(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005335
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】黒変防止処理剤、表面処理アルミニウム材、及び表面処理アルミニウム材の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 26/00 20060101AFI20240110BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20240110BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240110BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20240110BHJP
B05D 7/14 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
C23C26/00 A
B05D1/02 Z
B05D7/24 302Y
B05D5/00 Z
B05D7/24 303E
B05D7/14 101C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105479
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】川村 康晴
(72)【発明者】
【氏名】木所 佑介
【テーマコード(参考)】
4D075
4K044
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075BB05Z
4D075BB21Z
4D075BB24Z
4D075CA18
4D075CA31
4D075CA38
4D075CA47
4D075CA48
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4D075DB07
4D075DC42
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4D075EB43
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4D075EC07
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4D075EC45
4D075EC51
4K044AA06
4K044AB02
4K044BA21
4K044BB01
4K044BC09
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】アルミニウム材を加熱殺菌処理したときに、アルミニウム材の印刷又は塗装が行われていない表面の黒変を防止できる黒変防止処理剤の提供。
【解決手段】アルミニウム材の黒変を防止するための黒変防止処理剤であって、前記黒変防止処理剤は、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上を含有し、前記ケイ素系化合物(A)は、その1分子中に、1個又は2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、1個又は2個以上の反応性官能基又は親油性基を有するか、あるいは、2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、反応性官能基及び親油性基を有しない、黒変防止処理剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム材の黒変を防止するための黒変防止処理剤であって、
前記黒変防止処理剤は、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上を含有し、
前記ケイ素系化合物(A)は、その1分子中に、1個又は2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、1個又は2個以上の反応性官能基又は親油性基を有するか、あるいは、2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、反応性官能基及び親油性基を有しない、黒変防止処理剤。
【請求項2】
前記反応性官能基が、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、又は酸基が無水物化された基である、請求項1に記載の黒変防止処理剤。
【請求項3】
前記親油性基が、炭素数4以上のアルキル基である、請求項1又は2に記載の黒変防止処理剤。
【請求項4】
前記アルコキシシリル基が、トリアルコキシシリル基又はジアルコキシモノアルキルシリル基であり、前記トリアルコキシシリル基及びジアルコキシモノアルキルシリル基中のアルコキシ基の炭素数が1~3であり、前記ジアルコキシモノアルキルシリル基中のアルキル基の炭素数が1~3である、請求項1又は2に記載の黒変防止処理剤。
【請求項5】
表面処理アルミニウム材であって、
前記表面処理アルミニウム材は、アルミニウム材を備え、前記アルミニウム材の表面上に黒変防止物を有し、
前記黒変防止物が、請求項1又は2に記載の黒変防止処理剤中の前記ケイ素系化合物(A)と、前記チタネート系カップリング剤(B)と、前記アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上から形成されている、表面処理アルミニウム材。
【請求項6】
表面処理アルミニウム材の製造方法であって、
前記表面処理アルミニウム材は、アルミニウム材を備え、前記アルミニウム材の表面上に黒変防止物を有し、
前記製造方法は、前記アルミニウム材の表面に、請求項1又は2に記載の黒変防止処理剤を付着させ、前記黒変防止処理剤中の前記ケイ素系化合物(A)と、前記チタネート系カップリング剤(B)と、前記アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上から、前記黒変防止物を形成する工程(I)を有する、表面処理アルミニウム材の製造方法。
【請求項7】
前記アルミニウム材が、アルミ缶であり、
前記工程(I)において、スプレー式ウォッシャーを用いて、前記アルミニウム材の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、前記黒変防止処理剤を噴霧し、付着させる、請求項6に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
【請求項8】
前記アルミニウム材の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、前記黒変防止処理剤を噴霧し、付着させるとともに、前記アルミニウム材に付着しなかった前記黒変防止処理剤を回収する、請求項7に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒変防止処理剤、表面処理アルミニウム材、及び表面処理アルミニウム材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活では、アルミニウムを構成材料とする各種製品や部材が、幅広く利用されている。その代表的な例としては、アルミ缶(アルミニウム製の缶)が挙げられる。アルミ缶は、飲料及び食品をはじめとする、保存が必要な物品用の容器として、広く普及している。
【0003】
アルミ缶は、例えば、アルミプレートを用いて、開口部を有する有底筒状の成形体を作製し、その側面に印刷や塗装が施された状態で、内容物が充填される前の最終状態となる。特に、飲食品用のアルミ缶は、通常、内容物が充填され、密封された後、殺菌処理される。アルミ缶には、その開口部がキャップで塞がれて密封されるものもある。その場合には、キャップの内表面に、その密着性を向上させるためのサイズコート層が設けられる。しかし、レトルト処理等の高温での殺菌処理によって、このサイズコート層が白化(変色)してしまうことがある。
【0004】
このような白化が防止されたキャップとして、陽極酸化皮膜を含む下地層が設けられ、この下地層の表面に、特定範囲の組成を有するサイズコート層が設けられたものが開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方で、アルミ缶の底面には、通常、印刷や塗装が行われず、底面以外の表面にも印刷や塗装が行われないことがある。このような印刷や塗装が行われない表面には、化成処理によって皮膜が形成されることがあるが、そのままでは、アルミ缶の殺菌処理時に変色してしまうことがある。例えば、アルミ缶に対して、90℃以下等の熱水での加熱殺菌処理、いわゆるパストライズ処理が行われた場合には、アルミ缶の印刷や塗装が行われていない表面が黒色に変色(黒変)してしまうことがあった。
これに対して、特許文献1に記載の手法は、このような黒変の防止を目的としていない。
【0007】
本発明は、アルミニウム材を加熱殺菌処理したときに、アルミニウム材の印刷又は塗装が行われていない表面の黒変を防止できる黒変防止処理剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。
[1] アルミニウム材の黒変を防止するための黒変防止処理剤であって、前記黒変防止処理剤は、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上を含有し、前記ケイ素系化合物(A)は、その1分子中に、1個又は2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、1個又は2個以上の反応性官能基又は親油性基を有するか、あるいは、2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、反応性官能基及び親油性基を有しない、黒変防止処理剤。
[2] 前記反応性官能基が、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、又は酸基が無水物化された基である、[1]に記載の黒変防止処理剤。
[3] 前記親油性基が、炭素数4以上のアルキル基である、[1]又は[2]に記載の黒変防止処理剤。
[4] 前記アルコキシシリル基が、トリアルコキシシリル基又はジアルコキシモノアルキルシリル基であり、前記トリアルコキシシリル基及びジアルコキシモノアルキルシリル基中のアルコキシ基の炭素数が1~3であり、前記ジアルコキシモノアルキルシリル基中のアルキル基の炭素数が1~3である、[1]~[3]のいずれか一項に記載の黒変防止処理剤。
【0009】
[5] 表面処理アルミニウム材であって、前記表面処理アルミニウム材は、アルミニウム材を備え、前記アルミニウム材の表面上に黒変防止物を有し、前記黒変防止物が、[1]~[4]のいずれか一項に記載の黒変防止処理剤中の前記ケイ素系化合物(A)と、前記チタネート系カップリング剤(B)と、前記アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上から形成されている、表面処理アルミニウム材。
[6] 表面処理アルミニウム材の製造方法であって、前記表面処理アルミニウム材は、アルミニウム材を備え、前記アルミニウム材の表面上に黒変防止物を有し、前記製造方法は、前記アルミニウム材の表面に、[1]~[4]のいずれか一項に記載の黒変防止処理剤を付着させ、前記黒変防止処理剤中の前記ケイ素系化合物(A)と、前記チタネート系カップリング剤(B)と、前記アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上から、前記黒変防止物を形成する工程(I)を有する、表面処理アルミニウム材の製造方法。
[7] 前記アルミニウム材が、アルミ缶であり、前記工程(I)において、スプレー式ウォッシャーを用いて、前記アルミニウム材の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、前記黒変防止処理剤を噴霧し、付着させる、[6]に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
[8] 前記アルミニウム材の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、前記黒変防止処理剤を噴霧し、付着させるとともに、前記アルミニウム材に付着しなかった前記黒変防止処理剤を回収する、[7]に記載の表面処理アルミニウム材の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アルミニウム材を加熱殺菌処理したときに、アルミニウム材の印刷又は塗装が行われていない表面の黒変を防止できる黒変防止処理剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材の一例を模式的に示す拡大断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材の他の例を模式的に示す拡大断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材の製造方法の一例を模式的に示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<<黒変防止処理剤>>
