(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053292
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】マグネットシール
(51)【国際特許分類】
C09J 7/30 20180101AFI20240408BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240408BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240408BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240408BHJP
C09J 183/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C09J7/30
C09J7/38
C09J201/00
C09J11/04
C09J183/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159445
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】井口 優香
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA10
4J004AA11
4J004AB01
4J004CA07
4J004CB03
4J004CC02
4J040DF001
4J040EK001
4J040HA136
4J040JA09
4J040JB09
4J040KA33
4J040KA42
4J040MA06
4J040MB05
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】 位置ずれや追従性の悪化を抑制し、環境に左右されずに使用することのできるマグネットシールを提供する。
【解決手段】 マグネットシール1を、粘着剤と接着剤のいずれかにより形成されるシート材2と、このシート材2に設けられて磁力を発生させる磁性材である磁性シート3とから形成し、少なくとも一部に金属を含有するコンクリート構造物等の被着対象物に貼着する。マグネットシール1に粘・接着力と磁力を付与するので、例えマグネットシール1のシート材2が養生中で適切な粘・接着力を得られない場合でも、磁性シート3の磁力によりコンクリート構造物や金属板の微妙な位置合わせを実現できる。また、シート材2が硬化するまでの間、可撓性や弾性を有するので、例え磁性シート3を使用しても、追従性が悪化するのを防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤と接着剤のいずれかにより形成されるシート材と、このシート材に設けられて磁力を発生させる磁性材とを含み、少なくとも一部に金属を含有する被着対象物に貼り着けられることを特徴とするマグネットシール。
【請求項2】
接着剤を、硬化して接着可能となる自己接着性シリコーンとし、この自己接着性シリコーンを未硬化の場合に略粘土状のシート材に形成するとともに、このシート材に磁性材として磁性シートを積層した請求項1記載のマグネットシール。
【請求項3】
接着剤を、硬化して接着可能となる自己接着性シリコーンとし、この自己接着性シリコーンを未硬化の場合に略粘土状のシート材に形成するとともに、このシート材に磁性材としてマグネット、磁性シート、及び磁性フィラーの少なくともいずれかを内蔵した請求項1記載のマグネットシール。
【請求項4】
シート材は、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の硬度がJIS K 6249Aタイプに準拠して測定したときに30以上60以下、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引張強度がJIS K 62493号ダンベルに準拠して測定したときに4.4MPa以上6.4MPa以下、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引張破断伸びがJIS K 62493号ダンベルに準拠して測定したときに600%以上900%以下、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引裂き強度がJIS K 62493アングル型切込み無しに準拠して測定したときに14N/mm以上18N/mm以下である請求項2又は3記載のマグネットシール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道や道路に代表される交通インフラ、橋梁、ビル、工場、工具、鋼製小物等に用いられるマグネットシールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば金属を内蔵した野外のコンクリート構造物に金属板を取り付けたいような場合には、図示しないが、野外のコンクリート構造物に金属板を粘着剤、接着剤、磁石のいずれかを介して取り付けるようにしている(特許文献1、2、3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014‐148813号公報
