(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053291
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】点検用モジュールおよびこれを備えた生体試料分析システム、生体試料分析装置の点検方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20240408BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20240408BHJP
C12M 1/00 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
G01N27/26 391Z
G01N27/416 300M
C12M1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159442
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129012
【弁理士】
【氏名又は名称】元山 雅史
(72)【発明者】
【氏名】山本 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 浩二
(72)【発明者】
【氏名】池谷 生一郎
(72)【発明者】
【氏名】平塚 隆繁
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 英式
(72)【発明者】
【氏名】中前 賢太
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB01
4B029CC01
4B029FA15
(57)【要約】
【課題】生体試料の各種測定を実施する測定装置における異常の発生を容易に検知することが可能な点検用モジュールを提供する。
【解決手段】点検用モジュール10は、細胞培養分析装置30にセットされた状態で電圧が印加されることで細胞培養分析装置30に含まれる測定回路の点検を実施するモジュールであって、基板11、電極部14、抵抗部15を備える。基板11は、第1面11aと第1面11aとは反対側の第2面11bとを有する。電極部14は、基板11に設けられ、細胞培養分析装置30に設けられたコンタクトプローブ32aと当接し所定の電圧が印加される。抵抗部15は、基板11に設けられ、電極部14と電気的に接続され、正常状態においてコンタクトプローブ32aから所定の電圧が印加されると所定の範囲の電流値を生じさせる抵抗値を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料分析装置にセットされた状態で電圧が印加されることで前記生体試料分析装置に含まれる測定回路の点検を実施する点検用モジュールであって、
第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する基板と、
前記基板に設けられており、前記生体試料分析装置に設けられた電圧印加部と当接し、前記電圧印加部から所定の電圧が印加される電極部と、
前記基板に設けられており、前記電極部と電気的に接続され、正常状態において前記電圧印加部から前記所定の電圧が印加されると所定の範囲の電流値を生じさせる抵抗値を有する抵抗部と、
を備えている点検用モジュール。
【請求項2】
前記電極部は、前記基板の前記第1面に配置されており、
前記抵抗部は、前記基板の前記第2面に配置されている、
請求項1に記載の点検用モジュール。
【請求項3】
前記抵抗部は、3つ設けられている、
請求項1または2に記載の点検用モジュール。
【請求項4】
前記基板には、1つの測定対象に対して用意された前記電極部および前記抵抗部を1組として、複数組の前記電極部および前記抵抗部が配置されている、
請求項1または2に記載の点検用モジュール。
【請求項5】
請求項1または2に記載の点検用モジュールと、
前記点検用モジュールの前記電極部に対して当接した状態で所定の電圧を印加する電圧印加部と、
前記点検用モジュールの前記抵抗部に流れる電流を測定する測定装置と、
前記測定装置における測定結果が所定の範囲内であるか否かに応じて、正常であるか否かを判定する制御装置と、
を備えた生体試料分析システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記測定装置における測定結果が所定の範囲外である場合には、接続不良、あるいは測定回路の異常があると判定する、
請求項5に記載の生体試料分析システム。
【請求項7】
請求項1または2に記載の点検用モジュールを用いた生体試料分析装置の点検方法であって、
前記点検用モジュールを前記生体試料分析装置にセットするステップと、