本発明の一実施形態に係る黒変防止処理剤は、アルミニウム材の黒変を防止するための黒変防止処理剤であって、前記黒変防止処理剤は、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上を含有し、前記ケイ素系化合物(A)は、その1分子中に、1個又は2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、1個又は2個以上の反応性官能基又は親油性基を有するか、あるいは、2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、反応性官能基及び親油性基を有しない。
本実施形態の黒変防止処理剤でアルミニウム材を表面処理することにより、アルミニウム材を加熱殺菌処理したときに、アルミニウム材の黒変を防止できる。例えば、アルミニウム材の表面のうち、印刷又は塗装が行われていない領域を、本実施形態の黒変防止処理剤で表面処理することにより、アルミニウム材を加熱殺菌処理したときに、前記領域の黒変を防止できる。
【0013】
本明細書においては、「アルミニウム材の黒変」とは、特に断りのない限り、「アルミニウム材の加熱殺菌処理時における黒変」を意味する。そして、加熱殺菌処理時における加熱温度としては、65℃以上の温度が挙げられる。
【0014】
本明細書においては、「アルミニウム材」とは、アルミニウム合金から作られた材料、部品、製品、成形体等である。例えば、JISによって、A1000系、A2000系、A3000系、A4000系、A5000系、A6000系、A7000系又はA8000系という分類で定義されているアルミニウム合金である。
【0015】
アルミニウム材のうち、アルミ缶(アルミニウム製の缶)では、その表面の少なくとも一部の領域で、印刷や塗装が行われないことがあり、例えば、底面は印刷や塗装が行われないことが多い。このような印刷や塗装が行われないアルミニウム材の表面には、化成処理によって化成皮膜が形成されることがある。ここで化成皮膜は、おもにアルミニウム材の耐食性を向上させるための皮膜であり、アルミニウム材の表面と塗料との密着性を向上させることが可能な場合もある。化成処理としては、リン酸クロムとフッ素を主成分とするクロメート化成処理剤(クロム系化成処理剤)を用いて、化成皮膜としてリン酸クロム皮膜を形成するクロメート化成処理が知られている。また、別の化成処理としては、リン酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、フッ酸等を主成分とするノンクロメート化成処理剤を用いて、化成皮膜としてリン酸フルオロジルコニウム複合皮膜を形成するノンクロメート化成処理が知られている。本明細書においては、ノンクロメート化成処理で形成される前記皮膜を、構成元素としてジルコニウムを含む点から、「ジルコニウム系皮膜」と称することがある。ジルコニウム系皮膜は、通常、多孔質体のように多数の孔を有する。
【0016】
本実施形態の黒変防止処理剤が、アルミニウム材の表面に対して黒変防止効果を有する理由は、以下のように推測される。
すなわち、アルミニウム材に対して、90℃以下等の熱水での加熱殺菌処理、いわゆるパストライズ処理が行われると、熱水中のカルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)等を構成元素として含む不純物が、ジルコニウム系皮膜の孔の中に取り込まれ、この取り込まれた不純物が黒く見えることで黒変が生じると推測される。
また、ジルコニウム系皮膜の厚さが薄い領域、ジルコニウム系皮膜が設けられていない領域においては、90℃以下等の熱水での加熱殺菌処理によって、アルミニウム材の表面でアルミニウムの水和物が生成し、この水和物中に前記不純物が取り込まれ、この取り込まれた不純物が黒く見えることでも黒変が生じると推測される。
これに対して、本実施形態の黒変防止処理剤によって、アルミニウム材の表面を処理することにより、後述する、黒変防止処理剤によって形成された黒変防止物が、ジルコニウム系皮膜の孔に対して作用し、例えば、黒変防止物が孔を塞ぐ等の作用を示して、孔の内部への前記不純物の侵入を阻害することで、アルミニウム材の表面の黒変が防止されると推測される。また、前記黒変防止物が、ジルコニウム系皮膜の厚さが薄い領域、又はジルコニウム系皮膜が設けられていない領域に作用し、アルミニウム材の表面でのアルミニウムの水和物の生成を防止することでも、アルミニウム材の表面の黒変が防止されると推測される。
【0017】
一方、アルミニウム材に対して、100℃超等の高温水蒸気での加熱殺菌処理、いわゆるレトルト処理が行われると、アルミニウム材の表面のうち、ジルコニウム系皮膜の厚さが薄い領域、ジルコニウム系皮膜が設けられていない領域において、上述のものと同様のアルミニウムの水和物が生成する。そして、高温水蒸気中には、熱水中とは異なり、カルシウム、マグネシウム、ケイ素等を構成元素として含む不純物が含まれないため、この水和物中には前記不純物が取り込まれず、この水和物が生成している領域が白く見える「白化」が生じる。
これに対して、本実施形態の黒変防止処理剤によって、アルミニウム材の表面を処理することにより、前記黒変防止物が、ジルコニウム系皮膜の厚さが薄い領域、又はジルコニウム系皮膜が設けられていない領域に作用し、アルミニウム材の表面でのアルミニウムの水和物の生成を防止することで、アルミニウム材の表面の白化が防止されると推測される。
【0018】
これに対して、前記特許文献1(特開2005-67618号公報)においては、ボトル缶への被着用のキャップであって、アルミニウム材により形成され、陽極酸化皮膜を含む下地層が設けられ、この下地層の表面に、シランカップリング剤を含むサイズコート層が設けられたキャップが開示されている。そして、多数の孔を有する陽極酸化皮膜にシランカップリング剤を塗布することが開示されている。しかし、この陽極酸化皮膜は、多数の孔を有していても、本実施形態におけるジルコニウム系皮膜とは全く相違する。さらに、前記特許文献1には、アルミニウム材の表面に直接シランカップリング剤を塗布することは、一切開示されていない。
【0019】
<ケイ素系化合物(A)>
前記ケイ素系化合物(A)は、その構成元素としてケイ素(Si)を有する。
より具体的には、ケイ素系化合物(A)としては、その1分子中に、1個又は2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、1個又は2個以上の反応性官能基又は親油性基を有するケイ素系化合物(A1)と、その1分子中に、2個以上のアルコキシシリル基を有し、かつ、前記アルコキシシリル基とは別途に、反応性官能基及び親油性基を有しないケイ素系化合物(A2)と、が挙げられる。
【0020】
ケイ素系化合物(A)が有する前記アルコキシシリル基とは、シリル基(-SiH3)の少なくとも1個の水素原子がアルコキシ基で置換された構造を有する基であり、3個の水素原子がすべて水素原子以外の基で置換された構造を有していてもよい(3置換シリル基であってもよい)。
前記アルコキシシリル基は、3個の水素原子がすべて水素原子以外の基で置換された構造を有する基(3置換シリル基)であることが好ましく、このようなアルコキシシリル基としては、例えば、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシモノアルキルシリル基、モノアルコキシジアルキルシリル基が挙げられる。
【0021】
ケイ素系化合物(A)が有する前記アルコキシシリル基中のアルコキシ基(ケイ素原子に結合しているアルコキシ基)は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0022】
ケイ素系化合物(A)が有する前記アルコキシシリル基中の、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基の炭素数は、1~10であることが好ましく、このようなアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、n-ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert-ペンチルオキシ基、1-メチルブチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、2-メチルペンチルオキシ基、3-メチルペンチルオキシ基、2,2-ジメチルブチルオキシ基、2,3-ジメチルブチルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、2-メチルヘキシルオキシ基、3-メチルヘキシルオキシ基、2,2-ジメチルペンチルオキシ基、2,3-ジメチルペンチルオキシ基、2,4-ジメチルペンチルオキシ基、3,3-ジメチルペンチルオキシ基、3-エチルペンチルオキシ基、2,2,3-トリメチルブチルオキシ基、n-オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等が挙げられる。
前記アルコキシ基の炭素数は、1~6であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましい。
【0023】
ケイ素系化合物(A)が有する前記アルコキシシリル基のうち、トリアルコキシシリル基及びジアルコキシモノアルキルシリル基中の、複数個のアルコキシ基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。例えば、トリアルコキシシリル基中の3個のアルコキシ基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ(すなわち2個のみ)同一であってもよい。複数個のアルコキシ基が互いに異なっている場合、それらの組み合わせは、任意に調節できる。
【0024】
ケイ素系化合物(A)が有する前記アルコキシシリル基中にアルキル基が存在する(前記アルコキシシリル基がジアルコキシモノアルキルシリル基又はモノアルコキシジアルキルシリル基である)場合、前記アルキル基(ケイ素原子に結合しているアルキル基)は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましく、直鎖状であることがより好ましい。
【0025】
ケイ素系化合物(A)が有する前記ジアルコキシモノアルキルシリル基又はモノアルコキシジアルキルシリル基中の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、1-メチルブチル基、n-ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,3-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は、1~6であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましい。
【0026】
ケイ素系化合物(A)が有する前記アルコキシシリル基のうち、モノアルコキシジアルキルシリル基中の、2個のアルキル基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。2個のアルキル基が互いに異なっている場合、それらの組み合わせは、任意に調節できる。
【0027】
ケイ素系化合物(A)が有する前記アルコキシシリル基は、トリアルコキシシリル基、ジアルコキシモノアルキルシリル基又はモノアルコキシジアルキルシリル基であることが好ましく、トリアルコキシシリル基又はジアルコキシモノアルキルシリル基であることがより好ましい。
【0028】
ケイ素系化合物(A)が有する前記アルコキシシリル基は、トリアルコキシシリル基又はジアルコキシモノアルキルシリル基であり、前記トリアルコキシシリル基及びジアルコキシモノアルキルシリル基中のアルコキシ基の炭素数が1~3であり、前記ジアルコキシモノアルキルシリル基中のアルキル基の炭素数が1~3であることが、さらに好ましい。このようなケイ素系化合物(A)を用いることにより、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がより高くなる。
【0029】
さらに好ましい前記トリアルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基(-Si(OCH3)3)、トリエトキシシリル基(-Si(OC2H5)3)、トリn-プロポキシシリル基(-Si(OC3H7)3);
モノエトキシジメトキシシリル基(-Si(OC2H5)(OCH3)2)、ジエトキシモノメトキシシリル基(-Si(OC2H5)2(OCH3));
モノエトキシジn-プロポキシシリル基(-Si(OC2H5)(OC3H7)2)、ジエトキシモノn-プロポキシシリル基(-Si(OC2H5)2(OC3H7));
モノメトキシジn-プロポキシシリル基(-Si(OCH3)(OC3H7)2)、ジメトキシモノn-プロポキシシリル基(-Si(OCH3)2(OC3H7))等が挙げられる。
【0030】
さらに好ましい前記ジアルコキシモノアルキルシリル基としては、例えば、ジメトキシモノメチルシリル基(-Si(OCH3)2(CH3))、ジメトキシモノエチルシリル基(-Si(OCH3)2(C2H5))、ジメトキシモノn-プロピルシリル基(-Si(OCH3)2(C3H7));
ジエトキシモノメチルシリル基(-Si(OC2H5)2(CH3))、ジエトキシモノエチルシリル基(-Si(OC2H5)2(C2H5))、ジエトキシモノn-プロピルシリル基(-Si(OC2H5)2(C3H7));
ジn-プロポキシモノメチルシリル基(-Si(OC3H7)2(CH3))、ジn-プロポキシモノエチルシリル基(-Si(OC3H7)2(C2H5))、ジn-プロポキシモノn-プロピルシリル基(-Si(OC3H7)2(C3H7));
モノエトキシモノメトキシモノメチルシリル基(-Si(OC2H5)(OCH3)(CH3))、モノエトキシモノメトキシモノエチルシリル基(-Si(OC2H5)(OCH3)(C2H5))、モノエトキシモノメトキシモノn-プロピルシリル基(-Si(OC2H5)(OCH3)(C3H7));
