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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053302
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】媒体取引装置および制御方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/12 20190101AFI20240408BHJP
   G07D 11/235 20190101ALI20240408BHJP
   B65H 7/12 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G07D11/12
G07D11/235
B65H7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159467
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【弁理士】
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【弁理士】
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎仁
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 俊貴
【テーマコード(参考)】
3E141
3F048
【Fターム(参考)】
3E141AA01
3E141BA07
3E141DA08
3E141FB05
3E141FC05
3E141FC15
3E141FD02
3E141FG04
3F048AA06
3F048AB03
3F048BA12
3F048BA14
3F048BB02
3F048BB05
3F048DC12
3F048EA11
3F048EB03
(57)【要約】
【課題】媒体残留検出の精度を高めることを可能とする。
【解決手段】媒体を収納する収納部と、前記収納部の内部に設けられ、前記媒体が集積される昇降可能なステージと、前記収納部の上方に設けられ、前記ステージに集積される前記媒体を分離して搬送ゲートに搬送する搬送ローラと、前記ステージ上に前記媒体が残留しているか否かを検出する検出部と、前記搬送ゲートに残留する前記媒体を叩き落とす舌片を有する舌片ローラと、前記検出部により前記媒体の残留が検出されなかったときに前記舌片ローラを動作させる制御部と、を備える、媒体取引装置。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を収納する収納部と、
前記収納部の内部に設けられ、前記媒体が集積される昇降可能なステージと、
前記収納部の上方に設けられ、前記ステージに集積される前記媒体を分離して搬送ゲートに搬送する搬送ローラと、
前記ステージ上に前記媒体が残留しているか否かを検出する検出部と、
前記搬送ゲートに残留する前記媒体を叩き落とす舌片を有する舌片ローラと、
前記検出部により前記媒体の残留が検出されなかったときに前記舌片ローラを動作させる制御部と、
を備える、媒体取引装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記舌片ローラを動作させた後に、再度、前記検出部により前記媒体が残留しているか否かを検出させる、請求項1に記載の媒体取引装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記ステージを所定位置まで降下させてから、または降下中に、前記舌片ローラを動作させる、請求項1に記載の媒体取引装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記舌片ローラを動作させた後に、前記ステージを分離位置まで上昇させてから、再度、前記検出部により前記媒体が残留しているか否かを検出させる、請求項3に記載の媒体取引装置。
【請求項5】
前記検出部は、検出光が前記媒体により遮光されたか否かに基づいて前記ステージ上に前記媒体が残留しているか否かを検出する、請求項1に記載の媒体取引装置。
【請求項6】
前記媒体取引装置は、前記検出部として、前記ステージ上の異なる場所を検出する複数の検出部を備える、請求項5に記載の媒体取引装置。
【請求項7】
前記舌片ローラは、前記舌片が前記搬送ゲートに露出する露出位置と、前記舌片が前記搬送ゲートから露出しない退避位置とに移動可能であり、
