(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053343
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】X線CT装置、プログラム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
A61B6/03 373
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159546
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】西出 明彦
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093EA07
4C093FC18
4C093FC19
4C093FC24
4C093GA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ビームハードニング補正を効率的に行うことができるX線CT装置等を提供する。
【解決手段】X線CT装置は、X線発生装置と、前記X線発生装置から照射され、被検査物を通過したX線を検出するX線検出器とを含み、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを収集しデュアルエナジー断層像を再構成するX線CT装置であって、前記X線検出器にて検出されたX線投影データに基づき、少なくとも2種類の密度断層像、モノクロマチック断層像を含むX線デュアルエナジー断層像を再構成する画像再構成部と、前記X線投影データに対し、ビームハードニング補正を行うBH補正部とを備え、前記BH補正部は、複数の物質が既知の割合で混合したファントムを用いて、低い管電圧及び高い管電圧での断層像におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が線型に近くなるように前記X線投影データを補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生装置と、前記X線発生装置から照射され、被検査物を通過したX線を検出するX線検出器とを含み、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを収集しデュアルエナジー断層像を再構成するX線CT装置であって、
前記X線検出器にて検出されたX線投影データに基づき、モノクロマチック断層像を含むX線デュアルエナジー断層像を再構成する画像再構成部と、
前記X線投影データに対し、ビームハードニング補正を行うBH補正部とを備え、
前記BH補正部は、複数の物質が既知の割合で混合したファントムを用いて、低い管電圧及び高い管電圧での断層像におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が線型に近くなるように前記X線投影データを補正する
ことを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
前記ファントムに混合される物質は、X線吸収係数が異なる2つの物質であり、
前記混合の割合は、X線吸収係数が低い物質に対するX線吸収係数が高い物質の濃度であり、
前記BH補正部は、複数の濃度による前記ファントムを用いて、低い管電圧及び高い管電圧での断層像におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が線型に近くなるように前記X線投影データを補正する
ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記BH補正部は、多項式補正を行うことによりCT値が線型に近くなるように前記X線投影データを補正する
ことを特徴とする請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記ファントムに混合される物質は、水及びヨウ素を含み、
前記画像再構成部は、
水密度断層像及びヨウ素密度断層像の各画素の密度値を線型結合させたX線吸収係数を、空気のX線吸収係数と水のX線吸収係数とに基づきCT値に変換し、
CT値によるモノクロマチック断層像を含むX線デュアルエナジー断層像を再構成する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記画像再構成部は、前記BH補正部により補正されたX線投影データを用いて構成される低い管電圧及び高い管電圧の断層像を線型結合させて、水密度断層像及びヨウ素密度断層像を生成する
ことを特徴とする請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記BH補正部によってビームハードニング補正されたX線投影データに対し、フィルタ補正逆投影法(Back Projection)を用いた処理を行い、CT値変換されたX線管電圧断層像を再構成する画像再構成処理部と、
前記画像再構成処理部によって再構成された水密度断層像及びIodine密度断層像に対し、密度データの変換処理を行い、水密度断層像とIodine密度断層像とを再構成する密度データ変換部と、
前記密度データ変換部よって再構成された水密度断層像とIodine密度断層像とを線型結合し、モノクロマチック断層像を再構成する線型結合部とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項7】
