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  • 特開-早期地震警報出力方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053328
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】早期地震警報出力方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/01 20240101AFI20240408BHJP
【FI】
G01V1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159520
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】野田 俊太
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直泰
(72)【発明者】
【氏名】是永 将宏
(72)【発明者】
【氏名】片上 智史
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105EE01
2G105MM02
2G105NN02
(57)【要約】
【課題】適切な地震警報を早期に出力することができる早期地震警報出力方法を提供する。
【解決手段】ある地点を震源または震央にして所定規模の地震が発生したと仮定し、前記地点の周辺に存在する複数の観測点における地震動指標値の大きさを計算して、複数の観測点に対応する閾値とする。前記地点に所定規模の地震が発生した場合に、地震警報を出力する警報出力地域を設定する。複数の観測点に対応する閾値および警報出力地域が記録されたデータテーブルを、複数の地点に対応して複数作成する。地震が発生したとき、少なくとも1個の観測点で観測された地震動指標値が、複数のデータテーブルのうち第1データテーブルに記録されている前記1個の観測点に対応する閾値を超えた場合に、第1データテーブルに記録された警報出力地域に地震警報を出力する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある地点を震源または震央にして所定規模の地震が発生したと仮定し、前記地点の周辺に存在する複数の観測点における地震動指標値の大きさを計算して、前記複数の観測点に対応する閾値とし、
前記地点に前記所定規模の地震が発生した場合に、地震警報を出力する警報出力地域を設定し、
前記複数の観測点に対応する閾値および前記警報出力地域が記録されたデータテーブルを、複数の前記地点に対応して複数作成し、
地震が発生したとき、少なくとも1個の観測点で観測された地震動指標値が、前記複数のデータテーブルのうち第1データテーブルに記録されている前記1個の観測点に対応する前記閾値以上となる場合に、前記第1データテーブルに記録された前記警報出力地域に地震警報を出力する、
早期地震警報出力方法。
【請求項2】
地震が発生したとき、m個(mは複数)の観測点で観測された地震動指標値が、前記第1データテーブルに記録されている前記m個の観測点に対応する前記閾値以上となる場合に、前記第1データテーブルに記録された前記警報出力地域に地震警報を出力する、
請求項1に記載の早期地震警報出力方法。
【請求項3】
前記複数の観測点における前記地震動指標値の大きさを、地震動の距離減衰式により計算する、
請求項1または2に記載の早期地震警報出力方法。
【請求項4】
前記複数の地点のうち第1地点に第1規模の地震が発生した場合に、第1警報出力地域に地震警報を出力すると設定し、
前記複数の地点のうち第2地点に第2規模の地震が発生した場合にも、前記第1警報出力地域に地震警報を出力すると設定するとき、
前記第1警報出力地域から前記第2地点までの距離が前記第1地点までの距離より長い場合に、前記第2規模を前記第1規模より大きく設定する、
請求項1または2に記載の早期地震警報出力方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、早期地震警報出力方法に関する。
【背景技術】
【0002】
しきい値超過判定手法(または規定値超過判定手法)と呼ばれる従来技術では、ある1点の地震観測点で予め設定されたしきい値を越える大きさの地震動が観測された場合、予め設定された対応する区間を走行する列車を停止させるための警報が出力されていた(非特許文献1および2参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】S. Yamamoto, M. Tomori, ”Earthquake early warning system for railways and its performance”, Journal of Japan Society of Civil Engineers, Vol. 1, pp.322-328, 2013.
