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特開2024-53329AGVシステム用被牽引車両およびAGVシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053329
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】AGVシステム用被牽引車両およびAGVシステム
(51)【国際特許分類】
   B60D 1/30 20060101AFI20240408BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20240408BHJP
   B60D 1/04 20060101ALI20240408BHJP
   B62D 53/00 20060101ALI20240408BHJP
   B62D 63/06 20060101ALI20240408BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20240408BHJP
   B62B 1/10 20060101ALI20240408BHJP
   B62D 12/02 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B60D1/30
B61B13/00 A
B60D1/04 Z
B62D53/00 G
B62D63/06 A
B62B5/00 C
B62B1/10
B62D12/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159521
(22)【出願日】2022-10-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】522390696
【氏名又は名称】株式会社ヤマナカ
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 崇
【テーマコード(参考)】
3D050
3D101
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB06
3D050BB29
3D050EE04
3D050EE08
3D050EE13
3D050EE15
3D050HH07
3D050KK02
3D050KK13
3D101BA02
3D101BB01
3D101BB16
3D101BB43
(57)【要約】
【課題】
AGVで牽引される能動的な操舵機能を有しない被牽引車両を、後進時であっても正確に位置決めおよび走行させる。
【解決手段】
AGVシステム50は、自走可能なAGV車両200と、AGV車両に牽引される被牽引車両100とを備える。AGV車両に被牽引車両を連結する第1の連結具212を設ける。被牽引車両は、後輪部120と、AGV車両の第1の連結具に連結する第2の連結具164を有する前輪部160と、フォーク部140を備える。第2の連結具は、前輪部の前方に配置される。前輪部は、1対の車輪を連結する車輪連結材と、車輪連結材に固定され車輪連結材とともに被牽引車両本体に対して回動可能なアーム162を有する。AGV車両の後端面は後退R時に車輪連結材の前面部に当接し、被牽引車両がAGVに対して揺動するのを阻止する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能なAGV車両に牽引されるAGVシステム用被牽引車両において、
物品が搭載される被牽引車両本体と、前記被牽引車両本体の前端部に設けられ、AGV車両が有する第1の連結具に係合する第2の連結具を備え、
前記第2の連結具は、1対の車輪と、この1対の車輪を連結する車輪連結材と、前記車輪連結材に立設された立設軸と、一端側がこの立設軸の上端部に固定されるとともに前記立設軸から水平方向に延びるアームと、前記アームの他端側に位置し、前記AGV車両の第1の連結具に係合する連結調整部を有し、
前記車輪連結材は、前記アームとAGV車両との距離が短くなる被牽引車両の後退時に、AGV車両の後端面に当接して前記被牽引車両本体とAGV車両が同一軌道を進むのを可能にしたことを特徴とするAGVシステム用被牽引車両。
【請求項2】
前記1対の車輪が鉛直軸周りに回動可能なように、前記車輪連結材は前記1対の車輪を連結し、さらに前記立設軸は、鉛直軸周りに回動可能なように前記車輪連結材に保持されており、
前記第2の連結具は、前記立設軸と前記1対の車輪を同期して鉛直軸周りに回動させるリンク機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項3】
前記被牽引車両の後退時に、前記被牽引車両の幅方向に延び、AGV車両と当接可能な当接板を前記立設軸に設けたことを特徴とする請求項1に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項4】
自走可能なAGV車両と、該AGV車両に牽引される被牽引車両とを備えるAGVシステムにおいて、
前記AGV車両は、前記被牽引車両を連結する第1の連結具を有し、
前記被牽引車両は、物品が搭載される被牽引車両本体と、前記AGV車両の前記第1の連結具と係合する第2の連結具を有し、
前記第2の連結具は、前記被牽引車両本体の前部に配置されているとともに、少なくとも1対の車輪を連結する車輪連結材と、この車輪連結材に立設された立設軸と、一端がこの立設軸の上端部に位置し、他端に前記第1の連結具に係合可能な連結調整部を有するアームを備え、
前記被牽引車両と前記AGV車両との間の距離が短くなる後退時に、前記車輪連結材が、前記AGV車両の後端面に当接して前記被牽引車両本体とAGV車両が同一軌道を進むのを可能にしたことを特徴とするAGVシステム。
【請求項5】
前記1対の車輪および前記立設軸は、向きが不変に前記車輪連結材に保持されており、前記車輪及び前記アームと前記車輪連結材の回動を同期させたことを特徴とする請求項4に記載のAGVシステム。
【請求項6】
前記車両連結材は、1対の前記車輪の上方を覆う天板部と、この天板部に連接し、1対の前記車輪の前方上部を覆う前面部とを有し、前記AGV車両の前記後端面が前記車両連結材の前記前面部に当接して前記車輪連結材の回動を阻止することを特徴とする請求項5に記載のAGVシステム。