コンピュータに、
X線発生装置から照射され被検査物を通過したX線を検出するX線検出器にて検出され、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを取得し、
前記X線投影データに対し、複数の物質が既知の割合で混合したファントムを用いて、低い管電圧及び高い管電圧での断層像におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が線型に近くなるようにビームハードニング補正する
処理を実行させるプログラム。
【請求項8】
コンピュータに、
X線発生装置から照射され被検査物を通過したX線を検出するX線検出器にて検出され、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを取得し、
前記X線投影データに対し、複数の物質が既知の割合で混合したファントムを用いて、低い管電圧及び高い管電圧での断層像におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が線型に近くなるようにビームハードニング補正する
処理を実行させる情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、X線CT装置、プログラム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スキャン中に1つのX線管でX線管電圧を低い電圧(たとえば80kVなど)と高い電圧(たとえば140kVなど)とで切り替えつつ撮影するデュアルエネルギー撮影、2つのX線管でX線管電圧を低い電圧(たとえば80kVなど)と高い電圧(たとえば140kVなど)で同時に撮影するデュアルエネルギー撮影、2層のX線検出器で低いX線エネルギー成分と高いX線エネルギー成分を収集するデュアルエネルギー撮影、半導体X線検出器で低いX線エネルギー成分と高いX線エネルギー成分を弁別して収集するデュアルエネルギー撮影ができるように構成されたX線CT装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたX線CT装置は、X線検出器にて検出されたX線投影データに対し、ビームハードニング補正を効率的に行う点については、考慮されていない。
【0005】
一つの側面では、X線検出器にて検出されたX線投影データに対し、ビームハードニング補正を効率的に行うことができるX線CT装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様におけるX線CT装置は、X線発生装置と、前記X線発生装置から照射され、被検査物を通過したX線を検出するX線検出器とを含み、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを収集しデュアルエナジー断層像を再構成するX線CT装置であって、前記X線検出器にて検出されたX線投影データに基づき、各管電圧の断層像、水密度断層像、Iodine密度断層像、モノクロマチック断層像を含むX線デュアルエナジー断層像を再構成する画像再構成部と、前記X線投影データに対し、ビームハードニング補正を行うBH補正部とを備え、前記BH補正部は、複数の物質が既知の割合で混合したファントムを用いて、低い管電圧及び高い管電圧での断層像におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が線型に近くなるように前記X線投影データを補正する。
【0007】
本開示の一態様におけるプログラムは、コンピュータに、X線発生装置から照射され被検査物を通過したX線を検出するX線検出器にて検出され、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを取得し、前記X線投影データに対し、複数の物質が既知の割合で混合したファントムを用いて、低い管電圧及び高い管電圧での断層像におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が線型に近くなるようにビームハードニング補正する処理を実行させる。
【0008】
本開示の一態様における情報処理方法は、コンピュータに、X線発生装置から照射され被検査物を通過したX線を検出するX線検出器にて検出され、管電圧が異なる少なくとも2種類のX線エネルギーのX線投影データを取得し、前記X線投影データに対し、複数の物質が既知の割合で混合したファントムを用いて、低い管電圧及び高い管電圧での断層像におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が線型に近くなるようにビームハードニング補正する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、X線検出器にて検出されたX線投影データに対し、ビームハードニング補正を効率的に行うX線CT装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1に係るX線CT装置の概要を示す模式図である。
【
図2】X線発生装置及び2次元X線検出器から構成されるX線幾何学系と回転する撮影テーブルの位置関係を示す説明図である。
【
図3】X線CT装置の概略動作を示すフロー図である。
【
図4】X線CT装置の概略動作における前処理の詳細を示すフロー図である。
【
図5】X線CT装置の概略動作におけるビームハードニング補正の詳細を示すフロー図である。
