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特開2024-5340シール部品の状態監視方法、プログラム、および状態監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024005340
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】シール部品の状態監視方法、プログラム、および状態監視装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20240110BHJP
   F15B 20/00 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
F15B20/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022105490
(22)【出願日】2022-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000229564
【氏名又は名称】株式会社バルカー
(74)【代理人】
【識別番号】100083725
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100140349
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 継立
(74)【代理人】
【識別番号】100153305
【弁理士】
【氏名又は名称】畝本 卓弥
(74)【代理人】
【識別番号】100206933
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】上田 彰
(72)【発明者】
【氏名】永野 晃広
(72)【発明者】
【氏名】山下 純一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 謙一
(72)【発明者】
【氏名】三田 悠輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 遼太
(72)【発明者】
【氏名】本居 学
【テーマコード(参考)】
3C223
3H082
【Fターム(参考)】
3C223AA30
3C223EA04
3C223FF42
3C223FF45
3C223HH02
3C223HH15
3H082AA02
3H082CC02
3H082DA10
(57)【要約】
【課題】液圧機器に設置したシール部品の状態を容易に把握させるとともに、メンテナンス情報の提供により作業時期とシール部品の寿命を両立させた適切なタイミングでのメンテナンスを可能にする。
【解決手段】液圧機器(6)内のシール部品(シール8a、8b)で封止された封止領域(10)内の圧力情報を取得する工程(圧力情報収集手段14)と、圧力情報の遷移状態を監視して、シール部品の状態を判定する工程(状態判定部18)と、判定結果に基づき、少なくともシール部品の状態情報(状態情報表示部52)とメンテナンス情報(メンテンス指示表示部54)を含む状態監視画面(50)を生成する工程(画面生成部20)とを含む。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液圧機器内のシール部品で封止された封止領域内の圧力情報を取得する工程と、
前記圧力情報の遷移状態を監視して、前記シール部品の状態を判定する工程と、
該判定結果に基づき、少なくとも前記シール部品の状態情報とメンテナンス情報を含む状態監視画面を生成する工程と、
を含むことを特徴とするシール部品の状態監視方法。
【請求項2】
前記シール部品の前記判定結果の遷移状態に応じて、前記状態情報および前記メンテナンス情報を表す色もしくは模様を含む表示情報を変更した前記状態監視画面を生成する工程を含む請求項1に記載のシール部品の状態監視方法。
【請求項3】
前記シール部品に対して行ったメンテナンス処理情報を取得する工程と、
を含み、前記状態監視画面に、取得した前記メンテナンス処理情報を表示させることを特徴とする請求項1または2に記載のシール部品の状態監視方法。
【請求項4】
前記状態情報が設定状態に達したことを契機にアラート情報を生成する工程と、
生成した前記アラート情報および状態監視画面を、登録された端末装置に送信する工程と、
を含む請求項1または2に記載のシール部品の状態監視方法。
【請求項5】
前記シール部品に設定された識別情報および配置位置情報を取得する工程と、
検出した前記圧力情報と、前記シール部品の前記配置位置情報を前記識別情報に関連付けて記憶部に格納する工程と、
を含み、前記状態監視画面は、前記識別情報に基づいて、前記シール部品の前記配置位置情報、前記状態情報、前記メンテナンス情報が関連付けて表示されることを特徴とする請求項1または2に記載のシール部品の状態監視方法。
【請求項6】
コンピュータにより実現するプログラムであって、
液圧機器内のシール部品で封止された封止領域内の圧力情報を取得する機能と、
前記圧力情報の遷移状態を監視して、前記シール部品の状態を判定する機能と、
該判定結果に基づき、少なくとも前記シール部品の状態情報とメンテナンス情報を含む状態監視画面を生成する機能と、
を前記コンピュータにより実現するためのシール部品の状態監視プログラム。
【請求項7】
前記シール部品の前記判定結果の遷移状態に応じて、前記状態情報および前記メンテナンス情報の色もしくは模様を含む表示情報を変更した前記状態監視画面を生成する機能を含む請求項6に記載のシール部品の状態監視プログラム。
【請求項8】
センサー装置と通信し、液圧機器内のシール部品で封止された空間内の圧力情報を収集する圧力情報収集手段と、
前記圧力情報の遷移状態を監視して、前記シール部品の状態を判定するとともに、この判定結果に基づいて、少なくとも前記シール部品の状態情報とメンテナンス情報を含む状態監視画面を生成する処理部と、
を備えることを特徴とするシール部品の状態監視装置。
【請求項9】
前記処理部は、前記シール部品の前記判定結果の遷移状態に応じて、前記状態情報および前記メンテナンス情報の色もしくは模様を含む表示情報を変更した前記状態監視画面を生成することを特徴とする請求項8に記載のシール部品の状態監視装置。
【請求項10】
前記状態監視画面は、
前記状態情報に対して設定したメンテナンス閾値に基づいて表示領域が所定の割合で区分されており、所定のタイミングの前記状態情報の遷移状態を表す第1の情報提示部と、
前記タイミングでの前記状態情報から判定された前記メンテナンス情報を表す第2の情報提示部と、