【請求項7】
前記被牽引車両本体から下方に延び、上端を前記被牽引車両本体にヒンジ止めされたスカートを、前記被牽引車両本体の前端部に設け、前記AGV車両の前記後端面が前記スカートに当接することで前記車輪連結材の回動を阻止することを特徴とする請求項5に記載のAGVシステム。
【請求項8】
前記1対の車輪および前記立設軸は、向きが不変に前記車輪連結材に保持されており、前記車輪及び前記アームと前記車輪連結材の回動を同期させたことを特徴とする請求項1に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項9】
前記車両連結材は、1対の前記車輪の上方を覆う天板部と、この天板部に連接し、1対の前記車輪の前方上部を覆う前面部とを有することを特徴とする請求項8に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項10】
前記被牽引車両本体から下方に延び、上端を前記被牽引車両本体にヒンジ止めされたスカートを、前記被牽引車両本体の前端部に設けたことを特徴とする請求項8に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項11】
前記アームの連結調整部には、AGV車両の第1の連結具が有するピンに係合する穴が形成されており、前記穴は前記アームの長手方向に卓球用ラケット型をしており、前記穴におけるラケットの握り部に前記ピンが係合してAGV車両が前記被牽引車両を牽引することを特徴とする請求項1、2、8、9、10のいずれか1項に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項12】
前記被牽引車両は、フォーク・パレットに挿入可能な1対のフォークを有するフォーク部と、1対の前記フォークを上下方向に昇降させる電動シリンダを備えることを特徴とする請求項8または9に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AGVシステム用被牽引車両およびAGVシステムに係り、特に後進時に軌道を正確に追尾可能なAGVシステム用被牽引台車およびAGVシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車であるAGVを用いて物品を移動させることは、省力化の面で有効であるが、他面、AGVを無人で正確に移動させることが必要になる。特にAGV自体に物品を搭載せずに、AGVに連結車両(以下被牽引車両または台車と称する)を連結して台車に物品を搭載して移動する場合には、操舵装置を有するAGVの動きと能動的な操舵装置を有しない台車の動きが連動し、台車がAGVに振り回され、所定の軌道を逸れて進行する恐れがある。AGVが前進する場合には、AGVに台車が牽引されるので所定軌道からのずれは少なくて済むが、AGVが後進または後退する場合には、能動的な操舵性を有しない台車がAGVに押される形で進行するので、台車には大きく軌道を逸れる可能性が生じる。そこでこのような不具合の発生を防止するために、連結型の車輛(台車と駆動装置であるAGV等の牽引手段との組み合わせ)における後退または後進時に、被牽引車両の軌跡を制御することが特許文献1~3に記載されている。
【0003】
特許文献1には、AGVではないが、バイク型の作業車(牽引車両)の後部に被牽引車両を左右揺動自在に連結し、機体後進時の牽引車両と被牽引車両の折れ曲がり(通称:ジャックナイフ現象)を防止するために、牽引車両Aと被牽引車両Bとを連結する連結器C、C′のいずれか一方の連結器Cに、作用姿勢と非作用姿勢とに上下動自在で、かつ、両連結器C、C′が一直線上に並んだ状態において他方の連結器C′に係合可能なロック金具11を設けることが開示されている。これにより、両連結器C,C′の左右揺動を阻止可能としている。
【0004】
また特許文献2には、トレーラトラックや構内電気自動車等の牽引車両の後進時に、被牽引車両の方向を安定に自動制御するために、自走可能な牽引車両と、牽引車両に牽引される被牽引車両と自走牽引車両とを連結する連結アームと、連結アームと牽引車両の間に設けられたアクチュエータと、アクチュエータのための後退用制御装置と、牽引車両と連結アームとの間の角度を検出する第1角度センサと、連結アームと被牽引車両との間の角度を検出する第2角度センサとを牽引車両が備えることが開示されている。そして後退時においてだけ、第1および第2角度センサからの角度信号およびステアリング操作量と走行速度と後退時の旋回半径に応じて動作する後退用制御装置を用いて、アクチュエータを制御している。
【0005】
さらに、特許文献3には、AGVの後ろにセミトレーラを連結し、走行ルート線に沿って走行する自動走行式連結車両において、走行ルート線の直線部を後進するときであっても自動走行できるように、記号θが記号xと同一符号となるように、後輪の操舵角を制御することが開示されている。ここで、符号F:後進時にAGVからキングピンを介してセミトレーラへ作用する推進力の方向;δ:走行ルート線の後方へ向かって走行ルート線に対するAGV左右中心線の角度;α:AGV左右中心線の後方へ向かってAGV左右中心線に対するFの角度;γ:走行ルート線の後方へ向かって走行ルート線に対するセミトレーラ左右中心線の角度;θ:=α+δ-γ;x:走行ルート線に対する左右方向左右車輪中心の偏倚量であり、上記各記号において、基準側の線に対して左側を正とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5-310018号公報
【特許文献2】特開平8-272444号公報
【特許文献3】特開平11-353024号公報
【特許文献4】特開210-254070号公報(特にその図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、いわゆる輪タクが開示されている。輪タクは公道上を乗客が乗車した客車(被牽引車)を牽引するものであり、客車の軌跡が前方に位置するバイク(作業車)の軌跡と少々異なっていても、公道から逸れなければ問題はない。ただし、頻度の少ない後退時に客車とバイクの間が「く」の時に過度に折れ曲がると、客車又はバイクの転倒を引き起こす虞があるため、客車とバイクの連結部に曲がりを制限する手段を設けている。