モノエトキシモノn-プロポキシモノメチルシリル基(-Si(OC2H5)(OC3H7)(CH3))、モノエトキシモノn-プロポキシモノエチルシリル基(-Si(OC2H5)(OC3H7)(C2H5))、モノエトキシモノn-プロポキシモノn-プロピルシリル基(-Si(OC2H5)(OC3H7)(C3H7));
モノメトキシモノn-プロポキシモノメチルシリル基(-Si(OCH3)(OC3H7)(CH3))、モノメトキシモノn-プロポキシモノエチルシリル基(-Si(OCH3)(OC3H7)(C2H5))、モノメトキシモノn-プロポキシモノn-プロピルシリル基(-Si(OCH3)(OC3H7)(C3H7))等が挙げられる。
【0031】
アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がさらに高い点では、ケイ素系化合物(A)が有する前記アルコキシシリル基は、前記ジアルコキシモノアルキルシリル基であることが、特に好ましい。
【0032】
前記ケイ素系化合物(A1)が有する前記反応性官能基としては、アルコキシシリル基以外の基が挙げられる。
前記反応性官能基は、有機化合物と反応可能な基であることが好ましい。反応性官能基として、有機化合物と反応可能な基を有するケイ素系化合物(A1)は、シランカップリング剤であり、公知のシランカップリング剤であってもよい。
【0033】
前記反応性官能基として、より具体的には、例えば、エポキシ基、グリシジル基(-CH2CH(-O-)CH2)、(メタ)アクリロイル基(-C(=O)-CH=CH2、-C(=O)-C(CH3)=CH2)、アミノ基(-NH2)、モノアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、酸基が無水物化された基、エテニル基(別名:ビニル基、-CH=CH2)、2-プロペニル基(別名:アリル基、-CH2-CH=CH2)、シクロヘキセニル基(-C6H9)、1,3-ジメチルブチリデンアミノ基(-N=C(CH3)CH2CH(CH3)2)、イソシアネート基(-N=C=O)、ウレイド基(-NH-C(=O)-NH2)、メルカプト基(-SH)等が挙げられる。
【0034】
本明細書において、「エポキシ基」とは、1,2-エポキシド(別名:エチレンオキシド、オキシラン、CH2(-O-)CH2)中の2個の炭素原子からそれぞれ、1個の水素原子が除かれた構造を有する2価の基(-CH(-O-)CH-)、すなわち、1,2-エポキシド-1,2-ジイル基を意味する。エポキシ基は、ケイ素系化合物(A1)中においては、分子の末端部には存在せず、分子の非末端部に存在する。
これに対して、グリシジル基は、1価の基であり、ケイ素系化合物(A1)中においては、鎖状構造中の主鎖又は側鎖における末端部となる。
【0035】
本明細書において、「主鎖」とは、分子中に存在するひと繋がりの鎖状骨格のうち、この鎖状骨格を形成している原子数が最大であるものを意味する。「側鎖」とは、分子中に存在するひと繋がりの鎖状骨格のうち、主鎖に該当しないものを意味する。
【0036】
本明細書において、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基」及び「メタクリロイル基」の両方を包含する概念である。(メタ)アクリロイル基と類似の用語についても同様であり、例えば、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念であり、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及び「メタクリレート」の両方を包含する概念である。
【0037】
前記モノアルキルアミノ基中のアルキル基(窒素原子に結合しているアルキル基)は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよいが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
前記モノアルキルアミノ基中の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、このようなアルキル基としては、例えば、上述の前記ジアルコキシモノアルキルシリル基又はモノアルコキシジアルキルシリル基中の、直鎖状又は分岐鎖状の、炭素数1~10のアルキル基と同じのものが挙げられる。
前記アルキル基の炭素数は、1~6であることがより好ましく、1~3であることがさらに好ましい。
【0038】
前記モノアリールアミノ基中のアリール基(窒素原子に結合しているアリール基)は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
前記アリール基の炭素数は、6~20であることが好ましく、このようなアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、2,3-キシリル基(2,3-ジメチルフェニル基)、2,4-キシリル基(2,4-ジメチルフェニル基)、2,5-キシリル基(2,5-ジメチルフェニル基)、2,6-キシリル基(2,6-ジメチルフェニル基)、3,4-キシリル基(3,4-ジメチルフェニル基)、3,5-キシリル基(3,5-ジメチルフェニル基)等が挙げられ、これらアリール基の1個又は2個以上の水素原子が、さらにこれらアリール基、又は、前記炭素数1~10のアルキル基で置換された構造を有する基も挙げられる。これら置換基を有するアリール基は、置換基も含めて炭素数が6~20であることが好ましい。
【0039】
前記酸基が無水物化された基としては、例えば、2個の酸基が互いに結合して、脱水された構造を有する基等が挙げられる。
酸基が無水物化された基で好ましいものとしては、例えば、2個のカルボキシ基(-C(=O)-OH)が互いに結合して、脱水された構造を有する基(-C(=O)-O-C(=O)-)が挙げられる。
2個のカルボキシ基が互いに結合して、脱水された構造を有する基は、ケイ素系化合物(A1)中で、例えば、無水酢酸から1個又は2個以上の水素原子が除かれた構造を有する基、無水コハク酸から1個又は2個以上の水素原子が除かれた構造を有する基、無水フタル酸から1個又は2個以上の水素原子が除かれた構造を有する基、又は無水マレイン酸から1個又は2個の水素原子が除かれた構造を有する基、等を形成していてもよい。
【0040】
ケイ素系化合物(A1)が有する前記反応性官能基は、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリロイル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、モノアリールアミノ基、又は酸基が無水物化された基であることが好ましい。このようなアルキル基を有するケイ素系化合物(A1)は、その入手又は製造がより容易であり、このような反応性官能基を有するケイ素系化合物(A1)を用いることで、アルミニウム材の黒変防止効果がより高くなる。
【0041】
ケイ素系化合物(A1)が有する前記反応性官能基は、エポキシ基又はグリシジル基であることがより好ましい。このような反応性官能基を有するケイ素系化合物(A1)を用いることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がさらに高くなる。
【0042】
前記ケイ素系化合物(A1)が有する前記親油性基としては、アルキル基が挙げられる。
前記親油性基であるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合には、単環状及び多環状のいずれであってもよく、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)骨格と環状骨格をともに有していてもよい。
前記親油性基であるアルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであっても、その炭素数は4以上であることが好ましく、例えば、6以上、及び8以上のいずれかであってもよい。このようなアルキル基の親油性は、より高い。
一方、前記アルキル基の炭素数は、10以下であることが好ましい。このようなアルキル基を有するケイ素系化合物(A1)は、その入手又は製造がより容易であり、このようなケイ素系化合物(A1)を用いることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がより高くなる。
【0043】
炭素数が4~10の直鎖状又は分岐鎖状の前記アルキル基としては、上述の前記ジアルコキシモノアルキルシリル基又はモノアルコキシジアルキルシリル基中の、直鎖状又は分岐鎖状の、炭素数1~10のアルキル基のうち、炭素数が4~10であるアルキル基と同じのものが挙げられる。
炭素数が4~10の環状の前記アルキル基(シクロアルキル基)としては、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、トリシクロデシル基等が挙げられる。
【0044】
ケイ素系化合物(A1)において、アルコキシシリル基と、反応性官能基又は親油性基とは、連結基を介して互いに結合していてもよいし、アルコキシシリル基と、反応性官能基又は親油性基とは、連結基を介さずに直接結合していてもよい。
ケイ素系化合物(A1)が、前記反応性官能基としてエポキシ基を有し、かつ、連結基を有する場合には、連結基の一部がエポキシ基とともに環を形成していてもよい。同様に、ケイ素系化合物(A1)が、前記反応性官能基として、酸基が無水物化された基を有し、かつ、連結基を有する場合には、連結基の一部が、酸基が無水物化された基とともに環を形成していてもよい。
【0045】
ケイ素系化合物(A1)は、鎖状構造のみを有していてもよいし、鎖状構造及び環状構造をともに有していてもよい。
【0046】
ケイ素系化合物(A1)中でのアルコキシシリル基、反応性官能基及び親油性基の位置は、特に限定されない。例えば、ケイ素系化合物(A1)が鎖状構造を有する場合(鎖状構造のみを有する場合と、鎖状構造及び環状構造をともに有する場合)には、アルコキシシリル基、反応性官能基及び親油性基の位置は、いずれも、主鎖又は側鎖の、末端部及び非末端部のいずれであってもよい。
【0047】
鎖状構造を有するケイ素系化合物(A1)(鎖状構造のみを有するケイ素系化合物(A1)と、鎖状構造及び環状構造をともに有するケイ素系化合物(A1))においては、アルコキシシリル基が主鎖の一方の末端部であり、かつ、反応性官能基又は親油性基が主鎖の他方の末端部であることが好ましい。このようなケイ素系化合物(A1)は、その入手又は製造がより容易であり、このようなケイ素系化合物(A1)を用いることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がより高くなる。
環状構造を有するケイ素系化合物(A1)(鎖状構造及び環状構造をともに有するケイ素系化合物(A1))においては、アルコキシシリル基と、反応性官能基又は親油性基と、が環状構造を構成する同一の原子に、直接又は連結基を介して結合せずに、環状構造を構成する互いに異なる原子に、直接又は連結基を介して結合していることが好ましい。
【0048】
ケイ素系化合物(A1)は、その1分子中に、1個のアルコキシシリル基を有し、かつ、1個の反応性官能基又は親油性基を有することが好ましい。このようなケイ素系化合物(A1)は、その入手又は製造がより容易であり、このようなケイ素系化合物(A1)を用いることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がより高くなる。
【0049】
ケイ素系化合物(A1)は、鎖状構造を有し、1個のアルコキシシリル基と1個の反応性官能基又は親油性基を有し、アルコキシシリル基が主鎖の一方の末端部であり、反応性官能基又は親油性基が主鎖の他方の末端部であるか、あるいは、環状構造を有し、1個のアルコキシシリル基と1個の反応性官能基又は親油性基を有し、これらアルコキシシリル基と、反応性官能基又は親油性基と、が環状構造を構成する互いに異なる原子に、直接又は連結基を介して結合している、ことがより好ましい。このようなケイ素系化合物(A1)は、その入手又は製造がさらに容易であり、このようなケイ素系化合物(A1)を用いることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がさらに高くなる。
【0050】
前記ケイ素系化合物(A2)が有しない前記反応性官能基及び親油性基としては、ケイ素系化合物(A1)が有する前記反応性官能基及び親油性基と同じものが挙げられる。
【0051】
ケイ素系化合物(A2)において、2個以上のアルコキシシリル基は、連結基を介して互いに結合していてもよいし、連結基を介さずに直接結合していてもよい。
【0052】
ケイ素系化合物(A2)は、鎖状構造のみを有していてもよいし、鎖状構造及び環状構造をともに有していてもよい。
【0053】
ケイ素系化合物(A2)中でのアルコキシシリル基の位置は、特に限定されない。例えば、ケイ素系化合物(A2)が鎖状構造を有する場合(鎖状構造のみを有する場合と、鎖状構造及び環状構造をともに有する場合)には、アルコキシシリル基の位置は、主鎖又は側鎖の、末端部及び非末端部のいずれであってもよい。
【0054】
鎖状構造を有するケイ素系化合物(A2)(鎖状構造のみを有するケイ素系化合物(A2)と、鎖状構造及び環状構造をともに有するケイ素系化合物(A2))においては、1個のアルコキシシリル基が主鎖の一方の末端部であり、かつ、これとは異なる1個のアルコキシシリル基が主鎖の他方の末端部であることが好ましい。このようなケイ素系化合物(A2)は、その入手又は製造がより容易であり、このようなケイ素系化合物(A2)を用いることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がより高くなる。
