(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053361
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】エンジン駆動型発電機の運転制御方法及びエンジン駆動型発電機
(51)【国際特許分類】
H02P 9/04 20060101AFI20240408BHJP
F02D 29/06 20060101ALN20240408BHJP
H02P 101/45 20150101ALN20240408BHJP
H02P 103/20 20150101ALN20240408BHJP
【FI】
H02P9/04 K
F02D29/06 A
H02P101:45
H02P103:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159582
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000241795
【氏名又は名称】北越工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002398
【氏名又は名称】弁理士法人小倉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】金子 雄一
【テーマコード(参考)】
3G093
5H590
【Fターム(参考)】
3G093AA16
3G093EB08
5H590AA01
5H590AA02
5H590CA07
5H590CA21
5H590CC01
5H590CD01
5H590CD03
5H590CE02
5H590DD77
5H590EA01
5H590EA08
5H590EB17
5H590FB02
5H590HA14
5H590HA15
5H590HA18
5H590JA02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータを備える電気機器(モータ機器)に対し給電を行うエンジン駆動型発電機の燃料消費量を低減する運転制御方法を提供する。
【解決手段】監視場所(水源)の状態(水位)を監視し,エンジン駆動型発電機1のエンジン10が停止した待機状態において所定の始動条件(水位が上限水位H以上となったこと)を満たしたとき,エンジン10を始動させると共にインバータ装置30に所定の低周波数(例えば0Hz)から徐々に周波数を所定の設定周波数(例えば60Hz)まで上昇させる出力を行わせると共に,所定の定常周波数(例えば60Hz)の出力を継続させる。その後,監視場所(水源)の状態(水位)が所定の停止条件(水位が下限水位L未満となったこと)を満たしたとき,インバータ装置30の出力を停止すると共にエンジン10を停止して待機状態に移行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと,該エンジンによって駆動される発電機本体と,前記発電機本体からの交流出力を所定の周波数に変換して出力するインバータ装置を備えたエンジン駆動型発電機の運転制御方法において,
監視場所の状態を変化させるモータ機器を前記エンジン駆動型発電機の給電対象とし,
前記監視場所の状態を監視して、
前記エンジンが停止した待機状態で前記監視場所の状態が所定の始動条件を満たしたとき,
前記エンジンを始動させると共に所定の回転速度で定格運転させるエンジン始動処理と,
前記インバータ装置に,所定の低周波数から徐々に周波数を所定の設定周波数まで上昇させる出力を行わせる始動出力処理を実行させ,
前記エンジンが定格運転している状態で前記監視場所の状態が所定の停止条件を満たしたとき,
前記インバータ装置の出力を停止させるインバータ装置停止処理を実行させると共に,該インバータ装置停止処理後に前記エンジンを停止させるエンジン停止処理を実行して前記待機状態に移行することを特徴とするエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項2】
前記設定周波数を変更可能としたことを特徴とする請求項1記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項3】
前記インバータ装置に,前記始動出力処理に続いて前記設定周波数と同一の周波数である定常周波数の出力を行わせる定常出力処理を実行させることを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項4】
前記インバータ装置に,前記始動出力処理に続いて所定の定常周波数の出力を行わせる定常出力処理を実行させると共に,
前記始動条件を満たした状態と前記停止条件を満たした状態の間における前記監視場所の中間の状態を監視し,
前記定常出力処理中に前記インバータ装置が出力する前記定常周波数を,前記中間の状態に応じて前記設定周波数以下の範囲で変化させることを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項5】
前記エンジン停止処理を,前記インバータ装置停止処理後,前記始動条件が満たされていないことを条件に実行すると共に,前記始動条件が満たされているときには前記エンジン停止処理を実行せずに前記エンジンの運転を継続すると共に,前記インバータ装置に,再度,前記始動出力処理を実行させることを特徴とする請求項1又は2記載のエンジン駆動型発電機の運転制御方法。
【請求項6】
エンジンと,該エンジンによって駆動される発電機本体と,前記発電機本体からの交流出力を所定の周波数に変換して出力するインバータ装置を備えたエンジン駆動型発電機において,
監視場所の状態を変化させるモータ機器が接続される三相出力端子台と,
前記監視場所の状態を監視する検出手段の検出信号を受信する検出信号入力部と,
前記検出信号入力部を介して入力された前記検出手段からの検出信号に基づいて前記エンジン及び前記インバータ装置の動作を制御するコントローラを備え,
前記コントローラは,
前記エンジンが停止した待機状態において前記検出手段からの検出信号を受信し前記監視場所の状態が所定の始動条件を満たしたと判定したとき,
前記エンジンを始動させると共に所定の回転速度で定格運転させるエンジン始動処理と,
前記インバータ装置に,所定の低周波数から徐々に周波数を所定の設定周波数まで上昇させる出力を行わせる始動出力処理を実行させ,
前記エンジンが定格運転している状態で前記検出手段からの検出信号を受信し前記監視場所の状態が所定の停止条件を満たしたと判定したとき,
前記インバータ装置の出力を停止させるインバータ装置停止処理を実行させると共に,該インバータ装置停止処理後,前記エンジンを停止させるエンジン停止処理を実行して前記待機状態に移行することを特徴とするエンジン駆動型発電機。