【0008】
これに対して、台車を牽引する牽引型のAGVでは、無人走行が前提であり、さらに物品の積卸や積込みも無人で行う場合には、積卸位置もしくは積込み位置の位置制御が必要となってくる。特に、フォークリフトまたはリフターのようなフォークを有する台車の場合には、フォークをフォーク・パレットに差し込む必要があり、積込み位置ではパレットに正対するように、AGVを後退姿勢で減速させて位置決めする。
【0009】
AGVの後退運動では、能動操舵機構を有しない台車がAGVの押し込み動作で押されて進行するので、AGVと台車の接触状態により、もしくは連結状態により、台車は斜めに進行してフォーク・パレットに正対できない恐れがある。正対できないままフォーク・パレットに台車のフォークを挿入すると、パレットが傾いて荷崩れを起こす虞がある。
【0010】
特許文献2、3には、センサとアクチュエータを牽引車両および/または被牽引車両に配置して、運転中の被牽引車両の位置を制御している。位置制御は牽引車両の後進時にも可能であるから、位置決め制御の精度は高い。しかしながら、牽引車両および被牽引車両の位置制御には、センサや制御器等を搭載する必要があり、制御が複雑になるとともに制御に要する付加的な装置の費用や電力消費が増大する。また、構内で無人で使用する一般的な牽引車両の場合には、センサ等ができるだけ少ない簡単な構成、究極的には無くして、保守点検の頻度を少なくすることも重要である。
【0011】
なお、特許文献4には牽引車の停止と同期して被牽引車も停止するように、被牽引車の車輪と牽引車の車輪を、停止時に接触させることが記載されている。この方法は停止時には有効であるが、後進時に応用すると、被牽引車の車輪がロックして摩擦・摩耗を生じ、クリーンな環境には使用できない。また、無人の牽引車であれば消費動力が増大し、バッテリ駆動であれば稼働時間の低下を招来する。
【0012】
本発明は上記従来技術の不具合に鑑みなされたものであり、その目的は、後進時であっても、能動操舵機能を有しない被牽引車両を正確に位置決めする。すなわち、後進時に車輪連結材の被牽引車両本体に対する回動を阻止し、被牽引車両の軌跡がAGVの軌道と同じになるようにして、被牽引車両を、物品の積載・荷卸位置に正確に位置決めすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成する本発明の特徴は、自走可能なAGV車両に牽引されるAGVシステム用被牽引車両において、物品が搭載される被牽引車両本体と、前記被牽引車両本体の前端部に設けられ、AGV車両が有する第1の連結具に係合する第2の連結具を備え、
前記第2の連結具は、1対の車輪と、この1対の車輪を連結する車輪連結材と、前記車輪連結材に立設された立設軸と、一端側がこの立設軸の上端部に固定されるとともに前記立設軸から水平方向に延びるアームと、前記アームの他端側に位置し、前記AGV車両の第1の連結具に係合する連結調整部を有し、前記車輪連結材は、前記アームとAGV車両との距離が短くなる被牽引車両の後退時に、AGV車両の後端面に当接して前記被牽引車両本体とAGV車両が同一軌道を進むのを可能にしたことにある。
【0014】
そしてこの特徴において、前記1対の車輪が鉛直軸周りに回動可能なように、前記車輪連結材は前記1対の車輪を連結し、さらに前記立設軸は、鉛直軸周りに回動可能なように前記車輪連結材に保持されており、前記第2の連結具は、前記立設軸と前記1対の車輪を同期して鉛直軸周りに回動させるリンク機構を備えることが好ましく、前記被牽引車両の後退時に、前記被牽引車両の幅方向に延び、AGV車両と当接可能な当接板を前記立設軸に設けることが望ましい。
【0015】
またこの特徴において、前記1対の車輪および前記立設軸は、向きが不変に前記車輪連結材に保持されており、前記車輪及び前記アームと前記車輪連結材の回動を同期させるのが好ましく、前記車両連結材は、1対の前記車輪の上方を覆う天板部と、この天板部に連接し、1対の前記車輪の前方上部を覆う前面部とを有するものや、前記被牽引車両本体から下方に延び、上端を前記被牽引車両本体にヒンジ止めされたスカートを、前記被牽引車両本体の前端部に設けることが好ましい。
【0016】
さらに、前記アームの連結調整部には、AGV車両の第1の連結具が有するピンに係合する穴が形成されており、前記穴は前記アームの長手方向に卓球用ラケット型をしており、前記穴におけるラケットの握り部に前記ピンが係合してAGV車両が前記被牽引車両を牽引することが好ましく、前記被牽引車両は、フォーク・パレットに挿入可能な1対のフォークを有するフォーク部と、1対の前記フォークを上下方向に昇降させる電動シリンダを備えることも好ましい。
【0017】
上記目的を達成する本発明の他の特徴は、自走可能なAGV車両と、該AGV車両に牽引される被牽引車両とを備えるAGVシステムにおいて、前記AGV車両は、前記被牽引車両を連結する第1の連結具を有し、前記被牽引車両は、物品が搭載される被牽引車両本体と、前記AGV車両の前記第1の連結具と係合する第2の連結具を有し、前記第2の連結具は、前記被牽引車両本体の前部に配置されているとともに、少なくとも1対の車輪を連結する車輪連結材と、この車輪連結材に立設された立設軸と、一端がこの立設軸の上端部に位置し、他端に前記第1の連結具に係合可能な連結調整部を有するアームを備え、前記被牽引車両と前記AGV車両との間の距離が短くなる後退時に、前記車輪連結材が、前記AGV車両の後端面に当接して前記被牽引車両本体とAGV車両が同一軌道を進むのを可能にしたことにある。
【0018】
