(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053413
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】水中ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
F04D 15/00 20060101AFI20240408BHJP
F04D 13/08 20060101ALI20240408BHJP
F04B 49/025 20060101ALI20240408BHJP
G01F 23/18 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
F04D15/00 H
F04D15/00 B
F04D15/00 J
F04D13/08 U
F04B49/025
G01F23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159682
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000148209
【氏名又は名称】株式会社川本製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】玉川 充
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 章太
(72)【発明者】
【氏名】飯盛 央隆
【テーマコード(参考)】
2F014
3H020
3H130
3H145
【Fターム(参考)】
2F014AA11
2F014BA03
3H020AA01
3H020AA05
3H020AA08
3H020BA02
3H020BA03
3H020BA13
3H020BA16
3H020CA07
3H020CA08
3H020CA10
3H020DA01
3H020DA05
3H020DA23
3H020EA04
3H020EA10
3H020EA14
3H020EA16
3H130AA03
3H130AA27
3H130AA38
3H130AB23
3H130AB60
3H130AC07
3H130AC08
3H130BA71H
3H130BA71J
3H130DD01Z
3H130DF01Z
3H130DF02Z
3H130DF03X
3H130DF05X
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3H130ED05J
3H145AA01
3H145AA12
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3H145AA40
3H145AA42
3H145BA24
3H145BA33
3H145BA39
3H145CA14
3H145CA21
3H145CA24
3H145CA28
3H145DA01
3H145DA32
3H145DA38
3H145EA02
3H145EA04
3H145EA15
3H145EA16
3H145EA20
3H145EA26
3H145EA36
3H145EA42
3H145EA48
3H145FA23
3H145FA26
3H145FA27
(57)【要約】
【課題】省スペース化を実現しつつ高精度の液位制御を行うことができる。
【解決手段】水中ポンプ装置は、ポンプ、液位計および制御部を含む。ポンプは、筐体内に設けられる。液位計は、前記筐体の下部に配置され、半導体圧力センサを用いて液体の液位を計測する。制御部は、前記液位計により計測された液位に応じて、前記ポンプを始動または停止させるように制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体内に設けられたポンプと、
前記筐体の下部に配置され、半導体圧力センサを用いて液体の液位を計測する液位計と、
前記液位計により計測された液位に応じて、前記ポンプを始動または停止させるように制御する制御部と、
を具備する水中ポンプ装置。
【請求項2】
前記液位計は、弾性材料またはダイヤフラムと、前記半導体圧力センサとの間にオイルが封入され、
前記弾性材料または前記ダイヤフラムにかかる圧力が前記オイルを介して前記半導体圧力センサに伝達されることで、前記圧力が計測される、請求項1に記載の水中ポンプ装置。