【
図6】ファントムの濃度に応じて定まるCT値に応じたビームハードニング補正に関する説明図である。
【
図7】X線CT装置の概略動作における3次元逆投影処理を示すフロー図である。
【
図8】デュアルエネルギー撮影による画像再構成において処理されるデータの流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は、実施形態1に係るX線CT装置1の概要を示す模式図である。X線CT装置1は、操作コンソール2及び、X線検査室Rに配置される撮影テーブル4、X線発生装置5、制御コントローラ6、2次元X線検出器7、昇降機構8及びデータ収集装置9(DAS:Data Acquisition System)を含む。更に、X線検査室Rには、撮像部10が設けられており、当該撮像部10は、操作コンソール2と通信可能に接続されており、X線CT装置1の一部位として構成されるものであってもよい。
【0012】
操作コンソール2は、入力装置21、データ収集バッファ22、モニタ23、記憶装置24及び中央処理装置3を含む。
【0013】
入力装置21は、例えば、キーボート、マウス等のユーザ操作系の入力デバイス又は、他のコンピュータから送信されるデータが入力される通信系の入出力I/Fであってもよい。
【0014】
データ収集バッファ22は、中央処理装置3と、X線検査室Rに配置されるデータ収集装置9とに通信可能に接続され、データ収集装置9から取得したX線検出器データを中央処理装置3に出力する。
【0015】
モニタ23は、ディスプレイ等の表示装置である。X線検出器データは中央処理装置3によって処理され、当該X線検出器データから断層像に再構成された画像(デュアルエナジー断層像、X線デュアルエナジー断層像)が、モニタ23上に表示される。中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムを実行することにより、2次元X線検出器7(X線検出器)にて検出されたX線投影データに基づき、X線デュアルエナジー断層像を再構成する画像再構成部として機能する。
【0016】
記憶装置24は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の揮発性記憶領域及び、EEPROM又はハードディスク等の不揮発性記憶領域を含む。記憶装置24には、中央処理装置3が実行するプログラム及び処理時に参照するデータが予め記憶してある。記憶装置24に記憶されたプログラムは、操作コンソール2が読み取り可能な記録媒体Mから読み出されたプログラムP(プログラム製品)を記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムP(プログラム製品)をダウンロードし、記憶装置24に記憶させたものであってもよい。
【0017】
中央処理装置3は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の計時機能を備えた演算処理装置を有し、記憶装置24に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、断層像の再構成に関する処理等を含め、X線CT装置1に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。
【0018】
X線発生装置5は、X線管コントローラ54、X線管51、X線フィルタ53、ボータイフィルタ531及びコリメータ52を含み、少なくとも2種類のX線エネルギーを用いることにより、高エネルギー及び低エネルギーによるデュアルエネルギー撮影が可能なように構成されている。
【0019】
X線管コントローラ54は、制御コントローラ6と通信可能に接続され、制御コントローラ6から出力される制御信号、高電圧に基づき、X線管51の管電圧を変更し、X線管51からのX線の照射の開始及び停止を制御する。X線管コントローラ54は、例えば、CPU等の制御部及び記憶部がパッケージ化されたマイコン等により構成されるものであってもよい。
【0020】
X線管51は、例えば、高エネルギーのX線及び、低エネルギーのX線を照射する。高エネルギー及び低エネルギーに対応するそれぞれX線管51は、X線管コントローラ54からの制御信号、高電圧に基づき当該X線管51の管電圧が決定される。
【0021】
X線フィルタ53は、高エネルギー(高いX線管電圧)及び低エネルギー(低いX線管電圧)のX線管51それぞれに対応して設けられ、高エネルギーのX線が通過するX線フィルタ53と、低エネルギーのX線が通過するX線フィルタ53とを含む。又は、高エネルギー及び低エネルギー共通のX線フィルタ53でも構わない。X線フィルタ53には、フィルタ特性を可変させるフィルタ特性可変機構が設けられており、制御コントローラ6又はX線管コントローラ54から出力される制御信号に基づき、当該フィルタ特性を変更することができる。フィルタ特性(X線フィルタ特性)は、例えば、当該フィルタの材質、及びフィルタの厚み(X線の通過距離)に基づき決定される特性である。X線フィルタ53は、制御コントローラ6等からの制御信号に基づき、X線フィルタ53に設けられるフィルタ特性可変機構によって、材質の異なるフィルタ、例えば、アルミニウムのフィルタを銅のフィルタに交換、又は同一の材質のフィルタにおいて厚みの異なるフィルタに交換することができる。ボータイフィルタ531は撮影視野のチャネル方向にX線吸収係数を変化させてチャネル方向の照射X線線質分布を制御する。