【特許文献2】特開平08‐120234号公報
【特許文献3】特開2009‐286977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、粘着剤や接着剤を使用する場合には、便利ではあるものの、適切な粘着力や接着力を得られないときには、金属板の微妙な位置合わせが困難となる。また、磁石を使用する場合には、短時間で効果が期待できるものの、追従性が悪化するという問題が生じる。さらに、磁石の磁力は、磁石の種類により周辺の温度に影響されて減磁するという特性を有している。例えば、フェライト磁石は100℃を越えると磁力が大きく低下し、ネオジウム磁石は80℃未満の環境で使用するのが一般的である。したがって、磁石の使用環境は、ある程度限られることとなる。
【0005】
本発明は上記に鑑みなされたもので、位置ずれや追従性の悪化を抑制し、環境に左右されずに使用することのできるマグネットシールを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては上記課題を解決するため、粘着剤と接着剤のいずれかにより形成されるシート材と、このシート材に設けられて磁力を発生させる磁性材とを含み、少なくとも一部に金属を含有する被着対象物に貼り着けられることを特徴としている。
【0007】
なお、接着剤を、硬化して接着可能となる自己接着性シリコーンとし、この自己接着性シリコーンを未硬化の場合に略粘土状のシート材に形成するとともに、このシート材に磁性材として磁性シートを積層することができる。
また、接着剤を、硬化して接着可能となる自己接着性シリコーンとし、この自己接着性シリコーンを未硬化の場合に略粘土状のシート材に形成するとともに、このシート材に磁性材としてマグネット、磁性シート、及び磁性フィラーの少なくともいずれかを内蔵することができる。
【0008】
また、シート材は、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の硬度がJIS K 6249Aタイプに準拠して測定したときに30以上60以下、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引張強度がJIS K 62493号ダンベルに準拠して測定したときに4.4MPa以上6.4MPa以下、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引張破断伸びがJIS K 62493号ダンベルに準拠して測定したときに600%以上900%以下、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引裂き強度がJIS K 62493アングル型切込み無しに準拠して測定したときに14N/mm以上18N/mm以下であることが好ましい。
【0009】
ここで、特許請求の範囲におけるシート材は、作業性に資するシート形、帯形、紐形等に形成することができる。このシート材は、透明、不透明、半透明を特に問うものではない。また、磁性材は、シート材の内部や外面に必要数設けることができる。被着対象物は、単数でも良いし、マグネットシールを挟み持つ複数でも良い。この被着対象物には、少なくとも各種交通インフラの金属部分、橋梁の金属部分、ビルや工場の金属部分、金属製の工具や各種配管、金属板、鋼製の各種小物等が含まれる。
【0010】
本発明によれば、マグネットシールに粘・接着力と磁力とを付与し、これらに互いの弱点を補完させるので、例えマグネットシールのシート材に適切な粘・接着力が期待できないときでも、磁力により被着対象物を簡易に位置決めすることができる。また、粘・接着力が期待できるので、例え磁性材の磁力が周辺の温度に影響されて減磁しても、磁性材の使用環境が限定されるのを防ぐことができる。また、シート材が可撓性を有するので、例え磁性材を使用しても、追従性が悪化するのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、マグネットシールの位置ずれや追従性の悪化を抑制し、環境に左右されずにマグネットシールを使用することができるという効果がある。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、自己接着性シリコーンによりシート材を形成するので、優れた接着性、耐久性、耐候性、耐熱性、柔軟性等を得ることができる。また、磁性シートがXY方向に伸びるシートなので、磁力の発生領域を拡大させることができる。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、自己接着性シリコーンによりシート材を形成するので、優れた接着性、耐久性、耐候性、耐熱性、柔軟性等を得ることが可能となる。また、シート材に磁性材としてマグネット、磁性シート、及び磁性フィラーの少なくともいずれかを内蔵するので、マグネットの錆を防いだり、マグネットシールの構成の多様化を図ることが可能となる。
