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特開2024-53393加圧流体注入ノズル、金型、射出成形品の製造方法
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  • 特開-加圧流体注入ノズル、金型、射出成形品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053393
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】加圧流体注入ノズル、金型、射出成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/00 20060101AFI20240408BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20240408BHJP
   B29C 45/57 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B29C45/00
B29C45/26
B29C45/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159638
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】河井 雅憲
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AG07
4F202AM32
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK90
4F206AG07
4F206AM32
4F206JA07
4F206JL02
4F206JM04
4F206JN27
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】加圧流体注入ノズル下流側の樹脂にウェルド界面が形成されず、金型に設けられた加圧流体注入口への樹脂の流れ込みがなく、金型の樹脂流路内の溶融樹脂中に十分に加圧流体を注入することができる加圧流体注入ノズル、その加圧流体注入ノズルを備えた金型、およびその金型を用いた射出成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】先端に吐出口6を有する筒状体2と、筒状体2内に挿入された柱状の固定軸ピン3と、筒状体2の後端部2B側において、筒状体2から外側に張り出す前進ストッパー4と、筒状体2の外側に位置し、前進ストッパー4を筒状体2の後端方向に付勢する弾性体5と、を備え、筒状体2と固定軸ピン3の間に、筒状体2の後端から吐出口6に延びる加圧流体流路7を有する、加圧流体注入ノズル1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に吐出口を有する筒状体と、前記筒状体内に挿入された柱状の固定軸ピンと、前記筒状体の後端部側において、前記筒状体から外側に張り出す前進ストッパーと、前記筒状体の外側に位置し、前記前進ストッパーを前記筒状体の後端方向に付勢する弾性体と、を備え、
前記筒状体と前記固定軸ピンの間に、前記筒状体の後端から前記吐出口に延びる加圧流体流路を有する、加圧流体注入ノズル。
【請求項2】
前記筒状体の先端部の内面の形状と前記固定軸ピンの先端部の外面の形状は同一である、請求項1に記載の加圧流体注入ノズル。
【請求項3】
前記筒状体の先端部の内面の形状と前記固定軸ピンの先端部の外面の形状は、先端に向かうに従って縮径するテーパー形状である、請求項1に記載の加圧流体注入ノズル。
【請求項4】
前記筒状体の先端部の外面の形状は、先端に向かうに従って縮径するテーパー形状である、請求項1に記載の加圧流体注入ノズル。
【請求項5】
請求項1に記載の加圧流体注入ノズルと、前記加圧流体注入ノズルが配置される金型本体と、を備え、
前記金型本体は、加圧流体を注入する加圧流体注入路と、溶融樹脂を射出する樹脂流路と、前記樹脂流路に開口する加圧流体注入口と、を有し、
前記加圧流体注入路への加圧流体の注入を開始すると、前記加圧流体が前記前進ストッパーを前記加圧流体注入口側に押圧して、前記前進ストッパーと共に前記筒状体が前記加圧流体注入口側に前進することにより、前記筒状体の先端部が前記固定軸ピンの先端部から離間して、前記吐出口が開き、
前記加圧流体注入路への加圧流体の注入を停止すると、前記弾性体が前記前進ストッパーを前記加圧流体注入路側に押圧して、前記前進ストッパーと共に前記筒状体が前記加圧流体注入路側に後退することにより、前記筒状体の先端部が前記固定軸ピンの先端部に嵌合して、前記吐出口が閉じる、金型。