前記制御部は、前記舌片ローラを動作させる際には、前記舌片ローラを前記露出位置に移動させた上で、前記舌片ローラを回転させる、請求項1に記載の媒体取引装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記ステージを規定量降下させてから、前記舌片ローラを前記露出位置に移動させる、請求項7に記載の媒体取引装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記ステージをさらに所定位置まで降下させてから、または降下中に、前記露出位置に移動させた前記舌片ローラを回転させる、請求項8に記載の媒体取引装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記舌片ローラを動作させた後、前記舌片ローラを前記退避位置に移動させてから前記ステージを上昇させた上で、再度、前記検出部により前記媒体が残留しているか否かを検出させる、請求項7に記載の媒体取引装置。
【請求項11】
前記舌片ローラは、前記舌片が一部に設けられる舌片ローラであり、
前記制御部は、
前記ステージ上に集積される前記媒体を前記搬送ローラにより分離する際は、前記舌片が前記搬送ゲートに露出しない退避角度で前記舌片ローラを停止させ、
前記舌片ローラを動作させる際には、前記舌片ローラを回転させる、
請求項1に記載の媒体取引装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記舌片ローラを動作させた後に前記検出部による検出を行う一連の動作を所定回数行う、請求項1~11のいずれか1項に記載の媒体取引装置。
【請求項13】
プロセッサが、
媒体を収納する収納部の上方に設けられる搬送ローラにより、前記収納部の内部において昇降可能なステージに集積される前記媒体を分離して搬送ゲートに搬送すること、
前記ステージ上に前記媒体が残留しているか否かを検出することと、
前記媒体の残留が検出されなかったときに、前記搬送ゲートに残留する前記媒体を叩き落とす舌片を有する舌片ローラを動作させることと、
を含む、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体取引装置および制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙幣のような紙葉状の媒体を取り扱う媒体収納装置には、媒体を集積する機能と、集積した媒体を繰り出して搬送する機能が設けられている。例えば、下記特許文献1では、媒体が収納される空間に放出され、空間内で正常に集積されなかった媒体を、残留検出部または分離放出部に近接するように案内して正常に繰り出す可能性を高める媒体取引装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-36933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、収納空間に集積された媒体を分離して搬送ゲートに搬送する際に、折れまたは破れ等が生じた媒体が搬送ゲートに残留し、媒体が集積されるステージ上の媒体の残留を検出する検出部で検出できない場合がある。この場合、収納空間内に媒体が残留しているにも関わらず媒体残留無しという誤判断がされ得る。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、媒体残留検出の精度を高めることが可能な、新規かつ改良された媒体取引装置および制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、媒体を収納する収納部と、前記収納部の内部に設けられ、前記媒体が集積される昇降可能なステージと、前記収納部の上方に設けられ、前記ステージに集積される前記媒体を分離して搬送ゲートに搬送する搬送ローラと、前記ステージ上に前記媒体が残留しているか否かを検出する検出部と、前記搬送ゲートに残留する前記媒体を叩き落とす舌片を有する舌片ローラと、前記検出部により前記媒体の残留が検出されなかったときに前記舌片ローラを動作させる制御部と、を備える、媒体取引装置が提供される。
【0007】
前記制御部は、前記舌片ローラを動作させた後に、再度、前記検出部により前記媒体が残留しているか否かを検出させてもよい。
【0008】
前記制御部は、前記ステージを所定位置まで降下させてから、または降下中に、前記舌片ローラを動作させてもよい。
【0009】
前記制御部は、前記舌片ローラを動作させた後に、前記ステージを分離位置まで上昇させてから、再度、前記検出部により前記媒体が残留しているか否かを検出させてもよい。
【0010】
前記検出部は、検出光が前記媒体により遮光されたか否かに基づいて前記ステージ上に前記媒体が残留しているか否かを検出してもよい。
【0011】
前記媒体取引装置は、前記検出部として、前記ステージ上の異なる場所を検出する複数の検出部を備えてもよい。
【0012】
