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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053390
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】位置分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/88 20060101AFI20240408BHJP
   G01S 17/46 20060101ALI20240408BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
G01S17/88
G01S17/46
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159631
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松永 高幸
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112CA01
2F112DA15
2F112EA05
2F112FA45
2F112GA01
5J084AA02
5J084AA04
5J084AA05
5J084AB07
5J084AC10
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA11
5J084BA48
5J084CA03
5J084CA31
5J084CA70
5J084EA23
(57)【要約】
【課題】 空間内に鏡が存在する場合であっても、空間内を移動する物体の分析を適切に実行するための技術を提供する。
【解決手段】 位置分析システムは、距離計測装置と、分析装置と、を備え、分析装置は、距離計測装置から受信した複数個のデータと、距離計測装置の位置及び向きと、を利用して、複数個の物体位置情報を算出する算出部と、複数個の物体位置情報を利用して空間内を移動する1個以上の物体を分析する分析処理を実行する分析部と、を備え、分析部は、第1の物体位置情報が、第1の物体が特定の時刻に空間内の第1の位置に存在することを示し、第2の物体位置情報が、第2の物体が特定の時刻に空間内の第2の位置に存在することを示し、第2の位置が、第1の位置よりも距離計測装置から遠い位置である場合に、複数個の物体位置情報から第2の物体位置情報を取り除いた、第1の物体位置情報を含む1個以上の物体位置情報を利用した分析処理を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置分析システムであって、
距離計測装置と、
分析装置と、
を備え、
前記距離計測装置は、
前記距離計測装置の周囲の二次元又は三次元の空間に亘ってレーザを照射するレーザ光源と、
前記レーザの照射から前記レーザの反射光の受光までの時間を利用して、前記距離計測装置と前記空間内を移動する物体との距離を示すデータを前記分析装置に送信する送信部と、
を備え、
前記分析装置は、
前記距離計測装置から複数個の前記データを受信する受信部と、
前記距離計測装置から受信した前記複数個のデータと、前記空間内における前記距離計測装置の位置及び前記距離計測装置の向きを示す装置情報と、を利用して、複数個の物体位置情報を算出する算出部であって、前記複数個の物体位置情報のそれぞれは、前記空間内を移動する物体の位置と時刻とを示す、前記算出部と、
前記複数個の物体位置情報を利用して前記空間内を移動する1個以上の前記物体を分析する分析処理を実行する分析部と、
前記分析処理の結果を表示する表示部と、
を備え、
前記分析部は、前記複数個の物体位置情報が、第1の物体位置情報と、第2の物体位置情報と、を含み、前記第1の物体位置情報が、第1の物体が特定の時刻に前記空間内の第1の位置に存在することを示し、前記第2の物体位置情報が、第2の物体が前記特定の時刻に前記空間内の第2の位置に存在することを示し、前記第2の位置が、前記第1の位置よりも前記距離計測装置から遠い位置である場合に、前記複数個の物体位置情報から前記第2の物体位置情報を取り除いた、前記第1の物体位置情報を含む1個以上の物体位置情報を利用した前記分析処理を実行する、位置分析システム。
