(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053380
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】スライドファスナー及び止水チェーンの製造方法
(51)【国際特許分類】
A44B 19/32 20060101AFI20240408BHJP
A44B 19/22 20060101ALI20240408BHJP
A44B 19/54 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
A44B19/32
A44B19/22
A44B19/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159613
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小中 稔正
(72)【発明者】
【氏名】荻生 賢志
(72)【発明者】
【氏名】臼田 衛
【テーマコード(参考)】
3B098
【Fターム(参考)】
3B098DA01
3B098DC01
3B098DC23
3B098GB23
(57)【要約】
【課題】スライドファスナーの止水性の更なる向上とスライダーの摺動抵抗の更なる低減を同時に達成すること。
【解決手段】スライドファスナー1は、織成及び/又は編成された一対のファスナーテープ5m,5nの対向側縁部53に一対のコイル状エレメント4m,4nが取り付けられ、一対のファスナーテープ5m,5nの各ファスナーテープ5m,5nのテープ上面51に接着剤7を介して止水フィルム6m,6nが貼り合わされた一対の止水ストリンガー2m,2nと、一対のコイル状エレメント4m,4nの係合のために前進し、その係合解除のために後進するスライダー9を含む。ファスナーテープ5m,5nの組織内に接着剤7が浸透して止水フィルム6m,6nとファスナーテープ5m,5nが少なくとも部分的に直に接触している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織成及び/又は編成された一対のファスナーテープ(5m,5n)の対向側縁部(53)に一対のコイル状エレメント(4m,4n)が取り付けられ、前記一対のファスナーテープ(5m,5n)の各ファスナーテープ(5m,5n)のテープ上面(51)に接着剤(7)を介して止水フィルム(6m,6n)が貼り合わされた一対の止水ストリンガー(2m,2n)と、
前記一対のコイル状エレメント(4m,4n)の係合のために前進し、その係合解除のために後進するスライダー(9)を備えるスライドファスナー(1)であって、
前記ファスナーテープ(5m,5n)の組織内に前記接着剤(7)が浸透して前記止水フィルム(6m,6n)と前記ファスナーテープ(5m,5n)が少なくとも部分的に直に接触している、スライドファスナー。
【請求項2】
前記止水フィルム(6m,6n)が、可視光に透明である、請求項1に記載のスライドファスナー。
【請求項3】
前記ファスナーテープ(5m,5n)のテープ上面(51)と前記止水フィルム(6m,6n)の下面が同一平面に配置される、請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項4】
前記ファスナーテープ(5m,5n)の組織内への前記接着剤(7)の浸透深さは、前記ファスナーテープ(5m,5n)の厚みの1/3以上又は1/2以上である、請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項5】
前記浸透深さは、前記ファスナーテープ(5m,5n)の厚みの2/3未満である、請求項4に記載のスライドファスナー。
【請求項6】
前記ファスナーテープ(5m,5n)が多数本の経糸(5a)と少なくとも1本の緯糸(5b)から織成された織布であり、前記多数本の経糸(5a)には、各々が前記止水フィルム(6m,6n)に直に接触する1以上の浮部(5a1)を含む1以上の経糸が含まれる、請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項7】
前記ファスナーテープ(5m,5n)が多数本の経糸(5a)と少なくとも1本の緯糸(5b)から織成された織布であり、前記多数本の経糸(5a)には、各々が前記止水フィルム(6m,6n)に直に接触する2以上の浮部(5a1)を含む2以上の経糸が含まれる、請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項8】
前記ファスナーテープ(5m,5n)が多数本の経糸(5a)と少なくとも1本の緯糸(5b)から織成された織布であり、前記多数本の経糸(5a)の全経糸(5a)は、各々が前記止水フィルム(6m,6n)に直に接触する2以上の浮部(5a1)を含む、請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項9】