前記舌片ローラは、前記舌片が前記搬送ゲートに露出する露出位置と、前記舌片が前記搬送ゲートから露出しない退避位置とに移動可能であり、前記制御部は、前記舌片ローラを動作させる際には、前記舌片ローラを前記露出位置に移動させた上で、前記舌片ローラを回転させてもよい。
【0013】
前記制御部は、前記ステージを規定量降下させてから、前記舌片ローラを前記露出位置に移動させてもよい。
【0014】
前記制御部は、前記ステージをさらに所定位置まで降下させてから、または降下中に、前記露出位置に移動させた前記舌片ローラを回転させてもよい。
【0015】
前記制御部は、前記舌片ローラを動作させた後、前記舌片ローラを前記退避位置に移動させてから前記ステージを上昇させた上で、再度、前記検出部により前記媒体が残留しているか否かを検出させてもよい。
【0016】
前記舌片ローラは、前記舌片が一部に設けられる舌片ローラであり、前記制御部は、前記ステージ上に集積される前記媒体を前記搬送ローラにより分離する際は、前記舌片が前記搬送ゲートに露出しない退避角度で前記舌片ローラを停止させ、前記舌片ローラを動作させる際には、前記舌片ローラを回転させてもよい。
【0017】
前記制御部は、前記舌片ローラを動作させた後に前記検出部による検出を行う一連の動作を所定回数行ってもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するために本発明の別の観点によれば、プロセッサが、媒体を収納する収納部の上方に設けられる搬送ローラにより、前記収納部の内部において昇降可能なステージに集積される前記媒体を分離して搬送ゲートに搬送すること、前記ステージ上に前記媒体が残留しているか否かを検出することと、前記媒体の残留が検出されなかったときに、前記搬送ゲートに残留する前記媒体を叩き落とす舌片を有する舌片ローラを動作させることと、を含む、制御方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明によれば、媒体残留検出の精度を高めることを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態による自動取引装置1の構成の一例を示すブロック図である。
図2】本実施形態による紙幣収納部142の内部構成を示す模式図である。
図3図2に示す紙幣収納部142を右方向から見た際の紙幣収納部142の内部構成を示す模式図である。
図4】紙幣収納部142から全ての紙幣を繰り出した状態を示す図である。
図5】異常紙幣の残留が検出されない場合について説明する図である。
図6】本実施形態による紙幣残留検出制御の詳細について説明する図である。
図7】本実施形態による紙幣残留検出制御の詳細について説明する図である。
図8】本実施形態による紙幣残留検出制御の詳細について説明する図である。
図9】本実施形態による紙幣残留検出制御の詳細について説明する図である。
図10】本実施形態による紙幣残留検出制御の動作処理の流れを示すフローチャートである。
図11】本実施形態の変形例について説明する図である。
図12】本実施形態による情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0022】
<<1.概要>>
本実施形態は、主に、自動取引装置に設けられる紙幣収納部における紙幣の残留検出の誤判断を低減する仕組みに関する。
【0023】
自動取引装置は、金融機関、商業施設、または小売店等に設置され、少なくとも紙幣を含む現金の入金および出金を取り扱う装置である。また、自動取引装置は、媒体取引装置の一例である。
【0024】
<1-1.自動取引装置1の構成>
図1は、本実施形態による自動取引装置1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示すように、自動取引装置1は、制御部100、操作表示部110、読取部120、通信部130、紙幣処理部140、硬貨処理部150、および記憶部160を有する。
【0025】
制御部100は、例えば、CPU(Central Processing Unit)およびRAM(Random Access Memory)等を中心に構成されており、自動取引装置1の各機能部を制御して、各種の取引(入金取引、出金取引、現金の補充取引、および回収取引等)を実行する。また、制御部100は、各取引の履歴を記憶部160に記憶させる制御を行う。
【0026】
操作表示部110は、各種取引のメニュー画面、案内画面、操作誘導画面等を表示する表示部、および顧客が操作入力を行うための入力部としての機能を包含する。表示部としての機能は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置により実現される。また、入力部としての機能は例えばタッチパネルにより実現される。表示部および入力部の機能は、一体に構成されてもよいし、分離して構成されてもよい。