【請求項2】
前記分析装置は、さらに、
前記複数個の物体位置情報が、前記第1の物体位置情報と第3の物体位置情報とを含むN1個(N1は2以上の整数)の物体位置情報と、前記第2の物体位置情報と第4の物体位置情報とを含むN2個(N2はN1と同数)の物体位置情報と、を含む場合に、特定の判断を実行する判断部であって、
前記第3の物体位置情報は、前記第1の物体と同一の第3の物体が前記特定の時刻とは異なる特定の他の時刻に前記空間内の第3の位置に存在することを示し、
前記第4の物体位置情報は、前記第2の物体と同一の第4の物体が前記特定の他の時刻に前記空間内の第4の位置に存在することを示し、
前記第4の位置は、前記第3の位置よりも前記距離計測装置から遠い位置であり、
前記特定の判断は、前記第1の位置と前記第3の位置とを含むN1個の位置を結ぶ第1の線が前記第2の位置と前記第4の位置とを含むN2個の位置を結ぶ第2の線と線対称であることが推定される所定の条件が満たされるのか否かを判断する処理である、
前記判断部を備え、
前記分析部は、前記特定の判断において前記所定の条件が満たされると判断される場合に、前記複数個の物体位置情報から前記N2個の物体位置情報を取り除いた、前記N1個の物体位置情報を含む2個以上の物体位置情報を利用した前記分析処理を実行し、
前記特定の判断において前記所定の条件が満たされないと判断される場合に、前記複数個の物体位置情報から前記N2個の物体位置情報を取り除いた前記2個以上の物体位置情報を利用した前記分析処理は実行されない、請求項1に記載の位置分析システム。
【請求項3】
位置分析システムの制御方法であって、
前記位置分析システムは、
距離計測装置と、
分析装置と、
を備え、
前記制御方法は、
前記距離計測装置の周囲の二次元又は三次元の空間に亘ってレーザを前記距離計測装置に照射させるレーザ照射工程と、
前記レーザの照射から前記レーザの反射光の受光までの時間を利用して、前記距離計測装置と前記空間内を移動する物体との距離を示すデータを前記距離計測装置から前記分析装置に送信する送信工程と、
前記距離計測装置が前記分析装置に送信した複数個の前記データと、前記空間内における前記距離計測装置の位置及び前記距離計測装置の向きを示す装置情報と、を利用して、複数個の物体位置情報を算出する算出工程であって、前記複数個の物体位置情報のそれぞれは、前記空間内を移動する物体の位置と時刻とを示す、前記算出工程と、
前記複数個の物体位置情報を利用して前記空間内を移動する1個以上の前記物体を分析する分析処理を実行する分析工程と、
前記分析処理の結果を表示する表示工程と、
を備え、
前記分析工程は、前記複数個の物体位置情報が、第1の物体位置情報と、第2の物体位置情報と、を含み、前記第1の物体位置情報が、第1の物体が特定の時刻に前記空間内の第1の位置に存在することを示し、前記第2の物体位置情報が、第2の物体が前記特定の時刻に前記空間内の第2の位置に存在することを示し、前記第2の位置が、前記第1の位置よりも前記距離計測装置から遠い位置である場合に、前記複数個の物体位置情報から前記第2の物体位置情報を取り除いた、前記第1の物体位置情報を含む1個以上の物体位置情報を利用した前記分析処理を実行する、制御方法。
【請求項4】
分析装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記分析装置は、距離計測装置と通信可能に構成されており、
前記距離計測装置は、
前記距離計測装置の周囲の二次元又は三次元の空間に亘ってレーザを照射するレーザ光源と、
前記レーザの照射から前記レーザの反射光の受光までの時間を利用して、前記距離計測装置と前記空間内を移動する物体との距離を示すデータを前記分析装置に送信する送信部と、
を備え、
前記コンピュータプログラムは、前記分析装置のコンピュータを、以下の各部、即ち、
前記距離計測装置から複数個の前記データを受信する受信部と、
前記距離計測装置から受信した前記複数個のデータと、前記空間内における前記距離計測装置の位置及び前記距離計測装置の向きを示す装置情報と、を利用して、複数個の物体位置情報を算出する算出部であって、前記複数個の物体位置情報のそれぞれは、前記空間内を移動する物体の位置と時刻とを示す、前記算出部と、
