(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053271
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】異常検知装置、異常検知方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
A61B5/01 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159408
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096699
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿嶋 英實
(74)【代理人】
【識別番号】100171882
【弁理士】
【氏名又は名称】北庄 麗絵子
(72)【発明者】
【氏名】前田 正博
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC11
4C117XD09
4C117XE48
4C117XJ42
4C117XJ46
4C117XP01
4C117XQ17
4C117XR02
(57)【要約】
【課題】温度センサに異常があるか否かを容易に確認可能とする。
【解決手段】第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20に収容されると、第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rと第2計測装置11Lの赤外線温度センサ56Lとが近接対向する。プロセッサ71は、第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rによって赤外線温度センサ56Lの温度を測定し、第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lによって第1赤外線温度センサ56Rの温度を測定し、温度差が所定の基準範囲にあるか否かを判断する。そして、温度差が所定の基準範囲にない場合には、第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56R及び/又は左側の第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56に異常があると判断する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1温度センサを有する第1計測装置と、
第2温度センサを有する第2計測装置と、
前記第1温度センサと前記第2温度センサとが対向するように前記第1計測装置及び前記第2計測装置を収容する収容ケースと、
前記第1計測装置及び前記第2計測装置が前記収容ケースに収容された状態で、前記第1温度センサによって計測された第1温度と前記第2温度センサによって計測された第2温度とに基づいて、前記第1温度センサ又は前記第2温度センサの異常を検知する異常検知部と、
を備えることを特徴とする異常検知装置。
【請求項2】
前記異常検知部は、前記第1温度と前記第2温度との差分が所定閾値以上だった場合に、前記第1温度センサ又は前記第2温度センサに異常があることを検知する、
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項3】
前記異常検知部は、前記第1計測装置及び前記第2計測装置が前記収容ケースに収容されてから所定時間経過後に前記第1温度センサと前記第2温度センサとによる温度計測を開始する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の異常検知装置。
【請求項4】
前記収容ケースは、
前記第1計測装置が収容された状態の前記第1温度センサの近傍に配設された第1サーミスタと、
前記第2計測装置が収容された状態の前記第2温度センサの近傍に配設された第2サーミスタと、をさらに備え、
前記異常検知部は、前記第1温度センサによって計測された第1温度と前記第2サーミスタによって計測された第3温度とに基づいて、前記第1温度センサの異常を検知し、前記第2温度センサによって計測された第2温度と前記第1サーミスタによって計測された第4温度とに基づいて、前記第2温度センサの異常を検知する、
ことを特徴とする請求項3に記載の異常検知装置。
【請求項5】
前記異常検知部は、前記第2サーミスタによって計測された第3温度と前記第1サーミスタによって計測された第4温度と、所定時間前の温度との差分が所定範囲内であると判定されると、前記第1温度センサと前記第2温度センサとの異常検知動作を開始する、
ことを特徴とする請求項4に記載の異常検知装置。
【請求項6】
前記第1計測装置及び前記第2計測装置は、各々、筐体の一端側にバッテリを有し、
前記第1温度センサ及び前記第2温度センサは、各々、前記一端側に対する他端側に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項7】
前記異常検知部は、前記収容ケースの蓋部が開けられたことをトリガーに、前記第1温度センサと前記第2温度センサとによる温度計測を開始する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の異常検知装置。
【請求項8】
前記第1計測装置と前記第2計測装置とは、各々、
無線通信回線を介して音声信号を受信する受信部と、
前記受信部により受信された音声信号を変換して音声を出力する音声出力部と、
をさらに備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の異常検知装置。
【請求項9】
前記第1計測装置は、ユーザの一方の耳穴に挿入され、前記第1温度センサが配置された第1プローブをさらに備え、
前記第2計測装置は、ユーザの他方の耳穴に挿入され、前記第2温度センサが配置された第2プローブをさらに備える、
ことを特徴とする請求項8に記載の異常検知装置。
【請求項10】