【請求項3】
前記筐体内の温度を計測する温度計測部をさらに具備し、
前記制御部は、前記温度計測部により計測された温度に応じて、前記液位計で計測された液位を補正する、請求項1に記載の水中ポンプ装置。
【請求項4】
前記ポンプを駆動させるモータと、
前記モータに流れる電流を計測する電流計測部と、をさらに具備し、
前記制御部は、前記電流計測部により前記電流が脈動している状態または所定値以下の電流値であることが計測された場合、前記ポンプを停止させるように制御する、請求項1に記載の水中ポンプ装置。
【請求項5】
前記ポンプを駆動させるモータと、
前記モータを可変速制御し、前記モータに流れる電流を計測する電流計測センサと、前記モータおよび前記制御部を含む電装部の少なくとも一方の温度を計測する温度計測センサとを含むインバータと、をさらに具備し、
前記制御部は、前記電流計測センサにより前記電流が脈動している状態または所定値以下の電流値であることが計測された場合、前記ポンプを停止させるように制御する、もしくは、前記温度計測センサにより前記温度が第1閾値以上となる場合、または第1時点の温度と前記第1時点から所定時間経過後の第2時点の温度とから算出される温度上昇値が第2閾値以上となる場合、前記ポンプを停止させるように制御する、請求項1に記載の水中ポンプ装置。
【請求項6】
前記制御部を含む前記電装部は、前記筐体側面に配置され、前記液位計は、前記電装部の下部に配置される、請求項5に記載の水中ポンプ装置。
【請求項7】
外部と無線通信を行う無線通信部をさらに具備し、
前記制御部は、ポンプ運転中に、前記液体が前記ポンプを停止するための停止液位または前記ポンプの複数台制御運転を解除するための解列液位に達しても、前記無線通信部が所定時間継続して無線通信できない場合、複数台制御運転を実行しない単独運転モードへ移行させる、請求項1に記載の水中ポンプ装置。
【請求項8】
外部と無線通信を行う無線通信部をさらに具備し、
前記制御部は、前記外部から前記無線通信を介した指示により、前記ポンプを始動させるための始動液位、前記ポンプを停止させるための停止液位、複数台のポンプによる並列運転を開始するための始動液位および前記並列運転を解除するための解列液位の少なくとも1つを設定する、請求項1に記載の水中ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を排水する水中ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生活排水などの排水に用いる水中ポンプ装置には、フロートスイッチまたは投げ込み式水位計により、水位を検出し、ポンプの始動および停止を制御する技術が知られている (例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4412548号
【特許文献2】特許第4372252号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に係るフロートスイッチおよび特許文献2に係る投げ込み式水位計は、ポンプ装置とは別体であり、さらにはある程度の大きさがあることから、フロートスイッチまたは投げ込み式水位計のためのスペースを確保しなければならないという問題がある。
本発明は、省スペース化を実現しつつ高精度の液位制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、水中ポンプ装置は、ポンプ、液位計および制御部を含む。ポンプは、筐体内に設けられる。液位計は、前記筐体の下部に配置され、半導体圧力センサを用いて液体の液位を計測する。制御部は、前記液位計により計測された液位に応じて、前記ポンプを始動または停止させるように制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、省スペース化を実現しつつ高精度の液位制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本実施形態に係る水中ポンプ装置の別例を示す図。
【
図3】本実施形態に係る水中ポンプ装置の運転動作の一例を示すフローチャート。
【
図4】水中ポンプ装置が複数台存在する水中ポンプシステムの構成例を示す図。
【
図5】本実施形態に係る水中ポンプシステムの交互運転の動作例を示すシーケンス図。
【