【請求項6】
請求項5に記載の金型を用いた射出成形品の製造方法であって、
前記樹脂流路内に溶融樹脂を射出する第1の工程と、
前記加圧流体注入口に前記吐出口を連通させた状態で、前記第1の工程の後、または前記第1の工程と同時に、前記前進ストッパーと共に前記筒状体を前記加圧流体注入口側に前進させ、前記筒状体の先端で少なくとも前記加圧流体注入口の近傍の溶融樹脂を押圧した後、前記加圧流体注入ノズルから、前記加圧流体注入口の近傍の溶融樹脂を介して、前記樹脂流路内の溶融樹脂中に加圧流体を注入して、前記溶融樹脂内に中空部を形成する第2の工程と、を有する、射出成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧流体注入ノズル、加圧流体注入ノズルを備えた金型、およびその金型を用いた射出成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス射出成形におけるガス注入法には、ノズル注入法、すなわち溶融樹脂を射出した後に同一のノズルからガスを注入して、成形品の内部に中空部を形成する方法が一般的に採用されていた。しかし、この方法では、成形品にヘジテーション・マーク(樹脂の流動末端の痕跡)が現れやすいという課題があった。
【0003】
そこで、樹脂の射出ノズルとは別に、ガス注入専用ピンを適宜設け、成形品の厚肉部にガスを注入して、成形品の内部に中空部を形成する方法が提案されている。具体的には、金型キャビティ内の樹脂流路に突出して位置決めされたガス注入溝を有するガス注入ピンが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。このガス注入ピンでは、前記樹脂流路内にて、ガス注入溝が常時開放状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-217287号公報
【特許文献2】特開2005-66823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2のガス注入ピンを用いた場合、ガス注入ピンより下流側の樹脂にウェルド界面が形成されることによる品質不良や、ガス注入溝への樹脂の流れ込み(逆流)によるガス流路の詰まりが生じるという課題があった。また、特許文献1、2のガス注入ピンでは、ガス注入溝への樹脂の流れ込み(逆流)を少量に抑えるために、ガス注入溝の幅を非常に狭くしている。そのため、上記樹脂流路内にガスを注入する際に、注入ガスの圧力損失が生じて、中空部を形成するために必要である十分なガス吐出を実現できないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、加圧流体注入ノズル下流側の樹脂にウェルド界面が形成されず、金型に設けられた加圧流体注入口への樹脂の流れ込みがなく、金型の樹脂流路内の溶融樹脂中に十分に加圧流体を注入することができる加圧流体注入ノズル、その加圧流体注入ノズルを備えた金型、およびその金型を用いた射出成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]先端に吐出口を有する筒状体と、前記筒状体内に挿入された柱状の固定軸ピンと、前記筒状体の後端部側において、前記筒状体から外側に張り出す前進ストッパーと、前記筒状体の外側に位置し、前記前進ストッパーを前記筒状体の後端方向に付勢する弾性体と、を備え、
前記筒状体と前記固定軸ピンの間に、前記筒状体の後端から前記吐出口に延びる加圧流体流路を有する、加圧流体注入ノズル。
[2]前記筒状体の先端部の内面の形状と前記固定軸ピンの先端部の外面の形状は同一である、[1]に記載の加圧流体注入ノズル。
[3]前記筒状体の先端部の内面の形状と前記固定軸ピンの先端部の外面の形状は、先端に向かうに従って縮径するテーパー形状である、[1]に記載の加圧流体注入ノズル。
[4]前記筒状体の先端部の外面の形状は、先端に向かうに従って縮径するテーパー形状である、[1]に記載の加圧流体注入ノズル。
[5][1]に記載の加圧流体注入ノズルと、前記加圧流体注入ノズルが配置される金型本体と、を備え、
前記金型本体は、加圧流体を注入する加圧流体注入路と、溶融樹脂を射出する樹脂流路と、前記樹脂流路に開口する加圧流体注入口と、を有し、
前記加圧流体注入路への加圧流体の注入を開始すると、前記加圧流体が前記前進ストッパーを前記加圧流体注入口側に押圧して、前記前進ストッパーと共に前記筒状体が前記加圧流体注入口側に前進することにより、前記筒状体の先端部が前記固定軸ピンの先端部から離間して、前記吐出口が開き、
