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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005339
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】電子レンジ加熱用セット、及び包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/34 20060101AFI20240110BHJP
   F24C 7/02 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
B65D81/34 W
F24C7/02 561A
F24C7/02 551B
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105489
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 薫
(72)【発明者】
【氏名】阿部 恭大
【テーマコード(参考)】
3E013
3L086
【Fターム(参考)】
3E013BB06
3E013BB08
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC06
3E013BC12
3E013BC13
3E013BC14
3E013BD11
3E013BE01
3E013BF42
3E013BF45
3E013BG02
3E013BG11
3L086AA01
3L086BF01
3L086BF09
3L086DA29
(57)【要約】
【課題】マイクロ波の照射により発熱する発熱体を用いて食品にクリスピー感を付与することができ、表面に焼き面以外の部分がある食品にあっては当該部分の軟らかさを保持し得る電子レンジ加熱用セット、及び、該電子レンジ加熱用セットとこれを収納する外装袋とを含む包装体を提供する。
【解決手段】トレイと、上記トレイに収容された食品と、マイクロ波の照射により発熱する発熱体と、を含む電子レンジ加熱用セットであって、
上記発熱体は、上記食品と接して載置され、
上記発熱体は、上記食品と接する面とは反対側の面に基材が積層されており、
上記トレイの底面に平行な方向において、上記発熱体の外縁が、上記トレイの内壁に接触せず上記トレイの内壁の内側に位置して載置される、電子レンジ加熱用セット。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイと、前記トレイに収容された食品と、マイクロ波の照射により発熱する発熱体と、を含む電子レンジ加熱用セットであって、
前記発熱体は、前記食品と接し得るように載置され、
前記発熱体は、前記食品と接し得る面とは反対側の面に基材が積層されている、電子レンジ加熱用セット。
【請求項2】
トレイ、前記トレイに収容された食品、及び、マイクロ波の照射により発熱する発熱体と基材とを含む発熱積層体を含む電子レンジ加熱用セットであって、
前記発熱積層体は、前記発熱体側が前記食品に向いて載置されている、電子レンジ加熱用セット。
【請求項3】
前記トレイの内壁はプラスチック製である、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項4】
前記発熱体は、前記食品の、前記トレイの底面側とは反対の前記トレイの開放口側において前記食品と接し得るように載置されている、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項5】
前記発熱体が、前記食品の、前記トレイの開放口側に載置されているとき、前記トレイの内壁は、プラスチック製である、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項6】
前記発熱体は、導電性物質薄膜層を含む、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項7】
前記発熱体は、耐熱層を更に含み、前記発熱体は、前記耐熱層が前記食品と接し得るように載置されている、請求項6に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項8】
前記トレイの底面に平行な方向において、前記導電性物質薄膜層の外縁が、前記トレイの内壁に接触せず前記トレイの内壁の内側に位置して載置されている、請求項6に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項9】
前記トレイの底面に平行な方向において、前記発熱体と前記基材とは、前記導電性物質薄膜層の外縁が前記基材の外縁からはみ出ることなく積層されている、請求項6に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項10】
前記トレイの底面に平行な方向において、前記発熱体と前記基材とは、前記導電性物質薄膜層の外縁が前記基材の外縁の内側に位置して積層されている、請求項9に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項11】
前記トレイの底面側とは反対の前記トレイの開放口側において前記トレイに被せられたフタを更に含む、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セットであって、
前記発熱体は、前記フタの、前記トレイの底面に対する天面の食品側に、前記基材を介して積層されている、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項12】
前記発熱体は、導電性物質薄膜層を含み、
前記フタの天面の裏面において、前記発熱体は、前記導電性物質薄膜層の外縁が、前記フタの天面の外縁からはみ出ることなく前記フタの天面の外縁の内側に位置して、前記基材を介して積層されている、請求項11に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項13】
前記トレイの底面に垂直な断面において、前記食品及び前記発熱体は、前記トレイの開放口からはみ出ることなく前記トレイ内に収容されている、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項14】
前記食品は、焼き面を有する調理済食品であり、前記発熱体は、前記焼き面と接し得るように載置されている、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項15】
前記食品は、包餡食品であり、前記発熱体は、前記包餡食品の焼き面と接し得るように載置されている、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項16】
前記食品は、冷凍食品である、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項17】
前記トレイの底面が、前記食品の姿勢を保持するための形状を有する、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項18】
前記食品上に載置され、前記食品の姿勢を保持するための形状を有するカバーを更に含む、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項19】
前記基材は、厚さが0.02mm以上である、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項20】
前記トレイの底面側とは反対の前記トレイの開放口に被せたフィルムが前記トレイの上端に圧着されている、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項21】
前記発熱体は、前記フィルムの、前記トレイの食品側に、前記基材を介して積層されている、請求項20に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項22】
前記発熱体は、導電性物質薄膜層を含み、
前記フィルムの裏面において、前記発熱体は、前記導電性物質薄膜層の外縁が、前記フィルムの、前記トレイの上端との圧着部により画定される内壁の外縁からはみ出ることなく前記フィルムの内壁の外縁の内側に位置して、前記基材を介して積層されている、請求項21に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項23】
前記基材は、厚さが0.02mm以上、0.65mm未満である、請求項20に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項24】
前記基材は、厚さが0.62mm超である、請求項20に記載の電子レンジ加熱用セット。
【請求項25】
請求項1~24の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セットと、前記電子レンジ加熱用セットを収納する外装袋とを含む、包装体。
【請求項26】
前記基材は、厚さが0.02mm以上、0.65mm未満である、請求項25に記載の包装体。