図6】本実施形態に係る水中ポンプシステムの交互並列運転の動作例を示すシーケンス図。
【
図7】本実施形態に係る水中ポンプシステムの交互並列運転の動作例を示すシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら実施形態に係る水中ポンプ装置および水中ポンプシステムについて説明する。なお、以降、説明済みの要素と同一または類似の要素には同一または類似の符号を付し、重複する説明については基本的に省略する。例えば、複数の同一または類似の要素が存在する場合に、各要素を区別せずに説明するために共通の符号を用いることがあるし、各要素を区別して説明するために当該共通の符号に加えてアルファベットまたは枝番号を用いることもある。
【0009】
図1は、本発明の一実施形態に係る水中ポンプの構成を示す説明図である。水中ポンプ装置10は、貯水タンク100内に貯留された水を外部配管200に向けて圧送可能に形成されている。
【0010】
貯水タンク100には、外部から水、排水、汚水などの液体が流入する。設定液位L0は、水中ポンプ装置10を停止する停止液位である。設定液位L1は、設定液位L0よりも高い液位であり、水中ポンプ装置10のポンプを始動する始動液位である。
【0011】
水中ポンプ装置10は、円筒状の筐体20と、筐体20内に設けられたポンプ22と、筐体20内に設けられたモータ23と、筐体20内に設けられた電装部30と、筐体20に設置された液位計50とを含む。
【0012】
液位計50は、例えば半導体圧力センサにより構成され、筐体20壁面、好ましくは筐体20の下部に配置される。液位計50は、貯水タンク100内の液体の液位を計測する。具体的には、液面の高さに応じて半導体圧力センサに係る圧力が変化するため、圧力値から対応する液面の高さを測定する。なお、貯水タンク100内に溜まる液体の液質は多種多様であり、液位計と液体との接触部分は腐食または溶解しない材料で形成する必要がある。よって、例えばフッ素ゴムなどの弾性材料または金属薄膜材料で製作したダイヤフラムと、半導体圧力センサとの間にオイルを封入し、弾性材料またはダイヤフラムにかかる圧力(液体による水圧)がオイルを介して半導体圧力センサに伝達されることで、液位を検出する構成を想定する。
【0013】
ポンプ22は、筐体20内に設けられ、筐体20の下部に設けられた開口部22aから貯水タンク100内の水を吸い上げ、吐出口22bから吐出する。
モータ23は、例えば、三相の永久磁石同期電動機、三相誘導電動機または単相誘導電動機であり、ポンプ22を駆動する。
【0014】
電装部30は、制御部31、インバータ32、時間計測部33、電流計測部34、温度計測部35、運転周波数計測部36、記憶部37、入力インタフェース38および無線通信部39を備え、それぞれがシステムバスにより接続されている。
【0015】
制御部31は、予め定められたプログラムに従い、液位計50の計測値および無線通信部39の無線信号および無線の伝搬状況に基づいて制御を行う。制御部31は、液位計50により液面が設定液位L1(第1液位)に達した場合の圧力値が計測された場合、ポンプ22を始動させる。制御部31は、同様に液体が設定液位L0(第2液位)に達した場合、ポンプ22を停止させる。
【0016】
なお、液位計50は、半導体圧力センサ周囲の大気圧(ここではモータ内空気圧)を基準として圧力値を計測するため、モータ内温度が上昇すると、半導体圧力センサ周囲の大気圧が上昇するため、液位計の計測値と実際の液位とに誤差が生じる可能性がある。よって、制御部31は、モータ内温度を計測してキャリブレーションを行い、計測値と液位との誤差を補正する。なお、当該補正処理は、液位計50内で実装されてもよい。
また、制御部31は、「周波数一定モード」および「電流値一定モード」を必要に応じて切り換えることが可能である。制御部31を動作させるプログラムは、後述するように水中ポンプ装置を交互運転または交互並列運転のいずれかを実行させるものである。
【0017】
インバータ32は、モータ23を可変速制御すると共に、モータ23への印加電流、および、モータ23の運転周波数の情報を制御部31に送信する。また、インバータ32は、電流計測センサおよび温度計測センサを含んでもよい。
【0018】
時間計測部33は、ポンプ22の積算運転時間、始動からの運転時間などを計測する。
電流計測部34は、モータ23に流れる電流を計測する。
