(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005330
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】コンクリート強度推定装置、コンクリート強度推定モデル生成装置、コンクリート強度推定方法及びコンクリート強度推定モデル生成方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/38 20060101AFI20240110BHJP
G06Q 50/08 20120101ALI20240110BHJP
【FI】
G01N33/38
G06Q50/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105468
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】赤羽根 駿之介
(72)【発明者】
【氏名】古川 慧
(72)【発明者】
【氏名】宮下 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】辻埜 真人
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】生コンクリートの状態でコンクリートの圧縮強度を推定することを図る。
【解決手段】コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリート製造データの入力を受付ける受付部と、受付部が受付けた生コンクリート製造データを使用して、コンクリートの圧縮強度を推定する推定部と、を備え、推定部は、学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた学習用生コンクリート製造データとコンクリートの圧縮強度の正解値を示す教師データとを使用して生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習が行われた推定モデルを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリート製造データの入力を受付ける受付部と、
前記受付部が受付けた生コンクリート製造データを使用して、コンクリートの圧縮強度を推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた学習用生コンクリート製造データとコンクリートの圧縮強度の正解値を示す教師データとを使用して所定の教師あり学習アルゴリズムにより生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習が行われた推定モデルを備える、
コンクリート強度推定装置。
【請求項2】
前記生コンクリート製造データは、コンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録を含む、
請求項1に記載のコンクリート強度推定装置。
【請求項3】
学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた学習用生コンクリート製造データとコンクリートの圧縮強度の正解値を示す教師データとの入力を受付ける受付部と、
前記受付部が受付けた学習用生コンクリート製造データと教師データとを使用して、所定の教師あり学習アルゴリズムにより、生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習を行って推定モデルを生成するモデル生成部と、
を備えるコンクリート強度推定モデル生成装置。
【請求項4】
前記モデル生成部は、複数の異なる教師あり学習アルゴリズム毎に前記推定モデルを生成し、
前記コンクリート強度推定モデル生成装置は、前記モデル生成部が生成した複数の前記推定モデルに対してそれぞれにコンクリートの圧縮強度の推定精度を検証し、当該検証の結果に基づいて前記複数の前記推定モデルの中から最終的な推定モデルを決定する選定部をさらに備える、
請求項3に記載のコンクリート強度推定モデル生成装置。
【請求項5】
コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリート製造データの入力を受付ける受付ステップと、
前記受付ステップで受付けた生コンクリート製造データを使用して、コンクリートの圧縮強度を推定する推定ステップと、を含み、
前記推定ステップは、学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた学習用生コンクリート製造データとコンクリートの圧縮強度の正解値を示す教師データとを使用して所定の教師あり学習アルゴリズムにより生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習が行われた推定モデルを使用する、
コンクリート強度推定方法。
【請求項6】
学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた学習用生コンクリート製造データとコンクリートの圧縮強度の正解値を示す教師データとの入力を受付ける受付ステップと、
前記受付ステップで受付けた学習用生コンクリート製造データと教師データとを使用して、所定の教師あり学習アルゴリズムにより、生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習を行って推定モデルを生成するモデル生成ステップと、