前記点検用モジュールの前記電極部に所定の電圧を印加するステップと、
前記点検用モジュールの前記抵抗部を流れる電流を測定するステップと、
前記電流の値が所定の範囲内であるか否かに応じて、前記生体試料分析装置に含まれる測定回路が正常であるか否かを判定するステップと、
を備えた点検方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体試料分析装置の点検を行う点検用モジュールおよびこれを備えた生体試料分析システム、生体試料分析装置の点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞培養等の分野において、生体試料の測定を実施する測定装置が広く用いられている。
例えば、特許文献1には、例えば、血液中の血糖、コレステロールなどを選択的に定量分析することができる電気化学的バイオセンサーテストストリップ及びこのテストストリップを利用する電気化学的バイオセンサー測定器について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電気化学的バイオセンサーテストストリップでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された電気化学的バイオセンサーテストストリップでは、固定された試薬がどの物質の定量分析のためのものかを示す認識電極を備えており、血糖、コレステロール、GOT、GPT等の様々な血中成分を一つの測定器を用いて定量的に分析することができる。しかし、このテストストリップでは、測定器において接続不良、断線、ICの故障等の測定回路の異常が生じている場合でも、使用者がそれに気付かずに使用してしまい、測定結果を得られない、あるいは誤った測定結果を得てしまうおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、生体試料の各種測定を実施する測定装置における異常の発生を容易に検知することが可能な点検用モジュールおよびこれを備えた生体試料分析装置、生体試料分析装置の点検方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る点検用モジュールは、生体試料分析装置にセットされた状態で電圧が印加されることで生体試料分析装置に含まれる測定回路の点検を実施する点検用モジュールであって、基板と、電極部と、抵抗部と、を備えている。基板は、第1面と第1面とは反対側の第2面とを有する。電極部は、基板に設けられており、生体試料分析装置に設けられた電圧印加部と当接し、電圧印加部から所定の電圧が印加される。抵抗部は、基板に設けられており、電極部と電気的に接続され、正常状態において電圧印加部から所定の電圧が印加されると所定の範囲の電流値を生じさせる抵抗値を有する。
【0007】
ここでは、通常、生体試料の測定を行うセンサを取り付けた状態で実施されていた生体試料分析装置の測定回路の点検を実施するために、電極部と抵抗部とが基板上に設けられた点検用モジュールを用いる。
ここで、抵抗部は、電極部に対して所定の電圧が印加された際に、所定の電流値を生じさせる抵抗値を有する抵抗であって、抵抗部に流れる電流値を測定することで、生体試料分析装置の測定回路の電気的な接続不良の有無、測定回路の不具合の有無等の点検を実施することができる。
【0008】
これにより、生体試料の測定を行うセンサを用いた点検と比較して、電気化学方式のセンサのように培地等の液体を準備する必要がなく、取り扱いが容易になる。また、センサのように、個体差に起因する測定精度のバラツキがなく、高精度な点検を実施することができる。さらに、センサを用いた点検と比較して、例えば、測定時に酵素の反応時間を確保する必要がないため、応答速度を大幅に向上させて点検を効率よく実施することができる。
この結果、生体試料の各種測定を実施する測定装置における異常の発生を容易に検知することができる。
【0009】
第2の発明に係る点検用モジュールは、第1の発明に係る点検用モジュールであって、電極部は、基板の第1面に配置されており、抵抗部は、基板の第2面に配置されている。
これにより、基板上に配置された際に凹凸を生じさせる抵抗部を、電極部とは反対側の第2面に配置させることで、電極部が設けられた第1面の清掃を容易に行うことができる。
【0010】
第3の発明に係る点検用モジュールは、第1または第2の発明に係る点検用モジュールであって、抵抗部は3つ設けられている。
これにより、センサを用いた測定時とほぼ同等の状態で、点検を実施することができる。
【0011】
第4の発明に係る点検用モジュールは、第1または第2の発明に係る点検用モジュールであって、基板には、1つの測定対象に対して用意された電極部および抵抗部を1組として、複数組の電極部および抵抗部が配置されている。