を備えることを特徴とする請求項8または9に記載のシール部品の状態監視装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記シール部品に対するメンテナンス処理が実行されたことを契機に、前記シール部品の前記状態情報と前記メンテナンス情報を設定値に戻した前記状態監視画面を生成することを特徴とする請求項8に記載のシール部品の状態監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、液圧機器の稼働部分に設置されたシール部品の状態を監視し、交換処理などの時期を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、油圧シリンダなど液圧を利用してピストンを所定方向に作動させる圧液機器は、シリンダチューブ内においてピストンロッドとシリンダケースとの隙間に複数のパッキンなどのシール部品を配置することで、作動液の漏出を防止している。斯かる作動液の漏出は、液圧機器が設定通り動作できなくなるほか、十分な力を維持できなくなるため、たとえば搬送する資材の重さに耐えられなくなることで、作業への影響や安全性が確保できなくなるなどの影響を与えるおそれがある。
従来、斯かる液圧機器には、漏出状態を監視し、漏出が検出された場合にはアラート情報を通知して、パッキンの交換、その他補修処理を実行させるものがある。
【0003】
このような漏出監視技術として、シリンダチューブ内にある検出空間の作動流体の圧力を検出し、検出した圧力変動によるパラメータに基づいて作動液が漏れていることを判定するものがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-194484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液圧機器に設置されたシール部品が破断して漏出状態となった場合、そのシール部品の交換作業を行うことになるが、斯かる交換作業は専門の業者などに依頼する必要があり、復旧するまでに多大な時間を要する。そのため、液圧機器を利用した作業では、機器の使用中にシール部品が寿命となってシール性能が低下するのを回避する必要がある。
しかしながら、従来のような圧力値の変動により漏出状態を監視する技術では、シール部品の寿命を事前に判断することや、液圧機器のユーザーが現在のシール部品の状態を把握し、メンテナンスを行うか否かを判断することが困難である。また、液圧機器を利用した作業ごとなど、本来のメンテナンス時期よりも早期にシール部品の交換処理を行ったのでは、作業の中断を防止したり、作業の安全率を高めることはできるが、コスト高となるほか、作業負荷の増加など、液圧機器の利便性を損なうおそれがある。
【0006】
本開示の技術の発明者は、圧力値の遷移状態から判定したシール部品の状態の可視化と、メンテナンス情報の提示により、液圧機器の計画的なメンテナンス処理が実現できるとの知見を得た。
【0007】
斯かる課題について、特許文献1には開示も示唆もなく、また特許文献1に開示された構成では斯かる課題を解決することができない。
【0008】
そこで、本開示の技術の目的は、上記課題および上記知見に基づき、液圧機器に設置したシール部品の状態を容易に把握させるとともに、メンテナンス情報の提供により作業時期とシール部品の寿命を両立させた適切なタイミングでのメンテナンスを可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本開示のシール部品の状態監視方法の一側面は、液圧機器内のシール部品で封止された封止領域内の圧力情報を取得する工程と、前記圧力情報の遷移状態を監視して、前記シール部品の状態を判定する工程と、該判定結果に基づき、少なくとも前記シール部品の状態情報とメンテナンス情報を含む状態監視画面を生成する工程とを含む。
【0010】
上記シール部品の状態監視方法において、前記シール部品の前記判定結果の遷移状態に応じて、前記状態情報および前記メンテナンス情報を表す色もしくは模様を含む表示情報を変更した前記状態監視画面を生成する工程を含む。
上記シール部品の状態監視方法において、前記シール部品に対して行ったメンテナンス処理情報を取得する工程とを含み、前記状態監視画面に、取得した前記メンテナンス処理情報を表示させる。
上記シール部品の状態監視方法において、前記状態情報が設定状態に達したことを契機にアラート情報を生成する工程と、生成した前記アラート情報および状態監視画面を、登録された端末装置に送信する工程とを含む。
上記シール部品の状態監視方法において、前記シール部品に設定された識別情報および配置位置情報を取得する工程と、検出した前記圧力情報と、前記シール部品の前記配置位置情報を前記識別情報に関連付けて記憶部に格納する工程とを含み、前記状態監視画面は、前記識別情報に基づいて、前記シール部品の前記配置位置情報、前記状態情報、前記メンテナンス情報が関連付けて表示される。
【0011】
上記目的を達成するため、本開示のシール部品の状態監視プログラムの一側面は、コンピュータにより実現するプログラムであって、液圧機器内のシール部品で封止された封止領域内の圧力情報を取得する機能と、前記圧力情報の遷移状態を監視して、前記シール部品の状態を判定する機能と、該判定結果に基づき、少なくとも前記シール部品の状態情報とメンテナンス情報を含む状態監視画面を生成する機能とを前記コンピュータにより実現する。
【0012】
上記シール部品の状態監視プログラムにおいて、前記シール部品の前記判定結果の遷移状態に応じて、前記状態情報および前記メンテナンス情報の色もしくは模様を含む表示情報を変更した前記状態監視画面を生成する機能を含む。
【0013】
上記目的を達成するため、本開示のシール部品の状態監視装置の一側面は、センサー装置と通信し、液圧機器内のシール部品で封止された空間内の圧力情報を収集する圧力情報収集手段と、前記圧力情報の遷移状態を監視して、前記シール部品の状態を判定するとともに、この判定結果に基づいて、少なくとも前記シール部品の状態情報とメンテナンス情報を含む状態監視画面を生成する処理部とを備える。
【0014】
上記シール部品の状態監視装置において、前記処理部は、前記シール部品の前記判定結果の遷移状態に応じて、前記状態情報および前記メンテナンス情報の色もしくは模様を含む表示情報を変更した前記状態監視画面を生成する。
上記シール部品の状態監視装置において、前記状態監視画面は、前記状態情報に対して設定したメンテナンス閾値に基づいて表示領域が所定の割合で区分されており、所定のタイミングの前記状態情報の遷移状態を表す第1の情報提示部と、前記タイミングでの前記状態情報から判定された前記メンテナンス情報を表す第2の情報提示部とを備える。
上記状態監視装置において、前記処理部は、前記シール部品に対するメンテナンス処理が実行されたことを契機に、前記シール部品の前記状態情報と前記メンテナンス情報を設定値に戻した前記状態監視画面を生成する。
【発明の効果】
【0015】
本開示の構成によれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0016】
(1) シール部品による封止領域で検出した圧力値の遷移状態を利用してシール部品の状態を判定し、その状態情報をユーザーに提示することで、作動液の封止機能に関する液圧機器の信頼性が高められる。
(2) 液圧機器の使用経過および作業計画に対し、シール部品のメンテナンス移行の計画設定が容易になり、利便性が高められる。
