(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005327
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】バッテリ状態検出装置及びバッテリ管理システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/389 20190101AFI20240110BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20240110BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G01R31/389
G01R31/392
H01M10/48 P
H01M10/48 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105462
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槌矢 真吾
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 誠二
【テーマコード(参考)】
2G216
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA23
2G216BA53
2G216BA54
2G216CB11
5H030AA09
5H030AS06
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF42
(57)【要約】
【課題】従来よりも自由なタイミングでバッテリの内部インピーダンスを検出することが可能なバッテリ状態検出装置を提供する。
【解決手段】バッテリの負荷とは別に設けられ、バッテリ出力よりも高電圧かつ周波数の可変が自在な変動信号を生成する変動信号生成部と、変動信号がバッテリに印加された際の電圧電流特性を取得し、当該電圧電流特性に基づいてバッテリの内部インピーダンスを取得するインピーダンス取得部とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリの負荷とは別に設けられ、バッテリ出力よりも高電圧かつ周波数の可変が自在な変動信号を生成する変動信号生成部と、
前記変動信号が前記バッテリに印加された際の電圧電流特性を取得し、当該電圧電流特性に基づいて前記バッテリの内部インピーダンスを取得するインピーダンス取得部と
を備えるバッテリ状態検出装置。
【請求項2】
前記バッテリの温度をバッテリ温度として検出する温度検出部をさらに備え、
前記インピーダンス取得部は、前記バッテリ温度が所定の温度しきい値よりも高い場合に前記内部インピーダンスを取得する請求項1に記載のバッテリ状態検出装置。
【請求項3】
前記変動信号生成部は、前記バッテリ出力に基づいて前記変動信号を生成するチャージポンプである請求項1又は2に記載のバッテリ状態検出装置。
【請求項4】
前記チャージポンプは、
第1のコンデンサと第1の抵抗器とが直列接続された第1の直列回路と、
前記第1の直列回路の一端と前記バッテリのプラス電極との間に設けられた第1の電子スイッチと、
直列接続された第2のコンデンサと第2の抵抗器とを備え、一端が前記第1の直列回路の他端に接続され、他端が前記バッテリのマイナス電極に接続された第2の直列回路と、
前記第1の直列回路の一端と前記バッテリのマイナス電極との間に設けられた第2の電子スイッチと、
前記バッテリのプラス電極と前記第1の直列回路の他端との間に設けられた第3の電子スイッチとを備える請求項3に記載のバッテリ状態検出装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のバッテリ状態検出装置を備えるバッテリ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ状態検出装置及びバッテリ管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、二次電池の内部抵抗値を正確に検出することができる検出装置が開示されている。この検出装置は、交流法として周知の「Cole-Cole Plot」を二次電池における内部抵抗値の検出に適用したものであり、二次電池に印加する交流信号の周波数を可変した際における二次電池の電圧-電流特性に基づいて二次電池の内部抵抗値を検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記背景技術では、二次電池(バッテリ)の負荷に相当するモータ駆動用インバータによって交流信号の周波数を可変するので、モータ駆動用インバータによって駆動される車両用モータの駆動状態によっては二次電池の内部抵抗値(内部インピーダンス)を検出することができない。