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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053399
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】屈曲構造体及びその半製品
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/00 20060101AFI20240408BHJP
【FI】
B25J17/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159648
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110629
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100166615
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】保戸田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 正紘
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS35
3C707CU07
3C707HT04
3C707HT36
(57)【要約】
【課題】屈曲構造体に付勢力を付与する場合に、芯材に加わる荷重を緩和して屈曲動作の異常を抑制することが可能な屈曲構造体を提供する。
【解決手段】軸方向の圧縮力に抗し屈曲を許容する可撓性を有する芯材17と、芯材17と並列に位置し軸方向に圧縮可能な弾性部材19と、芯材17及び弾性部材19の軸方向の一側を受ける基部3と、芯材17及び弾性部材19の軸方向の他側を受ける可動部5とを備え、芯材17は、弾性部材19が基部3及び可動部5に受けられた非圧縮の状態で、基部3及び可動部5受け部3b及び5b間の軸方向の長さよりも短い軸方向の長さを有し、弾性部材19は、基部3及び可動部5の間隔に応じた軸方向の荷重を受けて圧縮され付勢力を付与する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸展状態から屈曲状態へ屈曲可能な屈曲構造体であって、
軸方向の圧縮力に抗し前記屈曲を許容する可撓性を有する芯材と、
該芯材と並列に位置し前記軸方向に圧縮可能な弾性部材と、
前記芯材及び前記弾性部材の軸方向の一側を受ける受け部を有する一側受部材と、
前記芯材及び前記弾性部材の前記軸方向の他側を受ける受け部を有する他側受部材と、を備え、
前記芯材は、前記弾性部材が前記一側受部材及び前記他側受部材に受けられた非圧縮の状態で、前記一側受部材及び前記他側受部材の前記芯材を受ける前記受け部間の前記軸方向の長さよりも短い前記軸方向の長さを有し、
前記弾性部材は、前記一側受部材と前記他側受部材との間隔に応じた前記軸方向の荷重を受けて圧縮され付勢力を付与する、
屈曲構造体。
【請求項2】
請求項1の屈曲構造体であって、
前記芯材は、前記一側受部材及び前記他側受部材の当接する前記受け部間に非圧縮の状態で介在する、
屈曲構造体。
【請求項3】
請求項1又は2の屈曲構造体であって、
前記弾性部材は、前記芯材の前記軸方向の長さと前記受け部間の前記軸方向の長さとの差以上に圧縮された、
屈曲構造体。
【請求項4】
請求項1又は2の屈曲構造体であって、
前記芯材は、外コイルばね及び前記外コイルばねの内側に配置された内コイルばねを備えた多重可撓体であり、前記内コイルばねの素線が前記外コイルばねの素線間に嵌合する、
屈曲構造体。
【請求項5】
請求項1又は2の屈曲構造体であって、
前記一側受部材と前記他側受部材との間隔を調整する間隔調整部を備えた、
屈曲構造体。
【請求項6】
請求項5の屈曲構造体であって、
前記間隔調整部は、前記一側受部材に一側が固定され他側が前記他側受部材を通して配策され前記伸展状態から屈曲状態へ屈曲を操作するための複数の索状部材を備え、前記索状部材が前記間隔の調整に用いられる、
屈曲構造体。
【請求項7】
伸展状態から屈曲状態へ屈曲可能な屈曲構造体の半製品であって、
軸方向の圧縮力に抗し前記屈曲を許容する可撓性を有する芯材と、
該芯材と並列に位置し軸方向に圧縮可能な弾性部材と、
前記芯材及び前記弾性部材の軸方向の一側を受ける受け部を有する一側受部材と、