【0014】
請求項4記載の発明によれば、シート材が、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の硬度がJIS K 6249Aタイプに準拠して測定したときに30以上60以下、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引張強度がJIS K 62493号ダンベルに準拠して測定したときに4.4MPa以上6.4MPa以下、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引張破断伸びがJIS K 62493号ダンベルに準拠して測定したときに600%以上900%以下、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引裂き強度がJIS K 62493アングル型切込み無しに準拠して測定したときに14N/mm以上18N/mm以下なので、養生硬化した自己接着性シリコーンからなるシート材に適切な硬度や機械的強度を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るマグネットシールの実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図2】本発明に係るマグネットシールの第2の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【
図3】本発明に係るマグネットシールの第3の実施形態を模式的に示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるマグネットシール1は、
図1に示すように、粘着剤と接着剤のいずれかにより屈曲可能に形成されるシート材2と、このシート材2に磁性材として積層される屈曲可能な磁性シート3とを二層構造に備え、少なくとも一部に金属を含有する被着対象物に貼り着けられることにより、国連サミットで採択されたSDGs(国連の持続可能な開発のための国際目標であり、17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)からなる持続可能な開発目標)の目標9の達成に貢献する。
【0017】
シート材2は、粘着剤と接着剤のいずれかの選択により表裏両面が平坦な平面帯形に形成される。このシート材2の厚さは、特に限定されるものではないが、シート材2の取り扱い性や製造の便宜を考えると、1mm以上7mm以下、好ましくは2mm以上6mm以下、より好ましくは2mm以上5mm以下が良い。
【0018】
シート材2用の粘着剤としては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル系粘着剤やセパレータに粘着層として剥離可能に積層されるシリコーン系粘着剤等があげられる。アクリル系粘着剤の製品例としては、アクリルフォーム両面テープ7840〔株式会社寺岡製作所製:製品名〕等があげられる。また、シリコーン系粘着剤の製品例としては、高透明性のx‐40 3340〔信越化学工業株式会社製:製品名〕100質量部と、CAT‐PL56T〔信越化学工業株式会社製:製品名〕0.5質量部とからなる組成物があげられる。
【0019】
シート材2用の接着剤としては、特に限定されるものではないが、セパレータに粘土状の接着層として剥離可能に積層されて硬化時に優れた接着性、柔軟性、弾性、耐久性、耐候性、耐熱性、離型性を発揮する自己接着性シリコーンが最適である。ここで、自己接着性とは、自己接着性シリコーンが配置等された部材に自らの接着力で接着又は粘着する特性をいう。この自己接着性シリコーンは、接着性を有するシリコーンゴムを含有する付加硬化型シリコーンゴム組成物、接着性を有するシリコーンゴムを含有する縮合硬化型シリコーンゴム組成物等に分類されるが、取り扱いや作業性を考慮すると、縮合硬化型シリコーンゴム組成物が好適である。
【0020】
縮合硬化型シリコーンゴム組成物は、分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有するジオルガノポリシロキサンと、加水分解性基を1分子中に2個以上有するシラン又はその部分加水分解物とを含有し、縮合反応により硬化するシリコーンゴム組成物である。具体的には、特開2004-175959号公報等に記載された硬化性定形シリコーンゴム組成物である。