を含むコンクリート強度推定モデル生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート強度推定装置、コンクリート強度推定モデル生成装置、コンクリート強度推定方法及びコンクリート強度推定モデル生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートの圧縮強度を推定するコンクリート強度推定技術として例えば特許文献1が知られている。特許文献1には、建築物の鉄筋コンクリート躯体(コンクリート構造部)におけるコンクリートの圧縮強度を推定する際に、コンクリート構造部に孔を形成する削孔部における孔の深さ方向への移動速度の測定値に基づいてコンクリート構造部における圧縮強度を演算により求めるシステムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載されたコンクリート強度推定技術は、既に打設されたコンクリートの圧縮強度を推定する技術である。一方、打設される前の生コンクリートの状態でコンクリートの圧縮強度を推定することができれば、製造されたコンクリート構造物に孔を形成することなく、コンクリート構造物の製造前にコンクリート構造物におけるコンクリートの圧縮強度を推定することが可能になるので好ましい。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、生コンクリートの状態でコンクリートの圧縮強度を推定することができるコンクリート強度推定装置、コンクリート強度推定モデル生成装置、コンクリート強度推定方法及びコンクリート強度推定モデル生成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリート製造データの入力を受付ける受付部と、前記受付部が受付けた生コンクリート製造データを使用して、コンクリートの圧縮強度を推定する推定部と、を備え、前記推定部は、学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた学習用生コンクリート製造データとコンクリートの圧縮強度の正解値を示す教師データとを使用して所定の教師あり学習アルゴリズムにより生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習が行われた推定モデルを備える、コンクリート強度推定装置である。
【0007】
本発明の一態様は、上記のコンクリート強度推定装置において、前記生コンクリート製造データは、コンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録を含む。
【0008】
本発明の一態様は、学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた学習用生コンクリート製造データとコンクリートの圧縮強度の正解値を示す教師データとの入力を受付ける受付部と、前記受付部が受付けた学習用生コンクリート製造データと教師データとを使用して、所定の教師あり学習アルゴリズムにより、生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習を行って推定モデルを生成するモデル生成部と、を備えるコンクリート強度推定モデル生成装置である。
【0009】
本発明の一態様は、上記のコンクリート強度推定モデル生成装置において、前記モデル生成部は、複数の異なる教師あり学習アルゴリズム毎に前記推定モデルを生成し、前記コンクリート強度推定モデル生成装置は、前記モデル生成部が生成した複数の前記推定モデルに対してそれぞれにコンクリートの圧縮強度の推定精度を検証し、当該検証の結果に基づいて前記複数の前記推定モデルの中から最終的な推定モデルを決定する選定部をさらに備える。
【0010】
本発明の一態様は、コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリート製造データの入力を受付ける受付ステップと、前記受付ステップで受付けた生コンクリート製造データを使用して、コンクリートの圧縮強度を推定する推定ステップと、を含み、前記推定ステップは、学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた学習用生コンクリート製造データとコンクリートの圧縮強度の正解値を示す教師データとを使用して所定の教師あり学習アルゴリズムにより生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習が行われた推定モデルを使用する、コンクリート強度推定方法である。
【0011】