【非特許文献2】宮腰寛之,山本俊六,祗園昭宏,神山真樹,他谷周一,渡辺篤,功刀卓,“鉄道の早期地震警報への海底地震計情報活用に向けたデータ処理”,鉄道総研報告,Vol.29,No.1,pp.35-40,2015
【非特許文献3】是永将宏,岩田直泰,山本俊六,野田俊太,下野五月,小野友也,“早期地震情報の利用を念頭に置いた距離減衰式の提案”,土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度),I-481,pp.961-962
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非常に大きな地震が発生した場合、広い地域に警報を出力する必要がある。その際、しきい値超過判定手法(または規定値超過判定手法)と呼ばれる従来技術では、地震の震源に近い地域には震源に近い地震観測点のデータから速やかに警報を出力することができるが、震源から遠い地域に対しては、その地域に対応する地震計(つまり、震源から遠い地震計)でしきい値を越える地震動が観測されない限り、警報を出力することができない。すなわち、非常に大きな地震の場合に、震源に近い観測点で早い時点で大きな揺れが観測され、それが大きな地震であると判明している状況であっても、震源から遠い地域への警報出力は、震源から遠い地震計に大きな揺れが到達することを待たなくてはならない。そのため、警報の遅れに繋がる可能性がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、適切な地震警報を早期に出力することができる早期地震警報出力方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の早期地震警報出力方法では、ある地点を震源または震央にして所定規模の地震が発生したと仮定し、前記地点の周辺に存在する複数の観測点における地震動指標値の大きさを計算して、複数の観測点に対応する閾値とする。前記地点に所定規模の地震が発生した場合に、地震警報を出力する警報出力地域を設定する。複数の観測点に対応する閾値および警報出力地域が記録されたデータテーブルを、複数の地点に対応して複数作成する。地震が発生したとき、少なくとも1個の観測点で観測された地震動指標値が、複数のデータテーブルのうち第1データテーブルに記録されている前記1個の観測点に対応する閾値以上となる場合に、第1データテーブルに記録された警報出力地域に地震警報を出力する。
【0007】
地震が発生したとき、各観測点で観測された地震動指標値と、複数のデータテーブルに記録されている各観測点に対応する閾値とを比較する。少なくとも1個の観測点で観測された地震動指標値が、第1データテーブルに記録されている前記1個の観測点に対応する閾値以上となる場合に、第1データテーブルに対応する地点の近くで所定規模以上の地震が発生したと判断する。観測された地震動指標値と閾値との比較により所定規模地震の発生および震源または震央の位置を判断するので、地震発生時に地震動の大きさの分布を計算する場合と比べて、計算負荷が小さい。広い地域への警報出力が必要である所定規模地震が発生したと判断した場合に、第1データテーブルに記録された警報出力地域に地震警報を出力する。震源または震央の周辺の観測点で地震動指標値が観測された時点で、震源または震央から遠い(警報出力地域に近い)観測点で地震動指標値が観測される前に、警報出力地域に地震警報を出力する。これにより、適切な地震警報を早期に出力することができる。
【0008】
地震が発生したとき、m個(mは複数)の観測点で観測された地震動指標値が、第1データテーブルに記録されている前記m個の観測点に対応する閾値以上となる場合に、第1データテーブルに記録された警報出力地域に地震警報を出力する。
第1データテーブルに対応する地点の近くで所定規模以上の地震が発生したとする判断の信頼性が高まる。これにより、適切な地震警報を出力することができる。
【0009】
複数の観測点における地震動指標値の大きさを、地震動の距離減衰式により計算する。
地震動指標値の大きさを精度良く計算することができる。
【0010】
複数の地点のうち第1地点に第1規模の地震が発生した場合に、第1警報出力地域に地震警報を出力すると設定する。複数の地点のうち第2地点に第2規模の地震が発生した場合にも、第1警報出力地域に地震警報を出力すると設定する。第1警報出力地域から第2地点までの距離が第1地点までの距離より長い場合に、第2規模を第1規模より大きく設定する。
【0011】