【0022】
X線の線質は、X線管51の管電圧値又は、X線フィルタ53のフィルタ特性に応じて変化するところ、X線発生装置5は、当該管電圧値及びX線フィルタ特性を可変する構成としていることにより、被検査物Hに対し適切な線質となる高エネルギー及び低エネルギーのX線を照射するため、効率的にデュアルエネルギー撮影を行うことができる。
【0023】
コリメータ52は、例えば、スライス厚方向コリメータ及びチャネル方向コリメータを含み、X線管51から発生したX線をコリメートして整形する。
【0024】
撮影テーブル4には、被検査物Hが載置され、制御コントローラ6から出力される制御信号に応じて、所定の回転数で回転する。撮影テーブル4が回転することにより、撮影テーブル4に載置される被検査物Hの全周にわたって、X線が照射される。本実施形態においては、撮影テーブル4が回転する場合に限定されず、撮影テーブル4は固定されており、X線発生装置5、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9が、撮影テーブル4に対し回転するものであってもよい。すなわち、撮影テーブル4と、X線発生装置5、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9とが、相対的に回転することにより、回転方向における被検査物Hの全周にわたって、当該被検査物Hに対しX線が照射されるものであってもよい。
【0025】
昇降機構8は、撮影テーブル4又は、X線発生装置5、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9を、昇降させ、撮影テーブル4と、X線発生装置5、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9とが、上下方向に相対的に移動するように構成されている。昇降機構8は、制御コントローラ6から出力される制御信号に基づき、撮影テーブル4と、X線発生装置5等とを上下方向に相対的に移動する。これにより、被検査物Hの上下方向(高さ方向)の全域にわたって、X線を照射させることができる。
【0026】
制御コントローラ6は、操作コンソール2の中央処理装置3と通信可能に接続され、中央処理装置3から出力される指示情報に基づき、X線発生装置5、撮影テーブル4、昇降機構8、2次元X線検出器7及びデータ収集装置9を制御又は駆動する。制御コントローラ6は、例えば、CPU等の制御部及び記憶部がパッケージ化されたマイコン等により構成されるものであってもよい。
【0027】
2次元X線検出器7は、例えば複数列の検出器列(X線検出器チャネル)を有する。2次元X線検出器7は、被検査物Hを透過したX線を検出してX線検出器データを収集する複数のチャネルが、被検査物Hが相対的に回転される方向に沿ったチャネル方向と、回転される際の回転軸に沿った列方向とのそれぞれに配列されている。
【0028】
データ収集装置9は、2次元X線検出器7からX線検出器データを収集し、データ収集バッファ22を介して、そのX線検出器データを中央処理装置3に出力する。
【0029】
撮像部10は、例えばカメラであり、撮影テーブル4に載置される被検査物Hの全体が撮像範囲となるように、撮影テーブル4の上方等、X線検査室Rの中に設けられている。撮像部10は、撮像した被検査物Hの画像データを、操作コンソール2(中央処理装置3)に出力する。撮像部10は、被検査物Hの形状、大きさ等の物理量、又は被検査物Hの材質等の物性情報を取得するための被検査物情報取得装置に相当する。被検査物情報取得装置は、カメラ等の撮像部10に限定されず、3Dスキャナー装置又は3次元寸法測定装置であってもよい。X線CT装置1に含まれるこれら装置等は、例えば、特許5220374号公報、特許5213016号公報、特開2007-20906号公報に記載されているX線CT装置1の各装置等と同様の構成、作用及び機能を発揮するものであってもよい。
【0030】
図2は、X線発生装置5及び2次元X線検出器7から構成されるX線幾何学系と回転する撮影テーブル4の位置関係を示す説明図である。X線管51と2次元X線検出器7は、撮影テーブル中心である回転中心の回りを撮影テーブルに対して相対的に回転する。X線検出器中心からX線焦点に向かう方向をY方向とし、X線検出器中心からX線焦点に向かう方向に垂直な方向をX方向とし、これらに垂直なテーブル昇降方向をZ方向とするとき、X線管51及び2次元X線検出器7の回転平面は、XY面である。
【0031】
X線管51は、コーンビームと呼ばれるX線ビームを発生する。コーンビームの中心軸方向がY方向に平行なときを、ビュー角度0°とする。2次元X線検出器7は、例えば300チャネル×3000列の検出器列を有する。2次元X線検出器7には、被検体を透過したX線を検出してX線検出器データを収集する複数のチャネルが、撮影テーブル4等によって被検査物Hが相対的に回転される方向に沿ったチャネル方向と、回転される際の回転軸に沿った列方向とのそれぞれに配列されている。
【0032】
X線が照射されて、収集されたX線検出器データは、2次元X線検出器7からデータ収集装置9でA/D変換され、データ収集バッファ22に出力される。データ収集バッファ22に入力されたデータは、中央処理装置3で処理され、断層像に画像再構成されてモニタ23に表示される。
【0033】