これにより、複数のセンサを用いて同時に測定を行う生体試料分析装置の点検を、1つの点検用モジュールを用いて実施することができる。
【0012】
第5の発明に係る生体試料分析システムは、第1または第2の発明に係る点検用モジュールと、点検用モジュールの電極部に対して当接した状態で所定の電圧を印加する電圧印加部と、点検用モジュールの抵抗部に流れる電流を測定する測定装置と、測定装置における測定結果が所定の範囲内であるか否かに応じて、正常であるか否かを判定する制御装置と、を備えている。
これにより、生体試料の各種測定を実施する測定装置における異常の発生を容易に検知することができるシステムを構築することができる。
【0013】
第6の発明に係る生体試料分析システムは、第5の発明に係る生体試料分析システムであって、制御装置は、測定装置における測定結果が所定の範囲外である場合には、接続不良、あるいは測定回路の異常があると判定する。
これにより、抵抗部を流れる電流値が所定の範囲内であるか否かに応じて、接続不要あるいは測定回路の異常の有無を検知することができる。
【0014】
第7の発明に係る点検用モジュールは、第1または第2の発明に係る点検用モジュールを用いた生体試料分析装置の点検方法であって、点検用モジュールを生体試料分析装置にセットするステップと、点検用モジュールの電極部に所定の電圧を印加するステップと、点検用モジュールの抵抗部を流れる電流を測定するステップと、電流の値が所定の範囲内であるか否かに応じて、生体試料分析装置に含まれる測定回路が正常であるか否かを判定するステップと、を備えている。
【0015】
これにより、生体試料の測定を行うセンサを用いた点検と比較して、電気化学方式のセンサのように培地等の液体を準備する必要がなく、取り扱いが容易になる。また、センサのように、個体差に起因する測定精度のバラツキがなく、高精度な点検を実施することができる。さらに、センサを用いた点検と比較して、例えば、測定時に酵素の反応時間を確保する必要がないため、応答速度を大幅に向上させて点検を効率よく実施することができる。
この結果、生体試料の各種測定を実施する測定装置における異常の発生を容易に検知することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る点検用モジュールによれば、生体試料の各種測定を実施する測定装置における異常の発生を容易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る点検用モジュールがアダプタ上にセットされる状態を示す斜視図。
【
図2】(a),(b),(c)は、
図1の点検用モジュールの構成を示す上面図、裏面図、側面図。
【
図4】
図1のアダプタの下部に設けられた培養容器の構成を示す平面図。
【
図5】
図1の点検用モジュールを含む構成を細胞培養分析装置内に装填する際の状態を示す斜視図。
【
図6】
図5の細胞培養分析装置内にセットされた点検用モジュールと細胞培養分析装置のコンタクトプローブとの接続関係を示す断面図。
【
図7】
図1の点検用モジュールの代わりに、センサモジュールがアダプタ上にセットされる状態を示す斜視図。
【
図8】
図7のセンサモジュールを含む構成を細胞培養分析装置内に装填する際の状態を示す斜視図。
【
図9】
図5の細胞培養分析装置内にセットされたセンサモジュールと細胞培養分析装置のコンタクトプローブとの接続関係を示す断面図。
【
図10】
図1の点検用モジュールがセットされた細胞培養分析装置の電気回路図。
【
図11】
図10の電気回路図に含まれるAFEの内部構成を詳細に示した回路図。
【
図12】
図1の点検用モジュールを用いた細胞培養分析装置の点検方法の処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る点検用モジュール10およびこれを備えた細胞培養分析システム(生体試料分析システム)1について、
図1~
図12を用いて説明すれば以下の通りである。
なお、本実施形態では、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0019】
また、出願人は、当業者が本発明を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
本実施形態の細胞培養分析システム(生体試料分析システム)1は、点検用モジュール10と、点検用モジュール10の電極部14に対して当接した状態で所定の電圧を印加するコンタクトプローブ(電圧印加部)32aと、点検用モジュール10の抵抗部15に流れる電流を測定するCPU(測定装置)34と、CPU34における測定結果が所定の範囲内であるか否かに応じて、正常であるか否かを判定するPC(制御装置)37と、を備えている(
図11参照)。
【0020】
