水平方向に向かって突出する複数の鉄筋96が備えられる。また、第2の底版部材62の外側端部(張出部44に対向する位置の端部)は連結面として構成され、当該連結面には複数のスリーブ98が埋設される。
【0039】
上記のように構成される第2の側壁部材30が、図6に示すように水平方向(幅方向)内側に向かってにスライドさせられる。ここで、第2の側壁部材30を内側に引き寄せるための引寄せ治具100が用いられても良い。第1の頂版部材50の連結面と、張出部32の連結面とが連結され、同時に、第1の底版部材60の連結面と、張出部34の連結面とが連結される。その際、スリーブ84に鉄筋82が挿入され、その状態でスリーブ84の間隙部を経時性硬化材で充填することで連結が行われる。また、スリーブ88に鉄筋86が挿入され、その状態でスリーブ88の間隙部を経時性硬化材で充填することで連結が行われる。このように、張出部32が第1の頂版部材50と連結し、且つ、張出部34が第1の底版部材60と連結することで、第2の側壁部材30が第1の頂版部材50及び第1の底版部材60と連結する。
【0040】
なお、本明細書において図6を参照して説明した、第2の側壁部材30と第1の頂版部材50及び第1の底版部材60を連結させる工程を「第2側壁連結工程」と呼称する場合がある。
【0041】
同様に、上記のように構成される第3の側壁部材40が、図6に示すように水平方向(幅方向)内側に向かってにスライドさせられる。その際、上記同様の引寄せ治具100が用いられても良い。第2の頂版部材52の連結面と、張出部42の連結面とが連結され、同時に、第2の底版部材62の連結面と、張出部44の連結面とが連結される。その際、スリーブ94に鉄筋92が挿入され、その状態でスリーブ94の間隙部を経時性硬化材で充填することで連結が行われる。また、スリーブ98に鉄筋96が挿入され、その状態でスリーブ98の間隙部を経時性硬化材で充填することで連結が行われる。このように、張出部42が第2の頂版部材52と連結し、且つ、張出部44が第2の底版部材62と連結することで、第3の側壁部材40が第2の頂版部材52及び第2の底版部材62と連結する。
【0042】
なお、本明細書において図6を参照して説明した、第3の側壁部材40と第2の頂版部材52及び第2の底版部材62を連結させる工程を「第3側壁連結工程」と呼称する場合がある。
【0043】
そして、図7に示すように、各側壁部材20、30、40と、各頂版部材50、52や各底版部材60、62が連結された後、支保工70が取り外され、ボックスカルバート1が構築される。図示のように、ボックスカルバート1は、第1の底版部材60及び第2の底版部材62を含むように地盤に敷設された底版部3と、底版部3に対し鉛直方向に構築され各側壁部材20、30、40からなる側壁部5と、第1の頂版部材50及び第2の頂版部材52を含み側壁部5の上部に構築される頂版部10と、が連結されて構築される。
【0044】
<引寄せ治具の構成>
以下では、本実施形態に係るボックスカルバート1の構築方法において用いられる引寄せ治具100(図6参照)の構成について図8を参照して説明する。なお、図4に示した引寄せ治具80も概ね同様の構成を有しており、これら引寄せ治具80、100の例としてレバーホイストが挙げられる。
【0045】
図8は、引寄せ治具100の概略拡大図である。ここでは、一例として第1の頂版部材50の連結面と、張出部32の連結面とが連結される際に用いられる場合を図示している。即ち、図8図6に示す破線部の概略拡大図である。
【0046】
図8に示すように、引寄せ治具100は、引寄せ対象物(ここでは張出部32)と、引寄せ側部材(ここでは第1の頂版部材50)との間にわたって配置されるガイド部材102を含む。ガイド部材102には、当該ガイド部材102を引寄せ側部材において可動させるための車輪104が備えられる。また、引寄せ治具100は、ガイド部材102に固定される保持部105と、引寄せ側部材に固定される保持部106と、にわたって張られるチェーン107とを含む。また、保持部105と保持部106との間には、張られたチェーン107を巻き取るための巻取り部110が設けられる。
【0047】
ガイド部材102を引寄せ対象物(以下、張出部32)と、引寄せ側部材(以下、第1の頂版部材50)との間にわたって配置し、ガイド部102と張出部32とを連結させた状態で巻取り部110を駆動させてチェーン107の巻取りを行う。第1の頂版部材50においては、ガイド部102は車輪104により可動自在に構成されており、チェーン107の巻取りによりガイド部102を介して張出部32が水平方向(幅方向)にスライドする。
【0048】
このように構成された引寄せ治具100を用いて張出部32と第1の頂版部材50との連結を行うことで簡易な方法で効率的な施工を行うことができる。なお、引寄せ治具100には、引寄せ対象物の高さ調整を行う、高さ調整機構(図示せず)が設けられても良い。これにより、引寄せ対象物と引寄せ側部材との高さを好適に調整し、例えば、本実施形態においては鉄筋82をスリーブ84に挿入する際の位置合わせを効率的に実施することができる。
【0049】
<本実施形態の作用効果>
以上説明したように構成される本実施形態に係るボックスカルバート1の構築方法によれば、事前に複数の部材を架台上で組み立て、一体化させるといった工程が不要であるため、組立架台の構築のためのヤード確保や、コスト増、吊り上げのためのクレーンの大型化が回避される。特に、大型のボックスカルバートを構築する際には、運搬や施工の制約により分割化された部材を用いる必要があり、施工性の向上が図られる。