【0027】
読取部120は、レシート等の紙状媒体に印字された情報を光学的に読み取る機能を有する。紙状媒体に印字された情報は、一次元バーコードやQRコード(登録商標)といった符号化した情報により印字出力されている場合も想定され得る。読取部120は、例えばカメラまたはバーコードリーダにより実現されてもよい。
【0028】
通信部130は、例えば専用網(LANなど)を介して、上位PCとデータの送受信を行う。例えば通信部130は、締上取引が行われた際に、集計した売上金の情報を上位PCに送信する。
【0029】
紙幣処理部140は、紙幣の入金処理および紙幣の出金処理を行う。具体的には、紙幣処理部140は、紙幣入出金口、紙幣一時保留部、紙幣鑑別部、紙幣カセット(紙幣収納部の一例)を有する。紙幣入出金口は、紙幣を投入するための投入口と、出金取引において紙幣を出金するための出金口と、入金された紙幣を返却するための返却口と、を兼ねる。紙幣一時保留部は、入金計数時に一時的に紙幣を集積する。紙幣鑑別部は、投入された紙幣の真偽、金種、正損等を鑑別する。紙幣鑑別部は、投入された紙幣の計数を行う計数部でもある。紙幣カセットは、金種別に紙幣を収納するカセット(例えば、万券カセット、五千券カセット、および千券カセット)と、回収カセットと、を有する。また、紙幣処理部140の内部には、紙幣を搬送する搬送路が設けられている。搬送路は、例えば紙幣入出金口から入金された現金を紙幣鑑別部に搬送したり、紙幣鑑別部を通過した紙幣を紙幣一時保留部に搬送したり、紙幣一時保留部に集積された紙幣を紙幣カセットに搬送したりする。このような構成から成る紙幣処理部140は、紙幣入出金口から投入された紙幣の入金処理、および紙幣入出金口への紙幣の出金処理を行う。
【0030】
硬貨処理部150は、硬貨の入金処理および硬貨の出金処理を行う。具体的には、硬貨処理部150は、硬貨投入口、硬貨鑑別部、硬貨一時保留部、硬貨返却箱、出金ホッパ、硬貨出金箱、および硬貨回収庫を有する。硬貨投入口は、操作者が硬貨を入金するための投入口である。硬貨鑑別部は、投入された硬貨の真偽、金種、正損等の鑑別を行う。硬貨鑑別部は、投入された硬貨の計数を行う計数部でもある。また、硬貨処理部150の内部には、硬貨を搬送する搬送路が設けられている。搬送路は、例えば硬貨投入口から入金された現金を硬貨鑑別部に搬送したり、硬貨鑑別部を通過した硬貨を硬貨一時保留部に搬送したりする。このような構成から成る硬貨処理部150は、硬貨投入口から投入された硬貨の入金処理、および硬貨出金箱等への硬貨の出金処理を行う。
【0031】
記憶部160は、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)等から実現され、自動取引装置1の動作を制御するための制御プログラムや、自動取引装置1の取引時における入力データ、表示画面等を格納する。また、記憶部160は、制御部100の制御に従って、現金取扱装置1で行われた各取引内容を記憶する。
【0032】
以上、自動取引装置1の構成の一例について説明した。なお、自動取引装置1の構成は図1に示す例に限定されない。例えば、自動取引装置1は、IDカードまたはICカード等から利用者に関する情報を読み取るカードリーダ部、利用者の生体情報を読み取る生体読取部、暗証番号の入力を受け付けるキーパッド等の暗証番号入力部、および取引の結果を紙状媒体(例えばレシート)に印字して発行するレシートプリンタ部等をさらに有していてもよい。また、自動取引装置1は、例えば、読取部120、通信部130、および硬貨処理部150を有していなくともよい。
【0033】
<1-2.紙幣収納部について>
ここで、自動取引装置1は、箱状の筐体を中心に構成され、利用者が対峙する筐体の前面には、操作表示部110、読取部120、紙幣入出金口、および硬貨投入口等が設けられる。また、筐体の内部には、制御部100、通信部130、紙幣処理部140、硬貨処理部150、および記憶部160が設けられる。
【0034】
紙幣処理部140には、媒体を収納する収納部の一例である紙幣カセット(紙幣収納部)が設けられる。紙幣処理部140は、入金取引時には、入金された紙幣を紙幣カセットに集積し、出金取引時には、紙幣カセットから紙幣を一枚ずつ分離して出金する。以下、紙幣収納部の内部構成について図面を参照して説明する。
【0035】
図2は、本実施形態による紙幣収納部142の内部構成を示す模式図である。図2に示すように、紙幣収納部142の内部には、紙幣Pが集積され、かつ昇降可能なステージ20が設けられる。また、紙幣収納部142の内部上方には、ステージ20に集積される最上位の紙幣Pが押圧されるピッカローラ22が設けられる。ピッカローラ22は、紙幣を搬送する搬送ローラである。ピッカローラ22の数は特に限定しない。ピッカローラ22には、紙幣Pの分離繰り出しが容易なように、その外周面の一部にゴム等の摩擦係数の大きい高摩擦部材23が取付けられている。