本実施形態に係る点検用モジュール10は、細胞培養分析システム1に含まれ、細胞培養分析装置(生体試料分析装置)30(
図5参照)にセットされた状態で電圧が印加されることで細胞培養分析装置30に含まれる測定回路の点検を実施する。点検用モジュール10は、
図1に示すように、培地Xに含まれるグルコース等の濃度を測定するセンサ基板50(
図7等参照)の代わりに、アダプタ20の本体部20aの上面にセットされた状態で、後述する細胞培養分析装置30(
図5参照)内に装填される。点検用モジュール10は、
図2(a)~
図2(c)および
図3に示すように、基板11と、ネジ12と、脚部13と、電極部14と、抵抗部15と、プレート部材16と、を備えている。
【0021】
基板11は、
図2(a)~
図2(c)に示すように、略長方形の板状の部材であって、
図1に示すアダプタ20の本体部20aの上にセットされた状態において上面に当たる第1面11aと、第1面11aとは反対側の第2面11bとを有している。
第1面11aは、
図2(a)に示すように、表面に複数の電極部14が設けられている。
【0022】
第2面11bは、
図2(b)に示すように、表面に複数の抵抗部15が設けられている。そして、第2面11b上に配置された複数の抵抗部15は、
図2(c)に示すように、第2面11bの表面から突出している。
ネジ12は、
図3に示すように、略四角形の基板11の4つの角にそれぞれ設けられた貫通穴に挿入され、後述するプレート部材16の4つの角部に設けられたネジ穴に螺合する。これにより、基板11がプレート部材16に対して固定される。
【0023】
脚部13は、後述する略四角形のプレート部材16の4つの角にそれぞれ下向きに突出するように設けられている。脚部13は、
図1に示すように、アダプタ20の本体部20aの4つの角部に設けられた位置決め穴20cの挿入されることで、培養容器25の各ウェル25aに対する点検用モジュール10の位置決めが行われる。
電極部14は、後述する細胞培養分析装置30のコンタクトプローブ(電圧印加部)32aが当接して所定の電圧が印加されることで、細胞培養分析装置30の測定回路の接続不良や不具合の有無を検知する。また、電極部14は、4つの電極部14を1セットとして(
図5参照)、後述する培養容器25に含まれる1つのウェル25a(
図4参照)に対応している。本実施形態では、24個のウェル25aに対して、電極部14は、基板11の第1面11a上に24セット(4×24=96個)設けられている。
【0024】
抵抗部15は、電極部14と電気的に接続されており、電極部14に所定の電圧が印加されると、細胞培養分析装置30の測定回路が正常であれば、所定の範囲の電流が流れる抵抗値を有している。抵抗部15は、
図2(b)に示すように、3つを1セットとして、後述する培養容器25に含まれる1つのウェル25a(
図4参照)に対応している。本実施形態では、24個のウェル25aに対して、抵抗部15は、基板11の第2面11b上に24セット(3×24=72個)設けられている。
【0025】
プレート部材16は、
図2(a)~
図2(c)に示す基板11が上面に重ねられた状態で、4つのネジ12を用いて固定される板状の部材であって、上述した脚部13が4つの角部に設けられている。プレート部材16は、
図3に示すように、本体部16aと、複数の溝部16bとを有している。
本体部16aは、略長方形の板状部材であって、基板11の第2面11bの表面から突出するように配置された複数の抵抗部15に対向する位置に、複数の溝部16bが形成されている。
【0026】
溝部16bは、略長方形の本体部16aの長手方向に略平行に形成された凹部であって、基板11とプレート部材16とが重ね合わされた状態で、抵抗部15が配置される。
これにより、抵抗部15の出っ張りを、プレート部材16の溝部16bによって吸収することができる。
培養容器25は、
図4に示すように、縦4列横6列の計24個のウェル25aを含むように構成されている。培養容器25は、
図1に示すように、アダプタ20とベース部材23との間に配置されている。
【0027】
本実施形態の点検用モジュール10を用いて点検が行われる細胞培養分析装置30は、
図5に示すように、筐体部30aと、引き出し部31とを有している。
引き出し部31は、筐体部30aに対して進退することで、筐体部30aの内部空間S1内に、
図1に示すアダプタ20上にセットされた点検用モジュール10が装填される。
細胞培養分析装置30の筐体部30aの内部空間S1内に装填された点検用モジュール10は、細胞培養分析装置30のコンタクトプローブ32aが各電極部14に対して当接した状態で、点検用の所定の電圧が印加されることで、細胞培養分析装置30の測定回路の不具合の有無を点検することができる。
【0028】