そしてこの特徴において、前記1対の車輪および前記立設軸は、向きが不変に前記車輪連結材に保持されており、前記車輪及び前記アームと前記車輪連結材の回動を同期させることが好ましく、前記車両連結材は、1対の前記車輪の上方を覆う天板部と、この天板部に連接し、1対の前記車輪の前方上部を覆う前面部とを有し、前記AGV車両の前記後端面が前記車両連結材の前記前面部に当接して前記車輪連結材の回動を阻止することも好ましい。また、前記被牽引車両本体から下方に延び、上端を前記被牽引車両本体にヒンジ止めされたスカートを、前記被牽引車両本体の前端部に設け、前記AGV車両の前記後端面が前記スカートに当接することで前記車輪連結材の回動を阻止することも好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、物品を搭載可能な被牽引車両本体と、この被牽引車両本体に回動可能な車輪連結材とから被牽引車両を構成し、車輪連結材または被牽引車両本体前にヒンジ止めされたスカートが、AGVシステムの後進/前進時に、AGVの後端部に設けた当接部材と当接および非当接に切り替わるようにしたので、後進時には車輪連結材の被牽引車両本体に対する回動が阻止され、被牽引車両の軌跡がAGVの軌道と同一になることを可能にする。これにより、被牽引車両を、物品の積載、荷卸位置に正確に位置決めできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係るAGVシステムの概略斜視図である。
図2図1に示したAGVシステムが有する台車の分解斜視図である。
図3A図1に示したAGGVシステムが、前進するときの模式上面図及び側面図[同図(a)]と、後進へ移行するときの模式上面図[同図(b)]である。
図3B図1に示したAGGVシステムが、後進するときの模式上面図である。
図4】本発明に係る台車が備える前輪部の他の実施例の概略斜視図である。
図5図4に示した前輪部を備えるAGVシステムにおける、後進移行時を説明するための模式上面図及び側面図である。
図6】本発明に係る台車の他の実施例の斜視図である。
図7A図6に示した台車が備える、前輪部[(a)図]、フォーク部及び後輪部[(b)図]の斜視図である。
図7B図6に示したAGGVシステムが、後進するときの模式上面図[(a)図]および接近前の模式側面図[(b)図]である。
図8図6に示した前輪部の上面視図[(a)図及び(b)図]、正面断面図[(c)図及び(d)図]である。
図9】リンク機構の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係るAGV(automatic guided vehicle)システム50の一実施例を、図面を用いて説明する。本実施例では、構内作業をする無人作業車(AGV)200がフォークリフト型の台車100を牽引走行および押し込み走行する場合を例にとり説明するが、AGVシステムは構内作業をするものに限定するものではなく、フォークリフト型台車に限るものでもない。また。AGVシステム50は、床面に配置された導線230に沿って走行する場合を例としているが、構内に複数配置された基地局からの信号と予めAGV車両(AGV)200に記憶されたマップ情報を用いて、自動走行するように構成することもできる。
【0022】
AGVシステム50は、台車を牽引するAGV車両またはAGV200と、AGV200に牽引される被牽引車両(台車)100を備える。AGV200を台車100と連結するために、上方に延びる係止ピン(第1の連結手段)212をAGV本体210の上面に備える。AGV本体210の下面複数個所には前輪202が、前輪202の後方には後輪204がそれぞれ回転自在に設けられている。AGV本体210の前部には、図示しない基地局との間で情報を送受信可能にする、通信手段(アンテナ)220が取り付けられている。AGV本体210の下方には、誘導手段としての導線230が配置されており、AGV本体210の下面に設けた図示しないセンサがこの導線230を検出して、AGV200、ひいては台車100の所定の軌道を作り出す。図中矢印Rは、AGV200の後退または後進を意味し、矢印FはAGV200の前進を意味する。なお、AGV本体210は、通信手段220による遠隔操作だけでなく、AGV本体210に無線/有線でまたは直接付設したスイッチボックスを、作業員がON/OFF動作して運転制御されるものであってもよい。
【0023】
AGV200の後方に配置された被牽引車両である台車100には、構内で物品を移動するために物品を載置する載置手段が設けられている。図1では、載置手段はフォークリフトである。詳細を後述するが、台車100は後輪部120、後輪部120の後部上側に配置されるフォーク部140、フォーク部140の前方であって後輪部120の下方に位置する前輪部160を備える。前輪部160が有する立設軸(回動軸)178の上端には、水平方向に延びるアーム162が取り付けられており、アーム162の反回動軸側先端には、卓球ラケット形状の穴166が形成された連結調整部164が形成されている。アーム162および連結調整部164は、第2の連結具を構成する。AGV本体210に取り付けた係止ピン212を穴166に手動で係止させることにより、AGV200と台車100は連結される。
【0024】
図2に、図1に示したAGVシステム50が備える台車100の分解斜視図を模式的に示す。同図(a)は前輪部160、同図(b)は後輪部120、同図(c)はフォーク部140の斜視図である。台車100は、市販されているリフターや、エンジン等の動力部を除いたフォークリフトと同様の形状および構成である。
【0025】
前輪部160では、平行に配置した1対の前輪170のそれぞれにおいて、前輪170の両側に配置された車輪保持具171に、前輪170の車軸173が取り付けられている。各車輪保持具171は、1対の前輪170の上方を覆う天板部172aと前部上方を覆う前面部172bが連接した、車輪連結材172に固定されている。これにより、1対の前輪170は常時同一方向に回転するように、向きが固定される。
【0026】
天板部172aの幅方向(1対の前輪470が並べられる方向)中間部には、保持部材174が取り付けられており、この保持部材174に鉛直方向に延びる立設軸178が固定されている。保持部材174には、抑え板176も設けられており、後輪部120の棚板118に立設軸178を固定する。
【0027】