前記スライダー(9)は、上翼板(91)、下翼板(92)、前記上翼板(91)及び前記下翼板(92)を連結する連結柱(93)を含み、少なくとも前記下翼板(92)の左右の側縁部に左右のフランジ(94)が設けられ、前記フランジ(94)と前記上翼板(91)又は前記フランジ(94)と前記上翼板(91)に設けられた別のフランジ(95)との間にテープ通路(96)が画定され、
前記テープ通路(96)の上下幅又はその最小値をW1とし、前記テープ通路(96)に挿入された前記止水ストリンガー(2m,2n)の部分の厚み又はその最大値をW2とする時、1.82≧(W1/W2)≧1.4を満足する、請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項10】
前記スライダー(9)は、上翼板(91)、下翼板(92)、前記上翼板(91)及び前記下翼板(92)を連結する連結柱(93)を含み、前記上翼板(91)には前記連結柱(93)から後方に延びる仕切り条(91a)が設けられ、
前記止水フィルム(6m,6n)は、前記スライダー(9)内において前記仕切り条(91a)に接触可能なフィルム端部(65)を有する、請求項8に記載のスライドファスナー。
【請求項11】
前記一対のファスナーテープ(5m,5n)それぞれは、前記接着剤(7)が浸透した上部(58)と、撥水剤が付着した下部(59)を含む、請求項1又は2に記載のスライドファスナー。
【請求項12】
前記上部(58)には前記撥水剤が含まれない、請求項11に記載のスライドファスナー。
【請求項13】
織成及び/又は編成された一対のファスナーテープ(5m,5n)の対向側縁部(53)に一対のコイル状エレメント(4m,4n)が取り付けられた一対のファスナーストリンガーから成るファスナーチェーン(10)において前記一対のファスナーテープ(5m,5n)の両方のファスナーテープ(5m,5n)のテープ上面(51)に対して共通の止水フィルム(6)を接着剤(7)を介して貼り合わせる工程と、
前記ファスナーテープ(5m,5n)の組織内に前記接着剤(7)が浸透して前記止水フィルム(6m,6n)と前記ファスナーテープ(5m,5n)が少なくとも部分的に直に接触するように、前記ファスナーテープ(5m,5n)、前記接着剤(7)、及び前記ファスナーテープ(5m,5n)の積層体を加圧する工程と、
前記接着剤(7)を固化させる工程と、
前記一対のファスナーテープ(5m,5n)の対向側縁部(53)の間の隙間(S1)の直上の位置で切断具により前記止水フィルム(6)を切断する工程を含む、止水チェーンの製造方法。
【請求項14】
前記接着剤(7)が熱硬化性樹脂であり、
前記接着剤(7)を固化させる工程は、前記積層体を加圧する工程と前記止水フィルム(6)を切断する工程の間で行われる、請求項13に記載の止水チェーンの製造方法。
【請求項15】
前記止水フィルム(6m,6n)が、可視光に透明である、請求項13又は14に記載の止水チェーンの製造方法。
【請求項16】
前記ファスナーテープ(5m,5n)の上部(58)に前記接着剤(7)が浸透した後、少なくとも前記ファスナーテープ(5m,5n)の下部(59)に撥水剤を付着させる工程を更に含む、請求項13又は14に記載の止水チェーンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライドファスナー及び止水チェーンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、テープ本体上に反応性ホットメルト接着剤を介してフィルム部材を貼り合わせる技術が開示されている。同文献の請求項2にはフィルム部材よりも接着層を厚く形成することが開示されている。
【0003】
特許文献2には、芯紐に撥水剤又は撥油剤を付着させることが開示されている。同文献では、ファスナーチェーンの表面にポリウレタンフィルム等の液密層を接着又は溶着している(同文献の段落0025,0034参照)。
【0004】
特許文献3には、低融点樹脂層と高融点樹脂層とから構成された積層合成樹脂フィルムをファスナーテープに貼り合わせ、低融点樹脂層をファスナーテープに溶着させることが開示されている。同文献の
図7には、ファスナーテープの側縁が積層合成樹脂フィルムにより部分的に被覆された状態が図示されている。特許文献4には、低温溶融層をテープの材料内に埋め込むことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2021/048936号
【特許文献2】特許第4689631号公報
【特許文献3】特許第3580725号公報
【特許文献4】特許第5908938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的にスライドファスナーが止水性を有するか否かを問わず共通仕様のスライダーが採用されている。従って、ファスナーテープ上に止水フィルムが接着剤を介して貼り合わされた止水性を持つスライドファスナーでは、その止水フィルムと接着層の合計厚分だけ厚みが増加し、スライダーの摺動抵抗が増加してしまう。また、ファスナーテープに止水フィルムを貼り合わせたとしても、ファスナーテープが織又は編製された布地であるため、これを介した液体の浸透を完全に防ぐことは出来ない。尚、特許文献4の
