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特開2024-53375光燃料電池、電気化学デバイス、及び発電方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053375
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】光燃料電池、電気化学デバイス、及び発電方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/02 20160101AFI20240408BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240408BHJP
   B01J 23/50 20060101ALI20240408BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240408BHJP
   C25B 1/55 20210101ALI20240408BHJP
   C25B 5/00 20060101ALI20240408BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240408BHJP
   C25B 15/04 20060101ALI20240408BHJP
   C25B 9/50 20210101ALI20240408BHJP
   C25B 11/052 20210101ALI20240408BHJP
   C25B 11/087 20210101ALI20240408BHJP
【FI】
H01M8/02
B01J35/02 J
B01J23/50 M
C25B1/04
C25B1/55
C25B5/00
C25B9/00 A
C25B9/00 H
C25B15/04
C25B9/50
C25B11/052
C25B11/087
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159603
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】竝木 裕司
(72)【発明者】
【氏名】堀毛 悟史
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BA04B
4G169BA48A
4G169BB02B
4G169BB04B
4G169BB06B
4G169BC32B
4G169BC50B
4G169CC32
4G169DA06
4G169EA10
4G169HA01
4G169HB01
4G169HC01
4G169HC02
4G169HC29
4G169HF02
4K011AA21
4K011AA66
4K011BA09
4K011DA01
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC08
4K021DB31
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
5H126AA02
5H126FF03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、水蒸気を燃料とした光燃料電池を提供することを課題とする。
【解決手段】負極20と、正極30と、前記負極と前記正極の間に配置されたプロトン伝導体40を有する電気化学デバイス11と、前記負極と正極とを電気的に接続する外部回路50と、を備える、水蒸気を燃料として発電する光燃料電池10であって、前記負極は、第1の導電層、第1の光触媒層、及び第1の吸湿材料を備え、前記第1の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成され、前記正極は、第2の導電層、及び第2の光触媒層を備え、前記第1の光触媒層は、光を照射することにより水の分解反応を触媒する光触媒成分を含み、前記第2の光触媒層は、光を照射することより酸素の還元反応を触媒する光触媒成分を含む、光燃料電池。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負極と、正極と、前記負極と前記正極の間に配置されたプロトン伝導体を有する電気化学デバイスと、前記負極と正極とを電気的に接続する外部回路と、を備える、水蒸気を燃料として発電する光燃料電池であって、
前記負極は、第1の導電層、第1の光触媒層、及び第1の吸湿材料を備え、
前記第1の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成され、
前記正極は、第2の導電層、及び第2の光触媒層を備え、
前記第1の光触媒層は、光を照射することにより水の分解反応を触媒する光触媒成分を含み、
前記第2の光触媒層は、光を照射することより酸素の還元反応を触媒する光触媒成分を含む、
光燃料電池。
【請求項2】
前記正極は、さらに第2の吸湿材料を備え、
前記第2の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成される、請求項1に記載の光燃料電池。