(3) シール部品の交換時期、限界時期とともに、現在の状態から限界時期までの期間などを把握可能に提示することで、利便性が高められる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1の実施形態に係る状態監視システムを示す図である。
図2】Aは液圧機器の一部を示す部分断面図であり、Bは圧力情報の遷移状態に基づくシール部品の状態判定の一例を示す図である。
図3】監視処理データベースの一例を示す図である。
図4】状態監視画面の一例を示す図である。
図5】状態監視処理の一例を示すフローチャートである。
図6】第2の実施形態に係る状態監視システムを示す図である。
図7】設備管理画面の一例を示す図である。
図8】管理処理の実行画面の一例を示す図である。
図9】メンテナンス処理を実行した後の設備管理画面の一例を示す図である。
図10】状態監視処理の一例を示すフローチャートである。
図11】実施例1に係る状態監視画面の一例を示す図である。
図12】実施例2に係る状態監視画面の一例を示す図である。
図13】実施例3に係る状態監視画面の一例を示す図である。
図14】実施例4に係る状態監視画面の一例を示す図である。
図15】実施例5に係る状態監視画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1の実施形態〕
図1は、第1の実施形態に係る状態監視システムを示している。図1に示す構成は一例であり、本開示の技術が斯かる構成に限定されない。
状態監視システム2は、液圧機器6に配置されたシール部品8(シール8a、8b)による封止状態およびシール部品8の機能状態を監視するとともに、液圧機器6を利用するユーザーに対して監視結果を提示するシステムの一例である。この状態監視システム2には、たとえば図1に示すように、状態監視装置4、液圧機器6を備える。
【0019】
液圧機器6は、油などの流体を作動液として流動させることで生じる圧力を利用し、アクチュエータを設定方向に動作させる機構、またはこの機構を備えた装置の一例である。すなわち、この液圧機器6は、たとえば少なくとも油圧によってシャフト26(図2A)など伸縮させる油圧シリンダを含むものであり、そのほかこの油圧シリンダを複数備えた建設機器などの装置である。この液圧機器6には、たとえばシャフト26などが収納されるとともに、内部に図示しない作動液を流動させる複数の部屋を備えるほか、作動液を流す流路とシャフト26などとの間にシール8a、8bによって封止される封止領域10が形成されている。さらに液圧機器6には、封止領域10内の圧力を検出するセンサー12を備える。
【0020】
シール8a、8bは、液圧機器6の外部に作動液が漏出するのを阻止する手段であり、シャフト26と筐体24(図2A)との間に配置されている。シール8aは、たとえばシャフト26の動作方向に沿って、作動液の流路に近い位置、すなわち筐体24の内部側に配置されている。シール8bは、たとえばシャフト26の動作方向に沿って、筐体24の外部側に配置されており、シール8aを通過した作動液を遮断する。
封止領域10は、シャフト26の動作方向に沿って、シール8aとシール8bによって形成された領域の一例である。この封止領域10には、たとえばシャフト26の潤滑性を保つための微量な作動液、またはシール8aのシール性能の低下により所定量の作動液が流入する。
【0021】
センサー12は、封止領域10内の圧力値を検出する手段の一例である。封止領域10には、シャフト26の動作に応じて作動液が流入することで、シャフト26を動作させるための圧力の一部が作用する。この封止領域10内の圧力は、封止しているシール8bにも作用している。このセンサー12は、たとえば封止領域10内の圧力値の測定手段とともに、検出した圧力値を処理した圧力情報を生成するデータ処理機能、収集した圧力情報を状態監視装置4に送信する通信機能などを備える。
【0022】
状態監視装置4は、センサー12よって検出した圧力値を利用してシール8a、8bの状態を判定し、その状態を示す情報やメンテナンスに必要な情報を含む状態監視画面を生成する手段の一例である。この状態監視装置4は、たとえば圧力情報収集手段14、処理部16などで構成される。
状態監視装置4は、たとえばPC(Personal Computer)やサーバーなど、通信機能を備えたコンピュータで構成されており、収集した情報を処理するプロセッサ、記憶部、通信部、入出力部(I/O)などを備える。
プロセッサは、記憶部にあるOS(Operating System)や状態監視プログラムの演算処理を行うことで、圧力状態の状態判定機能や状態監視画面の生成処理機能を実現する。
また記憶部は、ROM(Read-Only Memory)、RAM(Random-Access Memory)などの記憶素子を備えた記録媒体の一例である。この記憶部には、たとえばOSや状態監視プログラムのほか、検出した圧力情報などを格納する監視処理データベース(DB)30(図3)が格納される。そのほか記憶部には、状態監視画面を構成する状態情報やメンテナンス情報のフォーマットデータなどのデータベースが格納されてもよい。
通信部は、たとえばセンサー12と通信して圧力情報を受信するほか、外部のデータベースや登録された端末装置22、その他の機器などと無線通信または有線接続により音声データや画像データなどの情報を送受信するための機能部である。
I/Oは、プロセッサの制御により、図示しない機器や表示装置などに接続され、生成した状態監視画面を表示させるほか、外部機器から状態監視処理に必要なデータの取込みなどを行う手段の一例である。
【0023】
圧力情報収集手段14は、センサー12で収集した圧力情報を取込む手段の一例であり、プロセッサからの制御指示により通信部を利用してデータの受信処理が実行される。圧力情報の収集は、たとえばセンサー12との間で有線、または無線を介し、電話回線やインターネット、LPWA(Low Power Wide Area)などの無線通信規格を利用するほか、液圧機器6が使用される作業領域内で利用されるプライベート回線、Bluetooth(登録商標)や赤外線通信などの近距離無線通信回線を利用してもよい。
【0024】
処理部16は、シール部品8の状態判定を行う状態判定部18や状態監視画面を生成する画面生成部20が形成された処理機能部の一例である。
状態判定部18は、たとえば取得した圧力情報に含まれる圧力値や、その圧力値の遷移状態を利用して、封止領域10の状態やシール8a、8bの封止機能、交換が必要な状態か否かを判定するほか、継続的に収集された圧力情報に基づいて、シール8a、8bの寿命予測処理を行う機能部である。このシール8a、8bの寿命は、たとえばシール部品の破断する時期や動作回数を示すほか、メンテナンスに移行させるためのアラート情報を生成させるタイミング、その他設定した状態に達することを示している。
画面生成部20は、状態判定部18により判定されたシール8a、8bの状態情報と、この状態情報に応じて設定されるメンテナンス情報を利用して状態監視画面を生成する機能部の一例である。このメンテナンス情報は、たとえばシール8a、8bによる封止機能の状態の判定結果に応じて、正常状態、または交換や限界などを表す文字や図形、色の表示情報が含まれる。
【0025】
<液圧機器6について>