ここで、本実施形態では、点検用に設けられた4つで1セットの電極部14に対して当接させるコンタクトプローブ32a以外に、点検用モジュール10あるいはセンサ基板50のセットを検知するための2本のコンタクトプローブ32bが設けられている。
コンタクトプローブ32bは、
図2(a)に示す2つの検知電極14aに対応する位置に設けられている。コンタクトプローブ32bは、
図6に示すように、検知電極14aに対して当接した状態で、2本のうちの一方から電圧を印加することで、点検用モジュール10あるいはセンサ基板50が細胞培養分析装置30の筐体部30a内に装填されているか否かを検知することができる。
【0029】
なお、
図6に示す状態では、点検用モジュール10がセットされ、細胞培養分析装置30の測定回路の点検を実施するため、培養容器25のウェル25aに培地Xが入れられている必要はない。
これにより、
図7に示す測定用のセンサ基板50をセットした状態で細胞培養分析装置30の測定回路の点検を実施する場合と比較して、培地Xを用意する必要がなく、点検時における取り扱いが容易になる。また、センサ基板50を用いた場合と比較して、センサ51の個体差に起因する測定精度のバラツキがなく、高精度な点検を実施することができる。さらに、センサ51を用いた点検と比較して、例えば、測定時に酵素の反応時間を確保する必要がないため、応答速度を大幅に向上させて点検を効率よく実施することができる。
【0030】
この結果、細胞培養分析装置30の測定回路の異常の発生を容易に検知することができる。
そして、点検用モジュール10を用いて点検が行われた結果、細胞培養分析装置30の測定回路に異常がないと判定されると、培養容器25の各ウェル25aに培地Xが入れられた状態で、
図7に示すように、センサ基板50がアダプタ20上にセットされる。
【0031】
センサ基板50は、
図7に示すように、本体部50aにおける培養容器25の24個のウェル25aに対応する位置にそれぞれ1つずつ配置された24個のセンサ51を含む。
センサ51は、
図7に示すように、本体部50aの下面側から、測定電極(電極53a,53b,53c,53d)が下向きに突出している。また、センサ51は、基板52が略L字型に折り曲げられた状態で、センサ基板50に保持されている(
図9参照)。
【0032】
電極53a~53dは、センサ51の基板52における先端部に設けられており、上述した培養容器25の各ウェル25aに入れられた培地Xに浸漬された状態で各種測定が行われる。
すなわち、センサ基板50は、
図7に示すように、センサ51の電極53a~53d側が下向きに突出した状態でアダプタ20の上面にセットされると、センサ基板50の4つの脚部50bがそれぞれアダプタ20側の4つの位置決め穴20cに挿入されることで、センサ基板50の培養容器25に対する位置決めが行われる。
【0033】
このとき、下向きに突出したセンサ51の先端部分は、アダプタ20の本体部20aに形成された貫通孔20bを通過して、アダプタ20の下方に設けられた培養容器25のウェル25aに入れられた培地Xに浸漬される。
アダプタ20の上面にセットされたセンサ基板50は、
図8に示すように、細胞培養分析装置30の引き出し部31を引き出した状態でセットされ、引き出し部31が筐体部30a内に退避することで、細胞培養分析装置30の筐体部30aの内部空間S1内に装填される。
【0034】
このとき、センサ基板50の上面には、
図8に示すように、4つで1セットとなる電極パッド54a,54b,54c,54dが設けられている。
電極パッド54a~54dは、基板52の下端側に設けられた電極53a~53dに電気的に接続された状態で基板52の上端側に設けられており、センサ基板50の上面において露出している。そして、電極パッド54a~54dは、
図9に示すように、細胞培養分析装置30内にセンサ基板50が装填されると、コンタクトプローブ32aが当接して、測定用の所定の電圧が印加される。
【0035】
これにより、培養容器25の各ウェル25aに入れられた培地Xに浸漬された状態のセンサ51の測定電極(電極53a~53d)において検出される電流値によって、培地Xに含まれる各種成分の濃度等を測定することができる。
ここで、本実施形態の点検用モジュール10は、
図10に示すように、コンタクトプローブ32aを介して所定の電圧が印加される。このとき、細胞培養分析装置30は、4つで1セットの電極部14に対してそれぞれ設けられた24個のAFE(Analog Front END)33から、各コンタクトプローブ32aに対して電圧を印加する。
【0036】
AFE(Analog Front END)33は、信号を検出するセンサ等のデバイスと、デジタル信号処理のデバイスとを結ぶアナログ回路である。