前記芯材及び前記弾性部材の前記軸方向の他側を受ける受け部を有する他側受部材と、を備え、
前記弾性部材は、前記一側受部材及び前記他側受部材に受けられた非圧縮の状態であり、
前記芯材は、前記一側受部材及び前記他側受部材の前記芯材を受ける前記受け部間の前記軸方向の長さよりも短い前記軸方向の長さを有する、
屈曲構造体の半製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット等に供される屈曲構造体及びその半製品に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット、マニピュレーター、アクチュエーター等には、屈曲・伸展を可能とする関節機能部を備えたものがある。このような関節機能部には、例えば、特許文献1のような屈曲構造体が用いられる。
【0003】
特許文献1の屈曲構造体は、一側受部材及び他側部材である基部及び可動部間に、芯材である内コイル部及び外コイル部、並びにその径方向外側に弾性部材であるベローズが配置されている。
【0004】
この屈曲構造体は、可動部に結合された駆動ワイヤーを軸方向に引張ることで、屈曲動作を行うようになっている。また、屈曲動作の際には、内外コイル部により軸方向の不用意な圧縮を抑制して動作が安定する。
【0005】
このような屈曲構造体では、基部及び可動部間を軸方向で相互に離れるように付勢する付勢力が付与され、駆動ワイヤーのたるみが防止されている。この付勢力は、基部及び可動部間の間隔に応じた荷重により内外コイル部及びベローズを軸方向に圧縮することで設定することが可能である。
【0006】
しかし、付勢力を設定する際の荷重は、芯材である内外コイル部によって主に受けられることになる。この結果、内外コイル部の可撓性に影響を与え、屈曲構造体の屈曲動作に異常を生じさせるおそれがあった。
【0007】
かかる問題は、内外コイル部に代えて密着ばねや柱状体等の他の芯材を用いた場合にも、同様に生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-26021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、屈曲構造体に付勢力を付与する場合に屈曲構造体の屈曲動作に異常を生じさせるおそれがあった点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、伸展状態から屈曲状態へ屈曲可能な屈曲構造体であって、軸方向の圧縮力に抗し前記屈曲を許容する可撓性を有する芯材と、該芯材と並列に位置し前記軸方向に圧縮可能な弾性部材と、前記芯材及び前記弾性部材の軸方向の一側を受ける受け部を有する一側受部材と、前記芯材及び前記弾性部材の前記軸方向の他側を受ける受け部を有する他側受部材と、を備え、前記芯材は、前記弾性部材が前記一側受部材及び前記他側受部材に受けられた非圧縮の状態で、前記一側受部材及び前記他側受部材の前記芯材を受ける前記受け部間の前記軸方向の長さよりも短い前記軸方向の長さを有し、前記弾性部材は、前記一側受部材と前記他側受部材との間隔に応じた前記軸方向の荷重を受けて圧縮され付勢力を付与する、屈曲構造体を提供する。
【0011】
また、本発明は、伸展状態から屈曲状態へ屈曲可能な屈曲構造体の半製品であって、軸方向の圧縮力に抗し前記屈曲を許容する可撓性を有する芯材と、該芯材と並列に位置し軸方向に圧縮可能な弾性部材と、前記芯材及び前記弾性部材の軸方向の一側を受ける受け部を有する一側受部材と、前記芯材及び前記弾性部材の前記軸方向の他側を受ける受け部を有する他側受部材と、を備え、前記弾性部材は、前記一側受部材及び前記他側受部材に受けられた非圧縮の状態であり、前記芯材は、前記一側受部材及び前記他側受部材の前記芯材を受ける前記受け部間の前記軸方向の長さよりも短い前記軸方向の長さを有する、屈曲構造体の半製品を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屈曲構造体に付勢力を生じさせる場合に、芯材に加わる荷重を緩和して屈曲動作の異常を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施例1に係る屈曲構造体の斜視図である。
図2図2は、図1の屈曲構造体の側面図である。
図3図3は、図2の屈曲構造体の断面図である。
図4図4(A)は、図1の屈曲構造体の付勢力付与後の状態を示す側面図、図4(B)は、同付勢力付与前の状態を示す側面図である。