X線CT装置1の中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムP(プログラム製品)を実行することにより、画像再構成部、及びBH補正部として機能する。画像再構成部は、2次元X線検出器7にて検出されたX線投影データに基づき、モノクロマチック断層像を含むX線デュアルエナジー断層像を再構成する。BH補正部は、X線投影データに対し、ビームハードニング補正を行う。これら画像再構成部及びBH補正部として機能する中央処理装置3の処理については、後述する。
【0034】
図3は、X線CT装置1の概略動作を示すフロー図である。
図4は、X線CT装置1の概略動作における前処理の詳細を示すフロー図である。
図5は、X線CT装置1の概略動作におけるビームハードニング補正の詳細を示すフロー図である。
図6は、ファントムの濃度に応じて定まるCT値に応じたビームハードニング補正に関する説明図である。
図7は、X線CT装置1の概略動作における3次元逆投影処理を示すフロー図である。X線CT装置1は、例えば、操作コンソール2にて入力された操作指示を含む指示データに基づき、当該フローチャートの処理又は動作を開始する。
【0035】
X線CT装置1は、データ収集を行う(S11)。X線CT装置1は、例えば、撮像部10から出力された被検査物Hの画像データ、入力装置21から入力された被検査物Hの情報を取得する。本実施形態において、被検査物Hは、複数の物質が既知の割合で混合したファントムであり、より具体的には、水又は水等価材と、ヨウ素(Iodine)又はヨウ素化合物とから成る2つの物質が既知の割合(濃度)で混合したファントムである。被検査物Hであるファントムの情報は、当該ファントムにおけるヨウ素の濃度(mgl)を含む。X線CT装置1の中央処理装置は、取得したこれらデータを記憶装置24に記憶する。
【0036】
X線CT装置1は、取得したこれらデータに基づき、撮影テーブル4の回転速度等を含むX線撮影条件に応じた制御パラメータを導出するものであってもよい。X線CT装置1は、制御パラメータに含まれる回転速度にて撮影テーブル4を回転させ、X線の照射を行う。X線CT装置1は、制御パラメータに基づき、撮影テーブル4及び昇降機構8の駆動を制御すると共に、低エネルギーX線及び高エネルギーX線の照射を行う。X線CT装置1は、2次元X線検出器7によって検出されるデータ(X線検出器データ)を収集する。
【0037】
X線CT装置1は、前処理を行う(S12)。当該前処理に係る処理は、例えば、サブルーチン化された処理として、
図4にて示される以下のフローにより行われる。X線CT装置1は、オフセット補正を行う(S121)。X線CT装置1は、対数変換を行う(S122)。X線CT装置1は、X線線量補正を行う(S123)。X線CT装置1は、感度補正を行う(S124)。前処理は、これらオフセット補正、対数変換、X線線量補正及び感度補正を含む。当該感度補正は、例えば、複数の断層像をそれぞれ再構成しうる各ローデータに対してオフセット補正及び感度補正を施す手段が開示されている特開2002-85397号公報に記載されている処理を用いて行われるものであってもよい。X線CT装置1は、高エネルギー及び低エネルギーのX線検出器データに対して前処理を行い、投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)に変換する。
【0038】
X線CT装置1は、ビームハードニング補正を行う(S13)。X線CT装置1は、前処理された投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)に対して、ビームハードニング補正を行う。当該ビームハードニング補正に係る処理は、例えば、サブルーチン化された処理として、
図5にて示される以下のフローにより行われる。BH補正を行う多項式補正式の係数は、予め複数のファントムデータから定めておけばよい。
【0039】
X線CT装置1は、水、空気のX線吸収係数で定められたCT値を取得する(S131)。CT値は、画像濃度値を示し、水を原点の0とし、何もない空気の状態を最低の値である-1000として表現される。CT値によって、投影データ又は断層図における白黒の濃淡値(画像濃度値)、すなわち画素値が定義され、例えば空気のCT値(-1000)によっては、画面上にて黒に表現される。このように水及び空気を基準として用いることにより、空気のX線吸収係数及び水のX線吸収係数に基づきCT値は決定されるものであり、従ってX線吸収係数とCT値とは相関を有する。
【0040】
本実施形態におけるファントムは、水とヨウ素(Iodine)との2つの物質の混合から成り、当該混合の割合、すなわち濃度が異なる複数のファントムを含む。このようにファントムは、濃度が異なる複数種類、用意されており、例えば、10mgI/ml(1mlの水の中に、10mgのヨウ素が含まれる濃度)から300mgI/mlまで濃度において、10mgI/ml単位にて段階的に設定されているものであってもよい。
【0041】
ファントムの濃度が決定されることにより、当該ファントムによる水密度断層像及びIodine密度断層像の各画素の密度値を線型結合させたX線吸収係数は、空気及び水のX線吸収係数を基準として、モノクロマチック断層像の各画素のCT値に変換される。
【0042】
X線CT装置1は、入力装置21から入力されたファントムの濃度を取得する。当該ファントムは、被検査物Hに相当し、被検査物Hであるファントムの濃度は、入力装置21から入力される。X線CT装置1の記憶装置24には、ファントムの濃度それぞれに対応したCT値からBH補正の多項式補正式の各次数の係数が定められる。
【0043】