すなわち、背景技術は、バッテリの内部抵抗値の検出が車両用モータの駆動状態に応じて可能となるので、バッテリの内部抵抗値の検出タイミングの自由度が狭いという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも自由なタイミングでバッテリの内部インピーダンスを検出することが可能なバッテリ状態検出装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、バッテリ状態検出装置に係る解決手段として、バッテリの負荷とは別に設けられ、バッテリ出力よりも高電圧かつ周波数の可変が自在な変動信号を生成する変動信号生成部と、前記変動信号が前記バッテリに印加された際の電圧電流特性を取得し、当該電圧電流特性に基づいて前記バッテリの内部インピーダンスを取得するインピーダンス取得部とを備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来よりも自由なタイミングでバッテリの内部インピーダンスを検出することが可能なバッテリ状態検出装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るバッテリ状態検出装置Aの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るバッテリ状態検出装置Aの動作を示すフローチャートである。
【
図3】本発明の一実施形態におけるチャージポンプ3の動作を示すタイミングチャートである。
【
図4】本発明の第1実施形態におけるバッテリXの等価回路及びコールコールプロット(Cole-Cole Plot)を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係るバッテリ状態検出装置Aは、
図1に示すように、バッテリXを検出対象とする状態検出装置である。このバッテリ状態検出装置Aは、赤外線温度センサ1、複数の電圧検出IC2、チャージポンプ3、3つのインタフェース回路4~6及びMPU7を備えており、バッテリXに付帯的に備えられる赤外線温度センサ1及び複数の電圧検出IC2から各々入力される検出信号に基づいてバッテリXの内部インピーダンスを検出する。
【0010】
検出対象であるバッテリXは、複数の電池セルが直列接続された二次電池である。より正確には、このバッテリXは、複数の電池セルが直列接続された電池モジュールが複数直列接続されたものである。このようなバッテリXは、例えば電気自動車やハイブリッド自動車等の電動車両に搭載され、走行用モータを回転駆動するPCU(Power Control Unit)に直流電力を供給する。
【0011】
このバッテリXは、例えばリチウムイオン電池又は燃料電池であり、比較的高圧(例えば数百ボルト)なバッテリ出力(直流電力)をPCU等の負荷に供給する。なお、上記走行用モータは、電動車両の走行動力つまり電動車両の駆動輪の回転動力を発生させる電動機である。また、PCUは、パワーコントロールユニットの略称であり、走行モータを駆動する電力変換回路(モータ駆動回路)である。
【0012】
赤外線温度センサ1は、バッテリXに付帯的に設けられた温度センサである。この赤外線温度センサ1は、赤外線を温度検出媒体として用いることによりバッテリXの動作温度tをバッテリ温度として検出する。このような赤外線温度センサ1は、バッテリ温度tを示す温度検出信号をMPU7に出力する。
【0013】
電圧検出IC2は、例えば電池モジュール毎に設けられており、各々に対応する電池モジュールにおける各電池セルの出力電圧をセル電圧として検出する。これら複数の電圧検出IC2は、各電池セルのセル電圧を示すセル電圧検出信号をMPU7に出力する。
【0014】
また、この電圧検出IC2は、バッテリXから流出又はバッテリXに流入する電流(バッテリ電流)を検出する機能をも兼ね備えている。電圧検出IC2は、上記セル電圧検出信号に加えて、バッテリ電流を示す電流検出信号をMPU7に出力する。
【0015】
チャージポンプ3は、バッテリXの負荷であるPCUとは別に設けられ、バッテリXから電源として入力されるバッテリ出力に基づいて当該バッテリ出力よりも高電圧かつ周波数の可変が自在な変動信号Vsを生成する変動信号生成部である。