少なくとも1つのプロセッサを備えた電子機器で、第1温度センサを有する第1計測装置の異常又は第2温度センサを有する第2計測装置の異常を検知する異常検知方法であって、
前記少なくとも1つのプロセッサは、
前記第1温度センサと前記第2温度センサとが対向するように前記第1計測装置及び前記第2計測装置が収容ケースされた状態で、前記第1温度センサによって計測された第1温度と前記第2温度センサによって計測された第2温度とに基づいて、前記第1温度センサ又は前記第2温度センサの異常を検知するステップを含むことを特徴とする異常検知方法。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサを備えた電子機器で、第1温度センサを有する第1計測装置の異常又は第2温度センサを有する第2計測装置の異常を検知するプログラムであって、
前記第1温度センサと前記第2温度センサとが対向するように前記第1計測装置及び前記第2計測装置が収容ケースされた状態で、前記第1温度センサによって計測された第1温度と前記第2温度センサによって計測された第2温度とに基づいて、前記第1温度センサ又は前記第2温度センサの異常を検知する機能を実現する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検知装置、異常検知方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、体内の安定した体温を連続して測定することが、熱中症対策や、睡眠の質、概日リズムの観点から注目されている。体温を連続して測定する方法として、プローブを外耳道内に挿入して、赤外線温度センサにより非接触で耳内温度を測定する耳式体温計が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1による耳式体温計では、装着することで、使用者は仕事中、運動中、睡眠中に体温の変化を記録することができる。耳式体温計に使用される赤外線温度センサとしては、検知した放射エネルギーにより、起電力が発生するサーモパイルや、電気抵抗が変化するボロメーターなどが使用される。
【0005】
このような耳式体温計の課題の一つに温度精度の維持が挙げられる。そこで、耳用赤外線体温計においては、基本周囲条件下で、±0.2℃の最大許容誤差が規定されている(日本工業規格;JIS_T_4207)。耳式体温計において、温度精度が満たされなくなる原因としては、赤外線温度センサ面に耳垢などの汚れの付着、赤外線温度センサの経時変化、故障などが挙げられる。しかしながら、一般向けの製品の場合、定期的な校正を行うことは不便であるので、少なくとも現在の赤外線温度センサの状態を簡単にチェックする方法が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、温度センサに異常があるか否かを容易に確認可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る異常検知装置は、第1温度センサを有する第1計測装置と、第2温度センサを有する第2計測装置と、前記第1温度センサと前記第2温度センサとが対向するように前記第1計測装置及び前記第2計測装置を収容する収容ケースと、前記第1計測装置及び前記第2計測装置が前記収容ケースに収容された状態で、前記第1温度センサによって計測された第1温度と前記第2温度センサによって計測された第2温度とに基づいて、前記第1温度センサ又は前記第2温度センサの異常を検知する異常検知部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る異常検知方法は、少なくとも1つのプロセッサを備えた電子機器で、第1温度センサを有する第1計測装置の異常又は第2温度センサを有する第2計測装置の異常を検知する異常検知方法であって、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記第1温度センサと前記第2温度センサとが対向するように前記第1計測装置及び前記第2計測装置が収容ケースされた状態で、前記第1温度センサによって計測された第1温度と前記第2温度センサによって計測された第2温度とに基づいて、前記第1温度センサ又は前記第2温度センサの異常を検知するステップを含むことを特徴とする。
【0009】
この発明に係るプログラムは、少なくとも1つのプロセッサを備えた電子機器で、第1温度センサを有する第1計測装置の異常又は第2温度センサを有する第2計測装置の異常を検知するプログラムであって、前記第1温度センサと前記第2温度センサとが対向するように前記第1計測装置及び前記第2計測装置が収容ケースされた状態で、前記第1温度センサによって計測された第1温度と前記第2温度センサによって計測された第2温度とに基づいて、前記第1温度センサ又は前記第2温度センサの異常を検知する機能を実現することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、温度センサに異常があるか否かを容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態による耳式体温計10の構造及び収容ケース20を示す模式図である。
【
図2】本実施形態による耳式体温計10の収容ケース20への収納状態及び収納ケースの外観を示す模式図である。
【
図3】本実施形態による耳式体温計10の第1計測装置11R、第2計測装置11Lの制御回路50R、50Lの構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態による収容ケース20の制御回路70の構成を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態による耳式体温計10の構造を示す模式図である。
【
図6】本実施形態による耳式体温計10の構造を示す模式図である。
【
図7】本実施形態による収容ケース20の制御回路70の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図8】本実施形態による収容ケース20の制御回路70の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本実施形態による収容ケース20の第1変形例を示す模式図である。