温度計測部35は、電装部30およびモータ23の温度を計測する。
運転周波数計測部36は、モータ23の運転に係る運転周波数を計測する。
【0019】
記憶部37は、例えば、ROM(Read Only Memory)またはRAM(Random Access Memory)であり、ポンプ運転情報、他の水中ポンプ装置から取得したポンプ運転情報を記憶する。
入力インタフェース38は、外部機器からの入力を受け付ける。
【0020】
無線通信部39は、例えば、LTE(Long Term Evolution)(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、無線LAN等の無線通信機能を備える。無線通信部39は、外部との無線通信が可能か否かにより液位を判定する。つまり、無線通信部39が無線通信できない場合は、無線通信部が液体中に存在しており、液体により電波が減衰していることを示すため、液位が無線通信部39が配置される位置以上であるといえる。一方、無線通信部39が無線通信できる場合は、無線通信部が液体中に存在していないことを示すため、液位が無線通信部39が配置される位置未満であるといえる。無線通信部39は、
図1の例では、筐体20の中央部に配置されるが、これに限らず筐体20の上部でもよいし、筐体20の下部に配置されてもよい。
【0021】
無線通信部39を介して、制御部31は、水中ポンプ装置1またはポンプ22の台数、並列運転の有無、運転順、ポンプ22の始動液位、停止液位、並列運転に関する始動液位および並列運転を解列する解列液位の少なくとも1つを設定してもよい。
【0022】
なお、
図1では、設定液位L1が、水中ポンプ装置10の筐体20の最上部付近、設定液位L0が、筐体20のポンプ22付近に設定されているが、これに限らず、ポンプによる排液環境に合わせて設定液位L0と設定液位L1との位置を適宜設定可能である。
【0023】
次に、水中ポンプ装置10の別例を
図2に示す。
図2に示す水中ポンプ装置10は、筐体20外、例えば筐体20の側面に電装部30を配置した場合を示す。これにより、無線通信部39などの電装部30に対するメンテナンスを容易にすることができる。なお、電装部30が単体で液体に浸かることになるため、電装部30は、金属または樹脂を用いたシールド材料でカバーされればよい。また、電装部30は樹脂ポッティングをすることで、結露・防水対策を施すこともできる。
なお、液位計50は、筐体20外に配置された電装部30の下部に配置されてもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係る水中ポンプ装置10の運転動作の一例について
図3のフローチャートを参照して説明する。
ステップSA1では、使用者による水中ポンプ装置10の電源投入後、制御部31は、水中ポンプ装置10を停止状態とする。
【0025】
ステップSA2では、液位計50が貯水タンク100内の液位を測定し、測定液位を得る。これ以降、液位が上昇中であることを想定する。
ステップSA3では、制御部31は、始動液位に到達したか否かを判定する。具体的には、液位計50による測定液位が設定液位L1に到達していれば、ステップSA4に進み、測定液位が設定液位L1に到達していなければ、ステップSA2に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0026】
ステップSA4では、制御部31は、液面が始動液位まで上昇しているため、ポンプ22を始動させ、貯水タンク100内の液体を排出する。これ以降、液位が下降中であることを想定する。
ステップSA5では、制御部31が、液面が停止液位に到達したか否かを判定する。具体的には、液位計50による測定液位が設定液位L0に到達していればステップSA6に進み、測定液位が設定液位L0に到達していなければ、液面が停止液位に到達するまでステップSA5の判定処理を繰り返す。
【0027】