本発明の一態様は、学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた学習用生コンクリート製造データとコンクリートの圧縮強度の正解値を示す教師データとの入力を受付ける受付ステップと、前記受付ステップで受付けた学習用生コンクリート製造データと教師データとを使用して、所定の教師あり学習アルゴリズムにより、生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習を行って推定モデルを生成するモデル生成ステップと、を含むコンクリート強度推定モデル生成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生コンクリートの状態でコンクリートの圧縮強度を推定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1実施形態に係るコンクリート強度推定システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係るコンクリート強度推定モデル生成方法の手順の例を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施形態に係るコンクリート強度推定方法の手順の例を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係るコンクリート強度推定システムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】第2実施形態に係るコンクリート強度推定モデル生成方法の手順の例を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態によるコンクリートの圧縮強度の推定値とコンクリートの圧縮強度の実測値との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
【0015】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係るコンクリート強度推定システムの構成例を示すブロック図である。
図1に示されるコンクリート強度推定システムは、コンクリート強度推定装置10とコンクリート強度推定モデル生成装置20とを備える。コンクリート強度推定装置10とコンクリート強度推定モデル生成装置20とは、通信によりオンラインでデータを送受してもよく、又はオフラインでデータを入出力してもよい。
【0016】
コンクリート強度推定装置10には、生コンクリート製造データAが入力される。生コンクリート製造データAは、コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリートの製造に関するデータである。コンクリート強度推定装置10は、生コンクリート製造データAからコンクリートの圧縮強度を推定する。
【0017】
コンクリート強度推定モデル生成装置20には、学習用生コンクリート製造データBと教師データCとが入力される。学習用生コンクリート製造データBは、学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリートの製造に関するデータである。教師データCは、コンクリートの圧縮強度の正解値を示すデータである。コンクリート強度推定モデル生成装置20は、学習用生コンクリート製造データBと教師データCとを使用して、所定の教師あり学習アルゴリズムにより、生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習を行って推定モデルMDを生成する。コンクリート強度推定モデル生成装置20が生成した推定モデルMDは、生コンクリート製造データから生成されたモデル入力データが入力されると、コンクリートの圧縮強度の推定値を出力する。
【0018】
コンクリート強度推定モデル生成装置20が生成した推定モデルMDは、コンクリート強度推定装置10へ供給される。コンクリート強度推定装置10は、生コンクリート製造データAから、推定モデルMDを使用してコンクリートの圧縮強度の推定値を取得する。
【0019】
図1において、コンクリート強度推定装置10は、受付部11と、推定部12と、出力部13とを備える。
【0020】
コンクリート強度推定装置10の各機能は、コンクリート強度推定装置10がCPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、コンクリート強度推定装置10として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、コンクリート強度推定装置10は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、コンクリート強度推定装置10の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、コンクリート強度推定装置10は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又はコンクリート強度推定装置10の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。また、コンクリート強度推定装置10として、例えばWWWシステム等を利用してウェブサイトを開設するように構成してもよい。
【0021】
受付部11は、生コンクリート製造データAの入力を受付ける。
【0022】
推定部12は、受付部11が受付けた生コンクリート製造データAを使用して、コンクリートの圧縮強度を推定する。
【0023】
推定部12は、前処理部31と、コンクリート強度推定モデル生成装置20が生成した推定モデルMDとを備える。推定部12は、生コンクリート製造データAから、推定モデルMDを使用してコンクリートの圧縮強度の推定値を取得する。より具体的には、前処理部31は、生コンクリート製造データAから、推定モデルMDへ入力するモデル入力データを生成する。推定部12は、前処理部31が生成したモデル入力データを推定モデルMDへ入力する。推定モデルMDは、モデル入力データが入力されると、コンクリートの圧縮強度の推定値を出力する。