前記複数個の物体位置情報を利用して前記空間内を移動する1個以上の前記物体を分析する分析処理を実行する分析部と、
前記分析処理の結果を表示する表示部と、
として機能させ、
前記分析部は、前記複数個の物体位置情報が、第1の物体位置情報と、第2の物体位置情報と、を含み、前記第1の物体位置情報が、第1の物体が特定の時刻に前記空間内の第1の位置に存在することを示し、前記第2の物体位置情報が、第2の物体が前記特定の時刻に前記空間内の第2の位置に存在することを示し、前記第2の位置が、前記第1の位置よりも前記距離計測装置から遠い位置である場合に、前記複数個の物体位置情報から前記第2の物体位置情報を取り除いた、前記第1の物体位置情報を含む1個以上の物体位置情報を利用した前記分析処理を実行する、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、空間内を移動する物体の位置を分析する位置分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、LiDAR(Light Detection and Rangingの略)を利用した風景の撮像システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2015-534068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LiDARは、LiDARの周囲の二次元又は三次元の空間に亘ってレーザを照射するレーザ光源を備える。そして、LiDARは、レーザの照射時間と、レーザの反射光の受光時間と、を利用して、LiDARと物体との距離を計測する。
【0005】
LiDARは、風景の撮像だけでなく、空間内を移動する物体の分析にも利用される。ここで、空間内に鏡が存在する場合に、LiDARから照射されたレーザの一部は、鏡に反射して物体に到達する。レーザが鏡に反射すると、LiDARと物体との距離が誤って計測される可能性がある。
【0006】
本明細書では、空間内に鏡が存在する場合であっても、空間内を移動する物体の分析を適切に実行するための技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する位置分析システムは、距離計測装置と、分析装置と、を備え、前記距離計測装置は、前記距離計測装置の周囲の二次元又は三次元の空間に亘ってレーザを照射するレーザ光源と、前記レーザの照射から前記レーザの反射光の受光までの時間を利用して、前記距離計測装置と前記空間内を移動する物体との距離を示すデータを前記分析装置に送信する送信部と、を備え、前記分析装置は、前記距離計測装置から複数個の前記データを受信する受信部と、前記距離計測装置から受信した前記複数個のデータと、前記空間内における前記距離計測装置の位置及び前記距離計測装置の向きを示す装置情報と、を利用して、複数個の物体位置情報を算出する算出部であって、前記複数個の物体位置情報のそれぞれは、前記空間内を移動する物体の位置と時刻とを示す、前記算出部と、前記複数個の物体位置情報を利用して前記空間内を移動する1個以上の前記物体を分析する分析処理を実行する分析部と、前記分析処理の結果を表示する表示部と、を備え、前記分析部は、前記複数個の物体位置情報が、第1の物体位置情報と、第2の物体位置情報と、を含み、前記第1の物体位置情報が、第1の物体が特定の時刻に前記空間内の第1の位置に存在することを示し、前記第2の物体位置情報が、第2の物体が前記特定の時刻に前記空間内の第2の位置に存在することを示し、前記第2の位置が、前記第1の位置よりも前記距離計測装置から遠い位置である場合に、前記複数個の物体位置情報から前記第2の物体位置情報を取り除いた、前記第1の物体位置情報を含む1個以上の物体位置情報を利用した前記分析処理を実行する。
【0008】