ステップSA6では、制御部31が、停止条件を満たすか否かを判定する。ここでは、ステップSA5の液位計50の計測値を用いた判定処理により、液面が停止液位に到達したと判定されたことで、ポンプ22の停止条件を満たすと判定してもよいし、さらに別の条件を用いて判定してもよい。例えば、電流値および温度の少なくとも一方を用いて、停止条件を判定してもよい。具体的に、電流値を用いて判定する場合は、渇水時において、ポンプに空気が入った空運転状態と、吐き出し管からの戻り水を吸い上げる運転状態とを繰り返す、いわゆる「鳴り水運転」に基づいて停止条件を決定する。空運転状態では、水を吸い上げている状態よりも電流値が低くなり、「鳴り水運転」では、電流値が周期的に変化し、電流が脈動している状態、すなわち脈動電流が発生する。よって、制御部31は、電流計測部34により計測された電流値に基づき、脈動電流が発生している、または電流が所定値以下であれば、液位が設定液位L0に達したと判定できるため、ポンプ22の停止条件を満たすと判定する。
【0028】
また、温度を用いて判定する場合は、ポンプ運転中は電流値が高い状態が継続するが、液位が一定以上ある場合は、当該液体によって筐体20およびポンプ22が水冷されるため、所定範囲で温度が保たれ、温度変化を計測するため予め設定した期間経過後の温度上昇値も所定範囲内となる。しかし、液位が減少すると、筐体20およびポンプ22が水冷されなくなり、温度が上昇する。よって、温度計測部35で計測された、モータ23または電装部30の温度が閾値以上となる場合、または第1時点の温度と予め設定した期間経過後の第2時点の温度とから算出される温度上昇値が閾値以上となる場合、液位が設定液位L0に達したと判定できるため、制御部31は、ポンプ22の停止条件を満たすと判定する。
上述のように停止条件を満たすと判定された場合、ステップSA7に進み、停止条件を満たしていないと判定された場合、ステップSA5に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0029】
ステップSA7では、制御部31が、ポンプ22を停止させるように制御する。その後、SA2に戻り、液位計50によるポンプ22の運転制御を継続して実行する。
【0030】
また、電流計測部34および温度計測部35に代えて、インバータ32に含まれる電流計測センサおよび温度計測センサがそれぞれ同様の計測処理を行ってもよい。また、無線通信部39によりユーザ指示を受信し、ポンプ22の始動またはポンプの停止に関する試運転を実行してもよい。これにより、貯水タンク100内に液体がない場合でも、水中ポンプ装置1の動作を確認することができる。
【0031】
次に、水中ポンプ装置10が複数台存在する水中ポンプシステムの構成例を
図4に示す。
図4に示す水中ポンプシステムは、貯水タンク100内に配置された2台の水中ポンプ装置10Aおよび水中ポンプ装置10Bを含む。なお、
図4の例では、水中ポンプ装置10A,10Bの2台を図示するが、これに限らず3台以上の水中ポンプ装置10が貯水タンク100内に設置されてもよい。
水中ポンプ装置10Aと水中ポンプ装置10Bとの各構成は、
図1に示す水中ポンプ装置10と同様の構成であり、説明の便宜上、符号に対して「A」および「B」を付与して区別する。
【0032】
ここでは、水中ポンプ装置10Aの無線通信部39Aは、他方の水中ポンプ装置10Bの無線通信部39Bとの間で状態信号(運転/停止状態、液位情報、タイマ値等)、互いの運転許可・運転禁止の指示情報などの無線通信を行う。
【0033】
また、水中ポンプ装置10Aの無線通信部39Aと水中ポンプ装置10Bの無線通信部39Bでは、ポンプ運転情報を交換する。ポンプ運転情報は、運転モード、動作順、運転情報、液位情報、積算運転時間、積算始動回数、識別番号、故障来歴、センサ情報のうちの少なくとも1つを含む。運転モードは、例えば単独運転モード、交互運転モード、交互並列運転モードのうちのどのモードであるかを示す。動作順は、運転モードが、交互運転モードまたは交互並列運転モードである場合、先発で動作する主機であるか、後発で動作する従機であるかを示す。なお、3台以上の水中ポンプ装置10が設定される場合は、従機1、従機2といったように、従機の中でも動作順を設定すればよい。
【0034】
運転情報は、水中ポンプ装置10の動作状況を示す運転状態であり、例えば、水中ポンプ装置10が運転中であるか、低水位停止中であるか、故障停止中であるか、警報発報中であるかを示す。液位情報は、液位計50によって計測された液位である。識別番号は、水中ポンプ装置10を一意に識別する番号である。故障来歴は、水中ポンプ装置10が故障した際の故障個所および故障日時などの情報を示す。センサ情報は、例えば、水中ポンプ装置10の故障発生時におけるセンサ情報であり、温度計測部35で計測された温度、電流計測部34で計測された電流値、運転周波数計測部36で計測された運転周波数値である。