センサ等で検出されたアナログ信号は、微弱であって、雑音成分が多く含まれている場合が多い。このため、検出されたアナログ信号のままでは、A/Dコンバータでデジタル信号に変換することは難しい。そこで、AFE33は、センサ等から出力されたアナログ信号を調整するために設けられており、
図11に示すように、オペアンプ33aやA/Dコンバータ33b、D/Aコンバータ33c、フィルタ等の半導体チップを含む。
【0037】
なお、
図11では、説明の便宜上、1つのAFE33の構成を拡大して示しているが、他の23個のAFE33についても同様の構成であることは言うまでもない。
また、AFE33は、CPU(Central Processing Unit)34に接続されており、CPU(Central Processing Unit)34によって、コンタクトプローブ32a,32bから印加される電圧が制御される。
【0038】
CPU34は、24個のAFE33の制御を行うとともに、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)35に保存された各種データ・プログラム等を用いて、各種処理を実行する。
EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)35は、細胞培養分析装置30の電源を切断して記録された内容が消えない不揮発メモリの一種であって、各種データ・プログラム等を保存している。
【0039】
CPU34は、USB(Universal Serial Bus)36を介して、AFE33から出力された出力(例えば、点検用モジュール10の電極部14において検出された電流値等)をPC(Personal Computer)37へ送信する。
PC37は、USB36を介して受信した点検用モジュール10の電極部14において検出された電流値が所定の範囲内であるか否かに応じて、細胞培養分析装置30の測定回路における異常の有無を判定する。
【0040】
また、
図11に示すように、点検用モジュール10には、3つの抵抗部15が含まれている。
これにより、実際にセンサ基板50をセットして培地Xの測定を実施した場合とほぼ同等の状態で、点検用モジュール10を用いた点検を実施することができる。
【0041】
<点検用モジュール10を用いた点検方法>
本実施形態の点検用モジュール10を用いた細胞培養分析装置30の点検方法について、
図12のフローチャートを用いて説明すれば以下の通りである。
すなわち、
図12に示すように、ステップS11では、細胞培養分析装置30の電源がONされる。
次に、ステップS12では、点検用モジュール10が細胞培養分析装置30にセットされる。
次に、ステップS13では、細胞培養分析装置30の各AFE33に含まれるオペアンプ33aがONされる。
【0042】
次に、ステップS14では、AFE33のオペアンプ33aから、点検用モジュール10の抵抗部15に対して所定の電圧が印加される。
次に、ステップS15では、抵抗部15に所定の電圧が印加された状態で検出された電流値を測定する。電流値に相当する信号は、コンタクトプローブ32aを介してAFE33に入力され、アナログ信号からデジタル信号へ変換された後、CPU34を介して、PC37へ送信される。
【0043】
次に、ステップS16では、PC37が、検出されたん電流値が所定の範囲内であるか否かを判定する。ここで、所定の範囲内であると判定されると、ステップS17へ進み、所定の範囲内にないと判定されると、ステップS18へ進む。
次に、ステップS17では、ステップS16において、検出された電流値が所定の範囲内であると判定されたため、細胞培養分析装置30の測定回路に異常なしと判定し、PC37の表示画面にその旨を表示させる。
【0044】
一方、ステップS18では、ステップS16において、検出された電流値が所定の範囲内にないと判定されたため、細胞培養分析装置30の測定回路に電気的接続不良、ICの異常等の異常ありと判定し、PC37の表示画面にその旨を表示させる。
次に、ステップS19では、各AFE37に含まれるオペアンプ33aがOFFされる。
次に、ステップS20では、点検用モジュール10が、細胞培養分析装置30の筐体部30aから取り出される。
【0045】
<主な特徴>
本実施形態の点検用モジュール10は、
図6等に示すように、細胞培養分析装置30にセットされた状態で電圧が印加されることで細胞培養分析装置30に含まれる測定回路の点検を実施するモジュールであって、基板11、電極部14、抵抗部15を備える。基板11は、第1面11aと第1面11aとは反対側の第2面11bとを有する。電極部14は、基板11に設けられ、細胞培養分析装置30に設けられたコンタクトプローブ32aと当接し所定の電圧が印加される。抵抗部15は、基板11に設けられ、電極部14と電気的に接続され、正常状態においてコンタクトプローブ32aから所定の電圧が印加されると所定の範囲の電流値を生じさせる抵抗値を有する。