図5図5(A)は、図1の屈曲構造体の付勢力付与後の状態を示す断面図であり、図5(B)は、同付勢力付与前の状態を示す断面図である。
図6図6は、本発明の実施例2に係るに係る屈曲構造体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、屈曲構造体に付勢力を付与する場合に、芯材に加わる荷重を緩和して屈曲動作の異常を抑制するという目的を、芯材と並列に設けられた弾性部材により荷重を受けることで実現した。
【0015】
図のように、本発明の屈曲構造体1は、伸展状態から屈曲状態へ屈曲可能であって、芯材17と、弾性部材19と、一側受部材3と、他側受部材5とを備える。芯材17は、軸方向の圧縮力に抗し屈曲構造体1の屈曲を許容する可撓性を有する部材である。弾性部材19は、芯材17と並列に位置し、軸方向に圧縮可能となっている。一側受部材3は、芯材17及び弾性部材19の軸方向の一側を受ける受け部3a及び3bを有する部材である。他側受部材5は、芯材17及び弾性部材19の軸方向の他側を受ける受け部5a及び5bを有する部材である。
【0016】
芯材17は、弾性部材19が一側受部材3及び他側受部材5に受けられた非圧縮の状態で、一側受部材3及び他側受部材5の芯材17を受ける受け部3b及び5b間の軸方向の長さよりも短い軸方向の長さを有する。弾性部材19は、一側受部材3と他側受部材5との間隔に応じた軸方向の荷重を受けて圧縮され、屈曲構造体1に付勢力を付与する。
【0017】
芯材17は、一側受部材3及び他側受部材5の当接する受け部3b及び5b間に非圧縮の状態で介在してもよい。
【0018】
弾性部材19は、芯材17の軸方向の長さと受け部3b及び5b間の軸方向の長さとの差以上に圧縮してもよい。
【0019】
芯材17の形態は、種々のものを採用可能であるが、多重可撓体とすることも可能である。この場合、芯材17は、外コイルばね21及びこの外コイルばね21の内側に配置された内コイルばね23を備え、内コイルばね23の素線が外コイルばね21の素線間に嵌合する。
【0020】
屈曲構造体1は、一側受部材3と他側受部材5との間隔を調整する間隔調整部27を備えてもよい。
【0021】
間隔調整部27は、一側受部材3に一側が固定され他側が他側受部材5を通して配策され、伸展状態から屈曲状態へ屈曲を操作するための複数の索状部材13を備え、索状部材13を間隔の調整に用いてもよい。
【0022】
屈曲構造体1の半製品1aは、屈曲構造体1と同様、芯材17と、弾性部材19と、一側受部材3と、他側受部材5とを備える。半製品1aにおいて、弾性部材19は、一側受部材3及び他側受部材5に受けられた非圧縮の状態であり、芯材17は、一側受部材3及び他側受部材5の芯材17を受ける受け部3b及び5b間の軸方向の長さよりも短い軸方向の長さを有する。
【実施例0023】
図1は、本発明の実施例1に係る屈曲構造体の斜視図である。図2は、図1の屈曲構造体の側面図である。図3は、図2のIII-III線に係る断面図である。図4(A)は、図1の屈曲構造体の付勢力付与後の状態を示す側面図、図4(B)は、同付勢力付与前の状態を示す側面図である。図5(A)は、図1の屈曲構造体の付勢力付与後の状態を示す断面図であり、図5(B)は、同付勢力付与前の状態を示す断面図である。
【0024】
屈曲構造体1は、マニピュレーター、ロボット、アクチュエーターのような医療用や産業用等の各種の機器の関節機能部に適用されるものである。関節機能部は、屈曲・伸展する関節としての機能を有する装置、機構、デバイス等である。
【0025】
本実施例の屈曲構造体1は、図1図5(B)のように、基部3と、可動部5と、屈曲部7とを備えている。
【0026】
基部3は、金属や樹脂等で形成された柱状体、例えば円柱状体からなり、屈曲部7の軸方向の一側を受ける一側受部材を構成する。軸方向とは、屈曲構造体1の軸心に沿った方向を意味し、軸心に対して僅かに傾斜した方向も含む。
【0027】
この基部3は、マニピュレーターのシャフト等に結合される。なお、基部3は、柱状体に限られず、屈曲構造体1が適用される機器に応じて適宜の形態とすればよい。
【0028】
基部3の軸方向の一端部には、受け部3a及び3bが設けられている。受け部3aは、基部3の一端部の端面からなる。この受け部3aは、後述する屈曲部7の弾性部材19の軸方向の一側を受ける環状の領域である。本実施例の受け部3aは、屈曲構造体1の径方向に沿った平面となっている。ただし、受け部3aは、弾性部材19を受けられればよく、平面や環状である必要はない。