【0016】
このチャージポンプ3は、図示するように第1のトランジスタ3a、第2のトランジスタ3b、第3のトランジスタ3c、第1のコンデンサ3d、第1の抵抗器3e、第2の抵抗器3f及び第2のコンデンサ3gを備えている。このようなチャージポンプ3の構成素子のうち、第1のトランジスタ3aは、本発明の第1の電子スイッチに相当し、第2のトランジスタ3bは本発明の第2の電子スイッチに相当し、また第3のトランジスタ3cは、本発明の第3の電子スイッチに相当する。
【0017】
第1のトランジスタ3aは、ドレイン端子がバッテリXのプラス電極に接続され、ソース端子が第2のトランジスタ3bのドレイン端子及び第1のコンデンサ3dの一端に接続され、ゲート端子が第1のインタフェース回路4の出力端に接続されている。すなわち、第1のトランジスタ3aは、第1のコンデンサ3dの一端とバッテリXのプラス電極との間に設けられており、第1のインタフェース回路4からゲート端子に入力される第1ゲート信号に基づいてON/OFF(導通/遮断)する。
【0018】
第2のトランジスタ3bは、ドレイン端子が第1のトランジスタ3aのソース端子及び第1のコンデンサ3dの一端に接続され、ソース端子がバッテリXのマイナス電極に接続され、ゲート端子が第2のインタフェース回路5の出力端に接続されている。すなわち、第2のトランジスタ3bは、第1のコンデンサ3dの一端とバッテリXのマイナス電極との間に設けられており、第2のインタフェース回路5からゲート端子に入力される第2ゲート信号に基づいてON/OFF(導通/遮断)する。
【0019】
第3のトランジスタ3cは、ドレイン端子がバッテリXのプラス電極に接続され、ソース端子が第1の抵抗器3eの一端及び第2の抵抗器3fの一端に接続され、ゲート端子が第3のインタフェース回路6の出力端に接続されている。すなわち、第1のトランジスタ3aは、バッテリXのプラス電極と第1の抵抗器3eの一端及び第2の抵抗器3fの一端との間に設けられており、第3のインタフェース回路6からゲート端子に入力される第3ゲート信号に基づいてON/OFF(導通/遮断)する。
【0020】
第1のコンデンサ3dは、第1の抵抗器3eと直列接続されており、第1の抵抗器3eとともに第1の直列回路を構成している。第1のコンデンサ3dは、一端が第1のトランジスタ3aのソース端子及び第2のトランジスタ3bのドレイン端に接続され、他端が第1の抵抗器3eの他端に接続されている。このような第1のコンデンサ3dの一端は、第1の直列回路の一端に相当する。
【0021】
第1の抵抗器3eは、第1のコンデンサ3dと直列接続されており、第1のコンデンサ3dとともに第1の直列回路を構成している。第1の抵抗器3eは、一端が第3のトランジスタ3cのソース端子及び第2の抵抗器3fの一端に接続され、他端が第1のコンデンサ3dの他端に接続されている。すなわち、本実施形態における第1の直列回路は、第1のコンデンサ3dと第1の抵抗器3eとが直列接続されたものである。
【0022】
第2の抵抗器3fは、第2のコンデンサ3gと直列接続されており、第2のコンデンサ3gとともに第2の直列回路を構成している。第2の抵抗器3fは、一端が第3のトランジスタ3cのソース端子及び第1の抵抗器3eの一端に接続され、他端が第2のコンデンサ3gの一端に接続されている。
【0023】
第2のコンデンサ3gは、第2の抵抗器3fと直列接続されており、第2の抵抗器3fとともに第2の直列回路を構成している。第2のコンデンサ3gは、一端が第2の抵抗器3fの他端に接続され、他端がバッテリXのマイナス電極に接続されている。すなわち、本実施形態における第2の直列回路は、直列接続された第2のコンデンサ3fと第2の抵抗器3gとを備え、一端が第1の直列回路第2の他端に接続され、他端がバッテリXのマイナス電極に接続されている。
【0024】
3つのインタフェース回路4~6のうち、第1のインタフェース回路4は、入力端がMPU7の第1出力端に接続され、出力端が第1のトランジスタ3aのゲート端子に接続されている。第1のインタフェース回路4は、第1のトランジスタ3aとMPU7との間に設けられた緩衝回路である。
【0025】
ここで、第1のトランジスタ3aは、バッテリXを電源として作動する高圧電源系回路素子である。これに対して、MPU7は、バッテリXとは異なる例えば5V程度の低圧電源によって駆動される低圧電源系回路素子である。第1のインタフェース回路4は、このように異なる電源系で作動する第1のトランジスタ3aとMPU7とにおける電源の干渉を解消あるいは抑制する。
【0026】