【0046】
これにより、測定用のセンサ基板50を用いて細胞培養分析装置30の測定回路の点検を実施する場合と比較して、培地Xを用意する必要がないため、点検時における手間を省くことができる。
また、点検用モジュール10を用いた場合には、抵抗部15を用いた測定であるため、センサ基板50を用いた点検と比較して、センサ51の個体差に起因する測定精度のバラツキがなく、高精度な点検を実施することができる。
【0047】
さらに、点検用モジュール10を用いた場合には、センサ51を用いた点検と比較して、例えば、測定時に酵素の反応時間を確保する必要がないため、応答速度を大幅に向上させて点検を効率よく実施することができる。
この結果、細胞培養分析装置30の測定回路の異常の発生を容易に検知することができる。
【0048】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、基板11の表面側に電極部14、裏面側に抵抗部15がそれぞれ配置された点検用モジュール10の構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、電極部と抵抗部とがそれぞれ基板の同じ側の面に設けられた構成であってもよい。
【0049】
(B)
上記実施形態では、1つの測定対象(ウェル25a)に対して抵抗部15が3つずつ配置された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、1つの測定対象に対して2つの抵抗部が設けられた点検用モジュールの構成であってもよい。あるいは、4つ以上の抵抗部が設けられた点検用モジュールの構成であってもよい。
【0050】
(C)
上記実施形態では、1つの測定対象(ウェル25a)に対して電極部14が4つずつ配置された例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、1つの測定対象に対して3つ以下の電極部が設けられた点検用モジュールの構成であってもよい。あるいは、5つ以上の電極部が設けられた点検用モジュールの構成であってもよい。
【0051】
(D)
上記実施形態では、24個のウェル25aを含む培養容器25に対してセンサ51を浸漬させて各種測定が行われるセンサ基板50の代わりに、点検用モジュール10が接続されて細胞培養分析装置30の点検が実施される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、センサ基板に含まれるセンサの数は24個に限定されるものではなく、1個のセンサを用いて各種測定が行われるセンサ基板の代わりに、本発明の点検用モジュールを用いて生体試料分析装置の点検が実施される構成であってもよい。
【0052】
(E)
上記実施形態では、本発明の点検用モジュール10を用いた点検対象となる生体試料分析装置として、細胞培養分析装置30を用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
例えば、細胞培養に関連しない他の生体試料分析装置を点検対象としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の点検用モジュールは、生体試料の各種測定を実施する測定装置における異常の発生を容易に検知することができるという効果を奏することから、各種生体試料分析装置の検査を行う装置に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 細胞培養分析システム(生体試料分析システム)
10 点検用モジュール
11 基板
11a 第1面
11b 第2面
12 ネジ
13 脚部
14 電極部
14a 検知電極
15 抵抗部
16 プレート部材
16a 本体部
16b 溝部
20 アダプタ
20a 本体部
20b 貫通孔
20c 位置決め穴
23 ベース部材
25 培養容器
25a ウェル
30 細胞培養分析装置(生体試料分析装置)
30a 筐体部
31 引き出し部
32a コンタクトプローブ(電圧印加部)
32b コンタクトプローブ
33 AFE(Analog Front END)
33a オペアンプ
33b A/Dコンバータ
33c D/Aコンバータ
34 CPU(Central Processing Unit)(測定装置)
35 EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)
36 USB(Universal Serial Bus)
37 PC(制御装置)
50 センサ基板
50a 本体部
50b 脚部
51 センサ
52 基板
53a,53b,53c,53d 電極
54a,54b,54c,54d 電極パッド
S1 内部空間
X 培地