(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053412
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】作業機械における油圧制御システム
(51)【国際特許分類】
F15B 11/17 20060101AFI20240408BHJP
F15B 11/02 20060101ALI20240408BHJP
F15B 11/00 20060101ALI20240408BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
F15B11/17
F15B11/02 M
F15B11/00 E
E02F9/20 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159681
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】中嶌 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】古賀 寿和
【テーマコード(参考)】
2D003
3H089
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB05
2D003BA01
2D003BB02
2D003BB12
2D003CA04
2D003CA09
2D003DA02
2D003FA02
3H089AA22
3H089AA60
3H089AA74
3H089BB27
3H089CC01
3H089CC08
3H089CC11
3H089DA03
3H089DA07
3H089DA13
3H089DA14
3H089DB33
3H089DB44
3H089DB46
3H089DB48
3H089DB49
3H089EE36
3H089GG02
3H089JJ02
(57)【要約】
【課題】原動機と、該原動機により駆動される複数の可変容量型の油圧ポンプと、これら油圧ポンプを油圧供給源として駆動する複数の油圧アクチュエータとを備えた油圧制御システムにおいて、油圧ポンプの吐出油の合流を減らして、合流に起因する効率や操作性の低下を低減する。
【解決手段】油圧ポンプP1、P2のポンプ容量および原動機Mの回転数を制御するコントローラ10を設けるとともに、該コントローラ10に、基準ポンプ流量を設定する基準ポンプ流量設定部61と、操作具操作に応じて各油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量を油圧ポンプ別に設定する目標ポンプ流量設定部64と、何れかの油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量が基準ポンプ流量を超える場合に、該油圧ポンプP1、P2のポンプ容量を最大するとともに原動機Mの回転数を増加させてポンプ流量を基準ポンプ流量よりも増加させるポンプ流量制御部65とを設けた。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、該原動機により駆動される複数の可変容量型の油圧ポンプと、これら油圧ポンプの少なくとも一つを油圧供給源として駆動する複数の油圧アクチュエータと、各油圧アクチュエータを駆動させるべく操作される各油圧アクチュエータ用操作手段と、油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの圧油供給を制御する複数の制御弁とを備えた作業機械の油圧制御システムにおいて、
前記制御弁の作動、油圧ポンプのポンプ容量および原動機の回転数を制御する制御装置を設けるとともに、
該制御装置は、
油圧ポンプのポンプ容量が最大で原動機の回転数が予め設定される基準回転数のときの油圧ポンプのポンプ流量を基準ポンプ流量として設定する基準ポンプ流量設定手段と、
各油圧ポンプのポンプ流量が予め設定される最大ポンプ流量を超えない範囲で、各油圧アクチュエータ用の操作手段の操作に応じて各油圧ポンプの目標ポンプ流量を油圧ポンプ別に設定する目標ポンプ流量設定手段と、
前記目標ポンプ流量設定手段により設定された何れかの油圧ポンプの目標ポンプ流量が前記基準ポンプ流量を超える場合に、該何れかの油圧ポンプのポンプ容量を最大にするとともに原動機の回転数を基準回転数よりも増加させて当該油圧ポンプのポンプ流量を基準ポンプ流量よりも増加させるポンプ流量制御手段と、を備えることを特徴とする作業機械における油圧制御システム。
【請求項2】
請求項1において、油圧ポンプとして第一、第二油圧ポンプを備え、油圧アクチュエータとして最大流量供給時に第一、第二の両方の油圧ポンプから圧油供給される大流量油圧アクチュエータを備える一方、
前記大流量油圧アクチュエータ用操作手段が単独で操作された場合に、制御装置は、大流量油圧アクチュエータへの供給流量が、基準ポンプ流量を超えるように設定された設定流量に達するまでは、第一、第二のうち何れか一方の油圧ポンプをメインポンプとして該メインポンプからのみ圧油供給され、設定流量を超える場合に第一、第二の両方の油圧ポンプから圧油供給されるように制御するとともに、
目標ポンプ流量設定手段は、メインポンプから大流量油圧アクチュエータへの供給流量に応じてメインポンプの目標ポンプ流量を基準ポンプ流量を超えるよう設定することを特徴とする作業機械における油圧制御システム。
【請求項3】
請求項2において、第一油圧ポンプをメインポンプとする第一大流量油圧アクチュエータと、第二油圧ポンプをメインポンプとする第二大流量油圧アクチュエータとを備える一方、
第一、第二大流量油圧アクチュエータ用操作手段が同時に操作された場合に、制御装置は、第一、第二大流量油圧アクチュエータにそれぞれメインポンプからのみ圧油供給されるように制御するとともに、
目標ポンプ流量設定手段は、第一、第二大流量油圧アクチュエータ用操作手段の操作量に応じて第一、第二油圧ポンプの目標ポンプ流量を油圧ポンプ別に設定することを特徴とする作業機械における油圧制御システム。
【請求項4】
請求項1において、作業機械は、左右の走行体を備えた走行機体と、該走行機体に装着される作業装置とを具備するとともに、油圧ポンプとして第一、第二油圧ポンプを備え、油圧アクチュエータとして、左右の走行体をそれぞれ駆動させる左右の走行モータと、作業装置を駆動させる複数の作業用油圧アクチュエータとを備える一方、
前記左右の走行モータと作業用油圧アクチュエータ用の操作手段が同時に操作された場合に、制御装置は、第一油圧ポンプから左右の走行油圧モータに圧油供給し、第二油圧ポンプから作業用油圧アクチュエータに圧油供給するよう制御弁を制御するとともに、
目標ポンプ流量設定手段は、第二油圧ポンプの目標ポンプ流量を基準ポンプ流量よりも多く設定することを特徴とする作業機械における油圧制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械における油圧制御システムの技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば油圧ショベル等の作業機械には、エンジンや電気モータ等の原動機と、該原動機により駆動される複数の油圧ポンプと、これら油圧ポンプを油圧供給源とする複数の油圧アクチュエータとを備えたものがある。このような油圧システムでは、油圧アクチュエータが複数の油圧ポンプからの圧油供給を必要とする大流量油圧アクチュエータの場合や、複数の油圧アクチュエータが同時に操作される複合操作の場合に、複数の油圧ポンプからの圧油を合流して油圧アクチュエータに供給することがあるが、この場合に合流による油圧干渉によって効率の低下や操作性の悪化が招来されることがある。例えば、負荷圧の異なる油圧アクチュエータに二つの油圧ポンプからの圧油を合流して供給する場合、低負荷側の油圧アクチュエータに圧油が流れてしまうことを回避するべく、高負荷側の油圧アクチュエータ圧まで両方の油圧ポンプの吐出圧を上昇させる必要があるため、効率が低下することになる。