図5の場合、内側層(低温溶融層)の上部の厚みと外側層の厚みの合計厚分だけ厚みが増加してしまう。このようにスライドファスナーの止水性の更なる向上とスライダーの摺動抵抗の更なる低減を同時に達成することに意義がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[態様1]本開示の一態様に係るスライドファスナーは、織成及び/又は編成された一対のファスナーテープの対向側縁部に一対のコイル状エレメントが取り付けられ、一対のファスナーテープの各ファスナーテープのテープ上面に接着剤を介して止水フィルムが貼り合わされた一対の止水ストリンガーと、一対のコイル状エレメントの係合のために前進し、その係合解除のために後進するスライダーを含む。ファスナーテープの組織内に接着剤が浸透して止水フィルムとファスナーテープが少なくとも部分的に直に接触する。
【0008】
[態様2]態様1において、止水フィルムが、可視光に透明である。
【0009】
[態様3]態様1又は2において、ファスナーテープのテープ上面と止水フィルムの下面が同一平面に配置される。
【0010】
[態様4]態様1乃至3のいずれかにおいて、ファスナーテープの組織内への接着剤の浸透深さは、ファスナーテープの厚みの1/3以上又は1/2以上である。
【0011】
[態様5]態様1乃至4のいずれかにおいて、浸透深さは、ファスナーテープの厚みの2/3未満である。
【0012】
[態様6]態様1乃至5のいずれかにおいて、ファスナーテープが多数本の経糸と少なくとも1本の緯糸から織成された織布であり、多数本の経糸には、各々が止水フィルムに直に接触する1以上の浮部を含む1以上の経糸が含まれる。
【0013】
[態様7]態様1乃至6のいずれかにおいて、ファスナーテープが多数本の経糸と少なくとも1本の緯糸から織成された織布であり、多数本の経糸には、各々が止水フィルムに直に接触する2以上の浮部を含む2以上の経糸が含まれる。
【0014】
[態様8]態様1乃至7のいずれかにおいて、ファスナーテープが多数本の経糸と少なくとも1本の緯糸から織成された織布であり、多数本の経糸の全経糸は、各々が止水フィルムに直に接触する2以上の浮部を含む。
【0015】
[態様9]態様1乃至8のいずれかにおいて、スライダーは、上翼板、下翼板、上翼板及び下翼板を連結する連結柱を含み、少なくとも下翼板の左右の側縁部に左右のフランジが設けられ、フランジと上翼板又はフランジと上翼板に設けられた別のフランジとの間にテープ通路が画定され、
テープ通路の上下幅又はその最小値をW1とし、テープ通路に挿入された止水ストリンガー(2m,2n)の部分の厚み又はその最大値をW2とする時、1.82≧(W1/W2)≧1.4を満足する。
【0016】
[態様10]態様1乃至9のいずれかにおいて、スライダーは、上翼板、下翼板、上翼板及び下翼板を連結する連結柱を含み、上翼板には連結柱から後方に延びる仕切り条が設けられ、止水フィルムは、スライダー内において仕切り条に接触可能なフィルム端部を有する。
【0017】
[態様11]態様1乃至10のいずれかにおいて、一対のファスナーテープそれぞれは、接着剤が浸透した上部と、撥水材が付着した下部を含む。
【0018】
[態様12]態様1乃至11のいずれかにおいて、上部には撥水剤が含まれない。
【0019】
[態様13]本開示の別態様に係る止水チェーンの製造方法は、
織成及び/又は編成された一対のファスナーテープの対向側縁部に一対のコイル状エレメントが取り付けられた一対のファスナーストリンガーから成るファスナーチェーンにおいて一対のファスナーテープの両方のファスナーテープのテープ上面に対して共通の止水フィルムを接着剤を介して貼り合わせる工程と、
ファスナーテープの組織内に接着剤が浸透して止水フィルムとファスナーテープが少なくとも部分的に直に接触するように、ファスナーテープ、接着剤、及びファスナーテープの積層体を加圧する工程と、
接着剤を固化させる工程と、
一対のファスナーテープの対向側縁部の間の隙間の直上の位置で切断具により止水フィルムを切断する工程を含む。
【0020】
[態様14]接着剤が熱硬化性樹脂であり、接着剤を固化させる工程は、積層体を加圧する工程と止水フィルムを切断する工程の間で行われる。
【0021】
[態様15]止水フィルムが、可視光に透明である。
【0022】
[態様16]ファスナーテープの上部に接着剤が浸透した後、少なくともファスナーテープの下部に撥水剤を付着させる工程を更に含む。
【発明の効果】
【0023】
本開示の一態様によれば、スライドファスナーの止水性の更なる向上とスライダーの摺動抵抗の更なる低減を同時に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本開示の一態様に係るスライドファスナーの概略的な上面図である。
【