【
図10】本実施形態による収容ケース20の第2変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
A.実施形態の構成
図1(a)、(b)は、本実施形態による耳式体温計10の構造及び収容ケース20を示す模式図である。また、
図2(a)、(b)は、本実施形態による耳式体温計10の収容ケース20への収納状態及び収納ケースの外観を示す模式図である。
図1(a)において、耳式体温計10は、左右の耳の穴(外耳道)に挿入して鼓膜の温度(赤外線放射)を測定するための右耳用の第1計測装置11Rと左耳用の第2計測装置11Lとからなる。第1計測装置11R及び第2計測装置11Lは、各々、バッテリや電子回路等が収容されている本体部12R、12Lと、左右の耳の穴に挿入されるプローブ13R、13Lとからなる。プローブ13R、13Lの先端14R、14Lには、それぞれ鼓膜の温度(赤外線放射)を測定するための第1赤外線温度センサ56R、第2赤外線温度センサ56Lが配置されている。
【0014】
また、本実施形態による第1計測装置11R及び第2計測装置11Lは、無線接続された電子機器(不図示;スマートフォンなど)からの音声信号を受信して音として出力するワイヤレスイヤホンとしても使用可能となっている。なお、プローブ13R、13Lの先端14R、14Lに着脱可能なイヤーピースを装着したり、本体部12R、12Lに耳に引っ掛けて固定するためのイヤーフックなどを設けたりするようにしてもよい。
【0015】
また、
図1(b)に示すように、耳式体温計10は、上記第1計測装置11R及び第2計測装置11Lを保管するとともに、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lのバッテリを充電するための収容ケース20を備えている。収容ケース20の本体部21aには、上記第1計測装置11R及び第2計測装置11Lを収容するための凹部22が設けられている。第1計測装置11R及び第2計測装置11Lは、
図2(a)に示すように、使用後に凹部22に収容される。第1計測装置11R及び第2計測装置11Lの形状と凹部22の形状とが略一致しているので、収容ケース20に収容された状態で、
図2(a)に示すように、プローブ13R、13Lの先端14R、14L、すなわち第1赤外線温度センサ56Rと第2赤外線温度センサ56Lとが近接して対向するようになっている。なお、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lと収容ケース20とに磁石を埋め込むことで、第1赤外線温度センサ56Rと第2赤外線温度センサ56Lとが近接して対向するように、都度決められた位置に固定されるようにしてもよい。
【0016】
本実施形態では、第1計測装置11Rと第2計測装置11Lとが収容ケース20に収容されると、第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rにより測定した第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lの表面温度T1と、第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lにより測定した第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rの表面温度T2との温度差(T1-T2)に基づいて、第1赤外線温度センサ56R及び/又は第2赤外線温度センサ56Lに異常があるか否かを判断する。
【0017】
第1赤外線温度センサ56R及び第2赤外線温度センサ56Lには、受光可能な視野角があるため、測定対象物からの距離が重要になる。この場合、測定対象物は、互いの赤外線温度センサである。互いの温度を正しく測定するためには、視野角に応じた距離に近接させる必要がある。第1赤外線温度センサ56R及び第2赤外線温度センサ56Lの双方に異常がなければ、第1赤外線温度センサ56R及び第2赤外線温度センサ56Lにより測定された表面温度は略一致し、どちらか一方、もしくは第1赤外線温度センサ56R又は第2赤外線温度センサ56Lの双方に異常があれば、第1赤外線温度センサ56R及び第2赤外線温度センサ56Lの双方により測定された表面温度に温度差が生じることになる。
【0018】
また、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20の凹部22に収容された状態で、プローブ13Rの先端14R(第1赤外線温度センサ56R)が近接する位置には、第1サーミスタ23Rが配設されており、プローブ13Lの先端14L(第2赤外線温度センサ56L)が近接する位置には、第2サーミスタ23Lが配設されている。第1サーミスタ23R、第2サーミスタ23Lは、第1赤外線温度センサ56R又は第2赤外線温度センサ56Lに異常があった場合に、どちらの赤外線温度センサに異常があったかを判断するために用いられる。第1サーミスタ23Rは、第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56R(プローブ13Rの先端14Rを含んでもよい)の温度を計測し、第2サーミスタ23Lは、第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lの温度を計測する。
【0019】
本実施形態では、第1赤外線温度センサ56Rが計測した第2赤外線温度センサ56Lの表面温度T1と第2サーミスタ23Lが計測した第2赤外線温度センサ56L(プローブ13Lの先端14Lを含んでもよい)の温度TH2との温度差に基づいて、右側の第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rに異常があったか否かを判断し、第2赤外線温度センサ56Lが計測した第1赤外線温度センサ56Rの表面温度T2と第1サーミスタ23Rが計測した第1赤外線温度センサ56Rの温度TH1との温度差に基づいて、左側の第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lに異常があったか否かを判断する。