【請求項3】
前記第1の導電層及び第2の導電層は、導電性不織布で形成される、請求項1又は2に記載の光燃料電池。
【請求項4】
さらに、前記負極に水蒸気を供給する水蒸気供給機構と、
前記正極に酸素を供給する酸素供給機構と、を備える、請求項1又は2に記載の光燃料電池。
【請求項5】
前記正極を加湿する加湿機構を備える、請求項2に記載の光燃料電池。
【請求項6】
負極と、正極と、前記負極と前記正極の間に配置されたプロトン伝導体を有する電気化学デバイスであって、
前記負極は、第1の導電層、第1の光触媒層、第1の吸湿材料を備え、
前記第1の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成され、
前記正極は、第2の導電層、第2の光触媒層を備え、
前記第1の光触媒層は、光を照射することにより水の分解反応を触媒する光触媒成分を含み、
前記第2の光触媒層は、光を照射することより酸素の還元反応を触媒する光触媒成分を含む、
電気化学デバイス。
【請求項7】
前記正極は、さらに第2の吸湿材料を備え、
前記第2の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成される、請求項6に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記電気化学デバイスの前記負極から前記正極までの厚さが、0.6mm以下である、請求項6又は7に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
水蒸気を燃料とする発電方法であって、
負極と、正極と、前記負極と正極の間に配置されたプロトン伝導体を有する電気化学デバイスを備える光燃料電池における前記負極及び正極に光を照射して発電する発電工程を備え、
前記負極は、第1の導電層、第1の光触媒層、及び第1の吸湿材料を備え、
前記第1の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成され、
前記正極は、第2の導電層、及び第2の光触媒層を備え、
前記発電工程は、光を照射することにより、前記負極において水を分解する反応が進行し、前記正極において酸素の還元反応が進行する、
発電方法。
【請求項10】
前記正極が、第2の吸湿材料を備え、
前記第2の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成され、
前記正極を加湿する加湿工程を備える、請求項9に記載の発電方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気を燃料として発電する光燃料電池、当該光燃料電池に用いる電気化学デバイス、及びこれらを用いた発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、固体高分子型燃料電池、アルカリ電解質型燃料電池、リン酸型燃料電池等の燃料電池が開発され、実用化されている。近年では、光触媒を用いた燃料電池、すなわち光燃料電池が提案されている。光燃料電池は、バイオマスや廃棄物等に含まれる有機化合物、窒素含有化合物を燃料とすることができ、資源の有効活用が可能であるという点で注目を集めている。
【0003】
特許文献1には、液相燃料にレドックスメディエータを含有させることで、光電流変換効率を向上させた光燃料電池が提案されている。
特許文献2には、負極層に接した光触媒層の一部又は全部に、有機色素層を備えることで、起電力を高めた光燃料電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-218080号公報
【特許文献2】特開2019-209259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の発明は、光燃料電池の燃料として、有機化合物及び窒素含有化合物の少なくとも一方を含む液相燃料を用いている。また、特許文献2に記載の発明は、液体状の水を燃料として用いている。
これら従来技術に係る光燃料電池は、起電力や光電流変換効率等、優れた性能を発揮するものであるが、燃料として液体状のものを使用しているため、小型化、薄型化することが困難であった。
【0006】
そこで、本願発明は、水蒸気を燃料とした光燃料電池を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
水蒸気は、液体の水よりも密度が低く、電極が存在する空間状に広く分散するため、燃料として電極中の光触媒層上で反応させることが困難であった。本発明者らは、鋭意研究の結果、電極に空気中の水蒸気を捕捉する工夫を施すことで、水蒸気を燃料とした光燃料電池が成立することを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、前記課題を解決する本発明は、
負極と、正極と、前記負極と前記正極の間に配置されたプロトン伝導体を有する電気化学デバイスと、前記負極と正極とを電気的に接続する外部回路と、を備える、水蒸気を燃料として発電する光燃料電池であって、