【0036】
図3は、図2に示す紙幣収納部142を右方向から見た際の紙幣収納部142の内部構成を示す模式図である。図3に示すように、ステージ20の上には、紙幣Pが集積されている。紙幣を分離繰り出しする際、制御部100は、ステージ20を上昇させ、ピッカローラ22に集積紙幣を押し付けた状態で、ピッカローラ22を図示方向へ回転させることで、集積紙幣から最上位の紙幣を分離し、搬送路の入り口である搬送ゲート26へ繰り出すことができる。搬送ゲート26に繰り出された紙幣は、搬送路に設けられる図示しない一対の搬送ローラにより搬送され得る。
【0037】
図4は、紙幣収納部142から全ての紙幣を繰り出した状態を示す図である。図4左には、紙幣収納部142の正面図、図4右には、紙幣収納部142の右側面図を示す。図4に示すように、ステージ20には、ステージ20上に紙幣が残留しているか否かを検出する検出部として、残留検出部31(発光部31aおよび受光部31b)および残留検出部32(発光部32aおよび受光部32b)が設けられている。ステージ20には、各発光部31a、31bから発光される検出光が各々通過する通過孔が設けられている。ステージ20上に1枚以上の紙幣が載置されている場合、検出光は紙幣により遮光されるため、受光部31b、32bにおいて受光できない。各受光部31b、32bは、検出光を受光したか否かの受光結果を制御部100に出力する。
【0038】
制御部100は、受光部31b、32bが検出光を受光したか否かに基づいて、ステージ20上における紙幣の残留有無を判断する。残留検出部31および残留検出部32は、ステージ20上の異なる場所を検出するよう配置されている。残留検出部の数および配置は、図4に示す例に限定されない。制御部100は、残留検出部31および残留検出部32のいずれでも紙幣の残留が検出されなかった場合(具体的には各受光部31b、32bが検出光を受光した場合)、紙幣残留無し、すなわち、紙幣エンド(紙幣収納部142が空)の状態と判断する。制御部100は、紙幣エンドの旨を上位PCに通知してもよい。
【0039】
しかしながら、分離繰り出しされる紙幣に折れまたは破れ等が生じ、搬送ゲート26の端等、検出光を遮光しない場所に残留すると、残留検出部31、32で紙幣残留が検出されない場合がある。図5は、異常紙幣の残留が検出されない場合について説明する図である。図5に示すように、発光部31aおよび発光部32aのいずれから発光される検出光も遮光しない場所に異常紙幣P1が位置する場合、受光部31bおよび受光部32bのいずれでも検出光が受光される。具体的には、異常紙幣P1が、例えば図5左に示すように、ステージ20の背面に位置する搬送ゲート26の長手方向における端に位置する場合が想定される。いずれの検出光も遮光されないため、制御部100は、紙幣収納部142内に紙幣が残留しているにも関わらず「紙幣残留無し」と誤った判断を行うこととなり、紙幣エンドを上位PCへ通知してしまい、現金違算が発生し得る。
【0040】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、媒体残留検出の精度を高めることを可能とする。
【0041】
以下、本実施形態による紙幣残留検出制御の詳細について説明する。
【0042】
<<2.紙幣残留検出制御>>
紙幣収納部142からの紙幣の分離繰り出しが終了し、紙幣エンドが検出された場合であっても、上述したように、搬送ゲート26の端等に異常紙幣が残留している場合がある。本実施形態では、紙幣エンドが検出された場合に、所定の制御を行うことで、媒体残留無しの誤判断を低減することを可能とする。より具体的には、制御部100は、残留検出部において紙幣の残留が検出されなかったときに、搬送ゲート26に残留する紙幣を叩き落とす舌片を有する舌片ローラを動作させて、再度、残留検出部により紙幣の残留を検出する。
【0043】
舌片ローラは、駆動軸(回転軸でもある)に設けられる円筒状の結合部材(例えばハブ部)の外周面から放射状に延びる複数の舌片を有する羽根車形状のローラである。舌片は、天然ゴムまたは合成ゴム等の弾性素材を用いて形成され得る。図3図5では、舌片ローラ24が、舌片が搬送ゲート26に露出しない位置に退避した状態が示されている。図4に示すように、舌片ローラ24は、搬送ゲート26の長手方向に4つ設けられているが、舌片ローラ24の数は特に限定しない。
【0044】