【0020】
また、
図2(b)に示すように、収容ケース20は、蓋部21bを備えている。収容ケース20の本体部21aの側面(正面)には、少なくとも2つのLED(Light Emitted Diode)24R、24Lを備えている。本実施形態では、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20に収容された状態で、第1計測装置11Rのプローブ13R内に配設されている第1赤外線温度センサ56Rの異常、及び/又は第2計測装置11Lのプローブ13L内に配設されている第2赤外線温度センサ56Lの異常を検知するようになっている。そして、異常が検知された場合には、上記LED24R、LED24Lによって異常が検知されたことを報知する。例えば、右側用の第1赤外線温度センサ56Rに異常があった場合には、LED24Rを赤色発光(又は点滅)し、左耳用の第2赤外線温度センサ56Lに異常があった場合には、LED24Lを赤色発光(又は点滅)する。
【0021】
また、収容ケース20の本体部21aの側面(正面)には、上記2つのLED24R、24L以外にLED25を設けるようにしてもよい。LED25は、収容ケース20における充電状態を表示してもよい。例えば、充電量が低くなると、赤色(もしくは消灯)、充電中は、緑色で点滅、満充電で緑色点灯(もしくは消灯)するようにしてもよい。
【0022】
図3は、本実施形態による耳式体温計10の第1計測装置11R、第2計測装置11Lの制御回路50R、50Lの構成を示すブロック図である。第1計測装置11Rの制御回路50Rは、プロセッサ51R、メモリ52R、通信部53R、バッテリ54R、第1赤外線温度センサ56R、アンプ57R、ADコンバータ58R、DAコンバータ60R、鳴動部駆動回路61R、鳴動部62R、及び操作部63Rを備えている。同様に、第2計測装置11Lの制御回路50Lは、プロセッサ51L、メモリ52L、通信部53L、バッテリ54L、第2赤外線温度センサ56L、アンプ57L、ADコンバータ58L、DAコンバータ60L、鳴動部駆動回路61L、及び鳴動部62Lを備えている。なお、第2計測装置11Lの制御回路50Lは、上述した第1計測装置11Rの制御回路50Rと同様の構成であり、その機能も同等であるので説明を省略する。
【0023】
プロセッサ51Rは、メモリ52R(ROM)に格納されているプログラムに従って、収容ケース20からの給電による自身のバッテリ54Rへの充電や、第1赤外線温度センサ56Rによるユーザの体温測定、通信部53Rを介する外部機器(スマートフォンなど)への測定体温の送信、通信部53Rを介する外部機器(スマートフォンなど)からの音声信号変換及び音出力などを行うために各部の動作を制御する。
【0024】
メモリ52Rは、上述したプロセッサ51Rの動作を制御するためのプログラムなどを記憶する。通信部53Rは、無線により外部機器(スマートフォンなど)への測定体温の送信や、音声信号の受信などを行うとともに、異常検知処理において、有線/無線により収容ケース20の制御回路70に対する測定データの送信を行う。バッテリ54Rは、充電可能な二次電池であり、当該第1計測装置11Rの制御回路50Rの各部への電力を供給する。当該バッテリ54Rは、収容ケース20の充電制御部74によって充電制御される。
【0025】
第1赤外線温度センサ56Rは、ユーザの鼓膜からの赤外線放射を受光することでユーザの体温を検出する。アンプ57Rは、第1赤外線温度センサ56Rからの体温に相当する信号を増幅する。ADコンバータ58Rは、アンプで増幅された体温に相当する電気信号をデジタルデータに変換し、プロセッサ51Rに供給する。
【0026】
DAコンバータ60Rは、通信部53Rを介して受信した外部機器(スマートフォンなど)からの音声デジタルデータをアナログ信号に変換する。鳴動部駆動回路61Rは、アナログ信号を増幅、フィルタリング等を行い、鳴動部62Rを駆動する。鳴動部62Rは、マグネット、ボイスコイル、振動板等からなり、鳴動部駆動回路61Rにより駆動し、音を出力する。操作部63Rは、例えば、タッチセンサからなり、本体部12Rの表面に対するユーザのタッチ操作を検出する。プロセッサ51Rは、操作部63Rによって検出されたタッチ操作に応じて、体温測定の開始/停止、音量の調整や、楽曲の再生、停止、スキップなどの制御を行う。
【0027】
図4は、本実施形態による収容ケース20の制御回路70の構成を示すブロック図である。収容ケース20の制御回路70は、プロセッサ71、メモリ72、通信部73、充電制御部74、バッテリ75、アンプ76R、76L、ADコンバータ77R、77L、前述した第1サーミスタ23R、第2サーミスタ23L、右用のLED24R、左用のLED24L、充電確認用のLED25、アンプ76R、76L、ADコンバータ77R、77Lを備えている。
【0028】
プロセッサ71は、メモリ72(ROM)に格納されているプログラムに従って、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lへの給電によるバッテリ54R、54Lへの充電や、第1赤外線温度センサ56R、第2赤外線温度センサ56Lによるユーザの体温測定の通信部53Rを介する受信などを行う。特に、本実施形態では、プロセッサ71は、第1赤外線温度センサ56Rにより測定された第2赤外線温度センサ56Lの表面温度T1、第2赤外線温度センサ56Lにより測定された第1赤外線温度センサ56Rの表面温度T2を用いて、第1赤外線温度センサ56R及び/又は第2赤外線温度センサ56Lの異常/正常を検知する。また、どちらかが異常であった場合には、第1赤外線温度センサ56Rにより測定した第2赤外線温度センサ56Lの表面温度T1、第2赤外線温度センサ56Lにより測定した第1赤外線温度センサ56Rの表面温度T2、第1サーミスタ23Rにより測定した第1赤外線温度センサ56Rの温度TH1、及び第2サーミスタ23Lにより測定した第2赤外線温度センサ56Lの温度TH2を用いて、第1赤外線温度センサ56R又は第2赤外線温度センサ56Lのどちらに異常があるのかを検知するという異常検知動作を実行する。なお、プロセッサ71は、CPU、ASIC、FPGA等であってよい。