【請求項27】
前記基材は、厚さが0.62mm超である、請求項25に記載の包装体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ加熱用セット、及び包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
焼き餃子の冷凍食品等の食品を電子レンジで加熱する際に、マイクロ波の照射により発熱する発熱体(本明細書において「マイクロ波吸収発熱体」ともいう。)を食品に接触させることにより、焼きたてのような「パリパリ」とした軽い食感、いわゆるクリスピー感を食品に付与する検討がなされている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-071780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
焼き餃子のように食品表面の一部のみに焼き面がある食品は、焼き面部分は硬くクリスピー感がある一方で、焼き面以外の部分、例えば、餃子の耳の部分、即ち、中具を包み込んだ餃子の皮の周縁部同士を襞折等により接着した部分は軟らかいことが望ましい。
【0005】
しかしながら、マイクロ波吸収発熱体を用いて電子レンジで加熱すると、適切なクリスピー感が得られない場合があり、また、餃子の耳のように焼き面以外の部分が硬い食感となってしまうという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、マイクロ波の照射により発熱する発熱体を用いて食品にクリスピー感を付与することができ、表面に焼き面以外の部分がある食品にあっては当該部分の軟らかさを保持し得る電子レンジ加熱用セット、及び、当該電子レンジ加熱用セットとこれを収納する外装袋とを含む包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、マイクロ波吸収発熱体を食品と接し得るように載置し、当該発熱体の食品と接し得る面とは反対側の面に基材を積層することにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づくものであり、具体的には下記構成を有する。
[1]
トレイと、上記トレイに収容された食品と、マイクロ波の照射により発熱する発熱体と、を含む電子レンジ加熱用セットであって、
上記発熱体は、上記食品と接し得るように載置され、
上記発熱体は、上記食品と接し得る面とは反対側の面に基材が積層されている、電子レンジ加熱用セット。
[2]
トレイ、上記トレイに収容された食品、及び、マイクロ波の照射により発熱する発熱体と基材とを含む発熱積層体を含む電子レンジ加熱用セットであって、
上記発熱積層体は、上記発熱体側が上記食品に向いて載置されている、電子レンジ加熱用セット。
[3]
上記トレイの内壁は、プラスチック製である、上記[1]又は[2]に記載の電子レンジ加熱用セット。
[4]
上記発熱体は、上記食品の、上記トレイの底面側とは反対の上記トレイの開放口側において上記食品と接し得るように載置されている、上記[1]~[3]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[5]
上記発熱体が、上記食品の、上記トレイの開放口側に載置されているとき、上記トレイの内壁は、プラスチック製である、上記[1]~[4]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[6]
上記発熱体は、導電性物質薄膜層を含む、上記[1]~[5]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[7]
上記発熱体は、耐熱層を更に含み、上記発熱体は、上記耐熱層が上記食品と接し得るように載置されている、上記[6]に記載の電子レンジ加熱用セット。
[8]
上記トレイの底面に平行な方向において、上記導電性物質薄膜層の外縁が、上記トレイの内壁に接触せず上記トレイの内壁の内側に位置して載置されている、上記[6]又は[7]に記載の電子レンジ加熱用セット。
[9]
上記トレイの底面に平行な方向において、上記発熱体と上記基材とは、上記導電性物質薄膜層の外縁が上記基材の外縁からはみ出ることなく積層されている、上記[6]~[8]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[10]
上記トレイの底面に平行な方向において、上記発熱体と上記基材とは、上記導電性物質薄膜層の外縁が上記基材の外縁の内側に位置して積層されている、上記[9]に記載の電子レンジ加熱用セット。
[11]
上記トレイの底面側とは反対の上記トレイの開放口側において上記トレイに被せられたフタを更に含む、請求項1に記載の電子レンジ加熱用セットであって、
上記発熱体は、上記フタの、上記トレイの底面に対する天面の食品側に、上記基材を介して積層されている、上記[1]~[10]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[12]
上記発熱体は、導電性物質薄膜層を含み、
上記フタの天面の裏面において、上記発熱体は、上記導電性物質薄膜層の外縁が、上記フタの天面の外縁からはみ出ることなく上記フタの天面の外縁の内側に位置して、上記基材を介して積層されている、上記[11]に記載の電子レンジ加熱用セット。
[13]
上記トレイの底面に垂直な断面において、上記食品及び上記発熱体は、上記トレイの開放口からはみ出ることなく上記トレイ内に収容されている、上記[1]~[12]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[14]
上記食品は、焼き面を有する調理済食品であり、上記発熱体は、上記焼き面と接し得るように載置されている、上記[1]~[13]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[15]
上記食品は、包餡食品であり、上記発熱体は、上記包餡食品の焼き面と接し得るように載置されている、上記[1]~[14]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[16]
上記食品は、冷凍食品である、上記[1]~[15]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[17]
上記トレイの底面が、上記食品の姿勢を保持するための形状を有する、上記[1]~[16]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[18]
上記食品上に載置され、上記食品の姿勢を保持するための形状を有するカバーを更に含む、上記[1]~[17]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[19]
上記基材は、厚さが0.02mm以上である、上記[1]~[18]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
【0009】
[20]
上記トレイの底面側とは反対の上記トレイの開放口に被せたフィルムが上記トレイの上端に圧着されている、上記[1]~[19]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[21]
上記発熱体は、上記フィルムの食品側に、上記基材を介して積層されている、上記[20]に記載の電子レンジ加熱用セット。
[22]
上記発熱体は、導電性物質薄膜層を含み、
上記フィルムの裏面において、上記発熱体は、上記導電性物質薄膜層の外縁が、上記フィルムの、上記トレイの上端との圧着部により画定される内壁の外縁からはみ出ることなく上記フィルムの内壁の外縁の内側に位置して、上記基材を介して積層されている、上記[21]に記載の電子レンジ加熱用セット。
[23]
上記基材は、厚さが0.02mm以上、0.65mm未満である、上記[1]~[22]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[24]
上記基材は、厚さが0.62mm超である、上記[1]~[22]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セット。
[25]
上記[1]~[24]の何れか1項に記載の電子レンジ加熱用セットと、上記電子レンジ加熱用セットを収納する外装袋とを含む、包装体。
[26]
上記基材は、厚さが0.02mm以上、0.65mm未満である、上記[25]に記載の包装体。
[27]
上記基材は、厚さが0.62mm超である、上記[25]に記載の包装体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マイクロ波の照射により発熱する発熱体を用いて食品にクリスピー感を付与することができ、表面に焼き面以外の部分がある食品にあっては当該部分の軟らかさを保持し得る電子レンジ加熱用セット、及び、該電子レンジ加熱用セットとこれを収納する外装袋とを含む包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】態様Aの電子レンジ加熱用セットの一例の断面図である。