【0029】
受け部3bは、基部3の一端部の内周に設けられた凹部9からなる。凹部9は、軸方向に沿って設けられ、底部9aが径方向に沿った平面となっている。この凹部9からなる受け部3bは、後述する屈曲部7の芯材17の軸方向の一側を受けるようになっている。
【0030】
なお、受け部3bは、凹部9で構成する必要はない。例えば、基部3を中空筒状とし、受け部3bを基部3内に固定されたプレートやブラケット等の部材としてもよい。また、受け部3bは、凹部9を省略して受け部3aと同一面上の平面とすることも可能である。
【0031】
基部3には、屈曲構造体1の後述する駆動ワイヤー13を挿通する挿通孔3cが周方向に複数、例えば4つ設けられている。
【0032】
可動部5は、屈曲部7により、基部3に対して変位可能に支持される。この可動部5には、例えば屈曲構造体1が適用される機器に応じたエンドエフェクタ等が取り付けられる。
【0033】
かかる可動部5は、金属や樹脂等によって形成された柱状体、例えば円柱状体からなり、屈曲部7の軸方向の他側を受ける他側受部材を構成する。なお、屈曲部7の軸方向の他側は、基部3で受けられる軸方向の一側に対する反対側をいう。可動部5は、基部3と同様、屈曲構造体1が適用される機器に応じて適宜の形態とされ、金属や樹脂等による柱状体に限られるものではない。
【0034】
本実施例において、可動部5の軸方向の一端部には、受け部5a及び5bが設けられている。受け部5aは、可動部5の一端部の端面からなる。この受け部5aは、屈曲部7の弾性部材19の軸方向の他側を受ける環状の領域である。なお、受け部5aは、屈曲構造体1の径方向に沿った平面となっている。ただし、受け部5aは、弾性部材19を受けられればよく、平面や環状である必要はない。
【0035】
受け部5bは、可動部5の一端部の内周に設けられた凹部11からなる。凹部11は、軸方向に沿って設けられ、底部11aが径方向に沿った平面となっている。この凹部11からなる受け部5bは、屈曲部7の芯材17の軸方向の他側を受けるようになっている。
【0036】
なお、受け部5bは、凹部11である必要ない。例えば、可動部5を中空筒状とし、受け部5bを可動部5内に固定されたプレートやブラケット等の部材としてもよい。また、受け部5bは、凹部11を省略して受け部5aと同一面上の平面とすることも可能である。
【0037】
かかる可動部5には、屈曲構造体1の駆動ワイヤー13を挿通する挿通孔5c及び係止する係止孔5dが周方向に複数、例えば4つ設けられている。挿通孔5c及び係止孔5dは、軸方向で連通している。
【0038】
駆動ワイヤー13は、屈曲構造体1の屈曲動作のために操作される索状部材である。なお、索状部材としては、ワイヤー以外に、撚り線、NiTi(ニッケルチタン)等の単線、ピアノ線、多関節ロッド、鎖、紐、糸、縄等とすることも可能である。
【0039】
駆動ワイヤー13の端部13aは、駆動ワイヤー13の他の部分に対して大径となっており、係止孔5d内に係止されている。この駆動ワイヤー13は、端部13aから軸方向に可動部5、屈曲部7、及び基部3を挿通して配策される。
【0040】
駆動ワイヤー13は、屈曲構造体1の周方向の複数箇所、例えば90度毎の4か所に設けられている。屈曲構造体1の中心を通って径方向に対向する駆動ワイヤー13は、対をなしている。従って、本実施例では、二対の駆動ワイヤー13を備えている。
【0041】
ただし、一方の対の駆動ワイヤー13を省略することも可能であり、また、屈曲構造体1は、複数の駆動ワイヤー13を備えていればよい。例えば、駆動ワイヤー13は、三本設けてもよい。この場合、駆動ワイヤー13は、周方向に120度毎に配置するのが好ましい。
【0042】
これら駆動ワイヤー13は、軸方向に引かれることによって屈曲構造体1を屈曲させるものである。このため、駆動ワイヤー13は、直接又は間接的に図示しない操作機構に接続され、軸方向に操作されるようになっている。
【0043】
なお、軸方向に操作とは、本実施例において軸方向で一対の駆動ワイヤー13の一方を引き及び他方を引き戻すことを意味する。このため、本実施例の一対の各駆動ワイヤー13は、プーリー15を介して連続している。なお、駆動ワイヤー13は、それぞれ独立して引かれる構成にしてもよい。
【0044】
プーリー15は、固定側、例えばマニピュレーターのシャフト等に取り付けられる。このプーリー15は、図示しない操作機構に連動され、操作可能となっている。プーリー15の操作により駆動ワイヤー13の引き及び引き戻し操作が行われる。