ポンプ運転情報により、例えば、液位計50Aによって検出された液位情報と液位計50Bによって検出された液位情報を交換している。取得した相手方のポンプ運転情報は、自身のポンプ運転情報とともに、例えば記憶部37に記憶する。
【0035】
以下、このように構成された水中ポンプ装置10Aおよび水中ポンプ装置10Bの水中ポンプシステムによって行われる排水動作について説明する。始めに、交互運転動作について、
図5のフロー図に沿って説明する。交互運転動作とは、水中ポンプ装置10A、10Bのいずれか一方のみを運転する動作である。
【0036】
まず、使用者が電源をオンにすると、制御部31Aおよび制御部31Bが起動する。
ステップSB1では、制御部31Aはポンプ22Aの動作の停止を確認し、制御部31Bはポンプ22Bの動作の停止を確認する。
ステップSB2では、無線通信部39Aと無線通信部39Bとが、ポンプ運転情報を交換し、主機・従機の割り当てを設定する。主機・従機の決定方法としては、例えば、互いに積算運転時間または積算始動回数の情報を交換し、積算運転時間が短い方または積算始動回数が少ない方を主機として設定する。または、互いにランダムに数値を決定し、決定された数値が大きい方を主機として設定すればよい。ここでは、水中ポンプ装置10Aが主機、水中ポンプ装置10Bが従機に設定される。なお、例えば携帯端末と無線通信部39Aと無線通信部39Bとの無線通信により、ユーザが主機・従機を直接割り当ててもよい。
【0037】
ステップSB3では、液位計50Aが、液位を測定する。
ステップSB4では、制御部31Aが、始動液位に到達したか否かを判定する。すなわち、液位計50による測定液位が設定液位L1に到達していればステップSB5に進み、測定液位が設定液位L1に到達していなければ、ステップSA3に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0038】
ステップSB5では、液面が始動液位に到達した場合、制御部31Aは、ポンプ22Aを始動する。なお、ポンプ22Aが始動する情報が、無線通信部39Aから水中ポンプ装置10Bの制御部31Bへと送信される。以下では、ポンプ22Aを始動したため、液位が低下する場合を想定する。
【0039】
ステップSB6では、制御部31Aが、液位が停止液位に到達したか否かを判定する。液位が停止液位に到達すれば、貯水タンク100の液位が低下していると判定できる。停止液位に到達していれば、ステップSB7に進み、停止液位に到達していなければ、ポンプの排水処理を継続し、ステップSB6の判定処理を繰り返す。なお、ポンプ22を運転すれば、液位が減少し、いずれ停止液位に到達するはずであるが、ポンプ22を運転している場合でも液位が減少しなければ、制御部31は、モータ23Aの運転周波数を増加させ高速で回転させることで、ポンプ22の排水能力を増加させる制御を実行してもよい。
【0040】
ステップSB7では、制御部31Aが停止条件を満たすか否かを判定する。ここでは、液位が停止液位に到達しているため、停止条件を満たすとしてステップSB8に進むことを想定する。なお、さらに
図3の説明において上述した電流または温度の計測値による閾値判定を行い、停止条件を決定してもよい。例えば、制御部31Aは、脈動電流が発生していれば、停止条件を満たすと判定してもよい。
【0041】
ステップSB8では、制御部31Aは、ポンプ22Aを停止する。
ステップSB9では、無線通信部39Aと無線通信部39Bとが互いに通信することにより、主機・従機を入れ替えるように設定する。制御部31Aは、ポンプ22Aが停止した後、自身を従機に設定し、ポンプ22Aが停止したことを示す停止情報を、無線通信部39Aから無線通信部39Bへと送信する。制御部31Bは、無線通信部39Bが受信したポンプ22Aの停止情報を受けて、自身の水中ポンプ装置10Bを主機として設定する。
【0042】
その後、制御部31Bは、ステップSB1からステップSB9までの水中ポンプ装置10Aの主機の役割を実行する。このように、フロートスイッチと無線通信とにより、複数台の水中ポンプ装置10Aによる交互運転を実現できる。
【0043】
