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特開2024-5333耐熱金属部材およびその製造方法ならびに高温装置ならびにめっき液
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005333
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】耐熱金属部材およびその製造方法ならびに高温装置ならびにめっき液
(51)【国際特許分類】
   C23C 28/02 20060101AFI20240110BHJP
   C23C 10/58 20060101ALI20240110BHJP
   C23C 10/48 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C23C28/02
C23C10/58
C23C10/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105473
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】509326809
【氏名又は名称】株式会社ディ・ビー・シー・システム研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100120640
【弁理士】
【氏名又は名称】森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】成田 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】成田 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 泰道
(72)【発明者】
【氏名】小関 和彦
(72)【発明者】
【氏名】荒 真由美
【テーマコード(参考)】
4K044
【Fターム(参考)】
4K044AA02
4K044AA06
4K044BA02
4K044BA06
4K044BA10
4K044BB04
4K044BB05
4K044BC02
4K044BC11
4K044CA12
4K044CA18
(57)【要約】
【課題】各種の金属基材を使用でき、高温酸化性雰囲気または高温腐食性雰囲気中において拡散バリア機能を継続的に得ることができ、それによって最表面に保護的酸化物皮膜を長期に亘って維持し続けることができ、製造に必要なプロセスもめっき法等の簡単なプロセスで済む耐熱金属部材およびその製造方法を提供する。
【解決手段】耐熱金属部材は、金属基材(100)上にCoを含有する境界層(200)、Reを含有するCo基合金を主成分とする拡散バリア層(300)およびAl含有合金層(500)を順に有する。耐熱金属部材を製造するには、金属基材上にCo膜、Re(Ni)膜およびCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成し、この金属基材をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより拡散バリア層を形成した後、Al拡散処理を行うことにより拡散バリア層上にAl含有合金層を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材と、
上記金属基材上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層と、
上記金属基材と上記拡散バリア層との間の少なくともCoを含有する境界層と、
上記拡散バリア層上のAl含有合金層またはCr含有合金層と、
を有する耐熱金属部材。
【請求項2】
上記拡散バリア層はReを10原子%含有するα-Co(Re)連続層からなり、当該α-Co(Re)連続層はε-Re(Co)相の析出物を含有する請求項1記載の耐熱金属部材。
【請求項3】
上記拡散バリア層上の上記Al含有合金層を有し、上記Al含有合金層はPtを含有する請求項1記載の耐熱金属部材。
【請求項4】
上記拡散バリア層上の上記Al含有合金層を有し、上記境界層はAlを含有する請求項1記載の耐熱金属部材。
【請求項5】
上記境界層のAl濃度は1原子%以上25原子%以下である請求項4記載の耐熱金属部材。
【請求項6】
上記拡散バリア層上の上記Al含有合金層を有し、上記Al含有合金層はAl以外はCoおよびNiを主体とする請求項1記載の耐熱金属部材。
【請求項7】
上記拡散バリア層上の上記Cr含有合金層を有し、上記Cr含有合金層はCr以外はCoおよびNiを主体とする請求項1記載の耐熱金属部材。
【請求項8】
上記拡散バリア層と上記Al含有合金層または上記Cr含有合金層との間の遷移層をさらに有する請求項1記載の耐熱金属部材。
【請求項9】
上記遷移層はRe濃度が1原子%未満、Al濃度が10原子%以下である請求項8記載の耐熱金属部材。
【請求項10】
上記金属基材はFe基合金、Co基合金、Ni基合金またはNi基単結晶超合金からなる請求項1記載の耐熱金属部材。
【請求項11】
金属基材上に少なくとも第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜および上記第2のCo膜またはNi膜を形成した上記金属基材をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層および当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層を形成する工程と、
上記境界層および上記拡散バリア層を形成した上記金属基材に対してAl拡散処理を行うことにより上記拡散バリア層上にAl含有合金層を形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法。
【請求項12】
金属基材上に少なくとも第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜および上記第2のCo膜またはNi膜を形成した上記金属基材をTi粉末および/またはMg粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のAl含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法。
【請求項13】
上記第2のCo膜を形成した後、上記熱処理を行う前に、上記第2のCo膜上にPt膜をめっき法により形成し、または、Pt粉末をスラリー法により塗布する請求項12記載の耐熱金属部材の製造方法。
【請求項14】
金属基材上に少なくとも第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜および上記第2のCo膜またはNi膜を形成した上記金属基材をNi粉末とNiAl粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のAl含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法。
【請求項15】
金属基材上に、Coめっき液とRe(Ni)めっき液とを混合しためっき液を用いためっき法により少なくとも、Niを含有するCo-Re合金膜を形成する工程と、
上記Co(Re)合金膜を形成した上記金属基材をTi粉末および/またはMg粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のAl含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法。
【請求項16】
上記Co-Re合金膜を形成した後、上記熱処理を行う前に、上記Co-Re合金膜上にNi膜をめっき法により形成する請求項15記載の耐熱金属部材の製造方法。
【請求項17】
金属基材上に、Coめっき液とRe(Ni)めっき液とを混合しためっき液を用いためっき法により少なくとも、Niを含有するCo(Re)合金膜を形成する工程と、
上記Co-Re合金膜を形成した上記金属基材をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層および当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層を同時に形成する工程と、
上記境界層および上記拡散バリア層を形成した上記金属基材に対してAl拡散処理を行うことにより上記拡散バリア層上にAl含有合金層を形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法。
【請求項18】
上記Co-Re合金膜を形成した後、上記熱処理を行う前に、上記Co-Re合金膜上にCo膜をめっき法により形成する請求項17記載の耐熱金属部材の製造方法。
【請求項19】
金属基材上に少なくとも第1のCo膜、Re(Ni)膜、第2のCo膜およびNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜、上記第2のCo膜および上記Ni膜を形成した上記金属基材をNi粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のCr含有合金層を同時に形成する工程と、
上記境界層、上記拡散バリア層および上記Cr含有合金層を形成した上記金属基材に対してAl拡散処理を行うことにより上記Cr含有合金層をAl含有合金層に変換する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法。
【請求項20】
金属基材上に少なくとも、第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜および上記第2のCo膜またはNi膜を形成した上記金属基材をNi粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のCr含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法。
【請求項21】
金属基材上に少なくとも、第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第2のCo膜上に少なくとも、Ni粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末を含むスラリーを塗布した後、当該スラリーを塗布した上記金属基材をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のCr含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法。
【請求項22】
金属基材と、
上記金属基材上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層と、
上記金属基材と上記拡散バリア層との間の少なくともCoを含有する境界層と、
上記拡散バリア層上のAl含有合金層またはCr含有合金層と、
を有する耐熱金属部材
を有する高温装置。
【請求項23】
Coめっき液とRe(Ni)めっき液とを混合しためっき液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耐熱金属部材およびその製造方法ならびに高温装置ならびにめっき液に関し、特に、高温酸化性雰囲気または高温腐食性雰囲気において使用される、焼却炉、排ガス系部材、ボイラー、内燃機関、ガスタービン、ジェットエンジン、人工衛星スラスターエンジン、燃料電池、等に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
各種燃焼機器、内燃機関、ボイラー、焼却炉、排ガス系部材、タービン、ジェットエンジン、燃料電池、等に使用される耐熱合金基材には耐高温酸化性コーティング皮膜が施工されている。代表的な皮膜として、保護的アルミナ(Al2 3 )を形成するAl含有合金皮膜[(Ni-Al合金皮膜(β-NiAl)、γ’-(Ni,Pt)3 Al(あるいはPt添加γ’-Ni3 Al)、MCrAlY(M=Ni,Co)等]および保護的クロミア(Cr2 3 )を形成するCr含有合金皮膜[γ-Ni(Cr),Fe-Cr等]が使用されている。
【0003】
上述のAl含有合金皮膜は、しかしながら、高温で使用中にAl濃度が低下し、早期に耐高温酸化能を喪失する(非特許文献1参照)。
【0004】
Al含有合金皮膜のAl濃度の低下を抑制するため、本発明者らにより、Re-Cr-Ni系σ-相の拡散バリア層(σ-Re系バリアと呼称)を基材上に形成した後、その表面にAl含有Ni基合金層を積層する技術が提案されている。σ-Re系バリアとAl含有Ni基合金層とを含めて拡散バリアコーティング(Diffusion Barrier Coating : DBC)および基材と拡散バリアとAl含有Ni基合金層と保護的アルミナ皮膜とを総称して拡散バリアコーティングシステム、とそれぞれ呼称している。拡散バリア層の詳細については特許文献1~4に記載されている。
【0005】
特許文献1~4のσ-Re系バリアでは、Re-Cr-Ni系σ-相が連続・単層で構成されており、高温で長時間経過すると、Ni基単結晶超合金とσ-Re系バリアとの間に存在する境界層にはボイドが形成し、同時に、拡散バリア層内に亀裂を生じることがあることから、特許文献5~7では、拡散バリア層はRe-Cr-Ni系σ-相とNi-Cr系γ-相の複相構造を有し、このσ-相がγ-相の母相内に析出した、いわゆるσ-Re層の不連続な形態の拡散バリア層を三層構造にすることを提案している。
【0006】
上記の高温で長時間加熱される過程で、基材とσ-Re系バリア層との間の境界層にボイドが形成・成長する現象は、Ni基耐熱合金(一例として、Ni-25Cr-20Fe-10Mo合金(質量%))に形成したσ-Re系バリアコーティングにも見られる。この問題に関し、特許文献8は、基材とσ-Re系バリア層との間に挿入したNi層の厚さを60μm以上にすることによって、ボイドの形成を抑制できることを提案している。
【0007】
特許文献5~7記載の拡散バリア層を構成するγ-Ni(Cr)相はAl含有合金層のAlと基材に含まれる元素の拡散経路となることから、特許文献1~4記載のσ-Re系バリアに比較して、拡散障壁能に劣る。特許文献8記載のNi層の厚さの増大は、σ-Re系バリアのCrとReはNi層に固溶してσ-Re系バリアの分解・消失を促進し、拡散障壁能を喪失することになる。
【0008】
特許文献1~8では、拡散バリア層を形成するため高温と低温の熱処理温度がそれぞれ採用されている。すなわち、特許文献1~4、8のσ-Re系バリアは比較的高温(1200℃以上)で形成するため、基材の組織変化や結晶粒の粗大化を生じさせる可能性がある。一方、特許文献5~7のγ-相内にσ-相を析出した拡散バリア層は比較的低温(1120℃以下)での熱処理で形成できることから組織変化や結晶粒の粗大化を抑制することができる、という特徴を有するが、三層構造を採用しても、拡散障壁能に劣る。
【0009】