上述したように、立設軸178の上端部には、水平方向に延びるアーム162が固定手段(締結具)180により固定されている。アーム162の先端には、卓球ラケット形状をした穴166(166a、166b)が形成された連結調整部164(164a、164b)が取り付けられている。穴166の卓球ラケット面部に相当する部分166b、すなわち前輪170に近い側に、AGV200の第1の連結具である係止ピン212を手動で貫挿させた後、AGV200を前進方向Fに移動させる。すると、係止ピン212は連結調整部164の枠形状に案内されて、穴166の卓球ラケットの握りに相当する部分166bへと収まる。この動きを円滑にするため、連結調整部164の枠形状を卓球ラケット形状にしている。
【0028】
後輪部120は、前輪部160とともに台車100の足回りを構成するとともに、台車100の転倒防止等のために、1対の平行に配置され前後方向に延びるベース部材122と、各ベース部材122の前端部に立設された案内用支柱110と、1対のベース部材122の前端部間に位置する幅方向ベース部材114を備える。ベース部材122、114は断面コの字形の型鋼等で構成される。各前後方向ベース部材122の後端部には、車輪保持具126を介して後輪124がそれぞれ取り付けられている。幅方向ベース部材114には、電動シリンダ300の底部が固定される。電動シリンダ300としては、例えばデンマークLINAX社のLINAK電動シリンダーLA33を用いる。
【0029】
鉛直方向に延びる1対の案内用支柱110は断面コの字形の型鋼であり、その上端部付近には、案内用支柱110、110間を平行に保つために、位置保持部材112が取り付けられている。各案内用支柱110の上下方向中間部には、前方に延びる棚支持部材116が取り付けられている。棚支持部材116の前端部および前後方向中間部には、棚枠119、117が配置されている。棚支持部材116と棚枠119、117で形成される矩形部の底面には、ほぼ中央部に穴111が形成された棚板118が取り付けられており、穴111には前輪部160の立設軸178が遊嵌する。これにより、前輪部160は、後輪部120と独立して動くことが可能になる。すなわち、前輪部160は後輪部120に対して水平面内で回動することが可能になる。
【0030】
フォーク部140は、一般に流通しているフォークリフトやリフターのフォークと同様の形状および寸法であり、JISに規定された標準パレット(T11型パレット)を含めて多数のパレットに適用可能にその幅方向間隔やフォーク幅、フォーク長が設定されている。例えば、フォーク142の前後方向長さ(差し込み長さ)を約1000mm、フォーク142の幅を約91mm、フォーク142の外側距離を約520mm設定する。フォーク部140の1対のフォーク142は、昇降状態の下限位置では後輪部120のベース部材122を覆い、一体化したベース部材になる。
【0031】
1対のフォーク142の各々の前端部には、支柱144が立設されており、支柱144の上端部及び下端部であって前面には、支柱144、144間を平行に保つために、幅方向に延びる接続部材146(146a、146b)が取り付けられている。上側の接続部材146aの前側には、上端を折り曲げた板状のシリンダ受け部材150が連結板148を介して取り付けられている。電動シリンダ300の上端は、図示は省略したが、シリンダ受け部材150に固定されている。連結板148は、上側接続部材146aとシリンダ受け部材150のそれぞれのほぼ上端部を連接している。シリンダ受け部材150の左右両端前側であって上端部近傍に取り付け部材152が取り付けられており、取り付け部材152の幅方向外側には案内円板154が回動可能に取り付けられている。
【0032】
電動シリンダ300が伸縮するとシリンダ受け部材150が昇降し、それによりフォーク部160全体が昇降する。このとき案内円板154は、後輪部120の型鋼で形成された案内用支柱110の内側を回転しながら上下方向に移動して、フォーク部160全体を円滑に昇降させる。すなわち、上端部がシリンダ受け部材150に固定された電動シリンダ300が作動すると、高さ位置が固定されている後輪部120の幅方向ベース部材114に対して、シリンダ受け部材150が昇降する。これにより、フォーク部140全体が後輪部120に対して昇降する。
【0033】
上記のように構成したAGVシステム50の走行状態を図3Aおよび図3Bを用いて説明する。これらの図において、矢印Fは前進を示し、Rは後進または後退を示す。図3A(a)図は、前進中のAGVシステム50の主要部を模式的に示したものであり、上段の図はその上面図、下段の図はその側面図である。なお、構内に配置される導線は省略している。
【0034】
AGV車両200に台車100を連結後、AGV車両200が導線に沿って前進し始めると、AGV車両200と台車100の連結部において、AGV本体210の係止ピン212が第2の連結具を構成する連結調整部166に接触するまでは、係止ピン212は穴164内に遊嵌しているので、AGV200のみ移動し台車100は静止している。
【0035】
さらにAGV車両200が前進し続けると、係止ピン212が穴164内を相対的に移動し、連結調整部166に接触する。その後係止ピン212は、連結調整部166の形状に沿って次第に穴の握り部166bへ相対的に移動する。そして穴の握り部166bの先端に達するとAGV200は台車100を牽引し始める。以後のAGVシステム50の前進移動では、この状態を維持して走行する(図3A(a))。本AGVシステム50では能動操舵機能をAGV200が有するので、台車100はAGV200に定められた軌道を追従する。
【0036】
次にAGVシステム50の逆走である後進または後退移動の場合を、図3A(b)も用いて説明する。図3A(a)に示した状態からAGVシステム50が後退運転し始めると、AGV200と台車100間を連結していた係止ピン212は、連結調整部164の前端部での接触が外れ、台車100は牽引状態から自由に動ける状態に移行する。すなわち台車100は、AGV200の運動とは切り離される。
【0037】
しかしながら、そのままAGV200が後進を続けると、係止ピン212が連結調整部164に接触していなくとも、AGV本体210の後端面である当接面210aが台車100の前輪部160の車輪連結材172の前面部172bに当接する。その後、台車100の前面である前輪部160の前面部172bは、AGV本体210の後端面(当接面)210aに全面的に接触し、台車100はAGV本体210にその姿勢を合わせて(正対して)、AGV200に押されたまま後退または後進する。