【請求項7】
前記設定周波数を変更可能とする周波数設定手段を有することを特徴とする請求項6記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項8】
前記コントローラが,前記インバータ装置に,前記始動出力処理に続いて前記設定周波数と同一の周波数である定常周波数の出力を行わせる定常出力処理を実行させることを特徴とする請求項6又は7記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項9】
前記コントローラが,前記インバータ装置に,前記始動出力処理に続いて所定の定常周波数の出力を行わせる定常出力処理を実行させると共に,
前記始動条件を満たした状態と前記停止条件を満たした状態の間における前記監視場所の中間の状態を監視する前記検出手段からの検出信号を受信し,前記中間の状態に応じて,前記定常出力処理中に前記インバータ装置が出力する前記定常周波数を,前記設定周波数以下の範囲で変化させることを特徴とする請求項6又は7記載のエンジン駆動型発電機。
【請求項10】
前記コントローラは,
前記エンジン停止処理を,前記インバータ装置停止処理後,前記始動条件が満たされていないことを条件に実行すると共に,前記始動条件が満たされているときには前記エンジン停止処理を実行せずに前記エンジンの運転を継続すると共に,前記インバータ装置に,再度,前記始動出力処理を実行させることを特徴とする請求項6又は7記載のエンジン駆動型発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエンジン駆動型発電機の運転制御方法及び該運転制御方法を実行するエンジン駆動型発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機本体と,発電機本体を駆動するエンジンを備えたエンジン駆動型発電機,特に発電機本体をエンジンと共に防音箱内に収容する等してパッケージ化して可搬性を持たせたエンジン駆動型発電機は,工事現場やイベント会場,災害の被災地等における電源として広く使用されている。
【0003】
このエンジン駆動型発電機で発生した電力の供給を受けて駆動される電気機器には,三相誘導電動機等のモータを備えた電気機器(以下,本明細書において,モータを備える電気機器を「モータ機器」という。)がある。
【0004】
このようなモータ機器の使用例として,水中ポンプによって工事現場等に生じた水源の水を排水する場合,水源に水が溜まるとエンジン駆動型発電機からの給電を開始して水中ポンプを始動させることにより排水を開始する一方,水源の水が所定の水位まで減少して排水の必要がなくなると,エンジン駆動型発電機から水中ポンプに対する給電を停止して水中ポンプを停止させることにより水中ポンプの空運転が防止される。
【0005】
このような水中ポンプなどのモータ機器に対する給電の開始や停止は,例えばエンジン駆動型発電機に設けた三相出力端子台に分電盤を接続すると共に,この分電盤に水中ポンプを接続し,該分電盤に設けた開閉器をオペレータが手動で開閉操作することにより行うこともできる。
【0006】
しかしながら,水源の水位を監視しながら水中ポンプの始動や停止をオペレータが手作業で行うことの煩雑さに鑑み,水中ポンプにフロートスイッチを設け,水源の水位の変化に応じてフロートスイッチがON,OFFすることにより水中ポンプを始動及び停止させることができるようにすることも行われている。
【0007】
しかしながら,上記いずれの方法により水中ポンプの始動と停止を行った場合であっても,これらはいずれも水中ポンプの動作を制御するものであって,エンジン駆動型発電機の動作に対する何らの制御を行うものではない。
【0008】
そのため,水中ポンプを停止して給電が不要となった状態となっても,エンジン駆動型発電機は定格回転速度での運転を継続するため,その間に消費される燃料の消費分,ランニングコストが高まることとなる。
【0009】
そこで,後掲の特許文献1の発明では,フロートスイッチのON,OFF信号を水中ポンプの始動と停止にのみ使用するのではなく,エンジン駆動型発電機の運転の制御にも使用して,水中ポンプの停止時には,エンジン駆動型発電機のエンジンをアイドリング運転とすることで,燃料消費量の低減を図ることが提案されている。
【0010】
具体的には,フロートスイッチの検出信号に基づいて水中ポンプを停止させるときには水中ポンプへの電力供給を遮断して水中ポンプを停止させると共にエンジンをアイドリング運転に切り換え,水中ポンプを始動させるときにはエンジンを定格回転速度の運転に切り換えると共に,エンジンの回転速度が定格回転速度に達した後に水中ポンプに対する給電を開始するものとしている(特許文献1参照)。
【0011】
なお,エンジン駆動型発電機には,インバータ装置を搭載することによって発電機本体が発生した交流をインバータ装置で一旦,直流に変換した後,所定周波数の交流に変換してモータ機器等の外部負荷に出力できるようにした,所謂「インバータ発電機」と呼ばれる発電機がある。
【0012】
そして,後掲の特許文献2には,このようなインバータ発電機として,出力開始時において所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するように設計されたインバータ装置を搭載したものが記載されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第5139236号公報
【特許文献2】特開2012-110098号(特許第5735780号)公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前掲の特許文献1に記載のエンジン駆動型発電機では,モータ機器(水中ポンプ)の停止時には発電機本体を駆動するエンジンをアイドリング運転とすることで,モータ機器の停止時にも定格回転速度でエンジンの運転を継続する場合に比較して燃料消費量や発生する騒音の低減が図れるものとなっている。
【0015】
しかしながら,定格回転速度での運転を継続する場合に比較して燃料消費量を低減することができるとはいえ,アイドリング運転への移行後も依然としてエンジンは燃料を消費し続ける一方,アイドリング運転中はモータ機器に対する給電は行われない。
【0016】
そのため,アイドリング運転中に消費される燃料は,モータ機器で消費される電力の生成には貢献しない無駄な燃料となっていることから,特許文献1のエンジン駆動型発電機は依然として燃費改善の余地がある。
【0017】