前記加圧流体注入路への加圧流体の注入を停止すると、前記弾性体が前記前進ストッパーを前記加圧流体注入路側に押圧して、前記前進ストッパーと共に前記筒状体が前記加圧流体注入路側に後退することにより、前記筒状体の先端部が前記固定軸ピンの先端部に嵌合して、前記吐出口が閉じる、金型。
[6][5]に記載の金型を用いた射出成形品の製造方法であって、
前記樹脂流路内に溶融樹脂を射出する第1の工程と、
前記加圧流体注入口に前記吐出口を連通させた状態で、前記第1の工程の後、または前記第1の工程と同時に、前記前進ストッパーと共に前記筒状体を前記加圧流体注入口側に前進させ、前記筒状体の先端で少なくとも前記加圧流体注入口の近傍の溶融樹脂を押圧した後、前記加圧流体注入ノズルから、前記加圧流体注入口の近傍の溶融樹脂を介して、前記樹脂流路内の溶融樹脂中に加圧流体を注入して、前記溶融樹脂内に中空部を形成する第2の工程と、を有する、射出成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加圧流体注入ノズル下流側の樹脂にウェルド界面が形成されず、金型に設けられた加圧流体注入口への樹脂の流れ込みがなく、金型の樹脂流路内の溶融樹脂中に十分に加圧流体を注入することができる加圧流体注入ノズル、その加圧流体注入ノズルを備えた金型、およびその金型を用いた射出成形品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る加圧流体注入ノズル、および加圧流体注入ノズルを備えた金型の断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る加圧流体注入ノズル、および加圧流体注入ノズルを備えた金型の断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る加圧流体注入ノズルの変形例の断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る加圧流体注入ノズルの変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の加圧流体注入ノズル、その加圧流体注入ノズルを備えた金型、およびその金型を用いた射出成形品の製造方法について、実施形態を示して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
[加圧流体注入ノズル、金型]
図1は、本発明の一実施形態に係る加圧流体注入ノズル、および加圧流体注入ノズルを備えた金型の断面図である。なお、図1は、加圧流体注入ノズルの長手方向に沿う断面図である。
なお、以下の説明で用いる図面は、その特徴をわかりやすくするために、便宜上、特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は、実際とは異なる場合がある。
【0012】
「加圧流体注入ノズル」
図1に示すように、本実施形態の加圧流体注入ノズル1は、筒状体2と、固定軸ピン3と、前進ストッパー4と、弾性体5と、を備える。
【0013】
筒状体2は、円筒状または多角筒状の部材である。筒状体2は、先端に吐出口6を有する。
固定軸ピン3は、筒状体2内に挿入された円柱状または多角柱状の部材である。
筒状体2と固定軸ピン3は、同軸状に設けられている。
【0014】
筒状体2の内面2aの形状は、筒状体2の先端部2A以外の部分において、固定軸ピン3の外面3aの形状と相似の形状である。筒状体2と固定軸ピン3は、それぞれの長手方向の先端部2A,3A以外の部分で離間している。筒状体2と固定軸ピン3の間には、筒状体2および固定軸ピン3の長手方向に沿う加圧流体流路7が形成されている。
【0015】
吐出口6は、後述するように、筒状体2の進退に伴って開閉する。吐出口6が閉じた状態では、筒状体2の先端面2bと固定軸ピン3の先端面2bは同一面上にある。また、吐出口6が閉じた状態では、筒状体2と固定軸ピン3は、それぞれの先端部2A,3Aで接している(嵌合している)。すなわち、筒状体2の内面2aが、固定軸ピン3の外面3aに接している。
【0016】
筒状体2の先端部2Aの内面2cの形状と固定軸ピン3の先端部3Aの外面3cの形状は同一である。筒状体2の先端部2Aの内面2cの形状と固定軸ピン3の先端部3Aの外面3cの形状は、それぞれの先端に向かうに従って縮径するテーパー形状であることが好ましい。筒状体2の先端部2Aの内面2cの形状と固定軸ピン3の先端部3Aの外面3cの形状がテーパー形状であると、筒状体2に対する固定軸ピン3の嵌合と離間を容易に行うことができるとともに、筒状体2に固定軸ピン3を嵌合した場合に、両者が密接して、吐出口6を完全に閉じることができる。