【0050】
図9は、ボックスカルバートの従来工法の一例を示す説明図である。従来工法としては、事前に複数の部材を架台上で組み立て、一体化させたものを設置する方法が知られており、一例として図9に示すように、先に側壁部200及び床版部201を一体化させて設置し、その上方から複数の部材を一体化させた構成の頂版部材210を吊り下げて設置する場合がある。図9では、頂板部材210は隅角部を備えた構成であり、工事現場近傍の組み立てヤードで複数の部材の組み立てが行われる。
【0051】
本実施形態に係るボックスカルバート1の構築方法では、図9に示すような複数の部材から構成される頂版部材210を事前に組み立てるためのヤード等の場所の確保が不要となる。また、従来工法の場合、複数の部材を組み合わせて一体化させる際に、部材同士の接合部では、例えばモルタル等の充填を伴うような一体化処理が行われる場合がある。複数の部材が一体化された頂版部材210を吊り下げて設置を行う場合、接合部に曲げが作用するため、接合部の十分な硬化が求められる。即ち、接合部における硬化材を十分に硬化させるための硬化時間が必要となり施工期間の長期化が懸念されるが、この点において、本実施形態に係るボックスカルバート1の構築方法により施工期間の短縮化が図られる。
【0052】
また、本実施形態に係るボックスカルバート1では、各側壁部材や各頂版部材、各底版部材としてプレキャスト製の部材を用い、これら複数のプレキャスト部材を組み合わせ、ボックスカルバート1を構築している。このように、プレキャスト部材を用いることで施工時の作業効率や部材の運搬性を向上させることが可能となる。
【0053】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0054】
上記実施形態では、ボックスカルバート1の構成として、その内部空間が中間壁によって2分割され、2つの経路が敷設されるような構成について図示し説明したが本発明の適用範囲はこれに限られない。即ち、上記実施形態では、第1の側壁部材20がボックスカルバート1の幅方向略中央に位置するいわゆる中間壁として構成され、第2の側壁部材30と第3の側壁部材40がボックスカルバート1の幅方向両側に左右一対の壁体として位置するいわゆる外側壁として構成される場合を図示したが、ボックスカルバート1の構成はこれに限定されない。
【0055】
例えば、ボックスカルバートの内部空間に1経路のみを有する構成でも良い。その場合、第1の側壁部材と第2の側壁部材を左右一対の壁体として位置するいわゆる外側壁として構築すれば良い。構築方法としては、例えば第1の側壁部材に対し頂版部材及び底版部材を連結させる第1側壁連結工程を行い、その後、第2の側壁部材を頂版部材及び底版部材に連結させる第2側壁連結工程を行えば良い。その際、第2側壁連結工程において上記実施形態で説明した側壁部材をスライドさせて連結させるといった構築方法を採ればよい。
【0056】
また、上記実施形態では、各側壁部材が上下2つの側壁分割部材を組み合わせて構成される場合を図示し説明したが、側壁部材の構成はこれに限定されない。即ち、各側壁部材は1つのプレキャスト製の部材から構成されても良く、あるいは2以上の複数の分割された部材から構成されても良い。
【0057】
また、上記実施形態において、各部材同士の連結には、鉄筋とスリーブを組み合わせたいわゆる継手構造を用いているが、その構成は図示のものに限定されない。例えば、第1の頂版部材50の連結面と、張出部32の連結面との連結において、第1の頂版部材50にスリーブ84が埋設され、張出部32から鉄筋82が突出して設けられる構成を図示しているが、第1の頂版部材50から鉄筋が突出し、張出部32にスリーブが埋設されるといった逆の構成であっても良い。他の部材同士の連結においても同様である。
【0058】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、又は、上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、ボックスカルバートの構築方法に適用できる。
【符号の説明】
【0060】
1…ボックスカルバート
3…底版部
5…側壁部
10…頂版部
20…第1の側壁部材
20a、20b…(第1の側壁部材の)側壁分割部材
22…(第1の側壁部材上部の)張出部
24…(第1の側壁部材下部の)張出部
26…鉄筋
27…スリーブ
28…スリーブ
29…鉄筋
30…第2の側壁部材
30a、30b…(第2の側壁部材の)側壁分割部材
32…(第2の側壁部材上部の)張出部
34…(第2の側壁部材下部の)張出部
36…鉄筋
37…スリーブ
40…第3の側壁部材
40a、40b…(第3の側壁部材の)側壁分割部材
42…(第3の側壁部材上部の)張出部
44…(第3の側壁部材下部の)張出部
46…鉄筋
47…スリーブ
50…第1の頂版部材
52…第2の頂版部材
55…スリーブ
56…鉄筋
60…第1の底版部材
62…第2の底版部材
70…支保工
72…ジャッキ
80…引寄せ治具
82…鉄筋
84…スリーブ
86…鉄筋
88…スリーブ
92…鉄筋
94…スリーブ
96…鉄筋
98…スリーブ
100…引寄せ治具
102…ガイド部材
104…車輪
105、106…保持部
107…チェーン
110…巻取り部
G…敷設対象面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9