【0024】
出力部13は、推定部12が取得したコンクリートの圧縮強度の推定値を出力する。コンクリートの圧縮強度の推定値の出力方法は、例えば、表示画面上への表示、印刷媒体への印刷、コンピュータ読み取り可能な記録媒体への書き込み、通信によるデータ送信などが挙げられる。なお、出力部13は、推定部12が取得したコンクリートの圧縮強度の推定値を、コンクリート強度推定装置10の外部への出力を行わずに、コンクリート強度推定装置10に内蔵のメモリや記録媒体に書き込むのみであってもよい。
【0025】
図1において、コンクリート強度推定モデル生成装置20は、受付部21と、モデル生成部22と、出力部23とを備える。
【0026】
コンクリート強度推定モデル生成装置20の各機能は、コンクリート強度推定モデル生成装置20がCPU及びメモリ等のコンピュータハードウェアを備え、CPUがメモリに格納されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。なお、コンクリート強度推定モデル生成装置20として、汎用のコンピュータ装置を使用して構成してもよく、又は、専用のハードウェア装置として構成してもよい。例えば、コンクリート強度推定モデル生成装置20は、インターネット等の通信ネットワークに接続されるサーバコンピュータを使用して構成されてもよい。また、コンクリート強度推定モデル生成装置20の各機能はクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。また、コンクリート強度推定モデル生成装置20は、単独のコンピュータにより実現するものであってもよく、又はコンクリート強度推定モデル生成装置20の機能を複数のコンピュータに分散させて実現するものであってもよい。また、コンクリート強度推定モデル生成装置20として、例えばWWWシステム等を利用してウェブサイトを開設するように構成してもよい。
【0027】
受付部21は、学習用生コンクリート製造データBと教師データCとの入力を受付ける。
【0028】
モデル生成部22は、受付部21が受付けた学習用生コンクリート製造データBと教師データCとを使用して、所定の教師あり学習アルゴリズムにより、生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習を行って推定モデルMDを生成する。モデル生成部22は、前処理部32を備える。前処理部32は、学習用生コンクリート製造データBと教師データCから、推定モデルMDの教師あり学習に使用される学習用モデル入力データを生成する。モデル生成部22は、前処理部32が生成した学習用モデル入力データを使用して推定モデルMDの教師あり学習を行う。
【0029】
出力部23は、モデル生成部22が生成した推定モデルMDを出力する。推定モデルMDは、例えば、コンピュータ読み取り可能な記録媒体への書き込み、通信によるデータ送信などが挙げられる。出力部23が出力した推定モデルMDは、コンクリート強度推定装置10へ供給される。
【0030】
上述した生コンクリート製造データA及び学習用生コンクリート製造データB(以下、両者を特に区別しないいときは単に「生コンクリート製造データ」と称する)は、生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリートの製造に関するデータである。具体的には、生コンクリート製造データは、コンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録を含むデータである。コンクリート材料の単位量は、セメント量、水量、細骨材量、粗骨材量、混和剤量および水セメント比である。製造記録は、練混ぜ時刻、設定表面水率、練混ぜ量、前回の練混ぜからの経過時間および気象条件である。試験記録は、スランプ・フロー、空気量、コンクリート温度、塩化物量および脱型時重量である。脱型時重量は、単位容積質量の代替である。
【0031】
したがって、生コンクリート製造データAは、コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリートの製造に関するデータであって、コンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録を含むデータである。学習用生コンクリート製造データBは、学習用の生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリートの製造に関するデータであって、コンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録を含むデータである。
【0032】
上述した教師データCは、コンクリートの圧縮強度の正解値を示すデータである。教師データCの具体的な生成方法の一例は、学習用の生コンクリートと同一バッチで製造された生コンクリートから作製された3本の供試体に対してそれぞれに圧縮強度の測定を行い、その3本の供試体の圧縮強度の測定結果の平均値を教師データCに用いる。
【0033】
学習用生コンクリート製造データBと当該学習用生コンクリート製造データBに対する教師データCは、同一バッチで製造された生コンクリートに関するデータである。また、学習用生コンクリート製造データBおよび教師データCは、多次元データの形式であることが好ましい。
【0034】