図2図1及び図4に示す一例の切断面pの俯瞰図である。
図3】態様Aの電子レンジ加熱用セットのトレイの底面がV字形を有する一例の断面図である。
図4】態様Bの電子レンジ加熱用セットの一例の断面図である。
図5】態様Bの電子レンジ加熱用セットのカバーを有する一例の断面図である。
図6】トップシールを有する態様Aの電子レンジ加熱用セットの一例の断面図である。
図7】トップシールを有する態様Aの電子レンジ加熱用セットのトレイの底面がV字形を有する一例の断面図である。
図8】トップシールを有する態様Bの電子レンジ加熱用セットの一例の断面図である。
図9】態様Aの電子レンジ加熱用セットが外装袋に収納された包装体の一例の断面図である。
図10】態様Aのトレイの底面がV字形を有する電子レンジ加熱用セットが外装袋に収納された包装体の一例の断面図である。
図11】態様Bの電子レンジ加熱用セットが外装袋に収納された包装体の一例の断面図である。
図12】実施例1~12の包装体を電子レンジ加熱に際し電子レンジ庫内に載置する上下等の概念を示す断面図である。
図13】実施例15の電子レンジ加熱用セットを電子レンジ加熱に際し電子レンジ庫内に載置する上下等の概念を示す断面図である。
図14】マイクロ波吸収発熱体と基材との積層体の一例を示す模式図である。
図15】フタを含む態様Aの一例を示す模式図である。
図16】マイクロ波吸収発熱体が積層されたトップシール材の裏面の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。本発明は以下の記述によって限定されるものではなく、各構成要素は本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0013】
[電子レンジ加熱用セット]
本発明の電子レンジ加熱用セットは、トレイと、該トレイに収容された食品と、マイクロ波の照射により発熱する発熱体(マイクロ波吸収発熱体)とを含む。
【0014】
<トレイ>
本発明におけるトレイとしては、食品を収容できるものであれば特に限定されず、通常、底ないし底面と側壁ないし側面とを有し、該底面ないし底の外縁と、側壁の下端とが繋がっており、好ましくは該底面ないし底の外縁と側壁の下端とは連続しており、通常、当該両者は切れ目なく連続している。本明細書において、トレイの底面側とは反対のトレイの開放口側を単に「トレイの開放口」ないし「トレイの開放口側」ともいう。
【0015】
本発明において、トレイの底ないし底面を鉛直方向の下側とし、トレイの開放口を鉛直方向の上側とする態様(本段落において「前者の態様」という。)であってもよいし、トレイの底ないし底面を鉛直方向の上側とし、トレイの開放口を鉛直方向の下側とする態様(本段落において「後者の態様」という。)であってもよい。後者の態様は特に後述の外装袋及び/又はトップシール材を有する態様である場合に可能である。本明細書において、便宜上、前者の態様を中心に説明し上下等をいう場合があるが、特に別段の記載をしない限り、上下を逆に読み替える等による後者の態様をも含む。
【0016】
トレイは、側壁が底ないし底面と垂直であり底面とトレイ上端の開放口とが底面に平行な方向において同じ大きさ、形状であってもよい。トレイは、また、トレイ上端の開放口が底面に平行な方向において底面よりも面積が大きいものであってもよく、その場合、通常、開放口の形状は底面の形状の相似形である。
【0017】
トレイの素材は、電子レンジ加熱に供することができる素材であれば特に限定されないが、通常の電子レンジ加熱により溶融、変形等を起こさない程度の耐熱性を有する素材が好ましく、例えば、板紙、厚紙等の紙;ポリ塩化ビニール、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等のプラスチック類;等が挙げられる。本発明においては、基材の積層等により、マイクロ波吸収発熱体の発熱によるトレイの溶融の防止も好ましくは可能であるので、トレイとしては、紙製トレイのほか、内壁がプラスチック製であるトレイであってもよく、後者のトレイとしては、例えば、紙製トレイ等のプラスチック以外の素材からなるトレイの内壁がプラスチックでライニングないしコーティングされたトレイであってもよいし、トレイ全体がプラスチックからなるプラスチック製トレイであってもよい。プラスチック製トレイの成型方法に特に限定はなく、射出成形、ブロー成形、真空成形、圧空成形等が挙げられる。本発明においては、このように、従来は発熱体の発熱による溶融防止のために用いられてこなかったプラスチックのトレイであっても使用可能であり、例えば、冷凍食品、冷蔵食品等のトレイとして従来用いられるトレイを用いることができる。
【0018】
トレイは、その底面に垂直な断面において、食品及びマイクロ波吸収発熱体をトレイの開放口からはみ出させることなくトレイ内に収容する程度の深さを有することが好ましい。このようなトレイであれば、製品輸送等において食品の破損、食品のトレイ上の位置や姿勢の乱れを防止しやすい。このようなトレイの深さは、具体的には、トレイの底面に垂直な断面において、食品の高さと、マイクロ波吸収発熱体の厚さと、該発熱体に積層されている基材の厚さとの合計値以上であることが好ましく、該合計値は、電子レンジ加熱前における合計値であることがより好ましく、例えば冷凍食品である場合、冷凍状態における合計値であることが好ましい。
【0019】
トレイの底面は、凹凸のない平面ないし平坦なものであってもよいし、また、食品を収容するための凹部ないし凹凸を有してもよいし、食品の姿勢を保持するための形状を有してもよいし、食品の収容や姿勢保持のためとは異なる溝等の凹凸を有してもよいし、これらの組合せであってもよい。食品の姿勢を保持するための形状は、食品を収容するための凹部ないし凹凸を兼ね備えたものであってもよく、例えば、底面に垂直な断面において、V字形を有するものであってもよい。トレイの底面がこのような食品の姿勢を保持するための形状を有することは、食品の形状にもよるが、製品輸送等において食品の破損、食品のトレイ上の位置や姿勢の乱れを防止しやすいことに加え、食品とマイクロ波吸収発熱体との接触を容易にしたり両者の接触面積を大きくする観点で好ましい場合がある。トレイの底面については後述する。
【0020】
<食品>
本発明における食品としては、電子レンジ加熱が可能な食品であれば特に限定されず、生の食品、又は加熱した食品であってよく、加熱した食品としては、調理済食品、半調理食品等の調理した食品等が挙げられ、例えば、後述の包餡食品であってもよい。
【0021】
また、食品としては、冷凍食品、冷蔵食品(チルド食品)、又は常温食品であってよいが、冷凍食品、冷蔵食品が好ましく、冷凍食品がより好ましい。冷凍食品の場合、冷凍温度に特に制限はないが、例えば-35℃以下で急速凍結した後-10~-20℃に温調すればよい。また、冷蔵食品の場合、冷蔵温度は、0~10℃が好ましい。
【0022】
食品としては、焼くないし焼成するという調理に適した食品が好適であり、例えば、ピザ、お好み焼き、タコ焼き、包餡食品等の粉食ないし調理済食品;クッキー、ビスケット、煎餅、お餅、カステラ、ホットケーキ等の菓子類;等が挙げられるが、なかでも、クリスピー感が望まれる食品が好ましく、焼き面を有する食品がより好ましく、焼き面を有する調理済食品が更により好ましい。
【0023】
本明細書において、「焼き面」とは、食品のうちフライパン、鉄板等の加熱体に接して焼く等の加熱調理が行われた面であり、また、本発明においてマイクロ波吸収発熱体の発熱により焼くこととなる(通常、当該発熱により、焼き色、焼き目、焦げ目等が付く)面であってもよい。焼き面は、ピザ、お好み焼き等のように食品表面の全体にあってもよいし、焼き餃子等のように食品表面の一部のみにあってもよい。
【0024】
焼き面は、食品の他の表面部分よりも水分が少なくてもよく、また、焼き色、焼き目、焦げ目等が付いた面であってもよく、例えば焼き餃子の場合、通常、フライパン、鉄板等の加熱体に接して焼かれたことによる焼き色、焼き目、焦げ目等が付いた面であり、焼き餃子のいわゆる羽根をも含むものであってもよい。焼き面は、マイクロ波吸収発熱体と接させて、電子レンジ加熱によりマイクロ波吸収発熱体を発熱させることにより、十分なクリスピー感を得ることができる。
【0025】
食品としては、また、電子レンジ加熱によるマイクロ波吸収発熱体の発熱より、該発熱体と接する面が焼き面を形成することとなるものであってもよく、そのような食品は、電子レンジ加熱前には焼き面を有さないものであってもよい。
【0026】
食品は、十分なクリスピー感を得る点で、マイクロ波吸収発熱体と接する面積をある程度有し得る形状のものが好ましく、例えば、平坦ないし平面の表面を有する食品であってもよい。食品の平坦ないし平面の表面は、焼き面であってもよいし、また、マイクロ波吸収発熱体が平坦ないし平面の表面を有する場合、該平坦ないし平面の表面に接させて、電子レンジ加熱によりマイクロ波吸収発熱体を発熱させることにより、十分なクリスピー感を得ることができる。食品の平坦ないし平面の表面としては、例えば、焼き餃子の焼き面等が挙げられ、焼き餃子のいわゆる羽根をも含む焼き面であってもよい。
【0027】