空間内に鏡が存在する場合には、第1のレーザが鏡に反射せずに直接的に特定の物体に到達する一方で、第2のレーザが鏡に反射して間接的に特定の物体に到達する。そして、第1のレーザと第2のレーザは、特定の時刻に重複して特定の物体に到達する。ここで、第2のレーザが間接的に特定の物体に到達するまでの距離は、第1のレーザが直接的に特定に物体に到達するまでの距離よりも長い。特定の時刻に異なる距離を示す2個の物体位置情報が算出されると、特定の物体が1個の物体であるにも関わらず、特定の物体が2個の別個の物体(即ち第1の物体と第2の物体)であると誤って分析される可能性がある。即ち、第2のレーザに対応する第2の物体位置情報は、特定の物体に対して重複する誤った情報である。上記の構成によれば、複数個の物体位置情報から誤った情報である第2の物体位置情報を取り除いた、第1の物体位置情報を含む1個以上の物体位置情報を利用した分析処理が実行される。空間内に鏡が存在する場合であっても、空間内を移動する物体の分析を適切に実行することができる。
【0009】
前記分析装置は、さらに、前記複数個の物体位置情報が、前記第1の物体位置情報と第3の物体位置情報とを含むN1個(N1は2以上の整数)の物体位置情報と、前記第2の物体位置情報と第4の物体位置情報とを含むN2個(N2はN1と同数)の物体位置情報と、を含む場合に、特定の判断を実行する判断部であって、前記第3の物体位置情報は、前記第1の物体と同一の第3の物体が前記特定の時刻とは異なる特定の他の時刻に前記空間内の第3の位置に存在することを示し、前記第4の物体位置情報は、前記第2の物体と同一の第4の物体が前記特定の他の時刻に前記空間内の第4の位置に存在することを示し、前記第4の位置は、前記第1の位置よりも前記距離計測装置から遠い位置であり、前記特定の判断は、前記第1の位置と前記第3の位置とを含むN1個の位置を結ぶ第1の線が前記第2の位置と前記第4の位置とを含むN2個の位置を結ぶ第2の線と線対称であることが推定される所定の条件が満たされるのか否かを判断する処理である、前記判断部を備え、前記分析部は、前記特定の判断において前記所定の条件が満たされると判断される場合に、前記複数個の物体位置情報から前記N2個の物体位置情報を取り除いた、前記N1個の物体位置情報を含む2個以上の物体位置情報を利用した前記分析処理を実行し、前記特定の判断において前記所定の条件が満たされないと判断される場合に、前記複数個の物体位置情報から前記N2個の物体位置情報を取り除いた前記2個以上の物体位置情報を利用した前記分析処理は実行されなくてもよい。
【0010】
第1の線が第2の線と線対称であることは、遠い側の第2の線が第1の線の鏡像であることを意味する。上記の構成によれば、特定の判断を実行しない比較例と比べて、第2の線に対応するN2個の物体位置情報が、特定の物体に対して重複する誤った情報であることを正確に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】位置分析システムの概念図を示す。
図2】鏡が存在する場合の現象を説明する図を示す。
図3】位置分析システムのブロック図を示す。
図4】端末装置の処理のフローチャート図を示す。
図5】分析処理のフローチャート図を示す。
図6】分析処理で算出される中間線の具体例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(位置分析システム2;図1
位置分析システム2は、所定の領域内を移動する1人以上の人物の位置(例えば、4a~4c)を分析するためのシステムである。所定の領域は、例えば、屋内の領域、屋外の領域等である。屋内の領域は、例えば、事務所、工場、ショッピングモール、展示場等である。屋外の領域は、例えば、駅の構外、ビルのエントランス等である。
【0013】
位置分析システム2は、端末装置10と、3DLiDAR100と、を備える。端末装置10は、デスクトップPC、ノートPC、スマートフォン等である。なお、変形例では、端末装置10に代えて、インターネット上のサーバが利用されてもよい。3DLiDARは、光による検知と測距(light Detection And Rangingの略)と呼ばれ、周囲の物体との距離を三次元的に計測する装置である。端末装置10と3DLiDAR100は、有線又は無線を介して、互いに通信可能に接続されている。
【0014】
(3DLiDAR100の構成;図2図3
3DLiDAR100は、通信インターフェース116と、レーザ光源120と、を備える。なお、以下では、「インターフェース」を「I/F」と記載する。通信I/F116は、端末装置10との通信を実行するためのI/Fである。
【0015】