上述した教師あり学習アルゴリズムとしては、例えば、重回帰分析、決定木、人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network:ANN)などを用いることができる。
【0035】
次に
図2、
図3を参照して本実施形態に係るコンクリート強度推定システムの動作を説明する。
図2は、本実施形態に係るコンクリート強度推定モデル生成方法の手順の例を示すフローチャートである。
図3は、本実施形態に係るコンクリート強度推定方法の手順の例を示すフローチャートである。
【0036】
<モデル生成段階>
図2を参照して、本実施形態に係るモデル生成段階S100を説明する。モデル生成段階S100は、
図3を参照して後述する強度推定段階S200で使用される推定モデルMDの教師あり学習を行う段階である。モデル生成段階S100は、コンクリート強度推定モデル生成装置20が実行する段階である。
【0037】
(ステップS101) 受付部21は、学習用生コンクリート製造データB及び教師データCの入力を受付ける。
【0038】
(ステップS102) 前処理部32は、受付部21が受付けた学習用生コンクリート製造データBからコンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録を取得する。前処理部32は、取得したコンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録に対して所定の前処理方法で前処理を行って、モデル入力データを生成する。所定の前処理方法は、例えば「Z-score normalization」である。
【0039】
(ステップS103) モデル生成部22は、前処理部32が生成したモデル入力データを、訓練用のデータ(訓練データ)とテスト用のデータ(テストデータ)とに分割する。この分割の比率は、予め任意に決定すればよい。分割の比率の一例は、訓練データが全体の80%であり、テストデータが全体の20%である。
【0040】
(ステップS104) モデル生成部22は、訓練データを使用して、所定の教師あり学習アルゴリズムにより、生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように、推定モデルMDの教師あり学習を行う。
【0041】
(ステップS105) モデル生成部22は、教師あり学習が行われた結果として生成された推定モデルMDに対して、テストデータを使用してコンクリートの圧縮強度の推定精度(コンクリート強度推定精度)を交差検証法により検証する。コンクリート強度推定精度の検証では、モデル生成部22は、コンクリート強度推定精度の指標として、例えば二乗平均平方根誤差(RMSE)や決定係数(R2)などを算出する。
【0042】
出力部23は、モデル生成部22によって生成された推定モデルMDと当該推定モデルMDのコンクリート強度推定精度の指標とを出力する。
【0043】
推定モデルMDのコンクリート強度推定精度の指標が所定の合格基準を満たす場合は、当該推定モデルMDがコンクリート強度推定装置10へ供給される。一方、推定モデルMDのコンクリート強度推定精度の指標が所定の合格基準を満たさない場合は、再度、推定モデルMDの教師あり学習が行われる。推定モデルMDの教師あり学習の再実行では、学習用生コンクリート製造データB及び教師データCの追加や変更が行われてもよい。
【0044】
<強度推定段階>
図3を参照して、本実施形態に係る強度推定段階S200を説明する。強度推定段階S200は、
図2を参照して上述したモデル生成段階S100によって生成された推定モデルMDを使用して実際にコンクリートの圧縮強度を推定する段階である。強度推定段階S200は、コンクリート強度推定装置10が実行する段階である。
【0045】
(ステップS201) 受付部11は、生コンクリート製造データAの入力を受付ける。生コンクリート製造データAは、コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリート製造データである。
【0046】
(ステップS202) 前処理部31は、受付部11が受付けた生コンクリート製造データAからコンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録を取得する。前処理部31は、取得したコンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録に対して所定の前処理方法で前処理を行って、モデル入力データを生成する。所定の前処理方法は、上述したモデル生成段階S100と同じであって例えば「Z-score normalization」である。
【0047】
(ステップS203) 推定部12は、前処理部31が生成したモデル入力データを推定モデルMDに適用してコンクリートの圧縮強度の推定値を取得する。より具体的には、推定部12は、前処理部31が生成したモデル入力データを推定モデルMDへ入力する。推定モデルMDは、モデル入力データが入力されると、コンクリートの圧縮強度の推定値を出力する。出力部13は、推定部12が取得したコンクリートの圧縮強度の推定値を、コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートに関するコンクリートの圧縮強度の推定値として出力する。
【0048】