舌片ローラ24は、図示しない機構により、舌片が搬送ゲート26に露出する露出位置へ移動可能である。舌片ローラ24は、紙幣収納部142に紙幣が集積される際に、制御部100の制御により露出位置に移動し、搬送ゲート26から紙幣収納部142の内部(収納空間内)に放出される紙幣の後端を舌片で叩き落とすよう反時計回りに回転し得る。
【0045】
本実施形態では、このように紙幣集積時に用いられる舌片ローラ24を、紙幣分離時における紙幣残留検出制御にも活用することで、部品構成を変化させることなく媒体残留無しの誤判断を低減させることが可能となる。
【0046】
図6図9は、本実施形態による紙幣残留検出制御の詳細について説明する図である。各図左には、紙幣収納部142の正面図、各図右には、紙幣収納部142の右側面図を示す。まず、図6に示すように、異常紙幣P1があるにも関わらず検出光が遮光されず、いずれの残留検出部31、32でも紙幣エンド(残留紙幣無し)が検出されると、制御部100は、ステージ20を規定量降下させ、舌片が露出する空間を確保した上で、舌片ローラ24を露出位置に移動させる。なお、ステージ20を規定量降下させずとも舌片ローラ24を露出位置に移動させることができる場合には、この限りではない。
【0047】
次に、制御部100は、図7に示すように、ステージ20を所定位置まで降下させてから、または降下中に、舌片ローラ24を反時計回りに回転させることで、図8に示すように、異常紙幣P1をステージ20上に叩き落とすことが可能となる。舌片ローラ24の数および配置は特に限定しないが、例えば図7左に示すように、複数の舌片ローラ24は紙幣収納部142の長手方向に4つ設けられる。複数の舌片ローラ24が、図7左では図示を省略している搬送ゲート26の長手方向両端に少なくとも設けられることで、搬送ゲート26の端に挟まってしまった異常紙幣P1を叩き落とすことが可能となる。舌片ローラ24の回転数は特に限定しない。制御部100は、所定回数または所定時間、舌片ローラ24を回転させてもよい。
【0048】
ステージ20を降下させる際の上記所定位置は、叩き落とされる紙幣がステージ上における各発光部31a、31bから発光される検出光を遮光する位置に落下し得る距離を少なくとも確保できる位置であればよい。かかる位置は、例えば集積位置であってもよい。集積位置とは、ステージ20が降下できる最も下の位置である。
【0049】
続いて、制御部100は、図9に示すように、舌片ローラ24を退避位置に移動させた上で、ステージ20を分離位置まで上昇させる制御を行う。分離位置とは、紙幣Pを分離繰り出しできる位置、すなわち、ピッカローラ22に紙幣Pが押圧される位置である。図9に示す例では、分離位置は、ステージ20が上昇できる最も上の位置である。
【0050】
そして、制御部100は、再度、残留検出部31および残留検出部32による紙幣残留検出を行う。ここで、図9に示すように、発光部31aおよび発光部32aから発光される検出光の少なくともいずれかが異常紙幣P1により遮光された場合、制御部100は、紙幣が残留していると正しく判断することができる。制御部100は、上位PCに紙幣残留を通知し、現金違算を防止することができる。なお、制御部100は、「異常紙幣の残留」と判断し、上位PCに異常紙幣発生の旨を通知してもよい。
【0051】
(動作処理)
図10は、本実施形態による紙幣残留検出制御の動作処理の流れを示すフローチャートである。
【0052】
図10に示すように、まず、制御部100は、紙幣収納部142からの紙幣の分離繰り出しを行う(ステップS103)。具体的には、制御部100は、ステージ20を上昇させて、ステージ20に集積されている最上位の紙幣をピッカローラ22に押圧させ、ピッカローラ22を回転させて最上位の紙幣を搬送ゲート26に搬送する。
【0053】
次に、制御部100は、残留検出部31および残留検出部32からの検出結果(具体的には、各受光部31b、32bにおける検出光の受光結果)に基づいて、紙幣エンド(すなわち、残留紙幣無し)が検出されたか否かを判断する(ステップS106)。制御部100は、出金枚数分の紙幣の分離繰り出しを行う度に、残留検出を行う。紙幣エンドが検出されなかった場合(ステップS106/No)、制御部100は動作を終了する。
【0054】
次いで、紙幣エンドが検出された場合(ステップS106/Yes)、制御部100は、ステージ20を規定量降下させた上で、舌片が搬送ゲート26に露出する露出位置まで、舌片ローラ24を移動させる(ステップS109)。
【0055】
次に、制御部100は、ステージ20をさらに降下させ、舌片ローラ24を回転させる(ステップS121)。これにより、残留検出部31および残留検出部32のいずれでも検出できなかった異常紙幣が舌片によりステージ20上に叩き落とされる可能性がある。
【0056】
続いて、制御部100は、舌片が搬送ゲート26に露出しない退避位置まで、舌片ローラ24を移動させる(ステップS124)。