液圧機器6は、たとえば図2Aに示すように、筐体24に形成された開口部27内に円筒状のシャフト26が挿入されており、このシャフト26が筐体24の内部において、ポンプなどで圧送された作動液の圧力によって矢印で示す方向に突出または後退する。筐体24には、開口部27に面した一部であって、シャフト26の周面と接する部分にシール8a、8bが配置される。また、筐体24には、開口部27の一部であってシール8a、8bの間に封止領域10が形成されるとともに、一端が封止領域10に連通し、他端側がセンサー12に接続したセンサーホール28を備える。このセンサーホール28は、シャフト26の表面を通じて流れる作動液や、シール8aを通過して封止領域10に到達した作動液を貯める収納部の一例である。センサー12は、センサーホール28に流入した作動液によって生じる圧力を検出する。ここで検出された圧力値が封止領域10やシール8bに作用する圧力情報である。
そのほか、筐体24には、開口部27の一部であって外部に面する開口部側に、外部から異物の混入を阻止するシール部品を備えてもよい。
【0026】
<圧力情報について>
シール部品8の状態監視処理では、検出した圧力値のほか、その圧力値の変動量や変動傾向などを含む圧力情報の遷移状態を利用する。圧力情報は、たとえば時間経過に沿って連続的に、または設定したタイミングごとにセンサー12で検出した圧力値を含んでいる。状態判定部18による判定処理について、たとえば図2Bに示すように、取得した圧力値などの圧力情報を時間経過に応じた変化状態をグラフ化して示す。状態判定部18は、たとえば取得した圧力情報と、設定した所定の閾値Pxと対比することでシール部品の状態を判定する。判定処理では、たとえば状態判定部18が取得した圧力値が閾値Px以上であるかを判断するとともに、閾値Px以上となった数が設定値未満であれば、シール部品の状態が「状態I」であると判定する。この「状態I」の判定は、たとえばシール8aの封止機能が十分に発揮された状態を表している。
【0027】
また、状態判定部18は、たとえば閾値Px以上となった数が設定値以上となったとき、シール部品の状態が「状態II」になっているものと判定する。この「状態II」の判定は、たとえばシールaが破断または封止機能が低下した状態であり、かつシール8bの封止機能により封止領域10内に作動液が貯められた状態である。そして、状態判定部18は、たとえばシール8bによる封止機能が発揮できる検出数の範囲において「状態II」の判定を行う。
そのほか、状態判定部18は、「状態II」の状態において、圧力値やその遷移状態を監視していき、所定の条件に達したときに、たとえばシール8bの破断などによる封止機能が低下した状態などを「状態III」として判定する。
そして、処理部16では、たとえば状態判定部18の判定結果に基づいて、シール8a、8bに対するメンテナンス情報として、「正常」、「交換」、「限界」などの指示情報を生成すればよい。すなわちこの判定処理は、シール部品による封止状態の監視結果に基づいてシール部品の交換時期などを含む寿命時期の予測を行っている。
【0028】
<監視処理DB30について>
この監視処理DB30は、センサー12で検出した圧力情報のほか、液圧機器6やシール部品8を特定する情報、判定したシール部品の状態情報などが格納される。
監視処理DB30には、たとえば図3に示すように、機器名部31、位置情報部32、日付部33、識別情報部34、配置位置情報部35、封止領域部36、圧力値部37、判定結果部38、メンテナンス指示部39、メンテナンス履歴部40などが含まれる。また、この監視処理DB30は、これらの情報部の全てを含む場合に限られず、これらの情報部の一部で構成されてもよい。
【0029】
機器名部31は、液圧機器6、または液圧機器6が搭載された作業装置などを特定する名称などを格納する領域の一例である。
位置情報部32は、機器名部31に登録された液圧機器6または作業装置などの配置位置を特定するための位置情報を格納する領域の一例である。この位置情報は、たとえば緯度や経度などの座標情報のほか、液圧機器6などを用いるプラントなどの作業現場内で利用される情報が含まれる。
日付部33は、状態監視処理の実行タイミングなどの日を表す情報であり、さらに時刻情報などを含んでもよい。より具体的には、日付部33には、たとえばセンサー12による圧力値の検出、または圧力情報の生成、状態監視装置4がセンサー12から圧力情報を収集したタイミングなどが含まれる。
【0030】
識別情報部34は、シール部品8を特定する情報の一例であり、液圧機器6に搭載されたシール8a、8bのそれぞれに設定された識別番号や種類、型番などが登録される。
配置位置情報部35は、シール部品の配置位置を示す情報の一例であり、たとえばGPSなどを利用して特定できるシール部品の配置座標など、配置位置が特定可能な情報を含む。
封止領域部36は、シール8a、8bによって封止された液圧機器6内の封止領域10を外部から把握可能な情報に加えて、封止領域10の大きさや幅、センサーホール28を含む容積などの情報が格納されてもよい。
【0031】
圧力値部37は、センサー12から取得した圧力値やその遷移状態などのデータを格納する領域である。
判定結果部38は、圧力情報を利用して実行された状態判定処理の結果が格納される領域である。この判定結果部38には、たとえば圧力値の大きさと閾値との対比による判定結果とともに、現在設定されている状態情報などが格納される。
メンテナンス指示部39は、状態判定の結果に基づいて、シール部品8に対して設定されるメンテナンスの指示情報が格納される領域の一例である。
メンテナンス履歴部40は、シール部品8に対し、「交換」や「限界」などの交換指示が発せられたことを示す情報や、シール部品に対して交換作業などのメンテナンス処理が行われたことなどを含む履歴情報が格納される領域である。
【0032】
<状態監視画面について>
図4は、状態監視画面を示している。図4に示す構成は一例であり、本開示の技術が斯かる構成に限定されない。
状態監視画面50(50A、50B、50C)は、シール部品の状態情報とともに液圧機器6を利用、または管理するユーザーに対する指示情報などのメンテナンス情報を含んで構成されている。状態監視画面50Aは、たとえば図4Aに示すように、第一の情報提示部として半円またはそれに近い曲面状の帯グラフで表した状態情報表示部52と、第二の情報提示部としてメンテナンス情報を表すメンテンス指示表示部54を含む。状態情報表示部52には、たとえば判定処理において出される3つの判定結果に対応し、帯グラフを所定の大きさごとに3つの表示領域が形成されている。このうち、表示領域52-Iは、シール部品による封止機能が十分に発揮された場合の「状態I:正常」の判定結果を示す領域である。表示領域52-IIは、作動液がシール8aを通過し、シール8bによって封止されており、封止領域10、およびセンサーホール28内に作動液が溜まった場合に判定される「状態II:交換」の判定結果を示す領域である。また表示領域52-IIIは、作動液がシール8bを透過した場合に出される「状態III:限界」の判定結果を示す領域の一例である。
【0033】