図2】スライドファスナーの概略的な部分下面図であり、コイル状エレメントの係合状態を示す。
【
図3】
図1の一点鎖線III-IIIに沿う概略断面模式図である。
【
図4】縫糸によってコイル状エレメントがファスナーテープの地組織に縫い付けられた状態を示す模式図である。
【
図5】スライダーの内部構造を示す模式図であり、連結柱とフランジ間のエレメント通路にコイル状エレメントが導入されることを併せて示す。
【
図6】ファスナーテープの下部に撥水剤が付着した形態を示す概略図である。
【
図7】スライドファスナーの製造工程を示す概略的な工程図である。
【
図8】スライドファスナーの製造工程を示す概略的な工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しつつ、本発明の非限定の実施形態及び特徴について説明する。当業者は、過剰説明を要せず、各実施形態及び/又は各特徴を組み合わせることができ、この組み合わせによる相乗効果も理解可能である。実施形態間の重複説明は、原則的に省略する。参照図面は、発明の記述を主たる目的とするものであり、作図の便宜のために簡略化されている。各特徴は、本明細書に開示されたスライドファスナーにのみ有効であるものではなく、本明細書に開示されていない他の様々なスライドファスナーにも通用する普遍的な特徴として理解される。
【0026】
本願明細書では、スライドファスナー1を開閉させるスライダー9の移動方向を前後方向とする。スライドファスナー1の幅方向に平行な方向を左右方向とする。スライドファスナー1の厚み方向に平行な方向を上下方向とする。尚、上下方向は、前後方向及び左右方向の両方向に直交する。上下方向は、必ずしも鉛直方向(重力方向)を意味しない。例えば、スライドファスナー1の長手方向が鉛直方向に配される時、スライドファスナー1に関する上下方向は(鉛直方向に直交する)水平方向に含まれる。このように、本明細書で参照する方向は、鉛直方向とは無関係である。尚、後述の説明のように前後方向、左右方向、上下方向以外の方向も適宜参照される。
【0027】
図1乃至
図5を参照して説明する。スライドファスナー1は、所定の左右幅で前後方向に長く延びる可撓性を有する長尺パーツであり、一対の止水ストリンガー2m,2nと、少なくとも一つのスライダー9を有する。各止水ストリンガー2m,2nは、コイル状エレメント4m,4n、ファスナーテープ5m,5n、及び止水フィルム6m,6nを含む。止水フィルム6m,6nが接着剤7を介してファスナーテープ5m,5nに貼り合わされている。スライダー9の前進により一対のコイル状エレメント4m,4nが係合し(同時に、止水ストリンガー2m,2nが閉鎖され)、その後進により一対のコイル状エレメント4m,4nの係合が解除される(同時に、止水ストリンガー2m,2nの閉鎖が解除される)。尚、図示例では、ファスナーテープ5m,5nが平坦であるが、所謂、隠しスライドファスナーとするために中心線CL近傍で折返しを形成することもできる。
【0028】
一対のコイル状エレメント4m,4nは、一対のファスナーテープ5m,5nの対向側縁部53に取り付けられ、典型的には、二重環縫いによって縫い付けられる。各コイル状エレメント4m,4nは、モノフィラメントがコイル状に巻かれて成り、上脚41、下脚42、係合頭部43、及び反転部44から成る単位U1の連続配列を含む(
図2乃至
図4参照)。係合頭部43は、モノフィラメントの塑性変形によって前後方向で幅広に成形された噛合部を有し、左右のコイル状エレメント4m,4nの係合を可能とする。コイル状エレメント4m,4nの内部には芯紐49が挿入されてコイル状エレメント4m,4nの機械的な強度或いは縫糸Y1によるファスナーテープ5m,5nへの取付強度が高められる。二重環縫いの場合、縫糸Y1は、少なくとも1本の針糸Y11と少なくとも1本のルーパー糸Y12を含み得る(
図4参照)。
【0029】
上脚41及び下脚42は、ファスナーテープ5m,5nの幅方向に延び、テープ外方端とテープ内方端を有する。係合頭部43は、上脚41のテープ外方端と下脚42のテープ外方端を連結するように上下方向に延びる。反転部44は、隣接する単位U1の間において下脚42のテープ内方端と上脚41のテープ内方端を連結するように湾曲して延びる。テープ外方は、一つのファスナーテープに関して、そのファスナーテープのテープ面上に位置する点から対向側縁部53に交差(例えば、直交)してそのテープ面外に位置する点に向かう方向を意味する。テープ内方は、一つのファスナーテープに関して、そのファスナーテープのテープ面外に位置する点から対向側縁部53に交差(例えば、直交)してそのテープ面上に位置する点に向かう方向を意味する。
【0030】
スライダー9は、必ずしもこの限りではないが、上翼板91、下翼板92及びこれらを連結する連結柱93を有する。連結柱93は、上翼板91の前端部と下翼板92の前端部の間を上下方向に延びて連結し、これにより、Y字状のエレメント通路が形成される(
図5参照)。連結柱93の左右両側に2個の前口が設けられ、これらの前口の反対側には1個の後口が設けられる。上翼板91には連結柱93から後方に延びる仕切り条91aを設けることができる(