環状構造を有するケイ素系化合物(A2)(鎖状構造及び環状構造をともに有するケイ素系化合物(A2))においては、2個以上のアルコキシシリル基が、環状構造を構成する同一の原子に、直接又は連結基を介して結合せずに、環状構造を構成する互いに異なる原子に、直接又は連結基を介して結合していることが好ましい。
【0055】
ケイ素系化合物(A2)は、その1分子中に、2個又は3個のアルコキシシリル基を有することが好ましい。このようなケイ素系化合物(A2)は、その入手又は製造がより容易であり、このようなケイ素系化合物(A2)を用いることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がより高くなる。
【0056】
ケイ素系化合物(A2)は、鎖状構造を有し、2個のアルコキシシリル基を有し、1個のアルコキシシリル基が主鎖の一方の末端部であり、これとは異なる1個のアルコキシシリル基が主鎖の他方の末端部であるか、あるいは、環状構造を有し、2個又は3個のアルコキシシリル基を有し、これら2個又は3個のアルコキシシリル基が、環状構造を構成する互いに異なる原子に、直接又は連結基を介して結合している、ことがより好ましい。このようなケイ素系化合物(A2)は、その入手又は製造がさらに容易であり、このようなケイ素系化合物(A2)を用いることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がさらに高くなる。
【0057】
ケイ素系化合物(A1)及びケイ素系化合物(A2)において、前記連結基は、2価又は3価以上の多価の基である。
【0058】
2価の前記連結基としては、例えば、アルキレン基;アリーレン基;前記アルキレン基中の1個のメチレン基(-CH2-)、又は2個以上の互いに隣接していないメチレン基が、酸素原子(-O-)、イミノ基(-NH-)又はフェニレン基(-C6H4-)(本明細書においては、これらを包括して「置換基」と称することがある)で置換された構造を有する置換アルキレン基等が挙げられる。
【0059】
2価の連結基である前記アルキレン基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれであってもよく、環状である場合には、単環状及び多環状のいずれであってもよく、鎖状(直鎖状、分岐鎖状)骨格と環状骨格をともに有していてもよい。
【0060】
2価の連結基である前記アルキレン基としては、例えば、上述の前記ジアルコキシモノアルキルシリル基又はモノアルコキシジアルキルシリル基中の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基と同様のアルキル基から、1個の水素原子が除かれた構造を有する2価の基が挙げられ、直鎖状又は分岐鎖状の、炭素数1~10のアルキル基から、1個の水素原子が除かれた構造を有する2価の基が好ましい。
このような炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基(メチルエチレン基)、トリメチレン基、テトラメチレン基、1-メチルトリメチレン基、2-メチルトリメチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、1-メチルテトラメチレン基、2-メチルテトラメチレン基、1,1-ジメチルトリメチレン基、1,2-ジメチルトリメチレン基、1,3-ジメチルトリメチレン基、1-エチルトリメチレン基、2-エチルトリメチレン基、1-メチル-2-エチルエチレン基、n-プロピルエチレン基、ヘキサメチレン基、1-メチルペンタメチレン基、2-メチルペンタメチレン基、3-メチルペンタメチレン基、1,1-ジメチルテトラメチレン基、1,2-ジメチルテトラメチレン基、1,3-ジメチルテトラメチレン基、1,4-ジメチルテトラメチレン基、2,3-ジメチルテトラメチレン基、2,2-ジメチルテトラメチレン基、1-エチルテトラメチレン基、2-エチルテトラメチレン基、1-メチル-2-エチルトリメチレン基、1-メチル-3-エチルトリメチレン基、2-メチル-3-エチルトリメチレン基、1-メチル-1-エチルトリメチレン基、2-メチル-2-エチルトリメチレン基、1,2,3-トリメチルトリメチレン基、1,1,2,2-テトラメチルエチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
【0061】
2価の連結基である前記置換アルキレン基としては、2価の連結基である前記アルキレン基中の1個のメチレン基、又は2個以上の互いに隣接していないメチレン基が、酸素原子、イミノ基又はフェニレン基(置換基)で置換された構造を有する基が挙げられる。
前記アルキレン基を置換する前記フェニレン基としては、例えば、1,4-フェニレン基(ベンゼン-1,4-ジイル基)、1,3-フェニレン基(ベンゼン-1,3-ジイル基)、1,2-フェニレン基(ベンゼン-1,2-ジイル基)等が挙げられる。
【0062】
前記置換アルキレン基において、2個以上のメチレン基が前記置換基で置換されている場合、これら2個以上の前記置換基は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。すなわち、2個以上の前記置換基は、すべて同一であってもよいし、すべて異なっていてもよいし、一部のみ同一であってもよい。そして、2個以上の前記置換基の組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0063】
前記置換アルキレン基においては、前記イミノ基等の塩を形成可能な基は、塩を形成していてもよい。
【0064】
2価の連結基である前記置換アルキレン基で好ましいものとしては、例えば、式「-C3H6O-」で表される基、式「-C3H6NHC2H4-」で表される基、式「-(CH2)3NH(CH2)2NHCH2C6H4-」で表される基等が挙げられる。
【0065】
2価の連結基である前記アリーレン基は、単環状及び多環状のいずれであってもよい。
2価の連結基である前記アリーレン基としては、例えば、上述の前記モノアリールアミノ基中のアリール基と同様のアリール基から、1個の水素原子が除かれた構造を有する2価の基が挙げられ、単環状又は多環状の、炭素数6~20のアリール基から、1個の水素原子が除かれた構造を有する2価の基が好ましい。
このような前記アリーレン基としては、例えば、1,4-フェニレン基(ベンゼン-1,4-ジイル基)、1,3-フェニレン基(ベンゼン-1,3-ジイル基)、1,2-フェニレン基(ベンゼン-1,2-ジイル基)等のフェニレン基(ベンゼンジイル基);
1,5-ナフチレン基(ナフタレン-1,5-ジイル基)、1,6-ナフチレン基(ナフタレン-1,6-ジイル基)、1,7-ナフチレン基(ナフタレン-1,7-ジイル基)、2,5-ナフチレン基(ナフタレン-2,5-ジイル基)、2,6-ナフチレン基(ナフタレン-2,6-ジイル基)、2,7-ナフチレン基(ナフタレン-2,7-ジイル基)等のナフチレン基(ナフタレンジイル基);
トルエン-2,5-ジイル基、トルエン-2,4-ジイル基、トルエン-2,3-ジイル基、トルエン-2,6-ジイル基、トルエン-3,5-ジイル基、トルエン-3,4-ジイル基等のトルエンジイル基(-C6H3(-CH3)-);
o-キシレン-3,6-ジイル基、o-キシレン-3,5-ジイル基、o-キシレン-3,4-ジイル基、m-キシレン-2,5-ジイル基、m-キシレン-2,4-ジイル基、p-キシレン-2,5-ジイル基、p-キシレン-2,3-ジイル基等のキシレンジイル基(-C6H2(-CH3)2-)等が挙げられる。
【0066】
3価の前記連結基としては、例えば、イソシアヌル酸-1,3,5-トリイル基(イソシアヌル酸から3個の水素原子が除かれた構造を有する3価の基)等が挙げられる。
【0067】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基としてグリシジル基を有するケイ素系化合物(A101)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表される3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0068】
【0069】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基として(メタ)アクリロイル基を有するケイ素系化合物(A102)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表される3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン(3-メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン)、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(C2H5O)2Si(-CH3)C3H6OC(=O)C(-CH3)=CH2
(C2H5O)3SiC3H6OC(=O)C(-CH3)=CH2
(CH3O)2Si(-CH3)C3H6OC(=O)C(-CH3)=CH2
(CH3O)3SiC3H6OC(=O)C(-CH3)=CH2
(C2H5O)2Si(-CH3)C3H6OC(=O)CH=CH2
(C2H5O)3SiC3H6OC(=O)CH=CH2
(CH3O)2Si(-CH3)C3H6OC(=O)CH=CH2
(CH3O)3SiC3H6OC(=O)CH=CH2
【0070】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基としてアミノ基を有するケイ素系化合物(A103)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表されるN-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
(CH3O)2Si(-CH3)C3H6NHC2H4NH2
(CH3O)3SiC3H6NHC2H4NH2
(CH3O)3SiC3H6NH2
(C2H5O)2Si(-CH3)C3H6NHC2H4NH2
(C2H5O)3SiC3H6NHC2H4NH2
(CH3O)2Si(-CH3)SiC3H6NH2
(C2H5O)3SiC3H6NH2
(C2H5O)2Si(-CH3)C3H6NH2
【0071】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基としてモノアリールアミノ基を有するケイ素系化合物(A104)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表されるN-フェニル-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
(CH3O)2Si(-CH3)C3H6NHC6H5
(CH3O)3SiC3H6NHC6H5
(C2H5O)2Si(-CH3)C3H6NHC6H5
(C2H5O)3SiC3H6NHC6H5
【0072】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基として酸基が無水物化された基を有するケイ素系化合物(A105)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表される3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-メチルジメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、等が挙げられる。
【0073】
【0074】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基としてエテニル基を有するケイ素系化合物(A107)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表されるビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルメチルジメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、p-スチリルメチルジエトキシシラン、N-[2-(N-ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-[2-(N-ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-[2-(N-ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-[2-(N-ビニルベンジルアミノ)エチル]-3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
(CH3O)3SiCH=CH2
(CH3O)2Si(-CH3)CH=CH2
(C2H5O)3SiCH=CH2
(C2H5O)2Si(-CH3)CH=CH2
(CH3O)3Si(p-C6H4)CH=CH2
(CH3O)2Si(-CH3)Si(p-C6H4)CH=CH2
(C2H5O)3Si(p-C6H4)CH=CH2
(C2H5O)2Si(-CH3)(p-C6H4)CH=CH2
(CH3O)3Si(CH2)3NH(CH2)2NHCH2C6H4CH=CH2
(CH3O)2Si(-CH3)(CH2)3NH(CH2)2NHCH2C6H4CH=CH2
(C2H5O)3Si(CH2)3NH(CH2)2NHCH2C6H4CH=CH2