そのほか、状態監視画面50には、判定結果がどの表示領域52-I、52-II、52-IIIを示しているのかを指し示すゲージ表示部56や、ユーザーに対して現在発せられ、または過去に発せられたメンテナンス指示情報などが表示されるアラート表示部58が形成されている。
【0034】
状態監視処理では、たとえば図4Aに示すように、シール部品が正常状態と判定された場合、ゲージ表示部56が表示領域52-Iの領域内を指し示した状態監視画面50Aが生成される。このとき、メンテンス指示表示部54には、たとえばシール8aの封止機能が十分に発揮された状態を表す「正常」の文字が表示されればよい。
【0035】
また液圧機器6の使用時間が経過したときの状態監視処理では、たとえば図4Bに示すように、シール8aの劣化や破損などにより作動液が通過してセンサーホール28に達することで、「交換」つまり交換状態と判定された場合、ゲージ表示部56が表示領域52-IIの領域内を指し示した状態監視画面50Bが生成される。
【0036】
さらに、液圧機器6の使用時間が経過した場合の状態監視処理では、たとえば図4Cに示すように、シール8bの劣化や破損などにより作動液がシール8bを通過し、筐体24の外部に漏出、またはそれに近い状態となり、「限界」つまり限界状態と判定された場合、ゲージ表示部56が表示領域52-IIIの領域内を指し示した状態監視画面50Cが生成される。
【0037】
状態監視画面50は、たとえば「状態I」から「状態II」、または「状態II」から「状態III」の判定結果の変更に応じて、ゲージ表示部56の表示向きが切替えられる。また状態監視画面50には、たとえば同じ判定結果が出された場合でも、その判定回数に応じて、ゲージ表示部56の表示向きを切替える。画面生成部20では、たとえば「状態I」の判定結果が継続された場合であって、その判定回数に応じてゲージ表示部56の指す位置を右方向に切替えた状態監視画面50を生成する。判定回数は、たとえば監視処理DB30に登録された判定結果の数を利用すればよい。また、ゲージ表示部56は、たとえば検出した圧力情報の数に基づいて表示位置を変移させてもよい。
【0038】
そのほか、各表示領域52-I、52-II、52-IIIには、たとえばそれぞれ判定回数に対してゲージ表示部56の表示位置を変移させる閾値が設定されている。具体的には、判定回数や圧力情報の数が、たとえば100や1000に達するごとに、設定された1目盛り分だけ変移させる閾値が設定されればよい。
【0039】
<状態監視処理について>
図5は、状態監視処理例を示している。図5に示す処理は、本開示の状態監視方法、状態監視プログラムの一例であり、斯かる処理手順や処理内容に本開示の技術が限定されない。
この状態監視処理では、圧力情報収集手段14がセンサー12から液圧機器6の封止領域10の圧力情報を取得する(S101)。この圧力情報の取得は、たとえば圧力情報収集手段14がセンサー12側にアクセスして圧力情報を取込んでもよく、またはセンサー12側が常時、または定期的に圧力情報を送信してもよい。状態監視装置4では、取得した圧力情報を記憶部にある監視処理DB30に記憶させると(S102)、シール部品8による封止機能などの状態判定処理(S103)を実行する。状態判定処理では、たとえば圧力情報に含まれる圧力値やその遷移状態などを利用して、シール8a、8bの状態確認および寿命の予測値の算出などが含まれる。
【0040】
また、状態判定部18は、シール8a、8bの状態判定の結果に基づいて、シール部品の状態情報およびこの状態情報に応じたメンテナンス情報を生成する(S104)。メンテナンス情報の生成処理では、たとえば監視処理DB30に格納されている、現在設定されたメンテナンス指示の情報や、メンテナンス履歴の情報などを利用すればよい。
【0041】
画面生成部20は、生成された判定結果、状態情報およびメンテナンス情報を組み合せて状態監視画面50を生成する(S105)。このとき画面生成部20は、たとえば図示しないデータベースに登録されたフォーマット情報を読み出し、これに判定結果や状態情報、メンテナンス情報を当てはめることで状態監視画面50を生成してもよい。
そして、処理部16は、生成された状態監視画面50を状態監視装置4の表示部に表示させるほか、液圧機器6の管理者として登録されたユーザーの端末装置22に対して状態監視画面50の表示、その画面が生成されたことを示す情報を通知する(S106)。
【0042】
<第1の実施形態の効果>
斯かる構成によれば、以下のような効果が得られる。
(1) 封止領域10の状態およびシール8a、8bの状態の判定結果をユーザーに提示することで、シール部品8や液圧機器6の信頼性を維持することができる。
(2) 封止領域10で検出した圧力情報に基づいて、シール8a、8bの状態やその寿命予測値を算出し、その情報を利用して設定したメンテナンス情報をユーザーに提示することで、液圧機器6の信頼性を高めるとともに、メンテナンスすべき時期やその内容をユーザーが容易に把握でき、利便性が高められる。
(3) 液圧機器6の使用経過および作業計画に対し、シール8a、8bのメンテナンス移行の計画設定が容易化でき、利便性が高められる。
(4) シール8a、8bの交換時期、限界時期とともに、現在の状態から限界時期までの期間などを把握可能に提示することで、利便性が高められる。
【0043】
〔第2の実施形態〕
図6は、第2の実施形態に係る状態監視システムを示している。図6に示す構成は一例であり、本開示の技術が斯かる構成に限定されない。
この状態監視システム60は、たとえば設定された作業領域内に複数の液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nが用いられており、これらの状態監視処理を行う場合を示している。状態監視システム60は、たとえば図6に示すように、状態監視装置4に対して複数の液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nを含む機器62が割当てられており、検出したそれぞれの圧力情報や、液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nを識別するための機器情報が送信される。この状態監視装置4は、たとえば液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nから収集した圧力情報を格納するとともに、それぞれの状態判定結果や状態監視画面を記憶させる記憶部64を備える。
【0044】
そして状態監視装置4は、各液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nごとのシール部品8による封止状態の判定処理、状態情報やメンテナンス情報、状態監視画面の生成処理を行う。斯かる判定処理や状態監視画面の生成処理などは、第1の実施形態と同様の処理を行えばよく、詳細な処理内容の説明は省略する。
【0045】