【0029】
メモリ72は、上述したプロセッサ71の動作を制御するためのプログラムなどを記憶する。通信部73は、有線/無線により収容ケース20に収納されている第1計測装置11R及び第2計測装置11Lにより測定された、第1赤外線温度センサ56Rにより測定した第2赤外線温度センサ56Lの表面温度T1及び第2赤外線温度センサ56Lにより測定した第1赤外線温度センサ56Rの表面温度T2を受信する。
【0030】
充電制御部74は、有線/無線により外部電源からの給電によりバッテリ75への充電、及び、収容ケース20に収納されている第1計測装置11Rのバッテリ54R及び第2計測装置11Lのバッテリ54Lへの充電を制御する。バッテリ75は、充電可能な二次電池であり、当該収容ケース20の制御回路70の各部への電力を供給する。
【0031】
アンプ76R、76Lは、各々、第1サーミスタ23Rによって計測された第1赤外線温度センサ56Rの温度TH1に相当する信号、及び第2サーミスタ23Lによって計測された第2赤外線温度センサ56Lの温度TH2に相当する信号を増幅する。ADコンバータ77R、77Lは、アンプ76R、76Lにより増幅された第1サーミスタ23Rによって計測された温度TH1、及び第2サーミスタ23Lによって計測された温度TH2に相当する信号をデジタルデータに変換してプロセッサ71に供給する。
【0032】
図5(a)~(c)は、本実施形態による耳式体温計10の構造を示す模式図である。なお、
図5(a)~(c)においては、右用、左用ともに同じ構造であるので、右用の第1計測装置11Rについてのみ説明し、左用の第2計測装置11Lについては省略する。
図5(a)に示すように、第1計測装置11Rは、バッテリや電子回路等が収容されている本体部12Rと、右耳の穴に挿入されるプローブ13Rとからなる。プローブ13Rの先端14Rには、鼓膜の温度(赤外線放射)を測定するための第1赤外線温度センサ56Rと、音を出力するための開口部16Rとが配置されている。また、
図5(b)、(c)に示すように、本体部12Rの内部には、バッテリ54Rが設置されている。該バッテリ54Rは、プローブ13Rの先端14R近傍に配設される第1赤外線温度センサ56Rから最も離れた位置に配設される。これは、バッテリ54Rは、使用中に発熱する可能性があり、発熱によって第1赤外線温度センサ56Rによる計測された表面温度が影響されることを防止するためである。
【0033】
図6(a)~(c)は、本実施形態による耳式体温計10の構造を示す模式図である。なお、
図6(a)~(c)においては、右用、左用ともに同じ構造であるので、右用の第1計測装置11Rについてのみ説明し、左用の第2計測装置11Lについては省略する。
図6(a)には、第1計測装置11Rのプローブ13Rの断面を示しており、
図6(b)には、第1計測装置11Rのプローブ13R側から見た外観を示している。プローブ13Rの内部には、
図6(a)に示すように、マグネット、ボイスコイル、振動板等からなる鳴動部(ドライバ)62Rが配設されており、鳴動部62Rにより発せられた音は、矢印で示す空洞部(音道)を通って開口部16Rから外部に出力される。第1赤外線温度センサ56Rは、プローブ13Rの先端14Rに配設されている。
【0034】
プローブ13Rの最先端には、
図6(b)に示すように、鼓膜の温度(赤外線放射)を測定するための第1赤外線温度センサ56Rと、音を出力するための開口部16Rとが配置されている。また、
図6(c)には、第1計測装置11Rを右耳の穴に挿入した状態を示している。
図6(c)に示すように、第1計測装置11Rのプローブ13Rを耳の穴に挿入すると、プローブ13Rの先端に配置された第1赤外線温度センサ56Rが、ユーザの鼓膜80から放射される放射エネルギーを受けるようになっている。
【0035】
B.実施形態の動作
図7及び
図8は、本実施形態による収容ケース20の制御回路70の動作を説明するためのフローチャートである。なお、ユーザは、体温を測定するため、及び/又は音楽を聞くために、収容ケース20から第1計測装置11R及び第2計測装置11Lを取り出し、自身の右耳に第1計測装置11Rのプローブ13Rを挿入し、左耳に第2計測装置11Lのプローブ13Lを挿入する。第1計測装置11R及び第2計測装置11Lは、それぞれ耳に挿入されると、所定の時間間隔で第1赤外線温度センサ56R、第2赤外線温度センサ56Lによりユーザの体温を連続的に計測する。計測された体温は、外部機器(スマートフォン)に送信され、外部機器のアプリケーションで表示されるとともに保存される。その後、体温測定及び/又は音楽の聴取を終了すると、ユーザは、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lを収容ケース20に収容して蓋部21bを閉じる。
【0036】
プロセッサ71は、まず、第1計測装置11Rのプローブ13R、第2計測装置11Lのプローブ13Lの先端が近接対向したか否かを判断する(ステップS10)。プローブ13R、13Lの先端が近接対向している状態であるか否かは、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20に収容されているか否か、すなわち、充電制御部74により充電可能状態であるか否かを判断すればよい。なお、ワイヤレスイヤホンが収容ケースに収容したことを検知し、ワイヤレスイヤホン側のバッテリへの充電を自動的に開始する技術は周知であるので、当該技術を用いて、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20に収容されているか否かを判断する。
【0037】
本実施形態による耳式体温計10では、
図2(a)に示すように、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20の凹部22に収容されれば、プローブ13Rの先端14Rとプローブ13Lの先端14L、すなわち第1赤外線温度センサ56Rと第2赤外線温度センサ56Lとは、自然に近接対向する。そして、第1赤外線温度センサ56Rと第2赤外線温度センサ56Lとが近接対向していない場合、すなわち、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20に収容されていない場合には(ステップS10のNO)、当該処理を終了する。
