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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053299
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】不定形耐火組成物、及び不定形耐火物
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/66 20060101AFI20240408BHJP
   F27D 1/00 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C04B35/66
F27D1/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159461
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】391040711
【氏名又は名称】AGCセラミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 正人
【テーマコード(参考)】
4K051
【Fターム(参考)】
4K051AA03
4K051AB03
4K051AB05
4K051BE03
(57)【要約】
【課題】急速昇温可能であり、耐爆裂性に優れる不定形耐火組成物及び不定形耐火物の提供。
【解決手段】耐火性骨材、シリカ粒子、アルミナセメント、及び有機繊維を含有し、不定形耐火組成物の総質量に対する上記耐火性骨材の含有率が72~97質量%であり、上記シリカ粒子の含有率が1~11質量%であり、上記アルミナセメントの含有率が1~11質量%であり、上記有機繊維の含有率が0.005~5質量%であり、上記アルミナセメントが、CaO・Alを含み、上記アルミナセメントの総質量に対する上記CaO・Alの含有率が55質量%以上である、不定形耐火組成物、及びこれにより形成される、不定形耐火物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火性骨材、シリカ粒子、アルミナセメント、及び有機繊維を含有し、
不定形耐火組成物の総質量に対する前記耐火性骨材の含有率が72~97質量%であり、前記シリカ粒子の含有率が1~11質量%であり、前記アルミナセメントの含有率が1~11質量%であり、前記有機繊維の含有率が0.005~5質量%であり、
前記アルミナセメントが、CaO・Alを含み、前記アルミナセメントの総質量に対する前記CaO・Alの含有率が55質量%以上である、不定形耐火組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の不定形耐火組成物により形成される、不定形耐火物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、不定形耐火組成物、及び不定形耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
不定形耐火物は、現地での施工によってその形をなす耐火物であるが、硬化発現のためにアルミナセントが配合されているのが一般的である。しかしながら、アルミナセントはセメントの中では耐熱性が高いものの、その他の耐火骨材に比べると耐熱性は低いものであった。また、アルミナセメントは、スラグ、炉内の処理物等との反応性が高く、耐火物の耐食性を下げる原因ともなっていた。
【0003】
上記問題に鑑みて、アルミナセメントの含有率を減らし、少量のアルミナセメントを介して超微粉の凝集を促す低セメントタイプの不定形耐火物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-199334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低セメントタイプの不定形耐火物は、超微粉を含むことから、緻密な構造を有しており、急速昇温により爆裂が生じるおそれがあった。
しかしながら、溶融炉(特にアルミニウム又はアルミニウム合金の溶融に用いられる溶融炉)の内張り材として用いる場合等、その用途によっては、不定形耐火物には急速昇温が可能であることが求められる。
【0006】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、急速昇温可能であり、耐爆裂性に優れる不定形耐火組成物及び不定形耐火物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 耐火性骨材、シリカ粒子、アルミナセメント、及び有機繊維を含有し、
不定形耐火組成物の総質量に対する上記耐火性骨材の含有率が72~97質量%であり、上記シリカ粒子の含有率が1~11質量%であり、上記アルミナセメントの含有率が1~11質量%であり、上記有機繊維の含有率が0.005~5質量%であり、
上記アルミナセメントが、CaO・Alを含み、上記アルミナセメントの総質量に対する上記CaO・Alの含有率が55質量%以上である、不定形耐火組成物。
<2> 上記<1>に記載の不定形耐火組成物により形成される、不定形耐火物。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、急速昇温可能であり、耐爆裂性に優れる不定形耐火組成物及び不定形耐火物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本開示は以下の実施形態に限定されない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。
【0010】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、合成例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において各成分は該当する化合物を複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、各成分の含有率は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率を意味する。
【0011】
(不定形耐火組成物)