また、第1のインタフェース回路4は、MPU7から入力される第1制御信号GS1を第1のトランジスタ3aを駆動し得る電圧に電圧変換器として機能する。すなわち、MPU7の第1制御信号GS1は、第1のトランジスタ3aを確実にON/OFF(導通/遮断)させることができる電圧を有していないので、第1のインタフェース回路4は、MPU7の第1制御信号GS1を第1のトランジスタ3aを確実にON/OFF(導通/遮断)させ得る信号つまり第1ゲート信号に電圧変換する。
【0027】
第2のインタフェース回路5は、入力端がMPU7の第2出力端に接続され、出力端が第2のトランジスタ3bのゲート端子に接続されている。第2のインタフェース回路5は、第2のトランジスタ3bとMPU7との間に設けられた緩衝回路である。
【0028】
第2のトランジスタ3bは、バッテリXを電源として作動する高圧電源系回路素子である。これに対して、MPU7は、上述したようにバッテリXとは異なる例えば5V程度の低圧電源によって駆動される低圧電源系回路素子である。第2のインタフェース回路5は、このように異なる電源系で作動する第2のトランジスタ3bとMPU7とにおける電源の干渉を解消あるいは抑制する。
【0029】
また、第2のインタフェース回路5は、MPU7から入力される第2制御信号GS2を第2のトランジスタ3bを駆動し得る電圧に電圧変換器として機能する。すなわち、MPU7の第2制御信号GS2は、第2のトランジスタ3bを確実にON/OFF(導通/遮断)させることができる電圧を有していないので、第2のインタフェース回路5は、MPU7の第2制御信号GS2を第2のトランジスタ3bを確実にON/OFF(導通/遮断)させ得る信号つまり第2ゲート信号に電圧変換する。
【0030】
第3のインタフェース回路6は、入力端がMPU7の第3出力端に接続され、出力端が第3のトランジスタ3cのゲート端子に接続されている。第3のインタフェース回路6は、第3のトランジスタ3cとMPU7との間に設けられた緩衝回路である。
【0031】
第3のトランジスタ3cは、バッテリXを電源として作動する高圧電源系回路素子である。これに対して、MPU7は、上述したようにバッテリXとは異なる例えば5V程度の低圧電源によって駆動される低圧電源系回路素子である。第3のインタフェース回路6は、このように異なる電源系で作動する第3のトランジスタ3cとMPU7とにおける電源の干渉を解消あるいは抑制する。
【0032】
また、第3のインタフェース回路6は、MPU7から入力される第3制御信号GS3を第3のトランジスタ3cを駆動し得る電圧に電圧変換器として機能する。すなわち、MPU7の第3制御信号GS3は、第3のトランジスタ3cを確実にON/OFF(導通/遮断)させることができる電圧を有していないので、第3のインタフェース回路6は、MPU7の第3制御信号GS3を第3のトランジスタ3cを確実にON/OFF(導通/遮断)させ得る信号つまり第3ゲート信号に電圧変換する。
【0033】
MPU7は、チャージポンプ3が生成する変動信号VsがバッテリXに印加された際のバッテリXの電圧電流特性を取得し、当該電圧電流特性に基づいてバッテリXの内部インピーダンスを取得するインピーダンス取得部である。このMPU7は、予め記憶するバッテリ監視プログラムを実行することにより、バッテリXの内部インピーダンスを取得する。
【0034】
すなわち、MPU7は、バッテリ監視プログラムに基づいて第1~第3制御信号を生成してチャージポンプ3を制御するとともに、当該チャージポンプ3の作動によって赤外線温度センサ1及び複数の電圧検出IC2から各々入力される温度検出信号、電流検出信号及び電圧検出信号に基づいてバッテリXの内部インピーダンスを取得する。
【0035】
詳細については後述するが、MPU7は、周知の交流インピーダンス法に基づいてバッテリXの内部インピーダンスを取得する。この交流インピーダンス法は、コールコールプロット(Cole-Cole Plot)あるいはナイキストプロットとも呼ばれるものである。この交流インピーダンス法は、所定周波数帯の交流信号をバッテリに印加した際のバッテリ電圧及びバッテリ電流(電流電圧特性)に基づいてバッテリXの内部インピーダンスを推定するものである。
【0036】
詳細については後述するが、交流インピーダンス法では、電気化学的な装置であるバッテリを溶液抵抗、電荷移動抵抗、拡散抵抗及び界面容量(静電容量)からなる等価回路として捉え、交流インピーダンスの実数成分を横軸、かつ交流インピーダンスの虚数成分を縦軸とするチャート上に、バッテリ電圧及びバッテリ電流を離散フーリエ変換して得られたインピーダンス値を順次プロットすることにより、上記等価回路の各素子値を求める。