一方、Cr含有合金皮膜[(Fe-Cr、γ-Ni(Cr)]には、以下のような問題が指摘されている。すなわち、Cr含有合金としてステンレス鋼(Fe-Cr、Fe-Cr-Ni)が使用されており、保護的皮膜としてCr2 3 を形成するが、非特許文献2によれば、高温(1000℃以上)での酸化(O2 、H2 O、等) と浸炭(CH4 等)、等の過酷な腐食環境ではその特性を早期に喪失することが知られている。従って、コーティングとして、(Cr+NH4 Cl+Al2 3 )混合粉末中で加熱処理するCrパック処理法により、Cr含有Ni基合金皮膜が形成されているが、しかし、部材の形状に依存して、例えば角の部分には、高Cr(α-Cr相)層が形成し、亀裂と剥離を誘発することが問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3857689号公報
【特許文献2】特許第3857690号公報
【特許文献3】特許第3910588号公報
【特許文献4】特許第4753720号公報
【特許文献5】特許第5905336号明細書
【特許文献6】特許第5905354号明細書
【特許文献7】特許第5905355号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「ジェットエンジンへの耐熱コーティング」大寺一生、津田義弘、荒木隆人、森信義、佐藤彰洋;表面技術、Vol.63, No.1, pp.19-23,(2012)
【非特許文献2】中森正治監修 ボイラ燃焼ガスによる高温腐食事例とその対策、ISBN978-4-924728-66-OC 3050
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上述のように、特許文献1~4、8のσ-Re系バリアの形成には1200℃以上の高温の熱処理が必要であるため、基材の組織変化や結晶粒の粗大化を生じさせる可能性があることから、基材はNi基単結晶超合金のような単結晶に限られ、例えばステンレス鋼のようなFe基合金や例えばハステロイ(Hastelloy)のようなNi基合金に代表される汎用基材を使用することが困難であった。また、特許文献5~7では、拡散バリア層の形成に必要な熱処理の温度は低いものの、拡散障壁能が低かった。さらに、Cr含有合金皮膜に関しては、Crパック処理法により形成されるCr含有Ni基合金皮膜には亀裂や剥離を誘発する高Crのα-Cr相が形成されるのを避けることができない。
【0013】
そこで、この発明が解決しようとする課題は、汎用基材を含む各種の金属基材を使用することができ、高温酸化性雰囲気または高温腐食性雰囲気中において使用された場合に、拡散バリア機能を継続的に得ることができることにより、最表面に保護的酸化物皮膜を長期に亘って維持し続けることができ、さらには特にCr含有合金層を用いる場合には保護的酸化物皮膜の亀裂や剥離を抑えることができ、製造に必要なプロセスもめっき法、パック処理法、等の簡単なプロセスで済む耐熱金属部材およびその製造方法ならびにそのような耐熱金属部材を含む高温装置ならびに耐熱金属部材の製造方法に用いて好適なめっき液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、この発明は、
金属基材と、
上記金属基材上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層と、
上記金属基材と上記拡散バリア層との間の少なくともCoを含有する境界層と、
上記拡散バリア層上のAl含有合金層またはCr含有合金層と、
を有する耐熱金属部材である。
【0015】
拡散バリア層のRe濃度は、典型的には1原子%以上である。拡散バリア層は、好適には、Reを10原子%含有するα-Co(Re)連続層からなり、当該α-Co(Re)連続層はε-Re(Co)相の析出物を含有する。ここで、Co(Re)はReを含有するCoを意味し、Co-Re合金と同義である。Re(Co)や後述のRe(Ni)も同様である。拡散バリア層の厚さは、必要に応じて選ばれるが、典型的には、10μm以上100μm以下である。拡散バリア層は、ReおよびCo以外に金属基材およびAl含有合金層またはCr含有合金層が含有する元素を1種または2種以上含有することもある。この場合、ε-Re(Co)相が例えばCoに加えてNiを含有するときはε-Re(Co、Ni)相と記載されるが、ε-Re(Co)相はε-Re(Co、Ni)相も含むものとする。ε-Re(Co)相がCoおよびNiに加えて他の元素を含む場合も同様である。
【0016】
拡散バリア層上のAl含有合金層を有する場合、このAl含有合金層はPtを含有することもある。この場合、Al含有合金層のPt濃度は、典型的には1.5原子%以上である。このようにAl含有合金層がPtを含有することにより、耐熱金属部材の使用中にAl含有合金層のAl濃度を高く維持することができる。境界層がCoを含有することにより、耐熱金属部材の使用時に境界層にボイドが形成されるのを抑制することができる。また、この場合、典型的には、境界層はAlを含有する。この境界層のAl濃度は、典型的には1原子%以上であるが、好適には3原子%以上25原子%以下である。このように境界層がAlを含有すると、耐熱金属部材の使用時に、Al含有合金層の分解が遅延するため、Al濃度の低下を防止することができる。また、Al含有合金層へのReの溶解度が小さいことから、境界層が含有するAlは拡散バリア層の分解を抑制するため、拡散バリア層を安定に維持することができる。境界層の厚さは、特に制限はないが、典型的には5μm以上200μm以下、好適には10μm以上100μm以下である。
【0017】
Al含有合金層は、耐熱金属部材の使用時にその最表面に保護的アルミナ(Al2 3 )を形成し、金属基材、境界層および拡散バリア層を含む耐熱金属部材の全体を高温酸化性雰囲気および高温腐食性雰囲気から保護する機能を有する。Al含有合金層は、特に制限はないが、例えば、β-NiAl、γ’-Ni3 Al、CoAl、FeAl、等からなり、典型的には、Al以外の元素はCoおよびNiを主体とする。Al含有合金層は、金属基材、境界層および拡散バリア層が含有する元素を不可避的に含有することもある。Al含有合金層のAl濃度は、特に限定されないが、典型的には、10原子%以上60原子%以下である。Al含有合金層の厚さは、必要に応じて選ばれるが、典型的には、20μm以上100μm以下である。Cr含有合金層は、耐熱金属部材の使用時にその最表面に保護的クロミア(Cr2 3 )を形成し、金属基材、境界層および拡散バリア層を含む耐熱金属部材の全体を高温酸化性雰囲気および高温腐食性雰囲気から保護する機能を有する。Cr含有合金層は、典型的には、NiCrAl、FeCrAlまたはCr粒子を含有するNi-Al合金、等からなり、典型的にはCr以外の元素としてCoおよびNiを主体とする。Cr含有合金層は、金属基材、境界層および拡散バリア層が含有する元素を不可避的に含有することもある。Cr含有合金層のCr濃度は、特に限定されないが、典型的には、10原子%以上50原子%以下である。Cr含有合金層の厚さは、必要に応じて選ばれるが、一般的には20μm以上100μm以下である。
【0018】
この耐熱金属部材は、拡散バリア層とAl含有合金層またはCr含有合金層との間の遷移層をさらに有することもある。この遷移層は、典型的には、Re濃度が1原子%未満、Al濃度またはCr濃度が10原子%以下であるが、これに限定されるものではない。
【0019】
金属基材は、必要に応じて選ばれ、各種のものを使用することができるが、例えば、Fe基合金、Co基合金、Ni基合金、Ni基単結晶超合金、等からなるものである。このうち、Fe基合金は、例えば、SUS304、SUS310、等、Co基合金は、例えば、Coを主成分とし、Cr、W等を含有する合金、Coを主成分とし、Mo、Cr、Si、Fe等を含有する合金、等、Ni基合金は、例えば、ハステロイ(Hastelloy)-X、インコネル(Inconel)、等からなる。金属基材の形状は特に限定されず、用途等に応じて選ばれるが、例えば、平板状、棒状(角棒、丸棒、等)、管状、箱状、等である。
【0020】
耐熱金属部材は、特に限定されないが、具体的には、例えば、焼却炉、ボイラー、ガスタービンの部材、ジェットエンジンの部材、排ガス系部材、等が挙げられる。
【0021】
また、この発明は、
金属基材上に少なくとも第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜および上記第2のCo膜または上記Ni膜を形成した上記金属基材をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層および当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層を形成する工程と、
上記境界層および上記拡散バリア層を形成した上記金属基材に対してAl拡散処理を行うことにより上記拡散バリア層上にAl含有合金層を形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法である。
【0022】
めっき法は電気めっき法を意味する。第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜を形成した金属基材の熱処理の温度および時間は必要に応じて選ばれるが、温度は例えば1050℃以上1150℃以下、時間は例えば1時間以上20時間以下、典型的には2時間以上12時間以下である。この熱処理は好適には不活性ガス雰囲気中で行われる。不活性ガス雰囲気は、特に限定されないが、好適には、Ar(アルゴン)とHe(ヘリウム)との混合ガスまたはArとH2 (水素)との混合ガスであり、取り分けArと3vol%H2 との混合ガスが好適なものである。Al拡散処理の温度および時間は必要に応じて選ばれるが、温度は例えば950℃以上1100℃以下、典型的には1000℃以上1050℃以下、時間は例えば1時間以上20時間以下である。このAl拡散処理も好適には上記と同様な不活性ガス雰囲気中で行われる。
【0023】
この発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、上記の耐熱金属部材の発明に関連して説明したことが成立する。
【0024】
また、この発明は、
金属基材上に少なくとも第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜および上記第2のCo膜または上記Ni膜を形成した上記金属基材をTi粉末および/またはMg粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のAl含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法である。
【0025】
この発明においては、金属基材をTi粉末および/またはMg粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、TiとAl2 3 との反応によりAlとTiOとを生成し、あるいは、MgとAl2 3 との反応によりAlとMgOとを生成することにより、Al拡散を可能とし、Al含有合金層を形成する。必要に応じて、混合粉末にFeAl、NiAl等のAl源の粉末を混合させてもよい。
【0026】
第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜を形成した金属基材の熱処理の温度および時間ならびに雰囲気は上記の耐熱金属部材の製造方法の発明と同様である。
【0027】
Al含有合金層にPtを含有させる場合には、例えば、第2のCo膜上にPt膜をめっき法により形成し、または、Pt粉末(例えば粒径1μm程度)をスラリー法により塗布する。こうすることで、熱処理を行うことにより、Ptを含有するAl含有合金層を形成することができる。
【0028】
この発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、上記の耐熱金属部材の発明および耐熱金属部材の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【0029】
また、この発明は、
金属基材上に少なくとも第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜および上記第2のCo膜またはNi膜を形成した上記金属基材をNi粉末とNiAl粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のAl含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法である。
【0030】
第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜を形成した金属基材の熱処理の温度および時間ならびに雰囲気は上記の耐熱金属部材の製造方法の発明と同様である。
【0031】
この発明においては、その性質に反しない限り、上記の耐熱金属部材の発明および耐熱金属部材の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【0032】
また、この発明は、
金属基材上に、Coめっき液とRe(Ni)めっき液とを混合しためっき液を用いためっき法により少なくとも、Niを含有するCo-Re合金膜を形成する工程と、
上記Co(Re)合金膜を形成した上記金属基材をTi粉末および/またはMg粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のAl含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法である。
【0033】
めっき液におけるCoめっき液(Coイオンを含む電解液)とRe(Ni)めっき液(ReイオンおよびNiイオンを含む電解液)との混合割合(vol%)は必要に応じて選択されるが、典型的には、Coめっき液10vol%、Re(Ni)めっき液90vol%からCoめっき液60vol%、Re(Ni)めっき液40vol%の範囲であり、好適にはCoめっき液20vol%、Re(Ni)めっき液80vol%からCoめっき液50vol%、Re(Ni)めっき液50vol%の範囲である。このようなめっき液を用いてめっきを行うことにより、様々な組成の、Niを含有するCo-Re合金膜を形成することができる。
【0034】
Ti粉末および/またはMg粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて行う熱処理については上記の発明に関連して説明した通りである。
【0035】
この発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、上記の耐熱金属部材の発明および耐熱金属部材の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【0036】
また、この発明は、
金属基材上に、Coめっき液とRe(Ni)めっき液とを混合しためっき液を用いためっき法により少なくとも、Niを含有するCo(Re)合金膜を形成する工程と、
上記Co-Re合金膜上にCo膜をめっき法により形成する工程と、
上記Co-Re合金膜および上記Co膜を形成した上記金属基材をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層および当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層を同時に形成する工程と、