このように水中ポンプ装置10Aおよび水中ポンプ装置10Bを含む水中ポンプシステムにおいて交互運転する場合、水中ポンプ装置10Aおよび水中ポンプ装置10Bの始動液位となる設定液位L1の検出を液位計50で適切に測定できる。また、起動を交互に行うことで、運転時間の平準化を図ることで、メンテナンスコストを低減することができる。
【0044】
次に、本実施形態に係る水中ポンプ装置10の交互並列運転の一例について
図6および
図7のフローチャートを参照して説明する。
交互並列運転動作とは、設定液位L1を超えた場合は最初に水中ポンプ装置10Aおよび水中ポンプ装置10Bのうちの一方を始動させ、しばらく時間が経過しても設定液位L1を下回らなければ、両方共に運転する動作である。
【0045】
まず、使用者が電源をオンにすると、制御部31Aおよび制御部31Bが起動する。
ステップSB1からステップSB5までは、
図5と同様の処理であり、水中ポンプ装置10Aが単独運転する場合である。
【0046】
ステップSC1では、制御部31Bが、水中ポンプ装置10Aのポンプが始動してから所定時間経過しても液位が始動液位以上であるか否かを判定する。時間は、時間計測部33により計測されればよく、液位は液位計50Bで計測されればよい。所定時間経過しても液位が始動液位以上である場合、ステップSC2に進み、そうでなければ、
図5に示す水中ポンプ装置10Aと水中ポンプ装置10Bとの交互運転を実行すればよい。
【0047】
ステップSC2では、制御部31Bが、水中ポンプ装置10Bを始動する。すなわち、水中ポンプ装置10Aのポンプを始動するだけでは液位が減少せず、そのまま水中ポンプ装置10Aのポンプの単独運転を継続しているだけでは貯水タンク100から液体が溢れる可能性があるため、水中ポンプ装置10Bも同時に運転させる並列運転を実行する。
【0048】
ステップSC3では、制御部31Bが、液位が停止液位に到達したか否かを判定する。液位が停止液位に到達した場合、ステップSB9に進み、液位が停止液位に到達していない場合、ポンプの運転を継続しつつステップSC3の判定処理を継続する。なお、並列運転を継続すれば、液位が減少するはずであるが、並列運転している場合でも液位が減少しなければ、制御部31Aおよび制御部31Bは、モータ23Aおよびモータ23Bそれぞれの運転周波数を増加させ高速で回転させることで、ポンプ22Aおよびポンプ22Bそれぞれの排水能力を増加させる制御を実行してもよい。
【0049】
なお、
図7の例では、並列運転により液位が減少し、無線通信部39による無線通信が可能となり、そのまま停止条件を満たして水中ポンプ装置10Aが停止することを想定する。続いて、ステップSB9において、無線通信部39Aと無線通信部39Bとの通信により、水中ポンプ装置10間で主機・従機を交代する。
【0050】
ステップSC4では、制御部31Bが、ポンプ22Bの停止条件を満たすか否かを判定する。停止条件は、ステップSB7と同様の基準で判定すればよい。停止条件を満たす場合、ステップSC5に進む。なお、停止条件を満たさない場合は、
図7に示す処理に移行する。
【0051】
ステップSC5では、制御部31Bが、ポンプ22Bを停止する。その後は、水中ポンプ装置10Bが主機の動作を、水中ポンプ装置10Aが従機の動作をそれぞれ実行し、同様の処理を交互に繰り返す。
【0052】
続いて、ステップSC4で停止条件を満たさない場合の水中ポンプ装置10の運転例を
図7に示す。
ここでは、ステップSB9の処理により、水中ポンプ装置10Aが停止後に無線通信により従機として設定され、水中ポンプ装置10Bは運転中であるが無線通信により主機として設定された後、並列運転が解除されたとする。しかし、1台の水中ポンプ装置10Bでは排水が間に合わず、液位が上昇し続け、無線通信部39Aと無線通信部39Bとの間の無線通信が不可能となり、液位が再び始動液位まで上昇した場合を想定する。
【0053】
ステップSD1では、制御部31Aが、水中ポンプ装置10Bのポンプが始動してから所定時間経過しても液位が始動液位以上のままであるか否かを判定する。所定時間経過しても液位が始動液位以上のままである場合、ステップSD2に進み、そうでなければ、
図5に示す水中ポンプ装置10Aと水中ポンプ装置10Bとの交互運転を実行する。
【0054】
ステップSD2では、制御部31Aが、水中ポンプ装置10Aを始動し、水中ポンプ装置10Aと水中ポンプ装置10Bとの並列運転を実行する。その後は、水中ポンプ装置10Aと水中ポンプ装置10Bとの役割が入れ替わった動作であるため、詳細な説明は省略する。