X線CT装置1は、感度補正後の投影データを取得する(S132)。X線CT装置1は、S124の処理にて感度補正がされた投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)を取得する。
【0044】
X線CT装置1は、基準となるCT値と感度補正後のCT値との差異を検出し、
図6に示す多項式補正により差異を少なくする多項式補正式を予め用意する(S133)。ファントムの濃度に応じて基準となるCT値それぞれと、感度補正後のCT値それぞれとの対比に基づき、X線CT装置1は、基準となるCT値と感度補正後のCT値との差異を導出する。X線CT装置1は、
図6に示す多項式補正により差異を少なくする多項式補正式を予め用意する処理を行う。
【0045】
図6にて示すとおり、ビームハードニング補正に関し説明する。本説明図において、横軸は、ファントムの濃度、すなわち水とヨウ素の混合割有り(mgI/ml)を示す。縦軸は、CT値を示す。点線は、ファントムの濃度に応じて一意に決定され、基準となるCT値を示すものであり、これらCT値はファントムのヨウ素濃度に線型に近くなるようにする。実線は、ファントムに対しX線を照射し再構成及び感度補正したX線投影データにおけるCT値を示す。本実施形態における図示のとおり、ファントムの濃度が増加するにつれ、ファントムの濃度に応じて基準となるCT値と、感度補正後のCT値との差異が増加する場合が想定される。X線CT装置1の中央処理装置3は、ファントムの濃度毎に当該差異を算出する。
【0046】
X線CT装置1は、ビームハードニング補正を実行する(S134)。X線CT装置1の中央処理装置3は、感度補正がされた投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)に対してBH補正(ビームハードニング補正)を多項式補正式により行う。当該多項式は、例えば、Dout(view,j,i)=Din(view,j,i)*{Bo(j,i)+B1(j,i)*Din(view,j,i)+B2(j,i)*Din(view,j,i)^2}にて示される「Dout(view,j,i):ビームハードニング補正後のデータ、Din(view,j,i):感度補正が行われた投影データ」。多項式を用いたビームハードニング補正については、例えば特開2007-20906にて開示される多項式補正を行うものであってもよい。
【0047】
X線CT装置1の中央処理装置3は、ビームハードニング補正に用いられる多項式に対し、例えば、各項における補正係数又は多項式における項数等のパラメータを決定する。当該パラメータは、ファントムの濃度に応じて基準となるCT値と、感度補正後のCT値との差異による絶対値が最小化する収束値に基づき導出されるものであってもよい。X線CT装置1の中央処理装置3は、収束値を算出するにあたり、多項式のパラメータを段階的に変化させてビームハードニング補正を繰り返して行い、ファントムの濃度に応じて基準となるCT値と、ビームハードニング補正後のCT値との差異を最小化させる逐次処理を行うものであってもよい。X線CT装置1の中央処理装置3は、このように決定されたパラメータを反映した多項式を用いて、各画素に対し多項式補正を行うことにより、投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)に対するビームハードニング補正を実行する。
【0048】
X線CT装置1の中央処理装置3は、当該処理を濃度が異なる複数のファントムに対して行う。これにより、各濃度のファントム毎のCT値それぞれに対し、ビームハードニング補正後のCT値それぞれとの差異が最小化されるBH補正式が特定される。上述のとおり、各濃度のファントム毎のCT値は線型性を有しており、このようにビームハードニング補正後の投影データのCT値についても、同様に線型となる。投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)のCT値が線型となるようにビームハードニング補正をすることにより、当該投影データを用いて再構成される断層像(低X線管電圧断層像、高X線管電圧断層像)のCT値についても線型に近くすることができる。
【0049】
上記の処理を実行することにより、水又は水等価材と、ヨウ素(Iodine)又はヨウ素化合物とが既知の割合で混合したファントムに対しCT値を線型にするビームハードニング補正において用いたBH補正式は、記憶装置24に記憶されるものであってもよい。X線CT装置1の中央処理装置3は、線型となるようにパラメータが反映された多項式を、キャリブレーション結果データとして記憶装置24に記憶し、以降、被検査物Hに対するX線の照射及びX線デュアルエナジー断層像を再構成する際のビームハードニング補正にて用いるものであってもよい。このように線型となるようにパラメータが反映された多項式(多項式補正)によるビームハードニング補正を行うことにより、X線投影データにより断層像を適切に再構成することができる。これにより、当該X線投影データに基づき生成される水密度断層像及びヨウ素密度断層像の各画素の水、ヨウ素密度値からX線吸収係数を線型結合させて、水と空気のX線吸収係数を用いて、CT値に変換したモノクロマチック断層像を精度良く、再構成することができる。
【0050】
X線CT装置1は、Zフィルタ重畳処理を行う(S14)。X線CT装置1は、ビームハードニング補正された投影データに対して、列方向(Z方向)のフィルタをかけるZフィルタ重畳処理を行う。