【0037】
ここで、本実施形態に係るバッテリ状態検出装置Aは、検出対象であるバッテリXを管理するバッテリ管理システムを構成している。すなわち、バッテリ状態検出装置Aは、内部インピーダンスを推定することによりバッテリXの劣化状態を判定する機能に加え、バッテリXと負荷との接続を制御すること等、バッテリXを管理する様々な付加機能を備えている。
【0038】
次に、本実施形態に係るバッテリ状態検出装置Aの動作について、
図2~
図4を参照して詳しく説明する。
【0039】
このバッテリ状態検出装置AのMPU7は、電動車両のIG-SW(イグニッションスイッチ)が「OFF」に設定されると(ステップS1)、温度検出信号に基づいてバッテリXのバッテリ温度tを検出する(ステップS2)。すなわち、MPU7は、運転者がIG-SWを「ON」から「OFF」に設定することにより、電動車両が走行を停止した状態になると、バッテリ監視プログラムに基づくバッテリXの内部インピーダンスの取得を開始する。
【0040】
なお、ステップS1による条件(走行停止条件)は、電動車両が走行状態にある場合、バッテリXの負荷変動が比較的大きくなるために、交流インピーダンス法に基づくバッテリXの内部インピーダンスの推定精度が低下することに起因する。MPU7は、バッテリXの負荷変動がない状態(負荷が切り離された状態)でバッテリXの内部インピーダンスを推定する。
【0041】
そして、MPU7は、ステップS2で取得したバッテリ温度tが0℃を超えているか否かを判断し(ステップS3)、このステップS3の判断が「Yes」の場合にチャージポンプ3の作動を開始させる(ステップS4)。なお、MPU7は、ステップS3の判断が「No」の場合には、チャージポンプ3の作動を開始させることなく、バッテリXの内部インピーダンスの取得を終了させる。
【0042】
すなわち、MPU7は、電動車両が走行を停止することに加え、バッテリ温度tが0℃を超えていることを条件としてチャージポンプ3の作動を開始させ、以ってバッテリXの内部インピーダンスを取得する。なお、上記0℃は、本発明の温度しきい値に相当する。
【0043】
なお、ステップS3による条件(温度条件)は、バッテリ温度tが0℃以下の場合、交流インピーダンス法に基づくバッテリXの内部インピーダンスの推定精度が低下することに起因する。すなわち、MPU7は、内部インピーダンスの推定精度が比較的高くなる0℃を超えるバッテリXの動作温度領域でバッテリXの内部インピーダンスを推定する。
【0044】
MPU7は、上記ステップS4において、
図3に示す第1制御信号GS1を生成して第1のインタフェース回路4に出力する。また、MPU7は、第1制御信号GS1に同期した第2制御信号GS2を生成して第2のインタフェース回路5に出力し、同じく第1制御信号GS1に同期した第3制御信号GS3を生成して第3のインタフェース回路6に出力する。第1~第3制御信号GS1~SG3は、図示するように繰返し周期が時間経過に伴って短くなるパルス信号である。
【0045】
第1のインタフェース回路4は、第1制御信号GS1を第1ゲート信号に変換して第1のトランジスタ3aのベース端子に出力する。第2のインタフェース回路5は、第2制御信号GS2を第2ゲート信号に変換して第2のトランジスタ3bのベース端子に出力する。第3のインタフェース回路6は、第3制御信号GS3を第3ゲート信号に変換して第3のトランジスタ3cのベース端子に出力する。
【0046】
この結果、バッテリXから第1のトランジスタ3aのドレイン端子と第2のトランジスタ3bのソース端子とに印加されるバッテリXの出力電圧Vbは、
図3に示すように最小電圧が出力電圧Vbかつ最大電圧が出力電圧Vbの2倍となる変動信号Vsに変換され、第3のトランジスタ3cを介してバッテリXに印加される。
【0047】
ここで、変動信号Vsは、
図3に示すように、第1制御信号GS1及び第2制御信号GS2がロー(Low)レベルかつ第3制御信号GS3がハイ(Hi)レベルの期間で出力電圧Vbから出力電圧Vbの2倍の電圧に向かって徐々に電圧上昇し、第1制御信号GS1がロー(Low)レベルかつ第2制御信号GS2及び第3制御信号GS3がハイ(Hi)レベルの期間、また第1制御信号GS1がハイ(Hi)かつ第2制御信号GS2及び第3制御信号GS3がロー(Low)レベルの期間において徐々に電圧降下する。
【0048】