レーザ光源120は、3DLiDAR100の全方位の三次元の空間に亘ってレーザを照射する。レーザ光源120は、モータ等の回転機構を利用して、上下の180度の方向、及び、水平の360度の方向に回転する。例えば、レーザ光源120は、5回/秒の回転数で回転する。これにより、3DLiDAR100の全方位にレーザが走査される。なお、変形例では、レーザ光源120は、ソリッドステート型と呼ばれる回転機構を利用しない方式でレーザを3DLiDAR100の全方位に走査してもよい。
【0016】
例えば、図2に示すように、レーザ光源120が特定の方向に向かって照射したレーザは、所定の領域内を移動する人物4aに到達する。人物4aに到達したレーザの反射光は、3DLiDAR100によって受光される。3DLiDAR100は、人物4aへのレーザの照射から当該レーザの反射光の受光までの時間を利用して、3DLiDAR100と人物4aとの間の距離を算出する。3DLiDAR100は、通信I/F116を介して、レーザの照射方向と、算出済みの距離と、人物4aへのレーザの照射時刻(即ちタイムスタンプ)と、を含むデータを端末装置10に送信する。例えば、3DLiDAR100は、1回の全方位へのレーザ照射により算出された複数個のデータを一単位として端末装置10に送信する。
【0017】
(端末装置10の構成;図3
端末装置10は、表示部12と、操作部14と、通信I/F16と、制御部30と、を備える。表示部12は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。操作部14は、ユーザから指示を受け付けるための複数のキーを備える。なお、表示部12は、タッチパネル(即ち操作部)として機能してもよい。通信I/F16は、3DLiDAR100との通信を実行するためのI/Fである。
【0018】
制御部30は、CPU32と、メモリ34と、を備える。CPU32は、メモリ34に記憶されているプログラム40及び42に従って様々な処理を実行する。OSプログラム40は、端末装置10の基本的な動作を制御するプログラムである。分析アプリケーションプログラム42(以下では、「分析アプリ42」と記載する)は、3DLiDAR100から受信したデータを分析するためのプログラムである。分析アプリ42は、例えば、位置分析システム2を提供する事業者によって提供される。
【0019】
メモリ34には、さらに、図面情報50、LiDAR情報52、人物識別情報54、及び、複数個の人物位置情報56と、が記憶される。図面情報50は、所定の領域の平面図面を示す。なお、変形例では、図面情報50は、所定の領域の三次元図面を示してもよい。LiDAR情報52は、所定の領域内における3DLiDAR100の位置及び3DLiDAR100の向きを示す。LiDAR情報52は、例えば、図面情報50によって示される平面図面上の座標と向きである。
【0020】
人物識別情報54は、所定の領域内を移動する人物を識別するための情報である。人物識別情報54は、1人以上の人物のそれぞれについて、当該人物を識別するIDと、当該人物の特徴を表す特徴情報と、を含む。特徴情報は、3DLiDAR100によって算出された距離を利用して分析アプリ42によって算出される。特徴情報は、例えば、人物の三次元の凹凸の程度やパターンといった特徴を表す。人物識別情報54は、3DLiDAR100による計測が開始される毎にリセットされる。
【0021】
複数個の人物位置情報56のそれぞれは、人物を識別するIDに対応付けて記憶される。複数個の人物位置情報56のそれぞれは、所定の領域内を移動する人物の位置(即ち図面情報50の座標)と時刻とを示す。別言すれば、各人物位置情報56は、IDによって識別される人物が所定の領域内の特定の位置に特定の時刻に存在していることを示す。複数個の人物位置情報56は、分析アプリ42によって算出される。複数個の人物位置情報56は、後述する分析処理(図4のS22)が実行される毎にリセットされる。
【0022】
(鏡が存在する場合;図1図2