また,特許文献1のエンジン駆動型発電機では,エンジンが定格回転速度で運転されている状態,従って,発電機本体が定格周波数の三相交流を発生している状態でモータ機器に対する給電を開始するため,モータ機器は直入れ始動(全電圧始動)されることとなる。
【0018】
このような直入れ始動(全電圧始動)を行う場合,モータ機器の定格電流に対し3~6倍以上という大きな始動電流が発生することから,このような大きな始動電流に対応した出力を発生し得る大型の発電機本体と,これを駆動することができる大型のエンジンを搭載した,大型のエンジン駆動型発電機を使用する必要がある。
【0019】
その一方で,一旦モータ機器が始動して定格電流の印加によって駆動できるようになってしまえば,このような大型のエンジン駆動型発電機は給電対象とするモータ機器に対し過大なものであり,燃料消費量も大きくなる。
【0020】
そのため,同程度のモータ機器の始動を,より小型のエンジン駆動型発電機で行うことができるようにすることが要望される。
【0021】
更に,特許文献1のエンジン駆動型発電機では,モータ機器の作動中,エンジンの回転速度は定格回転速度で一定に維持され,従って,エンジンによって駆動される発電機本体は定格周波数の三相交流を出力するのみであり,このようなエンジン駆動型発電機からの給電によって駆動されるモータ機器の回転速度は常に一定(高速)であって減速させることができない。
【0022】
その結果,モータ機器が前述した水中ポンプである場合において,例えば水源の貯水容量が比較的少なく,かつ,水源に対する水の流入速度が緩やかである場合のように,水中ポンプを高速で運転すると比較的短時間で排水が完了してしまうような場合には,水中ポンプが頻繁に直入れによる始動と停止を繰り返すことで消費電力,従って,燃料消費量が増大し得る。
【0023】
このような場合には,水源に対する水の流入量に応じて水中ポンプの回転速度を低下させることにより水中ポンプを継続的に運転させた場合の方が,頻繁に始動と停止を繰り返す場合に比較して燃料消費量を低減できる場合もある。
【0024】
更に,モータ機器が前述した水中ポンプである場合,水源の水位変化等に応じて水中ポンプの回転速度を変化させることでより円滑な排水を行える場合もある。
【0025】
なお,前掲の特許文献2には,出力開始時において所定の低周波数から徐々に周波数を上昇させた後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するように設計されたインバータ装置を搭載したエンジン駆動型のインバータ発電機が記載されている。
【0026】
しかしながら,特許文献2には,モータ機器の始動と停止に伴い,エンジンの制御を如何に行うかについては一切,開示も示唆もされていない。
【0027】
また,特許文献2のインバータ発電機では,インバータ装置が出力開始時において所定の低周波数から徐々に周波数を上昇した後,設定周波数に至り該設定周波数の出力を維持するように設計されていることは開示されているが,その他の周波数制御について何ら開示も示唆もしていない。
【0028】
なお,上記の説明では,特許文献1に記載されている実施例に対応して,水源の水位を検出したフロートスイッチの検出信号に基づいて始動及び停止を行う水中ポンプを給電対象とした場合のエンジン駆動型発電機の運転制御方法の問題点について説明した。
【0029】
しかしながら,同様の問題は,例えば,室内の温度を管理するために,室内の温度を検出する温度センサの検出信号に基づいて始動及び停止を行う換気ファン(モータ機器)を給電対象とする場合や,消費側における圧縮空気の消費量に応じて圧縮空気の供給を行うために,消費側流路内の圧縮空気の圧力を検出する圧力センサの検出信号に基づいて始動及び停止を行うモータ駆動型のコンプレッサを給電対象とする場合等,その始動と停止を,検出手段が検出した監視場所の状態(例えば,水源の水位,室内の温度,消費側流路内の圧力等)に基づいて行うモータ機器(例えば,水中ポンプ,換気ファン,コンプレッサ等)に対する給電を行う場合全般に生じ得る。
【0030】
そこで本発明は,上記従来技術における欠点を解消するために成されたものであり,監視場所の状態に応じて始動及び停止を行うモータ機器に対して給電を行うエンジン駆動型発電機において,より一層の燃料消費量の低減を図ることができる運転制御方法,及び,該運転制御方法を実行するエンジン駆動型発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするために記載したものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0032】
上記目的を達成するために,本発明のエンジン駆動型発電機の運転制御方法は,
エンジン10と,該エンジン10によって駆動される発電機本体20と,前記発電機本体20からの交流出力を所定の周波数に変換して出力するインバータ装置30を備えたエンジン駆動型発電機1の運転制御方法において,
監視場所(例えば,水源)の状態(例えば,水位)を変化させるモータ機器60(例えば,水中ポンプ)を前記エンジン駆動型発電機1の給電対象とし,
前記監視場所(例えば,水源)の状態(例えば,水位)を監視して,
前記エンジン10が停止した待機状態で前記監視場所の状態(例えば,水位)が所定の始動条件(例えば,上限水位H以上)を満たしたとき,
前記エンジン10を始動させると共に所定の回転速度で定格運転させるエンジン始動処理と,
前記インバータ装置30に,所定の低周波数(例えば0Hz)から徐々に周波数を所定の設定周波数(例えば60Hz)まで上昇させる出力を行わせる始動出力処理を実行させ,
前記エンジン10が定格運転している状態で,前記監視場所(例えば,水源)の状態(例えば,水位)が所定の停止条件(例えば,下限水位L未満)を満たしたとき,
前記インバータ装置30の出力を停止させるインバータ装置停止処理を実行させると共に,該インバータ装置停止処理後に前記エンジン10を停止させるエンジン停止処理を実行して前記待機状態に移行することを特徴とする(請求項1)。
【0033】
上記構成のエンジン駆動型発電機1の運転制御方法において,前記設定周波数を変更可能(例えば,30Hz~60Hzの範囲で変更可能)とすることができる(請求項2)。
【0034】
前記インバータ装置30に,前記始動出力処理に続いて前述の設定周波数と同一の周波数である定常周波数の出力を行わせる定時出力処理を実行させることができる(請求項3)。
【0035】
又は,前記インバータ装置30に,前記始動出力処理に続いて所定の定常周波数の出力を行わせる定常出力処理を実行させると共に,
前記始動条件を満たした状態(例えば,上限水位H以上の状態)と前記停止条件を満たした状態(例えば,下限水位L未満の状態)の間における前記監視場所(例えば,水源)の中間の状態を監視し,