図5参照)。コイル状エレメント4m,4n(特にその係合頭部43)は、スライダー9の連結柱93に接触し得る。仕切り条91aが設けられる場合、スライダー9内において後述のフィルム端部65及び/又は支持部8が仕切り条91aに接触し、スライダー9内での水密性が高められ得る。また、支持部8によってフィルム端部65が補強されて仕切り条91aとの接触に耐えることができる。尚、
図3に示すように仕切り条91aを省略することもできる。
【0031】
スライドファスナー1の幅方向においてコイル状エレメント4m,4nの移動路を制限するためにフランジ94,95を設けることができる。下翼板92の左右側縁には前後方向に延びる(上側に突出した)フランジ94が設けられる。上翼板91の左右側縁にも前後方向に延びる(下側に突出した)フランジ95が設けられる。これらのフランジ94とフランジ95が上下方向で対向して配置されてファスナーテープ5m,5nの通過を許すテープ通路96が形成される。尚、フランジ94,95の一方を省略することも可能である。ファスナーテープ5m,5nに関してコイル状エレメント4m,4nが設けられる側のフランジ94の高さを大きくし、反対側のフランジ95の高さを小さくすると良い。
【0032】
図3に戻って説明する。ファスナーテープ5m,5nは、テープ上面51とテープ下面52を有し、これによりその厚みが画定される。テープ上面51には接着剤7を介して止水フィルム6m,6nが貼り合わされる。テープ下面52にはコイル状エレメント4m,4nが設けられる。また、ファスナーテープ5m,5nは、その幅方向(左右方向)においてコイル状エレメント4m,4nが取り付けられる側縁部53と、これ以外の残部のテープ主体部54に区分可能であり、側縁部53は、テープ主体部54よりも幅狭であり得る。
【0033】
ファスナーテープ5m,5nは、少なくとも1つの色(例えば、赤色、青色、緑色、黄色など)に着色されている。ファスナーテープ5m,5nの着色は、未染色の地糸でファスナーテープ5m,5nを織成又は編成した後、このファスナーテープ5m,5nを染色槽に投入すること(例えば、ファスナーチェーンをロール・トゥ・ロールの態様で搬送して染色液中を通過させること)により達成可能であり、或いは、予め染色した地糸を用いてファスナーテープ5m,5nを織成又は編成することで達成可能である。インクジェットプリンターといった手段でファスナーテープ5m,5nの上面に所定の色のインク層を塗布して着色し、又は1以上の色を有する絵柄を印刷して着色することもできる。
【0034】
止水フィルム6m,6nは、水といった液体が浸透しない樹脂フィルム(好適には、熱硬化性樹脂から成るフィルム)である。止水フィルム6m,6nは、有利には、十分な可撓性と機械的な強度を有するポリウレタンフィルムである。止水フィルム6m,6nは、例えば、剥離紙上に予め成膜されたものである。幾つかの場合、止水フィルム6m,6nの上面がその下面に比べてより高い平滑度を有する。別の場合、止水フィルム6m,6nの上面がエンボス加工された非平滑面である(その下面は、平滑面又は非平滑面であり得る)。止水フィルム6m,6nは、可視光に対して透明な透明フィルムであり得る。止水フィルム6m,6nは、スライドファスナー1の中心線CLに沿って延びる側面63を有する。中心線CLの左右両側の側面63同士は、僅かな隙間を空けて対面し、或いは、部分的に接触し得る(例えば、上下方向及び/又は前後方向において局所的に接触し得る)。止水フィルム6m,6nの厚みは、好適には、20μm~100μmの範囲内であり、より好適には、20μm~70μmの範囲内にある。側面63は、止水フィルム6の切断により形成された面である。
【0035】
止水フィルム6m,6nは、ファスナーテープ5m,5nの対向側面56を超えてスライドファスナー1の中心線CLに向かって突出したフィルム端部65と、これ以外の残部のフィルム主体部66を有する。フィルム端部65の直下にはファスナーテープ5m,5nが存在せず、ファスナーテープ5m,5nの間の隙間S1が存在する。フィルム主体部66の直下にはファスナーテープ5m,5nが存在する。好適には、止水フィルム6m,6nは、ファスナーテープ5m,5nのテープ上面51の全域を被覆する。
【0036】
接着剤7は、熱可塑性又は熱硬化性の接着剤である。より好ましくは、接着剤7は、熱硬化性であり、加熱による架橋反応の進行により固化し、固化後はその状態を維持する(即ち、再び高温になっても軟化しない)。接着剤7は、例えば、ポリウレタン系樹脂、フェノール系樹脂又はエポキシ系樹脂である。本実施形態では、ファスナーテープ5m,5nの組織内に接着剤7が浸透して止水フィルム6m,6nとファスナーテープ5m,5nが少なくとも部分的に直に接触する。これによりファスナーテープ5m,5nと止水フィルム6m,6nの間に形成される接着層の厚みを更に低減でき、同時にファスナーテープ5m,5nの組織への液体の浸透も更に抑制することができる。止水フィルム6m,6nにファスナーテープ5m,5nが部分的に直に接触する部分では接着剤7がないため、止水フィルム6m,6nの剥離強度が低下してしまうおそれもあるが、問題ない範囲であることを確認できている。オプションとして、止水フィルム6m,6nと接着剤7を同一材料又は同一種類の材料とする(好適には、両方をポリウレタン系樹脂とする)ことで、止水フィルム6m,6nと接着剤7との間の剥離を生じ難くすることができる。止水フィルム6m,6nが透明フィルムである場合、接着剤7も透明な接着剤(例えば、無機又は有機顔料を含有しないもの)を用いることが好ましく、これによりファスナーテープ5m,5nの色を上手く表出させることができる。