(C2H5O)2Si(-CH3)(CH2)3NH(CH2)2NHCH2C6H4CH=CH2
【0075】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基としてエポキシ基を有するケイ素系化合物(A108)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表される2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0076】
【0077】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基として1,3-ジメチルブチリデンアミノ基を有するケイ素系化合物(A109)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表される3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-(メチルジエトキシシリル)-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-トリメトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、3-(メチルジメトキシシリル)-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン等が挙げられる。
(C2H5O)3SiC3H6N=C(-CH3)C4H9
(C2H5O)2Si(-CH3)C3H6N=C(-CH3)C4H9
(CH3O)3SiC3H6N=C(-CH3)C4H9
(CH3O)2Si(-CH3)C3H6N=C(-CH3)C4H9
【0078】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基としてイソシアネート基を有するケイ素系化合物(A110)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表される3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
(C2H5O)3SiC3H6N=C=O
(C2H5O)2Si(-CH3)C3H6N=C=O
(CH3O)3SiC3H6N=C=O
(CH3O)2Si(-CH3)C3H6N=C=O
【0079】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基としてウレイド基を有するケイ素系化合物(A111)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表される3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルメチルジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-ウレイドプロピルメチルジエトキシシラン、3-ウレイドプロピルモノエトキシジメトキシシラン、3-ウレイドプロピルモノメトキシジエトキシシラン、3-ウレイドプロピルモノメトキシモノエトキシモノメチルシラン等が挙げられる。
(CH3O)3SiC3H6NHC(=O)NH2
(CH3O)2Si(-CH3)C3H6NHC(=O)NH2
(C2H5O)3SiC3H6NHC(=O)NH2
(C2H5O)2Si(-CH3)C3H6NHC(=O)NH2
(C2H5O)(CH3O)2SiC3H6NHC(=O)NH2
(C2H5O)2(CH3O)SiC3H6NHC(=O)NH2
(C2H5O)(CH3O)Si(-CH3)C3H6NHC(=O)NH2
【0080】
ケイ素系化合物(A1)のうち、反応性官能基としてメルカプト基を有するケイ素系化合物(A112)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表される3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
(CH3O)2Si(-CH3)C3H6SH
(CH3O)3SiC3H6SH
(C2H5O)2Si(-CH3)C3H6SH
(C2H5O)3SiC3H6SH
【0081】
ケイ素系化合物(A1)のうち、親油性基としてアルキル基を有するケイ素系化合物(A106)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表されるイソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、イソブチルメチルジメトキシシラン、オクチルメチルジエトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、イソブチルメチルジエトキシシラン、オクチルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。
(CH3O)3SiCH2CH(CH3)2
(C2H5O)3SiC8H17
(CH3O)2Si(-CH3)CH2CH(CH3)2
(C2H5O)2Si(-CH3)C8H17
(C2H5O)3SiCH2CH(CH3)2
(CH3O)3SiC8H17
(C2H5O)2Si(-CH3)CH2CH(CH3)2
(CH3O)2Si(-CH3)SiC8H17
【0082】
特に好ましいケイ素系化合物(A1)としては、その1分子中に、1個又は2個以上の、トリアルコキシシリル基又はジアルコキシモノアルキルシリル基を有し、かつ、1個又は2個以上の、エポキシ基又はグリシジル基を有する化合物が挙げられる。
【0083】
ケイ素系化合物(A2)のうち、その1分子中に、3個のアルコキシシリル基を有するケイ素系化合物(A201)で好ましいものとしては、例えば、下記式で表されるトリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(メチルジメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(トリエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、トリス-(メチルジエトキシシリルプロピル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0084】
【0085】
より好ましいケイ素系化合物(A2)としては、その1分子中に、2個以上の、トリアルコキシシリル基又はジアルコキシモノアルキルシリル基を有し、かつ、前記トリアルコキシシリル基及びジアルコキシモノアルキルシリル基とは別途に、反応性官能基及び親油性基を有しない化合物が挙げられる。
【0086】
黒変防止処理剤がケイ素系化合物(A)を含有する場合、黒変防止処理剤が含有するケイ素系化合物(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
例えば、黒変防止処理剤は、1種又は2種以上のケイ素系化合物(A1)を含有し、かつケイ素系化合物(A2)を含有していなくてもよいし、1種又は2種以上のケイ素系化合物(A2)を含有し、かつケイ素系化合物(A1)を含有していなくてもよいし、1種又は2種以上のケイ素系化合物(A1)を含有し、かつ1種又は2種以上のケイ素系化合物(A2)を含有していてもよい。
【0087】
<チタネート系カップリング剤(B)>
前記チタネート系カップリング剤(B)は、その構成金属元素としてチタン(Ti)を有し、例えば、「Ti-O-C」結合を有し、公知のチタネート系カップリング剤であってもよい。
【0088】
チタネート系カップリング剤(B)として、より具体的には、例えば、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルパイロホスファイト)チタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N-エチルアミノ-エチルアミノ)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、テトラオクチルビス(ジラウリルホスファイト)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。
【0089】
黒変防止処理剤がチタネート系カップリング剤(B)を含有する場合、黒変防止処理剤が含有するチタネート系カップリング剤(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0090】
<アルミネート系カップリング剤(C)>
前記アルミネート系カップリング剤(C)は、その構成金属元素としてアルミニウム(Al)を有し、公知のアルミネート系カップリング剤であってもよい。
【0091】
アルミネート系カップリング剤(C)として、より具体的には、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジアセテート;アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート;エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート;アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート);アルミニウムトリス(アセチルアセトネート);アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート);アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0092】
黒変防止処理剤がアルミネート系カップリング剤(C)を含有する場合、黒変防止処理剤が含有するアルミネート系カップリング剤(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0093】
黒変防止処理剤は、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上を含有する。
例えば、黒変防止処理剤がケイ素系化合物(A)を含有する場合、黒変防止処理剤において、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、の合計含有量(質量部)に対する、ケイ素系化合物(A)の含有量(質量部)の割合([黒変防止処理剤のケイ素系化合物(A)の含有量(質量部)]/([黒変防止処理剤のケイ素系化合物(A)の含有量(質量部)]+[黒変防止処理剤のチタネート系カップリング剤(B)の含有量(質量部)]+[黒変防止処理剤のアルミネート系カップリング剤(C)の含有量(質量部)])×100)は、50質量%以上、65質量%以上、80質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。
一方、前記割合は100質量%以下である。
【0094】
本明細書の、黒変防止処理剤のケイ素系化合物(A)の含有量について記載している箇所においては、黒変防止処理剤がケイ素系化合物(A)を含有しない場合には、黒変防止処理剤のケイ素系化合物(A)の含有量は、0質量部である。チタネート系カップリング剤(B)及びアルミネート系カップリング剤(C)についても同様である。すなわち、本明細書の、黒変防止処理剤のチタネート系カップリング剤(B)の含有量について記載している箇所においては、黒変防止処理剤がチタネート系カップリング剤(B)を含有しない場合には、黒変防止処理剤のチタネート系カップリング剤(B)の含有量は、0質量部であり、本明細書の、黒変防止処理剤のアルミネート系カップリング剤(C)の含有量について記載している箇所においては、黒変防止処理剤がアルミネート系カップリング剤(C)を含有しない場合には、黒変防止処理剤のアルミネート系カップリング剤(C)の含有量は、0質量部である。
【0095】
<溶媒>
黒変防止処理剤は、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上以外に、溶媒を含有していることが好ましい。前記溶媒を含有する黒変防止処理剤は、その取り扱い性が良好である。
本明細書において、「溶媒」とは、特に断りのない限り、溶質を溶解させるための、常温で液状の成分と、分散質を分散させるための分散媒として機能する、常温で液状の成分と、の両方を包含する概念である。また、「常温」とは、特に冷やしたり、熱したりしない温度、すなわち平常の温度を意味し、例えば、15~25℃の温度等が挙げられる。
【0096】
溶媒としては、例えば、水、有機溶媒等が挙げられる。
前記有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール(n―プロピルアルコール)、2-プロパノール(イソプロピルアルコール)、1-ブタノール(n-ブチルアルコール)、2-メチル-1-プロパノール(イソブチルアルコール)、2-ブタノール(sec-ブチルアルコール)、2-メチル-2-プロパノール(tert-ブチルアルコール)等のアルコール等が挙げられる。
【0097】
黒変防止処理剤が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0098】
アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がより高くなる点では、溶媒は水、又は水とアルコールとの混合溶媒であることが好ましい。
水とアルコールとの混合溶媒においては、[水(質量部)]:[アルコール(質量部)]の質量比は、例えば、90:10~10:90、75:25~25:75、及び60:40~40:60のいずれかであってもよい。
【0099】