所定の領域内に鏡6が存在する状況が想定される。鏡6から遠い人物4aには、3DLiDAR100のレーザL1が人物4aに直接的に到達する。一方、鏡6の近くの人物4bには、レーザL2とレーザL3が、極めて短い時間の間に(即ちほぼ同時に)、人物4bに重複して到達する。レーザL2は、鏡6に反射せずに直接的に到達する一方で、レーザL3は、鏡6に反射して間接的に到達する。ここで、レーザL3の進む距離は、レーザL2の進む距離よりも長い。このため、レーザL3を利用して人物4bまでの距離を算出すると、人物4bの実際の場所よりも遠い鏡6の向こう側に人物4bmが存在することが誤って分析される可能性がある。人物4bmは、人物4bの鏡像に相当する。位置分析システム2は、所定の領域内に鏡6が存在する場合であっても、所定の領域内を移動する人物の分析を適切に実行することを実現する。
【0023】
(端末装置10の処理;図4
図4を参照して、端末装置10のCPU32が分析アプリ42に従って実行する処理について説明する。図4の処理は、分析アプリ42の起動をトリガとして開始される。なお、図4の処理の一部は、他のアプリ(図示省略)のバックグラウンドで実行されてもよい。
【0024】
CPU32は、S10及びS20の監視を実行する。S10では、CPU32は、通信I/F16を介して、3DLiDAR100からデータを受信することを監視する。また、S20では、CPU32は、操作部14において後述する分析処理の開始の指示を受けることを監視する。
【0025】
CPU32は、3DLiDAR100からデータを受信する場合(S10)に、S12に進む。S12では、CPU32は、3DLiDAR100から受信したデータを利用して、所定の領域内に存在する人物を特定する。例えば、CPU32は、1回の全方位のレーザ照射から得られた複数個のデータの中から人物らしき特徴を表すデータ群を特定する。CPU32は、特定済みのデータ群から特徴情報(例えば凹凸の程度を表す情報)を算出する。CPU32は、人物識別情報54の中に算出済みの特徴情報と同じ特徴情報が既に存在するのか否かを判断する。CPU32は、人物識別情報54の中に同じ特徴情報が存在しないと判断する場合に、新しい人物を識別する新しいIDを算出済みの特徴情報に付与する。また、CPU32は、人物識別情報54の中に同じ特徴情報が存在すると判断する場合に、人物識別情報54において同じ特徴情報に対応付けて含まれるIDを算出済みの特徴情報に付与する。そして、CPU32は、所定の領域内に存在する全ての人物に対してIDを付与する。
【0026】
S14では、CPU32は、3DLiDAR100から受信したデータと、S12で算出された1個以上の特徴情報と、LiDAR情報52と、を利用して、1回の全方位のレーザ照射に対する1個以上の人物位置情報56を算出して記憶する。例えば、CPU32は、1個以上の特徴情報のうちの特定の特徴情報の元となったデータ群を利用して、3DLiDAR100から特定の特徴情報に対応するIDによって識別される特定の人物へのベクトルを算出する。CPU32は、LiDAR情報52によって表される座標と向きに算出済みのベクトルを加算して、所定の領域内を移動する特定の人物の位置を示す座標を算出する。CPU32は、特定の人物を識別するIDに対応付けて、算出済みの座標と特定の特徴情報の元となったデータ群によって示されるタイムスタンプとを含む人物位置情報56をメモリ34に記憶する。CPU32は、S12で算出された1個以上の特徴情報の全てについて、当該特徴情報によって表される人物の人物位置情報56を算出して記憶する。S14が終了すると、CPU32は、S10及びS12の監視に戻る。即ち、特定の時間(例えば1時間)に亘って3DLiDAR100からデータが繰り返し受信される毎に、S12及びS14の処理が実行される。
【0027】
また、CPU32は、操作部14において分析処理の開始の指示を受ける場合(S20でYES)に、S22において、メモリ34に記憶されている複数個の人物位置情報56を利用して、図5で後述する分析処理を実行する。続くS24では、CPU32は、S22の分析処理の結果を表示部12に表示させる。当該結果は、例えば、図面情報50によって表される所定の領域の図面上に表示される。S24が終了すると、CPU32は、S10及びS12の監視に戻る。
【0028】
(分析処理;図5図6
S32では、CPU32は、所定の領域内に複数の人物が存在するのか否かを判断する。CPU32は、メモリ34に記憶されている人物識別情報54に2個以上のIDが含まれる場合に、所定の領域内に複数の人物が存在すると判断し(S32でYES)、S34に進む。