【0045】
屈曲部7は、芯材17と、弾性部材19とを備えている。
【0046】
芯材17は、軸方向の圧縮力に抗し、且つ屈曲構造体1の屈曲を許容する可撓性を有したものである。可撓性とは、軸心を湾曲又は屈曲させることを可能にする可撓性をいう。
【0047】
芯材17としては、種々のものを採用可能であるが、本実施例において外コイルばね21及び内コイルばね23を有する多重可撓体となっている。なお、芯材17としては、軸心を屈曲又は湾曲させるように撓むことが可能な柱状体、密着ばね、又はその他の筒状体、若しくは相互に揺動可能な複数の部材を連結したもの等とすることも可能である。
【0048】
外コイルばね21及び内コイルばね23は、それぞれ素線間の隙間(ピッチ)を有する圧縮コイルばね又はピッチを有さない引張コイルばねとすることが可能である。これら外コイルばね21及び内コイルばね23は、内コイルばね23が外コイルばね21の内側に配置されている。
【0049】
内コイルばね23は、外コイルばね21の内側に螺合した状態となっている。これにより、内コイルばね23の素線が外コイルばね21の素線間に嵌合する。
【0050】
かかる構成の芯材17は、軸方向の両側がそれぞれ基部3及び可動部5に受けられている。
【0051】
芯材17の一側は、基部3の受け部3bの凹部9内に軸方向で入れ込まれている。この状態で、芯材17の一側の端部は、凹部9の底部9aに軸方向で突き当てられて受けられている。同様にして、芯材17の他側は、可動部5の受け部5bの凹部11内に軸方向で入れ込まれ、芯材17の他側の端部は、凹部11の底部11aに軸方向で突き当てられて受けられている。
【0052】
この状態において、芯材17は、基部3及び可動部5間で非圧縮の状態となっている。芯材17が非圧縮の状態とは、無負荷で全く圧縮されない状態だけでなく、芯材17が後述する弾性部材19による付勢力に影響しない範囲で圧縮された状態も含む。付勢力に影響しない範囲とは、芯材17が荷重を受けても設定された付勢力を生じさせることができる範囲をいう。ただし、芯材17は、後述するように弾性部材19で荷重を受ける限りにおいて、圧縮されてもよい。
【0053】
付勢力は、弾性部材19が基部3及び可動部5を軸方向に離れる方向に付勢する力であり、駆動ワイヤー13にたるみを生じさせないように加えられる張力(初張力)を設定する。
【0054】
弾性部材19は、芯材17と並列に位置する。この弾性部材19は、軸方向に圧縮可能であり、屈曲構造体1の屈曲を許容する可撓性を有した部材である。本実施例の弾性部材19は、複数のウェーブワッシャー25を積層した積層体からなる。弾性部材19は、全体として筒状を呈し、芯材17の径方向の外側に位置して芯材17と並列になっている。
【0055】
なお、並列とは、基部3及び可動部5の間隔に応じて軸方向に作用する荷重に対して並列であることを意味する。このため、並列には、本実施例のように弾性部材19が芯材17に対して同心又は内包するように配置される場合も含む。ただし、弾性部材19は、芯材17に平行に並ぶように配置してもよい。
【0056】
弾性部材19は、各ウェーブワッシャー25に駆動ワイヤー13を挿通する挿通孔25aが設けられている。なお、弾性部材19としては、蛇腹状のベローズ、コイルばね、芯材17のような多重可撓体、その他の筒体等を用いることも可能である。
【0057】
かかる弾性部材19は、軸方向の両側が基部3及び可動部5で受けられ、基部3及び可動部5間の間隔に応じた荷重で軸方向に圧縮されている。この圧縮により、弾性部材19は、基部3及び可動部5を軸方向に相互に離れる方向に付勢する付勢力を屈曲構造体1に付与している。
【0058】
弾性部材19が非圧縮の状態では、図4(B)及び図5(B)のように、芯材17が基部3及び可動部5の芯材17を受ける受け部3b及び5b間の軸方向の長さよりも短い軸方向の長さを有する。この長さの差だけ弾性部材19が圧縮されることで、芯材17を非圧縮の状態としている。
【0059】
なお、弾性部材19は、上記のように芯材17を非圧縮(弾性部材19による付勢力に影響しない範囲で圧縮された状態も含む)にできる範囲において、受け部3b及び5b間の軸方向の長さと芯材17の軸方向の長さの差を越えて圧縮されてもよい。従って、弾性部材19は、受け部3b及び5b間の軸方向の長さと芯材17の軸方向の長さの差以上に圧縮されればよい。
【0060】