【0021】
この硬化性定形シリコーンゴム組成物は、分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水酸基又は加水分解性基を有するジオルガノポリシロキサンをベースポリマーとし、加水分解性基を1分子中に2個以上有するシラン又はその部分加水分解物とを配合した縮合硬化型シリコーンゴム組成物であって、ベースポリマーであるジオルガノポリシロキサンのケイ素原子に結合する全置換基の2モル%以上が、炭素数2以上の置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、硬化前に定形に成形されて平行板可塑度計による可塑度が25℃で150~450であるシリコーンゴム組成物である。
【0022】
硬化性定形シリコーンゴム組成物には、架橋剤、硬化触媒、充填剤、チクソトロピー性付与剤、耐熱性向上剤、耐寒性向上剤、脱水剤、防錆剤、接着付与成分、液状補強剤、希釈剤等が必要に応じて添加される。このような硬化性定形シリコーンゴム組成物は、室温で湿気により縮合架橋反応が進行して硬化し、長期に亘り安定した接着力が期待できるゴム弾性体となる。この硬化性定形シリコーンゴム組成物の硬化は、例えば23℃、50%RHの環境下で3~7日で略完了する。
【0023】
硬化性定形シリコーンゴム組成物の製品例としては、湿気硬化型パテあるいは常温硬化型パテで無溶剤のポリマエース〔信越ポリマー株式会社製:製品名(登録商標)〕が該当する。ポリマエースには、テープ形のポリマエースPA、シート形のポリマエースUG、短いテープ形のポリマエースTG、可視光線をカットする黒色のポリマエースBSの種類があるが、いずれでも良い。
【0024】
自己接着性シリコーンは、一般的に知られたゴムの成形方法で成形することができ、例えば押出成形や圧縮成形、カレンダーロール等により未硬化の粘土状に成形され、帯形のセパレータ上に定形の接着層として剥離可能に積層された後、防湿袋に収納して包装される。この自己接着性シリコーンの成形は、自己接着性シリコーンが硬化しない条件、例えば低温環境で実施されるのが好ましい。自己接着性シリコーンが硬化性定形シリコーンゴム組成物の場合、大気中の水分や湿気で硬化反応が進行しないよう、低湿度環境で成形されることが好ましく、具体的には、23℃以下でかつ20%RH以下で成形されると良い。
【0025】
自己接着性シリコーンにより成形されたシート材2は、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の厚さが1mm以上6mm以下、好ましくは2mm以上5mm以下が良い。また、変形防止の観点から、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の硬度がJIS K 6249Aタイプに準拠して測定したときに30以上60以下、好ましくは40以上50以下、より好ましくは45前後が良い。また、良好な機械的強度を得る観点から、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引張強度がJIS K 62493号ダンベルに準拠して測定したときに4.4MPa以上6.4MPa以下、好ましくは4.9MPa以上5.9MPa以下、より好ましくは5.4MPa前後が良い。
【0026】
また、シート材2は、良好な機械的強度を得る観点から、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引張破断伸びがJIS K 62493号ダンベルに準拠して測定したときに600%以上900%以下、好ましくは700%以上800%以下、より好ましくは730%前後が良い。また、適切な機械的強度を得る観点から、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の引裂き強度がJIS K 62493アングル型切込み無しに準拠して測定したときに14N/mm以上18N/mm以下、好ましくは15N/mm以上17N/mm以下、より好ましくは16N/mm前後が良い。
【0027】
また、シート材2は、優れた接着力を得るため、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の対モルタル接着力が180°剥離試験(JIS Z 0237:2009、以下同じ)、幅10mmの条件で測定したときに12N以上32N以下、好ましくは22N前後が良い。また、40℃、95%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の対モルタル接着力が180°剥離試験、幅10mmの条件で測定したときに10N以上27N以下、好ましくは17N前後が良い。さらに、優れた接着力を得るため、23℃、50%RH、8日間の環境下で養生硬化した場合の対シリコーンゴム接着力が180°剥離試験、幅10mmの条件で測定したときに37N以上57N以下、好ましくは47N前後が良い。