すなわち、チャージポンプ3がバッテリXの出力電圧Vbに基づいて生成する変動信号Vsは、バッテリXの出力電圧Vb以上の電圧を有することに加え、変動周期Tsが第1~第3制御信号GS1~SG3の繰返し周期の変化に伴って時間的に変化する電圧変動信号である。このような変動信号VsがバッテリXに印加されることによって、バッテリXには内部インピーダンスの推定用電流が流入する。
【0049】
MPU7は、電流検出信号及び電圧検出信号に基づいて変動信号Vsに起因するバッテリXのセル電圧V及びバッテリ電流I(セル電流)を所定のタイムインターバルで順次検出する(ステップS5)。そして、MPU7は、時系列的に順次取得されるセル電圧V及びバッテリ電流Iに基づいて電圧変化率ΔV及び電流変化率ΔIを順次検出する(ステップS6)。
【0050】
そして、MPU7は、電圧変化率ΔV及び電流変化率ΔIに基づいて、
図4(a)に示す「Cole-Cole Plot」(コールコールプロット)を取得する。このコールコールプロットの各部位は、
図4(b)に示すバッテリXの等価回路の各素子値に対応している。この等価回路とコールコールプロットの各部位との関係は、上述した交流インピーダンス法として周知である。
【0051】
すなわち、MPU7は、変動信号Vsを印加した際のバッテリXの電圧電流特性に基づいてコールコールプロットを取得し、当該コールコールプロットに基づいてバッテリXの内部インピーダンスを推定する。
【0052】
コールコールプロットは、電気化学的な機器であるバッテリXを溶液抵抗Rsol、反応抵抗Rct(電荷移動抵抗)、拡散抵抗Zw及び界面容量C(静電容量)からなる等価回路(電気回路)と見なし、当該等価回路のインピーダンスを実数成分(横軸)と虚数成分(縦軸)とするチャート上に示したものである。
【0053】
このようなコールコールプロットにおいて、原点から点Aに至る軌跡における横軸は、溶液抵抗Rsolに相当する。また、点Aから点Bに至る軌跡における横軸は、反応抵抗Rct(電荷移動抵抗)に相当する。さらに、点Bから点Cに至る軌跡における横軸は、拡散抵抗Zwに相当する。
【0054】
MPU7は、このようなバッテリXに関するコールコールプロットを取得すると、点Cの座標値(実数Zj及び虚数Zk)を取得する。この点Cの座標値(実数Zj及び虚数Zk)は、バッテリXの劣化状態に応じて変化する値である。
【0055】
MPU7は、このようにして点Cの座標値(実数Zj及び虚数Zk)を取得すると、実数Zj及び虚数Zkを評価する。すなわち、MPU7は、実数Zjが所定の第1評価しきい値Zr1よりも大きいか否かを判断する(ステップS9)。そして、MPU7は、ステップS9の判断が「Yes」の場合つまり実数Zjが第1評価しきい値Zr1を超えている場合、バッテリXが劣化していることを示す劣化警告を内部保存する(ステップS10)。
【0056】
この劣化警告は、電動車両のIG-SW(イグニッションスイッチ)が次に「ON」に設定されたとき、つまり運転者が次に電動車両を走行させようとした際に読み出されて報知される。運転者は、このような劣化警告によってバッテリXが劣化していてメンテナンスが必要なことを認識することができる。
【0057】
一方、MPU7は、ステップS9の判断が「No」の場合つまり実数Zjが第1評価しきい値Zr1以下である場合、劣化警告を内部保存することなく、点Cの虚数Zkが所定の第2評価しきい値Zr2よりも大きいか否かを判断する(ステップS11)。そして、MPU7は、ステップS10の判断が「Yes」の場合つまり虚数Zkが第2評価しきい値Zr2を超えている場合には劣化警告を内部保存する(ステップS10)。
【0058】
また、MPU7は、ステップS11の判断が「No」の場合つまり虚数Zkが第2評価しきい値Zr2以下である場合には、劣化警告を内部保存することなく、バッテリXの内部インピーダンスの取得を終了させる。
【0059】
このような本実施形態に係るバッテリ状態検出装置Aは、バッテリXの負荷(PCU等)とは別に設けられ、バッテリ出力よりも高電圧かつ周波数の可変が自在な変動信号Vsを生成するチャージポンプ3(変動信号生成部)と、変動信号VsをバッテリXに印加した際の電圧電流特性を取得し、当該電圧電流特性に基づいてバッテリXの内部インピーダンスを取得するMPU7(インピーダンス取得部)とを備える。
【0060】
このようなバッテリ状態検出装置Aによれば、バッテリXの負荷に依存することなく、従来よりも自由なタイミングでバッテリの内部インピーダンスを検出することが可能である。すなわち、本実施形態によれば、従来よりも自由なタイミングでバッテリの内部インピーダンスを検出することが可能なバッテリ状態検出装置Aを提供することが可能である。
【0061】