【0038】
一方、第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rと第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lとが近接対向している場合、すなわち、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20に収容されている場合には(ステップS10のYES)、第1赤外線温度センサ56Rが収納されているプローブ13Rの先端14Rにおける温度と、第2赤外線温度センサ56Lが収納されているプローブ13Lの先端14Lにおける温度とが安定するまで、所定時間(例えば、数十秒)、待機する(ステップS12)。これは、収容される直前までユーザの体温を計測していたため、収容ケース20に収容された直後は、プローブ13Rの温度及びプローブ13Lの温度は比較的高く、徐々に収容ケース20の内部温度(室温)まで低下し、所定時間後、一定の温度(環境温度)で安定するためである。
【0039】
所定時間経過後、すなわちプローブ13Rの温度及びプローブ13Lの温度が安定すると、プロセッサ71は、第1赤外線温度センサ56Rにより測定された表面温度T1と第2赤外線温度センサ56Lにより測定された表面温度T2とを取得する(ステップS14)。このとき、第1赤外線温度センサ56Rは、対向している第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lの表面温度T1を測定しており、第2赤外線温度センサ56Lは、対向している第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rの表面温度T2を測定している。
【0040】
次に、プロセッサ71は、第1赤外線温度センサ56Rにより測定された表面温度T1と第2赤外線温度センサ56Lにより測定された表面温度T2との温度差(T1-T2)が所定の基準範囲内であるか否かを判断する(ステップS16)。上述したように、プローブ13Rの温度とプローブ13Lの温度とが安定した状態で、第1赤外線温度センサ56R及び第2赤外線温度センサ56Lのどちらにも異常がなければ、大きな温度差になることはない。一方、どちらか、あるいは双方に異常があれば、比較的大きな温度差となる。そして、温度差(T1-T2)が所定の基準範囲内である場合には(ステップS16のYES)、プロセッサ71は、異常なしと判定し(ステップS18)、当該処理を終了する。
【0041】
一方、第1赤外線温度センサ56Rにより測定された表面温度T1と第2赤外線温度センサ56Lにより測定された表面温度T2との温度差(T1-T2)が所定の基準範囲内でない場合には(ステップS16のNO)、プロセッサ71は、第1赤外線温度センサ56R及び/又は第2赤外線温度センサ56Lに異常があると判定し、以下の処理でどちらの赤外線温度センサに異常があるかを判定する。
【0042】
プロセッサ71は、第1サーミスタ23Rにより測定された第1赤外線温度センサ56Rの温度TH1と第2サーミスタ23Lにより測定された第2赤外線温度センサ56Lの温度TH2とを取得し保存する(ステップS20)。次に、プロセッサ71は、温度TH1、TH2とそれぞれの3秒前の値との差分が所定の範囲にあるか否かを判断する(ステップS22)。収容ケース20では、上述したように、適宜、バッテリ75が充電されており、充電の有無によって収容ケース20の内部温度が場所によって異なっている可能性がある。あるいは、例えば、収容ケース20が25℃の室温環境にある場合、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lを使用後に収容ケース20に戻すと、ユーザの体温まで温められた第1計測装置11R及び第2計測装置11Lの方が温度が高いため、熱が伝わって第1サーミスタ23R、第2サーミスタ23Lにより測定される温度が上昇する。そのあと、徐々に室温環境まで下がって平衡状態となる。平衡状態になるまでの時間は、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lの収容時の温度、収容ケース20の温度にも依るが、一定時間を要する。ゆえに、第1サーミスタ23Rにより測定された第1赤外線温度センサ56Rの温度TH1と第2サーミスタ23Lにより測定された第2赤外線温度センサ56Lの温度TH2との差分が所定の範囲にあるか否かを判断することで、収容ケース20自体の温度が安定したか否かを判断している。
【0043】
そして、温度TH1、TH2とそれぞれの3秒前の値との差分が所定の範囲にない場合、すなわちまだ平衡状態になっていない場合には(ステップS22のNO)、ステップS20に戻り、温度TH1、TH2とそれぞれの3秒前の値との差分が所定の範囲になるまで上述した処理を繰り返す。なお、上述したステップを所定時間繰り返しても、温度TH1、TH2とそれぞれの3秒前の値との差分が所定の範囲にならなければ、センサ異常判定を行わず、当該処理終了してもよい。これにより、センサ異常判定のエラーを防ぐことができる。
【0044】
一方、第1サーミスタ23R、第2サーミスタ23Lにより測定された温度TH1、TH2とそれぞれの3秒前の値との差分が所定の範囲にある場合、すなわち平衡状態になった場合には(ステップS22のYES)、プロセッサ71は、第1赤外線温度センサ56Rにより測定された第2赤外線温度センサ56Lの表面温度T1と第2サーミスタ23Lにより測定された第2赤外線温度センサ56Lの温度TH2との差分を取得し(ステップS24)、温度差(T1-TH2)が所定の範囲にあるか否かを判断する(ステップS26)。
【0045】