【0037】
止水フィルム6m,6nに透明フィルムを用いる場合、止水フィルム6m,6nとファスナーテープ5m,5nの少なくとも部分的な直接触によって、接着剤7の介在無しで、或いは、より少量の接着剤7の介在で、ファスナーテープ5m,5nの色を表出させることができる。接着剤7による可視光の透過率の低下、接着剤7による可視光吸収、及び/又は、接着剤7と止水フィルム6m,6nの界面での可視光線の屈折によって、ファスナーテープ5m,5nの色の見栄えの変化が抑制される(例えば、ファスナーテープ5m,5nの色にクスミが生じることが抑制される)。尚、止水フィルム6m,6nが透明であることは、もっぱら止水フィルム6m,6nが可視光に関して透明であることを意味する。例えば、透明フィルムは、可視域(360nm~830nm)に属する光について70%又は80%又は90%以上の透過率を有する。
【0038】
スライドファスナー1の製造条件(温度、湿度、時間、圧力、速度など)の変動によって(透明な)止水フィルム6m,6nを介して観察されるファスナーテープ5m,5nの色に違いが出る場合がある。スライドファスナー1の製造ライン毎に止水フィルム6m,6nを介して観察されるファスナーテープ5m,5nの色に違いが出る場合もある。止水フィルム6m,6nとファスナーテープ5m,5nの少なくとも部分的な直接触によって、スライドファスナー1の製造条件の変動又は製造ラインの差に起因して止水フィルム6m,6nを介して観察されるファスナーテープ5m,5nの色に違いが出ることが抑制される。スライドファスナー1の製造条件の変動又は異なる製造ラインにも関わらず同一色のスライドファスナー1が得られ易くなり、スライドファスナー1の製造管理負担が大きく低減される。
【0039】
止水フィルム6m,6nとして用いられる透明フィルムは、上下片面又は両面が平滑であるものに限らず、上下片面又は両面にエンボス加工(例えば、二次元的に形成された凸部又は凹部の群)が施された非平滑なものであっても良い。エンボス加工により光の乱反射が生じてつや消し効果が得られる。尚、上下両面が平滑面の透明フィルムを用いる場合、艶出し効果が得られる。いずれの種類の透明フィルムを用いるとしても、止水フィルム6m,6nとファスナーテープ5m,5nの少なくとも部分的な直接触によってファスナーテープ5m,5nの色をより忠実に表出させることができる。
【0040】
典型的には、ファスナーテープ5m,5nのテープ上面51と止水フィルム6m,6nの下面が同一平面に配置される。ファスナーテープ5m,5nのテープ上面51の凸凹(例えば、経糸の浮き沈みに伴う凸凹や糸の円形の断面形状に起因した凸凹)が、ファスナーテープ5m,5nの組織内への接着剤7の浸透によって平滑化される。この結果、止水フィルム6m,6nを介してファスナーテープ5m,5nのテープ上面51の凸凹が視認されること又はその程度が低減される。
【0041】
止水フィルム6m,6nとファスナーテープ5m,5nの直接触は、ファスナーテープ5m,5nのテープ上面51の全域に範囲し得る。ファスナーテープ5m,5nが、多数本の経糸5aと少なくとも1本の緯糸5bから織成された織布である場合(
図4参照)、上述の直接触は、経糸5aの浮部5a1と止水フィルム6m,6nの下面の局所的な接触が2次元的に点在したものに相当し得る。例えば、緯糸5bと止水フィルム6m,6nが直接触せず、両者の間に接着剤7が存在することは許容される。また、全ての経糸5aがその全ての浮部5a1において止水フィルム6m,6nと接触する必要はない。
【0042】
ファスナーテープ5m,5nの組織内への接着剤7の浸透は、ファスナーテープ5m,5nのテープ上面51の全域に範囲し得る。ファスナーテープ5m,5nの組織内への接着剤7の浸透は、ファスナーテープ5m,5nが存在する平面に関して2次元的に連続して生じ得る。この結果、ファスナーテープ5m,5nの上部58は、その組織(経糸及び緯糸)と接着剤7の複合層となる。ファスナーテープ5m,5nの下部59には接着剤7が浸透していない。上部58と下部59の境界は、接着剤7の有無に基づいて判断することができる。上部58を上層部と呼び、下部59を下層部と呼ぶこともできる。
【0043】