【0055】
なお、実際の運転環境によっては、2台の水中ポンプ装置10間でポンプの停止の度に主機・従機を入れ替えてしまうと、積算運転時間および積算始動回数が平均化されず、一方の水中ポンプ装置の運転時間が短いという偏りが生じることも考えられる。この場合は、主機・従機を交互に切り替えず、運転開始時に、無線通信部39間で積算運転時間または積算始動回数を送受信し、積算運転時間または積算始動回数が少ない水中ポンプ装置10が主機として始動すればよい。これにより、ある水中ポンプ装置10が連続して主機として動作することもあるが、複数台の水中ポンプ装置10のメンテナンスのタイミングを揃えることができ、効率的な運用を実現できる。
【0056】
また、複数台の水中ポンプ装置10において、主機・従機の切り換えが上手く設定されず、複数台の水中ポンプ装置10が主機として設定され同時に始動する場合や、水中ポンプ装置10が1台も主機として設定されず、どれも始動しないという場合も想定される。このような場合、1台の水中ポンプ装置10に「優先機」である旨を記憶部37に記憶しておき、主機が重複して設定された場合または主機が1台も設定されない場合は、制御部31が、無線通信により水中ポンプ装置10間でリセット動作を行い、「優先機」が主機として設定され、他の水中ポンプ装置10は、従機として設定されるようにすればよい。
【0057】
なお、複数台の水中ポンプ装置10の装置間でポンプ運転情報をやりとりすることで、主機、従機の動作順を決定する例を説明したが、これに限らず、各水中ポンプ装置10が、ユーザ指示を送信可能な外部端末から、交互運転モードおよび交互並列運転モードの切り換え指示を受信し、当該切り替え指示に応じて、各水中ポンプ装置10の制御部31が、各交互運転モードおよび交互並列運転モードを切り替えるようにしてもよい。
【0058】
また、無線通信部39による無線通信が可能であるか不可能であるかに応じた液位の判定をさらに実施してもよい。上述のように、複数の水中ポンプ装置10の無線通信部39間で無線通信可能であれば、無線通信部39が配置される位置よりも液位が低いと判定でき、無線通信不可能であれば、無線通信部39が配置される位置よりも液位が高いと判定できる。よって、例えば
図6では、ステップSB5の前の段階で無線通信部39による無線通信が可能であると判定できれば、無線通信部39が配置される位置よりも液位が低いことが分かるため、液位計50による停止液位に到達した液位判定の補強的根拠として利用できる。
このように無線通信部39による液位の判定も併せて実施することで、液位判定の精度を高めることができる。
【0059】
図5から
図7に示すように、複数台の水中ポンプ装置10、ここでは2台の水中ポンプ装置10Aと水中ポンプ装置10Bとを設置する場合、水中ポンプ装置10Aと水中ポンプ装置10Bとの構成を同一構成とすることができ、ポンプ装置1台当たりの製造コストを低減することも可能となる。
【0060】
また、制御部31Aおよび制御部31Bは、「周波数一定モード」および「電流値一定モード」を必要に応じて切り換えると説明したが、「周波数一定モード」および「電流値一定モード」を同時に設定することも可能である。
【0061】
以上に示した本実施形態によれば、半導体圧力センサを用いた液位計により、槽内の液体の液位を計測し、ポンプの始動および停止を制御する。当該液位計を用いることにより、フロートスイッチや投げ込み式水位計のためのスペースを確保する必要が無く、省スペース化を実現しつつ高精度の液位制御を行うことができる。さらに、無線通信部を設け、無線通信により、ポンプを始動および停止することができ、複数台の水中ポンプ装置間でポンプに関する運転情報をやりとりすることで、交互運転および交互並列運転時に主機・従機を切り替えることができる。このように、簡便かつ多様な液位制御を実行できる。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0063】
10…水中ポンプ装置、20…筐体、22…ポンプ、22a…開口部、22b…吐出口、23…モータ、30…電装部、31…制御部、32…インバータ、33…時間計測部、34…電流計測部、35…温度計測部、36…運転周波数計測部、37…記憶部、38…入力インタフェース、39…無線通信部、50…液位計、100…貯水タンク、200…外部配管。