前記負極は、第1の導電層、第1の光触媒層、及び第1の吸湿材料を備え、
前記第1の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成され、
前記正極は、第2の導電層、及び第2の光触媒層を備え、
前記第1の光触媒層は、光を照射することにより水の分解反応を触媒する光触媒成分を含み、
前記第2の光触媒層は、光を照射することより酸素の還元反応を触媒する光触媒成分を含む。
【0009】
本発明の光燃料電池は、負極が吸湿材料を備えることで、空気中の水蒸気を捕捉する。そこに光を照射することで、水の分解反応によりプロトンと電子が生成し、当該プロトンと電子が正極に伝導し、正極では酸素の還元反応が進行する。この反応により、電気を取り出すことができる。
また、本発明は、水蒸気を燃料として発電することができるため、液相燃料(電解液)を収容する電解槽が不要である。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記正極は、さらに第2の吸湿材料を備え、前記第2の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成される。
【0011】
正極においても吸湿材料を備える構成とすることで、正極側の相対湿度を向上させることができる。これにより、光燃料電池の起電力を向上させることができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、前記第1の導電層及び第2の導電層は、導電性不織布で形成される。
【0013】
本発明の好ましい形態では、さらに、前記負極に水蒸気を供給する水蒸気供給機構と、前記正極に酸素を供給する酸素供給機構と、を備える。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記正極に水蒸気を供給する水蒸気供給機構を備える。
これにより、正極側の相対湿度を向上させ、光燃料電池の起電力を向上させることができる。
【0015】
また、前記課題を解決する本発明は、
負極と、正極と、前記負極と前記正極の間に配置されたプロトン伝導体を有する電気化学デバイスであって、
前記負極は、第1の導電層、第1の光触媒層、第1の吸湿材料を備え、
前記第1の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成され、
前記正極は、第2の導電層、第2の光触媒層を備え、
前記第1の光触媒層は、光を照射することにより水の分解反応を触媒する光触媒成分を含み、
前記第2の光触媒層は、光を照射することより酸素の還元反応を触媒する光触媒成分を含む。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記正極は、さらに第2の吸湿材料を備え、前記第2の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成される。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記電気化学デバイスの前記負極から前記正極までの厚さが、1.5mm以下である。
【0018】
また、前記課題を解決する本発明は、
水蒸気を燃料とする発電方法であって、
負極と、正極と、前記負極と正極の間に配置されたプロトン伝導体を有する電気化学デバイスを備える光燃料電池における前記負極及び正極に光を照射して発電する発電工程を備え、
前記負極は、第1の導電層、第1の光触媒層、及び第1の吸湿材料を備え、
前記第1の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成され、
前記正極は、第2の導電層、及び第2の光触媒層を備え、
前記発電工程は、光を照射することにより、前記負極において水を分解する反応が進行し、前記正極において酸素の還元反応が進行する。
【0019】
本発明の好ましい形態では、
前記正極が、第2の吸湿材料を備え、
前記第2の吸湿材料は、プロトン伝導性を有し、空気中の水蒸気を捕捉するよう構成され、
前記正極に水蒸気を供給する水蒸気供給工程を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の光燃料電池、電気化学デバイス、及び発電方法によれば、水蒸気を燃料として発電をすることができる。水蒸気を燃料とすることができるため、液相燃料を用いた光燃料電池と比べて、小型化、薄型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る光燃料電池の発電機構を示す図である。
図2】本実施形態に係る電気化学デバイスの構造を示す概要図である。
図3】本実施形態に係る光燃料電池の構成の概要を示す概要図である。
図4】実施例の光燃料電池の起電力を表すグラフ(横軸:電圧(V)、縦軸:電流(μA)である。
図5】負極の導電層の厚さによる発電値への影響を示すグラフ(縦軸:電流(μA)、横軸:秒)である。