上記境界層および上記拡散バリア層を形成した上記金属基材に対してAl拡散処理を行うことにより上記拡散バリア層上にAl含有合金層を形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法である。
【0037】
熱処理の温度および時間ならびに雰囲気は上記の発明に関連して説明した通りである。
【0038】
この発明においては、上記以外のことについては、その性質に反しない限り、上記の耐熱金属部材の発明および耐熱金属部材の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【0039】
また、この発明は、
金属基材上に少なくとも第1のCo膜、Re(Ni)膜、第2のCo膜およびNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜、上記第2のCo膜および上記Ni膜を形成した上記金属基材をNi粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のCr含有合金層を同時に形成する工程と、
上記境界層、上記拡散バリア層および上記Cr含有合金層を形成した上記金属基材に対してAl拡散処理を行うことにより上記Cr含有合金層上にAl含有合金層を形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法である。
【0040】
この発明においては、その性質に反しない限り、上記の耐熱金属部材の発明および耐熱金属部材の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【0041】
また、この発明は、
金属基材上に少なくとも、第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第1のCo膜、上記Re(Ni)膜および上記第2のCo膜を形成した上記金属基材をNi粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のCr含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法である。
【0042】
この発明においては、その性質に反しない限り、上記の耐熱金属部材の発明および耐熱金属部材の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【0043】
また、この発明は、
金属基材上に少なくとも、第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜をめっき法により順に形成する工程と、
上記第2のCo膜上に少なくとも、Ni粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末を含むスラリーを塗布した後、当該スラリーを塗布した上記金属基材をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、少なくともCoを含有する境界層、当該境界層上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層および当該拡散バリア層上のCr含有合金層を同時に形成する工程と、
を有する耐熱金属部材の製造方法である。
【0044】
この発明においては、その性質に反しない限り、上記の耐熱金属部材の発明および耐熱金属部材の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【0045】
また、この発明は、
金属基材と、
上記金属基材上の、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層と、
上記金属基材と上記拡散バリア層との間の少なくともCoを含有する境界層と、
上記拡散バリア層上のAl含有合金層またはCr含有合金層と、
を有する耐熱金属部材
を有する高温装置である。
【0046】
高温装置は、上記の耐熱金属部材を一部または全部に含む各種のものであってよいが、具体的には、例えば、ガスタービン、ジェットエンジン、排ガス装置、ボイラー、熱処理炉、焼却炉、等である。
【0047】
この高温装置の発明においては、特にその性質に反しない限り、上記の耐熱金属部材の発明の発明に関連して説明したことが成立する。
【0048】
また、この発明は、
Coめっき液とRe(Ni)めっき液とを混合しためっき液である。
【0049】
この発明においては、このめっき液を用いる上記の耐熱金属部材の製造方法の発明に関連して説明したことが成立する。
【発明の効果】
【0050】
この発明によれば、耐熱金属部材が、金属基材上に少なくともCoを含有する境界層、Reを含有するCo基合金を少なくとも主成分とする拡散バリア層およびAl含有合金層またはCr含有合金層とを有することにより、拡散バリア機能を継続的に得ることができるため、高温酸化性雰囲気または高温腐食性雰囲気中で使用された場合に長期に亘って最表面に保護的酸化物皮膜を維持し続けることができ、特にCr含有合金層を用いる場合に保護的酸化物皮膜の亀裂や剥離を抑えることができ、さらには、拡散バリア層の形成を含めて1100℃以下の温度で耐熱金属部材を製造することができることによりFe基合金、Co基合金、Ni基合金、等からなる汎用基材を含む各種の金属基材を使用することができ、製造に必要なプロセスもめっき法、パック処理法、等の簡単なプロセスで済むため耐熱金属部材の製造コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】この発明の第1の実施の形態による耐熱金属部材を示す断面図である。
図2】この発明の第1の実施の形態による耐熱金属部材を示す断面図である。
図3】この発明の第1の実施の形態による耐熱金属部材の製造方法の第1の例を示す断面図である。
図4】この発明の第1の実施の形態による耐熱金属部材の製造方法の第1の例を示す断面図である。
図5】この発明の第1の実施の形態による耐熱金属部材の製造方法の第5の例を示す断面図である。
図6】この発明の第1の実施の形態による耐熱金属部材の製造方法の第7の例を示す断面図である。
図7】この発明の第1の実施の形態による耐熱金属部材の製造方法の第8の例を示す断面図である。
図8】この発明の第2の実施の形態による耐熱金属部材を示す断面図である。
図9】この発明の第2の実施の形態による耐熱金属部材を示す断面図である。
図10A】実施例1の金属基材のめっきおよび熱処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図10B図10Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図11A図10Aに示す金属基材の一部を拡大して示す図面代用写真である。
図11B図11Aに示す金属基材の断面におけるReの濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図12】Co-Re系二元系状態図を示す略線図である。
図13A図10Aに示す金属基材に追加のNi膜を形成した後に行ったAl拡散処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図13B図13Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図14A】実施例2の金属基材のめっき、熱処理、追加NiめっきおよびAl拡散処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図14B図14Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図15A】実施例3の金属基材のめっきおよび熱処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図15B図15Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図16A図15Aに示す金属基材に追加のNi膜を形成した後に行ったAl拡散処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図16B図16Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図17A図16Aに示す金属基材の一部を拡大して示す図面代用写真である。
図17B図17Aに示す金属基材の断面におけるReの濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図18A】実施例4の金属基材のめっきおよびTi処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図18B図18Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図19A】実施例5の金属基材のめっきおよびTi処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図19B図18Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図20A】実施例6の金属基材のめっきおよび(Ti+Mg)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図20B図20Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図21A】実施例7の金属基材のめっきおよび(Ti+FeAl)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図21B図21Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図22A】実施例8の金属基材のめっきおよび(Ti+NiAl)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図22B図22Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図23A】実施例9の金属基材のめっきおよび(Ti+NiAl)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図23B図23Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図24A】実施例10の金属基材のめっきおよび(Ti+NiAl)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図24B図24Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図25A】実施例11の金属基材のめっきおよび(Ti+NiAl)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図25B図25Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図26A】実施例12の金属基材のめっきおよび(Ti+NiAl)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図26B図26Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図27A】実施例13の金属基材のめっきおよび(Ti+NiAl)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図27B図27Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図28】実施例9~13の結果から求められたAl含有合金層のAl、NiおよびCoの濃度の、Al含有合金層に添加するPt濃度依存性を示す略線図である。
図29A】実施例14の金属基材のめっきおよび(Ni+NiAl)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図29B図29Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図30A】実施例15の金属基材のめっきおよび(Cr+Ni)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図30B図30Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図31A】実施例15の金属基材のFeAl処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図31B図31Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図32A】実施例16の金属基材のめっきおよび(Cr+Ni)処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図32B図32Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図33A】実施例16の金属基材のFeAl処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図33B図33Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図34A】実施例17において金属基材のめっき液(1)を用いためっき後の断面組織を示す図面代用写真である。
図34B図34Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図35A】実施例17において金属基材のめっき液(1)を用いためっき後の断面組織を示す図面代用写真である。
図35B図35Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図36A】実施例17において金属基材のめっき液(2)を用いためっき後の断面組織を示す図面代用写真である。
図36B図36Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図37A】実施例17において金属基材のめっき液(2)を用いためっき後の断面組織を示す図面代用写真である。
図37B図37Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図38A】実施例17において金属基材のめっき液(3)を用いためっき後の断面組織を示す図面代用写真である。
図38B図38Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図39】実施例17の結果から求められためっき液中のCoめっき液の容積割合とめっき皮膜中のCo、ReおよびNiの濃度との関係を示す略線図である。