すなわち、平衡状態では、第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56R、第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56L、並びに第1サーミスタ23R、第2サーミスタ23Lは同一温度の環境下にある。ゆえに、仮に、第1赤外線温度センサ56Rに異常がなければ、温度差(T1-TH2)は、所定の範囲に収まり、第1赤外線温度センサ56Rに異常があれば、温度差(T1-TH2)は、所定の範囲に収まらない(温度差が大きくなる)。
【0046】
そして、第1赤外線温度センサ56Rにより測定された第2赤外線温度センサ56Lの表面温度T1と第2サーミスタ23Lにより測定された第2赤外線温度センサ56Lの温度TH2との温度差(T1-TH2)が所定の範囲にある場合には(ステップS26のYES)、プロセッサ71は、第1赤外線温度センサ56Rには異常がないと判定する(ステップS28)。一方、温度差(T1-TH2)が所定の範囲にない場合、すなわち温度差(T1-TH2)が大きい場合には(ステップS26のNO)、第1赤外線温度センサ56Rに異常があると判定する(ステップS30)。この場合、プロセッサ71は、収容ケース20の側面に設けられているLED24Rを赤色点滅させることで、第1赤外線温度センサ56Rに異常があることをユーザに通知する。ユーザは、プローブ13Rの先端14Rの汚れを確認し、汚れている場合は清掃して、収容ケース20に再び収容する。プロセッサ71は、上述したセンサ異常判定を再度行う。それでも異常判定となる場合には、表示される温度に誤差があると考えられるので、ユーザは、使用中止(修理依頼)の判断ができる。
【0047】
異常なし、又は異常ありの何れの場合も、次に、プロセッサ71は、第2赤外線温度センサ56Lにより測定された第1赤外線温度センサ56Rの表面温度T2と第1サーミスタ23Rにより測定された第1赤外線温度センサ56Rの温度TH1との差分を取得し(ステップS32)、温度差(T2-TH1)が所定の範囲にあるか否かを判断する(ステップS34)。そして、温度差(T2-TH1)が所定の範囲にある場合には(ステップS34のYES)、プロセッサ71は、第2赤外線温度センサ56Lには異常がないと判定する(ステップS36)。その後、当該処理を終了する。
【0048】
一方、第2赤外線温度センサ56Lにより測定された第1赤外線温度センサ56Rの表面温度T2と第1サーミスタ23Rにより測定された第1赤外線温度センサ56Rの温度TH1との温度差(T2-TH1)が所定の範囲にない場合、すなわち温度差(T2-TH1)が大きい場合には(ステップS34のNO)、第2赤外線温度センサ56Lに異常があると判定する(ステップS38)。この場合、プロセッサ71は、収容ケース20の側面に設けられているLED24Lを赤色点滅させることで、第2赤外線温度センサ56Lに異常があることをユーザに通知する。その後、当該処理を終了する。ユーザは、プローブ13Lの先端14Lの汚れを確認し、汚れている場合は清掃して、収容ケース20に再び収容する。プロセッサ71は、上述したセンサ異常判定を再度行う。それでも異常判定となる場合には、表示される温度に誤差があると考えられるので、ユーザは、使用中止(修理依頼)の判断ができる。
【0049】
上述した本実施形態によれば、第1計測装置11Rと第2計測装置11Lとが収容ケース20に収容されると、第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rにより第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lの表面温度を測定し、第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lにより第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rの表面温度を測定し、表面温度の温度差が所定の基準範囲にあるか否かを判断するようにしたので、右側の第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56R及び/又は左側の第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lに異常があるか否かを容易に確認することができる。ゆえに、ユーザは、常に良い状態で耳式体温計10を使用することができる。
【0050】
上述した本実施形態によれば、収容ケース20内の、近接対向させて収納した第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56Rの近傍に第1サーミスタ23Rを配設し、第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lの近傍に第2サーミスタ23Lを配設し、第1赤外線温度センサ56Rにより測定した第2赤外線温度センサ56Lの表面温度T1と第2サーミスタ23Lにより測定した第2赤外線温度センサ56Lの温度TH2との温度差、あるいは、第2赤外線温度センサ56Lにより測定した第1赤外線温度センサ56Rの表面温度T2と第1サーミスタ23Rにより測定した第1赤外線温度センサ56Rの温度TH1との温度差が所定の範囲にあるか否かを判断することによって異常の有無を判定するようにしたので、右側の第1計測装置11Rの第1赤外線温度センサ56R又は左側の第2計測装置11Lの第2赤外線温度センサ56Lのどちらに異常があったかを容易に確認することができる。
【0051】
C.第1変形例
図9は、本実施形態による収容ケース20の第1変形例を示す模式図である。本実施形態において、重要なポイントは、第1赤外線温度センサ56Rと第2赤外線温度センサ56Lとが同じ温度(所定の基準範囲内)になっていることである。加熱装置なしに、温度を安定させるため、
図9に示すように、プローブ13R、13Lの先端14R、14Lが対向している状態で、その周囲を囲むように、銅、アルミなどの熱伝導性の高い素材として、高熱伝導材料90、91を配設する。このような構成とすることで、第1赤外線温度センサ56R自体の温度と第2赤外線温度センサ56L自体の温度、及び第1サーミスタ23R自体の温度と第2サーミスタ23L自体の温度が平衡状態になる時間を短縮することができる。