本開示の不定形耐火組成物(以下、「本不定形耐火組成物」とも記す。)は、耐火性骨材、シリカ粒子、アルミナセメント、及び有機繊維を含有し、不定形耐火組成物の総質量に対する上記耐火性骨材の含有率が72~97質量%であり、上記シリカ粒子の含有率が1~11質量%であり、上記アルミナセメントの含有率が1~11質量%であり、上記有機繊維の含有率が0.005~5質量%であり、上記アルミナセメントが、CaO・Alを含み、上記アルミナセメントの総質量に対する前記CaO・Alの含有率が55質量%以上である。
【0012】
本不定形耐火組成物は、急速昇温可能であり、耐爆裂性に優れる。上記効果が奏される理由は明らかではないが、以下のように推測される。
本不定形耐火組成物は、CaO・Alの含有率が55質量%以上であるアルミナセメントを含む。CaO・Alは優れた圧縮強さを有しており、不定形耐火物の強度を向上できるため、急速昇温を行ったときの爆裂の発生を抑制できると推測される。また、本不定形耐火組成物が有機繊維を含むことにより、昇温時に有機繊維が収縮し、不定形耐火物内の水蒸気を不定形耐火物外へ逃がす経路を形成するため、耐爆裂性が向上すると推測される。また、アルミナセメント及びシリカ粒子を含むことにより、不定形耐火物の緻密性を向上することができ、その強度を向上することができる。
【0013】
<耐火性骨材>
耐火性骨材としては、不定形耐火物の製造に使用可能なものであれば、特に限定されるものではない。例えば、アルミナ(Al)、ジルコニア(ZrO)、ジルコン(ZrO・SiO)等が挙げられる。
【0014】
アルミナとしては、シャモット(Al含有率:40~50質量%)、ムライト(Al含有率:60質量%前後)、ボーキサイト(Al含有率:80~89質量%)、高純度アルミナ(Al含有率:90質量%以上)等が挙げられる。
なお、本開示において、「耐火性骨材の含有率」とは、シャモット、ムライト、ボーキサイト、高純度アルミナ等の含有率を意味する。
【0015】
耐火性骨材の粒径は、特に限定されるものではないが、施工性等を向上する観点から、45μm~5mmが好ましい。
本開示において、耐火性骨材の粒径は、JIS Z 8815:1994に準拠したふるい分け試験により測定でき、累積体積が50%となる粒子径である。
【0016】
本不定形耐火組成物は、耐火性骨材を2種以上含んでいてもよい。
【0017】
<シリカ粒子>
シリカ粒子の粒径は、特に限定されるものではなく、0.1μm~30μmとすることができる。
本開示において、シリカ粒子の粒径は、JIS Z 8825:2013に準拠したレーザー回折式粒度分布測定法により測定でき、累積体積が50%となる粒子径である。
【0018】
本不定形耐火組成物は、シリカ粒子を2種以上含んでいてもよい。
【0019】
<アルミナセメント>
急速昇温適性を向上し、耐爆裂性を向上させる観点から、アルミナセメントの総質量に対するCaO・Alの含有率は、60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上が特に好ましく、95質量%以上が最も好ましく、100質量%としてもよい。
【0020】
アルミナセメントは、CaO・Al以外の成分(以下、「その他の成分」とも記す。)を含んでいてもよく、12CaO・7Al、CaO・2Al、CaO・AlO・CaSO、CaO・Al・Fe、CaO・Al・CaF、CaO・NaO・Al等が挙げられる。
急速昇温適性を向上し、耐爆裂性を向上させる観点から、その他の成分のアルミナセメントの総質量に対する含有率は20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
【0021】
<有機繊維>
有機繊維としては、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維、ポリビニルアルコール繊維、セルロース繊維等が挙げられる。
【0022】
有機繊維の繊維長は10μm~20mmとすることができる。有機繊維の繊維径は0.1~20dtexとすることができる。
なお、本開示において、繊維長は、JIS L 1015:2010に準拠して測定し、繊維径は、JIS L 1015:2010に準拠して測定する。
【0023】
本不定形耐火組成物は、有機繊維を2種以上含んでいてもよい。この場合、繊維長の異なる2種類以上の有機繊維を含むことが好ましい。2種類以上の有機繊維を用いることで、耐爆裂性をより向上でき、施工時において、不定形耐火組成物と水とを混合し坏土としたときの流動性を向上できる。例えば、繊維長3mm~20mmの長繊維と、繊維長10μm~3mmの短繊維と、を併用することが好ましい。
【0024】
<添加材>
本開示の不定形耐火組成物は、上記した成分以外の添加材を含んでもよい。
添加材としては、シリカ粒子以外の耐火性粉末(チタニア、ダイアスポア、バン土頁岩、パイロフィライト、シリマナイト、アンダリュウサイト、ケイ石、クロム鉄鉱、スピネル、マグネシア、ジルコニア、ジルコン、クロミア、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、アルミナ、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム等)、分散剤(リン酸系分散剤、カルボン酸系分散剤、スルホン酸系分散剤等)、ベントナイト、結合剤(活性マグネシア、低反応性アルカリ土類金属酸化物、水溶性の有機酸塩、水溶性の無機酸塩等)、酸化防止剤、収縮緩和剤、増粘剤などが挙げられる。
アルミナは、従来、不定形耐火組成物に用いられているアルミナ微粉であればよく、それ自体の凝集力が強く、不定形耐火組成物を耐火物とする際に硬化を促進する作用を有するものである。アルミナ微粉は、その凝集により耐火物の硬化を促進する観点から、平均粒径が、10μm未満のものを用いることができ、5μm未満であることが好ましい。
アルミナ微粉の粒径は、シリカ粒子と同様に測定できる。
【0025】
(不定形耐火組成物の製造方法)
本不定形耐火組成物は、上記各成分を従来公知の方法により混練することにより製造できる。混練には、例えば、オムニミキサー、パドルミキサー、ナウタミキサー、アイリッヒミキサー、ボルテックスミキサー又は連続混練装置等を使用できる。
【0026】
(不定形耐火物)
本開示の不定形耐火物は、上記不定形耐火組成物により形成されたものである。
不定形耐火物の製造は、吹付け施工により行ってもよく、流し込み施工により行ってもよく、打込み施工により行ってもよい。