食品としては、また、包餡食品が好ましい。包餡食品は、通常、中具(餡ともいう。)を包み込んである食品であり、例えば、麺帯で中具を包み込んである麺帯包装食品等が挙げられる。麺帯の主原料は小麦粉などの穀粉であり、副原料には油脂、食塩、糖類、調味料などを用いることもできる。麺帯包装食品としては、例えば、餃子、シューマイ、中華饅頭、ラビオリ、春巻きなどを挙げることができ、餃子、春巻きが好ましく、餃子がより好ましく、焼き餃子が更に好ましい。
【0028】
<マイクロ波の照射により発熱する発熱体>
本発明におけるマイクロ波の照射により発熱する発熱体(マイクロ波吸収発熱体)は、マイクロ波エネルギーを吸収して、熱に変換し発熱する特性を有するものをいう。このようなマイクロ波吸収発熱体としては特に限定されないが、一般的には、導電性物質薄膜層を含むものが好ましく、導電性物質薄膜層のみであってもよい。
【0029】
導電性物質としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレススチール、金、銀、白金、亜鉛等の導電性を有する金属(導電性金属)が挙げられる。導電性物質薄膜層の厚みは、50~150オングストロームが好ましい。
【0030】
本発明におけるマイクロ波吸収発熱体は、耐熱層を更に含むものであってもよく、好ましくは、導電性物質薄膜層に耐熱層が積層されたものであり、より好ましくは、導電性物質薄膜層に接して耐熱層が積層されたものである。耐熱層は、例えば、導電性物質薄膜層を保護し得る保護層として機能し得る。マイクロ波吸収発熱体が耐熱層を含むものである場合、当該発熱体は、耐熱層が食品と接し得るように載置されることが好ましく、かかる態様において、マイクロ波の照射による導電性物質薄膜層の発熱が耐熱層を介して食品(好ましくは食品の焼き面)に作用する。
【0031】
耐熱層は、好ましくは耐熱性フィルム層であり、導電性物質薄膜層の発熱に対して耐え得るフィルムで、毒性のある物質を溶出することがないものであれば、特に限定されない。耐熱性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ポリメチルペンテン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン等が使用できるが、特に、二軸延伸した状態で熱固定したポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0032】
耐熱層は、耐熱性フィルム層の導電性物質薄膜層とは反対側の表面、即ち、食品に接し得る表面に、シリコーン樹脂層等の剥離層ないし付着防止層を更に含むものであってもよい。耐熱層が剥離層ないし付着防止層を含むものである場合、発熱体は、剥離層ないし付着防止層が食品と接し得るように載置されることが好ましい。剥離層ないし付着防止層により、マイクロ波の照射による導電性物質薄膜層の発熱により食品が焼き付いて固着して外れなくなることを容易に防止することができる。
【0033】
耐熱層、好ましくは耐熱性フィルム層の厚さは、例えば0.01~60μmであり、下限値は好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上、更に好ましくは10μm以上であり、上限値は好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、更に好ましくは30μm以下である。耐熱層と、後述の基材とが同じ素材ないし材料・材質である場合(例えば、耐熱層及び基材が何れも、ポリプロピレン、ポリスチレン、PET等のプラスチックである場合)、耐熱層の厚さは20μm未満であることが好ましく、基材の厚さは0.02mm以上であることが好ましい。
【0034】
マイクロ波吸収発熱体が耐熱層を含むものである場合、耐熱層上に導電性物質、好ましくは上述の導電性金属を、蒸着、スパッタリング等によって薄膜形成したもの等を用いることができる。
【0035】
<基材>
本発明におけるマイクロ波吸収発熱体には、基材が積層されており、該基材が積層された面とは反対側の面を食品と接させるために供する。
基材としては、電子レンジ加熱に供することができる素材であれば特に限定されないが、通常の電子レンジ加熱により溶融、変形等を起こさない程度の耐熱性を有する素材が好ましく、例えば、板紙、厚紙等の紙;ポリプロピレン、ポリスチレン、PET等のプラスチック;紙及びプラスチック等の複数種の素材の複合体;等が挙げられ、例えば、プラスチック以外の素材ないしプラスチックを含まない基材であってもよい。複合体としては、例えば、紙を含む基材、プラスチックを含む基材、等が挙げられ、具体的には、紙とプラスチックとを含む基材、例えば、紙の層とプラスチックの層との組み合わせ(積層体等)等が挙げられる。
【0036】
基材は、厚さが例えば0.02mm以上、0.03mm以上、0.04mm以上、好ましくは0.05mm以上、0.06mm以上、より好ましくは0.07mm以上、0.08mm以上、0.1ないし0.10mm以上、更に好ましくは0.14mm超、0.15mm以上、更により好ましくは0.18mm以上、特に好ましくは0.2ないし0.20mm以上、0.21mm以上、0.22mm以上である。基材の厚さの上限値は特に限定されないが、通常、例えば5mm以下、4mm以下、3mm以下、2.5mm以下、2.3mm以下、好ましくは2.1mm以下、より好ましくは2ないし2.0mm以下、更に好ましくは1.8mm以下、更により好ましくは1.7mm以下、特に好ましくは1.5mm以下である。
【0037】
基材は、トレイ又は後述の外装袋若しくはトップシール材の溶融防止を重視する場合、ある程度の厚さを有することが好ましいが、比較的薄い厚さである場合、マイクロ波吸収発熱体をトレイの開放口側に載置する後述の態様Aにおいて後述の外装袋又はトップシール材を用いる態様において、後述のように外装袋又はトップシール材を融着させ、マイクロ波吸収発熱体とともに取り外しやすくなり、外装袋又はトップシール材と基材と発熱体とを一体化して除去しやすくなる結果、包装体又はトップシール材付きの電子レンジ加熱用セットから食品のみを取り出しやすくするというメリットがあり、目的に応じて厚さを選択することができる。
【0038】
基材の厚さは、トレイ又は外装袋若しくはトップシール材の溶融防止の観点で、例えば0.62mm超、好ましくは0.63mm以上、より好ましくは0,64mm以上、更に好ましくは0.65mm以上であり、上限値は特に限定されないが、通常、例えば5mm以下、4mm以下、3mm以下、2.5mm以下、2.3mm以下、好ましくは2.1mm以下、より好ましくは2ないし2.0mm以下、更に好ましくは1.8mm以下、更により好ましくは1.7mm以下、特に好ましくは1.5mm以下である。
【0039】
基材の厚さは、また、外装袋又はトップシール材とともに発熱体を取り外せるメリットを活かす観点で、例えば0.02mm以上、0.03mm以上、0.04mm以上、好ましくは0.05mm以上、0.06mm以上、より好ましくは0.07mm以上、0.08mm以上、0.1ないし0.10mm以上、更に好ましくは0.14mm超、0.15mm以上、更により好ましくは0.18mm以上、特に好ましくは0.2ないし0.20mm以上、0.21mm以上、0.22mm以上であり、上限値は、例えば0.65mm未満、好ましくは0.64mm以下、より好ましくは0.63mm以下、更に好ましくは0.62mm以下、特に好ましくは0.5mm以下、0.4mm以下である。
【0040】
<マイクロ波吸収発熱体と基材とを含む積層体>
本明細書において、マイクロ波吸収発熱体と基材とを含む積層体を「発熱積層体」ともいう。即ち、本発明の電子レンジ加熱用セットは、トレイ、当該トレイに収容された食品、及び、発熱積層体を含む。
【0041】
トレイの底面に平行な方向において、マイクロ波吸収発熱体と基材とは、当該発熱体の外縁が基材の外縁からはみ出ることなく積層されていることが好ましく、具体的には、発熱体の外縁と基材の外縁とが揃う(ないし同じ若しくは重なる)ように積層されている態様1であってもよいし、発熱体の外縁が基材の外縁の内側に位置して積層されている態様2であってもよい。
【0042】
本明細書において、「トレイの底面に平行な方向」とは、トレイの底面に平行な断面とも言うことができ、例えば、トレイの底面に平行なマイクロ波吸収発熱体を含む断面等が挙げられ、このような断面を俯瞰したとき、導電性物質薄膜層を含み得る発熱体、基材、トレイの内壁、等が本願明細書に記載する位置関係にあることが好ましい。
【0043】
前者の態様1は、例えば、後述する図1の、トレイの底面に垂直な断面図において、マイクロ波吸収発熱体4の両端(トレイの底面に平行な方向における発熱体の外縁に相当する。)と、基材5の両端(トレイの底面に平行な方向における基材の外縁に相当する。)とが揃っていることに表される態様である。
【0044】