好適には、ファスナーテープ5m,5nの組織内への接着剤7の浸透深さは、ファスナーテープ5m,5nの厚みの1/3以上又は1/2以上である。ファスナーテープ5m,5nの柔軟性を維持するため、この浸透深さは、ファスナーテープ5m,5nの厚みの2/3未満であると良い。ファスナーテープ5m,5nの厚みは、典型的には、300~600μmの範囲内である。
【0044】
幾つかの場合、止水フィルム6m,6nの下面には接着剤シートが予め貼り合わされており、又は接着剤が接着剤層として成膜されており、少なくとも止水フィルム6m,6nと接着剤層を含む積層体がファスナーテープ5m,5n上に貼り合わされ、その後、厚み方向で加圧される。この結果、接着剤シートがファスナーテープ5m,5nの組織に浸透して一体化し、また、止水フィルム6m,6nとファスナーテープ5m,5nが少なくとも部分的に直に接触する。接着剤シートを用いることなく、止水フィルム6m,6nの下面に接着剤7を塗布してファスナーテープ5m,5n上に貼り合わせることもできる。接着剤7の粘度を適切に調整し、上下方向で適度に加圧することによりファスナーテープ5m,5nの組織内への接着剤7の浸透を確保することができ、止水フィルム6m,6nとファスナーテープ5m,5nが少なくとも部分的に直に接触する。
【0045】
止水フィルム6m,6nは、一対のファスナーテープ5m,5nの対向側縁部53の間の隙間S1上に配置されたフィルム端部65を有する。このフィルム端部65は、接着剤7が固化して成る支持部8により支持される。この支持部8は、ファスナーテープ5m,5nの対向側面56を部分的に被覆するように形成される。支持部8は、上述のように接着剤7が浸透したファスナーテープ5m,5nの上部58と同等の厚み又はこれ未満の厚みを有し得る。支持部8は、典型的には、スライドファスナー1の中心線CLに向かって漸減する厚みを有する。この結果、その下面には中心線CLに向かって緩慢に上側に傾斜する傾斜面が形成され得る。
【0046】
ファスナーテープ5m,5nの組織への接着剤7の浸透によって止水ストリンガー2m,2nの厚みが低下し、次の条件を満足することができる。端的には、
図3に示すように、テープ通路96の上下幅又はその最小値をW1とし、テープ通路96に挿入された止水ストリンガー2m,2nの部分の厚み又はその最大値をW2とする時、1.82≧(W1/W2)≧1.4を満足する。これによりスライダー9(特に、そのフランジ94,95)と止水ストリンガー2m,2nが接触する頻度又は程度が低減してスライダー9の摺動抵抗が低減する。W1は、典型的には、600~950μmの範囲内にある。W2は、典型的には、320~650μmの範囲内にある。
【0047】
止水ストリンガー2m,2nとフランジ94,95の間に生じ得る隙間の上下幅が増加することに伴って、この隙間を介してスライダー9内に液体が浸入してしまうおそれが高まる。幾つかの場合、止水フィルム6m,6nのフィルム端部65及び/又は上述の支持部8がスライダー9内において仕切り条91a及び/又は連結柱93に接触可能である。これによりスライダー9内におけるスライドファスナー1の止水性の低下が抑制される。尚、連結柱93は、上翼板91との連結箇所付近において
図5の点線で示すように太く設計され得る。
【0048】
図6を参照して説明する。
図6に図示のように、接着剤7がファスナーテープ5m,5nの上部58に浸透して固化し、この上部58には液体が浸透しないか、或いは浸透し難くなる。ファスナーテープ5m,5nを介した液体の浸透(例えば、隙間S1からファスナーテープ5m,5nの組織に液体が浸透してファスナーテープ5m,5nのテープ下面52に到達する流路の形成)を阻止するため、ファスナーテープ5m,5nの下部59に対して撥水剤を付着させることができる。ファスナーテープ5m,5nの下部59の全域に限らず、ファスナーテープ5m,5nの対向側縁部53に限定して撥水剤を付着させることもできる。ファスナーテープ5m,5nの上部58と下部59の境界は、接着剤7の有無に基づいて定めることができる(図示の直線的な境界は説明の便宜のために引いたものに過ぎない)。撥水剤の付与のために、スプレー・コーティング、撥水液への止水ストリンガー2m,2nの浸漬といった様々な方法を採用することができる。
【0049】
ファスナーテープ5m,5nに接着剤7を介して止水フィルム6m,6nを貼り合わせた後に撥水剤を付与させることによって撥水剤の使用量を削減することができ、また芯紐49及びコイル状エレメント4m,4nにも撥水剤を付着させることができるが、この方法に限られない。ファスナーテープ5m,5nを予め撥水液に浸漬しておき、その後、止水フィルム6m,6nを貼り合わせることもできる。この場合、ファスナーテープ5m,5nの上部58にはファスナーテープ5m,5nの組織及び接着剤7に加えて撥水剤が存在することになる。念のため述べれば、撥水剤の付与は省略可能である。
【0050】
スライドファスナー1の操作について説明する。スライダー9が前進して左右のコイル状エレメント4m,4nが係合する時、左右のファスナーテープ5m,5nの間には隙間S1が形成されて接触しない。しかしながら、この隙間S1の直上には止水フィルム6m,6nのフィルム端部65が配されており、隙間S1への流体の進入が阻止又は抑制される。また、フィルム端部65には上述の支持部8が固着している。従って、フィルム端部65の間の隙間を介して液体が流入することが更に抑制される。