【0017】
筒状体2の先端部2Aの外面2dの形状は、先端に向かうに従って縮径するテーパー形状であることが好ましい。これにより、溶融樹脂中に筒状体2の先端部2Aを差し込みやすくなる。その結果、溶融樹脂の内部に加圧流体を注入する際に、吐出口6を溶融樹脂の内部に容易に位置させることができる。
【0018】
筒状体2の後端部2Bは、筒状体2の径方向の外方に突出するフランジ部8であってもよい。
【0019】
前進ストッパー4は、筒状体2の後端部2B側において、筒状体2の外周から外側に張り出すように設けられている。前進ストッパー4は、フランジ部8に接して配置され、フランジ部8と一体化されている。
【0020】
弾性体5は、筒状体2の外側に位置し、筒状体2の長手方向に沿って、前進ストッパー4よりも筒状体2の先端部2A側に配置されている。弾性体5は、前進ストッパー4を筒状体2の後端方向に付勢する。
【0021】
筒状体2の材質は、射出成形時の熱によって変形したり、劣化したりしないものであれば特に限定されないが、例えば、プリハードン鋼、アズロールド鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0022】
固定軸ピン3の材質は、射出成形時の熱によって変形したり、劣化したりしないものであれば特に限定されないが、例えば、プリハードン鋼、アズロールド鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0023】
前進ストッパー4の材質は、射出成形時の熱によって変形したり、劣化したりしないものであれば特に限定されないが、例えば、プリハードン鋼、アズロールド鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0024】
弾性体5としては、板バネ、コイルバネ、ゴム材等が挙げられる。弾性体5がコイルバネの場合、例えば、ピアノ線A種(SWP-A)からなり、ばね定数1N/mmのものを用いることができる。
【0025】
吐出口6の内径は、例えば、0.1mm~2.0mmが好ましく、安定成形性や、溶融樹脂中への加圧流体の注入を止めた際に、溶融樹脂の逆流を防止する観点から、0.2mm~0.5mmがより好ましい。
【0026】
本実施形態の加圧流体注入ノズル1では、筒状体2がその長手方向に沿って進退自在となっている。
【0027】
本実施形態の加圧流体注入ノズル1では、筒状体2がその長手方向に沿って進退自在となっているため、筒状体2がその先端部2A側に前進すると、筒状体2の先端部2Aが固定軸ピン3の先端部3Aから離間して、加圧流体流路7と連通する吐出口6が開く。また、筒状体2がその後端部2B側に後退すると、筒状体2の先端部2Aが固定軸ピン3の先端部3Aに嵌合して、吐出口6が閉じる。この加圧流体注入ノズル1を、射出成形に用いられる金型内に配置することにより、加圧流体注入ノズル1の下流側の樹脂にウェルド界面が形成されず、金型に設けられた加圧流体注入口への溶融樹脂の流れ込みがなく、金型の樹脂流路内の溶融樹脂中に十分に加圧流体を注入することができる。
【0028】
「金型」
図1に示すように、本実施形態の金型10は、本実施形態の加圧流体注入ノズル1と、金型本体100と、を備える。
【0029】
金型本体100は、加圧流体注入ノズル1を収容する空間である収容部110と、金型本体100内に加圧流体を注入する加圧流体注入路120と、溶融樹脂200を射出する樹脂流路130と、樹脂流路130に開口する加圧流体注入口140と、を有する。
金型本体100は、射出成形用の金型であり、固定型であってもよく、可動型であってもよい。
【0030】
金型本体100の収容部110は、加圧流体注入ノズル1の先端部側(筒状体2の先端部2A側)を収容し、配置する第1収容部110Aと、加圧流体注入ノズル1の後端部側(筒状体2の後端部2B側)を収容し、配置する第2収容部110Bおよび第3収容部110Cとからなる。第1収容部110Aと第2収容部110Bと第3収容部110Cは、この順に連続して設けられている。第2収容部110Bの内径は第1収容部110Aの内径よりも大きく、第3収容部110Cの内径は第2収容部110Bの内径よりも大きい。
【0031】
第2収容部110Bには、弾性体5の大部分が配置されている。第3収容部110Cには、弾性体5の一部と前進ストッパー4が配置されている。
第2収容部110Bにおいて、弾性体5の先端(筒状体2の先端部2A側の端)が、第2収容部110Bにおける第1収容部110A側の内壁面110aに接している。また、第2収容部110Bにおいて、弾性体5の後端(筒状体2の後端部2B側の端)が、前進ストッパー4に接している。このようにして、第2収容部110Bと第3収容部110Cにおいて、弾性体5は、前進ストッパー4を筒状体2の後端部2B側に付勢している。