【0052】
D.第2変形例
図10は、本実施形態による収容ケース20の第2変形例を示す模式図である。第1変形例と同様の理由から、第1赤外線温度センサ56Rのプローブ13Rと第2赤外線温度センサ56Lのプローブ13Lとの間に銅、アルミなどの熱伝導性の高い素材として高熱伝導材料93を配設するようにしてもよい。この場合、高熱伝導材料93には黒体スプレーを塗布するなどの、放射率の調整が必要である。また、黒体スプレーであれば、放射率0.94以上のものが好ましい。このような構成とすることで、第1赤外線温度センサ56R自体の温度と第2赤外線温度センサ56L自体の温度とが平衡状態になる時間を短縮することができる。
【0053】
なお、上述した実施形態では、収容ケース20に設けられたLED24R、24Lにより異常があったことを表示するようにしたが、これ限らず、収容ケース20に液晶表示器を設け、液晶表示器に文字等で表示するようにしてもよい。あるいは、外部機器(スマートフォン等)と無線接続が確立していれば、外部機器に対して異常があったことを通知するようにしてもよい。
【0054】
また、上述した実施形態では、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lを収容ケース20に収容した後、第1赤外線温度センサ56R、第2赤外線温度センサ56Lに異常があるか否かを判定したが、これに限らず、ユーザが使用開始時に収容ケース20の蓋部21bを開けたことをトリガーにして、第1赤外線温度センサ56R及び第2赤外線温度センサ56Lに異常があるか否かを判定する処理を実行してもよい。この場合、ユーザは使用直前に異常があるか否かを確認することができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20に収納されると、プローブ13Rの先端14Rとプローブ13Lの14Lが近接するようになっていたが、これに限らず、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20に収納された際に、プローブ13Rの先端14Rとプローブ13Lの14Lが当接するような構造(第1計測装置11R及び第2計測装置11Lの形状及び/又は本体部21aの凹部22の形状)となっていてもよい。互いに当接することにより、熱の受け渡しが起こりやすくなり、より早く平衡状態に移行でき、異常検知動作の実行開始までの時間を短縮することができる。
【0056】
また、上述した実施形態では、異常を収容ケース20に設けられたLED24R、24Lにて報知したが、これに限らず、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lを耳に装着したときに、音声で異常を報知するようにしてもよい。
【0057】
また、上述した実施形態において、収容ケース20が加速度センサを備えており、加速度センサの検出値に応じて、第1計測装置11Rと第2計測装置11Lに温度の計測(異常検知動作)を開始させるようにしてもよい。これより収容ケース20の蓋部21bを開けなくても、ユーザが耳式体温計を使う前の適切なタイミングで異常を報知することができる。
【0058】
上述した本実施形態によれば、プロセッサ71は、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lが収容ケース20に収容されてから所定時間経過後に、第1赤外線温度センサ56Rと第2赤外線温度センサ56Lとによる温度計測を開始するようにしたので、プローブ13Rの先端14Rの温度及びプローブ13Lの先端14Lの温度が安定した後に温度計測が開始されるため、第1赤外線温度センサ56Rの表面温度、及び第2赤外線温度センサ56Lの表面温度をより正確に測定することができ、異常有無を誤判定することを防止することができる。
【0059】
上述した本実施形態によれば、プロセッサ71は、第1サーミスタ23Rによって計測された第1赤外線温度センサ56Rの温度及び第2サーミスタ23Lによって計測された第2赤外線温度センサ56Lの温度と所定時間前のそれぞれの温度との差分が所定範囲内であると判定されると、第1赤外線温度センサ56Rと第2赤外線温度センサ56Lとの異常検知動作を開始するようにしたので、収容ケース20自体の温度が安定した状態で異常検知ができ、異常有無を誤判定することを防止することができる。
【0060】
上述した本実施形態によれば、第1計測装置11Rのバッテリ54R及び第2計測装置11Lのバッテリ54Lと、第1赤外線温度センサ56R及び第2赤外線温度センサ56Lとを離して配設するようにしたので、バッテリ54R、54Lの温度変化による温度の誤測定を防止することができる。
【0061】
上述した本実施形態によれば、第1計測装置11R及び第2計測装置11Lの各々に、無線通信回線を介して音声信号を受信し、受信した音声信号を音声に変換して出力するようにしたので、音声を聴取しつつ、ユーザの体温を継続的に測定することができる。
【0062】
上述した本実施形態によれば、第1計測装置11Rのプローブ13Rを一方の耳穴に挿入し、第2計測装置11Lのプローブ13Lを他方の耳穴に挿入することで、音声を聴取しつつ、ユーザの体温を継続的に測定することができる。
【符号の説明】
【0063】
10…耳式体温計、11R…第1計測装置、11L…第2計測装置、12R、12L…本体部、13R、13L…プローブ、14R、14L…先端、16R…開口部、20…収容ケース、21a…本体部、21b…蓋部、22…凹部、23R…第1サーミスタ、23L…第2サーミスタ、24R、24L、25…LED、50R、50L…制御回路、51R、51L…プロセッサ、53R、52L…メモリ、53R、53L…通信部、54R、54L…バッテリ、56R…第1赤外線温度センサ、56L…第2赤外線温度センサ、57R、57L…アンプ、58R、58L…ADコンバータ、60R、60L…DAコンバータ、61R、61L…鳴動駆動回路、62R、62L…鳴動部、63R…操作部、70…制御回路、71…プロセッサ、72…メモリ、73…通信部、74…充電制御部、75…バッテリ、76R、76L…アンプ、77R、77L…ADコンバータ、90、91…高熱伝導材料