図40A】実施例18における図34Aに示す金属基材のTi処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図40B図40Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図41A】実施例19における図35Aに示す金属基材のTi処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図41B図40Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図42A】実施例20における図37Aに示す金属基材のTi処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図42B図40Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図43A】実施例21の金属基材のめっきおよび熱処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図43B図43Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図44A】実施例22の金属基材のめっきおよび熱処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図44B図44Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
図45A】実施例23の金属基材のめっきおよび熱処理後の断面組織を示す図面代用写真である。
図45B図45Aに示す金属基材の断面における各元素の濃度分布の測定結果を示す略線図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下、発明を実施するための形態(以下、単に「実施の形態」という。)について説明する。
【0053】
〈第1の実施の形態〉
[耐熱金属部材]
図1は第1の実施の形態による耐熱金属部材を示す。図1に示すように、この耐熱金属部材においては、金属基材100の表面に境界層200、拡散バリア層300およびAl含有合金層500がこの順に積層されている。拡散バリア層300とAl含有合金層500との間に遷移層400が存在する場合もあり、その場合の積層構造を図2に示す。
【0054】
金属基材100は必要に応じて選ばれ、例えば、既に挙げたものの中から選ばれるが、具体的には、例えば、Fe基合金、Co基合金、Ni基合金、Ni基単結晶超合金、等からなるものである。境界層200は少なくともCoを含有し、そのほかに金属基材100を構成する一種または二種以上の元素と拡散バリア層300を構成する一種または二種以上の元素と場合によってはさらに、Al含有合金層500を構成する一種または二種以上の元素とを含有する層である。境界層200はAlを含有しない場合と含有する場合とがある。境界層200がAlを含有する場合、境界層200のAl濃度が25原子%を超えると、耐熱金属部材の使用時に境界層200と拡散バリア層300との間にボイドが形成されやすくなるため、Al濃度は典型的には25原子%以下、好適には15原子%以下に選ばれる。境界層200にAlが存在すると、Reの拡散による拡散バリア層300の分解およびAlの拡散によるAl含有合金層500の分解を抑制することができる。拡散バリア層300はReを含有するCo基合金からなり、金属基材100を構成する一種または二種以上の元素とAl含有合金層500を構成する一種または二種以上の元素とを含有し、典型的には、Reを10原子%含有するα-Co(Re)相の連続層の中にε-Re(Co)相が析出した構造を有する。拡散バリア層300により、耐熱金属部材の使用時に、Al含有合金層500のAl濃度の維持を図ることができるとともに、保護的Al2 3 の形成および維持を図ることができ、再生能にも優れている。Al含有合金層500は、典型的にはAl以外はCoおよびNiを主体とし、金属基材100を構成する一種または二種以上の元素と拡散バリア層300を構成する一種または二種以上の元素を含有する。Al含有合金層500のAl濃度は特に限定されないが、典型的には10原子%以上60原子%以下である。Al含有合金層500はPtを例えば1.5原子%以上含有することもある。Al含有合金層500中のPtはAl濃度を高く維持する機能を有し、耐酸化性を確保することができる。遷移層400は、拡散バリア層300を構成する一種または二種以上の元素とAl含有合金層500を構成する一種または二種以上の元素とを含有する層である。境界層200の厚さは、特に制限はないが、典型的には5μm以上200μm以下、より典型的には10μm以上100μm以下である。拡散バリア層300の厚さは必要に応じて選ばれるが、好適には、10μm以上100μm以下である。遷移層400の厚さは、特に制限はない。Al含有合金層500の厚さは必要に応じて選ばれるが、典型的には、20μm以上100μm以下である。
【0055】
[耐熱金属部材の製造方法]
この耐熱金属部材の製造方法について説明する。ここでは、製造方法の第1の例~第7の例(製造方法1~7)について説明する。
【0056】
(1)製造方法1
図3に示すように、まず、金属基材100上にNiストライク膜(図示せず)、第1のCo膜110、Re(Ni)膜120および第2のCo膜130をめっき法により順に形成する。Niストライク膜は、金属基材100に対するめっき皮膜の密着性の向上を図ること等を目的として形成されるものであり、そのめっきは、例えば、電流密度0.5A/cm2 で1分行う。第1のCo膜110および第2のCo膜130のめっきは、典型的には、電流密度0.03A/cm2 で10~25分行う。Re(Ni)膜120のめっきは、典型的には、電流密度0.04A/cm2 で10~60分行う。第2のCo膜130の代わりにNi膜を形成することもある。
【0057】
次に、こうして第1のCo膜110、Re(Ni)膜120および第2のCo膜130を形成した金属基材100をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末(例えば、(10~15)質量%Cr粉末+(90~85)質量%Al2 3 粉末)中に埋没させて熱処理を行うことにより、図4に示すように、境界層200および拡散バリア層300を形成する。熱処理の温度は例えば1050℃以上1150℃以下(例えば、1100℃)、時間は例えば2時間以上12時間以下である。熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気、好適には例えばAr+3vol%H2 雰囲気である。
【0058】
次に、こうして境界層200および拡散バリア層300を形成した金属基材100に対してAl拡散処理を行うことにより、図1に示すように、拡散バリア層300上にAl含有合金層500を形成する。Al拡散処理は、境界層200および拡散バリア層300を形成した金属基材100を、例えば、FeAl粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末(例えば、(10~15)質量%FeAl粉末+(1~2)質量%NH4 Cl粉末+(89~83)質量%Al2 3 粉末)に埋没させ、不活性ガス雰囲気、好適にはAr+3vol%H2 雰囲気中において950℃以上1100℃以下、好適には1000℃以上1050℃以下の温度で1時間以上10時間以下加熱することにより行う。このAl拡散処理では、例えばAl濃度が50原子%以上60原子%以下のAl含有合金層500を形成することができる。このAl含有合金層500の形成の段階で拡散バリア層300とこのAl含有合金層500との間に両者が混合した遷移層400が形成されることがある。
【0059】
以上により、図1に示す目的とする耐熱金属部材が製造される。
【0060】
(2)製造方法2
まず、製造方法1と同様に、金属基材100上にNiストライク膜(図示せず)、第1のCo膜110、Re(Ni)膜120および第2のCo膜130をめっき法により順に形成する。
【0061】
次に、第1のCo膜110、Re(Ni)膜120および第2のCo膜130を形成した金属基材100をTi粉末および/またはMg粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、図1に示すように、境界層200、拡散バリア層300およびAl含有合金層500を同時に形成する。混合粉末は、Ti粉末とAl2 3 粉末とを含む場合は、例えば、(10~22)質量%Ti粉末+(90~78)質量%Al2 3 粉末である。この場合、例えばAl濃度が10原子%以上30原子%以下のAl含有合金層500を形成することができる。混合粉末は、Ti粉末とMg粉末とAl2 3 粉末とを含む場合は、例えば、(10~20)質量%Ti粉末+(0~2)質量%Mg粉末+(90~78)質量%Al2 3 粉末である。この場合、例えばAl濃度が10原子%以上55原子%以下のAl含有合金層500を形成することができる。混合粉末は、Mg粉末とAl2 3 粉末とを含む場合は、例えば、(10~22)重量%Mg粉末+(90~78)重量%Al2 3 粉末である。熱処理の温度は例えば1050℃以上1150℃以下(例えば、1100℃)、時間は例えば2時間以上12時間以下である。熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気、好適には例えばAr+3vol%H2 雰囲気である。こうして形成される境界層200のAl濃度は典型的には25原子%以下、好適には15原子%以下である。必要に応じて、混合粉末にAl源となるFeAl、NiAl等の粉末を混合させてもよい。
【0062】
以上により、図1に示す目的とする耐熱金属部材が製造される。
【0063】
(3)製造方法3
製造方法3は、金属基材100上にNiストライク膜(図示せず)、第1のCo膜110、Re(Ni)膜120および第2のCo膜130をめっき法により順に形成することに加えてさらに、第2のCo膜130上に同じくめっき法によりPt膜(図示せず)を形成し、あるいは、Ptの粉末(図示せず)をスラリー法により塗布することが製造方法2と異なり、その他は製造方法2と同様である。Pt膜のめっきは、例えば、電流密度0.02A/cm2 で1~10分行う。こうして第1のCo膜110、Re(Ni)膜120、第2のCo膜130およびPt膜またはPt粉末層を形成した金属基材100をTi粉末および/またはMg粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、境界層200、拡散バリア層300およびAl含有合金層500を同時に形成するとともに、Al含有合金層500にPtを含有させる。こうしてPtが添加されたAl含有合金層500のAl濃度は、例えば30原子%以上40原子%以下である。
【0064】
以上により、図1に示す目的とする耐熱金属部材が製造される。
【0065】
(4)製造方法4
まず、製造方法1と同様に、金属基材100上にNiストライク膜(図示せず)、第1のCo膜110、Re(Ni)膜120および第2のCo膜130をめっき法により順に形成する。
【0066】
次に、第1のCo膜110、Re(Ni)膜120および第2のCo膜130を形成した金属基材100をNi粉末とNiAl粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、図1に示すように、境界層200、拡散バリア層300およびAl含有合金層500を同時に形成する。混合粉末は、例えば、(1~5)質量%Ni粉末+(25~29)質量%NiAl粉末+(1~2)質量%NH4 Cl粉末+(73~64)質量%Al2 3 粉末である。この場合、例えばAl濃度が40原子%以上55原子%以下のAl含有合金層500を形成することができる。熱処理の温度は例えば950℃以上1100℃以下、典型的には1000℃以上1050℃以下(例えば、1100℃)、時間は例えば2時間以上12時間以下である。熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気、好適には例えばAr+3vol%H2 雰囲気である。
【0067】
以上により、図1に示す目的とする耐熱金属部材が製造される。
【0068】
(5)製造方法5
図5に示すように、製造方法4では、金属基材100上にNiストライク膜(図示せず)を形成した後、Coめっき液とRe(Ni)めっき液とを混合しためっき液を用いためっき法により、Niを含有するCo(Re)合金膜600を形成する。このめっき液におけるCoめっき液とRe(Ni)めっき液との混合割合(vol%)は、典型的には、Coめっき液10vol%、Re(Ni)めっき液90vol%からCoめっき液60vol%、Re(Ni)めっき液40vol%の範囲であり、好適にはCoめっき液20vol%、Re(Ni)めっき液80vol%からCoめっき液50vol%、Re(Ni)めっき液50vol%の範囲である。必要に応じて、Co(Re)合金膜600上にさらにNi膜(図示せず)をめっき法により形成する。Ni膜のめっきの条件は製造方法1と同様である。
【0069】
次に、製造方法2と同様に、Niを含有するCo(Re)合金膜600あるいはさらにNi膜を形成した金属基材100をTi粉末および/またはMg粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、境界層200、拡散バリア層300およびAl含有合金層500を同時に形成する。
【0070】
以上により、図1に示す目的とする耐熱金属部材が製造される。
【0071】
(6)製造方法6
製造方法6では、製造方法5と同様に、金属基材100上にNiストライク膜(図示せず)を形成し、Coめっき液とRe(Ni)めっき液とを混合しためっき液を用いためっき法により、Niを含有するCo(Re)合金膜600を形成する。必要に応じて、Co(Re)合金膜600上にさらにCo膜(図示せず)をめっき法により形成する。Co膜のめっきは、典型的には、電流密度0.03A/cm2 で20~60分行う。
【0072】
次に、製造方法1と同様に、Niを含有するCo(Re)合金膜700あるいはさらにCo膜を形成した金属基材100をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて不活性ガス雰囲気、例えばAr+3vol%H2 雰囲気中において例えば1050℃以上1150℃以下(例えば、1100℃)で例えば2時間以上12時間以下熱処理を行うことにより、境界層200および拡散バリア層300を同時に形成する。
【0073】
次に、製造方法1と同様に、こうして境界層200および拡散バリア層300を形成した金属基材100に対してAl拡散処理を行うことにより、拡散バリア層300上にAl含有合金層500を形成する。
【0074】
以上により、図1に示す目的とする耐熱金属部材が製造される。
【0075】
(7)製造方法7
製造方法7では、製造方法1と同様に、金属基材100上にNiストライク膜(図示せず)、第1のCo膜110、Re(Ni)膜120および第2のCo膜130をめっき法により順に形成した後、第2のCo膜130上に同じくめっき法によりNi膜(図示せず)を形成する。
【0076】