図6】負極の光触媒成分の担持量による発電値への影響を示すグラフ(縦軸:電流(μA)、横軸:秒)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、水蒸気を燃料として発電する光燃料電池に関する。図1に、本実施形態に係る光燃料電池の発電機構を示す。図2に本実施形態に係る電気化学デバイス11の構造を示す概要図を示す。
【0023】
(1)発電機構
本実施形態に係る光燃料電池10は、負極20と、正極30と、プロトン伝導体40を含む電気化学デバイス11と、負極20と正極30を電気的に接続する外部回路50を備える。
【0024】
負極20は、第1の導電層21と、第1の光触媒層22と、第1の吸湿材料23を含む。
正極30は、第2の導電層31と、第2の光触媒層32と、第2の吸湿材料33を含む。
第1の光触媒層22には、光を照射することにより水の分解反応を触媒する光触媒成分を含む。具体的には、光触媒成分は、当該光触媒成分のバンドギャップ以上のエネルギーを含む光を受けて励起し、下記式1に従ってホール(h)によって水が光酸化されるのを触媒する。
【0025】
2HO+4h→O+4H+4e・・・(式1)
【0026】
第1の光触媒層22に含まれる光触媒成分は、光を受けて価電子帯の電子が伝導帯に励起されて第1励起電子となり、価電子帯は電子を1個失った1価のホール(h)を持った状態となる。このホールが水分子から電子を奪うことで、水から酸素への酸化反応が進行し、ホールは奪った電子と結合して消滅する。一方、第1励起電子は、外部回路を通じて正極30に供給される。
【0027】
他方、第2の光触媒層32は、光を照射することより酸素の還元反応を触媒する光触媒成分を含む。具体的には、光触媒成分は、当該光触媒のバンドギャップ以上のエネルギーを含む光を受けて励起し、下記式2に下記式2に従ってプロトン及び酸素の存在下で、酸素が光還元されるのを触媒する。
【0028】
+4H+4e→2HO・・・(式2)
【0029】
第2の光触媒層32における光触媒成分は、光を受けて価電子帯の電子が伝導帯に第3励起電子となる。電子を失った価電子帯は、1価のホール(h)を持った状態となり、このホールが外部回路50を通じて負極から供給される電子と再結合して消滅する。第3励起電子は強い還元力を有しており、上記式2の左辺の4eとなって酸素を還元する。
【0030】
照射する光は、200nm~800nmの波長領域、すなわち紫外可視光領域近傍の光を用いることができる。また、これらの波長の光を包含する太陽光であってもよい。すなわち、紫外可視領域近傍の光で発電することが可能となる。光源は、光燃料電池の構成外の外部光源(自然光、蛍光灯やLED等の室内光を含む)を用いてよく、光燃料電池の構成として光源を備えてもよい。光源としては、LED、ハロゲンランプ、キセノンランプ等を用いることができる。
【0031】
(2)電気化学デバイス
本実施形態に係る電気化学デバイス11は、上述の通り負極20、正極30及びプロトン伝導体40を備える。
電気化学デバイス11は、好ましくは膜-電極接合体(MEA)である。
【0032】
負極20の第1の光触媒層22に含まれる光触媒成分として、酸化チタン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化鉄、及び酸化ビスマス等の金属酸化物、バナジン酸ビスマス等の複合金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、リン化ガリウム等の金属リン化物、及び硫化カドミウム等の金属硫化物が挙げられる。本発明における光触媒成分は、好ましくは酸化チタンである。
【0033】
正極30の第2の光触媒層32に含まれる光触媒成分として、例えば、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン、酸化タングステン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化鉄、酸化ビスマス等の金属酸化物、バナジン酸ビスマス等の複合金属酸化物、窒化ガリウム等の金属窒化物、リン化ガリウム等の金属リン化物、及び硫化カドミウム等の金属硫化物、Pt-TiO、Ag-TiO等のナノ粒子担持n型半導体、及びBiOCl、CaFe、ZnMn、InP、AgGaS等のp型半導体が例示できる。
【0034】
光触媒成分の担持量は、特に限定されないが、好ましくは0.3g/cm以上、より好ましくは1g/cm以上、より好ましくは1.5g/cm以上、さらに好ましくは2g/cm以上、特に好ましくは3g/cm以上である。また、光触媒成分の担持量は、好ましくは5g/cm以下、より好ましくは4.5g/cm以下、さらに好ましくは4g/cm以下、特に好ましくは3.8g/cm以下、最も好ましくは3.5g/cm以下である。
担持量を上記範囲内とすることで、光燃料電池の発電値(μA)を大きくすることができる。
【0035】
第1の導電層21及び第2の導電層31は、電気(電子)を通す素材で形成されていればよい。このような素材として、金、白金、銀、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、チタン、コバルト等の金属、活性炭、カーボンナノチューブ、フラーレン等のカーボン材料等が挙げられる。