前記定常出力処理中に前記インバータ装置が出力する前記定常周波数を,前記中間の状態に応じて前記設定周波数以下の範囲で変化させるようにしても良い(請求項4)。
【0036】
また,前述したエンジン停止処理は,前記インバータ装置停止処理後,前記始動条件(例えば,上限水位H以上)が満たされていないことを条件に実行すると共に,前記始動条件が満たされているときには前記エンジン停止処理を実行せずに前記エンジン10の運転を継続すると共に,前記インバータ装置30に,再度,前記始動出力処理を実行させるようにしても良い(請求項5)。
【0037】
また,本発明のエンジン駆動型発電機1は,
エンジン10と,該エンジン10によって駆動される発電機本体20と,前記発電機本体20からの交流出力を所定の周波数に変換して出力するインバータ装置30を備えたエンジン駆動型発電機1において,
監視場所(例えば,水源)の状態(例えば,水位)を変化させるモータ機器(例えば,水中ポンプ)60が接続される三相出力端子台40と,
前記監視場所(例えば,水源)の状態(例えば,水位)を監視する検出手段(例えば,フロートスイッチ)70の検出信号を受信する検出信号入力部45と,
前記検出信号入力部45を介して入力された前記検出手段70からの検出信号に基づいて前記エンジン10及び前記インバータ装置30の動作を制御するコントローラ50を備え,
前記コントローラ50は,
前記エンジン10が停止した待機状態において前記検出手段70からの検出信号を受信し前記監視場所(例えば,水源)の状態(例えば,水位)が所定の始動条件(例えば,上限水位H以上)を満たしたと判定したとき,
前記エンジン10を始動させると共に所定の回転速度で定格運転させるエンジン始動処理と,
前記インバータ装置30に,所定の低周波数(例えば0Hz)から徐々に周波数を所定の設定周波数(例えば60Hz)まで上昇させる出力を行わせる始動出力処理を実行させ,
前記エンジン10が定格運転している状態で前記検出手段70からの検出信号を受信し前記監視場所(例えば,水源)の状態(例えば,水位)が所定の停止条件(例えば,下限水位L未満)を満たしたと判定したとき,
前記インバータ装置30の出力を停止させるインバータ装置停止処理を実行させると共に,該インバータ装置停止処理後,前記エンジン10を停止させるエンジン停止処理を実行して前記待機状態に移行することを特徴とする(請求項6)。
【0038】
上記構成のエンジン駆動型発電機1において,前記設定周波数を変更可能(例えば,30Hz~60Hzの範囲で変更可能)とする周波数設定手段(例えば,ダイヤルスイッチ)34を設けるものとしても良い(請求項7)。
【0039】
前記コントローラ50は,前記インバータ装置30に,前記始動出力処理に続いて前記設定周波数と同一の周波数である定常周波数の出力を行わせる定常出力処理を実行させるように構成されていても良い(請求項8)。
【0040】
又は,
前記コントローラ50が,前記インバータ装置30に,前記始動出力処理に続いて所定の定常周波数の出力を行わせる定常出力処理を実行させると共に,
前記始動条件(例えば,上限水位H以上)を満たした状態と前記停止条件(例えば,下限水位L未満)を満たした状態の間における前記監視場所の中間の状態を監視する前記検出手段70からの検出信号を受信し,前記中間の状態に応じて,前記定常出力処理中に前記インバータ装置30が出力する前記定常周波数を,前記設定周波数以下の範囲で変化させるようにしても良い(請求項9)。
【0041】
更に,前記コントローラ50は,
前記エンジン停止処理を,前記インバータ装置停止処理後,前記始動条件(例えば,上限水位H以上)が満たされていないことを条件に実行すると共に,前記始動条件が満たされているときには前記エンジン停止処理を実行せずに前記エンジン10の運転を継続すると共に,前記インバータ装置30に,再度,前記始動出力処理を実行させるようにしても良い(請求項10)。
【発明の効果】
【0042】
以上で説明した本発明の運転制御方法でエンジン駆動型発電機1の運転を制御することで,以下の顕著な効果を得ることができた。
【0043】
インバータ装置30の出力が停止した状態,従って,モータ機器60に対する給電が行われていない状態では,エンジン10も停止するようにしたことで,モータ機器60に対する給電の停止中にもエンジン10を停止させることなくアイドリング運転させる前掲の特許文献1に記載の運転制御方法に比較して,エンジン駆動型発電機1の燃料消費量を更に低減することができると共に,エンジン駆動型発電機1で発生する騒音を減少させることができた。
【0044】
また,モータ機器60に対する給電を開始する毎に,インバータ装置30に,所定の低周波数から徐々に周波数を所定の設定周波数まで上昇させるように出力を開始させる始動出力処理を実行させるようにしたことで,モータ機器60の始動を,常に始動電流の上昇を抑制した状態で行うことができた。
【0045】
その結果,モータ機器(水中ポンプ)60を常に直入れ始動(定電圧始動)させる特許文献1の運転制御方法に比較して小型のエンジン駆動型発電機1によって同程度のモータ機器60を始動させることができ,エンジン駆動型発電機1の小型化に伴う燃料消費量の一層の低減を図ることができた。
【0046】
前述の設定周波数を変更可能とした構成では,モータ機器60に対して出力する周波数,従って,モータ機器60の回転速度を変更することができ,モータ機器60を,使用状態に応じた適切な回転速度で運転することができた。
【0047】
その結果,例えば貯水容量が少なく,水の流入量が比較的少ない水源で水中ポンプ60をモータ機器として使用する場合であっても,水中ポンプ60を水の流入量に対応して低回転速度で運転して排水量を抑えることでモータ機器60が頻繁に始動と停止を繰り返し,これに伴い,エンジン10が頻繁に始動と停止を繰り返すことを防止することができた。
【0048】
一方,
図7に示すエンジン駆動型インバータ発電機の出力周波数と燃料消費量の相関関係より明らかなように,インバータ装置30の出力周波数が50Hzの場合の燃料消費量に比較して,出力周波数が30Hzのときの燃料消費量は1/2以下となっており,出力周波数を低下させることで燃料消費量の大幅な低減が可能となっていることが判る。
【0049】
従って,モータ機器60の使用状態に応じてインバータ装置30の出力周波数,従って,モータ機器60の回転速度を低下させることで,燃料消費量の更なる低減も図ることができる。
【0050】