【0029】
S34では、CPU32は、メモリ34に記憶されている複数個の人物位置情報56の中に同一時刻における一対の人物位置情報56が複数回に亘って出現するのか否かを判断する。ここで、「同一時刻」は、3DLiDAR100のレーザ光源120が全方位に一回転する時間(例えば5分の1秒)よりも短い間隔の時間を示す。例えば、図2において、図2の人物4bと鏡像4bmとは、互いに鏡6に近く、人物4bの人物位置情報56のタイムスタンプと鏡像4bmの人物位置情報56のタイムスタンプとの差分は、同一時刻を表す間隔以下である。
【0030】
図2で上述したように、所定の領域内に鏡6が存在する場合には、2本のレーザL2及びL3が人物4bに重複して到達する。この場合に、図4のS14の処理を実行すると、同一の人物に対する一対の人物位置情報56として、実際の人物4bに対応する人物位置情報56と、人物4bの鏡像4bmに対応する人物位置情報56と、が算出される。そして、人物4bは、鏡6の近くを特定の時間に亘って移動するので、一対の人物位置情報56が複数回に亘って出現する。同一時刻における一対の人物位置情報56が複数回に亘って出現することから、所定の領域内に鏡6が存在し、かつ、鏡6の近くに人物が存在することを推定することが可能である。なお、人物4bに付与されるIDと鏡像4bmに付与されるIDは、基本的には異なり、鏡像4bmが実際の人物4bと異なる人物として判断される場合が多い。なお、人物4bに付与されるIDと鏡像4bmに付与されるIDが同じである場合もある。
【0031】
CPU32は、同一時刻における一対の人物位置情報56が複数回に亘って出現する判断する場合(S34でYES)に、S36に進む。S36では、CPU32は、一対の人物位置情報56を結ぶ線分の中間点を算出する。続くS38では、CPU32は、S36で算出された複数個の中間点を結ぶ線が直線であるのか否かを判断する。例えば、CPU32は、複数個の中間点を結ぶ線が、所定の幅の領域内に含まれる場合に、複数個の中間点を結ぶ線が直線であると判断する。
【0032】
CPU32は、複数個の中間点を結ぶ線が直線であると判断する場合(S38でYES)に、S40に進む。S40では、CPU32は、S34で判断された一対の人物位置情報56のうち、3DLiDAR100から遠い側の位置を示す人物位置情報56をメモリ34から削除する。
【0033】
S40が終了する場合、所定の領域内に複数の人物が存在しないと判断される場合(S32でNO)、同一時刻における一対の人物位置情報56が存在しないと判断される場合(S34でNO)、又は、複数個の中間点を結ぶ線が直線でないと判断される場合(S38でNO)に、CPU32は、図5の処理を終了する。
【0034】
(具体的なケース;図6
例えば、図2の人物4bが鏡6の前を移動すると、複数の時刻のそれぞれについて、一対の人物位置情報56が算出される(図4のS14)。例えば、図6に示すように、時刻t1、t2、t3において、一対の人物位置情報J1a及びJ1b、J2a及びJ2b、J3a及びJ3bが算出される。本ケースでは、人物位置情報J1a、J2a、及び、J3aは、第1のIDに対応付けられ、人物位置情報J1b、J2b、及び、J3bは、第1のIDと異なる第2のIDに対応付けられる。
【0035】
本ケースでは、CPU32は、所定の領域内に複数の人物が存在し、かつ、同一時刻における一対の人物位置情報J1a~J3bが複数回に亘って出現すると判断する(S32でYES、S34でYES)。CPU32は、一対の人物位置情報J1a及びJ1bの中間点P1を算出し、一対の人物位置情報J2a及びJ2b、一対の人物位置情報J3a及びJ3bについても、中間点P2、P3を算出する(S36)。CPU32は、複数個の中間点P1~P3を結ぶ線MLを算出する。本ケースでは、CPU32は、線MLは直線であると判断する(S38)。そして、CPU32は、一対の人物位置情報J1a及びJ1bのうち、3DLiDAR100から遠い側の位置を示す人物位置情報J1bをメモリ34から削除する(S40)。人物位置情報J2b及びJ3bも、同様に、メモリ34から削除される。
【0036】