上述した第1実施形態によれば、コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリート製造データから、当該生コンクリートに関するコンクリートの圧縮強度の推定値を得ることができる。これにより、生コンクリートの状態でコンクリートの圧縮強度を推定することができるという効果が得られる。
【0049】
また、生コンクリート製造データは、生コンクリートの製造工程で通常得られるコンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録を含むデータであればよいので、コンクリートの圧縮強度の推定のために特別に新たなデータを得る必要がなく、本実施形態の実施における負担を軽減することができるという効果が得られる。
【0050】
[第2実施形態]
図4は、第2実施形態に係るコンクリート強度推定システムの構成例を示すブロック図である。この
図4において
図1の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。
【0051】
第2実施形態において、コンクリート強度推定装置10は上述した第1実施形態と同じである。第2実施形態においては、コンクリート強度推定モデル生成装置20aが、複数(n個、nは2以上の整数)の異なる教師あり学習アルゴリズム毎に推定モデルMD-1,・・・,MD-nを生成し、複数の推定モデルMD-1,・・・,MD-nに対してそれぞれにコンクリートの圧縮強度の推定精度を検証し、当該検証の結果に基づいて複数の推定モデルMD-1,・・・,MD-nの中から最終的な推定モデルMDを決定する点が上述した第1実施形態と異なる。
【0052】
以下、第2実施形態において上述した第1実施形態と異なる点を主に説明する。
【0053】
図4において、コンクリート強度推定モデル生成装置20aは、受付部21と、モデル生成部22aと、出力部23と、選定部30とを備える。受付部21及び出力部23は、上述した第1実施形態と同じである。また、モデル生成部22aが備える前処理部32は、上述した第1実施形態と同じである。
【0054】
モデル生成部22aは、受付部21が受付けた学習用生コンクリート製造データBと教師データCとを使用して、複数(n個)の異なる所定の教師あり学習アルゴリズム毎に、教師あり学習アルゴリズムにより、生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習を行って、推定モデルMD-1,・・・,MD-nを生成する。推定モデルMD-1は、第1の教師あり学習アルゴリズムにより生成された推定モデルである。推定モデルMD-nは、第nの教師あり学習アルゴリズムにより生成された推定モデルである。
【0055】
例えば、モデル生成部22aは、3個の異なる教師あり学習アルゴリズムとして重回帰分析、決定木および人工ニューラルネットワークを使用して、第1の教師あり学習アルゴリズム「重回帰分析」により推定モデルMD-1を生成し、第2の教師あり学習アルゴリズム「決定木」により推定モデルMD-2を生成し、第3の教師あり学習アルゴリズム「人工ニューラルネットワーク」により推定モデルMD-3を生成する。
【0056】
選定部30は、モデル生成部22aが生成した複数(n個)の推定モデルMD-1,・・・,MD-nに対してそれぞれにコンクリートの圧縮強度の推定精度を検証し、当該検証の結果に基づいて複数(n個)の推定モデルMD-1,・・・,MD-nの中から最終的な推定モデルMDを決定する。
【0057】
出力部23は、モデル生成部22aによって生成された最終的な推定モデルMDと当該推定モデルMDのコンクリート強度推定精度の指標とを出力する。
【0058】
次に
図5を参照して第2実施形態に係るコンクリート強度推定モデル生成方法(モデル生成段階)を説明する。
図5は、第2実施形態に係るコンクリート強度推定モデル生成方法(モデル生成段階)の手順の例を示すフローチャートである。なお、コンクリート強度推定方法(強度推定段階)は、
図3を参照して上述した第1実施形態と同じである。
【0059】
(ステップS101) 受付部21は、学習用生コンクリート製造データB及び教師データCの入力を受付ける。
【0060】
(ステップS102) 前処理部32は、受付部21が受付けた学習用生コンクリート製造データBからコンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録を取得する。前処理部32は、取得したコンクリート材料の単位量、製造記録及び試験記録に対して所定の前処理方法で前処理を行って、モデル入力データを生成する。所定の前処理方法は、例えば「Z-score normalization」である。
【0061】
(ステップS103) モデル生成部22aは、前処理部32が生成したモデル入力データを、訓練用のデータ(訓練データ)とテスト用のデータ(テストデータ)とに分割する。この分割の比率は、予め任意に決定すればよい。分割の比率の一例は、訓練データが全体の80%であり、テストデータが全体の20%である。
【0062】
(ステップS104a) モデル生成部22aは、訓練データを使用して、複数(n個)の異なる所定の教師あり学習アルゴリズム毎に、教師あり学習アルゴリズムにより、生コンクリート製造データからコンクリートの圧縮強度の推定値を出力するように教師あり学習を行って、推定モデルMD-1,・・・,MD-nを生成する。
【0063】