溶媒を含有する黒変防止処理剤は、その製造直後から、48時間以内で使用することが好ましい。48時間以内であれば、黒変防止処理剤は溶媒を含有していても、劣化が全く見られないか、劣化が軽微であって、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果が高い。
【0100】
<他の成分(D)>
黒変防止処理剤は、本発明の効果を損なわない範囲内において、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、溶媒と、のいずれにも該当しない他の成分(D)を含有していてもよい。
前記他の成分(D)は、目的に応じて任意に選択でき、特に限定されない。
黒変防止処理剤が含有する前記他の成分(D)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0101】
溶媒を含有する黒変防止処理剤において、黒変防止処理剤の総質量(質量部)に対する、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、の合計含有量(質量部)の割合(([黒変防止処理剤のケイ素系化合物(A)の含有量(質量部)]+[黒変防止処理剤のチタネート系カップリング剤(B)の含有量(質量部)]+[黒変防止処理剤のアルミネート系カップリング剤(C)の含有量(質量部)])/[黒変防止処理剤の総質量(質量部)]×100、本明細書においては、「黒変防止処理剤のケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、の合計濃度」と同義である)は、0.1~3質量%であることが好ましく、例えば、0.1~2.5質量%、0.1~2質量%、及び0.1~1.5質量%のいずれかであってもよいし、0.15~3質量%、0.25~3質量%、及び0.35~3質量%のいずれかであってもよいし、0.15~2.5質量%、0.25~2質量%、及び0.35~1.5質量%のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、アルミニウム材の黒変と白化をより効率的に防止できる。前記割合が前記上限値以下であることで、ケイ素系化合物(A)、チタネート系カップリング剤(B)又はアルミネート系カップリング剤(C)の過剰使用が抑制される。
【0102】
黒変防止処理剤において、溶媒以外の成分の総含有量(質量部)に対する、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、の合計含有量(質量部)の割合(([黒変防止処理剤のケイ素系化合物(A)の含有量(質量部)]+[黒変防止処理剤のチタネート系カップリング剤(B)の含有量(質量部)]+[黒変防止処理剤のアルミネート系カップリング剤(C)の含有量(質量部)])/[黒変防止処理剤の溶媒以外の成分の総含有量(質量部)]×100)は、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、例えば、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。前記割合が前記下限値以上であることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果がより高くなる。
一方、前記割合は100質量%以下である。
【0103】
黒変防止処理剤は、さらに、アルミニウム材の濡れ性を向上させることが可能な場合がある。このような黒変防止処理剤でアルミニウム材を表面処理することによって、アルミニウム材の濡れ性が向上し、黒変防止処理剤自体が、アルミニウム材の表面により均一に付着するとともに、黒変防止処理剤によって、アルミニウム材の黒変と白化が防止され、その防止効果が高くなる。
例えば、アルコール又は界面活性剤を含有する黒変防止処理剤を用いることにより、アルミニウム材の濡れ性を向上させることができる。
【0104】
<黒変防止処理剤の製造方法>
黒変防止処理剤は、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上と、必要に応じて他の成分(D)と、必要に応じて溶媒と、を配合することで得られる。各成分の配合後は、得られたものをそのまま黒変防止処理剤としてもよいし、必要に応じて引き続き公知の精製操作を行って得られたものを黒変防止処理剤としてもよい。
【0105】
配合成分の混合方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサー等を使用して混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択できる。
【0106】
上述の製造方法において、黒変防止処理剤を得るまでの各工程における温度は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、5~50℃であってもよい。そして、前記温度は、配合成分の種類及び量に応じて、配合して得られた混合物が撹拌し易い粘度となるように、適宜調節できる。
【0107】
上述の製造方法において、配合成分の添加及び撹拌を行うときの合計時間(添加時間及び撹拌時間の合計)は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、例えば、3分~2時間であってもよい。
【0108】
<<表面処理アルミニウム材>>
本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材は、アルミニウム材を備え、前記アルミニウム材の表面上に黒変防止物を有し、前記黒変防止物が、上述の本発明の一実施形態に係る黒変防止処理剤中の前記ケイ素系化合物(A)と、前記チタネート系カップリング剤(B)と、前記アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上から形成されている。
アルミニウム材の、前記黒変防止物を有する領域においては、その加熱時における黒変が防止される。例えば、アルミニウム材の表面のうち、ジルコニウム系皮膜が設けられている領域と、ジルコニウム系皮膜が設けられていない領域においては、その90℃以下等の熱水での加熱殺菌処理時に、黒変防止物によって黒変が防止される。また、アルミニウム材の表面のうち、ジルコニウム系皮膜の厚さが薄い領域と、ジルコニウム系皮膜が設けられていない領域においては、その100℃超等の高温水蒸気での加熱殺菌処理時に、黒変防止物によって白化が防止される。
【0109】
表面処理アルミニウム材の表面のうち、ジルコニウム系皮膜が設けられている領域では、ジルコニウム系皮膜中(孔の内部)、又はジルコニウム系皮膜の面上に、前記黒変防止物が存在すると推測される。一方、表面処理アルミニウム材の表面のうち、ジルコニウム系皮膜が設けられていない領域では、この表面上に、前記黒変防止物が存在すると推測される。
【0110】
表面処理アルミニウム材の製造に用いるアルミニウム材(黒変防止処理剤による表面処理を行う前のアルミニウム材)と、表面処理アルミニウム材と、が備えているジルコニウム系皮膜の厚さは、1~15nmであることが好ましく、2~13nmであることがより好ましく、3~10nmであることがさらに好ましい。
表面処理アルミニウム材の製造に用いるアルミニウム材と、表面処理アルミニウム材と、が備えているジルコニウム系皮膜において、ジルコニウムの量は、1~20mg/m2であることが好ましく、2~15mg/m2であることがより好ましく、3~10mg/m2であることがさらに好ましい。このような量で特定されるジルコニウムは、例えば、化合物を形成している状態であってもよいし、単体であってもよく、その状態は特に限定されない。
ジルコニウム系皮膜の厚さと前記ジルコニウムの量が、前記下限値以上であることで、ジルコニウム系皮膜を備えていることにより得られる効果が、より高くなる。ジルコニウム系皮膜の厚さと前記ジルコニウムの量が、前記上限値以下であることで、ジルコニウム系皮膜の厚さ(ジルコニウム系皮膜の形成)が過剰となることが避けられる。
ジルコニウム系皮膜の厚さとしては、例えば、これが設けられているアルミニウム材の厚さ方向において、ジルコニウム系皮膜の一方の面における1点と、他方の面における1点と、を結んで得られる線分の長さを採用できる。
ジルコニウム系皮膜におけるジルコニウムの量は、例えば、蛍光X線分析法(X-ray fluorescence analysis、XRF)等の公知の方法で測定できる。
【0111】
前記黒変防止物は、前記アルミニウム材の表面上に、前記黒変防止処理剤を付着させ、乾燥処理等を行い、黒変防止処理剤を固着させることで形成できる。
例えば、ケイ素系化合物(A)を含有する黒変防止処理剤を用いた場合には、表面処理アルミニウム材は、黒変防止物として、ケイ素系化合物(A)の反応物、又は未反応のケイ素系化合物(A)を有する可能性がある。
チタネート系カップリング剤(B)及びアルミネート系カップリング剤(C)についても同様であり、チタネート系カップリング剤(B)を含有する黒変防止処理剤を用いた場合には、表面処理アルミニウム材は、黒変防止物として、チタネート系カップリング剤(B)の反応物、又は未反応のチタネート系カップリング剤(B)を有する可能性があり、アルミネート系カップリング剤(C)を含有する黒変防止処理剤を用いた場合には、表面処理アルミニウム材は、黒変防止物として、アルミネート系カップリング剤(C)の反応物、又は未反応のアルミネート系カップリング剤(C)を有する可能性がある。
【0112】
前記表面処理アルミニウム材におけるアルミニウム材は、アルミニウムからなるか、又はアルミニウムを主たる構成材料とする。
アルミニウム材における、アルミニウム材の総質量に対する、アルミニウムの含有量の割合は、80質量%以上であることが好ましく、例えば、90質量%以上、95質量%以上、97質量%以上、及び99質量%以上のいずれかであってもよい。一方、前記割合は、100質量%以下である。
【0113】
アルミニウム材の形状は、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。
アルミニウム材としては、形状の点で分類すると、例えば、アルミ缶、アルミカップ、アルミ蓋、アルミキャップ等の各種アルミニウム成形体が挙げられる。
【0114】
アルミニウム材の厚さは、0.1~1mmであることが好ましく、0.15~0.8mmであることがより好ましく、0.2~0.7mmであることが特に好ましい。このような厚さのアルミニウム材は、汎用性が高い点で好ましい。
【0115】
前記表面処理アルミニウム材中の、黒変防止処理剤による処理領域において、黒変防止物の量は、5~500μg/m2であることが好ましく、8~300μg/m2であることがより好ましく、10~200μg/m2であることがさらに好ましい。前記黒変防止物の量が前記下限値以上であることで、アルミニウム材の黒変防止効果と白化防止効果が、より高くなる。前記黒変防止物の量が前記上限値以下であることで、黒変防止処理剤の過剰使用が抑制される。
表面処理アルミニウム材中の黒変防止物の量は、例えば、蛍光X線分析法等の公知の方法を利用することで測定できる。
【0116】
図1は、本実施形態の表面処理アルミニウム材の一例を模式的に示す拡大断面図である。
なお、以降の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0117】
ここに示す表面処理アルミニウム材1は、アルミニウム材11を備え、アルミニウム材11の表面上に、黒変防止物からなる黒変防止層13を有している。黒変防止層13(黒変防止物)は、前記黒変防止処理剤中のケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上から形成されている。
【0118】
アルミニウム材11は、全体がプレート状であるか、又は一部がプレート状であり、そのプレート状部位の一方の面(表面)11a上に、黒変防止層13を備えている。より具体的には、アルミニウム材11の前記一方の面(表面)11aの一部の領域上には、さらに、ジルコニウム系皮膜12が設けられている。そして、表面処理アルミニウム材1は、アルミニウム材11の前記一方の面11aのうち、ジルコニウム系皮膜12が設けられている領域では、ジルコニウム系皮膜12のアルミニウム材11側とは反対側の面12a上に、黒変防止層13を備えており、ジルコニウム系皮膜12が設けられていない領域では、アルミニウム材11の前記一方の面11a上に直接、黒変防止層13を備えている。
一方、アルミニウム材11の他方の面(表面)11bは、前記一方の面11aとは反対側の面である。
アルミニウム材11の前記一方の面11a及び他方の面11bは、それぞれ、平面であってもよいし、曲面であってもよいし、凹凸面であってもよく、その形状は特に限定されない。
【0119】
ここでは、黒変防止層13が形成されている場合を示しているが、黒変防止物はこのような明確な層を形成しないこともある。そして、黒変防止物は、このような層の形成の有無によらず、ジルコニウム系皮膜12の前記面12a上に存在することもあるし、ジルコニウム系皮膜12中(孔の内部)に存在することもある。
【0120】
アルミニウム材11の前記一方の面11aと、ジルコニウム系皮膜12の前記面12aは、黒変の防止対象であり、黒変防止層13(黒変防止物)によって、その黒変が防止される。
アルミニウム材11の前記一方の面11aのうち、ジルコニウム系皮膜12が設けられていない領域は、白化の防止対象でもあり、黒変防止層13(黒変防止物)によって、その白化が防止される。ジルコニウム系皮膜12に、その厚さが薄い部位が存在する場合、前記一方の面11aのうち、この部位に対応する領域も、白化の防止対象であり、黒変防止層13(黒変防止物)によって、その白化が防止される。