一方、複合操作時の操作性を向上させるための技術として、従来、同時に操作された油圧アクチュエータの組み合わせに応じて第一、第二油圧ポンプ(フロントポンプ、リアポンプ)から各油圧アクチュエータへの圧油供給順位に優先付けを行って、圧油供給タイミングおよび圧油供給量を各別に制御するようにした技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、エンジンにより駆動され、第一の油圧アクチュエータに圧油供給する可変容量型の第一油圧ポンプと、無段変速機を介してエンジンにより駆動され、第二、第三の油圧アクチュエータにそれぞれ圧油供給する第二、第三油圧ポンプと、操作量に応じて第一油圧ポンプの容量および各無段変速機の変速比を変えるコントローラとを設けた技術もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平8-23768号公報
【特許文献2】特開2016-205451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記特許文献1のものは、複合操作時に、同時に操作された何れかの油圧アクチュエータに第一、第二の両方の油圧ポンプから圧油供給されるようになっているとともに、単独操作時には第一油圧ポンプからのみ圧油供給されるバケットシリンダに対して、複合操作時には第二油圧ポンプから圧油供給されたり第一、第二の両方の油圧ポンプから圧油供給されたりするように構成されている。また、大流量油圧アクチュエータであるブームシリンダ、アームシリンダに対しては、単独操作時に、供給流量が最大流量の半分の流量を超えると第一、第二の両方の油圧ポンプから圧油供給されるようになっている。つまり、特許文献1のものでは、頻繁に第一、第二油圧ポンプの吐出油の合流が行われるようになっており、このため、合流に起因する効率や操作性の低下を回避できないともに、大流量アクチュエータでない油圧アクチュエータに対しても合流油を供給するための回路が必要となって、回路が複雑となるという問題がある。
一方、特許文献2のものは、基本的に一つの油圧ポンプが一つ、あるいは二つの油圧アクチュエータの油圧供給源となっている、つまり、各々の油圧ポンプ単体で一つあるいは二つの油圧アクチュエータの最大供給流量を供給可能に構成されている。このため、大容量の油圧ポンプが必要であって、コストやスペースの点で不利になるという問題があり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、原動機と、該原動機により駆動される複数の可変容量型の油圧ポンプと、これら油圧ポンプの少なくとも一つを油圧供給源として駆動する複数の油圧アクチュエータと、各油圧アクチュエータを駆動させるべく操作される各油圧アクチュエータ用操作手段と、油圧ポンプから各油圧アクチュエータへの圧油供給を制御する複数の制御弁とを備えた作業機械の油圧制御システムにおいて、前記制御弁の作動、油圧ポンプのポンプ容量および原動機の回転数を制御する制御装置を設けるとともに、該制御装置は、油圧ポンプのポンプ容量が最大で原動機の回転数が予め設定される基準回転数のときの油圧ポンプのポンプ流量を基準ポンプ流量として設定する基準ポンプ流量設定手段と、各油圧ポンプのポンプ流量が予め設定される最大ポンプ流量を超えない範囲で、各油圧アクチュエータ用の操作手段の操作に応じて各油圧ポンプの目標ポンプ流量を油圧ポンプ別に設定する目標ポンプ流量設定手段と、前記目標ポンプ流量設定手段により設定された何れかの油圧ポンプの目標ポンプ流量が前記基準ポンプ流量を超える場合に、該何れかの油圧ポンプのポンプ容量を最大にするとともに原動機の回転数を基準回転数よりも増加させて当該油圧ポンプのポンプ流量を基準ポンプ流量よりも増加させるポンプ流量制御手段と、を備えることを特徴とする作業機械における油圧制御システムである。
請求項2の発明は、請求項1において、油圧ポンプとして第一、第二油圧ポンプを備え、油圧アクチュエータとして最大流量供給時に第一、第二の両方の油圧ポンプから圧油供給される大流量油圧アクチュエータを備える一方、前記大流量油圧アクチュエータ用操作手段が単独で操作された場合に、制御装置は、大流量油圧アクチュエータへの供給流量が、基準ポンプ流量を超えるように設定された設定流量に達するまでは、第一、第二のうち何れか一方の油圧ポンプをメインポンプとして該メインポンプからのみ圧油供給され、設定流量を超える場合に第一、第二の両方の油圧ポンプから圧油供給されるように制御するとともに、目標ポンプ流量設定手段は、メインポンプから大流量油圧アクチュエータへの供給流量に応じてメインポンプの目標ポンプ流量を基準ポンプ流量を超えるよう設定することを特徴とする作業機械における油圧制御システムである。
請求項3の発明は、請求項2において、第一油圧ポンプをメインポンプとする第一大流量油圧アクチュエータと、第二油圧ポンプをメインポンプとする第二大流量油圧アクチュエータとを備える一方、第一、第二大流量油圧アクチュエータ用操作手段が同時に操作された場合に、制御装置は、第一、第二大流量油圧アクチュエータにそれぞれメインポンプからのみ圧油供給されるように制御するとともに、目標ポンプ流量設定手段は、第一、第二大流量油圧アクチュエータ用操作手段の操作量に応じて第一、第二油圧ポンプの目標ポンプ流量を油圧ポンプ別に設定することを特徴とする作業機械における油圧制御システムである。
請求項4の発明は、請求項1において、作業機械は、左右の走行体を備えた走行機体と、該走行機体に装着される作業装置とを具備するとともに、油圧ポンプとして第一、第二油圧ポンプを備え、油圧アクチュエータとして、左右の走行体をそれぞれ駆動させる左右の走行モータと、作業装置を駆動させる複数の作業用油圧アクチュエータとを備える一方、前記左右の走行モータと作業用油圧アクチュエータ用の操作手段が同時に操作された場合に、制御装置は、第一油圧ポンプから左右の走行油圧モータに圧油供給し、第二油圧ポンプから作業用油圧アクチュエータに圧油供給するよう制御弁を制御するとともに、目標ポンプ流量設定手段は、第二油圧ポンプの目標ポンプ流量を基準ポンプ流量よりも多く設定することを特徴とする作業機械における油圧制御システムである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、合流に起因する効率や操作性の低下、回路の複雑化を低減できるとともに、大容量の油圧ポンプを用意する必要もなくなる。
請求項2の発明とすることにより、最大流量供給時に第一、第二油圧ポンプの両方の油圧ポンプから圧油供給される大流量油圧アクチュエータであっても、合流が行われる頻度を低減することができる。
請求項3の発明とすることにより、第一、第二の大流量油圧アクチュエータを同時に駆動させる場合には、これらが最大流量供給時には第一、第二の両方の油圧ポンプから圧油供給される大流量油圧アクチュエータであっても、第一、第二油圧ポンプの吐出油の合流をなくすことができる。
請求項4の発明とすることにより、左右の走行モータと作業用油圧アクチュエータとを、互いに油圧干渉のない独立した状態で圧油供給できるとともに、作業用油圧アクチュエータへの供給流量を基準ポンプ流量よりも多くすることができて、作業効率の向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】コントローラの入出力を示すブロック図である。
【
図5】スティック用操作具が単独操作された場合の操作具操作量と油圧ポンプP1、P2からスティックシリンダへの目標供給流量、スティック用流量制御弁の開口面積、スティック用方向切換弁供給用弁路の開口面積との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
まず、
図1は、本発明が実施された油圧ショベル1の油圧制御システムの第一の実施の形態を示す油圧回路図であって、該
図1において、Mは原動機、P1、P2は原動機Mにより駆動される可変容量型の油圧ポンプ、P1a、P2aは後述するコントローラ10からの制御信号に基づいて油圧ポンプP1、P2の容量を可変する容量可変手段、3は油タンク、4は左走行モータ、5は右走行モータ、6はブームシリンダ、7は旋回モータ、8はスティックシリンダ、9はバケットシリンダである。上記左走行モータ4、右走行モータ5、ブームシリンダ6、旋回モータ7、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9は、油圧ポンプP1、P2を油圧供給源とする油圧アクチュエータであるが、これら油圧アクチュエータのうち、ブームシリンダ6およびスティックシリンダ8は、油圧ポンプP1、P2の両方の油圧ポンプを油圧供給源とする油圧アクチュエータであって、本発明の大流量油圧アクチュエータに相当する。また、本実施の形態では、前記原動機Mとしては、バッテリ(図示せず)からの電力供給で駆動する電気モータが用いられており、該電気モータの出力軸に油圧ポンプP1、P2の駆動軸が接続されている。