【0036】
第1の導電層21及び第2の導電層31は、多孔性構造であることが好ましく、繊維状、又は粒子状であることがより好ましい。第1の導電層21及び第2の導電層31は、導電性不織布で形成されることが特に好ましい。導電性不織布としては、チタン不織布等が例示できる。
第1の導電層21及び第2の導電性31は、薄層状、又は板状であることが好ましい。
【0037】
導電層、特に第1の導電層21の厚さは、好ましくは50μm以上、より好ましくは60μm以上、さらに好ましくは70μm以上、特に好ましくは80μm以上、最も好ましくは90μm以上である。また、導電層、特に第1の導電層21の厚さは、好ましくは300μm未満、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは130μm以下、最も好ましくは110μm以下である。
導電層の厚さを上記範囲内とすることで、光燃料電池の発電値(μA)を大きくすることができる。また、光燃料電池、又は電気化学デバイスを小型化することができる。
【0038】
第1の吸湿材料23及び第2の吸湿材料33は、プロトン伝導性を有し、かつ吸湿性を有する。すなわち、吸湿材料は燃料となる水蒸気を電極(負極及び正極)に捕捉し、かつ光酸化反応により生じたプロトンを伝導することができる。
【0039】
吸湿材料としては、例えばアイオノマーを用いることができる。アイオノマーは、酸性官能基を有する高分子であり、酸性官能基として、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシ基等が例示できる。アイオノマーとしては、Nafion(登録商標、以下省略)、Flemion(登録商標、以下省略)、Flemion(登録商標、以下省略)、Aquivion(登録商標、以下省略)等のパーフルオロスルホン酸アイオノマーが例示できる。
【0040】
第1の吸湿材料23及び第2の吸湿材料33は、空気中の水蒸気を捕捉するように構成される。言い換えれば、第1の吸湿材料23及び第2の吸湿材料33は、空気(外気)と接する態様で構成される。好ましくは、第1の吸湿材料23及び第2の吸湿材料33は、電極(負極及び正極)の最外面に位置するように電極が形成される。
【0041】
なお、第2の吸湿材料33は、本発明の光燃料電池が光燃料電池として成立するための必須の構成要素ではない。すなわち、正極30が第2の吸湿材料33を備えない構成であっても、本発明の光燃料電池は発電が可能である。
【0042】
一方、正極30は、好ましくは第2の吸湿材料33を備える。本実施形態の光燃料電池10は、正極側の相対湿度が向上し、その結果として光燃料電池の起電力が向上する。
【0043】
負極における吸湿材料の担持量は、0.15~0.8mg/cmが好ましく、0.2~0.6mg/cmがより好ましく、0.3~0.5mg/cmがさらに好ましい。
また、正極における吸湿材料の担持量は、0.05~0.2mg/cmが好ましく、0.05~0.15mg/cmがより好ましく、0.07~0.12mg/cmがさらに好ましい。
本発明の光燃料電池は、水蒸気を燃料とし、負極側で水蒸気を消費するから、負極における吸湿材料の担持量は、正極における吸湿材料の担持量と比して高いことが望ましい。
【0044】
プロトン伝導体40は、プロトン伝導性(イオン伝導性)を有するものであれば特に限定されない。プロトン伝導体としては、フッ素樹脂等の高分子中に硫酸基、スルホン酸基、又はカルボキシ基等を含んだものを採用することができる。スルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸膜としては、Nafion膜、Flemion)膜、Aciplex膜、Aquivion膜、Dow膜等が例示できる。プロトン伝導体は、好ましくは固体高分子膜である。
【0045】
第1の吸湿材料23及び第1の光触媒層22は、第1の吸湿材料23が捕捉した水蒸気を第1の光触媒層22上に移動する態様で構成されていることが好ましく、第1の吸湿材料23と第1の光触媒層22が接していることが好ましい。
第1の光触媒層22と第1の導電層21は、第1の光触媒層22で生成したプロトンが第1の導電層21に移動する態様で構成されていることが好ましく、第1の光触媒層22と第1の導電層21が接していることが好ましい。
第1の導電層21とプロトン伝導体40は、第1の光触媒層22から移動してきたプロトンが第1の導電層21からプロトン伝導体40に移動する態様で構成されていることが好ましく、第1の導電層21とプロトン伝導体40が接していることが好ましい。
プロトン伝導体40と第2の導電層31は、プロトンがプロトン伝導体40から第2の導電層32に移動する態様で構成されていることが好ましく、プロトン伝導体40と第2の導電層31が接していることが好ましい。
第2の導電層31と第2の光触媒層32は、プロトンが第2の導電層31から第2の光触媒層32に移動する態様で構成されていることが好ましく、第2の導電層31と第2の光触媒層33が接していることが好ましい。