鏡6の前を移動する人物4bの鏡像4bmの位置は、鏡6を挟んで、実際の人物4bの位置と線対称となる。図6の中間点P1~P3を結ぶ線MLは、鏡6に対応する。そして、線MLが直線であることが判断されることから、一対の人物位置情報(例えばJ1a及びJ1b)のうち、3DLiDAR100から遠い側の位置を示す人物位置情報J1bが鏡像4bmを示すことが推定可能である。なお、一対の人物位置情報が互いに線対象の関係を示すのか否かの判断には、S36及びS38の処理に限らず、他の方法が採用されてもよい。
【0037】
例えば、図5の36及びS38のように線対称の関係を示すのか否かの判断を実行しない比較例が想定される。この比較例では、鏡像ではない実際の人物を表す人物位置情報を誤って削除する可能性がある。本実施例の構成によれば、上記の比較例と比べて、鏡像を表す人物位置情報を正確に判断することができる。なお、変形例では、上記の比較例の構成が採用されてもよい。
【0038】
また、鏡像4bmを示す人物位置情報J1b、J2b、及び、J3bがメモリ34から削除されることにより、分析処理の結果として、実際の人物4bの移動の様子が表示され、鏡像4bmの移動の様子は表示されない(S24)。所定の領域内に鏡6が存在する場合であっても、所定の領域内を移動する人物の分析を適切に実行することができる。
【0039】
(対応関係)
人物が、「物体」の一例である。位置分析システム2、3DLiDAR100、レーザ光源120、通信I/F116が、それぞれ、「位置分析システム」、「距離計測装置」、「レーザ光源」、「送信部」の一例である。端末装置10、LiDAR情報52、通信I/F16、表示部12が、それぞれ、「分析装置」、「装置情報」、「受信部」、「表示部」の一例である。図4のS14を実行するCPU32、S22を実行するCPU32が、それぞれ、「算出部」、「分析部」の一例である。人物位置情報J1a、J1b、J2a、J2bが、それぞれ、「第1の物体位置情報」、「第2の物体位置情報」、「第3の物体位置情報」、「第4の物体位置情報」の一例である。時刻t1、時刻t2が、それぞれ、「特定の時刻」、「特定の他の時刻」の一例である。人物4bが、「第1の物体(及び第3の物体)」の一例である。鏡像4bmが、「第2の物体(及び第4の物体)」の一例である。図6のJ1a、J2a、及びJ3aを結んだ線、J1b、J2b、及びJ3bを結んだ線が、それぞれ、「第1の線」、「第2の線」の一例である。図5のS38でYESと判断される条件が、「所定の条件」の一例である。
【0040】
以上、本明細書で開示する技術の具体例を説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を採用してもよい。
【0041】
(変形例1) 位置分析システム2は、人物に限らず、動物、自動車等の他の物体の位置を分析するシステムであってもよい。本変形例では、上記の他の物体が、「物体」の一例である。
【0042】
(変形例2) 「距離計測装置」は、3DLiDAR100に限らず、いわゆる2DLiDARであってもよい。
【0043】
(変形例3) 図5のS40の削除の処理に代えて、例えば、遠い側の人物位置情報を削除せずに図4のS24の分析結果の表示で無視することが決定されてもよい。一般的に言えば、「前記複数個の物体位置情報から前記第2の物体位置情報を取り除いた、前記第1の物体位置情報を含む1個以上の物体位置情報を利用した前記分析処理」が実行されればよい。
【0044】
(変形例4) 3DLiDAR100は、全方位に限らず、全方位の一部の範囲にレーザを走査してもよい。本変形利では、全方位の一部の範囲が、「前記距離計測装置の周囲」の一例である。
【0045】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
2 :位置分析システム
4a~4c :人物
4bm :鏡像
6 :鏡
10 :端末装置
12 :表示部
14 :操作部
16 :通信I/F
30 :制御部
32 :CPU
34 :メモリ
40 :OSプログラム
42 :分析アプリ
50 :図面情報
52 :LiDAR情報
54 :人物識別情報
56 :人物位置情報
100 :3DLiDAR
116 :通信I/F
120 :レーザ光源
J1a~J3b :人物位置情報
L1~L3 :レーザ
ML :線
P1~P3 :中間点
t1~t3 :時刻
図1
図2
図3
図4
図5
図6