【0051】
X線CT装置1は、画像再構成重畳処理を行う(S15)。X線CT装置1は、例えば、フーリエ変換し、再構成関数を掛け、逆フーリエ変換することにより、再構成関数重畳処理を行う。
【0052】
X線CT装置1は、3次元逆投影処理を行う(S16)。X線CT装置1は、再構成関数重畳処理した投影データに対して、3次元逆投影処理を行い、逆投影データを求める。本実施形態においては、ヘリカルスキャンを行うものとしており、画像再構成される画像はZ軸に垂直な面、XY平面に3次元画像再構成される。以下の再構成領域はXY平面に平行なものとする。当該3次元逆投影処理に係る処理は、例えば、サブルーチン化された処理として、
図7にて示される以下のフローにより行われる。
【0053】
X線CT装置1は、再構成領域Pの各画素に対応する投影データを抽出する(S161)。X線CT装置1は、断層像の画像再構成に必要な全ビュー(即ち、360度分のビュー又は「180度分+ファン角度分」のビュー)中の一つのビューに着目し、再構成領域の各画素に対応する投影データを抽出する。
【0054】
X線CT装置1は、コーンビーム再構成加重係数を各投影データに乗算し、逆投影データを作成する(S162)。X線CT装置1は、投影データにコーンビーム再構成加重係数を乗算し、逆投影データを作成する。
【0055】
X線CT装置1は、逆投影データに逆投影データを画素対応に加算する(S163)。X線CT装置1は、予めクリアしておいた逆投影データに、投影データを画素対応に加算する。
【0056】
X線CT装置1は、画像再構成に必要な全ビューの逆投影データを加算したか否かを判定する(S164)。X線CT装置1は、断層像の画像再構成に必要な全ビュー(即ち、360度分のビュー又は「180度分+ファン角度分」のビュー)に対し、逆投影データの加算処理が行われたか否かを判定する。全ビューに対し処理が行われていない場合(S164:NO)、再度S161の処理を実行すべくループ処理を行う。当該ループ処理を行うことにより、X線CT装置1は、全ビューに対するS161からS163の処理を繰り返す。全ビューに対し処理が行われた場合(S164:YES)、X線CT装置1は、S17の処理を実行する。
【0057】
X線CT装置1は、後処理を行う(S17)。X線CT装置1は、逆投影データに対して画像フィルタ重畳、CT値変換などの後処理を行い、断層像を得る。
【0058】
X線CT装置1は、画像表示を行う(S18)。X線CT装置1は、後処理を行うことにより得た断層像をモニタ23に表示する。これら一連のフローにて示されるX線CT装置1の概略動作は、例えば、特許5220374号公報、特許5213016号公報、特開2007-20906号公報に記載されている処理を用いて行われるものであってもよい。
【0059】
図8は、デュアルエネルギー撮影による画面再構成において処理されるデータの流れを示す説明図である。本説明図における各処理は、X線CT装置1の中央処理装置3によって行われる。
【0060】
X線CT装置1は、デュアルエネルギー撮影を行うことにより、モノクロマチック断層像を画像再構成する処理を行う。高いX線管電圧値及び低いX線管電圧値の異なる2種類のX線を照射することにより得られる高いX線管電圧による投影データ(高いX線管電圧投影データ)及び、低いX線管電圧による投影データ(低いX線管電圧投影データ)のデータ夫々に対し、ビームハードニング補正(BH補正)が行われる。上述のとおり、当該ビームハードニング補正は、複数の物質が既知の割合で混合したファントムを用いて、低い管電圧及び高い管電圧での断層像におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が線型となるように補正するものである。ビームハードニング補正における入力データは、感度補正がされた低X線管電圧投影データ及び高X線管電圧投影データであり、これら投影データそれぞれに対しビームハードニング補正をすることにより、ビームハードニング補正がされた低X線管電圧投影データ及び高X線管電圧投影データを補正することができる。
【0061】
ビームハードニング補正がされた低X線管電圧投影データ及び高X線管電圧投影データそれぞれに対し、フィルタ補正逆投影法(filtered back projection)を用いた処理を行うことにより、低X線管電圧断層像及び高X線管電圧断層像それぞれが画像再構成される。例えば、所定の濃度であるファントムが水及びIodine(ヨウ素)の混合溶液である場合、低X線管電圧断層像及び高X線管電圧断層像それぞれに対し、密度データの変換処理を行うことにより、水密度断層像とIodine密度断層像とが、画像再構成される。これにより、複数の物質密度投影データを求めることができる。
【0062】
密度データの変換処理は、以下の式にて行われるものであってもよい。
Gwd(x,y) = G80(x,y) - k1・G140(x,y)
Gid(x,y) = G80(x,y) - k2・G140(x,y)
ただし、
k1: ヨウ素DE(dual energy)比
k2: 水DE比
DE比: 80kVpと140kVpのCT値比