なお、弾性部材19が非圧縮の状態とは、設定された付勢力を付与するための圧縮が行われていない状態をいい、無荷重で全く圧縮されていない状態だけでなく設定された付勢力を付与しない程度に圧縮された状態も含む。
【0061】
本実施例において、弾性部材19が非圧縮の状態は、屈曲構造体1の半製品1aとなる。この半製品1aがマニピュレーターのシャフト等に取り付けられるときに、弾性部材19が圧縮されて屈曲構造体1を構成する。
【0062】
かかる屈曲構造体1は、図4(A)~図5(B)のように、付勢力を生じさせる場合に、芯材17と並列に設けられた弾性部材19により基部3及び可動部5間の間隔に応じた荷重を受ける。このため、芯材17に加わる荷重を緩和し、或いは無くして、屈曲動作の異常を抑制できる。特に、屈曲構造体1の屈曲角度の上昇と荷重の増加との相関における線形性を向上することができる。ここでの屈曲角度は、基部3の軸心と可動部5の軸心とでなす角度をいい、荷重は、屈曲構造体1の屈曲に要する荷重をいう。
【0063】
芯材17は、外コイルばね21及び内コイルばね23を備えた多重可撓体であり、内コイルばね23の素線が前記外コイルばねの素線間に嵌合するため、軸方向で受ける荷重により素線間の摩擦力が大きくなるので影響を受けやすい。本実施例では、芯材17に加わる荷重を緩和し、或いは無くすことができるので、芯材17が多重可撓体であっても屈曲動作位の異常を抑制できる。
【0064】
また、本実施例では、芯基部3及び可動部5の受け部3b及び5b間の軸方向の長さと芯材17の軸方向の長さとの差並びに弾性部材19のばね定数により、屈曲構造体1に作用させる付勢力を容易且つ確実に設定できる。
【0065】
弾性部材19の圧縮時には、芯材17が基部3及び可動部5の受け部3b及び5bに受けられることで圧縮の完了を認識できるため、設定された付勢力を確実に得ることができる。
【0066】
弾性部材19の付勢力を付与するための圧縮は、図3のように、屈曲構造体1に備えられた基部3と可動部5との間隔を調整する間隔調整部27で行われる。
【0067】
間隔調整部27は、複数の索状部材としての駆動ワイヤー13とプーリー15とを含む。従って、本実施例では、屈曲構造体1の伸展・屈曲を操作するための駆動ワイヤー13を基部3と可動部5との間隔の調整に用いる。このため、構造を複雑化せずに間隔調整部27を容易に採用することができる。
【0068】
すなわち、本実施例の間隔調整部27は、プーリー15が軸方向へ位置を調節可能にマニピュレーターのシャフト等に支持されている。このプーリー15の位置の調節により、駆動ワイヤー13が引かれて可動部5を基部3側に偏倚させる。プーリー15の支持構造は、適宜のものを採用すればよい。
【実施例0069】
図6は、本発明の実施例2に係る屈曲構造体の側面図である。なお、実施例2では、実施例1と対応する構成に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0070】
本実施例2の屈曲構造体1は、多関節構造を有するもので、基部3及び可動部5間に二つの屈曲部7A及び7Bとこれら屈曲部7A及び7B間の中間部29とを備えている。なお、屈曲部7A及び7B及び中間部29の数を増加させることも可能である。
【0071】
中間部29は、可動部5と同様、金属や樹脂等によって形成された柱状体、例えば円柱状体からなる。この中間部29は、一方の屈曲部7Aの軸方向の他側を受ける他側受部材を構成すると同時に、他方の屈曲部7Bの軸方向の一側を受ける一側受部材を構成する。
【0072】
屈曲部7A及び7Bは、いずれも実施例1の屈曲部7と同一構成である。ただし、芯材17は、屈曲部7A及び7Bで共用されている。すなわち、芯材17は、軸方向の一側が基部3で受けられ、中間部29を挿通し、軸方向の他側が可動部5で受けられている。
【0073】
その他は、実施例1と同様に構成されている。
【0074】
かかる実施例2においても、実施例1と同様の作用効果を奏することができる。また、実施例2では、中間部29と基部3との間の屈曲部7Aに、二つの屈曲部7A及び7Bに付勢力を生じさせるためのより大きい荷重が作用する。このため、実施例2では、弾性部材19が荷重を受けることによる効果が大きい。
【符号の説明】
【0075】
1 屈曲構造体
1a 半製品
3 基部
3a、3b 受け部
5 可動部
5a、5b 受け部
13 駆動ワイヤー(索状部材)
17 芯材
19 弾性部材
21 外コイルばね
23 内コイルばね
27 間隔調整部
図1
図2
図3
図4
図5
図6