次に、こうして第1のCo膜110、Re(Ni)膜120、第2のCo膜130およびNi膜を形成した金属基材100をNi粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理(Cr拡散処理)を行うことにより、図6に示すように、境界層200、ReとCrとを含有する拡散バリア層300およびCr含有合金層700を同時に形成する。混合粉末は、例えば、(15~25)質量%Ni粉末+(10~15)質量%Cr粉末+(1~2)質量%NH4 Cl粉末+(74~58)質量%Al2 3 粉末である。熱処理の温度は例えば1050℃以上1150℃以下(例えば、1100℃)、時間は例えば2時間以上12時間以下である。熱処理の雰囲気は不活性ガス雰囲気、好適には例えばAr+3vol%H2 雰囲気である。こうして形成されるCr含有合金層700のCr濃度は例えば10原子%以上50原子%以下である。Cr含有合金層700は、典型的にはγ-Co(Cr,Ni)層であり、高Cr相(例えばα-Cr相)を含まない。
【0077】
次に、製造方法1と同様にして、こうして境界層200、拡散バリア層300およびCr含有合金層700を形成した金属基材100に対してAl拡散処理を行うことにより、図7に示すように、Cr含有合金層700をAl含有合金層500に変換する。この際、拡散バリア層300とAl含有合金層500との間にCr含有合金層700からのCrを含有する遷移層400が形成される。
【0078】
以上により、目的とする耐熱金属部材が製造される。
【0079】
以上のように、第1の実施の形態によれば、耐熱金属部材が金属基材100上に境界層200、拡散バリア層300およびAl含有合金層500からなる積層構造を有することにより、Fe基合金、Co基合金、Ni基合金、等からなる汎用基材を含む各種の金属基材100を用いることができ、拡散バリア層300により拡散バリア機能を継続的に得ることができるため、耐熱金属部材が高温酸化性雰囲気または高温腐食性雰囲気において使用された場合に、Al含有合金層500のAl濃度を高く維持し続けることができ、それによって長期に亘って最表面に保護的Al2 3 皮膜を維持し続けることができることにより優れた耐高温酸化性または耐高温腐食性を得ることができるだけでなく、境界層200にボイドが形成されるのを抑制することができることにより耐熱金属部材の長寿命化を図ることができる。また、耐熱金属部材の製造に必要なプロセスは、めっき法、パック処理法、等の簡単なプロセスで済むため、製造コストを低く抑えることができる。
【0080】
〈第2の実施の形態〉
[耐熱金属部材]
図8は第2の実施の形態による耐熱金属部材を示す。図8に示すように、この耐熱金属部材においては、金属基材100の表面に境界層200、拡散バリア層300およびCr含有合金層700がこの順に積層されている。拡散バリア層300とCr含有合金層700との間に遷移層400が存在する場合もあり、その場合の積層構造を図9に示す。
【0081】
金属基材100については第1の実施の形態と同様である。境界層200は少なくともCoを含有し、そのほかに金属基材100を構成する一種または二種以上の元素と拡散バリア層300を構成する一種または二種以上の元素と場合によってはさらに、Cr含有合金層700を構成する一種または二種以上の元素とを含有する層である。境界層200はAlを含有しない場合と含有する場合とがあることや、境界層200がAlを含有する場合のAl濃度や得られる効果については第1の実施の形態と同様である。拡散バリア層300はReを含有するCo基合金からなり、金属基材100を構成する一種または二種以上の元素とCr含有合金層700を構成する一種または二種以上の元素とを含有し、典型的には、Reを10原子%含有するα-Co(Re)相の連続層の中にε-Re(Co)相が析出した構造を有する。拡散バリア層300により、耐熱金属部材の使用時に、Cr含有合金層600のCr濃度の維持を図ることができるとともに、保護的Cr2 3 の形成および維持を図ることができ、再生能にも優れている。遷移層400は、拡散バリア層300を構成する一種または二種以上の元素とCr含有合金層700を構成する一種または二種以上の元素とを含有する層である。Cr含有合金層700のCr濃度は特に限定されないが、典型的には10原子%以上50原子%以下であり、Cr以外はCoおよびNiを主体とする。境界層200、拡散バリア層300および遷移層400の厚さについては第1の実施の形態と同様である。Cr含有合金層700の厚さはAl含有合金層500と同様である。
【0082】
[耐熱金属部材の製造方法]
この耐熱金属部材の製造方法について説明する。ここでは、製造方法の第8の例~第9の例(製造方法8~9)について説明する。
【0083】
(1)製造方法8
まず、製造方法6と同様にして、金属基材100上にNiストライク膜(図示せず)、第1のCo膜110、Re(Ni)膜120および第2のCo膜130をめっき法により順に形成した後、こうして第1のCo膜110、Re(Ni)膜120、第2のCo膜130およびNi膜を形成した金属基材100をNi粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、図8に示すように、境界層200、拡散バリア層300およびCr含有合金層700を同時に形成する。
【0084】
以上により、図8に示す目的とする耐熱金属部材が製造される。
【0085】
(2)製造方法9
まず、製造方法6と同様にして、金属基材100上に第1のCo膜110、Re-Ni膜120および第2のCo膜130をめっき法により順に形成する。
【0086】
次に、第2のCo膜130上に、Ni粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末を含むスラリー(組成は例えば、20質量%Ni粉末+10質量%Cr粉末+2質量%NH4 Cl粉末+68質量%Al2 3 粉末)を塗布し、乾燥させた後、こうしてスラリーを塗布した金属基材100をCr粉末とAl2 3 粉末とを含む混合粉末中に埋没させて熱処理を行うことにより、境界層200、拡散バリア層300およびCr含有合金層600を同時に形成する。
【0087】
以上により、図8に示す目的とする耐熱金属部材が製造される。
【0088】
以上のように、第2の実施の形態によれば、耐熱金属部材が金属基材100上に境界層200、拡散バリア層300およびCr含有合金層700からなる積層構造を有することにより、例えばFe基合金、Co基合金、Ni基合金、等からなる汎用基材を含む各種の金属基材100を用いることができる。また、拡散バリア層300により拡散バリア機能を継続的に得ることができるため、耐熱金属部材が高温酸化性雰囲気または高温腐食性雰囲気において使用された場合に、Cr含有合金層700のCr濃度を高く維持し続けることができ、それによって長期に亘って最表面に保護的Cr2 3 皮膜を維持し続けることができることにより優れた耐高温酸化性または耐高温腐食性を得ることができるだけでなく、境界層200にボイドが形成されるのを抑制することができることにより耐熱金属部材の長寿命化を図ることができ、さらにはCr含有合金層700がα-Cr相を含まないようにすることができることにより保護的Cr2 3 皮膜の亀裂や剥離を抑えることができる。また、耐熱金属部材の製造に必要なプロセスは、めっき法、パック処理法、等の簡単なプロセスで済むため、製造コストを低く抑えることができる。
【0089】
実施例について説明する。
【0090】
以下の実施例1~23では、金属基材100として次の4種類の基材を用いた。
【0091】
(1)SCH-2基材(Fe基合金基材)
(2)SUS310基材(Fe基合金基材)
(3)Hastelloy -X基材(Ni基合金基材)
(4)CMSX-4基材(Ni基単結晶超合金基材)
【0092】
各基材の組成(質量%)は次の通りである。
【0093】
含有元素の組成(質量%)
Fe Co Ni Cr Al Mn Mo W Ta Re
SCH-2基材 73 27
SUS310基材 53 20 25 1.5
Hastelloy -X基材 19 1.5 47 22 0.5 9
CMSX-4基材 9.6 60 6.6 5.6 0.6 6.4 6.5 3.0
【0094】
(実施例1)
実施例1は第1の実施の形態に対応するものである。
【0095】
金属基材100としてSUS310基材を用い、製造方法1により耐熱金属部材を作製した。
【0096】
まず、SUS310基材の表面を平滑研磨し、脱脂を行った後、その表面にめっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜およびNi膜を順に形成した。Niストライク膜のめっきは電流密度0.5A/cm2 で1分行った。Co膜のめっきは電流密度0.03A/cm2 で10分行い、Re(Ni)膜およびNi膜のめっきは電流密度0.04A/cm2 で10分行った。Niストライク膜の厚さは約2μm、Co膜の厚さは約10μm、Re(Ni)膜の厚さは約4.5μm、Ni膜の厚さは約7.5μmであった。次に、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材をCr粉末とAl2 3 粉末との混合粉末(10質量%Cr粉末+90質量%Al2 3 粉末)中に埋没させて、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1100℃で7時間、熱処理を行った。
【0097】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察と各元素の濃度分布の測定とをSEM-EDX装置(走査型電子顕微鏡-エネルギー分散分光装置)で行った。図10Aおよび図10Bにそれぞれ断面SEM写真およびEDXを用いて測定した各元素の濃度分布(図10Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図10Aおよび図10Bより、Reを約10原子%固溶したα-Co(Re)相の連続層にε-Re(Co,Ni,Cr,Fe)相が析出した組織からなる、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。図11Aおよび図11B図10Aの拡散バリア層300付近を拡大して示す断面SEM写真およびReの濃度分布(図11Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図11Aおよび図11Bより、拡散バリア層300を構成するReを含有するCo基合金層は、Reを約10原子%固溶したα-Co(Re)相の連続層の中にε-Re(Co,Ni,Cr,Fe)相が析出した組織となっていることが分かる。ε-Re(Co,Ni,Cr,Fe)相は図11B中では単にε-Re(Co)と表記されている。拡散バリア層300のα-Co(Re)相とε-Re(Co)相の相関係は、図12に示すCo-Re系二元系状態図により説明することができる。また、図10Aおよび図10Bより、拡散バリア層300の上層には、Feを数原子%含むNi-Co合金からなる遷移層400が観察される。また、SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含有する境界層200が観察される。
【0098】
図10Aに示すSUS310基材の表面にめっき法により追加のNi膜を形成した後、Al拡散処理を行った。Al拡散処理は、図10Aに示すSUS310基材をFeAl粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末との混合粉末(10質量%FeAl粉末+1質量%NH4 Cl粉末+89質量%Al2 3 粉末)中に埋没させ、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1000℃で4時間加熱することにより行った。Al拡散処理後のSUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図13Aおよび図13Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図13Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図13Aおよび図13Bより、遷移層400の上層にAl以外はNiおよびCoを主体とするAl含有合金層500が観察される。境界層200、拡散バリア層300および遷移層400の構造は維持されている。拡散バリア層300に含有されるAlの濃度は僅少であり、境界層200およびSUS310基材側へのAlの拡散侵入は認められない。
【0099】
(実施例2)
実施例2は第1の実施の形態に対応するものである。
【0100】
金属基材100としてHastelloy -X基材を用い、実施例1と同様に工程を進めてAl拡散処理まで行い、耐熱金属部材を作製した。
【0101】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図14Aおよび図14Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図14Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図14Aおよび図14Bより、実施例1と同様に、境界層200、拡散バリア層300、遷移層400およびAl含有合金層500が観察される。
【0102】
(実施例3)
実施例3は第1の実施の形態に対応するものである。
【0103】
金属基材100としてHastelloy -X基材を用い、製造方法1により耐熱金属部材を作製した。
【0104】
まず、Hastelloy -X基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜、Re(Ni)膜およびNi膜を順に形成した。これらの膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0105】
次に、実施例1と同様に、こうしてめっき皮膜を形成したHastelloy -X基材をCr粉末とAl2 3 粉末との混合粉末中に埋没させて、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1100℃で7時間、熱処理を行った。
【0106】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図15Aおよび図15Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図15Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図15Aおよび図15Bより、α-Co(Re)相の連続層に複層のε-Re(Co)相が析出した組織からなる、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。拡散バリア層300の上層には、Ni-Co合金からなる遷移層400が観察される。同様に、Hastelloy -X基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。
【0107】
図15Aに示すHastelloy -X基材に対してAl拡散処理を行った。Al拡散処理は実施例1と同様の条件で行った。