なお、状態監視システム60には、たとえば1台の状態監視装置4に対して全ての液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nが割当てられる場合に限らない。状態監視システム60は、たとえば機器62のうち、作業機械ごとや配置位置ごとなどに、各液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nを区分し、この区分に対応した複数の状態監視装置4を備えてもよい。これら複数の状態監視装置4は、たとえばそれぞれ独立して状態判定処理、状態監視画面の生成を行ってもよく、または図示しない管理端末やいずれかの状態監視装置4がメインとなって、他の状態監視装置4による処理タイミングを制御してもよい。これにより、状態監視処理では、たとえばシール部品が限界に近づくなど、緊急にアラートを通知する必要があるものについてのみ迅速に状態監視画面を通知するようにしてもよく、または設定したタイミングで全ての液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nの状態を同時に把握するなど、用途に応じた調整が実現できる。
【0046】
<設備管理画面について>
図7は設備管理画面の構成例を示している。
設備管理画面70は、液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-N(6)の状態把握やメンテナンス処理などの管理画面の一例である。
この設備管理画面70には、たとえば図7に示すように、状態管理が割当てられた複数の液圧機器6の状態監視画面72-1、72-2、・・・72-N(72)、アラート情報提示部73、更新履歴表示部74が含まれる。そのほか、設備管理画面70には、たとえば設備管理権限を有するユーザーの認証状態を示すログイン表示部76が表示される。
【0047】
状態監視画面72-1、72-2、・・・72-Nは、機器情報に紐付けられた圧力情報を利用して生成され、この機器情報とともに設備管理画面70の所定位置に表示される。
設備管理画面70には、全ての状態監視画面72-1、72-2・・・72-Nが一覧表示される場合に限られず、たとえば機器情報の一覧情報が表示され、ユーザーが特定の機器情報を選択操作することで、リンクされた各機器62の状態監視画面に移行するようにしてもよい。
【0048】
アラート情報提示部73は、たとえばメンテナンス情報が「交換」や「限界」などに達した状態監視画面72が生成された場合や、シール部品8の交換情報などの設定条件に達した場合に、その内容や日時などの情報を表示する領域の一例である。状態監視装置4は、たとえばアラート情報提示部73に情報が表示された場合には、登録された端末装置22に対してアラート情報を通知してもよい。
【0049】
更新履歴表示部74は、たとえばメンテナンス処理を行った場合や、そのほか液圧機器6に対して作業を行った場合などに、その機器情報とともに、処理内容や日時を提示する領域の一例である。
【0050】
<メンテナンスの実行について>
図8は、管理処理の実行画面の一例を示している。
設備管理画面70には、たとえば図8Aに示すように、液圧機器6のシール部品8の交換などのメンテナンスの実行内容を管理する入力記録画面80-1を備える。この入力記録画面80-1には、たとえば監視処理DB30(図3)の登録内容と連動しており、液圧機器6を備える機器名、液圧機器6-1、6-2、・・・などの設備の一覧記録部82が含まれる。管理権限を有するユーザーは、たとえばシール8a、8bの交換などのメンテナンス処理の実行時または実行後に、端末装置22を操作し、一覧記録部82から対応する情報を確認して、入力表示アイコン86を選択する。これによりユーザーの端末装置22の表示部には、たとえば個別の入力記録画面80-2(図8B)が読み出される。
【0051】
入力記録画面80-2には、たとえば図8Bに示すように、ユーザーが選択した機器名などの特定情報部88や、メンテナンス処理情報部90などが含まれる。このメンテナンス処理情報部90は、たとえば「設備の更新」や「パッキンの交換」、「その他」などのメンテナンスを行った処理内容の入力領域や、メンテナンスの実施日の入力部92、入力完了の選択部94などで構成される。
【0052】
状態監視装置4では、たとえば入力記録画面80-2への入力が完了すると、メンテナンス処理を実行した機器ごとの管理画面100(図9)に対し、入力された情報を反映させる。この管理画面100には、たとえば図9に示すように、液圧機器6などの特定情報を表示する設備名表示部102、メンテナンス処理によって更新された状態監視画面104、メンテナンス処理の内容を追加した更新履歴表示部106が含まれる。
【0053】
<状態監視処理について>
図10は、状態監視処理例を示している。図10に示す処理は、本開示の状態監視方法、状態監視プログラムの一例であり、斯かる処理手順や処理内容に本開示の技術が限定されない。また、図10において、図5と同等の処理内容については説明を省略する。
【0054】
この状態監視処理では、監視対象の液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nに設置されたセンサー12や状態監視装置4であるサーバーなどのイニシャライズを行った後(S201)、状態監視装置4が機器情報およびシール部品8の識別情報とともに、圧力情報を取得する(S202)。
状態監視装置4は、取得した圧力情報等を監視処理DB30の登録(S203)、シール部品8の状態判定処理(S204)を実行する。監視処理DB30には、たとえば機器情報またはシール部品8の識別情報などに紐付けて圧力情報が登録される。また、状態判定処理では、たとえば登録されている液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nに対し、設定した順番や時間間隔に応じて判定処理を行い、その判定結果を監視処理DB30に登録してもよく、または管理者であるユーザーの入力操作により設定された順序に判定処理を実行してもよい。また、この状態判定処理は、登録された全ての液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nに対して実行する場合に限られず、ユーザーによる選択入力、もしくは図示しない選択条件に基づいて抽出されたもののみに対して実行されてもよい。この選択条件は、たとえば現在設定されているメンテナンス情報が「交換」や「限界」などである場合や、所定期間にわたって判定処理が実行されていない場合などが設定されてもよい。
【0055】
状態判定部18は、たとえば判定処理の結果と、監視処理DB30などに登録された前回またはそれ以前の判定結果とを対比し、シール部品8の状態情報やメンテナンス情報に変更があったか否かを判断する(S205)。この変更の判断では、たとえば検出した圧力値が急激に増加、または低下している状態や、メンテナンス情報が「交換」から「限界」に変わった場合などを想定する。
このような変更がある場合(S205のYES)、処理部16は、アラート情報を生成し(S206)、状態監視画面72を生成(S207)した後、登録された端末装置22に状態監視画面72とともにアラート情報を通知する(S208)。また情報に変更が無い場合(S205のNO)には、状態監視画面72の生成に移行し(S207)、端末装置22に状態監視画面72を通知する(S208)。