【0038】
この状態が、図3Bに示されている。図3Bは、図3A(a)の上段の図と同じ上面図である。図3Bでは、AGV200の係止ピン212は、もはや連結調整部164には接していない。しかし、AGV本体210の当接面210aと台車100の車両連結材172の前面部175bが当接するので、台車100はAGV200に押されてAGV200の予定進路(軌道)をAGV200と共に正確に後退または後進する。
【0039】
台車100がフォークリフト機能を有する場合には、台車100のフォーク部140は、予めAGVシステム50の移動軌跡の端部に配置された、図示しないパレットに対して正確に位置決めが必要である。上記のように、台車100がAGV200の予定進路(軌道)をAGV200と共に正確に後退または後進することが可能であるから、パレットに対して台車100を正確に位置決めできる。台車100、特にそのフォーク部140をパレットに対して正確に位置決めできたので、フォーク部140を用いてパレットへのフォークの挿入時、パレットの昇降時やパレットを載置しての前進時、特に曲線部の移動時であっても、パレット上の積み荷のアンバランスに起因する荷崩れ等を防止でき、AGVシステム50を用いた安定した作業が可能になる。AGVシステム50は無人運用が原則であるので、作業途中の荷崩れ等を防止できることは必須である。
【0040】
ところで、AGVシステム50を前進または停車状態から後進状態に移動するときには、台車100において、後輪部120に対して前輪部160が回動している(くの字に曲がった)状態から後退状態に移行することもあり得る。その場合、本実施例のAGVシステム50では、台車100に近づくようにAGV200が後進接近すると、台車100の最前方に位置する前輪部160の角部がAGV200の当接面210aに初めに当接する。この状態を図3A(b)に示す。同図は、AGVシステム50の主要部の概略上面図である。
【0041】
前輪部160の一方の角部がAGV200の後端面に接触すると、AGV200の後方への推進力により、AGV200の当接面210aと前輪部160の当接面172aはその接触面積を増すように、係止ピン212を連結調整部164の穴166内で移動させながら、前輪部160をAGV本体210に対して回動させ両者は接近する。そして、最終的にAGV200と台車100は、係止ピン212が連結調整部164に接触していない状態で、図3Bと同様に一体となって後退または後進する。このときAGV200は予め指定された軌道をたどるので、台車100もその軌道から逸れることなく後退または後進し、台車100を予定位置または指定位置に正確に移動させることができる。この場合でも、無人で運用されるAGVシステム50において、フォーク作業や運搬作業中の荷崩れを防止できる。
【0042】
上記実施例の変形例を、図4および図5を用いて説明する。図4は、台車100が備える後輪部120の模式斜視図であり、図5は後進または後退へ移行するときの、台車100とAGV200の位置関係を示す模式上面図(上段)及び側面図(下段)である。後輪部120以外は、上記実施例と同様である。図4に示すように、後輪部120の前面にスカート132がヒンジ134留めされている点が上記実施例と相違している。
【0043】
前輪部160が後輪部120に対して回動すると、後輪部120の前面に配置されたスカート132の裏面が前輪部120の車輪連結材172(172b)に当接し、スカート132がヒンジ134を中心に上方に捲られる。スカート132が捲られると、AGV200が台車100に接近していた場合、AGV200の後端面である当接面210aにスカート132の表面の一部が当接する。AGV200が台車100にさらに接近すると、図3Aの場合と同様に、AGV200に台車100が正対し、相互に密着する。これにより、台車100は後進または後退時であっても、AGV200の軌道を正確にたどる。したがって、台車100がフォークリフト機能を有する場合に、フォークをパレットの適正位置または正対位置に位置決めできる。
【0044】
本発明に係るAGVシステム50に用いる被牽引車両(台車)100の他の実施例を、図6ないし図9を用いて説明する。本実施例が、上記実施例と異なるのは、1対の前輪170を連結する車輪連結材172内で、1対の前輪170を鉛直軸周りに回動可能としたことにある。これに伴い、車輪連結材172とは別に、1対の前輪170及びアーム162の動きを同期させるリンク機構310を導入している。
【0045】
ところで、前進時に急カーブ等でアーム162を急激に回動させると、一方の前輪170が機能せず3輪車のように台車100が傾いて進行する虞を生じる。また、アーム162が台車100から前方に長く延び、前進時にAGV本体210と台車100間に隙間が形成されるので、カーブ走行時にアーム162を支点として台車100がAGV本体210に振り回され、遠心力で台車100が傾く恐れもある。このような不具合を解消するために、アーム162の動き(回動)を速やかに台車100の前輪170に伝えることで、AGV本体210と前輪170の動きを同期化させ、台車100の荷崩れを防止するのが本実施例である。
【0046】
図6は、本実施例に係る台車100の模式斜視図である。図7Aは、台車100の前輪部160(同図(a))、および後輪部とフォーク部を一体化した部分(同図(b))のそれぞれ斜視図であり、図7B(a)は、本実施例におけるAGVシステム50が後退するときの、AGVシステム50の模式上面図であり、図7B(b)図は接近前の模式側面図である。図8は、前輪部160の模式上面図及び正面断面図であり、図8(a)は同図(d)におけるC矢視上面図であり、図8(b)は同図(d)のD-D線断面上面図である。図8(c)は図8(b)におけるA-A線断面正面図であり、図8(d)は図8(b)におけるB-B線断面図である。
【0047】