【0057】
そして、制御部100は、ステージ20を分離位置まで上昇させた上で、残留紙幣の検出を再度行う(ステップS127)。上述したように残留検出部31および残留検出部32のいずれでも検出できなかった異常紙幣が舌片によりステージ20上に叩き落とされた場合、残留紙幣が検出され得る。
【0058】
以上、本実施形態による紙幣残留検出制御の動作処理の一例について説明した。なお、制御部100は、図10に示すステップS106~S127に示す処理を、所定回数繰り返してもよい。すなわち、ステップS127において残留紙幣が検出されなかった場合に、再度、ステップS109~S127に示す処理を行ってもよい。また、制御部100は、ステージ20の降下、舌片ローラ24の回転、およびステージ20の上昇を、所定回数行った上で、ステップS127に示す紙幣残留検出を行ってもよい。
【0059】
また、上述した実施形態では、紙幣集積時に用いられる舌片ローラ24を紙幣分離時にも活用する旨を説明したが、本実施形態はこれに限定されない。舌片ローラ24は、本実施形態による紙幣残留検出制御のみに活用される構成であってもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、ステージ20を所定位置まで降下させてから、または降下中に、舌片ローラ24を回転させる旨を説明したが、本実施形態はこれに限定されない。例えば、ステージ20を降下させずともステージ20上に集積空間が確保できている場合、制御部100は、ステージ20を降下させずに、舌片ローラ24を回転させてもよい。集積空間が確保できている場合とは、搬送ゲート26とステージ20との間に所定の距離が確保されている場合を想定する。所定の距離とは、例えば、舌片で叩き落とされる紙幣の姿勢が変化し得る距離であってもよく、改め設定され得る。
【0061】
<<3.変形例>>
次に、本実施形態の変形例について説明する。上述した実施形態では、複数の舌片が放射状に等間隔で設けられる舌片ローラ24を用い、舌片ローラ24の動作として、舌片ローラ24を退避位置から露出位置に移動させた上で回転させたが、本発明による舌片ローラの形状および動作はこれに限定されない。
【0062】
図11は、本実施形態の変形例について説明する図である。図11に示すように、変形例による紙幣収納部143は、複数の舌片が一部に設けられる部分舌片ローラ28を有する。制御部100は、図11左に示すように、舌片が搬送ゲート26に露出しない角度(退避角度)で舌片ローラ28の回転角度を停止させる制御と、図11右に示すように、部分舌片ローラ28を図示する方向(反時計回り)に回転させる制御を行い得る。制御部100は、まず、図11左に示す状態(退避状態)で停止させることで、例えばステージ20に集積される紙幣を分離繰り出しする際における紙幣の搬送を舌片で邪魔しないようにすることができる。次いで、分離繰り出し後の紙幣残留検出制御においては、図11右に示すように、部分舌片ローラ28を回転させることで、舌片を搬送ゲート26に露出させ、異常紙幣P1を叩き落とすことができる。制御部100は、部分舌片ローラ28を回転させる際には、ステージ20を予め降下させて集積空間を確保してもよい。
【0063】
このように、複数の舌片が一部に設けられる部分舌片ローラ28を用いることで、舌片ローラを移動させるための機構を備えることなく、制御部100により舌片の退避と露出を制御し得る。
【0064】
<<4.ハードウェア構成例>>
続いて、本実施形態に係る自動取引装置1のハードウェア構成について説明する。上記の動作は、ソフトウェアと、以下に説明するハードウェアとの協働により実現される。
【0065】
図12は、本実施形態による情報処理装置900のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。情報処理装置900は、本実施形態による自動取引装置1に適用されるハードウェア構成の一例である。
【0066】
情報処理装置900は、CPU(Central Processing Unit)901と、ROM(Read Only Memory)902と、RAM(Random Access Memory)903と、ホストバス904と、ブリッジ905と、外部バス906と、インタフェース907と、入力機器908と、出力機器909と、ストレージ機器910と、ドライブ911と、通信機器913と、を備える。
【0067】