尚、前記油圧ショベル1は本発明の作業機械の一例であって、
図2に図示するように、前記左右の走行モータ4、5によってそれぞれ駆動される左右の走行体を備えた下部走行体71と、該下部走行体71に旋回自在に支持され、前記旋回モータ7によって旋回駆動される上部旋回体72と、該上部旋回体72に装着されるフロント作業機73とを具備して構成されており、該フロント作業機73は、上部旋回体72に上下動自在に支持され、前記ブームシリンダ6によって駆動されるブーム74、該ブーム74の先端部に揺動自在に軸支され、前記スティックシリンダ8によって駆動されるスティック75、該スティック75の先端部に装着され、前記バケットシリンダ9によって駆動されるバケット76等を備えて構成されている。前記下部走行体71および上部旋回体72は本発明の走行機体を構成する。また、フロント作業機73は本発明の作業装置に相当し、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9は、本発明の作業用油圧アクチュエータに相当する。
【0009】
前記油圧ポンプP1は、後述する第一位置Xの走行直進弁11を介してポンプラインCに接続されると共に、左走行用方向切換弁13に接続されている。一方、油圧ポンプP2は、ポンプラインDに接続されると共に、第一位置Xの走行直進弁11を介して右走行用方向切換弁14に接続されている。
【0010】
前記走行直進弁11は、コントローラ10から出力される制御信号に基づいて第一位置Xと第二位置Yとに切換る2位置切換弁であって、該走行直進弁11が第一位置Xに位置している状態では、油圧ポンプP1の吐出油はポンプラインCおよび左走行用方向切換弁13に供給され、油圧ポンプP2の吐出油はポンプラインDおよび右走行用方向切換弁14に供給されるようになっており、また、走行直進弁11が第二位置Yに位置している状態では、油圧ポンプP1の吐出油は左右両方の走行用方向切換弁13、14に供給され、油圧ポンプP2の吐出油は両方のポンプラインC、Dに供給されるようになっている。そして、コントローラ10は、左右の走行用操作具(図示せず)のみが操作されている場合、或いは走行用操作具以外の他の油圧アクチュエータ用操作具(ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用の操作具、何れも図示せず)のみが操作されている場合には、走行直進弁11を第一位置Xに位置するように制御する。一方、直進走行を行うべく左右両方の走行用操作具が操作され、同時に他の油圧アクチュエータ用操作具が操作された場合には、制御信号を出力して走行直進弁11を第二位置Yに切換える。これにより、左右の走行用操作具のみが操作されている場合には、第一位置Xに位置している走行直進弁11によって、油圧ポンプP1、P2の吐出油が左右の走行用方向切換弁13、14を介して左右の走行モータ4、5にそれぞれ供給されることになって、両走行モータ4、5への供給流量を同等にすることができる一方、左右両方の走行用操作具と同時に他の油圧アクチュエータ用操作具が操作された場合には、油圧ポンプP1の吐出流量を左右の走行モータ4、5のみで分配して両走行モータ4、5への供給流量を同等にすることができるとともに、油圧ポンプP2の吐出流量を他の油圧アクチュエータに供給することができるようになっている。尚、以下の説明において、特に断り書きがない場合は、走行直進弁11が第一位置Xに位置している、つまり、油圧ポンプP1の吐出油がポンプラインCおよび左走行用方向切換弁13に供給され、油圧ポンプP2の吐出油がポンプラインDおよび右走行用方向切換弁14に供給されるとして説明する。また、前記左右の走行用、ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用の操作具は、本発明の操作手段に相当する。
【0011】
また、前記左右の走行用方向切換弁13、14は、左右の走行モータ4、5に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるクローズドセンタ型のスプール弁であって、コントローラ10から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力する左走行用前進側電磁比例弁47a、左走行用後進側電磁比例弁47b、右走行用前進側電磁比例弁48a、右走行用後進側電磁比例弁48b(
図3に図示)に接続される前進側、後進側のパイロットポート13a、13b、14a、14bを備えている。そして、該左右の走行用方向切換弁13、14は、前進側、後進側の両パイロットポート13a、13b、14a、14bにパイロット圧が入力されていない状態では、左右の走行モータ4、5に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、前進側パイロットポート13a、14aにパイロット圧が入力されることにより前進側作動位置Xに切換わって、油圧ポンプP1、油圧ポンプP2の吐出油を左走行モータ4、右走行モータ5の前進側ポート4a、5aに供給する供給用弁路13e、14eを開くと共に、後進側ポート4b、5bからの排出油を油タンク3に流す排出用弁路13f、14fを開き、また、後進側パイロットポート13b、14bにパイロット圧が入力されることにより後進側作動位置Yに切換わって、油圧ポンプP1、油圧ポンプP2の吐出油を左走行モータ4、右走行モータ5の後進側ポート4b、5bに供給する供給用弁路13e、14eを開くと共に、前進側ポート4a、5aからの排出油を油タンク3に流す排出用弁路13f、14fを開くように構成されている。そして、前進側作動位置Xまたは後進側作動位置Yに位置しているときの左走行モータ4、右走行モータ5に対する供給流量および排出流量は、供給用弁路13e、14e、排出用弁路13f、14fの開口面積により制御されるようになっていると共に、該開口面積は、走行用電磁比例弁から前進側または後進側パイロットポート13a、13b、14a、14bに出力されるパイロット圧の増減に伴うスプール移動位置に応じて増減制御されるようになっている。そして、コントローラ10は、左右の走行用操作具が操作された場合に、該走行用操作具の操作量に応じて増減するパイロット圧を出力するように左走行用前進側電磁比例弁47a、左走行用後進側電磁比例弁47b、右走行用前進側電磁比例弁48a、右走行用後進側電磁比例弁48bを制御するようになっており、これにより走行用操作具の操作量に応じた速度で左右の走行モータ4、5を駆動させることができるようになっている。
【0012】
一方、前記油圧ポンプP1に接続されるポンプラインCからは、ブーム用メイン側供給油路17、スティック用サブ側供給油路18、バケット用供給油路19が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されており、また、油圧ポンプP2に接続されるポンプラインDからは、ブーム用サブ側供給油路20、旋回用供給油路21、スティック用メイン側供給油路22が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されている。前記ブーム用メイン側供給油路17およびブーム用サブ側供給油路20は、後述するブーム用方向切換弁23のポンプポート23pに油圧ポンプP1、P2をそれぞれ接続する油路であり、また、スティック用メイン側供給油路22およびスティック用サブ側供給油路18は、スティック用方向切換弁25のポンプポート25pに油圧ポンプP2、P1をそれぞれ接続する油路であり、また、旋回用供給油路21は、旋回用方向切換弁24のポンプポート24pに油圧ポンプP2を接続する油路であり、バケット用供給油路19は、バケット用方向切換弁26のポンプポート26pに油圧ポンプP1を接続する油路である。
【0013】