後者の態様2は、図14のマイクロ波吸収発熱体と基材との積層体の一例を示す模式図において、図14(a)のトレイの底面に垂直な断面図において、基材5の両端5a(トレイの底面に平行な方向における基材の外縁に相当する。)が、マイクロ波吸収発熱体4の両端4a(トレイの底面に平行な方向における発熱体の外縁に相当する。)よりもはみ出して積層されているような態様であり、図14(a)の基材5とマイクロ波吸収発熱体4との境界面qを図14(a)における下側から見た図14(b)に示すとおり、マイクロ波吸収発熱体4は、該発熱体4の外縁4aが、基材5の外縁5aの内側に位置して積層されている。態様2は、マイクロ波吸収発熱体の外縁が、トレイの内壁に接触せずトレイの内壁の内側に位置して載置される後述の態様を容易に実現することができる。
【0045】
図14以外の他の図において、マイクロ波吸収発熱体と基材との積層体として、上記態様1が表されているが、態様1に代えて態様2であってもよい。
【0046】
本明細書において、トレイの底面に平行な方向において、「発熱体の外縁」としては、後述のとおり、他の記載をしない限り、少なくとも導電性物質薄膜層の外縁であればよい。例えば、発熱体が導電性物質薄膜層と耐熱層とを含む場合、態様1は、少なくとも導電性物質薄膜層の外縁が基材の外縁と揃う(ないし同じ若しくは重なる)ように積層されていればよく、態様2は、少なくとも導電性物質薄膜層の外縁が基材の外縁の内側に位置して積層されていればよい。これらの場合、耐熱層の外縁は、例えば、導電性物質薄膜層の外縁と揃う(ないし同じ若しくは重なる)ように積層されていてもよいし、導電性物質薄膜層の外縁をはみ出るように積層されていてもよく、後者のはみ出る態様としては、例えば、導電性物質薄膜層の外縁が耐熱層の外縁の内側に位置し、且つ、基材の外縁の内側に位置するように積層されている態様、具体的には、例えば、耐熱層の外縁と基材の外縁とが揃う(ないし同じ若しくは重なる)ように積層され、耐熱層と基材との間に積層された導電性物質薄膜層の外縁が耐熱層及び/又は基材の外縁の内側に位置する態様等が挙げられる。
【0047】
マイクロ波吸収発熱体として、例えば、上述の耐熱性フィルム層に導電性物質薄膜層が蒸着され、該導電性物質薄膜層に紙基材層が積層された「サセプター」(登録商標、商品名、凸版印刷株式会社製)等の市販品を用いる場合、本発明における「基材」は、当該市販品に含まれる紙基材層と、追加の基材とを含み、例えば、市販品に含まれる紙基材層に、追加の基材を市販の糊等の接着剤を用いて貼り合わせたもの等であってよい。この場合、発熱積層体は、マイクロ波吸収発熱体と基材とを含み、基材は上記接着剤層等の接着層を含むものであってよい。
【0048】
マイクロ波吸収発熱体、ないし、マイクロ波吸収発熱体と基材とを含む発熱積層体の形状は、特に限定されないが、シート状、板状が好ましく、平坦な部分を含む形状、平坦なもの等であってもよいし、食品の形状に合わせた形状であってもよい。これらの形状は、通常、基材により又は基材と該発熱体とともに、形作ることができる。マイクロ波吸収発熱体は、通常、食品の該発熱体と接する面に熱を伝えやすい形状が好ましく、食品の該発熱体と接する面が平坦ないし平面の場合は、マイクロ波吸収発熱体も平板状であると熱が伝わりやすく好ましい。微細な穴、溝のあるマイクロ波吸収発熱体シートも使用できる。
【0049】
<マイクロ波吸収発熱体と食品との載置>
本発明におけるマイクロ波吸収発熱体は、基材が積層された面とは反対側の面を食品と接させるために供する。マイクロ波吸収発熱体と基材とを含む発熱積層体は、基材側ではなくマイクロ波吸収発熱体側を食品と接させるために供するため、基材側ではなくマイクロ波吸収発熱体側が食品に向いて載置される。「マイクロ波吸収発熱体側が食品に向いて載置される」とは、該発熱体が食品に対抗して載置される態様、ないし、該発熱体が食品に接し得るように載置される態様であってよい。
【0050】
「マイクロ波吸収発熱体が食品と接し得るように載置される」とは、該発熱体が食品に接している態様のみならず、該発熱体が例えば電子レンジ加熱用セットの向きを変える(例えば、鉛直方向の上下を逆にする等)ことにより食品に接することとなる態様を含み、例えば、製造・販売時に既に該発熱体が食品に接している態様であってもよいし、また、製造・販売時に天面ないし上面とされる面を鉛直方向の上側にして電子レンジ加熱用セット又は後述の包装体を置くときには該発熱体と食品との間に空隙があるが、電子レンジ加熱用セット又は包装体を鉛直方向の上下を逆にする等のように向きを変えることにより該発熱体と食品とが接することとなる態様であってもよい。少なくとも電子レンジ加熱を行う際に、マイクロ波吸収発熱体が食品と接することが好ましい。
【0051】
<マイクロ波吸収発熱体が、食品の、トレイの開放口側に載置される態様>
マイクロ波吸収発熱体が、食品の、トレイの開放口側に載置される態様(本明細書において、「態様A」ともいう。)は、典型的には、トレイの底面上に食品が載置され、該食品上にマイクロ波吸収発熱体が載置される態様である。マイクロ波吸収発熱体は、食品と接して載置され、該発熱体の、食品と接する面とは反対側の面、即ち、トレイの開放口側に、基材が積層されている。図1は、態様Aの一例を、トレイの底面に垂直な断面図で表したものであり、電子レンジ加熱用セット1は、トレイ2の底面2a上に食品3が載置され、該食品3上にマイクロ波吸収発熱体4が載置され、該発熱体4はトレイの開放口2b側に、基材5が積層されている。
【0052】
マイクロ波吸収発熱体は、トレイの底面に平行な方向において、該発熱体の外縁が、トレイの内壁に接触せずトレイの内壁の内側に位置して載置されることが好ましい。本明細書において、「発熱体の外縁」としては、他の記載をしない限り、少なくとも導電性物質薄膜層の外縁であればよい。例えば、図1に示す態様を例にとると、トレイの底面に平行な方向として、図1のマイクロ波吸収発熱体4を含むpの切断面を俯瞰した図2に示すとおり、マイクロ波吸収発熱体4は、該発熱体4の外縁4aが、トレイ2の内壁2cに接触せずトレイの内壁2cの内側に位置して載置される。トレイの底面に平行な方向、典型的には図1のマイクロ波吸収発熱体4を含むpの切断面において、マイクロ波吸収発熱体の外縁と、トレイの内壁との間の距離は、マイクロ波吸収発熱体の発熱によるトレイの溶融防止の観点で、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、更に好ましくは5mm以上であり、通常、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下、更に好ましくは10mm以下である。
【0053】
態様Aの電子レンジ加熱用セットの製品輸送等においてマイクロ波吸収発熱体が食品上に載置された当初の位置からずれてトレイの内壁に接したりトレイの開放口からはみ出したりすることを防止するため、外装袋やトップシール材または基材形状の工夫によって、マイクロ波吸収発熱体の位置を制御することが好ましく、具体的には、例えば、マイクロ波吸収発熱体と基材とを含む発熱積層体として上述の態様2のものを用いること、後述のフタの天面の裏面にマイクロ波吸収発熱体が積層されたフタを用いること、後述のトップシール包装の場合にトップシール材ないしフィルムの裏面にマイクロ波吸収発熱体を積層させること、等が挙げられる。態様2の発熱積層体は、食品と接して載置してもよいし、トレイの開放口に嵌めて食品と接し得るようにトレイの開放口若しくは内壁に保持させてもよい。
【0054】
態様Aにおいて、トレイとしては、紙製トレイのほか、内壁がプラスチック製であるトレイを用いることができ、トレイの底面に平行な方向において、マイクロ波吸収発熱体の外縁が、トレイの内壁に接触せずトレイの内壁の内側に位置して載置される上述の態様においては特に、マイクロ波吸収発熱体の発熱によるトレイの溶融を確実に防止できるので、内壁がプラスチック製であるトレイであっても好ましく用いることができる。
【0055】
態様Aにおいては、トレイの底面が、食品を収容するための凹部ないし凹凸、及び/又は、食品の姿勢を保持するための形状を有することが好ましい。食品が例えば焼き餃子等の餃子である場合、トレイの底面がV字形、例えば、餃子を個別に収容できるV字形を有することが好ましく、具体的には、V字形が複数個連続してなる形状を有し、V字形1つ当り餃子1個を収容し、個々のV字形の谷側に餃子の先端部(中具を載せた餃子の皮を2つ折りして中具を包み込んだ餃子の皮の両端を合わせ、当該皮の周縁部同士を襞折等により接着した部分。本明細書において「耳」ともいう。)を収容し、餃子の焼き面がトレイの開放口側に向くように載置され、該焼き面に接してマイクロ波吸収発熱体が載置され、該発熱体の、餃子と接する面とは反対側の面、即ち、トレイの開放口側に、基材が積層されていることが好ましく、例えば一例として図3に示すとおり、トレイ22の底面22aが、連続したV字形状22dを有し、個々のV字形の谷側22d1に餃子33の先端部33aを収容し、餃子の焼き面33bがトレイの開放口22b側に向くように載置され、該焼き面33bに接してマイクロ波吸収発熱体4が載置され、該発熱体4の、餃子33と接する面とは反対側の面、即ち、トレイの開放口22b側に、基材5が積層されていることが好ましい。
【0056】