【0032】
本実施形態の金型10では、図2に示すように、加圧流体注入路120への加圧流体300の注入を開始すると、加圧流体300が前進ストッパー4を加圧流体注入口140側(第1収容部110A側の内壁面110a側)に押圧して、前進ストッパー4と共に筒状体2が加圧流体注入口140側に前進する。すると、筒状体2の先端部2Aが、その長手方向に沿って固定軸ピン3の先端部3Aから離間して、加圧流体流路7と連通する吐出口6が開く。また、筒状体2の先端部2Aが、加圧流体注入口140から先に前進して、樹脂流路130内に入り込む。
【0033】
なお、樹脂流路130内へ入り込む筒状体2の先端部2Aの位置は、前進ストッパー4の厚み(筒状体2の長手方向の厚み)や、弾性体5の弾性力によって調整することができる。
【0034】
また、本実施形態の金型10では、加圧流体注入路120への加圧流体300の注入を停止すると、弾性体5が、その復元力によって前進ストッパー4を加圧流体注入路120側(筒状体2の後端方向)に押圧して、前進ストッパー4と共に筒状体2が加圧流体注入路120側に後退する。すると、筒状体2の先端部2Aが固定軸ピン3の先端部3Aに嵌合して、吐出口6が閉じる。
【0035】
本実施形態の金型10によれば、前進ストッパー4と共に筒状体2が加圧流体注入口140側に前進した時には吐出口6が開き、前進ストッパー4と共に筒状体2が加圧流体注入路120側に後退した時には吐出口6が閉じるため、加圧流体注入ノズル1の下流側の樹脂にウェルド界面が形成されず、加圧流体注入口140への溶融樹脂200の流れ込みがなく、樹脂流路130内の溶融樹脂200中に十分に加圧流体を注入することができる。
【0036】
[射出成形品の製造方法]
本発明の一実施形態に係る射出成形品の製造方法は、上述の実施形態の金型を用いた射出成形品の製造方法であって、前記樹脂流路内に溶融樹脂を射出する第1の工程と、前記加圧流体注入口に前記吐出口を連通させた状態で、前記第1の工程の後、または前記第1の工程と同時に、前記前進ストッパーと共に前記筒状体を前記加圧流体注入口側に前進させ、前記筒状体の先端で少なくとも前記加圧流体注入口の近傍の溶融樹脂を押圧した後、前記加圧流体注入ノズルから、前記加圧流体注入口の近傍の溶融樹脂を介して、前記樹脂流路内の溶融樹脂中に加圧流体を注入して、前記溶融樹脂内に中空部を形成する第2の工程と、を有する。
【0037】
図1および図2を参照して、本実施形態の射出成形品の製造方法を説明する。
【0038】
「第1の工程」
第1の工程では、例えば、金型本体100に設けられた樹脂流路130内に溶融樹脂200を射出する。
【0039】
溶融樹脂200の樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂としては、一般的に射出成形に用いられるものであれば、特に限定されない。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
上記樹脂は、必要に応じて、ガラス繊維、タルク、安定剤、滑剤、難燃剤等の充填剤、改質剤等を含んでいてもよい。
【0041】
本実施形態の射出成形品の製造方法では、樹脂流路130内に射出され、加圧流体300が注入される溶融樹脂200は、単層のものであってもよく、同種または異種の材料からなる複層のものであってもよい。
【0042】
樹脂流路130内に射出された溶融樹脂200のうち、金型本体100の加圧流体注入口140の近傍を押圧する部分の厚さは、特にこれに限定されないが、その他の部分の厚さよりも厚いことが好ましい。
【0043】
「第2の工程」
第2の工程では、金型本体100の加圧流体注入口140に加圧流体注入ノズル1の吐出口6を連通させた状態で、第1の工程の後、または第1の工程と同時に、樹脂流路130内の溶融樹脂200中に加圧流体300を注入して、溶融樹脂200内に中空部を形成する。
【0044】
本実施形態の射出成形品の製造方法では、加圧流体注入ノズル1の吐出口6を樹脂流路130に連通するように、任意の位置に配置する。
【0045】
加圧流体300として用いられる流体としては、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス、または、水、アルコール、油等の液体を用いることができる。
【0046】