【0108】
Al拡散処理後のHastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図16Aおよび図16Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図16Aに示す写真の分析線LGに沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図16Aおよび図16Bより、図15Aに示す境界層200および拡散バリア層300の構造は維持されていることが分かる。Al含有合金層500のAl濃度は36.4原子%~57.1原子%と高いにもかかわらず、境界層200および金属基材100側へのAlの拡散侵入は認められない。
【0109】
図17Aおよび図17B図16Aの拡散バリア層300付近を拡大して示す断面SEM写真およびReの濃度分布(図17Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図17Aおよび図17Bより、拡散バリア層300を構成するReを含有するCo基合金層は、Reを約10原子%固溶したα-Co(Re)相の連続層の中にε-Re(Co)相が析出した複相組織となっていることが分かる。
【0110】
(実施例4)
実施例4は第1の実施の形態に対応するものである。
【0111】
金属基材100としてHastelloy -X基材を用い、製造方法2により耐熱金属部材を作製した。
【0112】
まず、Hastelloy -X基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜およびCo膜を順に形成した。これらの膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0113】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したHastelloy -X基材をTi粉末とAl2 3 粉末との混合粉末(20質量%Ti粉末+80質量%Al2 3 粉末)中に埋没させて、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1100℃で7時間熱処理を行った(Ti処理)。
【0114】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図18Aおよび図18Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図18Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図18Aおよび図18Bより、Reを約10原子%固溶したα-Co(Re)相の厚い連続層にε-Re(Co)相が析出した組織からなる、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。拡散バリア層300の上層には、Al含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は14.0原子%~14.9原子%(Max35.0原子%)である。Hastelloy -X基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr、Mo等を含む境界層200が観察される。AlはHastelloy
-X基材および境界層200側にも拡散侵入している。遷移層400は観察されない。
【0115】
(実施例5)
実施例5は第1の実施の形態に対応するものである。
【0116】
金属基材100としてCMSX-4基材を用い、製造方法2により耐熱金属部材を作製した。
【0117】
まず、CMSX-4基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびNi膜を順に形成した。これらの膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0118】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したCMSX-4基材に対して実施例4と同様のTi処理を行った。ただし、Ti処理は12時間行った。
【0119】
CMSX-4基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図19Aおよび図19Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図19Aに示す写真の分析線に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図19Aおよび図19Bより、Reを約10原子%固溶したα-Co(Re)相の連続層にε-Re(Co)相が析出した組織からなる、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。拡散バリア層300の上層には遷移層400およびAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は13.2原子%~14.7原子%(Max36.3原子%)である。CMSX-4基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。境界層200のAl濃度は約9原子%であるが、拡散バリア層300にはAlは検出されない。境界層200に存在するAlはCMSX-4基材およびAl含有合金層500の両方から拡散侵入したものと考えられるが、CMSX-4基材からのAlが優勢であり、その結果、Reの境界層200側への拡散が阻止されている様子が見られる。
【0120】
(実施例6)
実施例6は第1の実施の形態に対応するものである。
【0121】
金属基材100としてHastelloy -X基材を用い、製造方法2により耐熱金属部材を作製した。
【0122】
まず、Hastelloy -X基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびNi膜を順に形成した。これらの膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0123】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したHastelloy -X基材をTi粉末とMg粉末とAl2 3 粉末との混合粉末(20質量%Ti粉末+2質量%Mg粉末+78質量%Al2 3 粉末)中に埋没させて、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1100℃で2時間熱処理を行った((Ti+Mg)処理)。
【0124】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図20Aおよび図20Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図20Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図20Aおよび図20Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。Hastelloy -X基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr、Mo等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層には、Al含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は36.3原子%~49.0原子%と高く、境界層200側にAlの拡散侵入が観察される。遷移層400は観察されない。
【0125】
(実施例7)
実施例7は第1の実施の形態に対応するものである。
【0126】
金属基材100としてHastelloy -X基材を用い、製造方法2により耐熱金属部材を作製した。
【0127】
まず、Hastelloy -X基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびNi膜を順に形成した。これらの膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0128】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したHastelloy -X基材をTi粉末とFeAl粉末とAl2 3 粉末との混合粉末(20質量%Ti粉末+2質量%FeAl粉末+78質量%Al2 3 粉末)中に埋没させて、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1100℃で2時間熱処理を行った((Ti+FeAl)処理)。
【0129】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図21Aおよび図21Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図21Aに示す写真の分析線LG4に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図21Aおよび図21Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。Hastelloy -X基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr、Mo等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層には遷移層400およびAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は13.6原子%~18.8原子%(Max37.3原子%)であり、境界層200側へのAlの拡散は抑制されている。
【0130】
(実施例8)
実施例8は第1の実施の形態に対応するものである。
【0131】
金属基材100としてHastelloy -X基材を用い、製造方法2により耐熱金属部材を作製した。
【0132】
まず、Hastelloy -X基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびNi膜を順に形成した。これらの膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0133】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したHastelloy -X基材をTi粉末とNiAl粉末とAl2 3 粉末との混合粉末(20質量%Ti粉末+2質量%NiAl粉末+78質量%Al2 3 粉末)中に埋没させて、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1100℃で2時間熱処理を行った((Ti+NiAl)処理)。
【0134】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図22Aおよび図22Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図22Aに示す写真の分析線LG4に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図22Aおよび図22Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。図示は省略するが、Hastelloy -X基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr、Mo等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層にはAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は36.3原子%~49.0原子%であり、境界層200側へのAlの拡散が認められた。
【0135】
(実施例9)
実施例9は第1の実施の形態に対応するものである。
【0136】
金属基材100としてHastelloy -X基材を用い、製造方法3により耐熱金属部材を作製した。
【0137】
まず、Hastelloy -X基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびPt膜を順に形成した。Pt膜の厚さは約3μmであった。Pt膜のめっきは電流密度0.02A/cm2 で10分行った。Pt膜以外の膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0138】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したHastelloy -X基材に対して実施例4と同様にTi処理を行った。
【0139】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図23Aおよび図23Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図23Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図23Aおよび図23Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。Hastelloy -X基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr、Mo等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層にはAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は31.4原子%~32.7原子%であり、境界層200側へのAlの拡散が認められる。
【0140】
(実施例10)
実施例10は第1の実施の形態に対応するものである。
【0141】
金属基材100としてHastelloy -X基材を用い、製造方法3により耐熱金属部材を作製した。
【0142】
まず、Hastelloy -X基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびPt膜を順に形成した。Pt膜の厚さおよびめっきの条件は実施例9と同様である。Pt膜以外の膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0143】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したHastelloy -X基材に対して実施例4と同様にしてTi処理を行った。