第2の光触媒層32と第2の吸湿材料33は、第2の吸湿材料が捕捉した水蒸気を第2の光触媒層に移動する態様で構成されていることが好ましく、第2の光触媒層32の還元反応で生じた水を捕捉する態様で構成されていることが好ましく、第2の光触媒層32と第2の吸湿材料33が接していることが好ましい。
【0046】
負極20は、プロトン伝導体40から、第1の導電層21、第1の光触媒層22、第1の吸湿材料33の順に積層されていることが好ましい。
正極30は、プロトン伝導体40から、第2の導電層31、第2の光触媒層32、第2の吸湿材料33の順に積層されていることが好ましい。
【0047】
(3)光燃料電池
本実施形態に係る光燃料電池10は、上述した電気化学デバイス11と、負極20と正極30を電気的に接続する外部回路50を備える。
【0048】
本発明の光燃料電池は、さらに、負極に水蒸気を供給する水蒸気供給機構を備えることが好ましい。
水蒸気供給機構の一実施形態としては、不活性ガスを水にバブリングさせることで飽和水蒸気ガスとし、当該飽和水蒸気ガスを負極に導入する機構が挙げられる。不活性ガスとしては、窒素ガス、又はアルゴンガスが例示できる。
【0049】
前記水蒸気供給機構の一実施形態を実現する装置構成を図3に示す。不活性ガスを充填するガスボンベ、ガスカプセル等の不活性ガス充填部60、液体の水を充填する水充填部62、前記不活性ガス充填部と水充填部をつなぎ、不活性ガスを水充填部に供給する不活性ガス流路61、水充填部と負極室24をつなぎ、飽和水蒸気ガスを負極室24に供給する飽和水蒸気ガス流路63を備える構成が例示できる。
負極の酸化反応に消費されなかった水蒸気や、負極の酸化反応により生成された酸素は、負極排気流路64により排気される。
【0050】
本発明の光燃料電池は、さらに正極に酸素を供給する酸素供給機構を備えることが好ましい。
酸素供給機構の一実施形態としては、酸素ガス、又は疑似空気ガス(酸素濃度約20%)を充填する酸素ガス充填部と、前記酸素ガス充填部と正極室をつなぐ酸素ガス流路を備える構成とすることができる。
【0051】
また、本発明の光燃料電池は、さらに正極に水蒸気を供給する水蒸気供給を備えることが好ましい。
正極側の水蒸気供給機構としては、前記酸素ガス等を水にバブリングさせて正極室に充填する機構が例示できる。
具体的な構成を図3に示す。このような構成として、前記酸素ガス充填部70、液体の水を充填する水充填部72、前記酸素ガス充填部70と水充填部72とをつなぎ、酸素ガスを水充填部に供給する酸素ガス流路71、水充填部72と正極室34をつなぎ、酸素ガスの飽和水蒸気ガスを正極室34に供給する飽和水蒸気ガス流路73を備える構成が例示できる。
正極側に水蒸気を導入することで、相対湿度が向上し、光燃料電池の起電力を高めることができる。
正極の還元反応により消費されなかった酸素、酸素以外の空気、還元反応により生成した水は、正極排気流路74より排気される。
【0052】
また、水蒸気供給機構、及び酸素供給機構の別の実施形態として、負極が収容される負極収容部(例えば、負極室24)、又は正極が収容される正極収容部(例えば、正極室34)に空気を取り込む空気供給機構が例示できる。本実施形態では、負極では空気中の水蒸気を利用し、正極では空気中の酸素を利用することができる。また、正極においては、空気中の水蒸気を利用することで、相対湿度を高めることができる。
【0053】
本実施形態では、光燃料電池内部に空気を取り込むための空気導入部と、光燃料電池内部の空気を循環させる空気循環部を有する構造が例示できる。
空気導入部は、負極、又は正極を収容する収容部に、外気を導入することができればよく、例えば通気口が例示できる。また、空気導入部は、外気のホコリやゴミ等の光燃料電池内部への導入を防ぐために、フィルタが設けられていることが好ましい。
【0054】
空気循環部としては、ファンや、小型のサーキュレータ等が例示できる。
【0055】
本実施形態では、負極側で生成した酸素を正極側に供給し、正極側で生成した水(水蒸気)を、負極側に供給する、循環型の光燃料電池とすることができる。
このような形態とすることで、光燃料電池全体を小型化することができる。
【0056】
正極収容部、及び負極収容部は、少なくとも一部が光透過性を有する材料で構成されることが好ましい。すなわち、光触媒による反応に必要な光を透過する性質を有することが好ましい。
具体的には、光触媒による反応に必要な光の透過率が、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上であることが好ましい。このような材料としては、ガラス(石英)が例示できる。
【0057】
図示しないが、各流路には、気体の逆流を防止するために逆止弁(一方向弁)を備えることが好ましい。
【0058】
本発明の光燃料電池は、電気化学デバイスとして、前記電気化学デバイスを積層したスタックを用いてもよい。スタックは、常法により製造することができる。例えば、負極と、正極と、負極と正極の間に存するプロトン伝導体デバイスを有する電気化学デバイスの負極側及び/又は正極側にセパレータを設け、セパレータを挟んでさらに電気化学デバイスを積層させればよい。