前記インバータ装置30に前記始動出力処理に続いて定常出力処理を行わせる場合,該定常周波数は,これを前述の設定周波数と同一の周波数として,定常出力処理中,周波数を一定に維持して変化させない構成とすることもできるが,前記始動条件が満たされた状態(例えば,上限水位H以上の状態)と停止条件が満たされた状態(例えば,下限水位L未満の状態)間における中間の状態を監視して,定常出力処理中における定常周波数を,前述した中間の状態に応じて変化させるようにした構成では,例えば,モータ機器を水中ポンプ60として水源に溜まった水を排水する場合,水源の水位が低下するに従い水中ポンプ60の回転速度を低下させるような制御を行うことも可能であり,これにより水源の底に溜まった泥等の吸い上げを防止し得る等,作業の進展状態に応じた適切な回転速度でモータ機器60を駆動させることが可能である。
【0051】
しかも,水位等の状態に応じて,定常周波数を設定周波数よりも低い周波数に低下させることで,
図7に示したように出力周波数の低下に伴い燃料消費量を低減させることも可能である。
【0052】
なお,前記エンジン停止処理は,前記インバータ装置30の停止後,前記始動条件(例えば,上限水位H以上)が満たされていないことを条件に実行すると共に,前記始動条件が満たされているときには前述のエンジン停止処理を実行することなくエンジン10の運転を継続すると共に,前記インバータ装置30に,再度,前記始動出力処理を行わせるようにすることができる。
【0053】
このようにすることで,例えばモータ機器60が水中ポンプである場合,貯水容量が少ない水源に対し比較的大量の水が流入している場合のように,インバータ装置30の出力を停止して水中ポンプ60が停止すると比較的短時間で水位が始動条件の水位(上限水位H以上)に復帰してしまうような場合には,エンジン10を停止することなく再度,水中ポンプ60を再始動させて排水を再開させることができ,これにより頻繁にエンジンの始動と停止が繰り返されることを防止できた。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】本発明のエンジン駆動型発電機の機能ブロック図。
【
図2】給電対象とするモータ機器を水中ポンプとしたエンジン駆動型発電機の使用状態の説明図であり,水源の水位が,(A)は上限水位H以上にある状態,(B)は下限水位L以上,上限水位H未満の状態,(C)は下限水位L未満の状態。
【
図3】
図2の使用例におけるエンジン駆動型発電機の動作を示すフロー図。
【
図4】給電対象とするモータ機器を水中ポンプとしたエンジン駆動型発電機の使用状態の説明図であり,水源の水位が,(A)は上限水位H以上にある状態,(B)は中間水位Mの状態,(C)は下限水位L未満の状態。
【
図5】
図4の使用例におけるエンジン駆動型発電機の動作を示すフロー図。
【
図6】水源における水位の変化を,上限水位Hと下限水位L間で無段階に検出可能とした水位検出手段の採用例を示した説明図であり,それぞれ検出手段として,(A),(B)はフロート式水位センサ,(C)は電極式水位センサを設けた例。
【
図7】エンジン駆動型インバータ発電機の出力周波数に対する燃料消費量の変化を示したグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下に,添付図面を参照しながら,本発明の運転制御方法を実行するエンジン駆動型発電機の構成例について説明する。
【0056】
なお,以下に説明する実施形態では,エンジン駆動型発電機より電力の供給を受けるモータ機器を水中ポンプと成すと共に,工事現場等に生じた水源の水位を「監視場所の状態」として,水源の水位が所定の上限水位H以上となったときに水中ポンプの始動条件が満たされたと判断すると共に,水源の水位が所定の下限水位L未満となったときに水中ポンプの停止条件が満たされた判断する場合を例に挙げて説明する。
【0057】
しかしながら,本発明のエンジン駆動型発電機の運転制御方法は,前述した水中ポンプを給電対象とする場合に限定されず,監視場所の状態(水位や温度の他,圧力,密度,ガス濃度等)の変化に応じて始動及び停止させ得る各種のモータ機器を給電対象とした制御に広く用いることができ,以下に説明する用途に限定されるものではない。
【0058】
〔エンジン駆動型発電機の全体構成〕
図1中の符号1は本発明のエンジン駆動型発電機であり,このエンジン駆動型発電機1は,エンジン10,前記エンジン10によって駆動される発電機本体20,この発電機本体20に出力線を介して接続されたインバータ装置30を備えている。
【0059】
このインバータ装置30には更に三相出力端子台40が接続されており,本実施形態では
図2に示すように,この三相出力端子台40に水源に設置した水中ポンプ60をモータ機器として接続している。
【0060】
このエンジン駆動型発電機1には,更に,検出信号入力部45と,該検出信号入力部45を介して入力された検出手段70からの検出信号に基づいてエンジン10とインバータ装置30の動作を制御するコントローラ50が設けられており,この検出信号入力部45に検出手段70を接続することができるように構成されている。
【0061】
本実施形態では,
図2に示すように前述した水中ポンプ60が設置された水源の水位を監視する検出手段としてフロートスイッチ70(70a,70b)を設け,このフロートスイッチ70(70a,70b)を前述の検出信号入力部45に接続した。
【0062】
図2に示す実施形態では,水源の水位が所定の上限水位H以上でON,上限水位H未満でOFFとなる上段側フロートスイッチ70aと,水源の水位が所定の下限水位L以上でON,下限水位L未満でOFFとなる下段側フロートスイッチ70bを設け,上段側フロートスイッチ70aで該水源の水位が所定の上限水位H以上となったこと(始動条件が満たされたこと)を検出可能と成すと共に,下段側フロートスイッチ70bで水源の水位が所定の下限水位L未満となったこと(停止条件が満たされたこと)を検出可能とし,上段側フロートスイッチ70aと下段側フロートスイッチ70bのいずれ共に検出信号入力部45に接続して,コントローラ50がフロートスイッチ70(70a,70b)からの検出信号を受信できるようにした。
【0063】
〔発電機本体〕
エンジン駆動型発電機1の主要な構成部材の一つである前述の発電機本体20は,特に限定されることなく既知の各種型式のものを使用可能であり,本実施形態にあっては,自動電圧調整器(AVR)によって設定値の安定した出力電圧を得ることができる自励式の三相交流発電機(三相200V)を発電機本体20として使用した。
【0064】