図7A(a)において、前輪部160の1対の前輪170は、詳細を後述するが車輪保持具170等を用いて車輪連結材172に、鉛直軸周りに回動可能に固定されて連結されている。車輪連結材172の前面には上方に折れ曲がった形状の前面部(当接部)172bが形成されている。AGV車両200に連結する連結調整部164が端部に設けられたアーム162の他端(締結具180部)と車輪連結材172の高さ方向中間部には、前面部172bとほぼ面位置で台車100の幅方向に延びる当接板175が設けられている。前面部172bと当接板175は、AGVシステム50が後退または後進する際に、AGV車両本体210の後面210aが当接する当接面を形成する[図7B(a)、(b)参照]。詳しくは、軸178に固定され、アーム162とともに回動する当接板175がAGV車両本体210の後面210aの上側に先に当接し、その後で、前面部172bが後面210aの下側に当接する。なお、当接板175が前面部172bより突出していると、下側の当接は生じない。
【0048】
連結調整部164の後端部には、台車100の幅方向に延びる棚枠117が形成されている。前面部172aと棚枠117および棚板118に代わる車輪連結材172は、図7A(b)の後輪部120に形成した棚支持部材116と一体化されて棚を形成する。すなわち、車輪連結材172の台車100幅方向両端部は、それぞれ棚支持部材116の下面に取り付けられ、箱状の棚部を形成するとともに、前輪部160は後輪部120に固定される。前輪部160が後輪部120に対して固定されたので、台車100の操舵性を確保するため、前輪170を鉛直軸に対して回動可能にする。なお、図7A(b)に示す一体化された後輪部120とフォーク部140では、棚部では棚支持部材116のみが前方に突き出ている。また、フォーク部140を下限位置まで降下させた状態である図7A(b)では、フォーク142が後輪部120のベース部材122を覆うように位置する。その際、後輪部120の後輪124がフォーク142と干渉するのを避けるため、フォーク142には後輪124に対応する位置に後輪用溝穴141が形成されている。
【0049】
棚板118の代わりに車輪連結材172を棚板に兼用し、前輪部160が後輪部120に固定されたので、前輪部160の操舵が台車100全体を方向変換させる。そのため、車輪連結材172において前輪170を鉛直軸周りに回動させる必要が生じたことは上述した。本実施例ではリンク機構310を用いてこの課題を解決している。リンク機構310の具体的な例を、図8および図9を用いて説明する。
【0050】
図8(d)の断面図に示したように、1対の前輪170ではその両側に車輪保持具171が配置され、車輪保持具171により車軸173周りに前後方向に回転可能になっている。車輪保持具171は、車輪保持具固定板182に図示しない締結具を用いて締結されている。車輪保持具171は長方形の板状であり、後方に突起した部分を持つ。後方の突起部分には、穴322が形成されている(図8(b)参照)。車輪保持具固定板182の中央部にも穴が形成されており、締結具188が貫挿されている。
【0051】
一方アーム162に連接する支柱178の下端部には握り手が付いた円板であって、握り手端部に穴(節)324が形成された回動軸レバー184が固定して取り付けられている。回動軸レバー184は、アーム162と同位相で回動する。回動軸レバー184および車輪保持具固定板182の穴322、324に、Eの字形状のリンク板318の直線部316から直角方向に分岐した各分岐部312、314の端部に形成した穴を対応させ、留めピン(回動軸)332、334を遊嵌する。これにより、各穴322、324を節としたリンク機構310が形成される。なお、車輪固定板182と車輪連結材172間にはスラスト軸受186が介設されており、車輪170を車輪連結材172に対して円滑に回動させるとともに車輪170に加わる、積み荷等の負荷を担持する。車輪連結材172の中央部には回動軸178が貫通する穴が形成されており、この穴に、回動軸178が遊嵌する。回動軸178の下端部近傍に、締結具356を用いて回動軸レバー184が取り付けられる。
【0052】
このように構成したリンク機構では、図9に示すように、回動軸178が実線の状態から破線の状態へ回動するとリンク板318が移動し、リンク板318で連結され、各車輪170が固定して取り付けられた車輪保持具固定板184が、穴322をリンクの節322として回動軸178に同期して回動する。回動軸178の回動後のリンク板318及び各穴322、324の状態については、それぞれの符号に添え字bを付して示す。この図9から明らかなように、回動軸178が回動しても、リンク板318は元の姿勢から平行移動しているだけであり、その姿勢を変えていない。したがって、台車100の後退時に当接部172b、175がAGV200の当接面210aに当接しても、台車100はAGV本体210に斜めに当接することはなく、正確に位置決めできる。
【0053】
また本実施例によれば後退または後進時には言うに及ばず、前進時でも牽引車両に被牽引車両が忠実に追随でき、カーブ等での台車の荷崩れも回避できる。すなわち、急角度にアームを回動させた場合であっても、台車の前輪及び後輪の接地点で形成される四角形の範囲内に積み荷の重心投影位置を維持でき、積み荷の重心投影位置が台車の各車輪の接地点で形成される範囲外に移ることに起因する、台車の転倒や積み荷の荷崩れを防止できる。
【0054】
以上説明したように、本発明の上記各実施例および変形例によれば、後退または後進時に台車をAGVに正対させたまま移動できる。これにより、台車がフォークリフト機能を有する場合にフォークをパレットの適正位置に挿入および運搬できるので、無人作業であっても積み荷の荷崩れ等の不具合の発生を防止できる。また、構成が簡単なので、AGVに複雑な制御を追加する必要がなく、さらに台車の製作費用等も低減できる。
【0055】
なお、上記実施例ではアームの支柱を円柱または円筒形状としているが、支柱の形状は、板材をX字状に組み合わせたものであってもよい。その場合、さらなる軽量化が図られる。
【符号の説明】
【0056】