【0059】
(4)電気化学デバイスの製造方法
本発明の電気化学デバイスの製造方法の一例について、以下説明する。ただし、本発明の電気化学デバイスの製造方法は、以下に限定されない。
【0060】
(4-1)光触媒成分スラリーの調製
まず、光触媒成分と水をミキサーミル容器に投入し、ミキサーミルにかけて第1の光触媒層(負極)用の光触媒成分のスラリー、及び第2の光触媒層(正極)用の光触媒成分のスラリーを調製する。
第1の光触媒層に用いる光触媒成分、及び第2の光触媒層に用いる光触媒成分は、(2)で説明したものを使用することができる。
【0061】
光触媒成分と水の比率は、光触媒成分の種類や、目的の担持量により異なるが、光触媒成分1質量部に対し、水が1~20質量部、3~20質量部、5~20質量部、5~15質量部、又は7~12質量部とすることができる。
【0062】
(4-2)導電層、光触媒層の形成
導電層を形成する材料(例えば、チタン不織布)の片面側をマスキングし、(4-1)で説明した光触媒成分のスラリーにディップコートし、乾燥させる。
乾燥後、マスキングテープを剥がし、焼結させることで、導電層、及び光触媒層を有する負極並びに正極を得ることができる。
【0063】
乾燥温度は、特に限定されず、80~120℃程度で乾燥させる。
乾燥時間は、乾燥温度により異なるが、例えば100℃で乾燥させる場合には、3~4時間程度乾燥させる。
【0064】
焼結は、光触媒成分の種類に応じて、適切な焼結温度、焼結時間を選択すればよい。
例えば、光触媒成分がTiO、又はAgTiOである場合には、焼結温度を300℃以上、焼結時間を1時間以上と設定することができる。
【0065】
(4-3)電気化学デバイス(膜-電極接合体)の作製
まず、テフロン(登録商標)板に、上から(4-2)で作製した負極、プロトン伝導体、(4-2)で作製した正極の順に重ね、その上にさらにテフロン板を重ねる。
重ねたテフロン板の上から、ホットプレスをし、ホットプレスを終えたら、テフロン板ごと負極、プロトン伝導体、正極をホットプレス機から外し、放冷する。
放冷を終えたら、テフロン板から負極、プロトン伝導体、及び正極からなる電気化学デバイス(膜-電極接合体)を回収する。
【0066】
ホットプレスの温度は、特に限定されず、例えば120~160℃とすることができる。
ホットプレスの時間は、温度より異なるが、例えば1~10分程度とすることができる。
【0067】
(4-4)吸湿材料を備える電極の形成
(2)で説明した吸湿材料の分散液を、(4-3)で製造した電気化学デバイス上の負極に滴下し、室温で乾燥させる。同様に、吸湿材料の分散液を正極に滴下し、室温で乾燥させる。
再度、負極に吸湿材料の分散液を滴下し、室温乾燥させる。
最後に、60~90℃で、5分~20分程度乾燥させることで、本発明の電気化学デバイスを得ることができる。
【0068】
負極においては、吸湿材料の分散液の滴下を2回以上行うことで、負極における吸湿材料の担持量を増やすことができる。
【0069】
吸湿材料の分散液は、自ら調製してもよいが、市販の吸湿材料の分散液を用いることができる。また、市販の吸湿材料の分散液を希釈して用いてもよい。
市販の吸湿材料の分散液として、Nafionポリマー分散液(ケマーズ社製)等が例示できる。
【0070】
負極及び正極に滴下する吸湿材料の分散液の濃度は、各電極における吸湿材料の担持量に応じて適宜調整することができる。
負極における吸湿材料の分散液の濃度は、1.5~4wt%が好ましく、1.5~3.5wt%がより好ましく、2~3wt%がさらに好ましく、2.2~2.7wtが特に好ましい。
正極における吸湿材料の分散液の濃度は、0.5~2wt%が好ましく、0.5~1.5wt%がより好ましく、1~1.5wt%がさらに好ましく、1~1.3wt%が特に好ましい。
【実施例0071】
(試験例1)電気化学デバイスの作製
ミキサーミル容器(10mL)に酸化チタン(TiO)を0.6g、水を6mL投入し、ミキサーミル(25Hz、45分)にかけ、負極用酸化チタンスラリーを調製した。
また、ミキサーミル容器(10mL)に酸化チタン銀(AgTiO、Ag:3wt%)を0.6g、水を6mL投入し、同様にミキサーミルにかけ、正極用酸化チタン銀スラリーを調製した。
【0072】
次いで、チタン不織布(日工テクノ社製、繊維径:20μm、大きさ:12mm角、厚さ:100μm、空隙率33%)の片面をマスキングしたものを2つ用意し、それぞれ負極用酸化チタンスラリー、又は正極用酸化チタン銀スラリーにディップコートした。
次いで、ディップコートしたチタン不織布を100℃で3~4時間乾燥させた。乾燥後、マスキングテープを剥がし、焼結機で300℃/1時間焼結し、TiO/Ti不織布(負極用)、AgTiO/Ti不織布(正極用)を作製した。
【0073】
次いで、テフロン板に上からTiO/Ti不織布、Nafion117(ケマーズ社製、プロトン伝導体)、及びAgTiO2/Ti不織布の順に重ね、その上からさらにテフロン板を重ねた。
重ねたテフロン板の上から、各電極、プロトン伝導体をホットプレス(140℃/5分)し、テフロン板ごとホットプレス機から外して放冷した。冷めたところで、TiO/Ti不織布/Nafion117/TiO/Ti不織布からなる電気化学デバイスを回収した。