第2地点で第1規模の地震が発生した場合に第1警報出力地域で発生する地震動の大きさは、第1地点で第1規模の地震が発生した場合に第1警報出力地域で発生する地震動の大きさより小さい。第2地点で第1規模の地震が発生した場合には、第1警報出力地域への地震警報の出力が不要である可能性がある。第2規模を第1規模より大きく設定することにより、第1警報出力地域に対して適切な地震警報を出力することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の早期地震警報出力方法では、観測された地震動指標値と閾値との比較により地震の規模および震源または震央の位置を判断するので、地震発生時に地震動の大きさの分布を計算する場合と比べて、計算負荷が小さい。震源または震央に近い観測点で地震動指標値が観測された時点で、震源または震央から遠い(警報出力地域に近い)観測点で地震動指標値が観測される前に、警報出力地域に地震警報を出力する。これにより、適切な地震警報を早期に出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】震央、警報出力地域および観測点の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態の早期地震警報出力方法を、図面を参照して説明する。
実施形態の早期地震警報出力方法では、予めデータテーブルを作成する。データテーブルは、警報出力地域の情報と、複数の観測点における地震動指標値の閾値の情報と、を含む。
【0015】
図1は、震央、警報出力地域および観測点の説明図である。図1の縦軸は緯度であり、横軸は経度である。
第1警報出力地域A1は、第1地点C1を震源または震央にして所定規模の地震が発生した場合に、地震警報を出力する地域である。地震警報は、地震発生の事実に加えて、鉄道車両の運行停止の指示などを含んでもよい。地域は、都道府県または市町村などの行政単位や、鉄道の路線区間などである。地震の規模は、例えば気象庁マグニチュードMで評価するが、モーメントマグニチュードなど他のマグニチュード指標値で評価してもよい。所定規模の地震は、大規模な地震であり、例えばM=7.5の地震である。震源または震央となる第1地点C1は、陸域または海域である。第1地点C1は、設定した第1警報出力地域A1、地震警報の内容および地震規模(所定規模)の大きさに従って選択する。第1地点C1は、その地点で所定規模の地震が発生した場合に、第1警報出力地域A1に所定の大きさの地震動が発生するような地点に設定されてもよい。地震動指標値は、最大加速度や計測震度、SI値(スペクトル強度)などである。
【0016】
観測点Pは、地震動指標値の観測計が設置された地点である。観測点Pは、陸上および海底に存在する。例えば、複数の観測点Pが、緯度および経度で約0.2度ごと(約20kmごと)に分布している。複数の観測点Pは、必ずしも均等に分布していない。
【0017】
複数の観測点における地震動指標値の閾値は、以下のように求める。ある地点を震源または震央にして所定規模の地震が発生したと仮定する。その地点の周辺に存在する複数の観測点における地震動指標値の大きさを計算する。その計算結果を、複数の観測点に対応する地震動指標値の閾値とする。例えば、第1地点C1を震源または震央にして、M=7.5の地震が発生したと仮定する。第1地点C1の周囲には、複数の観測点P1-P5が存在する。地震動指標値として、例えば最大加速度を選択する。複数の観測点P1-P5における最大加速度の大きさを、地震動の距離減衰式により算出する。非特許文献3に記載された距離減衰式の一例を数1に示す。
【0018】
【数1】
ただし、PGAは最大加速度(水平2成分合成加速度の最大値)、Mは気象庁マグニチュード、Dは震源深さ、Xは断層最短距離または震源距離である。地震動指標値が鉄道用最大加速度(5Hzハイカットフィルタ処理を行った水平2成分合成加速度の最大値)PGAJRの場合には、数1のlog(PGA)がlog(PGAJR)に置換される。地震動指標値が計測震度Iの場合には、数1のlog(PGA)がIに置換される。地震動指標値がSI値の場合には、数1のlog(PGA)がlog(SI)に置換される。a、a、b、c、d、dおよびcは、回帰で求める係数であり、地震動指標値ごとに表1に示される。cは、観測点ごとに求められる地点補正値であり、全観測点での平均が0となるように定めている。
【0019】
【表1】
【0020】
複数の観測点P1-P5における最大加速度の計算結果を、複数の観測点P1-P5に対応する最大加速度の閾値S1-S5とする。閾値を設定する観測点の個数は、5個に限られない。