図2に示すように、第2の工程では、加圧流体注入路120に加圧流体300を注入し、加圧流体300により前進ストッパー4を押圧する。これにより、前進ストッパー4と共に筒状体2を加圧流体注入口140側に前進させ、筒状体2の先端部2Aを樹脂流路130に挿入する。すると、筒状体2の先端面2bが少なくとも加圧流体注入口140の近傍の溶融樹脂200を押圧する。また、前進ストッパー4と共に筒状体2を前進させることにより、筒状体2の先端部2Aが固定軸ピン3の先端部3Aから離間して、吐出口6が開く。この時、弾性体5は、筒状体2の長手方向に潰れる。これにより、弾性体5には、潰れる前の状態に復元しようとする復元力が生じる。
【0047】
また、前進ストッパー4と共に筒状体2を加圧流体注入口140側に前進させると、フランジ部8が加圧流体注入路120の後端側の内壁面120aから離間して、金型本体100内に加圧流体注入路120と加圧流体流路7を連通する流路150が形成される。
【0048】
流路150が形成されると、加圧流体流路7内に加圧流体300が流れ込み、加圧流体注入ノズル1の吐出口6から、加圧流体注入口140の近傍の溶融樹脂200を介して、樹脂流路130内の溶融樹脂200中に加圧流体300が注入される。これにより、溶融樹脂200内に中空部を形成する。
樹脂流路130内の溶融樹脂200中に加圧流体300を注入する際、加圧流体300の圧力は、樹脂、成形品の形状、溶融樹脂200に対して加圧流体を注入する位置、成形条件等に応じて、適宜調整する。加圧流体300の圧力は、例えば、1MPa~28MPaである。
【0049】
樹脂流路130内の溶融樹脂200中への加圧流体300の注入初期は、設定圧力になるまでに多少時間を要する。そのため、加圧流体300が圧縮性流体(ガス)の場合、加圧流体300の注入初期の圧力は、加圧流体300の注入末期の圧力より低くなる。また、加圧流体300が水等の液体の場合、圧力に対する密度変化が小さいため、加圧流体300の注入初期の圧力は、加圧流体300の注入末期の圧力とほぼ等しくなる。
【0050】
加圧流体注入ノズル1から樹脂流路130内の溶融樹脂200中への加圧流体300の注入量を制御する方法としては、溶融樹脂200中へ加圧流体300を注入する圧力によって制御する方法、溶融樹脂200中へ注入する加圧流体300の体積によって制御する方法が挙げられる。
【0051】
加圧流体注入路120への加圧流体300の注入を停止すると、弾性体5の復元力によって、前進ストッパー4が押圧されて、前進ストッパー4と共に筒状体2が加圧流体注入路120側に後退する。これにより、筒状体2の先端部2Aが固定軸ピン3の先端部3Aに嵌合して、吐出口6が閉じる。
【0052】
本実施形態の射出成形品の製造方法によれば、前進ストッパー4と共に筒状体2が加圧流体注入口140側に前進した時には吐出口6が開き、前進ストッパー4と共に筒状体2が加圧流体注入路120側に後退した時には吐出口6が閉じるため、加圧流体注入ノズル1の下流側の樹脂にウェルド界面が形成されず、加圧流体注入口140への溶融樹脂200の流れ込みがなく、樹脂流路130内の溶融樹脂200中に十分に加圧流体を注入することができる。
【0053】
[他の実施形態]
なお、本発明は、上記の実施形態に限定するものではない。
【0054】
例えば、図3および図4に示すような変形例を採用してもよい。なお、変形例では、上記の実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0055】
「変形例」
図3および図4に示す変形例では、筒状体2の先端部2Aの内面2cの形状と固定軸ピン3の先端部3Aの外面3cの形状は同一であり、筒状体2の先端部2Aの内面2cの形状と固定軸ピン3の先端部3Aの外面3cの形状は、それぞれの長手方向の断面が長方形状である。
【実施例0056】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0057】
[実施例]
図1および図2に示す加圧流体注入ノズルを用いて、射出成形品を作製した。
樹脂としては、ABS(アクリロニトリルブタジエンスチレン)を用いた。
樹脂の射出ストロークを110mm~130mm、射出速度を2mm/s~10mm/sとし、金型温度を25℃~60℃とした。
加圧流体注入ノズルから、金型の樹脂流路内の溶融樹脂中への加圧流体として窒素(ガス)を注入した。この際、ガスの圧力を10MPa~27MPaとした。
その結果、射出成形品内に中空部を形成できることを確認できた。
【符号の説明】
【0058】
1 加圧流体注入ノズル
2 筒状体
3 固定軸ピン
4 前進ストッパー4
5 弾性体
6 吐出口
7 加圧流体流路
8 フランジ部
100 金型本体
110 収容部
120 加圧流体注入路
130 樹脂流路
140 加圧流体注入口
150 流路
200 溶融樹脂
300 加圧流体
図1
図2
図3
図4