前記スティック用サブ側供給油路18には、油圧ポンプP1からスティック用方向切換弁25への供給流量を制御するスティック用流量制御弁28が配設されており、また、ブーム用サブ側供給油路20には、油圧ポンプP2からブーム用方向切換弁23への供給流量を制御するブーム用流量制御弁29が配設されている。これらスティック用流量制御弁28、ブーム用流量制御弁29は、コントローラ10から出力される制御信号に基づいて作動するスティック流量制御用電磁比例弁45、ブーム流量制御用電磁比例弁46(
図3に図示)によりパイロット操作されて流量制御を行うポペット弁であって、逆流防止機能を有しており、油圧ポンプP1、P2からスティック用方向切換弁25、ブーム用方向切換弁23への油の流れは許容するが、逆流は阻止されるようになっている。
【0014】
一方、前記ブーム用メイン側供給油路17、バケット用供給油路19、旋回用供給油路21、スティック用メイン側供給油路22には、前述したスティック用流量制御弁28、ブーム用流量制御弁29のような流量制御弁は配設されておらず、これらブーム用メイン側供給油路17、バケット用供給油路19、旋回用供給油路21、スティック用メイン側供給油路22を経由する油圧ポンプP1あるいは油圧ポンプP2からの供給流量は、流量制御されることなくそのままブーム用方向切換弁23、バケット用方向切換弁26、旋回用方向切換弁24、スティック用方向切換弁25に供給されるようになっている。また、これらブーム用メイン側供給油路17、バケット用供給油路19、旋回用供給油路21、スティック用メイン側供給油路22にはそれぞれチェック弁30が配設されていて、油圧ポンプP1、P2からブーム用方向切換弁23、バケット用方向切換弁26、旋回用方向切換弁24、スティック用方向切換弁25への油の流れは許容するが、逆流は阻止されるようになっている。
【0015】
而して、前記ブーム用方向切換弁23のポンプポート23pには、ブーム用メイン側供給油路17を経由する油圧ポンプP1からの圧油と、ブーム用サブ側供給油路20を経由する油圧ポンプP2からの圧油とを供給できるようになっていると共に、油圧ポンプP2からの圧油は、ブーム用サブ側供給油路20に配設のブーム用流量制御弁29によって流量制御された状態(遮断状態を含む)でブーム用方向切換弁23に供給されるようになっている。また、スティック用方向切換弁25のポンプポート25pには、スティック用メイン側供給油路22を経由する油圧ポンプP2からの圧油と、スティック用サブ側供給油路18を経由する油圧ポンプP1からの圧油とを供給できるようになっていると共に、油圧ポンプP1からの圧油は、スティック用サブ側供給油路18に配設のスティック用流量制御弁28によって流量制御された状態(遮断状態を含む)でスティック用方向切換弁25に供給されるようになっている。
【0016】
次に、前記ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用の方向切換弁23~26について説明する。
まず、油圧ポンプP1、P2の何れか一方の油圧ポンプから圧油供給される旋回用、バケット用の方向切換弁24、26について説明する。旋回用方向切換弁24は、旋回モータ7に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるクローズドセンタ型のスプール弁であって、コントローラ10から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力する旋回用左旋回側、右旋回側電磁比例弁42a、42b(
図3に図示)にそれぞれ接続される左旋回側、右旋回側のパイロットポート24a、24bと、旋回用供給油路21に接続されるポンプポート24pと、油タンク3に至るタンクラインTに接続されるタンクポート24tと、旋回モータ7の左旋回側ポート7aに接続される一方のアクチュエータポート24cと、旋回モータ7の右旋回側ポート7bに接続される他方のアクチュエータポート24dとを備えている。そして、旋回用方向切換弁24は、左旋回側、右旋回側の両パイロットポート24a、24bにパイロット圧が入力されていない状態では、旋回モータ7に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、左旋回側パイロットポート24aにパイロット圧が入力されることにより左旋回側作動位置Xに切換わって、ポンプポート24pから一方のアクチュエータポート24cに至る供給用弁路24eと、他方のアクチュエータポート24dからタンクポート24tに至る排出用弁路24fとを開き、また、右旋回側パイロットポート24bにパイロット圧が入力されることにより右旋回側作動位置Yに切換わって、ポンプポート24pから他方のアクチュエータポート24dに至る供給用弁路24eと、一方のアクチュエータポート24cからタンクポート24tに至る排出用弁路24fとを開くように構成されている。そして、左旋回側作動位置Xまたは右旋回側作動位置Yに位置しているときの旋回モータ7に対する供給流量および排出流量は、供給用弁路24e、排出用弁路24fの開口面積によって制御されるようになっていると共に、該開口面積は、旋回用左旋回側、右旋回側電磁比例弁42a、42bから左旋回側、右旋回側パイロットポート24a、24bに出力されるパイロット圧の増減に伴うスプール移動位置に応じて増減制御されるようになっている。
【0017】
また、バケット用方向切換弁26は、バケットシリンダ9に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるクローズドセンタ型のスプール弁であって、コントローラ10から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力するバケット用伸長側、縮小側電磁比例弁44a、44b(
図3に図示)にそれぞれ接続される伸長側、縮小側のパイロットポート26a、26bと、バケット用供給油路19に接続されるポンプポート26pと、タンクラインTに接続されるタンクポート26tと、バケットシリンダ9のヘッド側ポート9aに接続される一方のアクチュエータポート26cと、バケットシリンダ9のロッド側ポート9bに接続される他方のアクチュエータポート26dとを備えている。該バケット用方向切換弁26は、前述した旋回用方向切換弁24と同様の構造のものであって、中立位置Nから伸長側作動位置X、縮小側作動位置Yに切換わることで、ポンプポート26pからアクチュエータポート26cまたは26dに至る供給用弁路26eと、アクチュエータポート26dまたは26cからタンクポート26tに至る排出用弁路26fとを開くように構成されており、そして、これら供給用弁路26e、排出用弁路26fの開口面積によってバケットシリンダ9に対する供給流量および排出流量が制御されるようになっていると共に、該開口面積は、バケット側伸長側、縮小側電磁比例弁44a、44bから出力されるパイロット圧の増減に伴うスプール移動位置に応じて増減制御されるようになっている。
【0018】
次いで、油圧ポンプP1、P2の両方の油圧ポンプから圧油供給されるスティック用、ブーム用の方向切換弁25、23について説明する。スティック用方向切換弁25は、スティックシリンダ8に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるクローズドセンタ型のスプール弁であって、コントローラ10から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力するスティック用伸長側、縮小側電磁比例弁43a、43b(