なお、状態監視装置4は、たとえばアラート情報が生成された場合には、状態監視画面72の生成や送信よりも先に、アラート情報を端末装置22側に送信してもよい。
【0056】
そして、状態監視装置4では、状態監視画面72を通知した後、次の検出対象である液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nを特定し(S209)、圧力情報の収集処理(S202)に移行すればよい。
【0057】
<第2の実施形態の効果>
斯かる構成によれば、次のいずれかの効果が期待できる。
(1) 第1の実施形態と同様の効果が得られる。
(2) 複数の液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nに対して、機器の識別情報に紐付けて圧力情報を収集し、監視処理DB30に登録させることで、多数の機器に対する管理処理を容易化できる。
(3) 多数の液圧機器6-1、6-2、6-3、・・・6-Nに対するメンテナンス情報を取得し、同時または近似のメンテナンス処理を行うことで、メンテナンスの監視対象の特定が容易となるほか、メンテナンス処理において、その作業手順などの計画性が向上する。
【0058】
〔実施例1〕
図11は、実施例1に示す状態監視画面の一例を示している。
この実施例1に示す状態監視画面110Aは、たとえば図11Aに示すように、中空な半円形状、いわゆるドーナツ形状の半分の形状であって、状態判定結果に基づいて状態情報を表す表示領域112に対し、検出した圧力値やその変動回数、寿命予測結果に基づいて、所定の割合の状態情報を表示させる。またこの状態監視画面110Aには、たとえばアラート情報表示部114やメンテナンス指示表示部116を含んでいる。
また、状態監視画面110Bは、たとえば図11Bに示すように、状態判定処理が進んでいき、メンテナンス情報が「交換」段階を表す「メンテナンス推奨」に移行した場合を示す。この状態監視画面110Bでは、判定処理が進むことで、状態情報を示す表示領域112が大きくなっていく。またこの表示領域112は、たとえば状態監視画面110Bの方が状態監視画面110Aに比較して色や模様を大きく、濃く表示している。
【0059】
アラート情報表示部114には、たとえば判定結果により設定されたメンテナンス情報として、「正常」、「交換」、「限界」などの言葉を表示させてもよい。
メンテナンス指示表示部116は、たとえば判定結果に応じて設定される値や言葉などを表示してもよく、またはメンテナンス情報ごとに設定された最高値を100〔%〕とし、現在の判定回数や圧力値の検出回数などに応じて値を増加させてもよい。そして次のメンテナンス情報に変更されたときや、液圧機器6のシール部品8を交換したときに、表示される数値を「0」に変更してもよい。
【0060】
状態監視画面110Cは、たとえば図11Cに示すように、状態判定処理が進んでいき、メンテナンス情報が「限界」段階を表す状態となった場合を示す。この状態監視画面110Cでは、判定処理が進むことで、状態情報を示す表示領域112が大きくなっていく。またこの表示領域112は、たとえば状態監視画面110Cが状態監視画面110A、110Bに比較して色や模様を大きく、濃く表示している。
【0061】
〔実施例2〕
図12は、実施例2に示す状態監視画面の一例を示している。
この実施例2に示す状態監視画面120Aは、たとえば図12Aに示すように、中空な半円形状、いわゆるドーナツ形状の半分の形状であって、状態判定結果に基づいて状態情報を表す表示領域である状態情報表示部52およびゲージ表示部56で構成されている。この状態監視画面120Aは、たとえばゲージ表示部56が上方やその他設定された方向に固定されており、検出した圧力値やその変動回数、寿命予測結果に基づく判定結果により、状態情報表示部52がたとえば左方向に回転することで、現在のシール部品の状態を示している。この状態監視画面120Aは、たとえば「正常」の場合を示している。
【0062】
そして状態監視画面120Bは、たとえば図12Bに示すように、状態判定処理が進んでいき、メンテナンス情報が「交換」段階に移行した場合を示している。このとき、状態監視画面120Bでは、判定処理の進行に応じて状態情報表示部52を左方向に回転させていき、ゲージ表示部56が表示領域52-IIを示す位置に到達している。
さらに、状態監視画面120Cは、たとえば図12Cに示すように、状態判定処理が進んでいき、メンテナンス情報が「限界」段階を表す状態となった場合を示す。このとき、状態監視画面120Cでは、判定処理の進行に応じて状態情報表示部52をさらに左方向に回転させていき、ゲージ表示部56が表示領域52-IIIを示す位置に到達する。
【0063】
この状態監視画面120A、120B、120Cには、ゲージ表示部56が指し示す表示領域52-I、52-II、52-IIIに対応したメンテナンス情報がメンテンス指示表示部54に表示される。
【0064】
〔実施例3〕
図13は、実施例3に示す状態監視画面の一例を示している。
実施例3に示す状態監視画面130(130A、130B、130C)は、たとえば図13Aに示すように、中空な半円形状の表示領域132が形成されている。この表示領域132は、状態判定結果に基づいて生成されるシール部品8の状態情報を表示させるものであり、その状態情報に応じて所定の大きさに区分されている。そのほか状態監視画面130には、状態判定結果に応じて設定されるメンテナンス指示表示部134を備える。
【0065】
状態監視画面130Aは、たとえば状態判定が「正常」となった場合の表示例であって、左側の一部に設定された「正常」状態を表す表示領域132-Iのみが表示され、またはこの表示領域132-Iの部分をライトアップして表示させている。
また、状態監視画面130Bは、たとえば図13Bに示すように、判定処理が進行し、判定結果が「交換」となった場合の状態表示の一例である。この状態監視画面130Bには、たとえば表示領域132-Iに対して右側に区分された表示領域132-IIのみを表示し、またはライトアップして明示的に表示させている。
さらに、状態監視画面130Cは、たとえば図13Cに示すように、判定結果が「限界」となった場合の状態表示の一例である。この状態監視画面130Cには、たとえば表示領域132-IIに対して右側に区分された表示領域132-IIIのみを表示し、またはライトアップして明示的に表示させている。
【0066】
さらにこれらの状態監視画面130A、130B、130Cには、表示領域132-I、132-II、132-IIIが示す状態情報に対応したメンテナンス情報がメンテナンス指示表示部134に表示される。
【0067】
〔実施例4〕
図14は、実施例4に示す状態監視画面の一例を示している。
実施例4に示す状態監視画面140(140A、140B、140C)には、たとえば上記実施形態と同様に、半円形状の状態情報表示部52とともに、判定結果に応じて指示方向を変更させるゲージ表示部142で構成されている。この状態監視画面140では、たとえば判定結果に基づく状態情報に応じて、表示画面の色や模様などが設定された各表示領域52-I、52-II、52-IIIに応じて、ゲージ表示部142の表示画面の色や模様などを連動して変更する場合を示している。