50…AGVシステム、100…被牽引車両(台車)、110…案内用支柱(型鋼)、111…穴、112…位置保持部材、114…(幅方向)ベース部材、116…棚支持部材、117…(後ろ側)棚枠、118…棚板、119…(前側)棚枠、120…後輪部(被牽引車両本体)、122…(前後方向)ベース部材、124…車輪(後輪)、126…車輪保持具、132…スカート、134…ヒンジ(丁番)、140…フォーク部、141…後輪用溝穴、142…フォーク、144…支柱、146…(幅方向)接続部材、146a…(上側)接続部材、146b…(下側)接続部材、148…連結板、150…シリンダ受け部材、152…(円板)取り付け部材、154…案内円板、160…前輪部、162…アーム(第2の連結具)、164…連結調整部(第2の連結具)、166…穴、170…車輪(前輪)、171…車輪保持具、172…車輪連結材、172a…天板部、172b…前面部(当接部)、173…車軸、174…保持部材、175…当接板、176…抑え板、178…(立設)軸、180…締結具、182…車輪固定板、184…回動軸レバー、186…スラスト軸受、188…締結具、200…AGV車両(AGV)、202…前輪、204…後輪、210…AGV本体、210a…当接面(AGV後面)212…係止ピン(第1の連結具)、220…通信手段(アンテナ)、230…誘導手段(導線)、300…電動シリンダ、310…リンク機構、312、314…分岐部、316…直線部、318…リンク板、322、324…節(穴)、332、334…ピン部材(回動軸)、342、344…摺動部材、F…前進方向、R…後退または後進方向
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-11-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能なAGV車両に牽引されるAGVシステム用被牽引車両において、
物品が搭載される被牽引車両本体と、前記被牽引車両本体の前端部に設けられ、AGV車両が有する第1の連結具に係合する第2の連結具を備え、
前記第2の連結具は、1対の車輪と、この1対の車輪を連結する車輪連結材と、前記車輪連結材に立設された立設軸と、一端側がこの立設軸の上端部に固定されるとともに前記立設軸から水平方向に延びるアームと、前記アームの他端側に位置し、前記AGV車両の第1の連結具に係合する連結調整部を有し、
前記車輪連結材は、前記アームとAGV車両との距離が短くなる被牽引車両の後退時に、AGV車両の後端面に当接して前記被牽引車両本体とAGV車両が同一軌道を進むのを可能にしたことを特徴とするAGVシステム用被牽引車両。
【請求項2】
前記1対の車輪が鉛直軸周りに回動可能なように、前記車輪連結材は前記1対の車輪を連結し、さらに前記立設軸は、鉛直軸周りに回動可能なように前記車輪連結材に保持されており、
前記第2の連結具は、前記立設軸と前記1対の車輪を同期して鉛直軸周りに回動させるリンク機構を備えることを特徴とする請求項1に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項3】
前記被牽引車両の後退時に、前記被牽引車両の幅方向に延び、AGV車両と当接可能な当接板を前記立設軸に設けたことを特徴とする請求項1に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項4】
自走可能なAGV車両と、該AGV車両に牽引される被牽引車両とを備えるAGVシステムにおいて、
前記AGV車両は、前記被牽引車両を連結する第1の連結具を有し、
前記被牽引車両は、物品が搭載される被牽引車両本体と、前記AGV車両の前記第1の連結具と係合する第2の連結具を有し、
前記第2の連結具は、前記被牽引車両本体の前部に配置されているとともに、少なくとも1対の車輪を連結する車輪連結材と、この車輪連結材に立設された立設軸と、一端がこの立設軸の上端部に位置し、他端に前記第1の連結具に係合可能な連結調整部を有するアームを備え、
前記被牽引車両と前記AGV車両との間の距離が短くなる後退時に、前記車輪連結材が、前記AGV車両の後端面に当接して前記被牽引車両本体とAGV車両が同一軌道を進むのを可能にしたことを特徴とするAGVシステム。
【請求項5】
前記1対の車輪および前記立設軸は、向きが不変に前記車輪連結材に保持されており、前記車輪及び前記アームと前記車輪連結材の回動を同期させたことを特徴とする請求項4に記載のAGVシステム。
【請求項6】
前記車連結材は、1対の前記車輪の上方を覆う天板部と、この天板部に連接し、1対の前記車輪の前方上部を覆う前面部とを有し、前記AGV車両の前記後端面が前記車連結材の前記前面部に当接して前記車輪連結材の回動を阻止することを特徴とする請求項5に記載のAGVシステム。
【請求項7】
前記被牽引車両本体から下方に延び、上端を前記被牽引車両本体にヒンジ止めされたスカートを、前記被牽引車両本体の前端部に設け、前記AGV車両の前記後端面が前記スカートに当接することで前記車輪連結材の回動を阻止することを特徴とする請求項5に記載のAGVシステム。
【請求項8】
前記1対の車輪および前記立設軸は、向きが不変に前記車輪連結材に保持されており、前記車輪及び前記アームと前記車輪連結材の回動を同期させたことを特徴とする請求項1に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項9】
前記車連結材は、1対の前記車輪の上方を覆う天板部と、この天板部に連接し、1対の前記車輪の前方上部を覆う前面部とを有することを特徴とする請求項8に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項10】
前記被牽引車両本体から下方に延び、上端を前記被牽引車両本体にヒンジ止めされたスカートを、前記被牽引車両本体の前端部に設けたことを特徴とする請求項8に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項11】
前記アームの連結調整部には、AGV車両の第1の連結具が有するピンに係合する穴が形成されており、前記穴は前記アームの長手方向に卓球用ラケット型をしており、前記穴におけるラケットの握り部に前記ピンが係合してAGV車両が前記被牽引車両を牽引することを特徴とする請求項1、2、8、9、10のいずれか1項に記載のAGVシステム用被牽引車両。
【請求項12】
前記被牽引車両は、フォーク・パレットに挿入可能な1対のフォークを有するフォーク部と、1対の前記フォークを上下方向に昇降させる電動シリンダを備えることを特徴とする請求項8または9に記載のAGVシステム用被牽引車両。