態様Aは、トレイの底面側とは反対のトレイの開放口側においてトレイに被せられたフタを更に含むものでもよい。フタとしては、通常、トレイの底面に対する(ないし対抗する)天面(天板)を有するものであればよく、更に、トレイとの係合のための係合部材、例えば、トレイに対する位置がずれにくいように側面部(側壁部ともいう。)をも有するものが好ましい。フタの側面部としては、例えば図15に示すような、トレイの外側に位置することが可能なものであってもよいし、トレイの内側に嵌め込むことが可能なものであってもよい。側面部を有さないフタとしては、例えば、上記天面(天板)に相当するものとして、トレイの開放口と同じか少し小さい大きさの板状物を、トレイの開放口に嵌め込むもの等が挙げられる。
【0057】
フタの素材は、電子レンジ加熱に供することができる素材であれば特に限定されないが、通常の電子レンジ加熱により溶融、変形等を起こさない程度の耐熱性を有する素材が好ましく、例えば、トレイの素材として上述した素材を用いることができる。電子レンジ加熱用セットにおいて、フタの素材とトレイの素材とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
フタを含む態様において、マイクロ波吸収発熱体は、フタの天面(天板)の裏面に、基材を介して積層されていてもよい。フタの天面(天板)の裏面とは、フタをトレイに被せた状態において、フタの天面(天板)の、トレイの底面側の面に相当する面であり、電子レンジ加熱用セットにおいて収容された食品側である。
【0059】
フタの天面の裏面において、マイクロ波吸収発熱体は、当該発熱体の外縁が、フタの天面の外縁からはみ出ることなくフタの天面の外縁の内側に位置して、基材を介して積層されていることが好ましい。かかる態様であれば、トレイの少なくとも内壁がプラスチック製であっても、マイクロ波吸収発熱体の発熱による該プラスチックの溶融、変形等を容易に防止することができる。かかる態様は、フタの側面部がトレイの外側に位置するフタ、及び、側面部を有さないフタに好適であり、なかでも、少なくとも内壁がプラスチック製であるトレイに被せるフタに特に好適である。
【0060】
図15は、フタを含む態様Aの一例を示す模式図であり、図15(a)はトレイの底面に垂直な断面図で表したものであり、図15(b)はフタの天面11a(天板)の裏面11aaを含む面rを図15(a)における下側から見た図である。図15に示すように、電子レンジ加熱用セット1は、トレイ2の底面2a上に食品3が載置され、トレイ2の開放口2b側においてフタ11がトレイ2に被せられており、フタ11は天面(天板)11aと、トレイ2の外側に位置した側面部11bとを有し、マイクロ波吸収発熱体4は、フタの天面11a(天板)の裏面11aaに、当該発熱体4の外縁4aが、フタの天面の外縁11cからはみ出ることなくフタの天面の外縁11cの内側に位置して、基材5を介して積層されている。図15に示す態様において、マイクロ波吸収発熱体4と食品3との間に空隙があるが、電子レンジ加熱を行う際に、電子レンジ加熱用セット1を上下逆にすると、食品3は重力によりマイクロ波吸収発熱体4上に落ち、マイクロ波吸収発熱体4と接することとなる。
【0061】
<マイクロ波吸収発熱体が、食品の、トレイの底面側に載置される態様>
マイクロ波吸収発熱体が、食品の、トレイの底面側に載置される態様(本明細書において、「態様B」ともいう。)は、典型的には、トレイの底面上にマイクロ波吸収発熱体が載置され、該発熱体上に食品が載置される態様である。マイクロ波吸収発熱体は、食品と接して載置され、該発熱体の、食品と接する面とは反対側の面、即ち、トレイの底面側に、基材が積層されている。図4は、態様Bの一例を、トレイの底面に垂直な断面図で表したものであり、電子レンジ加熱用セット1は、トレイ2の底面2a上に基材5を介してマイクロ波吸収発熱体4が載置され、該発熱体4上に食品3が載置され、該発熱体4はトレイの底面2a側に基材5が積層されている。
【0062】
マイクロ波吸収発熱体は、トレイの底面に平行な方向において、該発熱体の外縁が、トレイの内壁に接触せずトレイの内壁の内側に位置して載置されることが好ましい。このことは態様Aと共通し、例えば、図4に示す態様を例にとると、トレイの底面に平行な方向として、図4のマイクロ波吸収発熱体4を含むpの切断面を俯瞰した図としても上述の図2が該当し、図2に示すとおり、マイクロ波吸収発熱体4は、該発熱体4の外縁4aが、トレイ2の内壁2cに接触せずトレイの内壁2cの内側に位置して載置されることが好ましい。トレイの底面に平行な方向において、マイクロ波吸収発熱体の外縁と、トレイの内壁との間の距離は、態様Aについて述べた距離と同様である。
【0063】
態様Bの電子レンジ加熱用セットの製品輸送等においてマイクロ波吸収発熱体がトレイの底面上に載置された当初の位置からずれてトレイの内壁に接することを防止するため、トレイの底面に平行な方向において、マイクロ波吸収発熱体と基材とは、マイクロ波吸収発熱体の外縁が基材の外縁からはみ出ることなく積層されていることが好ましく、マイクロ波吸収発熱体の外縁が基材の外縁の内側に位置して積層されている上述の態様2の発熱積層体を用いることがより好ましい。
【0064】
態様Bにおいても、上述のとおり、マイクロ波吸収発熱体の発熱によるトレイの溶融を防止できるので、トレイとしては、紙製トレイのほか、内壁がプラスチック製であるトレイであってもよく、従来はトレイ上にマイクロ波吸収発熱体が存在する態様におけるトレイが紙等に限定されていたのに対し、本発明においては幅広い素材のトレイを用いることができる。
【0065】
態様Bにおいて、トレイの底面が上述のような、食品を収容するための凹部ないし凹凸、及び/又は、食品の姿勢を保持するための形状を有していてもよいが、トレイの底面と食品との間にマイクロ波吸収発熱体が介在するため、マイクロ波吸収発熱体もトレイの底面の形状に沿った形状を有することが好ましい。
【0066】
態様Bのトレイの底面としては、マイクロ波吸収発熱体を板状等のシンプルな形状にする観点で、食品を収容するための凹部ないし凹凸、及び/又は、食品の姿勢を保持するための形状を有さないもの、例えば、凹凸のない平面ないし平坦なものか、又は、食品の収容や姿勢保持のためではない溝等の凹凸を有するにとどめたものが好ましく、更に、食品上に載置され、食品の姿勢を保持するための形状を有するカバーを用いることがより好ましい。
【0067】
食品が例えば焼き餃子等の餃子である場合、トレイの底面が食品を収容するための凹部ないし凹凸、及び/又は、食品の姿勢を保持するための形状を有さないもの、例えば、凹凸のない平面ないし平坦なものか、又は、食品の収容や姿勢保持のためではない溝等の凹凸を有するにとどめたものが好ましく、更に、餃子上に載置され、餃子の姿勢を保持するための形状(例えばV字形)を有するカバーを用いることがより好ましい。
【0068】
食品が例えば焼き餃子等の餃子である場合、カバーとしては、具体的には、V字形が複数個連続した形状を有し、V字形1つ当り餃子1個を収容し、個々のV字形の谷側に餃子の先端部(耳)を収容し、餃子の焼き面がトレイの底面側に向くように載置され、該焼き面に接してマイクロ波吸収発熱体が載置され、該発熱体の、餃子と接する面とは反対側の面、即ち、トレイの底面側に、基材が積層されていることが好ましく、例えば一例として図5に示すとおり、トレイ2の底面2aが、凹凸のない平面ないし平坦なものであり、トレイ2の底面2a上に基材5を介してマイクロ波吸収発熱体4が載置され、該発熱体4はトレイの底面2a側に基材5が積層されており、該発熱体4上に餃子33の焼き面33bが接するように該発熱体4上に餃子33が載置され、該餃子33上にカバー6が載置され、カバー6は連続したV字形状6dを有し、個々のV字形の谷側(図5においては上側に凸)6d1に餃子33の先端部33aが収容されるようにカバー6が餃子33上に載置されることが好ましい。
【0069】
<トップシール>
本発明の電子レンジ加熱用セットは、トレイの開放口に被せたフィルムがトレイの上端に圧着されていてもよい。本明細書において、該圧着を「トップシール」ないし「トップシール包装」ともいい、該フィルムを「トップシール材」ともいう。
【0070】
上記圧着としては、例えば、トレイの開放口の上端にトップシール材を熱圧着することにより密封する等の従来のトップシール技術ないしトップシール包装技術を用いることができ、例えば、シール性を有しつつシール部ないし圧着部の開封が容易な易開封性ないしイージーオープン性を有するイージーピールフィルムをトップシール材として用いることができる。
【0071】
トップシール材としては、従来のトップシール材を用いることができ、例えば、PETフィルムを含むもの、PETフィルムとバリアフィルム等との積層フィルム等を用いることができるが、PETフィルムとイージーピールフィルムの積層フィルムが好ましい。
【0072】
トップシールは、上述の態様A、態様Bの何れについても適用可能であり、上記圧着の条件としては、トレイ及びトップシール材の素材等にもよるが、通常80℃以上、250℃以下、好ましくは120℃以上、240℃以下、より好ましくは150℃以上、230℃以下の温度範囲において、通常0.1秒以上、30秒以下、好ましくは0.2秒以上、10秒以下、より好ましくは0.5秒以上、5秒以下の時間、1回または複数回加熱ないし熱圧着することが挙げられる。
【0073】