以上のように設定した複数の観測点P1-P5に対応する閾値S1-S5および第1警報出力地域A1を、第1地点C1に対応する第1データテーブルT1に記録する。第1データテーブルT1に記録された閾値S1-S5を、閾値S1(T1)-S5(T1)と表記する。
【0021】
複数の地点に対応する複数のデータテーブルを作成する。例えば、緯度および経度で約0.1度ごと(約10kmごと)に複数の地点を設定し、複数のデータテーブルを作成する。第1地点C1の近くの第2地点C2について、第2データテーブルT2を作成する。第2地点C2を震源または震央にして、M=7.5の地震が発生したと仮定する。第2警報出力地域A2(不図示)を設定する。第2警報出力地域A2の一部または全部が、第1警報出力地域A1と重複してもよい。第2地点C2の周囲には、複数の観測点P5-P9が存在する。複数の観測点P5-P9における最大加速度の大きさを、地震動の距離減衰式により算出する。最大加速度の計算結果を、複数の観測点P5-P9に対応する最大加速度の閾値S5-S9とする。閾値S5-S9および第2警報出力地域A2を、第2データテーブルT2に記録する。
【0022】
実施形態の早期地震警報出力方法では、地震が発生したとき、複数の観測点で観測された地震動指標値と、複数のデータテーブルに記録された前記複数の観測点に対応する閾値とを比較する。少なくとも1個の観測点で観測された地震動指標値が、複数のデータテーブルのうち第1データテーブルに記録されている前記1個の観測点に対応する閾値以上となる場合がある。このとき、第1データテーブルに対応する地点の近くで所定規模の地震が発生したと判断する。そして、第1データテーブルに記録された警報出力地域に地震警報を出力する。
【0023】
例えば、観測点P1-P5で観測された最大加速度と、第1データテーブルT1に記録された閾値S1(T1)-S5(T1)とを比較する。観測点P1-P5で観測された最大加速度が、対応する閾値S1(T1)-S5(T1)未満となる場合がある。このとき、第1地点C1の近くではM=7.5以上の地震が発生していないと判断する。この場合には、第1警報出力地域A1に対して地震警報を出力しない。
【0024】
同様に、観測点P5-P9で観測された最大加速度と、第2データテーブルT2に記録された閾値S5(T2)-S9(T2)とを比較する。観測点P5-P9で観測された最大加速度が、対応する閾値S5(T2)-S9(T2)未満となる場合がある。このとき、第2地点C2の近くではM=7.5以上の地震が発生していないと判断する。この場合には、第2警報出力地域A2に対しても地震警報を出力しない。
【0025】
これに対して、少なくとも1個の観測点P5で観測された最大加速度α5が、第1データテーブルT1に記録された閾値S5(T1)以上となる場合がある。このとき、第1地点C1の近くでM=7.5以上の地震が発生したと判断する。この場合には、第1警報出力地域A1に対して地震警報を出力する。
【0026】
この場合でも、観測点P5で観測された最大加速度α5が、第2データテーブルT2に記録された閾値S5(T2)未満となる場合がある。他の観測点P6-P9で観測された加速度も、対応する閾値S6(T2)-S9(T2)未満となる場合には、第2地点C2の近くでM=7.5以上の地震が発生していないと判断する。この場合には、第2警報出力地域A2に対して地震警報を出力しない。この結果、第1警報出力地域A1のみに対して地震警報が出力される。
【0027】
さらに、少なくとも1個の観測点P5で観測された最大加速度α5が、第1データテーブルT1に記録された閾値S5(T1)および第2データテーブルT2に記録された閾値S5(T2)の両方を超える場合がある。発生した地震の規模がM=7.5を大きく超える場合には、最大加速度α5が閾値S5(T1)および閾値S5(T2)の両方を超える可能性がある。このとき、第1地点C1および第2地点C2の近くでM=7.5以上の地震が発生したと判断する。この場合には、第1警報出力地域A1および第2警報出力地域A2に対して地震警報を出力する。第2警報出力地域A2の一部または全部が第1警報出力地域A1と重複する場合には、重複する地域に対して1回のみ地震警報を出力すればよい。
【0028】
特定のデータテーブルに対応する地点と同じ場所で所定規模以上の地震が発生した場合には、その地点の周囲に存在する複数の観測点で観測される地震動指標値が、そのデータテーブルに記録された前記複数の観測点に対応する閾値以上となる。その地点から少し離れた場所で所定規模以上の地震が発生した場合には、その地点の周囲に存在する複数の観測点のうち少なくとも1個の観測点で観測される地震動指標値が、そのデータテーブルに記録された前記1個の観測点に対応する閾値以上となる。全ての観測点に対応する閾値が、複数のデータテーブルのうち少なくとも1つのデータテーブルに記載されるように、複数のデータテーブルを準備することが望ましい。これにより、全ての所定規模以上の地震の発生を把握することができると共に、震源または震央の概略位置を把握することができる。