図3に図示)にそれぞれ接続される伸長側、縮小側のパイロットポート25a、25bと、スティック用メイン側供給油路22およびスティック用サブ側供給油路18に接続されるポンプポート25pと、タンクラインTに接続されるタンクポート25tと、スティックシリンダ8のヘッド側ポート8aに接続される一方のアクチュエータポート25cと、スティックシリンダ8のロッド側ポート8bに接続される他方のアクチュエータポート25dとを備えている。そして、スティック用方向切換弁25は、伸長側、縮小側の両パイロットポート25a、25bにパイロット圧が入力されていない状態では、スティックシリンダ8に対する給排制御を行わない中立位置Nに位置しているが、伸長側パイロットポート25aにパイロット圧が入力されることにより伸長側作動位置Xに切換わって、ポンプポート25pから一方のアクチュエータポート25cに至る供給用弁路25eと、他方のアクチュエータポート25dからタンクポート25tに至る排出用弁路25fとを開き、また、縮小側パイロットポート25bにパイロット圧が入力されることにより縮小側作動位置Yに切換わって、ポンプポート25pから他方のアクチュエータポート25dに至る供給用弁路25eと、一方のアクチュエータポート25cからタンクポート25tに至る排出用弁路25fとを開くように構成されている。そして、前記供給用弁路25e、排出用弁路25fの開口面積は、スティック用伸長側、縮小側電磁比例弁43a、43bから出力されるパイロット圧によって移動するスプールの移動位置に応じて増減制御されるようになっていると共に、スティックシリンダ8からの排出流量は、前記排出用弁路25fの開口面積によって制御されるようになっている。また、スティックシリンダ8に対する供給流量は、スティック用流量制御弁28がスティック用サブ側供給油路18を閉じている場合には、スティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積によって制御される一方、スティック用流量制御弁28がスティック用サブ側供給油路18を開いている場合には、該スティック用流量制御弁28の開口面積およびスティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積によって制御されるようになっている。
【0019】
また、ブーム用方向切換弁23は、ブーシリンダ6に対する給排流量制御を行うと共に給排方向を切換えるクローズドセンタ型のスプール弁であって、コントローラ10から出力される制御信号に基づいてパイロット圧を出力するブーム用伸長側、縮小側電磁比例弁41a、41b(
図3に図示)にそれぞれ接続される伸長側、縮小側のパイロットポート23a、23bと、ブーム用メイン側供給油路17およびブーム用サブ側供給油路20に接続されるポンプポート23pと、タンクラインTに接続されるタンクポート23tと、ブームシリンダ6のヘッド側ポート6aに接続される一方のアクチュエータポート23cと、ブームシリンダ6のロッド側ポート6bに接続される他方のアクチュエータポート23dとを備えている。該ブーム用方向切換弁23は、前述したスティック用方向切換弁25と同様の構造のものであって、中立位置Nから伸長側作動位置X、縮小側作動位置Yに切換わることで、ポンプポート23pからアクチュエータポート23cまたは23dに至る供給用弁路23eと、アクチュエータポート23dまたは23cからタンクポート23tに至る排出用弁路24fを開くように構成されている。そして、供給用弁路23e、排出用弁路23fの開口面積は、ブーム用伸長側、縮小側電磁比例弁41a、41bから出力されるパイロット圧によって移動するスプールの移動位置に応じて増減制御されるようになっていると共に、ブームシリンダ6からの排出流量は、排出用弁路23fの開口面積によって制御されるようになっている。また、ブームシリンダ6に対する供給流量は、ブーム用流量制御弁29がブーム用サブ側供給油路20を閉じている場合には、ブーム用方向切換弁23の供給用弁路23eの開口面積によって制御される一方、ブーム用流量制御弁29がブーム用サブ側供給油路20を開いている場合には、該ブーム用流量制御弁29の開口面積およびブーム用方向切換弁23の供給用弁路23eの開口面積によって制御されるようになっている。
尚、前記走行直進弁11、左右の走行用、ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用方向切換弁13、14、23~26、ブーム用、スティック用流量制御弁28、29は、本発明の制御弁に相当する。
さらに、本実施の形態において、油圧ポンプP1、P2は本発明の油圧ポンプあるいは第一、第二油圧ポンプに相当し、また、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8は、前述したように本発明の大流量油圧アクチュエータあるいは第一、第二大流量油圧アクチュエータ)に相当する油圧アクチュエータであって、本発明の第一、第二の両方の油圧ポンプを油圧供給源とする。また、本発明のメインポンプは、メイン側供給油路(ブーム用メイン側供給油路17、スティック用メイン側供給油路22)が接続される油圧ポンプであって、本実施の形態では、ブームシリンダ6のメインポンプは油圧ポンプP1であり、スティックシリンダ8のメインポンプは油圧ポンプP2である。
【0020】
一方、前記コントローラ10(本発明の制御装置に相当する)は、
図3のブロック図に示す如く、入力側に、ブーム用操作具の操作方向および操作量を検出するブーム用操作検出手段50、旋回用操作具の操作方向および操作量を検出する旋回用操作検出手段51、スティック用操作具の操作方向および操作量を検出するスティック用操作検出手段52、バケット用操作具の操作方向および操作量を検出するバケット用操作検出手段53、走行用操作具の操作方向および操作量を検出する走行用操作検出手段54、図示しないが油圧ポンプP1、P2の吐出圧や各油圧アクチュエータ(ブームシリンダ6、旋回モータ7、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9、左右の走行モータ4、5)の負荷圧をそれぞれ検出する複数の圧力センサ等が接続され、出力側に、前記ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用方向切換弁23~26、左右の走行用方向切換弁13、14のパイロットポート23a、23b~26a、26b、13a、13b、14a、14bにパイロット圧をそれぞれ出力するブーム用伸長側、縮小側電磁比例弁41a、41b、旋回用左旋回側、右旋回側電磁比例弁42a、42b、スティック用伸長側、縮小側電磁比例弁43a、43b、バケット用伸長側、縮小側電磁比例弁44a、44b、左走行用前進側、後進側電磁比例弁47a、47b、右走行用前進側、後進側電磁比例弁48a、48b、前記スティック用サブ側供給油路18に配設のスティック用流量制御弁28にパイロット圧を出力するスティック流量制御用電磁比例弁45、ブーム用サブ側供給油路20に配設のブーム用流量制御弁29にパイロット圧を出力するブーム流量制御用電磁比例弁46、走行直進弁11、油圧ポンプP1、P2の容量可変手段P1a、P2a等が接続されているとともに、原動機制御装置60に入出力自在に制御されている。さらに、コントローラ10は、後述する基準ポンプ流量設定部(本発明の基準ポンプ流量設定手段に相当する)61、目標供給流量設定部62、供給流量制御部63、目標ポンプ流量設定部(本発明の目標ポンプ流量設定手段に相当する)64、ポンプ流量制御部(ポンプ容量制御部65aおよび原動機回転数制御部65bを含み、本発明のポンプ流量制御手段に相当する)65等の各種設定部、制御部を備えており、これら設定部、制御部によって各油圧アクチュエータ4~9の油給排制御や油圧ポンプP1、P2の容量制御、原動機Mの回転数制御等が行われるように構成されている。
【0021】
次いで、前記コントローラ10の各設定部、制御部61~65で行う制御について説明する。
まず、コントローラ10は、基準ポンプ流量設定部61において、油圧ポンプP1、P2のポンプ容量が最大で原動機Mの回転数が予め設定される基準回転数Nsのときの油圧ポンプP1、P2のポンプ流量を基準ポンプ流量Lsとして設定する。この場合、油圧ショベルの通常作業時における原動機Mの使用回転数範囲は予め設定されており、前記基準回転数Nsは、該使用回転数範囲内で、且つ、使用回転数範囲内の最大回転数Nmよりも少ない回転数に設定される。前記基準ポンプ流量Lsは、制御パラメータとして基準ポンプ流量設定部61に組込まれるようになっていて、例えば、油圧ショベル1の運転室に配設のモニタ装置(図示せず)等を用いて変更することができるようになっている。
さらに、油圧ポンプP1、P2の容量が最大で原動機Mの回転数が前記最大回転数Nmのときの油圧ポンプP1、P2のポンプ流量を、各油圧ポンプP1、P2の最大ポンプ流量Lmとして設定する。
【0022】
さらに、コントローラ10は、ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用、走行用の各操作検出手段50~54から検出信号が入力されると、目標供給流量設定部62において各油圧アクチュエータに対する目標供給流量を設定するとともに、目標ポンプ流量設定部64において油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量Ltを設定する。