【0028】
磁性シート3は、例えば0.5mm以上3.0mm以下の厚さに形成され、シート材2の製造時あるいは製造後にシート材2の表面に積層されて磁力を発生させるよう機能する。この磁性シート3としては、特に限定されるものではないが、例えば市販のマグネットシート、自己接着性シリコーンと多数の磁性フィラーとの組成物により平面帯形に成形されて磁力を発生させるシート材等が使用される。市販のマグネットシートの製品例としては、マグネットロール〔トラスコ中山株式会社製:製品名〕、カラーマグネットシート〔株式会社MagX製:製品名〕、マグネットシート〔株式会社キタムラ産業製:製品名〕等が該当する。
【0029】
磁力を発生させるシート材の自己接着性シリコーンとしては、上記縮合硬化型シリコーンゴム組成物、具体的には上記硬化性定形シリコーンゴム組成物があげられる。また、磁性フィラーの具体例としては、特に限定されるものではないが、例えば粒子形のネオジウム、サマリウムコバルト、フェライト、アルニコ等があげられる。これらの中では、強い磁力が期待できるネオジウムやサマリウムコバルトが好ましい。このようなシート材は、自己接着性シリコーンと磁性フィラーをニーダー等により混練して成形材料を調製し、この成形材料を押出成形機に投入してその先端部のダイから連続したシート形に押出成形したり、金型に未硬化の成形材料を充填して圧縮成形することで製造される。
【0030】
上記構成において、被着対象物、例えば金属を内蔵した野外のコンクリート構造物に金属板を取り付ける場合には、先ず、野外のコンクリート構造物の被着面を清掃し、この清掃した被着面にプライマーを塗布して1時間風乾させる。この際、コンクリート構造物の被着面が塗装されているような場合には、塗装をケレンして下地面を調整し、被着面をアルコール洗浄した後、プライマーを塗布する。プライマーとしては、高い接着性や耐久性等を実現するプライマーAQ‐1〔信越化学工業株式会社製:製品名〕の使用が好ましい。
【0031】
次いで、コンクリート構造物の被着面に防湿袋から取り出した未硬化で粘土形のシート材2を押圧しながら貼着するとともに、このシート材2の露出面に磁性シート3を押圧しながら積層して貼着し、この磁性シート3に金属板を覆着して位置決めし、シート材2を所定の期間養生硬化させれば、コンクリート構造物に金属板をマグネットシール1で強固に取り付けることができる。この際、防湿袋から取り出した未硬化のシート材2に磁性シート3を積層して貼着し、この磁性シート3の露出面に金属板を覆着して位置決めし、その後、コンクリート構造物の被着面に未硬化のシート材2を貼着して所定の期間養生硬化させても良い。養生期間は、1日、好ましくは2日、より好ましくは8日程度が良い。
【0032】
上記構成によれば、マグネットシール1に粘・接着力と磁力とを併せて付与するので、例えマグネットシール1のシート材2が養生中で適切な粘・接着力を得られない場合でも、磁性シート3の磁力の活用により適切な粘・接着力を得ることができる。また、磁力の活用により、周囲の温度変化に拘わらず、コンクリート構造物や金属板の微妙な位置合わせを実現することができる。また、シート材2が硬化するまでの間、可撓性や弾性を有するので、例え磁性シート3を使用しても、追従性が悪化するのを有効に防止することができる。
【0033】
また、シート材2の粘・接着力を増大させる必要がないので、例えばシート材2を剥離する作業の際、残存した粘着剤を除去する作業を省略することが可能となる。また、マグネットシール1に磁力の他、粘・接着力が期待できるので、例え磁性シート3の磁力が周辺の温度に影響されて減磁しても、磁性シート3の使用環境が限定されるのを阻止することが可能となる。さらに、磁性シート3がタイル形や棒形ではなく、XY方向に伸びるシートなので、磁力の発生領域の拡大が大いに期待できる。
【0034】
次に、
図2は本発明の第2の実施形態を示すもので、この場合には、接着剤を、硬化して接着可能となる自己接着性シリコーンとし、この自己接着性シリコーンを未硬化の場合に粘土状のシート材2に成形するとともに、このシート材2に磁性材として複数のタイル形のマグネット4と磁性フィラー5を内蔵するようにしている。
【0035】
自己接着性シリコーンとしては、上記縮合硬化型シリコーンゴム組成物、具体的には上記硬化性定形シリコーンゴム組成物が最適である。また、各マグネット4は、平面矩形の板でも良いが、平面円形や多角形等の板でも良い。磁性フィラー5の具体例としては、粒子形のネオジウム、サマリウムコバルト、フェライト、アルニコ等が好適である。
【0036】