この発電機本体20は,定格回転速度で運転されるエンジン10により駆動されることで所定の商用周波数(50Hz又は60Hz)が得られるように構成されており,本実施形態ではエンジン10の定格回転速度を1500min-1と1800min-1間で切り換え可能に構成し,エンジン10を1500min-1の定格回転速度で運転した場合には発電機本体20から周波数50Hzの交流出力が得られると共に,1800min-1の定格回転速度で運転した場合には,発電機本体20から周波数60Hzの交流出力が得られるように構成されている。
【0065】
〔インバータ装置〕
前述したインバータ装置30は,発電機本体20からの交流を直流に変換するコンバータ部31と,コンバータ部31で得た直流を任意の周波数の交流に変換するインバータ部32,及びインバータ装置30の出力の開始及び停止,及び出力する周波数を制御する出力制御部33を備えており,例えば既知のPWM(パルス幅変調)方式等によって,操作盤等に設けたダイヤルスイッチ等から成る周波数設定手段34によって設定された設定周波数の交流出力を発生することができるように構成されていると共に,設定周波数が低く設定されているときには出力電圧が低く,設定周波数が高く設定されているときには出力電圧が高くなるように,周波数の増減にあわせて出力電圧も変化するように設定されている。
【0066】
このインバータ装置30は,電子制御装置等で構成されるコントローラ50から指令によってその動作が制御されており,図示の実施形態では,インバータ装置に設けた出力制御部33が,コントローラ50からの出力開始指令を受信してインバータ装置30の出力を開始すると共に,出力停止指令を受信してインバータ装置30の出力を停止するように構成した。
【0067】
このインバータ装置30の出力制御部33は,インバータ装置の出力を開始する際には所定の低周波数(例えばゼロ周波数)から前述の周波数設定手段34で設定された所定の設定周波数(本実施形態では,一例として,60Hz)に徐々に周波数を上昇させる始動出力処理を実行し,該始動出力処理に続き,前記設定周波数以下の所定の周波数(本実施形態では設定周波数と同一周波数)である定常周波数(ここでは,60Hz)の出力を継続して行う,定常出力処理を実行する。
【0068】
このように,始動出力処理時,交流出力の周波数を徐々に上昇(従って,電圧を徐々に上昇)させることにより,直入れ始動(全電圧始動)の場合に比較して水中ポンプ60の始動電流を大幅に低減させることが可能となっている。
【0069】
また,インバータ装置30の出力制御部33は,コントローラ50からの出力停止指令を受けるとインバータ装置30の出力を停止する,出力停止処理を実行する。
【0070】
この出力停止処理は,コントローラ50からの出力停止指令の受信により直ちにインバータ装置30の出力を停止するものとしても良いが,本実施形態では,交流出力の周波数を前述した定常周波数(一例として,60Hz)から徐々に所定の低い周波数(本実施形態では,ゼロ周波数/ゼロ電圧)まで低下させることによりインバータ装置30の出力を停止するように構成した。
【0071】
このように,インバータ装置30の出力を停止する際に出力周波数を徐々に低下させるように構成することで,水中ポンプ60は回転速度を徐々に減少させた後に停止することとなり,水中ポンプ60を急停止させる場合に生じるウォータハンマ現象の発生を防止することができる。
【0072】
その結果,ウォータハンマ現象によって停止時に水中ポンプ60にかかる負担が低減されることで,水中ポンプ60の寿命を延ばすことができる。
【0073】
始動出力制御においてインバータ装置30が出力する設定周波数は,商用周波数(50Hz又は60Hz)と一致させても良く,又は,商用周波数(50Hz又は60Hz)に対して高く,又は低く設定できるようにしても良く,一例として前述した周波数設定手段34を操作して行う設定により30~60Hzの範囲で変更できるようにした。
【0074】
〔エンジン〕
エンジン駆動型発電機1に搭載するエンジン10は,例えばディーゼルエンジンであり,エンジン本体と共に,セルモータ,予熱用ヒータ,燃料噴射ポンプ,及びこれらの動作を制御するエンジンコントロールユニット(ECU)11等の電装品類を備えている。
【0075】
このエンジン10の始動及び停止処理は,一例として,前述のECU11がコントローラ50からの動作指令を受信して各部を制御することにより実行され,エンジン10の始動は,一例としてバッテリとの通電を開始する「キーON」の工程,予熱用ヒータに対して通電を行う「予熱」の工程,及び,所定時間セルモータを回転させて行う「エンジン始動」の各工程を経て実行される。
【0076】
また,エンジン10の停止処理は,燃料の供給停止や吸気の停止等のディーゼルエンジンの停止方法として既知の方法によりエンジンを停止させる「エンジン停止」の工程を実行した後,バッテリとの通電を停止する「キーOFF」の工程を経て行われる。
【0077】
このエンジン10は,前述したように1500min-1,又は1800min-1の定格回転速度を有し,前述した始動処理によって始動させた後は,停止処理が行われるまでの間,予め選択された1500min-1又は1800min-1のいずれかの定格回転速度で回転速度を一定に維持した運転を継続するように構成されている。
【0078】
〔コントローラ〕
前述のコントローラ50は,検出信号入力部45に接続された検出手段であるフロートスイッチ70(70a,70b)からの検出信号に基づいて,エンジン10及びインバータ装置30に対し指令信号を出力する。
【0079】
図2に示す実施形態では,上段側フロートスイッチ70aが水源の水位が上限水位H以上となっていることを検出した検出信号(ON信号)を出力すると,この検出信号(ON信号)を受信したコントローラ50は始動条件が満たされたと判断してエンジン10に対し始動指令を出力してエンジン10を始動させた後,インバータ装置30に対し,出力開始指令を出力する。
【0080】
また,下段側フロートスイッチ70bが水源の水位が下限水位L未満となっていることを検出した検出信号(OFF信号)を出力すると,この検出信号(OFF信号)を受信したコントローラ50は停止条件が満たされたと判断してインバータ装置30に対し出力停止指令を出力すると共に,エンジン10に対し停止指令を出力する。
【0081】
なお,図示は省略するが,
図1及び
図2に示す実施形態において,エンジン駆動型発電機1には,コントローラ50に接続された運転モード切換スイッチが設けられており,運転モード切換スイッチによって「自動始動運転モード」が選択されているときにはエンジン10とインバータ装置30の動作制御はコントローラ50によって行われるが,「通常運転モード」が選択されている状態では,コントローラ50によるエンジン10とインバータ装置30の動作制御は行われず,エンジン10の始動と停止,及び,インバータ装置30の出力開始及び停止は,オペレータが手動でスイッチ類を操作して行うようにした。