本実施形態における図示において、例えば、低X線管電圧を80kVpとし、高X線管電圧を140kVpとする。フィルタ補正逆投影法(filtered back projection)され、画像再構成された高X線管電圧断層像は、G140(x,y)と示される。フィルタ補正逆投影法(filtered back projection)され、CT値変換された低X線管電圧断層像は、G80(x,y)と示される。高X線管電圧断層像及び低X線管電圧断層像を用いて密度データ変換されたG水密度断層像は、Gwd(x,y)と示される。高X線管電圧断層像及び低X線管電圧断層像を用いて密度データ変換されたIodine密度断層像は、Gid(x、y)と示される。水密度断層像Gwd(x,y)と、Iodine密度断層像Gid(x、y)とによる線型結合は、水とヨウ素の各keVのX線吸収係数をGwd(x,y), Gid(x,y)の密度比で線型加算し、水、空気のX線吸収係数と合わせてCT値変換を行う。このようにモノクロマチック(Monochromatic)断層像を再構成するにあたり、適切なkeV画像を画像再構成すれば金属アーチファクト(artifact)が低減された画像を得られる。
【0063】
画像再構成された水密度断層像及びIodine密度断層像を用いることにより、モノクロマチック断層像が画像再構成される。従って、複数の物質密度断層像及びモノクロマチック断層像の少なくとも一つを含むデュアルエネルギーX線画像を再構成することができる。これらデュアルエネルギー撮影による画面再構成において処理されるデータの流れに関しては、例えば、特許5220374号公報、特許5213016号公報、特開2012-245235号公報に記載されている処理を用いて行われるものであってもよい。又はモノクロマチック断層像の画像再構成するにあたり、X線投影データに基づき生成される水密度断層像及びヨウ素密度断層像の各画素の水、ヨウ素密度値からX線吸収係数を線型結合させて、水と空気のX線吸収係数を用いて、CT値に変換しモノクロマチック断層像を画像再構成するものであってもよい。
【0064】
中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムを実行することにより、ビームハードニング補正されたX線投影データ(低X線投影データ、高X線投影データ)に対し、フィルタ補正逆投影法(Back Projection)を用いた処理を行い、CT値変換されたX線管電圧断層像(低X線管電圧断層像、高X線管電圧断層像)を再構成する画像再構成処理部として機能する。中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムを実行することにより、CT値変換されたX線管電圧断層像(低X線管電圧断層像、高X線管電圧断層像)に対し、密度データの変換処理を行い、水密度断層像とIodine密度断層像とを再構成する密度データ変換部として機能する。中央処理装置3は、記憶装置24に記憶されているプログラムを実行することにより、再構成された水密度断層像とIodine密度断層像とを線型結合し、モノクロマチック断層像を再構成する線型結合部として機能する。
【0065】
本実施形態によれば、例えば水とヨウ素(Iodine)から成る2つの物質が混合したファントムは、当該混合の割合が既知となっており、当該割合は、水の中にヨウ素が含まれる濃度として示される。ファントムは、濃度が異なる複数種類、用意されており、例えば、10mgI/ml(1mlの水の中に、10mgのヨウ素が含まれる濃度)から300mgI/mlまで濃度において段階的に設定される。本実施形態における図示においては、7段階の濃度にて、ファントムは用意されている。濃度が異なるファントムそれぞれにおいて、当該濃度により基準となるCT値それぞれが、決定される。ファントムの濃度と、CT値とは比率関係にあるため、ファントムの濃度に応じて決定されるCT値それぞれは、線型、すなわち1次関数にて導出される値となる。
【0066】
BH補正部は、低い管電圧及び高い管電圧の断層像(低X線管電圧断層像、高X線管電圧断層像)におけるX線吸収係数それぞれに応じて決定されるCT値が、ファントムの濃度に応じて決定されるCT値と同様の線型となるように、低い管電圧及び高い管電圧のX線投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)に対するビームハードニング補正を行う。当該ビームハードニング補正されたX線投影データ(低X線管電圧投影データ、高X線管電圧投影データ)は、断層像(低X線管電圧断層像、高X線管電圧断層像)の前データに相当する。従って、このように補正されたX線投影データにより断層像を再構成することにより、当該断層像の密度値の調整を効率的に行うことができ、水密度断層像及びヨウ素密度断層像における各画素の密度を精度よく得ることができる。その上で、これら水密度断層像及びヨウ素密度断層像を線型結合させたモノクロマチック断層像を精度良く、再構成することができる。
【0067】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。各実施例にて記載されている技術的特徴は互いに組み合わせることができ、本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0068】
R X線検査室
H 被検査物(ファントム)
1 X線CT装置
2 操作コンソール
21 入力装置
22 データ収集バッファ
23 モニタ
24 記憶装置
M 記録媒体
P プログラム(プログラム製品)
3 中央処理装置(画像再構成部、BH補正部)
4 撮影テーブル
5 X線発生装置
51 X線管
52 コリメータ
53 X線フィルタ
531 ボータイフィルタ
54 X線管コントローラ
6 制御コントローラ
7 2次元X線検出器
8 昇降機構
9 データ収集装置
10 撮像部