態様Aにおいてトップシール包装を行う場合、マイクロ波吸収発熱体に積層される基材の厚さを比較的薄くし、例えば、トップシール材とともに該発熱体を取り外し得るという観点で好ましい上述の厚さにすることにより、マイクロ波吸収発熱体の発熱による食品へのクリスピー感付与を担保しつつ、電子レンジ加熱により発熱したマイクロ波吸収発熱体がトップシール材に融着し、トップシール材とともに該発熱体を取り外せるメリットがある。
【0074】
このメリットの実現の観点で、マイクロ波吸収発熱体に積層された基材とトップシール材との間の距離は、少なくとも電子レンジ加熱を行う際に0mmであることが好ましく、即ち、基材とトップシール材とが接していることが好ましいが、マイクロ波吸収発熱体に積層された基材とトップシール材との間のトップシール包装後(直後を含み得る)、電子レンジ加熱前における距離は、好ましくは0mm以上、30mm以下であり、該上限値はより好ましくは20mm以下、更に好ましくは15mm以下である。
【0075】
電子レンジ加熱を行う際のみならず、トップシール包装後(直後を含み得る)、電子レンジ加熱前においても、マイクロ波吸収発熱体は、トップシール材ないしフィルムの、食品側(トレイの底面側である裏面)に、基材を介して積層されていてもよく、マイクロ波吸収発熱体に積層された基材とトップシール材との間の距離が0mmであるものとして、該基材とトップシール材とを接触ないし接着させたものであってもよい。
【0076】
また、このメリットの実現の観点で好ましいトップシールとしては、上述のトップシール材を用い、トレイとしてプラスチック製トレイを用い、上述の圧着の条件により加熱ないし熱圧着することが挙げられる。
【0077】
図6は、トップシール包装を行った態様Aの一例を、トレイの底面に垂直な断面図で表したものであり、電子レンジ加熱用セット1は、トレイ2の底面2a上に食品3が載置され、該食品3上にマイクロ波吸収発熱体4が載置され、該発熱体4はトレイの開放口2b側に基材5が積層されており、トレイ2の開放口2b側の上端にトップシール材7が圧着されている。図6は、電子レンジ加熱前において、マイクロ波吸収発熱体に積層された基材とトップシール材とが接している態様を示す。
【0078】
また、図7は、図6に示す態様のトレイを、図3に示すような、底面がV字形を有するトレイとした態様の一例を示し、例えば、食品が焼き餃子等の餃子である場合に好適である。
【0079】
図6及び図7に示すような、電子レンジ加熱を行う際のみならず、トップシール包装後(直後を含み得る)、電子レンジ加熱前においても、マイクロ波吸収発熱体が、トップシール材ないしフィルムの、食品側(トレイの底面側である裏面)に、基材を介して積層されている態様としては、例えば、図16に示すように、トップシール材ないしフィルム7の裏面7aにおいて、マイクロ波吸収発熱体4は、当該発熱体の外縁4aが、トップシール材ないしフィルム7の、トレイの上端との圧着部7bにより画定される内壁の外縁7cからはみ出ることなく、トップシール材ないしフィルムの内壁の外縁7cの内側に位置して、基材を介して積層されていることが好ましい。かかる態様であれば、トレイの少なくとも内壁がプラスチック製であっても、マイクロ波吸収発熱体の発熱による該プラスチックの溶融、変形等を容易に防止することができる。
【0080】
図8は、トップシール包装を行った態様Bの一例を、トレイの底面に垂直な断面図で表したものであり、電子レンジ加熱用セット1は、トレイ2の底面2a上に基材5を介してマイクロ波吸収発熱体4が載置され、該発熱体4上に食品3が載置され、該発熱体4はトレイの底面2a側に基材5が積層されており、トレイ2の開放口2b側の上端にトップシール材7が圧着されている。
【0081】
[包装体]
本発明の包装体は、上述の電子レンジ加熱用セットと、該電子レンジ加熱用セットを収納する外装袋とを含む。
【0082】
<外装袋>
外装袋としては特に限定されず、例えば、冷凍食品、冷蔵食品、常温食品等の外装袋として従来用いられるものを用いることができ、具体的には、プラスチックフィルムのシーラント側を合わせ、背シールと上下の端縁部をヒートシールしたピロー包装袋等が挙げられる。電子レンジ加熱用セットを外装袋に収納する方法としては特に限定されず、例えば、ピロー包装等の従来公知の方法を用いることができる。
【0083】
外装袋に収納される電子レンジ加熱用セットは、上述の態様A、態様Bの何れであってもよく、態様A又は態様Bが上述のトップシールを有する態様であってもよいが、簡便な包装の観点で、トップシールを有さない態様A又は態様Bが好ましい。
【0084】
態様Aの電子レンジ加熱用セットを外装袋に収納する場合、マイクロ波吸収発熱体に積層される基材の厚さを比較的薄くし、例えば、外装袋の取り外しやすさの観点で好ましい上述の厚さにすることにより、マイクロ波吸収発熱体の発熱による食品へのクリスピー感付与を担保しつつ、電子レンジ加熱により発熱したマイクロ波吸収発熱体が外装袋に融着し、外装袋とともに該発熱体を取り外せるメリットがある。
【0085】
このメリットの実現の観点で、マイクロ波吸収発熱体に積層された基材と外装袋との間の距離は、少なくとも電子レンジ加熱を行う際に0mmであることが好ましく、即ち、基材と外装袋とが接していることが好ましいが、マイクロ波吸収発熱体に積層された基材と外装袋の内壁との間の包装体製造後(直後を含み得る)、電子レンジ加熱前における最短距離は、好ましくは0mm以上、100mm以下であり、該下限値は5mm以上、10mm以上であってもよく、該上限値はより好ましくは80mm以下、更に好ましくは50mm以下である。
【0086】
また、このメリットの実現の観点で好ましい外装袋としては、OPP//CPP、PET//LDPE(OPPは二軸延伸ポリプロピレン、CPPは無延伸ポリプロピレン、LDPEは低密度ポリエチレンをそれぞれ表す。)等のプラスチックフィルムが挙げられ、例えばピロー包装の場合、ピロー包装(シール)前のプラスチックフィルムの背シール用のシーラント部分を含まない幅、即ち、ピロー包装後の包装体の、外装袋の背シールに垂直な断面(即ち、ピロー包装のヒートシールする上下の端縁部に平行な断面)において、当該外装袋により画定される周長(即ち、外装袋の内周の長さ)が、トレイの外周の長さ、即ち、該断面におけるトレイの底面、側壁及び開放口(対向する2つの側壁の上端を結ぶ直線)の各長さの合計よりも101%以上、130%以下長いことが好ましく、102%以上、120%以下長いことがより好ましく、103%以上、110%以下長いことが更に好ましい。
【0087】
図9は、態様Aの電子レンジ加熱用セットが外装袋としてピロー包装袋に収納されてなる包装体10の一例を、トレイの底面に垂直な断面図で表したものであり、ピロー包装袋8に収納された電子レンジ加熱用セット1は、トレイ2の底面2a上に食品3が載置され、該食品3上にマイクロ波吸収発熱体4が載置され、該発熱体4はトレイの開放口2b側に、基材5が積層されている。
【0088】
また、図10は、図9に示す態様のトレイを、図3に示すような、底面がV字形を有するトレイとした態様の一例を示し、例えば、食品が焼き餃子等の餃子である場合に好適である。
【0089】
図11は、態様Bの電子レンジ加熱用セットが外装袋としてピロー包装袋に収納されてなる包装体の一例を、トレイの底面に垂直な断面図で表したものであり、ピロー包装袋8に収納された電子レンジ加熱用セット1は、トレイ2の底面2a上に基材5を介してマイクロ波吸収発熱体4が載置され、該発熱体4上に食品3が載置され、該発熱体4はトレイの底面2a側に基材5が積層されている。
【0090】
[電子レンジ加熱]
本発明の電子レンジ加熱用セット及び包装体は、それぞれそのままの状態で電子レンジで加熱することができ、具体的には、包装体を開封して外装袋から取り出した電子レンジ加熱用セットのみを電子レンジ加熱してもよいし、包装体を開封することなく外装袋とともに中身の電子レンジ加熱用セットを電子レンジ加熱してもよい。また、トップシール材を有する電子レンジ加熱用セットは、トップシール材を剥がすないし取り除いてから電子レンジ加熱してもよいし、トップシール材を剥がさずに電子レンジ加熱してもよい。上述のように基材が比較的薄い態様にあっては、外装袋とともに電子レンジ加熱したり、トップシール材を剥がさずに電子レンジ加熱しても、電子レンジ加熱により発熱したマイクロ波吸収発熱体が外装袋又はトップシール材に融着し、外装袋又はトップシール材とともに該発熱体を取り外せるメリットがある。
【0091】
電子レンジ加熱において、電子レンジ加熱用セット及び包装体はその鉛直方向の上下を問わず電子レンジの庫内に載置することができるが、上述のように基材が比較的薄い態様にあっては、電子レンジ加熱により発熱したマイクロ波吸収発熱体が外装袋又はトップシール材に融着し、外装袋又はトップシール材とともに該発熱体を取り外せるメリットを活かす観点では、態様Aであって、食品よりもマイクロ波吸収発熱体が存在する方を鉛直方向の下側にして電子レンジの庫内に載置する態様、即ち、電子レンジ庫内の底面(床面)、ターンテーブル、皿等の被載置体の上に外装袋又はトップシール材が存在し、当該外装袋又はトップシール材上に基材が存在し、当該基材上にマイクロ波吸収発熱体が積層され、当該発熱体上に食品が接している状態で電子レンジ庫内に載置する態様が好ましく、当該態様において、焼き面を有する食品の場合、焼き面が下、即ち、焼き面が当該発熱体に接するように載置されることが好ましい。