【0144】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図24Aおよび図24Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図24Aに示す写真の分析線に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図24Aおよび図24Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。Hastelloy -X基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr、Mo等を含有する境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層にはAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は31.8原子%~35.5原子%である。境界層200側へのAlの拡散が認められる。
【0145】
(実施例11)
実施例11は第1の実施の形態に対応するものである。
【0146】
金属基材100としてSUS310基材を用い、製造方法3により耐熱金属部材を作製した。
【0147】
まず、SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびPt膜を順に形成した。Pt膜の厚さおよびめっきの条件は実施例9と同様である。Pt膜以外の膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0148】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材に対して実施例4と同様にしてTi処理を行った。
【0149】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図25Aおよび図25Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図25Aに示す写真の分析線に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図25Aおよび図25Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層にはAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は29.1原子%~33.9原子%である。
【0150】
(実施例12)
実施例12は第1の実施の形態に対応するものである。
【0151】
金属基材100としてSUS310基材を用い、製造方法3により耐熱金属部材を作製した。
【0152】
まず、SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびPt膜を順に形成した。Pt膜の厚さおよびめっきの条件は実施例9と同様である。Pt膜以外の膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0153】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材に対して実施例4と同様にしてTi処理を行った。
【0154】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図26Aおよび図26Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図26Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図26Aおよび図26Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層には遷移層400およびAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は32.9原子%~37.6原子%であり、境界層200側へのAlの拡散が認められる。
【0155】
(実施例13)
実施例13は第1の実施の形態に対応するものである。
【0156】
金属基材100としてSUS310基材を用い、製造方法3により耐熱金属部材を作製した。
【0157】
まず、SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびPt膜を順に形成した。Pt膜の厚さおよびめっきの条件は実施例9と同様である。Pt膜以外の膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0158】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材に対して実施例4と同様にしてTi処理を行った。
【0159】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図27Aおよび図27Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図27Aに示す写真の分析線LG7に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図27Aおよび図27Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層にはAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は34.8原子%~41.3原子%であり、境界層200側へのAl拡散が認められる。
【0160】
図28は、実施例9~13に示した結果から得られたAl含有合金層500のAl、Ni、Coの濃度のPt濃度依存性を示す。図28より、Pt濃度が約1.5原子%以上では、Co濃度は低下し、Ni濃度は増大し、Al濃度は30原子%から42原子%まで増大した。
【0161】
(実施例14)
実施例14は第1の実施の形態に対応するものである。
【0162】
金属基材100としてSUS310基材を用い、製造方法4を用いて耐熱金属部材を作製した。
【0163】
まず、SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜およびCo膜を順に形成した。これらの膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0164】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材をNi粉末とNiAl粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末との混合粉末(3質量%Ni粉末+10質量%NiAl粉末+1.5質量%NH4 Cl粉末+16質量%Al2 3 粉末)中に埋没させて、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1100℃で2時間熱処理を行った((Ni+NiAl)処理)。
【0165】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図29Aおよび図29Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図29Aに示す写真の分析線に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図29Aおよび図29Bより、境界層200、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300、遷移層400およびAl濃度が37.5~44.6原子%のAl含有合金層が形成されていることが分かる。Alは境界層200に20μm程度拡散侵入している。
【0166】
(実施例15)
実施例15は第1の実施の形態に対応するものである。
【0167】
金属基材100としてSUS310基材を用い、製造方法7を用いて耐熱金属部材を作製した。
【0168】
まず、SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびNi膜を順に形成した。これらの膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0169】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材をNi粉末とCr粉末とNH4 Cl粉末とAl2 3 粉末との混合粉末(20質量%Ni粉末+10質量%Cr粉末+1.5質量%NH4 Cl粉末+68質量%Al2 3 粉末)中に埋没させて、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1100℃で8時間熱処理を行った((Cr+Ni)処理)。
【0170】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図30Aおよび図30Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図30Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図30Aおよび図30Bより、境界層200、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300および遷移層400が形成されていることが分かる。拡散バリア層300はCrとFeとを含有している。遷移層400はCr含有合金層であるγ-Ni(Co、Cr)層からなり、α-Cr相は検出されなかった。
【0171】
次に、図30Aに示すSUS310基材に対してAl拡散処理を行った。Al拡散処理は、実施例1と同様の混合粉末および雰囲気を用いて1050℃で5時間行った。
【0172】
Al拡散処理後のSUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図31Aおよび図31Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図31Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図31Aおよび図31Bより、図30Aに示す境界層200および拡散バリア層300の構造は維持されている。Al含有合金層500のAl濃度は48.1原子%~60.6原子%と高いにもかかわらず、境界層200および金属基材100側へのAlの拡散侵入は認められない。すなわち、Cr拡散処理で形成した拡散バリア層300はAlの拡散バリアとして機能していることが分かる。さらに、遷移層400にはCrの濃化が見られる。これは、Ni(Cr)合金層にAlが拡散侵入するとき、γ' -Ni3 Alとβ-NiAlへのCr溶解度が低いことから、Crが拡散バリア層300側に濃縮してできたものである。
【0173】
(実施例16)
実施例16は第1の実施の形態に対応するものである。
【0174】
金属基材100としてHastelloy -X基材を用い、製造方法7により耐熱金属部材を作製した。
【0175】
まず、Hastelloy -X基材の表面を実施例1と同様に処理した後、めっき法によりNiストライク膜、Co膜、Re(Ni)膜、Co膜およびNi膜を順に形成した。これらの膜の厚さおよびめっきの条件は実施例1と同様である。
【0176】
次に、こうしてめっき皮膜を形成したHastelloy -X基材に対して実施例15と同様の(Cr+Ni)処理を行った。
【0177】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図32Aおよび図32Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図32Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図32Aおよび図32Bより、Co含有合金層からなる境界層200、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300および遷移層400が形成されていることが分かる。拡散バリア層300はCrとFeとを含有している。遷移層400は、Cr含有合金層であるγ-Ni(Co、Cr)層からなり、α-Cr相は検出されなかった。
【0178】
次に、図32Aに示すHastelloy -X基材に対してAl拡散処理を行った。Al拡散処理は実施例15と同様の条件で行った。
【0179】
Al拡散処理後のHastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図33Aおよび図33Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図33Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図33Aおよび図33Bより、図32Aに示す境界層200および拡散バリア層300の構造は維持されている。境界層200はCo含有合金層である。拡散バリア層300上にはβ-NiAl層からなるAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は45.4原子%~60.17原子%と高いにもかかわらず、境界層200へのAlの拡散侵入は認められない。遷移層400にはCrの濃化が見られる。
【0180】
(実施例17)
実施例17では、Coめっき液とRe(Ni)めっき液とを種々の割合で混合して調製しためっき液を用いてNiを含有するCo(Re)合金膜をめっき法により形成する場合について説明する。
【0181】
すなわち、下記の通り3種類の混合割合のめっき液を調製した。
Coめっき液 Re(Ni)めっき液
めっき液(1) 50vol% 50vol%
めっき液(2) 25vol% 75vol%
めっき液(3) 20vol% 80vol%
【0182】
SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理し、Niストライク膜を形成した後、めっき液(1)を用いためっき法によりNiを含有するCo(Re)合金膜を形成し、さらにその上にめっき法によりNi膜を形成した。Niを含有するCo(Re)合金膜のめっきは、電流密度0.03A/cm2 で20分行った。Ni膜のめっきは実施例1と同様の条件で行った。
【0183】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図34Aおよび図34Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図34Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。
【0184】
SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理し、Niストライク膜を形成し、めっき法によりCo膜を形成し、続いてめっき液(1)を用いためっき法によりNiを含有するCo(Re)合金膜を形成し、さらにその上にめっき法によりCo膜を形成した。Niを含有するCo(Re)合金膜のめっきは、電流密度0.03A/cm2 で20分行った。Ni膜およびCo膜のめっきは実施例1と同様の条件で行った。SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図35Aおよび図35Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図35Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。