【0068】
すなわち、状態監視画面140Aでは、たとえば図14Aに示すように、「正常」状態の判定結果により、単色で模様が施されていない状態の表示領域52-Iに対してゲージ表示部142が向けられている。このときゲージ表示部142は、状態情報の表示領域52-Iと同様の色であって、模様が無い表示状態の矢印が表示されている。
また、状態監視画面140Bでは、たとえば図14Bに示すように、「交換」状態の判定結果により、点模様で表された状態情報の表示領域52-IIに対してゲージ表示部142が向けられている。このときゲージ表示部142は、状態情報の表示領域52-IIと同様の模様の表示状態で表された矢印が表示されている。
さらに、状態監視画面140Cでは、たとえば図14Cに示すように、「限界」状態の判定結果により、縦横の格子形状の模様が施された状態情報の表示領域52-IIIに対してゲージ表示部142が向けられている。このときゲージ表示部142は、状態情報の表示領域52-IIIと同様の模様の表示状態で表された矢印が表示されている。
【0069】
なお、この実施例4で示す色や模様の状態は一例である。
【0070】
〔実施例5〕
図15は、実施例5に示す状態監視画面の一例を示している。
実施例5に示す状態監視画面150は、たとえば図15に示すように、横長の帯状の表示領域152で構成されており、左側から所定の長さで、状態判定の結果に基づいてシール部品8の状態情報を表示させるように3つに区分されている。またこの状態監視画面150には、区分された表示領域152に対し、状態判定結果に基づく状態情報を指し示すためのゲージ表示部154を備える。このゲージ表示部154は、たとえば表示領域152に沿って左右に表示位置を変更可能であり、状態判定結果に応じて表示位置が設定される。
すなわち、画面生成部20は、たとえば「正常」状態の判定結果であれば、ゲージ表示部154を左側の第1の表示領域152-Iを指すように表示させる。また画面生成部20は、たとえば「交換」状態の判定結果であれば、ゲージ表示部154を中央に区分された第2の表示領域152-IIを指すように表示させる。さらに、画面生成部20は、たとえば「限界」状態の判定結果であれば、ゲージ表示部154を右側に区分された第3の表示領域152-IIIを指すように表示させる。
【0071】
そのほか、この状態監視画面150には、たとえば区分された各表示領域152内に、それぞれ設定されたメンテナンス情報を表示させるメンテンス指示表示部156を備える。
【0072】
斯かる実施例1ないし実施例5に示す状態監視画面を用いることで、第1の実施形態および第2の実施形態と同様の効果が得られる。

〔変形例〕
【0073】
以上説明した実施形態について、その特徴事項や変形例を以下に列挙する。
【0074】
(1) 上記実施形態では、シール部品8の状態情報およびメンテナンス情報を表示する状態監視画面について、予め設定された領域内を所定の面積や長さで区分したグラフ表示を利用し、圧力情報の遷移に応じてゲージ表示部56または状態情報表示部52側を移動させたり向きを変えることでシール部品の状態を示す画面を生成する場合を示したが、本開示の技術は斯かる画面表示に限らない。状態監視画面50には、たとえばシール部品の状態情報に代えて、またはこの状態情報とともに、次の判定結果やアラート表示などに移行するまでの回数や期間などを表す移行情報を表示してもよい。この移行情報は、たとえば過去の状態監視処理において収集した情報を利用して、経過時間、液圧機器6の使用時間、使用回数などの情報を算出すればよい。斯かる移行情報は、たとえば検出した圧力情報、閾値情報のほか、液圧機器6の所定期間ごとの使用頻度を表すトレンド情報から算出してもよい。
【0075】
(2) 上記実施形態において、状態判定部18は、シール部品の状態判定処理として、1の閾値Pxを利用し、取得した圧理情報と対比して、「状態I」、「状態II」・・・を判定する場合を示したがこれに限らない。状態判定部18は、たとえばシール部品の封止機能に対して設定する状態に応じて、値の異なる複数の閾値Px、Py、・・・を設定し、状態判定処理を行ってもよい。具体例として、状態判定部18は、たとえば圧力値が閾値Px未満の場合、および閾値Px以上かつ閾値Py未満の状態を「状態I」であると判定し、閾値Py以上かつ閾値Pz未満の状態を「状態II」と判定してもよい。さらに状態判定部18は、より細分化した閾値を設定してもよい。
斯かる構成によれば、取得した圧力値の状態を細分化して判定することで、シール部品の状態や、シール部品で形成される封止領域10の状態を詳細に予測することができる。
【0076】
斯かる移行情報を表示することで、たとえば「正常」な判定結果が示された液圧機器6に対し、「交換」や「限界」の判定結果に移行するまでの期間や機器の使用回数などを容易に想定することができ、利便性が高められる。
【0077】
以上説明したように、本開示の技術の最も好ましい実施形態等について説明した。本開示の技術は、上記記載に限定されるものではない。特許請求の範囲に記載され、または発明を実施するための形態に開示された要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能である。斯かる変形や変更が、本開示の技術の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0078】
2、60 状態監視システム
4 状態監視装置
6、6-1、6-2、6-3 液圧機器
8 シール部品
8a、8b シール
10 封止領域
12 センサー
14 圧力情報収集手段
16 処理部
18 状態判定部
20 画面生成部
22 端末装置
24 筐体
26 シャフト
27 開口部
28 センサーホール
30 監視処理DB
31 機器名部
32 位置情報部
33 日付部
34 識別情報部
35 配置位置情報部
36 封止領域部
37 圧力値部
38 判定結果部
39 メンテナンス指示部
40 メンテナンス履歴部
50、50A、50B、50C、72、72-1、72-2・・・72-N、110、110A、110B、110C、120、120A、120B、120C、130、130A、130B、130C、140、140A、140B、140C、150 状態監視画面
52 状態情報表示部
52-I、52-II、52-III、132、132-I、132-II、132-III、152-I、152-II、152-III 表示領域
54、116、134 メンテナンス指示表示部
56、142、154 ゲージ表示部
58 アラート表示部
62 機器
64 記憶部
70 設備管理画面
73 アラート情報提示部
74 更新履歴表示部
76 ログイン表示部
80-1、80-2 入力記録画面
82 一覧記録部
86 入力表示アイコン
88 特定情報部
90 メンテナンス処理情報部
92 メンテナンスの実施日の入力部
94 入力完了の選択部
100 管理画面
102 設備名表示部
104 状態監視画面
106 更新履歴表示部
112 表示領域
114 アラート情報表示部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15