一方、アルミニウム材11の前記他方の面11bは、黒変と白化の防止対象ではなく、黒変防止層13を備えていない(黒変防止物を有していない)。
【0121】
例えば、アルミニウム材11がアルミ缶である場合には、アルミニウム材11の一方の面11aは、底面と、側面と、内表面(内容物を充填する側の面)と、のいずれであってもよく、底面であることが好ましい。
【0122】
本明細書においては、特に断りのない限り、アルミ缶の底面とアルミ缶の側面は、いずれも、アルミ缶の外側の面であり、換言するとそれぞれ、アルミ缶の外底面、アルミ缶の外側面であるといえる。そして、アルミ缶の内表面は、アルミ缶の内容物を充填する側の面全般を意味し、アルミ缶の内側の底面(換言すると内底面)とアルミ缶の内側の側面(換言すると内側面)は、いずれもアルミ缶の内表面である。
【0123】
図2は、本実施形態の表面処理アルミニウム材の他の例を模式的に示す拡大断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0124】
ここに示す表面処理アルミニウム材2は、アルミニウム材11を備え、アルミニウム材11の一方の面11a上に第1黒変防止層131を有し、アルミニウム材11の他方の面11b上に第2黒変防止層132を有している。
アルミニウム材11は、そのプレート状部位の一方の面(表面)11a上に第1黒変防止層131を備え、そのプレート状部位の他方の面(表面)11b上に第2黒変防止層132を備えている。より具体的には、アルミニウム材11の前記一方の面(表面)11a上には、
図1に示す表面処理アルミニウム材1に設けられたジルコニウム系皮膜12と同様に、さらに、第1ジルコニウム系皮膜121が設けられ、アルミニウム材11の前記他方の面(表面)11b上には、さらに、第2ジルコニウム系皮膜122が設けられている。そして、表面処理アルミニウム材2は、アルミニウム材11の前記一方の面11aのうち、第1ジルコニウム系皮膜121が設けられている領域では、第1ジルコニウム系皮膜121のアルミニウム材11側とは反対側の面121a上に、第1黒変防止層131を備えており、第1ジルコニウム系皮膜121が設けられていない領域では、アルミニウム材11の前記一方の面11a上に直接、第1黒変防止層131を備えている。
アルミニウム材11の前記他方の面(表面)11b上には、第2ジルコニウム系皮膜122が設けられていない領域があってもよく、その場合、第2ジルコニウム系皮膜122が設けられていない領域では、アルミニウム材11の前記他方の面11b上に直接、第2黒変防止層132を備えていてもよい。
【0125】
第1ジルコニウム系皮膜121は、
図1に示すジルコニウム系皮膜12と同じである。
第2ジルコニウム系皮膜122は、アルミニウム材11において設けられている箇所が異なり、その形状及び厚さが異なり得る点を除けば、第1ジルコニウム系皮膜121と同じものである。
表面処理アルミニウム材2において、第1ジルコニウム系皮膜121及び第2ジルコニウム系皮膜122は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0126】
第1黒変防止層131は、
図2に示す黒変防止層13と同じである。
第2黒変防止層132は、アルミニウム材11上において設けられている箇所が異なり、その形状及び厚さが異なり得る点を除けば、第1黒変防止層131と同じものである。
表面処理アルミニウム材2において、第1黒変防止層131及び第2黒変防止層132は、互いに同一であってもよいし、互いに異なっていてもよい。
【0127】
アルミニウム材11の前記一方の面11aと、第1ジルコニウム系皮膜121の前記面121aは、黒変の防止対象であり、第1黒変防止層131(黒変防止物)によって、その黒変が防止される。
アルミニウム材11の前記一方の面11aのうち、第1ジルコニウム系皮膜121が設けられていない領域は、白化の防止対象でもあり、第1黒変防止層131(黒変防止物)によって、その白化が防止される。第1ジルコニウム系皮膜121に、その厚さが薄い部位が存在する場合、前記一方の面11aのうち、この部位に対応する領域も、白化の防止対象であり、第1黒変防止層131(黒変防止物)によって、その白化が防止される。
【0128】
アルミニウム材11の前記他方の面11bと、第2ジルコニウム系皮膜122のアルミニウム材11側とは反対側の面122aは、黒変の防止対象であり、第2黒変防止層132(黒変防止物)によって、その黒変が防止される。
アルミニウム材11の他方の面11bのうち、第2ジルコニウム系皮膜122が設けられていない領域は、白化の防止対象でもあり、第2黒変防止層132(黒変防止物)によって、その白化が防止される。第2ジルコニウム系皮膜122に、その厚さが薄い部位が存在する場合、前記他方の面11bのうち、この部位に対応する領域も、白化の防止対象であり、第2黒変防止層132(黒変防止物)によって、その白化が防止される。
【0129】
表面処理アルミニウム材2は、アルミニウム材11の他方の面11bに第2ジルコニウム系皮膜122及び第2黒変防止層132を備えている点を除けば、
図1に示す表面処理アルミニウム材1と同じである。
【0130】
本実施形態の表面処理アルミニウム材は、
図1~
図2に示すものに限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、
図1~
図2に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
例えば、
図1~
図2に示すアルミニウム材は、全体がプレート状であるか、又は一部がプレート状であるが、アルミニウム材の形状はこれに限定されず、例えば、全体又は一部がプレート状以外の形状であってもよいし、全体又は一部が、プレート状とプレート状以外の形状を共に有していてもよい。
【0131】
<<表面処理アルミニウム材の製造方法>>
本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材の製造方法において、前記表面処理アルミニウム材は、アルミニウム材を備え、前記アルミニウム材の表面上に黒変防止物を有し、前記製造方法は、前記アルミニウム材の表面に、上述の本発明の一実施形態に係る黒変防止処理剤を付着させ、前記黒変防止処理剤中の前記ケイ素系化合物(A)と、前記チタネート系カップリング剤(B)と、前記アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上から、前記黒変防止物を形成する工程(I)を有する。
【0132】
図3は、本実施形態の表面処理アルミニウム材の製造方法の一例を模式的に示す拡大断面図である。ここでは、表面処理アルミニウム材が
図1に示す表面処理アルミニウム材1である場合を例に挙げて、その製造方法について説明する。
【0133】
<工程(I)>
前記製造方法の工程(I)においては、
図3(a)に示すように、アルミニウム材11として、その一方の面(表面)11aの一部の領域上に、ジルコニウム系皮膜12が設けられたものを用いる。そして、
図3(b)に示すように、アルミニウム材11の前記一方の面11aに、黒変防止処理剤130を付着させる。より具体的には、アルミニウム材11の前記一方の面11aのうち、ジルコニウム系皮膜12が設けられている領域上と、ジルコニウム系皮膜12が設けられていない領域上に、ともに黒変防止処理剤130を付着させる。
【0134】
黒変防止処理剤130は、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上を含有する。
【0135】
アルミニウム材11において、ジルコニウム系皮膜12は、公知の方法で設けることができる。例えば、アルミニウム材11の表面のうち、目的とする領域に、リン酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム及びフッ酸等を主成分とするノンクロメート化成処理剤を接触させ、乾燥させることにより、ジルコニウム系皮膜12を形成できる。
【0136】
アルミニウム材11の一方の面11aに、黒変防止処理剤130を付着させる方法は、公知の方法でよく、黒変防止処理剤130又はアルミニウム材11の種類に応じて適宜選択できる。例えば、黒変防止処理剤130をアルミニウム材11に噴霧(スプレー)する方法、各種コーターを用いて黒変防止処理剤130をアルミニウム材11に塗工する方法、又は黒変防止処理剤130中にアルミニウム材11を浸漬する方法等によって、アルミニウム材11の一方の面11aに、黒変防止処理剤130を付着させることができる。
【0137】
これらの中でも、黒変防止処理剤130をアルミニウム材11に付着させる方法は、黒変防止処理剤130をアルミニウム材11に噴霧する方法であることが好ましい。黒変防止処理剤130をアルミニウム材11に噴霧することによって、アルミニウム材11の目的とする箇所に、緻密で均一に黒変防止処理剤130を付着させることができる。この場合、黒変防止処理剤130は、例えば、スプレー式ウォッシャーを用いて、アルミニウム材11に噴霧してもよい。
【0138】
黒変防止処理剤130をアルミニウム材11に噴霧(スプレー)する方法は、アルミニウム材11がアルミ缶である場合に、より好ましい方法である。黒変防止処理剤130をアルミ缶に噴霧することによって、アルミ缶の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、緻密で均一に黒変防止処理剤130を付着させることができる。そして、この場合も黒変防止処理剤130は、スプレー式ウォッシャーを用いて、アルミ缶に噴霧できる。すなわち、アルミニウム材11がアルミ缶である場合には、工程(I)において、スプレー式ウォッシャーを用いて、アルミ缶の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、黒変防止処理剤130を噴霧し、付着させることが好ましい。
【0139】
黒変防止処理剤130をアルミニウム材11に噴霧する場合には、黒変防止処理剤130の噴霧量は、例えば、1m2あたり、50~300mL/分であることが好ましく、100~200mL/分であることがより好ましい。
【0140】
黒変防止処理剤130をアルミニウム材11に噴霧する場合には、黒変防止処理剤130の噴霧時間は、例えば、1~10秒であることが好ましく、2~7秒であることがより好ましい。このような噴霧時間は、黒変防止処理剤130の噴霧量が上述の数値範囲である場合に、特に好ましい。さらに、このような噴霧時間は、黒変防止処理剤130のケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、の合計濃度が、上述の数値範囲(例えば、0.1~3質量%)である場合に、特に好ましい。
【0141】
スプレー式ウォッシャーを用いて、黒変防止処理剤130をアルミニウム材11に噴霧し、付着させた場合には、アルミニウム材11に付着しなかった黒変防止処理剤130は、回収することができる。回収した黒変防止処理剤130は、再度、アルミニウム材11に噴霧してもよい。
【0142】
アルミニウム材11がアルミ缶である場合には、工程(I)においては、スプレー式ウォッシャーを用いて、アルミニウム材11(前記アルミ缶)の底面、側面及び内表面のいずれか一又は二以上に、黒変防止処理剤130を噴霧し、付着させるとともに、アルミニウム材11(前記アルミ缶)に付着しなかった黒変防止処理剤130を回収することが好ましい。これにより、アルミ缶に緻密で均一に黒変防止処理剤130を付着させることができるだけでなく、さらに、余剰の黒変防止処理剤130を回収できる。
【0143】
ここでは、黒変防止処理剤130を付着させ、黒変防止処理剤130の明確な層を形成した場合について示しているが、付着させた黒変防止処理剤130は、このような明確な層を形成しないこともある。そして、黒変防止処理剤130は、その層の形成の有無によらず、ジルコニウム系皮膜12のアルミニウム材11側とは反対側の面12a上に存在することもあるし、ジルコニウム系皮膜12中(孔の内部)に存在することもある。
【0144】
ジルコニウム系皮膜12は、アルミニウム材11の表面(ここでは、前記一方の面11a)を化成処理することにより、形成される。化成処理後のアルミニウム材11は、通常、水洗され、乾燥される。工程(I)において、アルミニウム材11の一方の面11aに黒変防止処理剤130を付着させる操作は、上記の水洗及び乾燥を行った後に行ってもよいし、上記の水洗後、空気等のガスの吹き付けによって水等を飛ばし、次いで、上記の乾燥を行う前に、行ってもよい。
【0145】
工程(I)においては、次いで、
図3(c)に示すように、黒変防止処理剤130中のケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上から、黒変防止物を形成する。ここでは、黒変防止物からなる黒変防止層13を形成する場合について示している。
これにより、目的とする表面処理アルミニウム材1が得られる。
【0146】
黒変防止物は、黒変防止処理剤130に対して、乾燥処理等を行い、黒変防止処理剤130を固着させることで、形成できる。黒変防止処理剤130を固着させることによって、ケイ素系化合物(A)と、チタネート系カップリング剤(B)と、アルミネート系カップリング剤(C)と、からなる群より選択される1種又は2種以上の反応物、又は未反応のこれら成分によって、黒変防止物が形成される。
【0147】
黒変防止処理剤130の乾燥処理は、公知の方法で行うことができる。例えば、前記乾燥処理は、常圧下、減圧下及び送風条件下のいずれで行ってもよく、大気下及び不活性ガス雰囲気下のいずれで行ってもよく、常温乾燥及び加熱乾燥のいずれで行ってもよい。
前記常温乾燥は、自然乾燥であってもよい。