【0185】
SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理した後、Niストライク膜を形成し、めっき液(2)を用いためっき法によりNiを含有するCo(Re)合金膜を形成し、さらにその上にめっき法によりNi膜を形成した。Niを含有するCo(Re)合金膜のめっきは、電流密度0.03A/cm2 で20分行った。Ni膜のめっきは実施例1と同様の条件で行った。SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図36Aおよび図36Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図36Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。
【0186】
SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理した後、Niストライク膜を形成し、その上にめっき法によりNi膜を形成し、続いてめっき液(2)を用いためっき法によりNiを含有するCo(Re)合金膜を形成し、さらにその上にめっき法によりNi膜を形成した。Niを含有するCo(Re)合金膜のめっきは、電流密度0.03A/cm2 で20分行った。Ni膜のめっきは実施例1と同様の条件で行った。SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図37Aおよび図37Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図37Aに示す写真の分析線LG4に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。
【0187】
SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理した後、Niストライク膜を形成し、めっき液(3)を用いためっき法によりNiを含有するCo(Re)合金膜を形成し、さらにその上にめっき法によりNi膜を形成した。Niを含有するCo(Re)合金膜のめっきは、電流密度0.03A/cm2 で20分行った。Ni膜のめっきは実施例1と同様の条件で行った。SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図38Aおよび図38Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図38Aに示す写真の分析線LG5に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。
【0188】
上述のようにめっき液(1)、めっき液(2)およびめっき液(3)を用いてNiを含有するCo(Re)合金膜を形成した結果から、めっき液中のCoめっき液の容積比を変化させたときのNiを含有するCo(Re)合金膜中の各元素(Co,Re,Ni)の濃度の変化を図39に示す。なお、Re(Ni)めっき液を用いて形成したRe(Ni)合金皮膜中のReおよびNiの濃度は、Reは40~75原子%、Niは60~25原子%である。
【0189】
図39より、めっき液中のCoめっき液の容積比が減少するにつれてCo(Re)合金膜中のRe濃度は増大し、Co濃度は100~0原子%に低下する。なお、Co(Re)合金膜中のNi濃度はRe(Ni)合金の値に向かって漸増している。
【0190】
これらの結果から、めっき液の組成を選択することによって、任意のCo濃度またはNi濃度のCo(Re)合金膜を形成することができることが分かる。
【0191】
(実施例18)
実施例18は第1の実施の形態に対応するものである。
【0192】
実施例17においてめっき液(1)を用いてSUS310基材上に図35Aに示すようにめっき皮膜を形成した後、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材に対しTi処理を行い、耐熱金属部材を作製した。Ti処理は実施例4と同様に行った。
【0193】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図40Aおよび図40Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図40Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。
【0194】
図40Aおよび図40Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。拡散バリア層300ではReはCo基合金層の全体に固溶している。SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層には遷移層400およびAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は6.8原子%~12.8原子%である。境界層200側へのAlの拡散は認められない。
【0195】
(実施例19)
実施例19は第1の実施の形態に対応するものである。
【0196】
実施例17においてめっき液(2)を用いてSUS310基材上に図36Aに示すようにめっき皮膜を形成した後、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材に対しTi処理を行い、耐熱金属部材を作製した。Ti処理は実施例4と同様に行った。
【0197】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図41Aおよび図41Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図41Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図41Aおよび図41Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。拡散バリア層300では、Co(Re)固溶体中にRe濃化層(20原子%)が存在している。SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層には遷移層400およびAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は4.3原子%~6.6原子%であり、境界層200側へのAlの拡散は認められない。
【0198】
(実施例20)
実施例20は第1の実施の形態に対応するものである。
【0199】
実施例17においてめっき液(3)を用いてSUS310基材上に図38Aに示すようにめっき皮膜を形成した後、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材に対しTi処理を行い、耐熱金属部材を作製した。Ti処理は実施例4と同様に行った。
【0200】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図42Aおよび図42Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図42Aに示す写真の分析線LG4に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図42Aおよび図42Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。拡散バリア層300では、Co(Re)固溶体中にRe濃化層(20~25原子%)が存在している。SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。拡散バリア層300の上層には遷移層400およびAl含有合金層500が観察される。Al含有合金層500のAl濃度は10原子%~40.2原子%であり、境界層200側へのAl拡散が認められる。
【0201】
(実施例21)
実施例21は第1の実施の形態に対応するものである。
【0202】
SUS310基材の表面を実施例1と同様に処理した後、Niストライク膜を形成し、めっき液(2)を用いためっき法によりNiを含有するCo(Re)合金膜を形成し、さらにその上にめっき法によりCo膜を形成した。次に、こうしてめっき皮膜を形成したSUS310基材をCr粉末とAl2 3 粉末との混合粉末(10質量%Cr粉末+90質量%Al2 3 粉末)中に埋没させて、Ar+3vol%H2 雰囲気中において1100℃で2時間加熱を行った。
【0203】
SUS310基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図43Aおよび図43Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図43Aに示す写真の分析線LG3に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図43Aおよび図43Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。また、拡散バリア層300の上層には、Feを含有するNi-Co合金からなる遷移層400が観察される。また、SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。
【0204】
図示は省略するが、この後、実施例1と同様にしてAl拡散処理を行うことにより最上層にAl含有合金層500を形成した。
【0205】
(実施例22)
実施例22は第1の実施の形態に対応するものである。
【0206】
SCH-2基材の表面を実施例1と同様に処理した後、Niストライク膜を形成し、めっき液(2)を用いためっき法によりNiを含有するCo(Re)合金膜を形成し、さらにその上にめっき法によりCo膜を形成した。次に、こうしてめっき皮膜を形成したSCH-2基材に対し、実施例21と同様な熱処理を行った。
【0207】
SCH-2基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図44Aおよび図44Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図44Aに示す写真の分析線LG2に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図44Aおよび図44Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。また、拡散バリア層300の上層には、Feを含有するNi-Co合金からなる遷移層400が観察される。また、SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。
【0208】
図示は省略するが、この後、実施例1と同様にしてAl拡散処理を行うことにより最上層にAl含有合金層500を形成した。
【0209】
(実施例23)
実施例23は第1の実施の形態に対応するものである。
【0210】
Hastelloy -X基材の表面を実施例1と同様に処理した後、Niストライク膜を形成し、めっき液(2)を用いためっき法によりNiを含有するCo(Re)合金膜を形成し、さらにその上にめっき法によりCo膜を形成した。次に、こうしてめっき皮膜を形成したHastelloy -X基材に対し、実施例21と同様な熱処理を行った。
【0211】
Hastelloy -X基材/皮膜施工面の一部を切断し、その断面組織観察および各元素の濃度分布の測定を行った。図45Aおよび図45Bにそれぞれ断面SEM写真および各元素の濃度分布(図45Aに示す写真の分析線LG1に沿っての濃度分布)の測定結果を示す。図45Aおよび図45Bより、Reを含有するCo基合金層からなる拡散バリア層300が観察される。また、拡散バリア層300の上層には、Feを含有するNi-Co合金からなる遷移層400が観察される。また、SUS310基材と拡散バリア層300との間にはCo、Ni、Fe、Cr等を含む境界層200が観察される。
【0212】
以上、この発明の実施の形態および実施例について具体的に説明したが、この発明は、上述の実施の形態および実施例に限定されるものではなく、この発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0213】
本明細書に記載した耐熱金属部材の製造方法の発明においては、金属基材上に複数層の各種の金属膜をめっき法により順に形成しているが、最も広義には、金属基材上にめっき法により形成する金属膜は全体としてCo、ReおよびNiを含有する金属膜と表現することができる。この金属膜は単層であっても複数層であってもよい。例えば、金属基材上に少なくとも第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜を順に形成する耐熱金属部材の製造方法の発明において、第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜の代わりに、全体としてCo、ReおよびNiを含有する単層または複数層の金属膜を形成すればよい。第1のCo膜、Re(Ni)膜および第2のCo膜またはNi膜はこのような金属膜の一例である。
【符号の説明】
【0214】
100…金属基材、200…境界層、300…拡散バリア層、400…遷移層、500…Al含有合金層、700…Cr含有合金層
図1
図2
図3
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図9
図10A
図10B
図11A
図11B
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図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図21A
図21B
図22A
図22B
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
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図27B
図28
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図29B
図30A
図30B
図31A
図31B
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図32B
図33A
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図34B
図35A
図35B
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図40B
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図45A
図45B