【0051】
スライドファスナー1の中心線CLの左右両側に設けられたフィルム端部65が接触することは必須ではないが、スライドファスナー1の長さ方向にその中心線CLに沿って局所的又は断続的に接触することは想定されている。スライドファスナー1の中心線CLの左右両側に設けられた支持部8同士の接触についても同様である。カッターによる切断に伴って、止水フィルム6m,6nの一部が削られ、支持部8も部分的に削られるが、依然として局所的又は断続的な接触は生じ得る。
【0052】
スライドファスナー1の製法について説明する。まず、ファスナーチェーン10の両方のファスナーテープ5m,5nのテープ上面に対して共通の止水フィルム6を接着剤7を介して貼り合わせる(
図7参照)。次に、ファスナーテープ5m,5nの対向側縁部53の間の隙間S1の直上の位置でファスナーチェーン10の中心線CLに沿ってカッターといった切断具101により止水フィルム6を切断する(
図8参照)。このようにして個々のファスナーテープ5m,5n上に個々の止水フィルム6m,6nが貼り合わされた止水チェーンが得られる。ファスナーテープ5m,5nの両方のテープ上面51に対して共通の止水フィルム6を接着剤7を介して貼り合わせた後、又は、これと同時に、ファスナーテープ5m,5nの組織内に接着剤7が浸透して止水フィルム6m,6nとファスナーテープ5m,5nが少なくとも部分的に直に接触するように、ファスナーテープ5m,5n、接着剤7、及びファスナーテープ5m,5nの積層体を加圧することができる。これによりファスナーテープ5m,5nに対して止水フィルム6m,6nがより強く密着し、かつ支持部8の形成が促進される。オプションとして、加圧手段を用いて止水ストリンガー2m,2n(止水フィルム6m,6n、接着剤7、及びファスナーテープ5m,5nの積層体)を厚み方向(換言すれば、積層体の積層方向)で加圧することができる。加圧手段は、バネといった弾性手段によって付勢された加圧ロールを含み得る。例えば、加圧ロールと(回転軸が所定位置に固定された)送りロールの間で止水ストリンガー2m,2nを送ることにより、止水ストリンガー2m,2nがその厚み方向で加圧される。他の加圧手段も採用可能である。
【0053】
上述の積層体の加圧の後、接着剤7を固化させることができる。これに続いて、ファスナーテープ5m,5nの対向側縁部53の間の隙間S1の直上の位置で切断具で止水フィルム6を切断することができる。接着剤7が熱硬化性樹脂である場合、接着剤7を固化させる工程は、上述の加圧工程と上述の切断工程の間で行うと良い。ファスナーテープ5m,5nの上部58に接着剤7が浸透した後、好ましくは、固化した後、ファスナーテープ5m,5nの下部59に撥水剤を付着させると良い。
【0054】
念のため述べれば、上述の貼り合わせ工程は、止水フィルム6と接着剤層をこの順で剥離紙上に形成した積層体をファスナーテープ5m,5nに貼り合わせることで実施することもできる。接着剤層とファスナーテープが直接触する態様で貼り合わせが行われる。止水フィルム6が形成された剥離紙の主面が平滑面である場合、剥離紙の平滑面が止水フィルム6の上面に転写されて平滑面になる。止水フィルム6及び接着剤層は、いずれも熱硬化性樹脂であり得るが、必ずしもこの限りではない。尚、ファスナーチェーン10は、コイル状エレメント4m,4n同士が係合した状態の止水フィルム6m,6nから構成される。
【0055】
図9は、本実施形態に係るスライドファスナーのサンプルの断面写真を示す。
図9において矢印で示す箇所においてファスナーテープと止水フィルムが直に接触している。尚、写真の矢印は、単なる例示のために付加したものに過ぎず、矢印が指し示す以外の他の場所においてもファスナーテープと止水フィルムの直接触は生じている。また、この写真においてファスナーテープと止水フィルムの間で白く写されている部分が接着剤である(特に、右側の止水ストリンガー参照)。
【0056】
上述の開示を踏まえ、当業者は、各特徴及び各実施形態に対して様々な変更を加えることができる。請求の範囲に盛り込まれた符号は、参考のためであり、請求の範囲を限定解釈する目的で参照されるべきものではない。
【符号の説明】
【0057】
1 :スライドファスナー
2m :止水ストリンガー
2n :止水ストリンガー
4m :コイル状エレメント
4n :コイル状エレメント
5a :経糸
5a1 :浮部
5b :緯糸
5m :ファスナーテープ
5n :ファスナーテープ
6 :止水フィルム
6m :止水フィルム
6n :止水フィルム
7 :接着剤
9 :スライダー
51 :テープ上面
53 :側縁部
53 :対向側縁部
58 :上部
59 :下部
65 :フィルム端部
91 :上翼板
91a :仕切り条
92 :下翼板
93 :連結柱
94 :フランジ
95 :フランジ
96 :テープ通路