CPU901は、演算処理装置および制御装置として機能し、各種プログラムに従って情報処理装置900内の動作全般を制御する。また、CPU901は、マイクロプロセッサであってもよい。ROM902は、CPU901が使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する。RAM903は、CPU901の実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する。これらはCPUバス等から構成されるホストバス904により相互に接続されている。CPU901、ROM902およびRAM903の協働により、自動取引装置1の制御部100が実現される。
【0068】
ホストバス904は、ブリッジ905を介して、PCI(Peripheral Component Interconnect/Interface)バス等の外部バス906に接続されている。なお、必ずしもホストバス904、ブリッジ905および外部バス906を分離構成する必要はなく、1つのバスにこれらの機能を実装してもよい。
【0069】
入力機器908は、マウス、キーボード、タッチパネル、ボタン、スイッチまたはマイクロフォン等、操作者が情報を入力するための入力手段と、操作者による入力に基づいて入力信号を生成し、CPU901に出力する入力制御回路等から構成されている。情報処理装置900を操作する操作者は、この入力機器908を操作することにより、情報処理装置900に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりすることができる。入力機器908により、自動取引装置1の操作表示部110が有する入力機能が実現される。
【0070】
出力機器909は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置、ランプ等の表示装置およびスピーカ等の音声出力装置を含む。出力機器909により、自動取引装置1の操作表示部110が有する表示機能が実現される。
【0071】
ストレージ機器910は、データ格納用の機器である。ストレージ機器910は、記憶媒体、記憶媒体にデータを記録する記録装置、記憶媒体からデータを読み出す読出し装置および記憶媒体に記録されたデータを削除する削除装置等を含んでもよい。ストレージ機器910により、自動取引装置1の記憶部160が実現される。
【0072】
ドライブ911は、記憶媒体用リーダライタであり、情報処理装置900に外付けされる。ドライブ911は、装着される磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、または半導体メモリ等のリムーバブル記憶媒体912に記録されている情報を読み出して、RAM903に出力する。また、ドライブ911は、リムーバブル記憶媒体912に情報を書き込むこともできる。
【0073】
通信機器913は、通信を行うための通信デバイス等で構成された通信インタフェースである。当該通信機器913により、自動取引装置1の通信部130が実現される。
【0074】
なお、情報処理装置900のハードウェア構成は、図12に示す構成に限られない。例えば、情報処理装置900は、接続されている外部の通信デバイスを介して通信を行う場合には、通信機器913を備えていなくてもよい。また、情報処理装置900は、例えば、入力機器908または出力機器909等を備えなくてもよい。また、例えば、図12に示す構成の一部または全部は、1または2以上のIC(Integrated Circuit)で実現されてもよい。
【0075】
<<5.補足>>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0076】
例えば、上述した実施形態による紙幣収納部142は、金種別に紙幣を収納する各紙幣カセットを想定しているが、本発明はこれに限定されず、例えば、入金計数時に紙幣を一時的に集積する紙幣一時保留部であってもよい。
【0077】
また、自動取引装置1は、媒体取引装置の一例である。上述した紙幣は、媒体の一例である。また、紙幣処理部140全体を制御する制御部を有する紙幣処理部140を、媒体取引装置の一例としてもよい。
【0078】
また、自動取引装置1に内蔵されるCPU、ROM、およびRAM等のハードウェアに、自動取引装置1の機能を発揮させるための1以上のコンピュータプログラムも作成可能である。また、当該1以上のコンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0079】
1 自動取引装置
100 制御部
110 操作表示部
120 読取部
130 通信部
140 紙幣処理部
142 紙幣収納部
150 硬貨処理部
160 記憶部
142 紙幣収納部
20 ステージ
22 ピッカローラ
24 舌片ローラ
26 搬送ゲート
28 部分舌片ローラ
31、32 残留検出部
31a、32a 発光部
31b、32b 受光部
P 紙幣

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12