ここでの一例として、モデル生成部22aは、3個の異なる教師あり学習アルゴリズムとして重回帰分析、決定木および人工ニューラルネットワークを使用して、第1の教師あり学習アルゴリズム「重回帰分析」により推定モデルMD-1を生成し、第2の教師あり学習アルゴリズム「決定木」により推定モデルMD-2を生成し、第3の教師あり学習アルゴリズム「人工ニューラルネットワーク」により推定モデルMD-3を生成する。
【0064】
(ステップS105a) 選定部30は、モデル生成部22aが生成した複数(n個)の推定モデルMD-1,・・・,MD-nに対してそれぞれにコンクリートの圧縮強度の推定精度を検証し、当該検証の結果に基づいて複数(n個)の推定モデルMD-1,・・・,MD-nの中から最終的な推定モデルMDを決定する。
【0065】
ここでの一例として、選定部30は、モデル生成部22aが生成した3個の推定モデルMD-1(重回帰分析による推定モデル),MD-2(決定木による推定モデル),MD-3(人工ニューラルネットワークによる推定モデル)に対してそれぞれにコンクリートの圧縮強度の推定精度を交差検証法により検証する。この検証では、選定部30は、各推定モデルMD-1,MD-2,MD-3に対して、コンクリート強度推定精度の指標として、例えば二乗平均平方根誤差(RMSE)や決定係数(R2)などを算出する。選定部30は、各推定モデルMD-1,MD-2,MD-3のコンクリート強度推定精度の指標を比較し、推定モデルMD-1,MD-2,MD-3の中から、コンクリート強度推定精度の指標が最良である推定モデルを最終的な推定モデルMDに決定する。
【0066】
出力部23は、モデル生成部22aによって生成された最終的な推定モデルMDと当該推定モデルMDのコンクリート強度推定精度の指標とを出力する。
【0067】
最終的な推定モデルMDのコンクリート強度推定精度の指標が所定の合格基準を満たす場合は、当該推定モデルMDがコンクリート強度推定装置10へ供給される。一方、最終的な推定モデルMDのコンクリート強度推定精度の指標が所定の合格基準を満たさない場合は、再度、複数(n個)の異なる所定の教師あり学習アルゴリズム毎に、推定モデルMD-1,・・・,MD-nの教師あり学習が行われる。推定モデルMD-1,・・・,MD-nの教師あり学習の再実行では、学習用生コンクリート製造データB及び教師データCの追加や変更が行われてもよい。
【0068】
上述した第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、コンクリートの圧縮強度を推定する対象である生コンクリートが製造された時の製造工程で得られた生コンクリート製造データから、当該生コンクリートに関するコンクリートの圧縮強度の推定値を得ることができる。これにより、生コンクリートの状態でコンクリートの圧縮強度を推定することができるという効果が得られる。
【0069】
また、第2実施形態によれば、複数の異なる所定の教師あり学習アルゴリズム毎に生成された推定モデルMD-1,・・・,MD-nのうちコンクリート強度推定精度が最良の推定モデルMDを使用して、コンクリートの圧縮強度の推定値を得ることができる。これにより、生コンクリートの状態でコンクリートの圧縮強度を推定する際の推定精度の向上を図ることができるという効果が得られる。
【0070】
図6は、上述した実施形態によるコンクリートの圧縮強度の推定値と、コンクリートの圧縮強度の実測値との関係を示すグラフ図である。
図6に示されるコンクリートの圧縮強度の推定値は、教師あり学習アルゴリズムとしてリッジ(Ridge)回帰により教師あり学習が行われた推定モデルMDを使用して得られたものである。
【0071】
図6に示されるコンクリートの圧縮強度の推定値とコンクリートの圧縮強度の実測値とにおいて、二乗平均平方根誤差(RMSE)が「2.998」であり、決定係数(R2)が「0.798」であって、コンクリート強度推定精度は良好である。
【0072】
以上説明したように、上述した実施形態によれば、生コンクリートの状態でコンクリートの圧縮強度を推定することができるという効果が得られる。これにより、打設される前の生コンクリートの状態でコンクリートの圧縮強度を推定することができるので、製造されたコンクリート構造物に孔を形成したり、製造されたコンクリート構造物からサンプルを採取したりする必要がなく、コンクリート構造物の製造前にコンクリート構造物におけるコンクリートの圧縮強度を推定することが可能になる。
【0073】
なお、コンクリート強度推定装置10とコンクリート強度推定モデル生成装置20,20aとは、同じ情報処理装置を使用して実現されてもよく、又はそれぞれ異なる情報処理装置を使用して実現されてもよい。
【0074】
また、上述した各装置の機能を実現するためのコンピュータプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行するようにしてもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disc)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0075】
さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0076】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0077】
10…コンクリート強度推定装置、11,21…受付部、12…推定部、13,23…出力部、31,32…前処理部、22,22a…モデル生成部、30…選定部、MD…推定モデル