【0029】
地震が発生したとき、m個(mは複数)の観測点で観測された地震動指標値が、第1テーブルに記録されている前記m個の観測点に対応する閾値以上となる場合がある。この場合に、第1データテーブルに対応する地点の近くで所定規模以上の地震が発生したと判断してもよい。例えばm=2としたとき、2個の観測点P4,P5で観測された最大加速度α4,α5が、第1データテーブルT1に記録された閾値S4(T1),S5(T1)以上となる場合に、第1地点C1の近くでM=7.5以上の地震が発生したと判断する。これにより、上記判断および地震警報の信頼性が高まる。
【0030】
複数の地点のうち第1地点に第1規模の地震が発生した場合に、第1警報出力地域に地震警報を出力すると設定する。複数の地点のうち第2地点に第2規模の地震が発生した場合にも、前記第1警報出力地域に地震警報を出力すると設定する場合がある。第1警報出力地域から第2地点までの距離が第1地点までの距離より長い場合に、前記第2規模を前記第1規模より大きく設定してもよい。
【0031】
例えば、第1地点C1に第1規模の地震が発生した場合に、第1警報出力地域A1に地震警報を出力すると設定する。第2地点C2に第2規模の地震が発生した場合にも、第1警報出力地域A1に地震警報を出力すると設定する。第1警報出力地域A1から第2地点C2までの距離が第1地点C1までの距離より長い場合に、第2規模を第1規模(M=7.5)より大きく、例えばM=8.0に設定する。
【0032】
第1警報出力地域A1から第2地点C2までの距離が第1地点C1までの距離より長い。第2地点C2でM=7.5の地震が発生した場合に第1警報出力地域A1で発生する地震動の大きさは、第1地点C1でM=7.5の地震が発生した場合に第1警報出力地域A1で発生する地震動の大きさより小さい。第2地点C2でM=7.5の地震が発生した場合には、第1警報出力地域A1への地震警報の出力が不要である可能性がある。第1警報出力地域A1への地震警報の出力が必要となるのは、第2規模が第1規模(M=7.5)より大きい場合である。第2規模を第1規模より大きく、例えばM=8.0に設定することにより、第1警報出力地域A1に対して適切な地震警報を出力することができる。
【0033】
以上に詳述したように、実施形態の早期地震警報出力方法では、ある地点を震源または震央にして所定規模の地震が発生したと仮定し、前記地点の周辺に存在する複数の観測点における地震動指標値の大きさを計算して、複数の観測点に対応する閾値とする。前記地点に所定規模の地震が発生した場合に、地震警報を出力する警報出力地域を設定する。複数の観測点に対応する閾値および警報出力地域が記録されたデータテーブルを、複数の地点に対応して複数作成する。地震が発生したとき、少なくとも1個の観測点で観測された地震動指標値が、複数のデータテーブルのうち第1データテーブルに記録されている前記1個の観測点に対応する閾値以上となる場合に、第1データテーブルに記録された警報出力地域に地震警報を出力する。
【0034】
地震が発生したとき、複数の観測点で観測された地震動指標値と、複数のデータテーブルに記録されている前記複数の観測点に対応する閾値とを比較する。少なくとも1個の観測点で観測された地震動指標値が、第1データテーブルに記録されている前記1個の観測点に対応する閾値以上となる場合に、第1データテーブルに対応する地点の近くで所定規模の地震が発生したと判断する。観測された地震動指標値と閾値との比較により所定規模地震の発生および震源または震央の位置を判断するので、地震発生時に地震動の分布を計算する場合と比べて、計算負荷が小さい。広い地域への警報出力が必要である所定規模地震が発生したと判断した場合に、第1データテーブルに記録された警報出力地域に地震警報を出力する。震源または震央の周辺の観測点で地震動指標値が観測された時点で、震源または震央から遠い(警報出力地域に近い)観測点で地震動指標値が観測される前に、警報出力地域に地震警報を出力する。これにより、適切な地震警報を早期に出力することができる。実用化が容易である。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更、組み合わせ、削除等も含まれる。
【符号の説明】
【0036】
A1…第1警報出力地域、C1…第1地点、C2…第2地点、P1-P9…観測点。
図1