目標供給流量設定部62は、操作された油圧アクチュエータの組み合わせや各操作具の操作量に応じて、各油圧ポンプP1、P2から各油圧アクチュエータに供給する目標供給流量を設定する。この場合、各油圧ポンプP1、P2からそれぞれ供給される目標供給流量の合計が、それぞれ各油圧ポンプP1、P2の最大ポンプ流量Lmを超えない範囲で、油圧ポンプP1、P2のポンプ流量を、該油圧ポンプP1、P2を油圧供給源とする各油圧アクチュエータの操作具操作量に応じて各油圧アクチュエータに分配するように設定される。
【0023】
また、目標ポンプ流量設定部64は、各油圧ポンプP1、P2がそれぞれ担う各油圧アクチュエータへの目標供給流量の合計に基づいて、各油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量Ltを設定する。この場合、各油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量Ltは、前記予め設定された各油圧ポンプP1、P2の最大ポンプ流量Lmを超えないように設定される。
【0024】
さらにコントローラ10は、供給流量制御部63において、前記目標供給流量設定部62によって設定された目標供給流量が各油圧ポンプP1、P2から各油圧アクチュエータに供給されるように、目標供給流量に対応するブーム用、旋回用、スティック用、バケット用、左右の走行用方向切換弁23~26、13、14の供給用弁路23e~26e、13e、14e、およびスティック用、ブーム用流量制御弁28、29の開口面積を求め、該開口面積にするためのパイロット圧を出力するよう各電磁比例弁41a、41b~44a、44b、47a、47b~48a、48b、45、46に対して制御信号を出力する。
【0025】
さらに、コントローラ10は、ポンプ流量制御部65(油圧ポンプP1、P2のポンプ容量を制御するポンプ容量制御部65aと、原動機Mの回転数を制御するべく原動機制御装置60に制御信号を出力する原動機回転数制御部65bとを含む)において、油圧ポンプP1、P2のポンプ流量が、前記目標ポンプ流量設定部64で設定された目標ポンプ流量Ltとなるように、油圧ポンプP1、P2のポンプ容量および原動機Mの回転数を制御する。この場合に、ポンプ流量制御部65は、前記目標ポンプ流量設定部64で設定された両方の油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量Ltが前記基準ポンプ流量Ls以下の場合には、原動機Mの回転数を基準回転数Nsとなるように制御するとともに、油圧ポンプP1、P2のポンプ流量が目標ポンプ流量Ltとなるようにポンプ容量を制御する。一方、何れかの油圧ポンプP1またはP2の目標ポンプ流量Ltが基準ポンプ流量Lsを超える場合には、該何れかの油圧ポンプP1またはP2のポンプ容量を最大にするとともに、原動機Mの回転数を前記最大回転数Nmを上限として基準回転数Nsよりも増加させて、何れかの油圧ポンプP1、P2のポンプ流量が基準ポンプ流量Lsを超えた目標ポンプ流量Ltとなるように制御する。また、何れか以外の油圧ポンプP2またはP1は、前記増加させた原動機M回転数に応じてポンプ容量を調整することで、目標ポンプ流量Ltとなるように制御する。
【0026】
次に、コントローラ10の行う制御について具体的に説明する。
例えば、油圧ポンプP1、P2の最大ポンプ容量を125cc/rev、原動機Mの基準回転数Nsを1600rpmとしたとき、基準ポンプ流量Lsは200L/mに設定される。さらに、原動機Mの通常使用回転数範囲内の最大回転数Nmを2400rpmとすると、油圧ポンプP1、P2の最大ポンプ流量Lmは300L/mに設定される。
【0027】
図4の表に、上記のように基準ポンプ流量Lsを200L/m、最大ポンプ流量Lmを300L/mに設定された場合に、各油圧アクチュエータ用操作具が操作された場合に設定される油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量Ltの一例を示すが、表中の「A」~「F」は、左走行用操作具、右走行用操作具、ブーム用操作具、スティック用操作具、バケット用操作具、旋回用操作具が単独でフル操作された場合の目標ポンプ流量Lt、「G」は左右の走行用操作具とブーム用、スティック用、バケット用操作具とが同時にフル操作された場合の目標ポンプ流量Ltである。尚、走行直進弁11は、「A」~「F」の場合には第一位置Xに位置し、「G」の場合には第二位置に位置するように制御される。
【0028】
ここで、前記基準ポンプ流量Lsは、本実施の形態では、左右の各走行モータ4、5への最大供給流量と同流量となるように設定されている。該左右の走行モータ4、5への最大供給流量は、油圧ショベル1を直進走行させる場合に走行曲がりが起こらないように左右の走行モータ4、5への供給流量の最大値を制限するために設定されている。そして、基準ポンプ流量Lsを走行モータ4、5への最大供給流量にするとともに、前記
図4の「A」に示すように、左右の走行用操作具がフル操作された場合の目標ポンプ流量Ltを基準ポンプ流量Ls(200L/m)とすることで、左右の走行用操作具のみが同時にフル操作された場合に、油圧ポンプP1、P2から左右のモータ4、5に最大供給流量を同等に供給できることになる。
【0029】
また、前記
図4の「C」、「D」に、ブーム用、スティック用操作具が単独でフル操作された場合の油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量Ltの一例を示したが、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8は、前述したように油圧ポンプP1、P2の両方を油圧供給源とする大流量油圧アクチュエータであって、ブーム用、スティック用操作具が単独操作された場合には、目標供給流量、目標ポンプ流量Ltは油圧ポンプP1、P2別に設定される。この場合の制御について、ブームシリンダ6の場合もスティックシリンダ8の場合も同様であるためスティックシリンダ8を例にとって
図5に基づいて説明すると、コントローラ10は、スティック用操作具が単独で操作されると、該スティック用操作具の操作量が予め設定される設定値D以下の場合には、スティック用サブ側供給油路18が接続される油圧ポンプP1からの目標供給流量は設定せず(目標供給流量がゼロ)、スティック用メイン側供給油路22が接続される油圧ポンプ(メインポンプ)P2からの目標供給流量のみを操作具操作量が増加するにつれて増加するように設定するとともに、スティック用方向切換弁25の供給用弁路25eの開口面積を操作具操作量が増加するにつれて増加するように制御し、スティック用流量制御弁28は閉じるように制御する。一方、操作具操作量が設定値Dを超える場合には、油圧ポンプP2、P1の両方の油圧ポンプからの目標供給流量を設定するとともに、スティック用方向切換弁25の供給用弁路25eに加えてスティック用流量制御弁28も開くように制御する。前記操作具操作量の設定値Dは、フル操作された場合の操作具操作量を100%とすると操作量50%を超える値、例えば操作量70%~90%に設定されるとともに、操作具操作量が設定値Dのときの目標供給流量を設定流量Ldとすると、該設定流量Ldは、油圧ポンプP2の基準ポンプ流量Lsを超えて最大ポンプ流量Lm近くとなるように設定される。これにより、スティックシリンダ8への供給流量が、基準ポンプ流量Lsを超えるように設定された設定流量Ld以下の場合には、油圧ポンプP2からのみ圧油供給され、設定流量Ldを超える場合には両方の油圧ポンプP1、P2から圧油供給されるように制御される。さらに、コントローラ10は、上記目標供給流量を供給できるように油圧ポンプP2、P1の目標ポンプ流量Ltを設定するが、この場合に、油圧ポンプP2の目標ポンプ流量Ltは、目標供給流量に応じて基準ポンプ流量Lsを超えるように設定されることになる。そして、このように目標供給流量、目標ポンプ流量Ltを設定することによって、操作具操作量が設定値Dを超えたとき、つまり、スティックシリンダ8への供給流量が基準ポンプ流量Lsを超えるように設定された設定流量Ldを超えるときのみ、油圧ポンプP2、P1の両方の油圧ポンプからの圧油が合流してスティックシリンダ8に供給されることになり、これにより、合流が行われる頻度を低減することができるようになっている。