また、このバッテリ状態検出装置Aによれば、バッテリXの温度をバッテリ温度tとして検出する赤外線温度センサ1(温度検出部)をさらに備え、MPU7(インピーダンス取得部)は、バッテリ温度tが0℃(所定の温度しきい値)よりも高い場合にバッテリXの内部インピーダンスを取得するので、比較的精度の良い内部インピーダンスを取得することが可能である。
【0062】
また、このバッテリ状態検出装置Aによれば、変動信号生成部はバッテリ出力に基づいて変動信号Vsを生成するチャージポンプ3なので、簡単な回路構成で変動信号Vsを生成することが可能である。したがって、変動信号生成部を構成する部品点数を削減してコスト上昇を抑制することができる。
【0063】
さらに、このバッテリ状態検出装置Aによれば、チャージポンプ3は、第1のコンデンサ3dと第1の抵抗器3eとが直列接続された第1の直列回路と、第1の直列回路の一端とバッテリXのプラス電極との間に設けられた第1のトランジスタ3a(第1の電子スイッチ)と、直列接続された第2のコンデンサ3fと第2の抵抗器3gとを備え、一端が第1の直列回路の他端に接続され、他端がバッテリXのマイナス電極に接続された第2の直列回路と、第1の直列回路の一端とバッテリXのマイナス電極との間に設けられた第2のトランジスタ3b(第2の電子スイッチ)と、バッテリXのプラス電極と第1の直列回路の他端との間に設けられた第3のトランジスタ3c(第3の電子スイッチ)とを備える。このようなバッテリ状態検出装置Aによれば、
図3に示すように比較的緩やかに変動する変動信号Vsを生成することができる。
【0064】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、電動車両に搭載されるバッテリXを検出対象としたが、本発明はこれに限定されない。本発明は、車載以外の様々なバッテリの劣化診断に適用することが可能である。
【0065】
(2)上記実施形態では、
図1に示すチャージポンプ3を変動信号生成部として採用したが、本発明はこれに限定されない。すなわち、本発明における変動信号生成部は、
図1に示す構成のチャージポンプ3に限定されない。
【0066】
(3)上記実施形態では、走行停止条件及び温度条件を満足する場合に内部インピーダンスを取得したが、本発明はこれに限定されない。必要に応じて走行停止条件及び温度条件を考慮することなく、または走行停止条件または温度条件を考慮することなく内部インピーダンスを取得して、バッテリXの劣化診断を行ってもよい。
【0067】
(付記1)
バッテリの負荷とは別に設けられ、バッテリ出力よりも高電圧かつ周波数の可変が自在な変動信号を生成する変動信号生成部と、前記変動信号が前記バッテリに印加された際の電圧電流特性を取得し、当該電圧電流特性に基づいて前記バッテリの内部インピーダンスを取得するインピーダンス取得部とを備えるバッテリ状態検出装置。
【0068】
(付記2)
前記バッテリの温度をバッテリ温度として検出する温度検出部をさらに備え、前記インピーダンス取得部は、前記バッテリ温度が所定の温度しきい値よりも高い場合に前記内部インピーダンスを取得する付記1に記載のバッテリ状態検出装置。
【0069】
(付記3)
前記変動信号生成部は、前記バッテリ出力に基づいて前記変動信号を生成するチャージポンプである付記1又は2に記載のバッテリ状態検出装置。
【0070】
(付記4)
前記チャージポンプは、第1のコンデンサと第1の抵抗器とが直列接続された第1の直列回路と、前記第1の直列回路の一端と前記バッテリのプラス電極との間に設けられた第1の電子スイッチと、直列接続された第2のコンデンサと第2の抵抗器とを備え、一端が前記第1の直列回路の他端に接続され、他端が前記バッテリのマイナス電極に接続された第2の直列回路と、前記第1の直列回路の一端と前記バッテリのマイナス電極との間に設けられた第2の電子スイッチと、前記バッテリのプラス電極と前記第1の直列回路の他端との間に設けられた第3の電子スイッチとを備える付記3に記載のバッテリ状態検出装置。
【0071】
(付記5)
付記1~3のいずれか一項に記載のバッテリ状態検出装置を備えるバッテリ管理システム。
【符号の説明】
【0072】
A バッテリ状態検出装置
X バッテリ
1 赤外線温度センサ
2 セル電圧検出IC
3 チャージポンプ(変動信号生成部)
3a 第1のトランジスタ(第1の電子スイッチ)
3b 第2のトランジスタ(第2の電子スイッチ)
3c 第3のトランジスタ(第3の電子スイッチ)
3d 第1のコンデンサ
3e 第1の抵抗器
3f 第2の抵抗器
3g 第2のコンデンサ
4~6 インタフェース回路
7 MPU(インピーダンス取得部)