【0074】
次いで、電気化学デバイスの負極に、Nafion D-521(5wt%、吸湿材料の分散液)をエタノール(95%)で希釈したNafion分散液(2.5wt%)13.5μLを滴下し、室温乾燥させた。
乾燥後、電気化学デバイスの正極に、Nafion D-521をエタノール(95%)で希釈したNafion分散液(1.25wt%)を13.5μL滴下し、室温乾燥させた。
乾燥後、電気化学デバイスの負極に、再度Nafion分散液(2.5wt%)を14.0μL滴下し、室温乾燥させた。
乾燥後、真空乾燥装置を用いて80℃/10分でさらに乾燥させ、本実施例の電気化学デバイスを得た。本実施例の電気化学デバイスの構成を、表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
(試験例2)起電力の測定
図3に示した構成と同様の構成で、光燃料電地を作製した。
具体的には、試験例1で作製した電気化学デバイスの負極及び正極を外部回路でつなぎ、Arの飽和水蒸気ガスが供給される負極室に負極を格納し、酸素ガスの飽和水蒸気ガスが供給される正極室に正極を格納した。
負極室にArの飽和水蒸気ガスを供給し、正極室に酸素ガスの飽和水蒸気ガスを供給し、両電極にソーラーシミュレータ(「HAL-320W」(朝日分光社製))を用いて光照射した。ソースメーター(「2450型」(ケースレー社製))を用いて実施例1の光燃料電池の起電力を測定した。
また、比較のため、酸素ガスをバブリングして得た飽和水蒸気ガスに代えて、酸素ガスを正極室に直接供給した状態(低加湿下)で、同様に光燃料電池の起電力を測定した(実施例2)。
結果を図4に示す。
【0077】
図4に示す通り、負極側にArの飽和水蒸気ガス、正極側に酸素の飽和水蒸気ガス、又は酸素ガスを供給することで、発電が起こることが示された。すなわち、本発明の光燃料電池は、水蒸気を燃料として、発電が可能であることが証明された。
【0078】
また、実施例2(低加湿下)は、起電力が0.2Vであったのに対し、実施例1(高加湿下)においては、起電力が0.4Vと、実施例2の2倍の起電力を有していた。
この結果から、本発明の光燃料電池は、加湿によりイオン伝導度が向上することで、結果として起電力が向上することが示された。すなわち、正極側に水蒸気を供給し、又は正極が吸湿材料を備える構成とすることで、起電力が高い光燃料電池となることが明らかとなった。
【0079】
(試験例3)導電層の厚さによる発電値への影響
負極における導電層の材料として、厚さが200nm、300nm、400nm、500nのチタン不織布を用いた以外は、実施例1と同一の構成の光燃料電池を作製した。各光燃料電池の両電極に、ソーラーシミュレータ(「HAL-320W」(朝日分光社製))を用いて30分間光を照射し、発電値(μA)をソースメーター(「2450型」(ケースレー社製))により測定した。結果を図5に示す。
【0080】
図5に示す通り、導電層が薄いほど、光燃料電池の発電値が高い傾向にあった。この結果から、本発明の導電層の厚さ、特に第1の導電層の厚さは、好ましくは300μm未満、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは130μm以下、最も好ましくは110μm以下である。
【0081】
(試験例4)触媒担持量による発電値への影響
負極の光触媒層におけるTiOの担持量(mg/cm)を、0.35、1.04、2.54、3.29、及び3.90に変更した以外は、実施例1と同一の光燃料電池を作製した。試験例3と同一の方法により、各光燃料電池の発電値を測定した。結果を図6に示す。
【0082】
図6に示す通り、光触媒成分の担持量が増えるほど、発電値は高くなる傾向がみられたが、担持量が3.90mg/cmの光燃料電池は、担持量が3.29mg/cmの光燃料電池よりも発電値が小さかった。
この結果から、光触媒成分の担持量が少なくとも発電自体は可能であるが、より高い発電値を得るためには、光触媒成分の担持量は、好ましくは5g/cm以下、より好ましくは4.5g/cm以下、さらに好ましくは4g/cm以下、特に好ましくは3.8g/cm以下、最も好ましくは3.5g/cm以下であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、スマートフォン等の小型機器の電池に応用することができる。
【符号の説明】
【0084】
10 光燃料電池
11 電気化学デバイス
20 負極
21 第1の導電層
22 第1の光触媒層
23 第1の吸湿材料(負極)
24 負極室
30 正極
31 第2の導電層
32 第2の光触媒層
33 第2の吸湿材料
34 正極室
40 プロトン伝導体
50 外部回路
60 不活性ガス充填部
61 不活性ガス流路
62 水充填部(負極)
63 飽和水蒸気ガス流路(負極)
64 排気流路(負極)
70 酸素ガス充填部
71 酸素ガス流路
72 水充填部(正極)
73 飽和水蒸気ガス流路(正極)
74 排気流路(正極)
図1
図2
図3
図4
図5
図6