【0082】
〔エンジン駆動型発電機の動作〕
以上,
図1及び
図2を参照して説明した本発明のエンジン駆動型発電機1の動作を,
図3のフローチャートを参照して説明する。
【0083】
本発明のエンジン駆動型発電機1の三相出力端子台40に水中ポンプ60を接続すると共に,該水中ポンプ60が設置された水源の水位を検出する上段側フロートスイッチ70aと下段側フロートスイッチ70bを検出信号入力部45に接続する。
【0084】
そして,制御盤に設けた運転モード切換スイッチ(図示せず)を操作して,運転モードを「自動始動運転モード」に切り換えると(S1),エンジン駆動型発電機1は,エンジン10が停止した状態で,かつ,インバータ装置30の出力が停止した状態で待機する,待機状態となる。
【0085】
この待機状態において,コントローラ50は検出信号入力部45を介して入力されるフロートスイッチ70(70a,70b)からの検出信号に基づき水源の水位を監視し(S2),上段側フロートスイッチ70aから水源の水位が上限水位H未満であることを示す検出信号(OFF信号)を受信しているときには(S2のNo)前述した待機状態を維持すると共に,上限水位H以上となっていることを示す検出信号(ON信号)を,好ましくは所定時間(本実施形態では,一例として5秒)以上継続して受信すると(S2のYes),始動条件が満たされたと判断してエンジン10に対し始動指令を出力する。
【0086】
コントローラ50からの始動指令信号を受信したエンジン10のECU11は,キーONによってバッテリとの接続を確立すると共に,予熱ヒータを通電してエンジンの予熱を行った後,所定時間セルモータを作動させてエンジンを始動させ(S3),予め選択した1500min-1又は1800min-1いずれかの定格回転速度でのエンジンの運転を継続させる。
【0087】
エンジンの始動後,必要に応じて所定時間(一例として15秒)の暖機運転が完了した後,コントローラ50はインバータ装置30に出力開始指令を出力してインバータ装置30をONとして,インバータ装置30に出力を開始させ,これにより水中ポンプ60が始動する(S4)。
【0088】
コントローラ50からの出力開始指令を受信したインバータ装置30の出力制御部33は,出力開始時,所定の低周波数(例えばゼロ周波数)から周波数設定手段で設定した所定の設定周波数(一例として60Hz)まで徐々に周波数を上昇させる始動出力処理を実行すると共に,この始動出力処理に続き,前記設定周波数以下の周波数(本実施形態では設定周波数と同一の周波数)である定常周波数(一例として60Hz)の出力を継続的に行う,定常出力処理を実行する。
【0089】
これにより,三相出力端子台40に接続された水中ポンプ60を,始動電流を低く抑えた状態で始動させることができると共に,オペレータにより30Hz~60Hzの間で任意に設定された前述の設定周波数(本実施形態では一例として60Hz)に対応した回転速度で水中ポンプ60の運転を継続する。
【0090】
エンジン駆動型発電機1を始動して水中ポンプ60を始動させた後も,コントローラ50はフロートスイッチ70(70a,70b)からの検出信号に基づいて水源の水位を継続して監視しており,水源の水位が所定の下限水位L未満となるまで,コントローラ50は,定格回転速度でのエンジン10の駆動と,定常周波数でのインバータ装置30の出力を継続させる(S5のNo)。
【0091】
そして,下段側フロートスイッチ70bからの検出信号(OFF信号)により水源の水位が下限水位L未満になっていること,本実施形態では所定時間(一例として5秒間)継続して下限水位L未満となっていることが検出されると(S5のYes),コントローラ50は停止条件が満たされたと判断して,インバータ装置30に対し出力停止指令を出力する。
【0092】
コントローラ50からの出力停止指令を受信したインバータ装置30の出力制御部33は,出力周波数を,定常周波数(一例として60Hz)から所定時間(一例として5秒間)かけて所定の低周波数(一例として0Hz)まで減少させることによりインバータ装置30の出力を停止し,これにより水中ポンプ60が停止する(S6)。
【0093】
インバータ装置30の出力停止後,前記コントローラ50は,必要に応じて更に所定時間(一例として5秒間),フロートスイッチ70(70a,70b)からの検出信号に基づき水源の水位を監視する。
【0094】
そして,水源の水位が再度上昇して上限水位H以上になっていることを示す検出信号(ON信号)を,好ましくは所定時間(本実施形態では,一例として5秒)以上継続して受信すると(S7のYes),コントローラ50は始動条件が満たされていると判断してエンジン10に対し停止指令を出力せずにエンジン10の運転を継続させたまま,インバータ装置30に対し,出力開始指令を出力してインバータ装置30を再度ONにして水中ポンプ60を始動させる(S7のYes→S4)。
【0095】
このとき,インバータ装置30の出力制御部33は,インバータ装置30に,所定の低い周波数(一例として0Hz)から徐々に周波数を設定周波数(一例として60Hz)まで上昇させる始動出力処理と,該始動出力処理後,所定の定常周波数(本実施形態において設定周波数と同じ周波数である一例として60Hz)の出力を継続して行う定常出力処理を実行させる。これにより,水中ポンプが始動電流を低くした状態で再始動される。
【0096】
一方,インバータ装置30の出力停止から,必要に応じて,所定時間(一例として5秒)経過しても,水源の水位が上限水位H以上に上昇していない場合(S7のNo),すなわちコントローラ50が,始動条件が満たされたと判断していないときにエンジン10に対し停止指令を出力する。
【0097】
コントローラ50からの停止指令を受信したエンジン10は,燃料供給の停止や吸気の遮断等のディーゼルエンジンの停止方法として既知の方法によってエンジン10を停止し,その後,キーOFF処理を行ってバッテリとの通電を遮断する(S8)。
【0098】
これにより,エンジン駆動型発電機1は,エンジン10を停止すると共にインバータ装置30の出力を停止した,待機状態に移行し,上段側フロートスイッチ70aによって水源の水位が上限水位H以上になっていることを示す検出信号(ON信号)を受信して,コントローラ50が,始動条件が満たされたと判断してエンジン10に対し始動指令を出力するまで,この待機状態を維持する。
【0099】
〔変更例1〕
以上,
図2を参照して説明した実施形態では,検出手段(フロートスイッチ)70として,水源の水位が上限水位H以上となったことを検出する上段側フロートスイッチ70aと,下限水位L未満となったことを検出する下段側フロートスイッチ70bの2つのフロートスイッチを設け,このフロートスイッチ70(70a,70b)の検出信号に基づいてコントローラ50が行う,始動条件と停止条件が成就したか否かの判断に基づいてエンジン駆動型発電機1の運転制御を行う場合を例に挙げて説明した。