【0030】
一方、ブーム用操作具とスティック用操作具とが同時に操作された場合、つまり、大流量油圧アクチュエータであるブームシリンダ6とスティックシリンダ8とを同時に駆動させる場合、コントローラ10は、操作具操作量に応じてブームシリンダ6、スティックシリンダ8への分配流量を求めるとともに、該分配流量が、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8に、それぞれメインの油圧ポンプP1、P2からのみ圧油供給されるように目標供給流量を設定し、さらに該目標供給流量に応じて目標ポンプ流量Ltを設定する。つまり、ブームシリンダ6には油圧ポンプP1からの目標供給流量のみが設定されるとともに、該ブームシリンダ6への目標供給流量に応じて油圧ポンプP1の目標ポンプ流量Ltが設定され、また、スティックシリンダ8には油圧ポンプP2からの目標供給流量のみが設定されるとともに、該スティックシリンダ8への目標供給流量に応じて油圧ポンプP2の目標ポンプ流量Ltが設定される。そして、ブーム用、スティック用方向切換弁23、25は目標供給流量に応じた開口面積で供給用弁路23e、25eを開くように制御される一方、ブーム用、スティック用流量制御弁29、28は閉じるように制御される。また、油圧ポンプP1、P2のポンプ流量がそれぞれ目標ポンプ流量Ltとなるように、油圧ポンプP1、P2のポンプ容量制御、原動機Mの回転数制御が行われる。これにより、ブームシリンダ6とスティックシリンダ8とを同時に駆動させる場合には、これらが最大流量供給時には両方の油圧ポンプP1、P2から圧油供給される大流量油圧アクチュエータであっても、油圧ポンプP1、P2の吐出油の合流をなくすことができる。
【0031】
また、前記
図4の「E」に、バケット用操作具が単独でフル操作された場合の油圧ポンプP1の目標ポンプ流量Ltの一例を示したが、該目標ポンプ流量Ltは、油圧ポンプP1の基準ポンプ流量Lsを超えて設定されている。これにより、バケット用操作具が単独でフル操作された場合に、基準ポンプ流量Lsを超えた流量をバケットシリンダ9に供給できることになって、一つの油圧ポンプP1のみを油圧供給源とするバケットシリンダ9であっても、該油圧ポンプP1の容量を大型化することなく供給流量を増加させて作業効率を向上させることができる。
【0032】
また、前記
図4の「G」に、左右の走行用操作具とブーム用、スティック用、バケット用操作具とが同時にフル操作された場合の油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量Ltの一例を示したが、この場合、走行直進弁11は、前述したように第二位置Yに位置するように制御され、これにより、左右の走行モータ4、5には油圧ポンプP1から圧油供給され、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9には油圧ポンプP2から圧油供給される。そして、この場合に、
図4の「G」に示すように、油圧ポンプP2の目標ポンプ流量Ltを基準ポンプ流量Lsよりも大きく設定することで、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9への供給流量を多くすることができて、作業効率の向上に寄与できる。
【0033】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ショベル1の油圧制御システムは、原動機Mと、該原動機Mにより駆動される複数の可変容量型の油圧ポンプP1、P2と、これら油圧ポンプP1、P2の少なくとも一つを油圧供給源として駆動する複数の油圧アクチュエータ4~9(左右の走行モータ4、5、ブームシリンダ6、旋回モータ7、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9)と、各油圧アクチュエータ4~9を駆動させるべく操作される各油圧アクチュエータ用操作手段(左右の走行用、ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用操作具)と、油圧ポンプP1、P2から各油圧アクチュエータ4~9への圧油供給を制御する複数の制御弁(走行直進弁11、左右の走行用、ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用方向切換弁13、14、23~26、ブーム用、スティック用流量制御弁28、29)等を備えて構成されているが、さらにこのものに、前記制御弁の作動、油圧ポンプP1、P2のポンプ容量および原動機Mの回転数を制御するコントローラ10を設けるとともに、該コントローラ10は、油圧ポンプP1、P2のポンプ容量が最大で原動機Mの回転数が予め設定される基準回転数Nsのときの油圧ポンプP1、P2のポンプ流量を基準ポンプ流量Lsとして設定する基準ポンプ流量設定部61と、各油圧ポンプP1、P2のポンプ流量が予め設定される最大ポンプ流量Lmを超えない範囲で、各油圧アクチュエータ用の操作手段の操作に応じて各油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量Ltを油圧ポンプ別に設定する目標ポンプ流量設定部64と、該目標ポンプ流量設定部64により設定された何れかの油圧ポンプP1またはP2の目標ポンプ流量Ltが前記基準ポンプ流量Lsを超える場合に、該何れかの油圧ポンプP1またはP2のポンプ容量を最大するとともに原動機Mの回転数を基準回転数Nsよりも増加させて当該油圧ポンプP1またはP2のポンプ流量を基準ポンプ流量Lsよりも増加させるポンプ流量制御部65とを備えている。
【0034】
しかして、コントローラ10に設けられた基準ポンプ流量設定部61、目標ポンプ流量設定部64、ポンプ流量制御部65に行う制御によって、操作具操作された油圧アクチュエータの油圧供給源となる油圧ポンプP1またはP2のポンプ流量を、ポンプ容量が最大で原動機Mの回転数が基準回転数Nsのときの基準ポンプ流量Lsよりも増加させることができることになり、この結果、操作された油圧アクチュエータへの供給流量を確保するために油圧ポンプP1、P2の吐出油を合流させる必要性や頻度を確実に減らすことができて、合流に起因する効率や操作性の低下、回路の複雑化を低減できる。しかも、原動機Mの回転数を基準回転数Nsよりも増加させることで油圧ポンプP1、P2のポンプ流量を基準ポンプ流量Lsよりも増加させる構成であるから、大容量の油圧ポンプを用意する必要もなくなる。
【0035】
さらに本実施の形態のものでは、油圧ポンプとして油圧ポンプP1と油圧ポンプP2(第一、第二油圧ポンプ)とを備え、油圧アクチュエータとして最大流量供給時に油圧ポンプP1、P2の両方の油圧ポンプから圧油供給されるブームシリンダ6、スティックシリンダ8(大流量油圧アクチュエータ)を備える一方、ブーム用、スティック用操作具が単独で操作された場合に、コントローラ10は、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8への供給流量が、基準ポンプ流量Lsを超えるように設定された設定流量Ldに達するまでは、油圧ポンプP1、P2のうち何れか一方の油圧ポンプをメインポンプとして該メインポンプからのみ圧油供給され、設定流量Ldを超える場合に両方の油圧ポンプP1、P2から圧油供給されるように制御するとともに、目標ポンプ流量設定部64は、メインポンプからブームシリンダ6、スティックシリンダ8への供給流量に応じて該メインポンプの目標ポンプ流量Ltを基準ポンプ流量Lsを超えるよう設定することになる。これにより、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8への供給流量が基準ポンプ流量Lsを超えるように設定された設定流量Ldを超えるときのみ、油圧ポンプP1、P2からの両方の油圧ポンプからの圧油が合流してブームシリンダ6、スティックシリンダ8に供給されることになって、最大流量供給時に油圧ポンプP1、P2の両方の油圧ポンプから圧油供給される大流量油圧アクチュエータであっても、合流が行われる頻度を低減することができることになる。
【0036】