【0092】
[本発明の電子レンジ加熱用セット及び包装体の効果と利用]
本発明の電子レンジ加熱用セット及び包装体は、以上の特徴を有することから、電子レンジ加熱によるマイクロ波吸収発熱体の発熱により、食品に適切なクリスピー感を付与することができ、焼き餃子のように表面に焼き面以外の部分がある食品にあっては、当該部分の軟らかさを保持しつつ、焼き面に適切なクリスピー感を付与することができる。
【0093】
具体的には、マイクロ波吸収発熱体が食品と接して載置され、当該発熱体が当該食品と接する面とは反対側の面に基材が積層されていることにより、当該食品の、マイクロ波吸収発熱体と接する部分(例えば、焼き面)において適切なクリスピー感を付与することができるとともに、当該食品の、マイクロ波吸収発熱体から離間した部分(例えば、餃子の耳)は過加熱により硬い食感となることが避けられ、軟らかさを保持することができ、しかも、基材の厚さの調整により、焼き面の品質向上と餃子の耳等の焼き面以外の部分の軟らかさとを調節ないし改善することもできる。餃子の耳のように食品の比較的薄い部分は、一般に、電子レンジ加熱により過加熱になりやすい上に、マイクロ波吸収発熱体の発熱が加わり更に過加熱になりやすいが、本発明においては、過加熱が避けられ、軟らかさを保持することができる。
【0094】
本発明においては、以上のように好ましい食感を付与できることに加え、プラスチックを用いたトレイであってもトレイの溶融、変形、変性、変色等を防止することも可能であり、更に、基材の厚さを調整することにより、外装袋若しくはトップシール材の溶融、変形、変性、変色等を防止する態様、又は、発熱したマイクロ波吸収発熱体とこれに融着した外装袋若しくはトップシール材とを同時に取り外せる態様の何れの態様とすることも可能である。
【0095】
本発明の電子レンジ加熱用セット及び包装体は、また、上述のとおり、その鉛直方向の上下を問わず電子レンジ加熱を行うこともでき、電子レンジ加熱のみによってもクリスピー感を含む好ましい食感を付与できる簡便さに加え、好ましくは、フィルムやトレイの包材の溶融、除去等の設計可能性をも兼ね備えることができ、電子レンジ加熱に好適に用いることができる。
【実施例0096】
以下、本発明について、実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
【0097】
<実施例1~12:包装体の作製>
発熱体として、PETフィルム(厚さ12μm)にアルミニウムが蒸着されたもの(該アルミニウム蒸着層の厚さ100Å)を使用した。発熱体のアルミニウム蒸着層側の面に、基材として表1に示す厚さの紙を積層して発熱積層体を作製した。
【0098】
「袋のままスチコンで焼餃子(肉)(焼調理済)」(商品名;味の素冷凍食品社製;以下、「当該サンプル」)から取り出した焼き餃子5個を、焼き面を上にし、当該焼き面に発熱体が接するように上記発熱積層体を載置し、当該サンプルから取り出したトレイ(素材:ポリプロピレン)の内側に収まるように収容して、電子レンジ加熱用セットを作製した。
電子レンジ加熱用セットを収容する外装袋用のフィルムとしてPET12μ/LLDPE40μからなるラミネートフィルム(サイズ:270mm×230mm)を用い、ヒートシーラーを用いて、断面が図9に示す断面図のようなピロー包装体を作製した。
【0099】
<比較例1:比較用包装体の作製>
発熱体と紙とからなる発熱積層体を用いないこと以外は実施例と同様にして、比較用包装体を作製した。
【0100】
<電子レンジ加熱>
電子レンジとして「HITACHI_MRO-S8Y(フラットタイプ)」(スチームオーブンレンジ31L;日立社製)を用い、上記作製例で得た各包装体の外装袋の一端に長さ約5cmの切れ込みを入れ、500Wで2分間の加熱調理を行った。加熱調理は、包装体ごとに同じ電子レンジによる同じ加熱条件で行い、電子レンジ庫内が熱い場合、氷等で冷やしてから行った。各包装体は、餃子が解凍しないように、電子レンジ加熱を行うまで-18℃の冷凍庫内で保管した。
実施例1~12及び比較例1で得た各包装体は、図12に示す断面図のように、焼き餃子の焼き面33bが下になるように電子レンジ庫9内に載置して、電子レンジ加熱を行った。
【0101】
<評価>
上記電子レンジ加熱調理後の包装体ごとに、餃子の焼き面と耳の品質、及び、発熱積層体の表面の外装袋への張付きの有無について、表2に示す評価基準により評価した。焼き面に適切な硬さがあると、食感にクリスピー感がある。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
【表2】
【0104】
表1から、マイクロ波吸収発熱体が食品と接して載置され、当該発熱体が当該食品と接する面とは反対側の面に基材が積層されている実施例においては、焼き面の品質向上と耳の軟らかさの両立を実現できることがわかった。さらに、基材の厚さを調節することにより、焼き面の品質向上と耳の軟らかさを更に向上することもでき、また、外装袋への張付きの有無を調整できることがわかった。実施例1~12、比較例1において、電子レンジ加熱やマイクロ波吸収発熱体の発熱によるトレイの溶融、変形及び変性・変色は観察されなかった。
【0105】
<実施例13:電子レンジ加熱用セットの作製>
外装袋を用いたピロー包装体としないこと以外は、実施例8と同様にして、電子レンジ加熱用セットを作製した。上記電子レンジ加熱と同様にして加熱調理を行い、上記評価と同様にして評価した。
【0106】
<実施例14>
実施例8で得た包装体と同じものを、焼き餃子の焼き面が上になるように電子レンジ庫内に載置すること以外は上記電子レンジ加熱と同様にして加熱調理を行い、上記評価と同様にして評価した。
【0107】
<実施例15>
実施例13で得た電子レンジ加熱用セットと同じものを、図13に示す断面図のように、焼き餃子の焼き面33bが上になるように電子レンジ庫9内に載置すること以外は上記電子レンジ加熱と同様にして加熱調理を行い、上記評価と同様にして評価した。
【0108】
<比較例2>
比較例1で得た包装体と同じものを、焼き餃子の焼き面が上になるように電子レンジ庫内に載置すること以外は上記電子レンジ加熱と同様にして加熱調理を行い、上記評価と同様にして評価した。
【0109】
実施例13~15及び比較例2の結果を表3に示す。
【表3】
【0110】
表3から、マイクロ波吸収発熱体が食品と接して載置され、当該発熱体が当該食品と接する面とは反対側の面に基材が積層されている実施例においては、外装袋を伴わない電子レンジ加熱用セットの場合も、外装袋を伴う包装体とほぼ同様に、焼き面の品質向上と耳の軟らかさの両立を実現できることがわかった。また、電子レンジ加熱に際し、マイクロ波吸収発熱体の外装袋への融着を望まない場合、餃子の焼き面を上にして電子レンジ庫内に載置する実施例14のような態様、即ち、食品の焼き面上に接してマイクロ波吸収発熱体が載置され、当該発熱体上に基材が積層され、当該基材上に外装袋が存在する状態で電子レンジ庫内に載置する態様が、その上下逆の実施例8のような態様よりも望ましいであろうことがわかった。実施例13~15、比較例2において、電子レンジ加熱やマイクロ波吸収発熱体の発熱によるトレイの溶融、変形及び変性・変色は観察されなかった。
【0111】
<実施例16、18:包装体の作製>
サンプルから取り出したトレイの代りに、厚さ0.35mmの紙トレイを用いること以外は実施例6と同様にして、実施例6と同じ発熱体と紙とからなる発熱積層体を用い、包装体を作製した。焼き餃子の焼き面を表4に示す上下となるように電子レンジ庫内に載置し、上記電子レンジ加熱と同様にして加熱調理を行い、上記評価と同様にして評価した。
【0112】
<実施例17、19:包装体の作製>
サンプルから取り出したトレイの代りに、厚さ0.35mmの紙トレイを用いること以外は実施例8と同様にして、実施例8と同じ発熱体と紙とからなる発熱積層体を用い、包装体を作製した。焼き餃子の焼き面を表4に示す上下となるように電子レンジ庫内に載置し、上記電子レンジ加熱と同様にして加熱調理を行い、上記評価と同様にして評価した。
【0113】
実施例16~19の結果を表4に示す。
【表4】
【0114】
表4と表1及び表3との比較から、紙トレイを用いる態様であっても、プラスチック製のトレイを用いる態様と同様の効果が得られることがわかった。
【符号の説明】
【0115】
1 電子レンジ加熱用セット
2、22 トレイ
2a、22a トレイの底面
2b、22b トレイの開放口
2c トレイの内壁
22d、6d V字形状
3 食品
33 餃子
33a 餃子の先端部
33b 餃子の焼き面
4 マイクロ波吸収発熱体
4a マイクロ波吸収発熱体の外縁
5 基材
5a 基材の外縁
6 カバー
7 トップシール材
7a トップシール材の裏面
7b トップシール材の、トレイの上端との圧着部
7c トップシール材の内壁の外縁
8 ピロー包装袋
9 電子レンジ庫
10 包装体
11 フタ
11a フタの天面(天板)
11aa フタの天面(天板)の裏面
11b フタの側面部
11c 基材の天面(天板)の外縁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16