【0100】
これに対し,
図4に示す実施形態では,水源の水位が上限水位H以上であることを検出する上段側フロートスイッチ70aと,下限水位L未満であることを検出する下段側フロートスイッチ70bの他に,水源の水位が上限水位Hと下限水位Lの間の中間水位M以上となったときにONとなると共に,中間水位M未満でOFFとなる中段フロートスイッチ70cを設け,中段フロートスイッチ70cのON信号に基づき水源の水位が中間水位M以上であることを,また,中段フロートスイッチ70cのOFF信号に基づき,水源の水位が中間水位M未満であることを検出することができるようにした。
【0101】
そして,中段フロートスイッチ70cの検出信号を受信したコントローラ50からの制御信号に基づいて,インバータ装置30の出力制御部33が,定常出力処理中に出力する交流の周波数を,設定周波数以下の範囲で変化させることができるようにした。
【0102】
これにより,中段フロートスイッチ70cからの検出信号をも加味して行う本実施形態の運転制御方法では,
図5のフローチャートに示すように,インバータ装置がONとなって水中ポンプ60が始動してから(S4),下段側フロートスイッチ70bが下限水位L以下となったことを検出して(S5)コントローラ50が,停止条件が満たされたと判断するまでの間に,中段フロートスイッチ70cが検出する水位に応じて定常出力処理の際にインバータ装置30が出力する定常周波数を変更する工程(S4-2)が追加されている(その他の点は,
図3を参照して説明した実施形態と同様につき説明を省略する。)。
【0103】
一例として前述の周波数設定手段34により設定周波数を60Hzとした場合,インバータ装置30は始動出力処理において所定の低い周波数(0Hz)から徐々に設定周波数(60Hz)まで周波数を上昇させた後,この設定周波数(60Hz)を定常周波数としてインバータ装置に定常出力処理を開始させる。
【0104】
そして,この定常出力処理の実行中,水源の水位が中間水位M未満になったことを中段フロートスイッチ70cが検出すると,コントローラ50からの制御信号によりインバータ装置30の出力制御部33は,定常周波数を60Hzから30Hzに低下させて,水中ポンプ60を低速運転に移行させるようにした。
【0105】
このようにして水源の水位が中間水位M未満に低下して,インバータ装置30が出力する定常周波数を30Hzに低下した後,上段側フロートスイッチ70aが上限水位H未満の水位を検出している状態で中段フロートスイッチ70cが再度,中間水位M以上の水位を検出した場合には,コントローラは,インバータ装置が出力する定常周波数を,前述の30Hzから45Hzに上昇させて,水中ポンプを中速で運転できるようにした。
【0106】
なお,水中ポンプ60の「低速」に対応する定常周波数である30Hz,及び,「中速」に対応する定常周波数である45Hzは,周波数設定手段34で設定する設定周波数を60Hzよりも低く設定した場合,これに対応して低い値に設定されるようにしても良い。
【0107】
このように構成することで,水中ポンプ60が排水を継続することにより水位が低下するに従い,水中ポンプ60の回転速度を低速に減速させることで水源内の水の流れを緩やかにして,水中ポンプ60による水源の底部に溜まった泥の吸い上げ等を防止することができるだけでなく,
図7に示した出力周波数と燃料消費量の関係より,定常周波数として出力する周波数の低下により,燃料消費量の大幅な低減を実現することができた。
【0108】
また,上記の制御では,例えば,低速に減速した水中ポンプ60の排水量よりも水源に対する水の流入量が多くなっており,一旦,中間水位M未満に低下した水源の水位が,水中ポンプ60の低速への減速によって再度,中間水位M以上に上昇する場合には,設定周波数以下の範囲で定常周波数を上昇(45Hzに上昇)させて水中ポンプ60を中速とすることで,水源の水位が,常に中間水位M付近に維持されるような制御を行うことも可能である。
【0109】
〔変更例2〕
以上,
図4を参照して説明した前述の実施形態では,水源の水位を検出する検出手段(フロートスイッチ)70として,上段側フロートスイッチ70a,下段側フロートスイッチ70b,及び,中段フロートスイッチ70cを設け,水源の水位が,上限水位H以上,中間水位M以上かつ上限水位H未満,下限水位L以上かつ中間水位M未満,及び,下限水位L未満のいずれの範囲にあるかを検出することができるようにして,検出された水位に対応して定常出力制御の際に出力される定常周波数を変化させることができるようにした。
【0110】
これに対し,
図6(A)~(C)に示す実施形態では,上限水位Hから下限水位L迄の間における水源の水位の変化を無段階に検出可能な検出手段70〔
図6(A),(B)ではフロート式の水位センサ71,72/
図6(C)では電極式の水位センサ73〕を設け,定常出力処理時にインバータ装置30が出力する定常周波数を,検出手段70(71,72,73)が無段階に検出した水位に応じて,一例として60Hz~30Hzの範囲で,水位の上昇に応じて高く,水位の低下に応じて低く変化させることができるようにした。
【0111】
例えば,水源に対し常に一定量の水が流入している場合,水中ポンプ60を最大速度の高速で運転すると,水源の排水が早期に完了して,エンジン駆動型発電機1の停止と始動が頻繁に繰り返されることとなる場合がある。
【0112】
一方,水中ポンプ60を一定速度の低速で運転する場合,水中ポンプの排水量に対し水源に対する水の流入量が勝る場合,水源の水位を下げることができなくなることも想定される。
【0113】
これに対し,前述したように水源の水位を無段階に検出してこれに対応して定常周波数,従って,定常出力処理時の水中ポンプ60の回転速度を可変とすることで,水源の水位を常に略一定の状態に維持する等の制御が可能となる。
【符号の説明】
【0114】
1 エンジン駆動型発電機
10 エンジン
11 エンジンコントロールユニット(ECU)
20 発電機本体
30 インバータ装置
31 コンバータ部
32 インバータ部
33 出力制御部
34 周波数設定手段
40 三相出力端子台
45 検出信号入力部
50 コントローラ
60 モータ機器(水中ポンプ)
70 検出手段(フロートスイッチ)
70a 上段側フロートスイッチ
70b 下段側フロートスイッチ
70c 中段フロートスイッチ
71,72 水位センサ(フロート式)
73 水位センサ(電極式)
H 上限水位
L 下限水位
M 中間水位