前記加熱乾燥は、オーブンを用いて行ってもよい。
黒変防止処理剤130の乾燥処理は、例えば、それのみを目的として行ってもよいし、他の工程でアルミニウム材11等を加熱したときの、この加熱時の余熱を利用して行ってもよい。
【0148】
黒変防止処理剤130の乾燥処理時の温度(乾燥温度)は、18~190℃であることが好ましく、例えば、40~190℃、60~190℃、100~190℃、及び140~190℃のいずれかであってもよいし、18~160℃、18~130℃、18~90℃、及び18~60℃のいずれかであってもよいし、40~160℃、60~130℃、及び60~90のいずれかであってもよい。乾燥温度が前記下限値以上であることで、黒変防止物の量がより多くなる。乾燥温度が前記上限値以下であることで、黒変防止物の劣化を抑制する効果が高くなる。
【0149】
黒変防止処理剤130の乾燥処理の時間(乾燥時間)は、乾燥温度に応じて適宜調節すればよい。
乾燥時間は、3~60分であることが好ましく、4~40分であることがより好ましく、5~20分であることが特に好ましい。乾燥時間が前記下限値以上であることで、黒変防止物の量がより多くなる。乾燥時間が前記上限値以下であることで、工程(I)に要する時間を短縮できる。このような乾燥時間は、黒変防止処理剤130の乾燥温度が、上述の数値範囲である場合に、特に好ましい。
【0150】
黒変防止処理剤130は、アルミニウム材の濡れ性を向上させることができる場合もあり、その場合には、工程(I)においては、アルミニウム材11の一方の面11aに、黒変防止処理剤130をより均一に付着させることができる。
【0151】
アルミ缶の底面、側面及び内表面のいずれか二以上に、黒変防止処理剤130を噴霧する場合に限らず、アルミニウム材11のいずれか二以上の表面に黒変防止処理剤130を付着させる場合には、対象となる二以上の表面の一部又は全てに、同時に黒変防止処理剤130を付着させてもよいし、対象となる二以上の表面の全てに、同時ではなく段階的に、黒変防止処理剤130を付着させてもよい。
例えば、アルミニウム材11がアルミ缶である場合には、アルミ缶の底面、側面及び内表面の全てに同時に、黒変防止処理剤130を付着させても(噴霧しても)よいし、底面、側面及び内表面のいずれか二のみに同時に、黒変防止処理剤130を付着させても(噴霧しても)よいし、底面、側面及び内表面に段階的に、黒変防止処理剤130を付着させてもよい。
アルミニウム材11のいずれか二以上の表面に段階的に、黒変防止処理剤130を付着させる場合には、黒変防止処理剤130を付着させる表面の順番は、特に限定されない。
【0152】
表面処理アルミニウム材1においては、黒変防止処理剤130を用いていることで、黒変と白化が防止される。
さらに、黒変防止処理剤130のアルミニウム材11の濡れ性が向上している場合には、表面処理アルミニウム材1において、黒変防止効果と白化防止効果がより高くなる。
【0153】
表面処理アルミニウム材1の製造方法は、必要に応じて、前記工程(I)以外に、この工程(I)とは異なる他の工程を有していてもよい。前記他の工程の種類は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されず、目的に応じて任意に選択できる。前記他の工程を行うタイミングも、前記他の工程の種類に応じて、適宜選択できる。
【0154】
ここまでは、表面処理アルミニウム材として、
図1に示す表面処理アルミニウム材1を例に挙げて、その製造方法について説明したが、表面処理アルミニウム材1以外の表面処理アルミニウム材も、上記と同様の方法で製造できる。このとき、該当する表面処理アルミニウム材の製造方法は、その表面処理アルミニウム材と、
図1に示す表面処理アルミニウム材1と、の相違点に基づいて、適切なタイミングで、適切な前記他の工程を有していてもよい。
【0155】
例えば、
図2に示す表面処理アルミニウム材2を製造する場合には、アルミニウム材11として、その一方の面(表面)11aの一部の領域上に、第1ジルコニウム系皮膜121が設けられ、さらに、その他方の面(表面)11b上に、第2ジルコニウム系皮膜122が設けられたものを用いる。そして、アルミニウム材11の一方の面11a上に黒変防止処理剤130を付着させ、他方の面11b上に黒変防止処理剤130を付着させ、第1黒変防止層131及び第2黒変防止層132を形成する。
このとき、アルミニウム材11の一方の面11aと他方の面11bに同時に、黒変防止処理剤130を付着させてもよいし、アルミニウム材11の一方の面11aと他方の面11bに段階的に、黒変防止処理剤130を付着させてもよい。そして、第1黒変防止層131及び第2黒変防止層132は、同時に形成することが好ましい。
【実施例0156】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0157】
各実施例及び比較例で用いた原料を以下に示す。
[ケイ素系化合物(A)]
(A101)-1:3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(信越シリコーン社製「KBE-402」)
(A101)-2:3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製「KBE-403」)
(A102)-1:3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン(信越シリコーン社製「KBE-503」)
(A103)-1:N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM-603」)
(A103)-2:3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM-903」)
(A104)-1:N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製「KBM-573」)
(A105)-1:3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物(信越シリコーン社製「X-12-967C」)
(A201)-1:トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート(信越シリコーン社製「KBM-9659」)
(A106)-1:イソブチルトリメトキシシラン(EVONIK社製「Dynasylan(登録商標) OCTEO」)
(A106)-2:オクチルトリエトキシシラン(EVONIK社製「Dynasylan(登録商標) IBTMO」)
【0158】
[実施例1]
<<黒変防止処理剤の製造>>
常温下で、5分かけて、ケイ素系化合物(A101)-1を水に溶解させることで、黒変防止処理剤として、濃度が0.2質量%のケイ素系化合物(A101)-1の水溶液を得た。
【0159】
<<表面処理アルミニウム材の製造>>
アルミ缶(外径66mm、高さ123mm)として、その底面にジルコニウム系皮膜(厚さ10nm)を備えたものを用意した。
波長分散型蛍光X線分光分析装置(Rigaku社製「ZSX Primus II」)を用いて、このアルミ缶の底面を分析したところ、ジルコニウムの量は9.66mg/m2であった。別途、このアルミ缶を85℃で30分熱水処理(パストライズ処理に相当)した後、同じ条件でその底面を分析したところ、ジルコニウムの量は9.57mg/m2であった。さらに別途、このアルミ缶をレトルト処理用の釜に入れて、120℃で30分高温加圧処理(レトルト処理に相当)した後、同じ条件でその底面を分析したところ、ジルコニウムの量は9.60mg/m2であった。すなわち、このアルミ缶を高温で加熱処理しても、底面のジルコニウムの量はほぼ変化しないことを確認した。
【0160】
スプレー式ウォッシャーを用いて、上記で得られた黒変防止処理剤を、上記の加熱処理(熱水処理及び高温加圧処理)を行っていないアルミ缶の底面に噴霧することにより、アルミ缶の底面上のジルコニウム系皮膜に黒変防止処理剤を付着させるとともに、ジルコニウム系皮膜に付着しなかった黒変防止処理剤を回収した。このとき、黒変防止処理剤の噴霧量を、1m2あたり150mL/分とし、黒変防止処理剤の噴霧時間を5秒とした。
次いで、アルミ缶の底面上の黒変防止処理剤を180℃で10分乾燥させ、黒変防止物を形成した(工程(I))。
以上により、目的とする表面処理アルミニウム材(以下、「底面処理アルミ缶」と称することがある)を得た。
得られた表面処理アルミニウム材(底面処理アルミ缶)中の、黒変防止処理剤による処理領域において、黒変防止物の量は、20μg/m2であった。
【0161】
<<黒変防止処理剤の評価>>
<表面処理アルミニウム材での黒変防止効果の評価>
上記で得られた底面処理アルミ缶(底面を表面処理済みのアルミ缶)を、さらに85℃で30分熱水処理した。次いで、この熱水処理後のアルミ缶の、表面処理済みの底面を目視観察し、下記基準に従って、黒変防止処理剤による底面処理アルミ缶での黒変防止効果を評価した。結果を表1中の「黒変防止効果」の欄に示す。
(評価基準)
A:アルミ缶の表面処理済みの底面は、全く黒変しておらず、さらに、黒変及び白化のいずれにも該当しない変色も認められず、黒変防止効果が特に高かった。
B:アルミ缶の表面処理済みの底面は、全く黒変しておらず、黒変及び白化のいずれにも該当しない変色が軽度に認められたが、黒変防止効果が高かった。
C:アルミ缶の表面処理済みの底面は、一部で軽度に黒変していたが、黒変防止効果が認められた。
D:アルミ缶の表面処理済みの底面は、顕著に黒変しており、黒変防止効果が認められなかった。
【0162】
<表面処理アルミニウム材での白化防止効果の評価>
別途、上記で得られた底面処理アルミ缶(底面を表面処理済みのアルミ缶)をレトルト処理用の釜に入れて、さらに120℃で30分高温加圧処理した。次いで、この高温加圧処理後のアルミ缶の、表面処理済みの底面を目視観察し、下記基準に従って、黒変防止処理剤による底面処理アルミ缶での白化防止効果を評価した。結果を表1中の「白化防止効果」の欄に示す。
(評価基準)
A:アルミ缶の表面処理済みの底面は、全く白化しておらず、さらに、黒変及び白化のいずれにも該当しない変色も認められず、白化防止効果が特に高かった。
B:アルミ缶の表面処理済みの底面は、全く白化しておらず、黒変及び白化のいずれにも該当しない変色が軽度に認められたが、白化防止効果が高かった。
C:アルミ缶の表面処理済みの底面は、一部で軽度に白化していたが、白化防止効果が認められた。
D:アルミ缶の表面処理済みの底面は、顕著に白化しており、白化防止効果が認められなかった。
【0163】
<<黒変防止処理剤の製造、表面処理アルミニウム材の製造、及び黒変防止処理剤の評価>>
[実施例2~10]
ケイ素系化合物(A101)-1に代えて、表1に示すケイ素系化合物(A)を用い、黒変防止処理剤として、濃度が0.2質量%のこれらケイ素系化合物(A)の水溶液を製造した。そして、得られた黒変防止処理剤を用いた点以外は、実施例1の場合と同じ方法で、底面処理アルミ缶を製造し、黒変防止処理剤を評価した。結果を表1に示す。
なお、得られた底面処理アルミ缶中の、黒変防止処理剤による処理領域において、黒変防止物の量は、実施例2~10のいずれにおいても、実施例1の場合と同様に、20μg/m2であった。
【0164】
<<アルミニウム材の評価>>
[比較例1]
実施例1で用いたものと同じアルミ缶を黒変防止処理剤で処理することなく、そのまま、実施例1と同じ評価に供した。結果を表1に示す。
【0165】
【0166】
上記結果から明らかなように、実施例1~10においては、アルミ缶の表面処理済みの底面において、黒変が防止されていた。実施例1~10においては、黒変防止処理剤がケイ素系化合物(A)を含有していた。
【0167】
さらに、実施例1~7、9、10においては、アルミ缶の表面処理済みの底面において、白化も防止されており、黒変防止効果と合わせて、変色防止効果が高かった。
実施例1~7においては、ケイ素系化合物(A)中の反応性官能基が、グリシジル基、メタクリロイル基、アミノ基、モノアリールアミノ基又は酸基(カルボキシ基)が無水物化された基であり、実施例9、10においては、ケイ素系化合物(A)中の親油性基が、炭素数4又は8のアルキル基であった。
【0168】
なかでも、実施例1~2においては、黒変防止効果と白化防止効果の両方に優れており、実施例1において特に優れていた。
実施例1~2においては、ケイ素系化合物(A)中の反応性官能基がグリシジル基であり、実施例1においては、ケイ素系化合物(A)中のアルコキシシリル基が、ジアルコキシモノアルキルシリル基(ジエトキシモノメチルシリル基)であった。
【0169】
実施例1~10において、アルミ缶の表面処理済みの底面での黒変防止効果及び白化防止効果の評価前と、黒変防止効果の評価後と、白化防止効果の評価後と、の各段階で、波長分散型蛍光X線分光分析装置(Rigaku社製「ZSX Primus II」)を用いて、このアルミ缶の表面処理済みの底面を分析したところ、これら3段階のいずれにおいても、同程度のシグナル強度でケイ素原子が観測された。すなわち、このアルミ缶を高温で加熱処理しても、表面処理済みの底面では、黒変防止物が安定して保持されていることが示唆された。
【0170】
これに対して、比較例1においては、アルミ缶の底面を表面処理しておらず、黒変防止効果と白化防止効果が共に認められなかった。
1,2・・・表面処理アルミニウム材、11・・・アルミニウム材、11a・・・アルミニウム材の一方の面(表面)、11b・・・アルミニウム材の他方の面(表面)、12・・・ジルコニウム系皮膜、121・・・第1ジルコニウム系皮膜、122・・・第2ジルコニウム系皮膜、13・・・黒変防止層、131・・・第1黒変防止層、132・・・第2黒変防止層、130・・・黒変防止処理剤