このようなマグネットシール1を製造する場合には、先ず、自己接着性シリコーンに磁性フィラー5をニーダー等により混練して調製し、この未硬化の自己接着性シリコーンを金型に充填し、この充填した自己接着性シリコーンに複数のマグネット4をインサートして配列した後、金型に未硬化の自己接着性シリコーンを新たに充填して圧縮すれば、圧縮変形可能なマグネットシール1を製造することができる。
【0037】
また、別の製造方法として、自己接着性シリコーンに磁性フィラー5をニーダー等により混練して調製し、この自己接着性シリコーンを押出成形機に投入してその先端部のダイから連続したシート形に押出成形し、磁力を発生させるシート材2を製造して防湿袋に収納する。こうして磁力を発生させるシート材2を製造したら、施工現場で防湿袋から未硬化のシート材2を取り出し、この未硬化のシート材2中に複数のマグネット4を埋め込めば、マグネットシール1を製造することができる。
【0038】
上記構成において、被着対象物、例えば金属を内蔵した野外のコンクリート構造物に金属板を取り付ける場合には、先ず、野外のコンクリート構造物の被着面を清掃し、この清掃した被着面にプライマーを塗布して1時間風乾させる。この際、コンクリート構造物の被着面が塗装されているような場合には、塗装をケレンして下地面を調整し、被着面をアルコール洗浄した後、プライマーを塗布する。
【0039】
次いで、コンクリート構造物の被着面に防湿袋から取り出した未硬化のシート材2を押圧しながら貼着し、このシート材2の露出面にプライマーを塗布した金属板を覆着して位置決めし、シールト2を所定の期間養生硬化させれば、コンクリート構造物に金属板をマグネットシール1で強固に取り付けることができる。この際、防湿袋から取り出した未硬化のシート材2にプライマーを塗布した金属板を覆着して位置決めし、その後、コンクリート構造物の被着面に未硬化のシート材2を貼着して所定の期間養生硬化させても良い。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0040】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、シート材2に磁性シート3を積層して貼り着ける必要がないので、マグネットシール1の薄型化が期待できるのは明らかである。また、マグネット4を埋め込むので、マグネット4が錆びるのを有効に防止することができる。
【0041】
次に、
図3は本発明の第3の実施形態を示すもので、この場合には、接着剤を、硬化して接着可能となる自己接着性シリコーンとし、この自己接着性シリコーンを未硬化の場合に粘土状のシート材2に成形するとともに、このシート材2に磁性材として細長い複数の棒形のマグネット4を内蔵して配列するようにしている。
【0042】
このようなマグネットシール1を製造する場合には、先ず、未硬化の自己接着性シリコーンを金型に充填し、この充填した自己接着性シリコーンに棒形のマグネット4を複数インサートして配列した後、金型に未硬化の自己接着性シリコーンを新たに充填して圧縮すれば、圧縮変形可能なマグネットシール1を製造することができる。また、これ以外の別の製造方法として、施工現場で防湿袋から未硬化のシート材2を取り出し、この未硬化のシート材2に複数のマグネット4を埋め込むことにより、マグネットシール1を製造する製法があげられる。その他の部分については、上記実施形態と同様であるので説明を省略する。
【0043】
本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果が期待でき、しかも、マグネットシール1の構成の多様化を図ることができるのは明らかである。
【0044】
なお、上記実施形態において、野外でマグネットシール1を使用する場合には、磁性シート3やマグネット4に亜鉛系のメッキを施し、防食機能を付与しても良い。また、マグネットシール1のシート材2には必要に応じ、空隙を形成することができる。また、シート材2における粘着力の強弱は、必要に応じ、調整することができる。同様に、磁性シート3やマグネット4における磁力の強弱は、必要に応じ、調整しても良い。
【0045】
また、自己接着性シリコーンを未硬化の場合に粘土状のシート材2に成形し、このシート材2に磁性材としてマグネット4ではなく、複数の磁性シート3を内蔵しても良い。また、未硬化の場合に粘土状のシート材2に必要数の棒形マグネット4、平面長方形あるいは正方形等の磁性シート3、及び磁性フィラー5の少なくともいずれかを内蔵しても良い。さらに、自己接着性シリコーンを未硬化の場合に粘土状のシート材2に成形し、このシート材2を丸めて円柱形のマグネット4を被包するようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係るマグネットシールは、建築土木、各種機械、配管等の分野で使用される。
【符号の説明】
【0047】
1 マグネットシール
2 シート材
3 磁性シート
4 マグネット
5 磁性フィラー