さらに、本実施の形態において、前記ブームシリンダ6は油圧ポンプP1をメインポンプとし、スティックシリンダ8は油圧ポンプP2をメインポンプとするが、ブーム用、スティック用操作具が同時に操作された場合に、コントローラ10は、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8にメインポンプからのみ圧油供給されるように制御するとともに、目標ポンプ流量設定部64は、ブーム用、スティック用操作具の操作量に応じて油圧ポンプP1、P2の目標ポンプ流量Ltを油圧ポンプ別に設定することになる。この結果、ブームシリンダ6とスティックシリンダ8とを同時に駆動させる場合には、これらが最大流量供給時には両方の油圧ポンプP1、P2を圧油供給源とする大流量油圧アクチュエータであっても、油圧ポンプP1、P2の吐出油の合流をなくすことができる。
【0037】
さらに、油圧ショベル1は、左右の走行体を備えた走行機体(下部走行体71および上部旋回体72)と、該走行機体に装着される作業装置(フロント作業機73)とを具備するとともに、油圧ポンプとして油圧ポンプP1と油圧ポンプP2とを備え、油圧アクチュエータとして、左右の走行体をそれぞれ駆動させる左右の走行モータ4、5と、作業装置を駆動させる複数の作業用油圧アクチュエータとしてのブームシリンダ6、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9を備える一方、左右の走行用操作具とブーム用、スティック用、バケット用操作具とが同時に操作された場合に、コントローラ10は、左右の走行モータ4、5には油圧ポンプP1から圧油供給し、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9には油圧ポンプP2から圧油供給するよう走行直進弁11を制御するとともに、目標ポンプ流量設定部64は、油圧ポンプP2の目標ポンプ流量Ltを基準ポンプ流量Lsよりも多く設定する。これにより、左右の走行モータ4、5と作業用油圧アクチュエータ(ブームシリンダ6、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9)とを、互いに油圧干渉のない独立した状態で圧油供給できるとともに、油圧ポンプP2の目標ポンプ流量Ltを基準ポンプ流量Lsよりも多く設定することで、作業用油圧アクチュエータへの供給流量を多くすることができて、作業効率の向上に寄与できる。
【0038】
次に、本発明の第二の実施の形態について、
図6に基づいて説明する。尚、第二の実施の形態のものにおいて、第一の実施の形態と共通するものは同一の符号を付すとともに説明を省略する。
第二の実施のものでは、原動機Mにより駆動される油圧ポンプとして、油圧ポンプP1、P2、P3の三つの油圧ポンプが設けられている。そして、油圧ポンプP1は、第一の実施の形態と同様に、第一位置Xの走行直進弁11を介してポンプラインCに接続されると共に、左走行用方向切換弁13に接続されている。また、油圧ポンプP2は、ポンプラインDに接続されると共に、第一位置Xの走行直進弁11を介して右走行用方向切換弁14に接続されている。一方、油圧ポンプP3は、ブーム用メイン側供給油路17に接続されている。
【0039】
前記油圧ポンプP1に接続されるポンプラインCからは、スティック用サブ側供給油路18、バケット用供給油路19が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されており、また、油圧ポンプP2に接続されるポンプラインDからは、ブーム用サブ側供給油路20、旋回用供給油路21、スティック用メイン側供給油路22が互いにパラレルとなる状態で分岐形成されている。前記スティック用サブ側供給油路18、ブーム用サブ側供給油路20には、第一の実施の形態と同様に、スティック用流量制御弁28、ブーム用流量制御弁29がそれぞれ配設されている。
【0040】
そして、ブーム用方向切換弁23のポンプポート23pには、ブーム用メイン側供給油路17を経由する油圧ポンプP3からの圧油と、ブーム用サブ側供給油路20を経由する油圧ポンプP2からの圧油とを供給できるようになっていると共に、油圧ポンプP2からの圧油は、ブーム用サブ側供給油路20に配設のブーム用流量制御弁29によって流量制御された状態(遮断状態を含む)でブーム用方向切換弁23に供給されるようになっている。また、スティック用方向切換弁25のポンプポート25pには、スティック用メイン側供給油路22を経由する油圧ポンプP2からの圧油と、スティック用サブ側供給油路18を経由する油圧ポンプP1からの圧油とを供給できるようになっていると共に、油圧ポンプP1からの圧油は、スティック用サブ側供給油路18に配設のスティック用流量制御弁28によって流量制御された状態(遮断状態を含む)でスティック用方向切換弁25に供給されるようになっている。また、バケット用方向切換弁26のポンプポート26pには、バケット用供給油路19を経由する油圧ポンプP1からの圧油が供給されるようになっており、また、旋回用方向切換弁24のポンプポート24pには、旋回用供給油路21を経由する油圧ポンプP2からの圧油が供給されるようになっている。尚、前記ブーム用、旋回用、スティック用、バケット用の各方向切換弁23~26、ブーム用、スティック用の流量制御弁29、28は、第一の実施の形態と同様のものである。
【0041】
そして、第二の実施の形態のものにおいても、第一の実施の形態と同様に、コントローラ10による各油圧アクチュエータ4~9の油給排制御や油圧ポンプP1、P2、P3の容量制御、原動機Mの回転数制御等が行われることになるが、第二の実施の形態のものでは、油圧ポンプP3はブームシリンダ6のみの油圧供給源となっている。そして、ブーム用操作具、スティック用操作具、バケット用操作具が同時に操作される、所謂フロント三連動の複合操作時に、コントローラ10は、ブーム用、スティック用流量制御弁29、28をそれぞれ閉じるように制御するようになっている。これにより、フロント三連動の複合操作時は、ブームシリンダ6には油圧ポンプP3からのみ、スティックシリンダ8には油圧ポンプP2からのみ、バケットシリンダ9には油圧ポンプP1からのみ圧油供給されることになって、ブームシリンダ6、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9に互いに油圧干渉のない独立した回路での圧油供給を行えることになる。そして、この場合においても、ブーム用、スティック用、バケット用操作具の操作量に応じて、ポンプ容量制御および原動機Mの回転数制御によって油圧ポンプP3、P2、P1のポンプ流量を増減制御することで、各油圧ポンプP3、P2、P1のポンプ流量をブームシリンダ6、スティックシリンダ8、バケットシリンダ9に操作具操作量に応じた流量とすることができる。
【0042】
尚、本発明は前記第一、第二の実施の形態に限定されないことは勿論であって、例えば、各油圧ポンプの目標ポンプ流量を設定するにあたり、全ての油圧ポンプの目標ポンプ流量の総和に上限を設ける構成にすることもできる。この場合、目標ポンプ流量の総和の上限は、各油圧ポンプの最大ポンプ流量の総和を超えない範囲で任意に設定できる。
また、上記実施の形態では、原動機として電気モータが用いられているが、原動機としてエンジンが用いられていても本発明を実施できる。
さらに、本発明は、油圧ショベルに限定されることなく、原動機により駆動される複数の油圧ポンプが設けられている各種作業機械に実施できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、油圧ショベル等の作業機械の油圧制御システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 油圧ショベル
4 左走行モータ
5 右走行モータ
6 ブームシリンダ
7 旋回モータ
8 スティックシリンダ
9 バケットシリンダ
10 コントローラ
11 走行直進弁
14 左走行用方向切換弁
15 右走行用方向切換弁
23 ブーム用方向切換弁
24 旋回用方向切換弁
25 スティック用方向切換弁
26 バケット用方向切換弁
28 スティック用流量制御弁
29 ブーム用流量制御弁
61 基準ポンプ流量設定部
64 目標ポンプ流量設定部
65 ポンプ流量制御部
71 下部走行体
72 上部旋回体
73 フロント作業機
M 原動機
P1、P2 油圧ポンプ